JP2017186675A - 固体金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法 - Google Patents

固体金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 新規な固体金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粒子径が500nm以下の固体金ニッケル合金ナノ粒子を提供する。特に、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%である固体金ニッケル合金ナノ粒子であり、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金を主体とする金ニッケル合金ナノ粒子を提供する。金ニッケル合金ナノ粒子は金とニッケルとの置換型固溶体を主体とする。この金ニッケル合金ナノ粒子は、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面間にできる薄膜流体中において金イオン、ニッケルイオン及び還元性を有する物質を混合し、析出されたものであることが望ましい。
【選択図】図5

Description

本発明は、固体金ニッケル合金ナノ粒子とその製造方法に関する。
近年、磁気センサや電極材料、キャパシタや触媒、接点材料などに用いる材料として、金とニッケルの合金粒子が注目されている。金ニッケル合金粒子中の金とニッケルの割合によって特性を制御できる可能性があり、例えば金とニッケルとが均一に混ざっていない状態の金ニッケル合金でさえ、単独の金に比べて電子部品の一部としてのコネクター、小型リレー、プリント配線板などの高信頼性電気接点材料としての性能を発揮することや、耐熱性や耐摩耗性、触媒性能などの性能が向上することが知られている。そのため、金ニッケル合金は、産業界において広い範囲で求められている材料である。しかし、一般的に金とニッケルとの合金は、銀と銅との合金と同様に、共晶体を形成するため、金とニッケルとを均一に固溶させることが難しい。そのため上記の金ニッケル合金として期待された特性が十分に発揮できていない場合が多い。さらに、金ニッケル合金は、ナノ粒子化することによって、更なる特性の向上並びに新規特性の発現が期待されており、金ニッケル合金ナノ粒子が懇願されている。
このように、金とニッケルとを含む固体の合金にあっては、種々の形態で、金とニッケルとが存在するが、平衡状態図で、金とニッケルとが共晶構造をとるなどして、互いに混ざり合わずに、偏在する固相の特定領域があることが示されている。かかる特定領域では、合金を構成する金とニッケルは、合金全体の成分比率と、金とニッケルとのナノレベルの微細なレンジでの成分比率とが、大きく異なる偏在状態を示し、その結果合金として期待された特性が十分に発揮できていない場合が多い。
金とニッケルの合金粒子の製造方法としては、従来より粉末冶金法が一般的であるが、その他として、特許文献1に記載された液相還元法や特許文献2に記載されたアトマイズ法などがある。しかし均一に金とニッケルとが混ざり合った金ニッケル合金、特に金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法についてはこれまで開示されていない。その他、金属金と金属ニッケルとを高温で固溶させた状態からから急冷することで、金ニッケル合金粒子の固溶体を得る方法などもあるが、得られる金ニッケル合金粒子は不均一となりやすく、また高いエネルギーを必要とするため、自ずとコストが大きくなりやすいなどの問題がある。
本出願人の出願である特許文献3において、微粒子の製造方法が提供されたが、開示された製造方法を用いて得られた粒子を分析すると、不均一な金ニッケル合金粒子であった。そのため、金ニッケル合金ナノ粒子、特に均一に固溶された金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法が懇願されていた。
本出願人の出願である特許文献4において、銀銅合金粒子の製造方法が提供されたが、実施例で示された製造方法で得られた粒子を分析すると、共晶体または単独の銀または銅が混在する銀銅合金粒子であり、実質的に共晶体を含まない銀銅合金粒子、特に固溶体銀銅合金粒子については、これまで開示されていなかった。
特許文献3,4に示された装置は、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で、微小粒子を析出させるようにした装置であり、特にナノサイズの粒子の製造に活用されることが期待される装置である。本発明者は、この装置を用いて種々のナノ粒子の製造を試みているが、その析出や反応の条件と結果との関係については、その全てが解明されたものではない。
詳しくは、固体金ニッケル合金ナノ粒子ではないが、固体金属合金粒子についても、白金パラジウム合金については1点のTEM−EDSの分析結果とICP分析結果とがほぼ一致していることを確認したが、白金パラジウム合金は、低温で相分離の傾向があるが、全率固溶体型の金属と言われている。一方、銀銅合金については共晶体または単独の銀または銅が混在する銀銅合金粒子が得られていたに止まっていた。
より具体的には、図14〜図16に示すものと同様な銀銅合金粒子が得られていたものである。図14(A)はSTEM−HAADF像、図14(B)はEELSマッピング結果(Ag)、図14(C)はEELSマッピング結果(Cu)を示すものである。図14については、エネルギー分散型X線分析装置:Centurio(JEOL製)、原子分解能分析電子顕微鏡:JEM−ARM200F(JEOL製)加速電圧:200.0kV、倍率:6000000を用いたものである。図15(A)はSTEM−HAADF像、図15(B)はSTEMマッピング結果(Ag)、図15(C)はSTEMマッピング結果(Cu)を示すものである。図15については、日立Csコレクタ搭載超高分解能STEM分析装置(EDX搭載):HD−2700(日立ハイテクノロジーズ製)加速電圧:200.0kV、倍率:2200000を用いたものである。図16(A)はSTEM−HAADF像、図16(B)はSTEMマッピング結果(Ag)、図16(C)はSTEMマッピング結果(Cu)を示すものである。図16については、日立Csコレクタ搭載超高分解能STEM分析装置(EDX搭載):HD−2700(日立ハイテクノロジーズ製)加速電圧:80.0kV、倍率:2000000を用いたものである。
図14の銀銅合金粒子については、粒子の中心に銅(コア)、その周りに銀(シェル)、表面に銅が存在する銀銅合金粒子(粒子径約20nm)である。図14の(B)(C)より、銀または銅が存在しない部分つまり、銀が100%の部分、または銅が100%の部分があることがわかる。図15の銀銅合金粒子については、一つの粒子において、銀と銅とが偏析している銀銅合金粒子(粒子径約15nm)である。特に(C)より、銅が存在しない部分つまり、銀が100%の部分があることがわかる。
図16の銀銅合金粒子については、一つの粒子において、半分が銀、つまり銀が100%の部分、もう半分が銅、つまり銅が100%の部分とからなる銀銅合金粒子(粒子径約15nm)である。
図17は、銀アンチモン合金粒子であり、図17の(A)はSTEM−HAADF像(B)はSTEMマッピング結果(Ag)、(C)はSTEMマッピング結果(Sb)を示すものであり、エネルギー分散型X線分析装置:Centurio(JEOL製)、原子分解能分析電子顕微鏡:JEM−ARM200F(JEOL製)加速電圧:200.0kV、倍率:6000000を用いたものである。
この銀アンチモン合金粒子(粒子径約20nm)は、一つの粒子中に、2〜5nm銀粒子が存在するもので、銀粒子間には、EDS分析でアンチモンが100%観察され、銀が存在しない部分がある。
特開2011−122236号公報 特開2009−289587号公報 国際公開WO2009/008393号パンフレット 国際公開WO2009/008390号パンフレット
本発明はこのことに鑑み、上記の金ニッケル合金ナノ粒子として期待された特性が十分に発揮できる金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、固体金ニッケル合金ナノ粒子及びその製造方法を提供することにより、上記の課題を解決する。
本発明は、固体金ニッケル合金ナノ粒子であって、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子を、TEM-EDS分析を用いた直径5nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子のICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されるものとして実施できる。
また、本発明は、固体金ニッケル合金ナノ粒子であって、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子を、STEM-EDS分析を用いた直径0.2nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子のICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されるものとして実施できる。
また、本発明は、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲である固体金ニッケル合金ナノ粒子であり、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金を主体とするものとして実施できる。
