JP2017186191A - 酸化ニッケル粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電子部品材料として好適な塩素を代表とする不純物の品位が低くて微細な粒径を有する酸化ニッケル及びその製造方法を提供する。【解決手段】 ニッケル塩水溶液にアルカリ水溶液を加えてpH8.3〜9.0で中和する工程と、これにより生成した水酸化ニッケルを洗浄液で洗浄した後に700〜950℃の非還元性雰囲気中において熱処理する酸化ニッケル粉末の製造方法であって、該アルカリ水溶液や洗浄液にシラン及び金属アルコキシドの中のうちの少なくとも一方を添加することを特徴としており、これにより得られる酸化ニッケル粉末はシリコン、ボロン、アルミニウム、チタン及びジルコニウムからなる群のうち少なくとも1種の元素の合計の品位が100質量ppm以上3000質量ppm以下、塩素品位が100質量ppm未満、比表面積が5.5m2/g以上である。【選択図】 なし
Description
本発明は、酸化ニッケル粉末及びその製造方法に関し、特に、塩素に代表される不純物の品位が低く、シランや金属アルコキシド由来の元素を含有する電子部品材料として好適な微細な酸化ニッケル粉末及びその製造方法に関する。
酸化ニッケル粉末はフェライト部品に代表される電子部品等の様々な用途に使用されており、一般的には、原料としての硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等のニッケル塩類又はニッケルメタル粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等のような連続炉、あるいはバーナー炉のようなバッチ炉を用いて、酸化性雰囲気下で焼成することによって作製されている。
例えば、特許文献1には、硫酸ニッケルを原料としてキルンを用いて酸化雰囲気中で950℃以上1000℃未満の焙焼温度で処理する第1段焙焼と、1000〜1200℃の焙焼温度で処理する第2段焙焼とからなる酸化ニッケル粉末の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、平均粒径を制御しつつ硫黄品位を50質量ppm以下に抑えた酸化ニッケル粉末が作製できると記載されている。
また、特許文献2には、450〜600℃での仮焼により脱水を行う工程と、1000〜1200℃での焙焼により硫酸ニッケルを分解する工程とを明確に分けて酸化ニッケル粉末を製造する方法が開示されている。この製造方法によれば、硫黄品位が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できると記載されている。さらに、特許文献3には、横型回転式製造炉を用いて強制的に空気を導入しながら最高温度900〜1250℃で焙焼する方法が開示されている。この製造方法によっても、不純物が少なく、硫黄品位が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られると記載されている。また、特許文献4には、電子材料用のニッケル粉末は不純物あるいは添加物としての硫黄品位が100〜1000ppmであって比表面積が1.0〜10m2/gであることが望ましいと記載されている。
一方、湿式法での合成によって酸化ニッケル粉末を製造する方法として、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液を水酸化ナトリウム等のアルカリで中和して水酸化ニッケルを晶析させ、これを焙焼する方法も提案されている。この方法で水酸化ニッケルを焙焼する場合はSOxを含むガスが発生しないため、製造コストを抑えることができる。例えば、特許文献5には、ニッケル粉を製造する際の中間物ではあるが、水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下で加熱処理することによって、酸化ニッケル粉末を作製する技術が開示されている。
また特許文献6には、酸化ニッケルの粗大化抑制のため塩化ニッケルにマグネシウム等の第2族元素を少量添加して中和し、得られた水酸化ニッケルを所定の温度で焙焼して酸化ニッケルとした後、解砕メディアで湿式粉砕してから有機酸含有水溶液で洗浄することにより硫黄品位及び塩素品位が低く、且つ微細な酸化ニッケル粉末を得る方法が提案されている。
尚、粉体が微細であるか否か測る指標として、比表面積を用いることがある。これは、粉体の粒径(μm)は、その比表面積(m2/g)と密度(g/cm3)を用いて下記の計算式1から導き出せるからである。計算式1の関係は粒子が真球状であると仮定して導き出されたものであるため、計算式1から得られる粒径と実際の粒径との間にはいくらかの誤差を含むことになるが、比表面積が大きいほど粒径が小さくなることが分かる。
[計算式1]
粒径=6/(密度×比表面積)
粒径=6/(密度×比表面積)
酸化ニッケル粉末を例えば電子部品材料としてフェライト部品に用いるときは、酸化ニッケル粉末を酸化鉄、酸化亜鉛等の他の材料と混合してから焼結することにより複合金属酸化物を製造することが行われる。この場合、焼結現象は固相の拡散反応で律速されるので使用する原料は微細なものが一般に用いられる。これにより他材料との接触確率が高くなると共に粒子の活性が高くなるため、均一な焼結現象を低温度且つ短時間の処理で進ませることができる。すなわち、複合金属酸化物の製造においては、原料の粒径を小さくすることが効率を向上させるうえで重要な要素となる。
また、フェライト部品は近年ますます高機能化しており、加えて酸化ニッケル粉末はフェライト部品以外の例えば燃料電池電極等の電子部品に用途が広がりつつあるので、酸化ニッケル粉末に含有される不純物元素の低減や制御がより一層求められている。不純物元素の中でも特に塩素は、電極に利用されている銀、ニッケル、銅と反応して電極を劣化させたり、焼成炉を腐食させたりするため、できるだけ低減することが望ましい。さらに、酸化ニッケル粉末中のマグネシウムなどの第2族元素、硫黄、ジルコニウムなどの濃度は所定の範囲内に制御することが望ましい。
