JP6549399B2 - プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents
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Description
繊維強化複合材料の厚み方向の導電性を向上させる方法として、繊維強化複合材料の繊維層と繊維層の間の樹脂層に導電性粒子を配置させ、2つの繊維層の間の導電性を改善する方法(特許文献3参照)も提案されているが、この方法では、繊維層内の導電性は改善せず、この方法で得られる繊維強化複合材料の厚み方向の導電性は満足できるものではない。
そのため、厚み方向に優れた導電性を備えた繊維強化複合材料が求められている。
本発明のもう一つの態様であるプリプレグは、強化繊維にマトリクス樹脂が含浸してなるプリプレグであって、前記強化繊維が、その繊維表面に、導電材からなる凸部を有する強化繊維であり、強化繊維表面の導電材からなる凸部の高さが0.01μm〜10μmであり、強化繊維表面の凸部が、繊維表面に点在、もしくは、繊維の周方向、または繊維軸方向に一定の角度をもって連続して存在しており、かつ、前記導電材が金属であるプリプレグである。
本発明のプリプレグによれば、優れた導電性を備えた繊維強化複合材料を得ることができる。
図1は本発明の繊維強化複合材料を構成する強化繊維の1形態を示す概念図である。図1において、[1]は繊維強化複合材料中の強化繊維からなる強化繊維層を、[2]は強化繊維を、[3]はマトリクス樹脂をそれぞれ示している。図1に示されるように、本発明で用いる強化繊維[2]は、表面に導電材からなる凸部[4]を有している。本発明の繊維強化複合材料において、強化繊維表面の凸部[4]が、強化繊維の単繊維間を繋ぐ導電パスを形成する。そのため、本発明の繊維強化複合材料は、厚み方向にも優れた導電性を示す。
また、強化繊維表面の導電材からなる凸部の、繊維表面積に対する存在量は0.01個/mm2以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5×1010個/mm2であり、さらに好ましくは1〜1×107個/mm2であり、特に好ましくは10〜1×106個/mm2である。
金属メッキ処理の方法としては、特に限定されないが、無電解メッキ、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法があげられる。強化繊維が導電性繊維である場合には、電気メッキ処理を用いることもできる。
n=m/M=It/zF
n[mol]:物質量
m[g]:質量
M[g/mol]:分子量
I[A]:電流
t[s]:時間
z:イオン価数
F:ファラデー定数=9.6485×104[C/mol]
これらの強化繊維の中でも、比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られる点で、炭素繊維がより好ましい。引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
これらの硬化性樹脂の中でも、耐熱性、機械特性および炭素繊維との接着性のバランスに優れているエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂が好ましく、機械特性の面からはエポキシ樹脂がさらに好ましく、耐熱性の面からはビスマレイミド樹脂がより好ましい。
例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合に使用される硬化剤としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が挙げられる。ジシアンジアミドは、プリプレグの保存安定性に優れるため好ましい。また、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン化合物及びそれらの非反応性置換基を有する誘導体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるという観点から特に好ましい。
マトリクス樹脂組成物に配合する熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物に用いるマトリクス樹脂の種類に応じて異なり、樹脂組成物の粘度が適切な値になるように適宜調節すればよい。樹脂組成物に含まれるマトリクス樹脂100質量部に対して、熱可塑性樹脂は5〜100質量部となるように配合することが好ましい。
本発明で用いるマトリクス樹脂組成物は、上記成分以外に、本発明の目的・効果を阻害しない限り、必要に応じて、適宜、酸無水物、ルイス酸、ジシアンジアミド(DICY)やイミダゾール類の如く塩基性硬化剤、尿素化合物、有機金属塩、反応希釈剤、充填剤、酸化防止剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を含むことができる。
マトリクス樹脂組成物の含有率は、プリプレグの全質量を基準として、15〜60質量%であることが好ましい。含有率が15質量%よりも少ない場合は、得られる複合材料に空隙などが発生し、機械特性を低下させる場合がある。含有率が60質量%を超える場合は、強化繊維による補強効果が不十分となり、実質的に質量対比機械特性が低いものになる場合がある。好ましくは、含有率は、20〜50量%であり、より好ましくは25〜50質量%である。