本発明の金ニッケル合金ナノ粒子は、その平衡状態図で、非固溶体状態を示す固相の特定領域においても、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す。ここで、非固溶体状態を示す固相の特定領域にあっては、金とニッケルとが偏在するものであり、金ニッケル合金においては、金とニッケルとの共晶体を含む領域である。
金とニッケルとが偏在する領域とは、金ニッケル合金ナノ粒子の全体において、合金を構成する金とニッケルとの成分比率と、微小分析によるナノレベルの微小範囲内における金とニッケルとの成分比率とに、±30%を越える差が生じる領域である。より具体的には、TEM−EDS分析を用いた直径5nmのビーム径による微小範囲分析またはSTEM−EDS分析を用いた直径0.2nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、上記金ニッケル合金ナノ粒子のICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%を越えて検出される混在状態である。従来の合金にあっては、これらの領域では、例えば、上記の図14〜図17に示したように、合金を構成する少なくとも2種の金属のうち、一方の金属が存在しない状態となっている。
これに対して、本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子にあっては、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示すものである。そして、望ましくは、本発明の金ニッケル合金ナノ粒子にあっては、TEM−EDS分析を用いた直径5nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、すべての分析点で、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲で金とニッケルとが共に検出されるものである。また、本発明の金ニッケル合金ナノ粒子にあっては、STEM−EDS分析を用いた直径0.2nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、すべての分析点で、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲で金とニッケルとが共に検出されるものである。
現在の技術水準では、上記のTEM−EDS分析又はSTEM−EDS分析を行なわなければ、得られた金ニッケル合金ナノ粒子が固溶体か否かの正確な判断をなすことはできない。また、マッピングによって、金とニッケルの元素分布を確認することも重要である。本発明者は、前述の図14〜図17に示すものと同様な合金粒子のみが得られていた特許文献4に記載の装置を用いて、合金を構成する金属イオンを含む流体や還元剤を含む流体等の諸条件を鋭意研究することで、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金の開発に成功したものである。
このように、本発明の金ニッケル合金ナノ粒子にあっては、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示すため、合金として期待された特性が十分に発揮できるものである。
本発明の金ニッケル合金ナノ粒子にあっては、金とニッケルとの共晶体を含まない非共晶構造を主体とするものであると考えられる。
また本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子は、金とニッケルとの置換型固溶体を主体とするものであると考えられる。固溶体は、周知のとおり、侵入型固溶体と置換型固溶体とに大別されるが、本発明により得られた金ニッケル合金ナノ粒子は、置換型固溶体であると認められる。置換型固溶体と侵入型固溶体との違いは、TEMやSTEMによる観察、XRD測定、熱分析などによって可能であるが、特にTEMやSTEMによる観察が有効である。置換型固溶体は、空間格子中の格子点の金属元素が、他の元素に置き換わった固溶体である。これによって、置換型固溶体は、特にTEMまたはSTEMによる合金の観察によって、格子縞が明確に観察され、また格子点の金属元素が他の元素に置き換わることによって、結晶格子が歪むことによる影響で、格子縞はうねりを持って観察される。それに対して、侵入型固溶体は、結晶格子の隙間に他の元素が侵入するため、TEMまたはSTEMによる合金の観察によって、置換型固溶体合金とは異なる状態で観察される。
また、本発明は、上記金ニッケル合金ナノ粒子は、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で、金イオン、ニッケルイオン及び還元性を有する物質を混合し、析出されたものとして実施できる。具体的には、特許文献3,4において示された装置を用いることによって製造され得る。
また、本発明は、上記還元性を有する物質は、少なくとも2種類の還元性を有する物質であってもよい。
また、本発明は、上記少なくとも2種類の還元性を有する物質は、還元剤、還元性を示す分散剤、還元性を示す溶媒の群から選択される少なくとも1種であってもよく、上記還元剤として、ヒドラジン一水和物を例示できる。
この装置にあっては、金とニッケルとの還元反応を原子レベルで制御することができたため、処理用流体の種類やpH、金イオンとニッケルイオンのモル比、処理用面の回転数等々、種々の条件を設定することによって、金ニッケル合金が原子の尺度で均一な混合状態を実現できたものと本発明者は考える。
また、本発明は、上記金ニッケル合金ナノ粒子は、粒子径が500nm以下であり、さらに、粒子径が100nm以下であるものとして実施できる。
また、本発明は、上記の金ニッケル合金ナノ粒子を生成させる方法であって、接近・離反可能、且つ相対的に変位する処理用面の間に被処理流動体を供給し、当該被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力とのバランスによって処理用面間の距離を微小間隔に維持し、この微小間隔に維持された少なくとも2つの処理用面間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体が薄膜流体を形成し、この薄膜流体中において上記金ニッケル合金ナノ粒子の析出を行うものとして実施することができる。
また、本発明は、被処理流動体として第1、第2の、少なくとも2種類の流体を用いるものであり、上記第1の流体には、金イオンとニッケルイオンとを含むものであり、上記第1の流体と上記第2の流体のうちの少なくとも何れか一方の流体には、還元性を有する物質を含むものであり、上記の被処理流動体を上記薄膜流体中で混合するものとして実施してもよい。
また、本発明は、上記還元性を有する物質は少なくとも2種類の還元性を有する物質であり、少なくとも2種類の還元性を有する物質を用いることによって、金とニッケルとを同時に析出させるものとして実施してもよい。すなわち、金ニッケル合金ナノ粒子を構成する金とニッケルの析出時間を実質的に同一となるように制御し、金とニッケルとがそれぞれ単独で析出しないようにすることが望ましく、そのため、少なくとも2種類の還元性を有する物質を用いることによって、金とニッケルとの析出時間を制御して、金とニッケルとを実質的に同時に析出させることが容易となり、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金ナノ粒子として析出させることができる。勿論、1種類の還元性を有する物質を用いた場合にあっても、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金ナノ粒子を得ることは可能である。
また、本発明は、上記少なくとも2種類の還元性物質は、還元剤、還元性を示す分散剤、還元性を示す溶媒の群から選択される少なくとも1種であるものとして実施してもよい。
本発明に係る固体金ニッケル合金ナノ粒子は、金ニッケル合金中の金とニッケルとが実質的に混ざり合っているため、高信頼性電気接点材料としての性能を発揮することや、耐熱性や耐摩耗性、触媒性能など、金ニッケル合金として期待された特性が十分に発揮されるものである。