しかしながら、上記した特許文献1〜3の方法はいずれも硫黄品位を低減するために焙焼温度を高くすると粒径が粗大になり、また粒子を微細にするために焙焼温度を下げると硫黄品位が高くなるという問題があった。粗大化した酸化ニッケル粒子は、例えばジルコニアボール等のメディアにより粉砕することが考えられるが、この場合はジルコニアが不純物として許容できる範囲以上に混入する問題が生ずることがある。
特許文献4は塩素品位について規定されておらず、また、加熱する際にSOxを含むガスが発生するので、これを除害処理するために高価な設備が必要となるという問題をかかえている。特許文献5には得られた酸化ニッケル粉末に含有される塩素及び硫黄の品位、粒径等については何等記載されておらず、この製造方法によって塩素及び硫黄の品位が十分低く、且つ微細な酸化ニッケル粉末が得られたとする報告はなされていない。
特許文献6の酸化ニッケル粉末の製造方法では、粗大化抑制を企図して添加したマグネシウムが酸化ニッケル粉末に混入する問題が生ずることがあった。このような製造方法で得られた酸化ニッケル粉末は、フェライト及び燃料電池電極等の原料として用いた場合、十分な焼結性が得られない場合があり、必ずしも電子部品材料に好適なものとは言えなかった。
本発明は上述した従来の問題に鑑みてなされたものであり、電子部品の材料用として好適な、塩素を代表とする不純物の品位が低くて微細な粒径を有する酸化ニッケル及びその製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明に係る酸化ニッケル粉末は、シリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、及びジルコニウムからなる群のうち少なくとも1種の元素の合計の品位が100質量ppm以上3000質量ppm以下、塩素品位が100質量ppm未満、比表面積が5.5m2/g以上であることを特徴としている。
また本発明に係る酸化ニッケル粉末の製造方法は、ニッケル塩水溶液にアルカリ水溶液を混合することでpH8.3〜9.0で中和して水酸化ニッケルを生成する中和工程と、前記水酸化ニッケルを洗浄液で洗浄した後に700〜950℃の非還元性雰囲気中において熱処理することより酸化ニッケル粉末を得る熱処理工程とを有する酸化ニッケルの製造方法であって、前記アルカリ水溶液若しくは前記洗浄液又はそれらの両方に、[化1]で示されるシラン及び[化2]で示される金属アルコキシドの中のうちの少なくとも一方を添加することを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法。
[化1]
Rx−Si−(OR′)y
(ここで、0≦x≦2、2≦y≦4であり、及びx+y=4であって、R及びR′は各々CH3、C2H5、C3H7、及びC6H5のうちの1種以上である)
[化2]
(RO)x−M−(OR′)y
(ここで、MはB、Al、Ti及びZrのうちのいずれかであり、0≦x≦2及び2≦y≦4であり、MがTi又はZrの場合はx+y=4、MがB又はAlの場合はx+y=3であり、R及びR′は各々主に炭化水素基である)
[化1]
Rx−Si−(OR′)y
(ここで、0≦x≦2、2≦y≦4であり、及びx+y=4であって、R及びR′は各々CH3、C2H5、C3H7、及びC6H5のうちの1種以上である)
[化2]
(RO)x−M−(OR′)y
(ここで、MはB、Al、Ti及びZrのうちのいずれかであり、0≦x≦2及び2≦y≦4であり、MがTi又はZrの場合はx+y=4、MがB又はAlの場合はx+y=3であり、R及びR′は各々主に炭化水素基である)
本発明によれば、フェライト部品や燃料電池などの電子部品の用途に好適であって、塩素に代表される不純物の品位が低く且つ微細な酸化ニッケル粉末を容易に得ることができる。
以下、本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法の一具体例について説明する。この本発明の一具体例の製造方法は、ニッケル塩水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルを得る中和工程(以降、工程Aとも称する)と、得られた水酸化ニッケルを洗浄液で洗浄してからろ過により洗浄液を除去し、得られたろ過ケーキを熱処理して酸化ニッケルを得る熱処理工程(以降、工程Bとも称する)とを有している。
かかる本発明の一具体例の方法においては、工程Aで用いるアルカリ水溶液及び工程Bで用いる洗浄液のうちの少なくとも一方に対して、一般式Rx−Si−(OR′)y(0≦x≦2、2≦y≦4、及びx+y=4であって、R及びR′の各々はCH3、C2H5、C3H7及びC6H5のうちの1種以上である)で示されるシラン、及びMがB、Al、Ti及びZrのうちのいずれかの元素からなる一般式(RO)x−M−(OR′)y(0≦x≦2及び2≦y≦4であって、MがTi又はZrの場合はx+y=4、MがB又はAlの場合はx+y=3、R及びR′の各々は主に炭化水素基である)で示される金属アルコキシドのうちの少なくとも一方を用いる。
かかる本発明の一具体例の方法においては、工程Aで用いるアルカリ水溶液及び工程Bで用いる洗浄液のうちの少なくとも一方に対して、一般式Rx−Si−(OR′)y(0≦x≦2、2≦y≦4、及びx+y=4であって、R及びR′の各々はCH3、C2H5、C3H7及びC6H5のうちの1種以上である)で示されるシラン、及びMがB、Al、Ti及びZrのうちのいずれかの元素からなる一般式(RO)x−M−(OR′)y(0≦x≦2及び2≦y≦4であって、MがTi又はZrの場合はx+y=4、MがB又はAlの場合はx+y=3、R及びR′の各々は主に炭化水素基である)で示される金属アルコキシドのうちの少なくとも一方を用いる。