ホットメルト法は、離型紙の上に、上記マトリクス樹脂組成物を薄いフィルム状に塗布して樹脂組成物フィルムを形成し、次いで形成したフィルムを離型紙から剥離して樹脂組成物フィルムを得、その後強化繊維基材に樹脂組成物フィルムを積層して加圧下に加熱することにより樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させる方法である。
樹脂組成物フィルムを用いて強化繊維基材へマトリクス樹脂組成物を含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、適宜決定する。
上記方法を用いて得られる本発明のプリプレグは、目的に応じて積層され、成形並びに硬化されて繊維強化複合材料が製造される。本発明のプリプレグによれば、優れた導電性を備えた繊維強化複合材料を得ることができる。
[エポキシ樹脂組成物]
(エポキシ樹脂)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂 (3官能基) [ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製アラルダイトMY0600(商品名)] (MY0600)
・グリシジルアミン型エポキシ樹脂 (4官能基) [ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製アラルダイトMY721(商品名)] (MY721)
(エポキシ樹脂硬化剤)
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン [和歌山精化社製の芳香族アミン系硬化剤] (4,4’−DDS)
(熱可塑性樹脂)
・熱可塑性樹脂
平均粒子径20μmのポリエーテルスルホン [住友化学工業(株)製PES−5003P(商品名)]
(1)金属付着量
金属付着前繊維重量(W1)と、金属付着後繊維重量(W2)を測定し、下式により付着量を算出した。
(金属付着量)[wt.%]=((W2)―(W1))÷(W2)×100
株式会社キーエンス社製カラー3Dレーザー顕微鏡VK−8710を用いて、繊維を3000倍に拡大し、その高さ、底面の長径および短径を測定した。底面のアスペクトは長径を短径で除し算出した。無作為に30個の凸部を選定し、その平均値を求めた。
走査型電子顕微鏡を用いて強化繊維表面を3000倍に拡大して、繊維長さ5μmあたりに含まれる凸部の数を測定した。測定を無作為に30ヶ所選定し、平均値を求めた。繊維径と測定長さ5μmから繊維の表面積を算出し、単位面積当たりの凸部の存在量(個/mm2)を算出した。
複合材料の導電性は、Z方向(厚さ方向)の体積抵抗率を用いて評価した。体積抵抗率とは、所与の材料の固有抵抗である。三次元材料の導電率の測定の単位はオーム−cm(Ω・cm)である。材料のZ方向体積抵抗率ρは、通常下式により定義される。
ρ= RA/L
R:試験片の電気抵抗値(デジタルオームメーターで測定)
L:試験片の厚さ(m)
A:試験片の断面積(m2)
本発明においては、体積抵抗はZ方向にのみ(複合材料の厚み方向)測定する。計算においては厚みが常に考慮されるので、すべての場合において、この値は「体積」抵抗率となる。
プリプレグをカット、積層し、積層構成[+45/0/−45/90]2Sの積層体を得た。真空オートクレーブ成形法を用い、0.49MPaの圧力下、180℃で120分間成形した。得られた成形物を幅 40mm × 長さ 40mmの寸法に切断し、サンドペーパーを用いて、成形物の表面を炭素繊維が露出するまで研磨した。最後に、2000番のサンドペーパーを用いて表面仕上げを行い、試験片を得た。得られた試験片を、幅50mm×長さ50mmの金メッキを施した2枚の電極間に挟んだ。
両電極間に0.06MPaの荷重をかけた状態で、デジタルオームメーター(ADEX社製 AX−114N)でZ方向の試験片の抵抗値を測定し、上式から体積抵抗率を求めた。10枚の試験片について抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出し、その平均値を用いて評価した。
炭素繊維束にエポキシ系サイジング剤を1.0質量%付着させた後、JIS R−7608に準じてエポキシ樹脂含浸ストランドの引張強度および引張弾性率を測定した。
前駆体繊維であるPAN繊維(単繊維繊度1.2dtex、フィラメント数24000)を、空気中250℃で、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度500℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1300℃で高温炭素化させて製造した炭素繊維を、10質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用い、20C/gの電気量で電解酸化により表面処理を行い、炭素繊維束(引張強度5000MPa、引張弾性率250GPa、炭素含有量98質量%、フィラメント数24000、総繊度1600tex)を得た。
得られた炭素繊維束を陰極ローラと接触させた後、ニッケル板を陽極とするニッケルメッキ浴中に浸漬させ、陰極ローラとニッケル板間を、炭素繊維を介して通電させることで、炭素繊維束に電解処理によるニッケルメッキ処理を連続的に施した。メッキ浴組成は硫酸ニッケル300g/L、塩化アンモニウム30g/L、ホウ酸30g/Lとし、メッキ液のpH6.0、温度40℃に調整した。炭素繊維1gに対して1Aの電流を10秒ずつ8回付与し、炭素繊維にニッケルを2.5wt.%付着させ、金属付着炭素繊維束を得た。ニッケルの付着状態を確認したところ、ニッケルが炭素繊維表面に凸状に付着していた。この凸部の平均高さは1μm、平均アスペクト比は2、平均存在量は4.1×103個/mm2であった。