本発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。 (A)は図1に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。 (A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。 一般的なAu−Ni系合金平衡状態図である。 実施例1において作製された金ニッケル合金ナノ粒子のTEM像である。 実施例2において作製された金ニッケル合金ナノ粒子のSTEM像及びそのSTEM像の金ニッケル合金ナノ粒子におけるSTEM−EDS分析点(4点)である。 実施例3において作製された金ニッケル合金ナノ粒子のTEM像及びそのTEM像の金ニッケル合金ナノ粒子におけるTEM−EDS分析点(5点)である。 実施例2において作製された金ニッケル合金ナノ粒子の、図6に示したSTEM−EDS各分析点にて測定したEDS分析結果である。 実施例3において作製された金ニッケル合金ナノ粒子の、図7に示したTEM−EDS各分析点にて測定したEDS分析結果である。 実施例1において作製された金ニッケル合金ナノ粒子の低倍率におけるTEM像である。 実施例5において作製された金ニッケル合金ナノ粒子の、(A)STEM−HAADF像、(B)EDSマッピング結果(Au)、(C)EDSマッピング結果(Ni)である。 実施例5において作製された金ニッケル合金ナノ粒子の、(A)STEM−HAADF(暗視野)像、(B)STEM−BF(明視野)像である((A)(B)共に倍率は1200万倍)。 実施例5において作製された金ニッケル合金ナノ粒子の、(A)STEM−HAADF(暗視野)像、(B)STEM−BF(明視野)像である((A)(B)共に倍率は6000万倍)。 従来の銀銅合金粒子の一例を示す電子顕微鏡による観察結果を示すもので、(A)STEM−HAADF像、(B)EELSマッピング結果結果(Ag)、(C)EELSマッピング結果結果(Cu)を示すものである。 従来の銀銅合金粒子の他の一例を示す電子顕微鏡による観察結果を示すもので、(A)STEM−HAADF像、(B)STEMマッピング結果(Ag)、(C)STEMマッピング結果(Cu)を示すものである。 従来の銀銅合金粒子のさらに他の一例を示す電子顕微鏡による観察結果を示すもので、(A)STEM−HAADF像、(B)STEMマッピング結果(Ag)、(C)STEMマッピング結果(Cu)を示すものである。 従来の銀アンチモン合金粒子の一例を示す電子顕微鏡による観察結果を示すもので、(A)STEM−HAADF像、(B)STEMマッピング結果(Ag)、(C)STEMマッピング結果(Sb)を示すものである。
以下に、本発明の実施の形態の一例について、具体的に説明する。
本発明における金ニッケル合金ナノ粒子は、その合金の平衡状態図で、金とニッケルとが偏在する固相の特定領域において、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示すものである。
金ニッケル合金にあっては、合金を構成する、金とニッケルとの共晶体を主体としたり、金とニッケルとの固溶体ではあっても不均一な固溶体であったりするといった、金とニッケルとが偏在する固相の特定領域が合金平衡状態図において示されている。
具体的には、図4に示す金ニッケル合金の平衡状態図において、α+βの領域である。周知のとおり、合金の状態は温度によって変化するが、特定成分比率で固体の特定温度条件下にあっては、金とニッケルとが偏在する。
金ニッケル合金は、液体状態で完全に溶け合っているが、固体状態では一部分固溶し合あう。そのため、金ニッケル合金のモル比(割合)について(a+β)と記載された領域は、α相とβ相の2相に分離した状態であり、極微細なレベルではα相とβ相とは偏在する状態となっている。
これに対して、本発明の金ニッケル合金ナノ粒子にあっては、図4に示す金ニッケル合金の平衡状態図において、α+βの領域にあっても、合金を構成する金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示すものである。
(固体金ニッケル合金ナノ粒子、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金及びそのナノ粒子)
本発明に係る固体金ニッケル合金ナノ粒子は、粒子径が500nm以下の金ニッケル合金ナノ粒子であり、好ましく100nm以下の金ニッケル合金ナノ粒子であり、さらに好ましくは50nm以下の金ニッケル合金ナノ粒子である。
また、本発明に係る固体金ニッケル合金ナノ粒子は、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%、好ましくは3.0wt%から90.0wt%の範囲である固体金ニッケル合金のナノ粒子であり、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金(AuNi合金)を主体とするナノ粒子である。一般的なAu−Ni系合金平衡状態図を図4に示すが、従来の合金では一般的に、α相とβ相とが混在している状態となっている。本発明においては、この領域においても、均一な金ニッケル合金であり、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とする金ニッケル合金である。これによって電子部品の一部としてのコネクター、小型リレー、プリント配線板などの高信頼性電気接点材料としての性能を発揮することや、耐熱性や耐摩耗性、触媒性能など、金ニッケル合金として期待された特性を発揮することが可能である。本発明に係る金ニッケル合金は、上述の通り、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とする金ニッケル合金であるが、本発明において「金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とする金ニッケル合金」とは、本発明に係る金ニッケル合金の50容量%以上が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金である金ニッケル合金とする。また、本発明における金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金として、固溶体やアモルファス等が挙げられる。
以上のように、本発明者は、本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子を、室温下にて、種々の装置によって観察し、本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とする固体金ニッケル合金ナノ粒子であるとした。
より詳しくは、室温下にある金ニッケル合金ナノ粒子を、後述する実施例において用いた顕微分析(TEM−EDS分析またはSTEM−EDS分析)の環境下に置き、加速電圧200kVの電子線を照射した状態において、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とする金ニッケル合金ナノ粒子であることを確認した。その際、電子線を照射した試料自体の温度制御は行っていない。
金ニッケル合金中の金とニッケルとの均一さ並びに金ニッケル合金が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とするものであるかどうかに関する分析方法は特に限定されないが、顕微分析が好ましく、特に微小領域について、金とニッケルとの分布状態や、重量比またはモル比を分析できる分析手法が好ましい。例えば、透過型電子顕微鏡観察下でのエネルギー分散型X線分光分析(TEM−EDS)または走査型電子顕微鏡観察下でのエネルギー分散型X線分光分析(SEM−EDS)、高分解能TEM(HRTEM)、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いた元素マッピング、走査透過型電子顕微鏡観察下でのエネルギー分散型X線分光分析(STEM−EDS)、電子エネルギー損失分光法(EELS)などが挙げられる。その他の分析方法であっても良いが、金ニッケル合金中の金とニッケルとの均一さ並びに金ニッケル合金が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とするものであるかどうかの証明のためには、顕微分析が好ましい。本発明における均一な金ニッケル合金並びに金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す合金を主体とする金ニッケル合金として、図5、図6及び図7に示すTEM像やSTEM像のような金ニッケル合金ナノ粒子や、図11に示すSTEM―HAADF像(図11(A))、及びそれらに対するEDSマッピング結果(図11(B)(C)。それぞれ、(B)はAuのマッピング結果であり、(C)はNiのマッピング結果である。)のような金ニッケル合金ナノ粒子が挙げられる。
図5に示す金ニッケル合金ナノ粒子については、金ニッケル合金ナノ粒子粉体のICP分析結果においてはAu:Ni=50.1:49.9(モル比)であり、言い換えると、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が22.9wt%である。また、図6に示す金ニッケル合金ナノ粒子については、金ニッケル合金ナノ粒子粉体のICP分析結果においてはAu:Ni=14.9:85.1(モル比)であり、言い換えると、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が63.0wt%である。図7に示す金ニッケル合金ナノ粒子については、金ニッケル合金ナノ粒子粉体のICP分析結果においてはAu:Ni=74.1:25.9(モル比)であり、言い換えると、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が9.4wt%である。上記の金ニッケル合金ナノ粒子は、全てAu−Ni系合金平衡状態図において、α+βの領域である金とニッケルとの割合であるが、それぞれ金とニッケルとが一つのナノ粒子において明らかに偏析している様子は確認されず、金のみの領域またはニッケルのみの領域は確認できない。図11(B)(C)に示すマッピング結果からも、その点は明らかである。さらに図6には、金ニッケル合金ナノ粒子における、直径0.2nmのビーム径による、STEM−EDS分析点(4点)を示し、図8に、図6に示した各分析点にて分析したEDS分析結果を示す。本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子を、STEM-EDS分析を用いた直径0.2nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されることが望ましいが、図8に示した分析結果より、分析点の50%以上で、STEM-EDS分析における金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されており、これを満たしている。