より具体的に説明すると、上記工程Aにおいて、シラン及び金属アルコキシドのうちの少なくとも一方をアルカリを含む水溶液中に添加することによって、アルカリとの加水分解や中和反応により、シランの場合は一般式Rx−Si−(OH)yとなり、金属アルコキシドの場合は一般式(RO)x−M−(OH)yとなり、水酸化ニッケルとともに晶析沈殿する。一方、工程Bの熱処理前の水酸化ニッケルをシラン及び金属アルコキシドのうちの少なくとも一方を含む水溶液で洗浄してこの水溶液をろ過により除去することでもSiやMを所定の濃度で水酸化ニッケルに添加することができる。
いずれの方法でもシランや金属アルコキシドの仕込み量に比例して水酸化ニッケルに含有され、工程Bにおける熱処理の際の焼結による結晶成長方向を制御し、比表面積が大きい微細な酸化ニッケル粉末を得ることができる。酸化ニッケル中でのシラン又は金属アルコキシド由来の元素の形態は明確ではないが、シランの場合はSiO2組成、金属アルコキシドの場合はオキソ酸型のMO(酸化物)組成であると推察される。
本発明の一具体例の製造方法では、上記シラン及び金属アルコキシドのうちの少なくとも一方を含む溶液を、工程Aでの中和反応時や工程Bでの洗浄ろ過時にアルカリ共存下で使用することで塩素の洗浄効果も期待できる。これにより、ニッケル塩水溶液に塩化ニッケルを用いた場合でも、塩素品位の低い酸化ニッケルを得ることができる。ここで、アルカリは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのうちの1種以上が好ましい。
微細な酸化ニッケルが得られる理由や塩素の洗浄効果が得られる明確な理由は不明であるが、アルカリ水溶液中での加温処理時に水酸化ニッケル中の結晶水が離脱するため、結晶構造が変化する際に結晶間に巻き込んだ塩素を放出すると考えられる。一方、アルカリ中でシランが加水分解や中和反応して生成したRx−Si−(OH)yや金属アルコキシドが加水分解や中和反応して生成した(RO)x−M−(OH)yは、水酸化ニッケル(錯体)に対しでcis構造体として結合し、熱処理において酸化ニッケルの焼成でC軸方向の結晶粗大粒化を阻害していると推測される。
上記した本発明の一具体例の製造方法をで作製される酸化ニッケル粉末は、シランや金属アルコキシドから由来した、シリコン(Si)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)のうちの1種類以上の元素を合計で100質量ppm以上3000質量ppm以下の範囲内で含有している。酸化ニッケル粉末に含有されるシラン又は金属アルコキシド由来のSiやMの合計の品位が100質量ppm未満では工程Bにおける結晶成長方向を十分に制御できず、また塩素品位を十分に低下できないことがある。一方、3000質量ppmを超えると工程Aにおいて中和晶析した水酸化ニッケルが凝集することがあり、工程Bの熱処理後に焼結が進んで解砕が困難となり、微細な酸化ニッケル粉末を得にくくなる。さらに電子材料や燃料電池電極などに用いた時にそれらの特性を損なう場合があるため好ましくない。上記の品位が300質量ppm以上3000質量ppm以下の範囲であれば上記した効果が顕著になるので好ましい。
上記した塩素の低減効果や、熱処理における酸化ニッケルの結晶粗大化の抑制効果を有するシラン化合物類は、一般式Rx−Si−(OR′)y(0≦x≦2、2≦y≦4、及びx+y=4であって、R及びR′は各々CH3、C2H5、C3H7、及びC6H5のうちの1種以上である)の構造で示される化合物であり、そのアルカリとの加水分解や中和反応により生成する塩などの形態でも良い。例えば、メチルトリメトキシシラン(x=1、y=3、R及びR′が共にCH3)や、R及びR′の各々がCH3、C2H5、C3H7、及びC6H5のうちの1種以上で構成される、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等又はそれらの混合物を挙げることができる。
一方、金属アルコキシド化合物類は、MがB、Al、Ti及びZrのいずれかの元素からなる一般式(RO)x−M−(OR′)y(0≦x≦2及び2≦y≦4であって、MがTi又はZrの場合はx+y=4、MがB又はAlの場合はx+y=3であり、R及びR′は各々主に炭化水素基である)で示される化合物であり、そのアルカリとの加水分解や中和反応により生成する塩などの形態でも良い。例えば、R、R′の炭化水素基としてメチルアルコキシド(x=1、y=3、R及びR′が共にCH3)や、R及びR′の各々がCH3、C2H5、C3H7、C6H5のいずれか1つ以上の組み合わせで構成される、イソプロピルアルコキシド、ノルマルブチルアルコキシド、ステアリルアルコキシド、ノルマルオクチルアルコキシド、さらにRO型としてオクチルグリコキシド、アセトアルコキシド、エチルアセトアルコキシド、エタノールアミネトキシド等又はそれらの混合物を挙げることができる。さらにR及びR′は、酸素(O)、窒素(N)、塩素(Cl)、硫黄(S)、リン(P)など、いわゆるヘテロ原子が含まれる官能基としてもよい。
尚、工程Aにおいて上記したシランや金属アルコキシドを含むアルカリ水溶液でニッケル塩水溶液を中和して水酸化ニッケルを晶析沈殿させる処理と、工程Bにおいて純水又はアルカリ水溶液中に上記したシランや金属アルコキシドを添加した洗浄液で洗浄ろ過する処理では、酸化ニッケルの粗大化を抑制するために従来用いられていたマグネシウム等の第2族元素を添加しないため、第2族元素を含まない微細酸化ニッケルを得ることが可能となる。
本発明の一具体例の製造方法においては、得られた酸化ニッケル粉末のD90値(粒度分布曲線における粒子量の積算90%での粒径)を1μm以下にすることができる。本発明の一具体例の製造方法ではB工程の後に解砕工程を追加することもできるが、この場合は解砕メディアを用いることなく解砕することが好ましい。その理由はボールミルやビーズミルなどの解砕メディアを用いた解砕では、ジルコニア等の解砕メディアの成分が不純物として3000質量ppmを超えて混入する恐れがあるからである。同様の理由からイットリア安定化ジルコニアも使用しないことが望ましい。