得られた金属付着炭素繊維束に、エポキシ系サイジング剤を1.0wt.%付着させた後、一方向に引き揃え、金属付着炭素繊維基材(目付:190g/m2)を作成した。
金属付着炭素繊維基材の両面に、マトリクス樹脂フィルムを貼り合わせ、ホットメルト法により、樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させ、プリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、4.2Ω・cmであった。
炭素繊維1gに対する電流量を1Aから4Aに変更し、10wt.%のニッケルを付着させた以外は実施例1と同様にして、金属付着炭素繊維を得た。得られた金属付着炭素繊維束のニッケルの付着状態を確認したところ、ニッケルが炭素繊維表面に凸状に付着していた。この凸部の平均高さは4μm、平均アスペクト比は4、平均存在量は1.5×104個/mm2であった。
得られた金属付着炭素繊維束を用いて、実施例1と同様の方法にてプリプレグを作製し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、1.6Ω・cmであった。
メッキ浴中の硫酸ニッケルを硫酸銅に、陽極のニッケル板を銅板に、電流量を1Aから0.5Aに変更した以外は実施例1と同様にして、銅が2.5wt.%付着した金属付着炭素繊維を得た。得られた金属付着炭素繊維束の銅の付着状態を確認したところ、銅が炭素繊維表面に凸状に付着していた。この凸部の平均高さは2μm、平均アスペクト比3、平均存在量は0.8×103個/mm2であった。
得られた金属付着炭素繊維を用いて、実施例1と同様の方法にてプリプレグを作製し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、1.0Ω・cmであった。
炭素繊維束にメッキ処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、3300Ω・cmであった。
前駆体繊維であるPAN繊維(単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数24000)を、空気中250℃で、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1500℃で高温炭素化させて製造した炭素繊維を、10.0質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用い、40C/gの電気量で電解酸化により表面処理を行い、炭素繊維束(引張強度5800MPa、引張弾性率310GPa、炭素含有量98質量%、フィラメント数24000、総繊度800tex)を得た。
得られた炭素繊維に実施例1と同様にしてニッケルを2.5wt.%付着させ、金属付着炭素繊維束を得た。ニッケルの付着状態を確認したところ、ニッケルが炭素繊維表面に凸状に付着していた。この凸部の平均高さは1μm、平均アスペクト比は2、平均存在量は6.0×103個/mm2であった。
得られた金属付着炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。
作製したプリプレグを用いて体積抵抗率測定試料を成形し、繊維強化複合材料の導電性を評価した。得られた繊維強化複合材料の電気抵抗は、4.9Ω・cmであった。
2 強化繊維
3 マトリクス樹脂
4 強化繊維表面の凸部
Claims (6)
- 強化繊維とマトリクス樹脂からなる繊維強化複合材料であって、
前記強化繊維が、その繊維表面に、導電材からなる凸部を有する強化繊維であり、
強化繊維表面の導電材からなる凸部の高さが0.01μm〜10μmであり、
強化繊維表面の凸部が、繊維表面に点在、もしくは、繊維の周方向、または繊維軸方向に一定の角度をもって連続して存在しており、
かつ、前記導電材が金属であることを特徴とする繊維強化複合材料。 - 前記強化繊維表面の凸部が、繊維の周方向、または繊維軸方向に一定の角度をもって連続して存在しており、凸部の強化繊維と接触している底面の大きさが、幅方向に繊維直径の1/2以下である請求項1に記載の繊維強化複合材料。
- 前記強化繊維表面の凸部が、繊維表面に点在しており、凸部の強化繊維と接触している底面の外接円の直径が繊維直径の1/2以下である請求項1に記載の繊維強化複合材料。
- 強化繊維表面の導電材からなる凸部の、繊維表面積に対する存在量が0.01個/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
- 強化繊維表面の導電材からなる凸部が、金属メッキ処理により形成されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材料。
- 強化繊維にマトリクス樹脂が含浸してなるプリプレグであって、前記強化繊維が、その繊維表面に、導電材からなる凸部を有する強化繊維であり、
強化繊維表面の導電材からなる凸部の高さが0.01μm〜10μmであり、
強化繊維表面の凸部が、繊維表面に点在、もしくは、繊維の周方向、または繊維軸方向に一定の角度をもって連続して存在しており、
かつ、前記導電材が金属であることを特徴とするプリプレグ。
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