0.2nm径のビームは、金及びニッケルの原子半径の大きさに近いが、実際の観察においては、深さ方向や周辺からの情報も取り込むため、実質的に金やニッケルの原子サイズより大きい領域の情報を取り込むことが可能である。もしも、金ニッケル合金ナノ粒子が不均一であったり、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示さない部位を含む場合、金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルとの割合が、αまたはβそれぞれの金とニッケルの割合である分析点が多数検出されるはずである。つまり上記金ニッケル合金ナノ粒子が均一な金ニッケル合金であって、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金であることがわかる。また、さらに図7には、その金ニッケル合金ナノ粒子における直径5nmのビーム径による、TEM−EDS分析点(5点)を示し、図9に、図7に示した各分析点にて測定したEDS分析結果を示す。本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子を、TEM-EDS分析を用いた直径5nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されことが望ましいが、図9に示した分析結果より、分析点の50%以上で、TEM-EDS分析における金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されており、これを満たしている。本発明において、「均一な金ニッケル合金」とは、金ニッケル合金中の金とニッケルとの割合が所定の割合である金ニッケル合金であり、具体的には、1個の金ニッケル合金ナノ粒子中において、EDS分析によって得られた金とニッケルとの割合(モル比)が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとの割合(モル比)の±30%以内である金ニッケル合金ナノ粒子であって、複数の金ニッケル合金ナノ粒子についても同様の結果が得られるものをいう。そして、上記の「均一な金ニッケル合金」は、金とニッケルとが均一に混ざりあった金ニッケル合金である。
また、本発明においては上記のような分析を、直径50nm以下の領域において行うことが好ましい。また、本発明において、上記EDS分析(エネルギー分散型X線分光分析)を用いる場合のビーム径は、用いる装置の能力などによって異なるが、例えば25nmであることが好ましく、より好ましくは10nm、さらに好ましくは5nmであることが好ましい。また分析装置によっては0.5nmであることがより好ましく、0.2nmであることがより好ましい。本発明における実施例においては、TEM-EDS分析の場合にビーム径を5nm、STEM-EDS分析の場合にビーム径を0.2nmとして実施した。また、本発明における、TEMまたはSTEMの観察条件としては、25万倍以上が好ましく、50万倍以上がより好ましい。
EDSの分析方法について、その分析箇所の決定については単数複数を問わず特に限定されないが、複数箇所について行うことが好ましく、分析の対象が粒子である場合には、複数個の粒子についてそれぞれEDS分析を行っても良いし、単独の粒子における、複数の箇所をEDS分析しても良い。例えば、粒子径が5nmであって、EDSのビーム径が5nmである場合には、複数個の粒子についてEDS分析を行う方法を用いても良いし、EDS分析におけるビームの照射位置を若干変更することによって、単独の粒子における、複数の箇所をEDS分析しても良い。また、粒子径が5nmであって、EDSのビーム径が0.2nmである場合に、単独の粒子における、複数の箇所をEDS分析しても良い。
EDS分析の数については特に限定されないが、3箇所以上が好ましく、より好ましくは10箇所以上、さらに好ましくは25箇所以上が好ましい。
本発明においては、本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子を、TEM−EDS分析またはSTEM−EDS分析を用いた上記のビーム径による微小範囲分析を行った結果、複数の分析点における50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上で、金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内、好ましくは20%以内、より好ましくは10%以内で検出されることが望ましい。
しかし、分析点の50%以上で、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%を越える場合には、ICP分析によって得られた金とニッケルとのモル比に対して、TEM−EDS分析またはSTEM−EDS分析によって得られた微小範囲分析結果における金とニッケルとのモル比が大きく異なるため、均一な金ニッケル合金ナノ粒子が作製できていない恐れがある。
このような分析が可能な装置としては特に限定されないが、例えば、透過型電子顕微鏡観察下でのエネルギー分散型X線分光分析(TEM−EDS)が可能な装置として、エネルギー分散型X線分析装置、JED−2300(JEOL製)を備えた、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)や、走査透過型電子顕微鏡観察下でのエネルギー分散型X線分光分析(STEM−EDS)が可能な装置として、r−TEM EDS検出器(アメテック社製)を備えた高分解能分析電子顕微鏡、Titan80−300(FEI社製)または、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(JEOL製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM−ARM200F(UHR)(JEOL製)などが挙げられる。
(金とニッケルの割合)
本発明における金ニッケル合金ナノ粒子に含まれる金とニッケルの割合(モル比)については特に限定されない。金のモル比の方が高い金ニッケル合金ナノ粒子でも良いし、ニッケルのモル比の方が高い金ニッケル合金ナノ粒子でも良い。また、本出願においては、上記金ニッケル合金ナノ粒子に含まれる金とニッケルのモル比に関係なく、金とニッケルとを含む合金を金ニッケル合金と記載し、その金ニッケル合金のナノ粒子を金ニッケル合金ナノ粒子と記載する。
(金ニッケル合金ナノ粒子:粒子径)
本発明における金ニッケル合金ナノ粒子は、上記の通り、その粒子径が500nm以下であることが好ましい。より好ましくは、粒子径が100nm以下の金ニッケル合金ナノ粒子であり、さらに好ましくは50nm以下の金ニッケル合金ナノ粒子である。その理由は、ナノメートルサイズの粒子が、量子サイズ効果によって低融点化・低温焼結性といった特異的物性を示すためである。例えば、近年のナノテクノロジーの進展とともに塗布焼成のプロセスによってもプラスチック基板上に回路形成できる材料として、ナノ粒子を用いた電子回路形成用の導電性ペースト等が必要とされており、上記特異的物性によってその要求を満足できることなどが挙げられる。本発明においては、各図に示した金ニッケル合金を含め、得られる金ニッケル合金全てにおいて、その粒子径が500nm以下であり、100nm以下並びに50nm以下の金ニッケル合金ナノ粒子もあった。
なお、多くの合金と同様に、本発明の金ニッケル合金ナノ粒子も微量の不純物を含むこともあるために、本発明は、その金ニッケル合金ナノ粒子中に、意図的に若しくは意図せずに、金又はニッケル以外の元素を含めることを許容するものである。意図的に含める元素としては特に限定されず、全ての元素が挙げられるが、一例を示すと、金、パラジウム、ニッケル、クロム、マンガン、バナジウム、鉄、モリブデン、錫、コバルトなどが挙げられる。その他の金属が意図せずに不純物として含まれると考えられる割合は、特に限定されないが、金ニッケル合金全体の0.05wt%未満、より好ましくは0.02wt%未満、さらに好ましくは、0.01wt%未満である。
(金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法1:概要)
本発明に係る金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法としては、特に限定されない。金及びニッケルの化合物を熱分解する方法でも良いし、金及びニッケルのイオンを還元する方法でも良いが、金イオン及びニッケルイオンを含む流体と、還元剤を含む流体とを混合し、金ニッケル合金ナノ粒子を析出させる金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法であることが好ましい。また、金イオンを含む流体と、ニッケルイオンを含む流体と、還元剤を含む流体とを混合し、金ニッケル合金ナノ粒子を析出させる金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法であってもよい。上記還元剤を含む流体として、還元剤を少なくとも1種類含む第1還元剤流体と、第1還元剤流体に用いられた還元剤とは異なる還元剤を少なくとも1種類含む第2還元剤流体との2種類の流体を用いてもよい。