不純物としてジルコニウムのみを考慮すれば良いのであれば、ジルコニウムを含有しない解砕メディアを用いて解砕することで対処することができるが、この場合であっても例えばシリカ、アルミナ、鉄、クロム、モリブデンなどのジルコニア以外の不純物が解砕メディアから混入し、不純物品位の低い酸化ニッケル粉末を得るのが困難になるので好ましくない。また、解砕用として十分な強度を有する解砕メディアの多くは材質がイットリア安定化ジルコニアであり、その他の解砕メディアでは強度や耐摩耗性が十分でなく、この観点からも解砕メディアを用いることなく解砕を行う方法が望ましい。
本発明の一具体例の製造方法においては、熱処理によって得られる酸化ニッケルの粒子が十分に微細で、さらにその粒子間における焼結の程度が小さいため、大きな解砕力を加えることなく十分に微細な酸化ニッケル粉末を得ることができる。解砕メディアを用いずに解砕を行う方法としては、粉体同士を衝突させる方法や、液体などの媒体により粉体にせん断力をかける方法等がある。前者を用いた解砕装置としては、例えば、ジェットミル、アルティマイザー(登録商標)等が挙げられる。後者を用いた解砕装置としては、例えば、ナノマイザー(登録商標)等が挙げられる。上記解砕方法のうち、粉体同士を衝突させる方法が特に好ましい。なぜなら、不純物混入のおそれが少なく比較的大きな解砕力が得られるからである。このように解砕メディアを用いることなく解砕を行うことにより、解砕メディアからの不純物、特にジルコニウムの品位が制御された微細な酸化ニッケルを得ることができる。
次に、本発明の酸化ニッケルの製造方法を工程順に詳細に説明する。先ず、工程Aにおいて、原料としてのニッケル塩水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成する。この中和反応の具体的な方法や装置等については特に制約がなく、公知の技術を適用することができる。また、中和時の液温は通常の条件で特に問題なく、常温で行うことも可能であるが、水酸化ニッケル粒子を十分に成長させるために50〜70℃とすることが好ましい。
原料のニッケル塩水溶液ついても特に限定はなく、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルなどを使用することができる。ニッケル塩水溶液の濃度は、特に限定するものではないが生産性を考慮するとニッケル濃度で50〜130g/Lが好ましい。この濃度が50g/L未満では生産性が悪くなるおそれがあり、逆に130g/Lを超えると中和晶析した水酸化ニッケルが凝集しやすくなるため、工程Bで焼結が進み解砕が必要になる場合がある。ニッケル塩水溶液に塩化ニッケルを用いる場合には水溶液中の塩素濃度が高くなり、生成した水酸化ニッケル中の塩素品位が高くなるため、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中の塩素品位が十分に低くするため洗浄回数を増やすなどの対応が必要になる。
上記中和に用いるアルカリも特に限定はないが、反応液中に残留するニッケルの量を考慮すると水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが好ましく、これらの中では水酸化ナトリウムがコストの点において好ましい。アルカリは固体又は液体のいずれの形態で塩化ニッケル水溶液に添加してもよいが、取扱いの容易さを考慮すると水溶液の形態が好ましい。品質にばらつきの少ない水酸化ニッケルを得るためには十分に撹拌されている反応槽内にニッケル化合物、好ましくは塩化ニッケル及び硫酸ニッケルのうちの1種以上の水溶液とアルカリ水溶液とをダブルジェット方式で添加することが有効である。その際、反応槽内に予め入れておく液は純水にアルカリを添加し所定のpHに調整しておくことが好ましい。
中和反応時はpHを8.3〜9.0とする必要があり、このpH値が一定に維持されるのが好ましい。pHが8.3未満では水酸化ニッケルが晶析しにくく、ゲル状物となってろ過が困難になるため収率が低下する。さらに最終的に得られる酸化ニッケル粉末中の塩素品位を十分に低減させることが困難になる。一方、pHが9.0を超えると得られる水酸化ニッケルが微細になりすぎ、この場合もろ過が困難になる。また、工程Bの後半で行われる熱処理において焼結が進みすぎ、微細な酸化ニッケルを得ることが困難になる。本発明の中和条件であるpH9.0以下では水溶液中に僅かにニッケル成分が残存することがあるが、この場合は中和晶析後、pHを10程度まで上げ、ろ液中のニッケルを低減させることが好ましい。
次に、工程Bにおいて、上記工程Aで得た水酸化ニッケルを洗浄液で洗浄してから該洗浄液をろ過に代表される固液分離手段で除去し、得られた湿潤ケーキ状の固形分を熱処理して酸化ニッケルを得る。水酸化ニッケルをアルカリ水溶液又は純水により洗浄ろ過を行う場合は、ろ過ケーキの含水率は10〜40質量%であることが好ましく、30質量%程度にすることが特に好ましい。この洗浄ろ過工程ではさらにシラン及び金属アルコキシドの少なくとも一方を含んだアルカリ水溶液で洗浄及び固形分離する工程を追加することで、所定量のシリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、及びジルコニウムのうちの1種以上の元素を含みながら塩素に代表される不純物が除去若しくは低減された水酸化ニッケルを得ることができる。
ろ過ケーキは上記したように10〜40質量%、好ましくは30質量%程度の含水率に整える。この含水率が10質量%よりも低い場合、ろ過ケーキをレパルプする時に均一に処理液中に分散しにくくなるため、洗浄時に後述するように加温する場合はその効率が悪くなるうえ、ろ過ケーキの含水率を下げるため脱水処理の条件を高める必要が生じるため好ましくない。一方、含水率が40質量%よりも高い場合には、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪くなって均一な処理を妨げるおそれがあるうえ、所定量の水酸化ニッケルを得るために必要な機器等のサイズが大きくなってしまう。