(金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法2:金イオン及びニッケルイオンを含む流体、金イオンを含む流体とニッケルイオンを含む流体)
上記金イオン及びニッケルイオンを含む流体、または金イオンを含む流体とニッケルイオンを含む流体としては、特に限定されないが、金イオン及びニッケルイオンを含む溶液、または金イオンを含む溶液とニッケルイオンを含む溶液が好ましい。作製方法としては金またはニッケルの金属単体を塩酸や硝酸、王水などに溶解する方法や、金またはニッケルの化合物を溶媒に溶解させる方法などが挙げられる。また、金単体及び/または金化合物と、ニッケル単体及び/またはニッケル化合物とを一度に溶媒に溶解して金イオン及びニッケルイオンを含む流体を作製してもよいし、金単体及び/または金化合物を溶媒に溶解した金溶液と、ニッケル単体及び/またはニッケル化合物を溶媒に溶解したニッケル溶液とを混合して金イオン及びニッケルイオンを含む流体を作製してもよい。
(化合物)
上記の金またはニッケルの化合物としては、特に限定されないが、一例として金またはニッケルの塩、酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物などが挙げられる。金またはニッケルの塩としては、特に限定されないが、硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩などが挙げられる。その他の化合物としては金またはニッケルのアルコキシドが挙げられる。
(溶媒)
上記の金単体及び/または金化合物、及び/又は、ニッケル単体及び/またはニッケル化合物を溶媒に混合、好ましくは溶解(または分子分散)して、金イオン及びニッケルイオンを含む流体、または金イオンを含む流体とニッケルイオンを含む流体を作製することができる。また、上記金単体及び/または金化合物、及び/又は、ニッケル単体及び/またはニッケル化合物は、目的によって単数、または複数を選択して実施できる。上記金単体及び/または金化合物、及び/又は、ニッケル単体及び/またはニッケル化合物を溶解させるための溶媒としては、例えば、水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。前記水としては、水道水やイオン交換水、純水や超純水、RO水などが挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などが挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、または複数以上を混合して使用しても良い。
(酸性物質及び塩基性物質)
その他、上記溶媒に塩基性物質または酸性物質を混合または溶解しても実施できる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、さらにトリエチルアミンやジエチルアミノエタノール、ジエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸が挙げられる。これらの塩基性物質または酸性物質は、上記の通り各種溶媒と混合しても実施できるし、それぞれ単独でも使用できる。
(溶媒の詳しい説明)
上記の溶媒についてさらに詳しく説明すると、アルコール化合物溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられ、さらにn−ブタノールなどの直鎖アルコール、2−ブタノール、tert−ブタノール等の分枝状アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコールや、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ヨードホルムなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF (ヘキサフルオロリン酸イオン)との塩などが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。カルボン酸化合物としては、例えば、2,2−ジクロロプロピオン酸、スクアリン酸などが挙げられる。スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
(還元剤)
上記還元剤としては、特に限定されないが、金及び/またはニッケルのイオンを還元することができる還元剤の全てが使用可能である。一例を挙げると、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなどのヒドリド系還元剤や、ホルマリンやアセトアルデヒド等のアルデヒド類、亜硫酸塩類、蟻酸、蓚酸、コハク酸、アスコルビン酸等のカルボン酸類あるいはラクトン類、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、オクタノール等の脂肪族モノアルコール類、ターピネオール等の脂環族モノアルコール類等のモノアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の脂肪族ジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル類、ジエタノールアミンやモノエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ハイドロキノン、レゾルシノール、アミノフェノール、ブドウ糖、あるいはクエン酸ナトリウム、次亜塩素酸またはその塩、遷移金属のイオン(チタンや鉄のイオンなど)や、ヒドラジン類や、トリエチルアミンやトリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、オクチルアミン、ジメチルアミノボランなどのアミン類、ピロリドン類(ポリビニルピロリドン、1−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン、メチルピロリドン)などが挙げられる。
(還元剤:ヒドラジン類)
本発明においては、上記還元剤のうちの少なくとも1種類を使用する。また、上記還元剤のうち2種類以上を使用すると、金とニッケルの還元速度、または金とニッケルの析出時間を制御できる可能性がある。上記の還元剤としては、ヒドラジン類を用いることが好ましい。ヒドラジン類としては、特に限定されないが、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジニウム、フェニルヒドラジン、1-メチル-1-フェニルヒドラジン、1,1-ジフェニルヒドラジン塩酸塩などが挙げられる。
上述の通り、還元剤を2種類以上用いることによって、金とニッケルの還元速度、または金とニッケルの析出時間を制御できる可能性がある。そのメカニズムとしては、特に限定されないが、異なる特性の金とニッケル、特に標準電極電位の異なる金とニッケル(Ni2++2e⇔Ni:−0.228E/V、Au+e⇔Au:+1.68E/Vまたは[AuCl] +3e⇔Au+4Cl:1.002E/V、または[AuCl]+e⇔Au+2Cl:1.154E/V)を、1種類の還元剤で還元させようと試みた場合には、より還元されやすい貴な金属である金が、ニッケルよりも先に還元、析出されやすく、金とニッケルが単独、または不均一な合金として析出しやすいが、還元剤を2種類以上用いることによって、ニッケルの還元、析出を早めるか、もしくは金の還元、析出を遅らせるか、もしくはその両方の効果によって、金とニッケルを同時に析出させることができるためと考えられる。
上述の通り、これらの還元剤を1種用いることもできるが、これらの還元剤から選択された少なくとも2種の還元剤を用いることが、合金を構成する金のイオンとニッケルのイオンを略同時に還元する点で有利である。
また、上記のうち、モノアルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、オクタノール、ターピネオール等)や脂肪族ジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等)、多価アルコール類(グリセリン、トリメチロールプロパン等)などは溶媒としても用いることができ、他の還元剤と併用することができる。さらにまた、上記のうち、ピロリドン類(ポリビニルピロリドン、1−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン、メチルピロリドン)や、アミン類(特にオクチルアミン)については、分散剤としての作用も果たすものであり、これらを他の還元剤と併用することができる。このように、還元剤と、他の作用を果たす還元性を有する物質とを併用して、金のイオンとニッケルのイオンを略同時に還元できるように、調製してもよい。その際、溶媒や分散剤としても作用する還元性を有する物質については、還元剤を含む流体のみならず、金イオン及びニッケルイオンを含む流体、金イオンを含む流体とニッケルイオンを含む流体に配合することもできる。
(還元剤を含む流体)
上記還元剤を含む流体は、上記の還元剤を含むものであり、上記の還元剤が液体の状態、または溶媒に混合され、溶解または分子分散された状態であることが好ましい。上記溶媒については特に限定されない。上述した溶媒を目的に応じて用いることが可能である。上記の還元剤を含む流体には、分散液やスラリーなどの状態のものも含んでも実施できる。
また、上記還元剤を含む流体としては、上述のように、2種類以上の還元剤を含む流体を用いてもよく、上記還元剤を含む流体として、還元剤を少なくとも1種類含む第1還元剤流体と、第1還元剤流体に用いられた還元剤とは異なる還元剤を少なくとも1種類含む第2還元剤流体との2種類の流体を用いてもよい。
(pH:金及びニッケルのイオンを含む流体または金イオンを含む流体とニッケルのイオンを含む流体、還元剤を含む流体、混合後の流体)
本発明における各流体のpHについては特に限定されない。目的とする金ニッケル合金ナノ粒子における金とニッケルのモル比や粒子径、または結晶性などによって適宜変更することが可能である。例えば、金及びニッケルのイオンを含む流体または金イオンを含む流体とニッケルのイオンを含む流体、及び還元剤を含む流体のpH調整については、各流体に上記の酸性物質または塩基性物質を含んでも実施できるし、用いる金またはニッケルの化合物の種類や還元剤の種類、またそれらの濃度によって変更することも可能である。さらに、上記金イオン及びニッケルイオンを含む流体または金イオンを含む流体とニッケルのイオンを含む流体と還元剤を含む流体とを混合し、金ニッケル合金ナノ粒子を析出させた後の流体のpHについても特に限定されない。
(温度)
本発明における各流体の温度については特に限定されない。本発明における各流体のpHと同様に、目的とする金ニッケルナノ合金粒子における金とニッケルのモル比や粒子径、または結晶性などによって適宜変更することが可能である。
(分散剤等)
また、本発明においては、目的や必要に応じて各種分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。分散剤の中には還元性を示すものがあり、その一例としてポリビニルピロリドンやn−オクチルアミン等が挙げられる。
上記の界面活性剤及び分散剤は、上記金イオン及びニッケルイオンを含む流体もしくは金イオンを含む流体とニッケルのイオンを含む流体、または還元剤を含む流体、またはその両方に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、金イオン及びニッケルイオンを含む流体とも金イオンを含む流体とニッケルのイオンを含む流体とも還元剤を含む流体とも異なる第3の流体に含まれていてもよい。特に分散性の向上のために、上記分散剤などは、予め上記の還元剤を含む流体、または金とニッケルのイオンを含む流体もしくは金イオンを含む流体とニッケルのイオンを含む流体の少なくとも何れか一方に導入しておくことが好ましい。
(流体処理装置)
本発明においては、上記金イオン及びニッケルイオンを含む流体と、還元剤を含む流体とを、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で混合し、金ニッケル合金ナノ粒子を析出させることが好ましく、本出願人の出願である、特許文献3、4に記載された流体処理装置を用いて混合し、金ニッケル合金ナノ粒子を析出させることが好ましい。以下、図面を用いて上記流体処理装置の実施の形態について説明する。
従来の製造方法においては、金とニッケルとの共晶体や金とニッケルとの固溶体の混合物を含んだ金ニッケル合金ナノ粒子となりやすかったが、本願においては、下記流体処理装置を用い、かつ、固相の特定領域の混合状態を得ることによって、金とニッケルとの共晶体を含まない非共晶構造を主体とする金ニッケル合金ナノ粒子、すなわち、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金ナノ粒子を得ることが可能となった。これは、金とニッケルとの還元反応を原子レベルで制御することができたため、金とニッケルとが原子の尺度で均一な混合状態を実現できたものと本発明者は考える。
しかしながら、後述する流体処理装置による金ニッケル合金ナノ粒子の作製は一例であって、金とニッケルとの還元反応を原子レベルで制御できる装置又は方法であればよい。
(装置の説明)
図1〜図3に示す流体処理装置は、特許文献3、4に記載の装置と同様であり、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
図2(A)に示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属、カーボンの他、セラミックや焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
前記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
さらに、この図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(図1においては上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし、被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1、2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、図2(B)や図3(B)に実線で示すように円形状であってもよく、図2(B)に点線で示すように、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。
円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けた場合、処理用面1,2間に導入する第2流体を同一条件で円周方向に広範囲に導入することができるため、より均一な拡散・反応・析出等の流体処理を行うことができる。微粒子を量産するには、開口部d20を円環形状とすることが好ましい。また、円環形状の開口部d20を処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状に設けなくてもよい。さらに、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
なお、処理用面1,2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
上記装置においては、析出・沈殿または結晶化のような処理が、図1に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1、2の間で強制的に均一混合しながら起こる。処理された被処理物の粒子径や単分散度は処理用部10、20の回転数や流速、処理用面1,2間の距離や、被処理流動体の原料濃度、または被処理流動体の溶媒種等を適宜調整することにより、制御することができる。
以下、上記の装置を用いて行う金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法の具体的な態様について、一例を説明する。
上記の金ニッケル合金ナノ粒子の析出反応は、本願の図1に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間で強制的に均一混合しながら起こる。
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として少なくとも金イオン及びニッケルイオンを含む流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体である第1流体膜を作る。
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として還元剤を含む流体を、上記処理用面1,2間に作られた第1流体膜に直接導入する。
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、金ニッケル合金ナノ粒子の析出反応を行う事が出来る。
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
処理用面1,2間にて上記反応を行って金ニッケル合金ナノ粒子を析出させる際に、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%となるよう、第1流体と第2流体の濃度を調整する。
金イオン及びニッケルイオンを含む流体と還元剤を含む流体とを混合して金ニッケル合金ナノ粒子を析出させる際の、金イオン及びニッケルイオンを含む流体と還元剤を含む流体のそれぞれの濃度は特に限定されず、使用する化合物などによっても異なるが、金イオン及びニッケルイオンを含む流体の金イオンの濃度は0.0001〜1.5000M(mol/L)、金イオン及びニッケルイオンを含む流体のニッケルイオンの濃度は0.0001〜1.5000M(mol/L)、還元剤を含む流体の還元剤の濃度は0.0001〜25.0000M(mol/L)の範囲であることが好ましい。
また、上記に示した装置を用いることによって、金ニッケル合金における格子欠陥の少ない緻密な結晶粒子を作製できるため、期待された特性を示す金ニッケル合金ナノ粒子を作製できることも利点である。
なお、本願の実施例それぞれの電子顕微鏡(TEM、STEM)観察において、明らかな格子欠陥は確認されなかった。
また、上記に示した装置を用いることによって、原子レベルでの均一な混合、反応が可能であることから、金ニッケル合金において、これまでは不可能であった濃度の固溶体が均一に作製できたものと考える。