尚、洗浄ろ過は通常の条件で特に問題はなく、常温で行うことも可能であるが塩素などの不純物を短時間で除去するには加温するのが好ましく、例えば液温を常温から40℃とするのが好ましい。加温するために用いる装置には特に限定はなく、加温可能な設備を備えた通常の湿式反応槽を用いることができる。洗浄中は水酸化ニッケルを含むスラリーを撹拌することが好ましく、例えば、超音波撹拌や機械式撹拌を用いることができる。
シランや金属アルコキシドを添加して洗浄ろ過する溶液としてはアルカリ水溶液が好ましく、特にニッケルに残留する不純物を考慮すると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましく、これらの中ではコストの観点から水酸化ナトリウムが好ましい。このアルカリ水溶液にシラン及び金属アルコキシドのうちの少なくとも一方を添加することより、工程Bの後半で行われる熱処理によって得られる酸化ニッケルが微細化されると共に含有する塩素品位を低減することができる。尚、工程Bの加温処理したアルカリ水溶液で洗浄ろ過を行った後は、不純物低減のため水洗することが好ましい。
水酸化ニッケルに対する洗浄処理液の量には特に限定はなく、残留塩素に代表される不純物が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケルを良好に分散させるためには、水酸化ニッケル/洗浄処理液の混合比を100g/L程度とすることが好ましい。また、処理時間についても特に限定されるものではなく、処理条件により残留塩素や他の不純物濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。残留塩素や他の不純物が十分に低減できる処理条件とすることにより、酸化ニッケルの微細化効果も十分に得られる。
この水酸化ニッケルから酸化ニッケルに変える熱処理は、非還元性雰囲気中において好ましくは700℃以上950℃以下の熱処理温度で行う。熱処理温度は750℃以上900℃以下がより好ましく、800℃以上900℃以下が最も好ましい。尚、熱処理には、一般的な焙焼炉を使用することができる。この熱処理により水酸化ニッケル結晶内の水酸基が脱離して酸化ニッケルとなるが、その際、粒径の微細化とろ過洗浄後に残存した塩素や他の不純物の多くの部分を揮発させることができる。
上記熱処理温度が700℃未満では残存塩素や他の不純物の揮発が不十分になって酸化ニッケル中の塩素や他の不純物品位を十分に低くすることができなくなるおそれがある。また、水酸化ニッケルの一次粒子は板状であり、酸化ニッケルの生成にともない一次粒子が球状化するが、この球状化が進まず、酸化ニッケルの十分な微細化が起こりにくくなる。一方、950℃を超えると酸化ニッケル粒子同士の焼結が顕著になり、比表面積が小さくなったり、機械的な粉砕が必要になったりし、さらには機械的粉砕でも必要な比表面積を得ることが困難になる。
熱処理の雰囲気は、非還元性雰囲気であれば特に限定されないが、経済性を考慮して大気雰囲気とすることが好ましい。また、熱処理の際に水酸基の脱離により発生する水蒸気を排出するため、十分な流速をもった気流中で行うことが好ましい。熱処理時間は、処理温度及び処理量に応じて適宜設定することができるが、最終的に得られる酸化ニッケル粉末の比表面積が5.5m2/g以上となるように設定すればよい。最終的に解砕して得られる酸化ニッケル粉末の比表面積は、熱処理後の酸化ニッケルの比表面積に対して約0.5m2/g増加する程度であるため、熱処理後の酸化ニッケルの比表面積で判断して処理条件を設定することができる。
上記工程Bで得られた酸化ニッケルを機械的に解砕する工程を追加することもできる。得られる比表面積は上述のとおり0.5m2/g程度と小さいが、凝集をほぐし、電子材料として均一なフェライト材料や燃料電池電極を製造する際により均一な組成にすることが期待できる。工程Bにおいては、水酸化ニッケル結晶中の水酸基が離脱して酸化ニッケルとなるが、この時、シランや金属アルコキシドから加水分解・中和反応で生成したシラノール基や水酸基をもつボロン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム化合物とニッケル錯体はcis型に結合し粒径の微細化を促進すると推定される。しかしながら、それでも高温熱処理の場合は酸化ニッケル粒子同士の焼結が進行する場合がある。そこで、この焼結部を破壊して酸化ニッケル粉末を細かくすることも有効である。
一般的な解砕方法としては、ビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いたものやジェットミル等の解砕メディアを用いないものがあるが、前述したように、解砕メディアを用いることなく解砕を行うことが好ましい。解砕条件には、特に限定がなく、通常の条件の範囲内での調整により容易に目的とする粒度分布の酸化ニッケル粉末を得ることができる。これにより、フェライト部品や燃料電池電極などの電子部品材料として好適な分散性に優れた酸化ニッケル粉末を得ることができる。
以上の方法により製造される本発明の酸化ニッケル粉末は、塩素や他の不純物品位が低く、シラン、金属アルコキシド由来のシリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、ジルコニウムのうち、1種類以上の元素を所定量含有し、比表面積も大きく、一方でシラン、金属アルコキシド由来の金属元素含有率が所定の限度以内であることから電子部品用の材料として好適である。具体的には、残留塩素品位は100質量ppm以下であり、シランや金属アルコキシド由来の元素は100〜3000質量ppmであり、比表面積は5.5m2/g以上である酸化ニッケル粉末であることが好ましい。
本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法においては、マグネシウム等の第2族元素を添加する工程を含まないので、これらの元素が不純物として含まれることは実質的にない。さらに解砕メディアを用いることなく解砕を行う場合が望ましく、ジルコニアも所定範囲内で含まれるように制御できる。以上から、第2族元素品位を実質的に30質量ppm以下にすることができる。