前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、第1流体として金イオンを含む流体、第2流体としてニッケルイオンを含む流体、第3流体として還元剤を含む流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、金ニッケル合金ナノ粒子の析出反応をより精密に制御することができる。同じく、第1導入部d1、第2導入部d2以外に、第3導入部を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば各導入部から、第1流体として金イオン及びニッケルイオンを含む流体、第2流体として還元剤を少なくとも1種類含む第1還元剤流体、第3流体として第1還元剤流体に用いられた還元剤とは異なる還元剤を少なくとも1種類含む第2還元剤流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。なお、各導入部へ導入する被処理流動体(第1流体〜第3流体)の組み合わせは、任意に設定できる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。この場合、薄膜流体中で還元剤を含む流体と合流するまでに金イオンを含む流体とニッケルイオンを含む流体とが合流していることが望ましく、また、薄膜流体中で金イオン及びニッケルイオンを含む流体と合流するまでに第1還元剤流体と第2還元剤流体とが合流していることが望ましい。
さらに、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例において、「中央から」というのは、図1に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、第1導入部d1から導入される、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、図1に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。
(TEM−EDS分析)
TEM−EDS分析による、金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルの定量には、エネルギー分散型X線分析装置、JED−2300(JEOL製)を備えた、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いた。直径5nmのビーム径を用いて分析し、金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルとのモル比を算出した。具体的には、得られた金ニッケル合金ナノ粒子10個それぞれに図7に示す5つの分析点を設け、各分析点にて金とニッケルとのモル比を算出し、その平均値を用いた。
TEM観察、TEM−EDS分析の具体的な条件としては、室温の環境にて透過型電子顕微鏡に金ニッケル合金ナノ粒子の試料を搭載し、加速電圧200kVで金ニッケル合金ナノ粒子の試料に電子線照射を行った。その際、前記試料の温度制御を行わなかった。また、低加速電圧を用いた観察や、加速電圧200KVでの観察によって、前記電子線照射により金ニッケル合金ナノ粒子に変化が無いことを確認した。
なお、使用した透過型電子顕微鏡で金ニッケル合金ナノ粒子に照射する電子線の加速電圧は数百kV程度までの任意の設定が可能である。
(STEM−EDS分析)
STEM−EDS分析による、金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルの元素マッピング及び定量には、r−TEM EDS検出器(アメテック社製)を備えた高分解能分析電子顕微鏡、Titan80−300(FEI社製)、または、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(JEOL製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM−ARM200F(UHR)(JEOL製)を用いた。直径0.2nmのビーム径を用いて分析し、金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルとのモル比を算出した。具体的には、得られた金ニッケル合金ナノ粒子10個それぞれに図6に示す4つの分析点を設け、各分析点にて金とニッケルとのモル比を算出し、その平均値を用いた。
STEM観察、TEM観察、STEM−EDS分析の具体的な条件としては、室温の環境にて走査透過型電子顕微鏡に金ニッケル合金ナノ粒子の試料を搭載し、加速電圧200kVで金ニッケル合金ナノ粒子の試料に電子線照射を行った。その際、上記試料の温度制御を行わなかった。また、低加速電圧を用いた観察や、加速電圧200kVでの観察によって、上記電子線照射により金ニッケル合金ナノ粒子に変化が無いことを確認した。
なお、使用したこれら電子顕微鏡で金ニッケル合金ナノ粒子に照射する電子線の加速電圧は数百kV程度までの任意の設定が可能である。
(ICP分析)
誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)による、金ニッケル合金ナノ粒子中の乾燥粉体中に含まれる金とニッケルの定量には、島津製作所製のICP8100を用いた。
実施例1〜6として、中央から第1流体として金イオン及びニッケルイオンを含む流体を、供給圧力=0.50MPaGで送液しながら、第2流体として、還元剤を含む流体を処理用面1,2間に導入し、第1流体と第2流体とを薄膜流体中で混合した。第1流体並びに第2流体の送液温度は、第1流体と第2流体のそれぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前)にて測定した。金ニッケル合金ナノ粒子分散液が処理用面1,2間より吐出された。吐出された金ニッケル合金ナノ粒子分散液を遠心分離処理(20000G)し、金ニッケル合金ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後に、メタノールにて洗浄する作業を3回行い、得られたウェットケーキを25℃の条件で大気圧にて乾燥し、金ニッケル合金ナノ粒子の乾燥粉体を作製した。また、金ニッケル合金ナノ粒子の粒子径の確認は、TEM観察によって行い、その一次粒子径を判断した。TEM観察の観察条件としては、観察倍率を5万倍以上とし、3箇所の最小値と最大値とを用いた。表1に第1流体の処理条件、表2に第2流体の処理条件、及び表3に処理用面1の回転数と、STEM−EDSとTEM−EDS分析結果により得られた金ニッケル合金ナノ粒子における金とニッケルの割合(モル比)、STEM−EDSとTEM−EDS分析における、金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルとの割合が、αまたはβそれぞれの金とニッケルの割合である分析点(表3では測定点と表記)の有無、金ニッケル合金ナノ粒子の乾燥粉体を用いて行ったICP分析結果による金ニッケル合金ナノ粒子における金とニッケルの割合(モル比)と金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度(wt%)を示す。表1、2における、略記号は、EG:エチレングリコール、HAuCl・4HO:塩化金酸四水和物、NiCl・6HO:塩化ニッケル六水和物、HMH:ヒドラジン一水和物、PVP:ポロビニルピロリドン、KOH:水酸化カリウム、PW:純水である。
比較例1〜3として、第1流体と第2流体との混合を、ビーカーを用いて行った。実施例1〜3と同じ金イオン及びニッケルイオンを含む流体(実施例3と比較例3においては、用いた塩化ニッケル六水和物の濃度だけが相違する)を130℃で攪拌しながら、実施例1〜3と同じ20℃の還元剤を含む流体をビーカーに投入して両者を混合した。実施例1〜3と同様の作業にて得られた粒子を回収し、STEM−EDS分析、TEM−EDS分析、ICP分析を行った。
全ての分析点においてTEM−EDS分析及びSTEM−EDS分析をしたところ、実施例において得られた金ニッケル合金ナノ粒子が、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲(全てAu−Ni系合金平衡状態図におけるα+βの領域)の金ニッケル合金ナノ粒子であることを確認した。また、実施例において得られた金ニッケル合金ナノ粒子中の金とニッケルとの割合(モル比)が、αまたはβそれぞれの金とニッケルの割合(モル比)である分析点は検出されなかった。
図5に実施例1において得られた金ニッケル合金ナノ粒子のTEM像を、図6に実施例2において得られた金ニッケル合金ナノ粒子のSTEM像を、図7に実施例3において得られた金ニッケル合金ナノ粒子のTEM像をそれぞれ示す。また、図10に実施例1において得られた金ニッケル合金ナノ粒子の低倍率におけるTEM像を示す。図5〜7に示すように、実施例において得られた金ニッケル合金ナノ粒子において、金とニッケルとが明らかに偏析している様子は確認できなかった。
図11に実施例5において得られた金ニッケル合金ナノ粒子のSTEM−HAADF像(A)及びEDSマッピング結果((B):Au、(C):Ni)を示す。EDSマッピングを用いた分析において、金とニッケルとが一つの粒子において明らかに偏析している様子などは見られなかった。
また図6に実施例2において得られた金ニッケル合金ナノ粒子について直径0.2nmのビーム径によるSTEM-EDS分析点(4点)を示し、図8に図6に示した各分析点にて測定したEDS分析結果を示した。図8に示した分析結果より、分析点の50%以上で、STEM-EDS分析における金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出された。図8のEDS分析結果は、実施例2で作製された金ニッケル合金ナノ粒子の一例であるが、EDS分析を行った10個の金ニッケル合金ナノ粒子それぞれにおいて、分析点の50%以上で、STEM−EDS分析における金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出された。また、表3に示す他の実施例で同様のSTEM−EDS分析を行った結果、いくつかの分析点でのSTEM−EDS分析における銀と銅とのモル比の値が、各実施例のICP分析によって得られた銀と銅とのモル比の値に対して最大±30%である分析点が存在した。
また、図7には実施例3において得られた金ニッケルナノ粒子について5nmのビーム径による、TEM−EDS分析点(5点)を示し、並びに図9に図7に示した各分析点にて測定したEDS分析結果を示した。図9に示した分析結果より、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出された。図9のEDS分析結果は、実施例3で作製された金ニッケル合金ナノ粒子の一例であるが、EDS分析を行った10個の金ニッケル合金ナノ粒子それぞれにおいて、分析点の50%以上で、TEM−EDS分析における金とニッケルとのモル比が、ICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出された。また、表3に示す他の実施例で同様のTEM−EDS分析を行った結果、いくつかの分析点でのTEM−EDSにおける金とニッケルとのモル比の値が、各実施例のICP分析によって得られた金とニッケルとのモル比に対して最大±30%である点が存在した。
次に、実施例5において得られた金ニッケル合金ナノ粒子を1200万倍の倍率で観察したSTEM像を図12((A)HAADF(暗視野)像、(B)BF(明視野)像)に示す。図12(A)(B)に示されたように、金ニッケル合金ナノ粒子に格子縞が観察された。また、実施例5の金ニッケル合金ナノ粒子を6000万倍で観察したSTEM像を図13((A)HAADF(暗視野)像、(B)BF(明視野)像)に示す。図13(A)(B)、に示したSTEM像において、その格子縞がうねっている様子が確認された。金ニッケル合金ナノ粒子に関する他の実施例(実施例1〜4、及び実施例6)においても、同様の格子縞が確認された。
金とニッケルとがそれぞれ単独で結晶子を構成している場合には、それら結晶子の粒界が見られ、その粒界において不整合としてうねりが見られる場合がある。しかし、実施例5の金ニッケル合金ナノ粒子に観測されたうねりは、結晶子内において観測されたものであり、金とニッケルとが固溶体化することによって、それらの原子半径の差異により結晶格子が歪むことによるうねりと考えられる。
以上より、実施例1〜6においては、均一な金ニッケル合金ナノ粒子であって、金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金ナノ粒子、特に置換型固溶体合金粒子が作製されていることを確認した。
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部

Claims (17)

  1. 固体金ニッケル合金ナノ粒子であって、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子を、TEM-EDS分析を用いた直径5nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子のICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されるものであることを特徴とする金ニッケル合金ナノ粒子。
  2. 固体金ニッケル合金ナノ粒子であって、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子を、STEM-EDS分析を用いた直径0.2nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、分析点の50%以上で、金とニッケルとのモル比が、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子のICP分析結果によって得られた金とニッケルとのモル比の±30%以内で検出されるものであることを特徴とする金ニッケル合金ナノ粒子。
  3. 金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲である固体金ニッケル合金ナノ粒子であり、上記固体金ニッケル合金ナノ粒子が金とニッケルとがナノレベルの微細な混在状態を示す金ニッケル合金を主体とするものであることを特徴とする金ニッケル合金ナノ粒子。
  4. 上記金ニッケル合金ナノ粒子が固溶体を形成するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  5. 上記金ニッケル合金ナノ粒子は、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体中で、金イオン、ニッケルイオン及び還元性を有する物質を混合し、析出されたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  6. 上記還元性を有する物質は、少なくとも2種類の還元性を有する物質であることを特徴とする請求項5に記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  7. 上記金ニッケル合金ナノ粒子が置換型固溶体を主体とするものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  8. 上記置換型固溶体は、TEM又はSTEM像にて、結晶子内において、うねっている状態の格子縞が観測されるものであることを特徴とする請求項7に記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  9. 上記金ニッケル合金ナノ粒子は、TEM-EDS分析を用いた直径5nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、すべての分析点で、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲で金とニッケルとが共に検出されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  10. 上記金ニッケル合金ナノ粒子は、STEM-EDS分析を用いた直径0.2nmのビーム径による微小範囲分析を行った結果、すべての分析点で、金ニッケル合金に含まれるニッケルの濃度が2.0wt%から92.7wt%の範囲で金とニッケルとが共に検出されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  11. 上記金ニッケル合金ナノ粒子は、粒子径が500nm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  12. 上記金ニッケル合金ナノ粒子は、粒子径が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  13. 上記少なくとも2種類の還元性を有する物質は、還元剤、還元性を示す分散剤、還元性を示す溶媒の群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の金ニッケル合金ナノ粒子。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の金ニッケル合金ナノ粒子を生成させる方法であって、
    接近・離反可能、且つ相対的に変位する処理用面の間に被処理流動体を供給し、
    当該被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力とのバランスによって処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
    この微小間隔に維持された少なくとも2つの処理用面間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体が薄膜流体を形成し、
    この薄膜流体中において上記金ニッケル合金ナノ粒子の析出を行うことを特徴とする金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法。
  15. 被処理流動体として第1、第2の、少なくとも2種類の流体を用いるものであり、
    上記第1の流体には、金イオンとニッケルイオンとを含むものであり、
    上記第1の流体と上記第2の流体のうちの少なくとも何れか一方の流体には、還元性を有する物質を含むものであり、
    上記の被処理流動体を上記薄膜流体中で混合することを特徴とする請求項14に記載の金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法。
  16. 上記還元性を有する物質は少なくとも2種類の還元性を有する物質であり、
    少なくとも2種類の還元性を有する物質を用いることによって、金とニッケルとを同時に析出させることを特徴とする請求項15に記載の金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法。
  17. 上記少なくとも2種類の還元性物質は、還元剤、還元性を示す分散剤、還元性を示す溶媒の群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項16に記載の金ニッケル合金ナノ粒子の製造方法。
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