また、本発明の酸化ニッケル組成物は、レーザー散乱法で測定したD90が1μm以下であることが好ましい。尚、レーザー散乱法で測定したD90は電子部品等の製造時に他の材料と混合される時に解砕されて小さくなるが、この解砕によって比表面積が大きくなる可能性は低いため、酸化ニッケル粉末自体の比表面積が大きいことが重要である。
さらに、本発明による酸化ニッケル粉末の製造方法においては、湿式法により製造した水酸化ニッケルを熱処理するため、硫酸ニッケル原料を使用した場合でもそのほとんどが酸化ニッケルには残留せず、最大300質量ppmの硫黄を含むだけであり、有害なSOxがほとんど発生せず、従って、これを除害処理するための高価な設備も不要であることから、その製造コストも低く抑えることができる。
[実施例1]
3Lのビーカーに純水と水酸化ナトリウムからなるpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mLを準備した。この水溶液にニッケルに対してシリコン品位1500質量ppmとなるように、先ずテトラエトキシシラン(TEOS;Si(OC2H5)4)を添加し、次いでニッケル濃度120g/Lの塩化ニッケル水溶液と12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とをpH8.5となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。この際、塩化ニッケル水溶液は6mL/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、混合は攪拌羽で200rpmとした。1Lの塩化ニッケル水溶液を添加した後、3時間ほど攪拌を続けながら熟成させた。(工程A)
3Lのビーカーに純水と水酸化ナトリウムからなるpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mLを準備した。この水溶液にニッケルに対してシリコン品位1500質量ppmとなるように、先ずテトラエトキシシラン(TEOS;Si(OC2H5)4)を添加し、次いでニッケル濃度120g/Lの塩化ニッケル水溶液と12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とをpH8.5となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。この際、塩化ニッケル水溶液は6mL/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、混合は攪拌羽で200rpmとした。1Lの塩化ニッケル水溶液を添加した後、3時間ほど攪拌を続けながら熟成させた。(工程A)
その後、ろ過と30分の純水レパルプ洗浄を4回繰り返して、水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。このろ過ケーキを、送風乾燥機を用いて大気中にて110℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケルを得た。得られた水酸化ニッケル10gを大気焼成炉に供給して、800℃で3時間熱処理して酸化ニッケルを得た(工程B)。
次に、得られた酸化ニッケルを、ジェットミルで解砕して微細な酸化ニッケル粉末を得た。
次に、得られた酸化ニッケルを、ジェットミルで解砕して微細な酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例2]
上記実施例1と同様の工程Aで得た水酸化ニッケルを含む水溶液に対して、工程Bとして4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄にはシリコンをニッケルに対して1600質量ppm含むように調製したTEOS水溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で洗浄ろ過し、水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。以降は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
上記実施例1と同様の工程Aで得た水酸化ニッケルを含む水溶液に対して、工程Bとして4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄にはシリコンをニッケルに対して1600質量ppm含むように調製したTEOS水溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で洗浄ろ過し、水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。以降は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例3]
TEOSを添加せずに水酸化ナトリウム水溶液単独で中和した以外は上記実施例1の場合と同様にして得た水酸化ニッケルを含む水溶液に対して、工程Bにおいて、4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄をシリコン500質量ppm含むように調製したTEOS水溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で洗浄ろ過し、水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。以降は実施例2と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TEOSを添加せずに水酸化ナトリウム水溶液単独で中和した以外は上記実施例1の場合と同様にして得た水酸化ニッケルを含む水溶液に対して、工程Bにおいて、4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄をシリコン500質量ppm含むように調製したTEOS水溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で洗浄ろ過し、水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。以降は実施例2と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例4]
TEOSに代えてメチルトリメトキシシランを用いたことと、800℃に代えて700℃で熱処理したこと以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TEOSに代えてメチルトリメトキシシランを用いたことと、800℃に代えて700℃で熱処理したこと以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例5]
800℃に代えて950℃で熱処理した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
800℃に代えて950℃で熱処理した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例6]
水酸化ナトリウムでpH8.5で調整したことに代えて水酸化カリウムでpH9.0に調整し、さらに水酸化ナトリウムでpH9.0に維持しながら中和晶析した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末とした。
水酸化ナトリウムでpH8.5で調整したことに代えて水酸化カリウムでpH9.0に調整し、さらに水酸化ナトリウムでpH9.0に維持しながら中和晶析した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末とした。
[実施例7]
120g/Lの塩化ニッケル溶液に代えて80g/Lの硫酸ニッケル溶液を用いた以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
120g/Lの塩化ニッケル溶液に代えて80g/Lの硫酸ニッケル溶液を用いた以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例8]
TEOSに代えて、ニッケルに対してボロン品位1000質量ppmとなるようにトリ(イソプロポキシ)ボロン(TPB;一般式(RO)x−M−(OR′)yにおいてx=0、y=3、R′=iso−C3H8;B(O−iso−C3H8)3)を添加した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TEOSに代えて、ニッケルに対してボロン品位1000質量ppmとなるようにトリ(イソプロポキシ)ボロン(TPB;一般式(RO)x−M−(OR′)yにおいてx=0、y=3、R′=iso−C3H8;B(O−iso−C3H8)3)を添加した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例9]
4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄にはニッケルに対してボロン品位700質量ppm含むように調製したTPB溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で洗浄ろ過した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄にはニッケルに対してボロン品位700質量ppm含むように調製したTPB溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で洗浄ろ過した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例10]
TPBを添加せずに水酸化ナトリウム水溶液単独で中和したことと、4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄をボロン2000質量ppm含むように調整したTPB溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で行ったこと以外は実施例9と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TPBを添加せずに水酸化ナトリウム水溶液単独で中和したことと、4回繰り返したろ過と30分の純水レパルプ洗浄のうち、3回目のレパルプ洗浄をボロン2000質量ppm含むように調整したTPB溶液(pH=9.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整)で行ったこと以外は実施例9と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例11]
TPBに代えてチタンテトライソプロポキシド(金属アルコキシドの一般式に対してx=0、y=4、R′=iso−C3H8)をニッケルに対してチタン品位1000質量ppmとなるように添加したことと、800℃に代えて700℃で熱処理した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TPBに代えてチタンテトライソプロポキシド(金属アルコキシドの一般式に対してx=0、y=4、R′=iso−C3H8)をニッケルに対してチタン品位1000質量ppmとなるように添加したことと、800℃に代えて700℃で熱処理した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例12]
800℃に代えて950℃で熱処理した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
800℃に代えて950℃で熱処理した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例13]
水酸化ナトリウムをpH8.5で調整したことに代えて水酸化カリウムを用いてpH9.0に調整し、さらに水酸化ナトリウムでpH9.0に維持しながら中和晶析を行った以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
水酸化ナトリウムをpH8.5で調整したことに代えて水酸化カリウムを用いてpH9.0に調整し、さらに水酸化ナトリウムでpH9.0に維持しながら中和晶析を行った以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例14]
120g/Lの塩化ニッケル溶液に代えて80g/Lの硫酸ニッケル溶液を用いた以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
120g/Lの塩化ニッケル溶液に代えて80g/Lの硫酸ニッケル溶液を用いた以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例15]
TPBに代えてアセチルアセトナートアルミニウムジイソプロポキシド(金属アルコキシドの一般式に対してx=1、y=2、R=アセチルアセトナート、R′=iso−C3H8)をニッケルに対してアルミニウム品位が1000質量ppmとなるように添加した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TPBに代えてアセチルアセトナートアルミニウムジイソプロポキシド(金属アルコキシドの一般式に対してx=1、y=2、R=アセチルアセトナート、R′=iso−C3H8)をニッケルに対してアルミニウム品位が1000質量ppmとなるように添加した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例16]
TPBに代えてエチルアセチルアセトナートジルコニウムトリイソプロポキシド(金属アルコキシドの一般式に対してx=1、y=3、R=エチルアセチルアセトナート、R′=iso−C3H8)をニッケルに対してジルコニウム品位が1000質量ppmとなるように添加した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TPBに代えてエチルアセチルアセトナートジルコニウムトリイソプロポキシド(金属アルコキシドの一般式に対してx=1、y=3、R=エチルアセチルアセトナート、R′=iso−C3H8)をニッケルに対してジルコニウム品位が1000質量ppmとなるように添加した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例1]
TEOSを添加せずに水酸化ナトリウム水溶液単独で中和した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
TEOSを添加せずに水酸化ナトリウム水溶液単独で中和した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例2]
TEOSをニッケルに対してシリコン品位が4000質量ppmとなるように添加した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。その際、工程Aで得られた水酸化ニッケルに凝集が見られた。
TEOSをニッケルに対してシリコン品位が4000質量ppmとなるように添加した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。その際、工程Aで得られた水酸化ニッケルに凝集が見られた。
[比較例3]
金属アルコキシドとしてTPBをニッケルに対してボロン品位が5000質量ppmを添加した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。その際、工程Aで得られた水酸化ニッケルに凝集が見られた。
金属アルコキシドとしてTPBをニッケルに対してボロン品位が5000質量ppmを添加した以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。その際、工程Aで得られた水酸化ニッケルに凝集が見られた。
[比較例4]
熱処理温度を600℃とした以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
熱処理温度を600℃とした以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例5]
熱処理温度を980℃とした以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
熱処理温度を980℃とした以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例6]
熱処理温度を600℃とした以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
熱処理温度を600℃とした以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例7]
熱処理温度を1000℃とした以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
熱処理温度を1000℃とした以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例8]
中和時のpHを8.0とした以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末の作製を試みたが、ほとんど晶析できなかった。また、ゲル状でろ過が困難であったため、元素品位、比表面積、D90値の測定は行わなかった。
中和時のpHを8.0とした以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末の作製を試みたが、ほとんど晶析できなかった。また、ゲル状でろ過が困難であったため、元素品位、比表面積、D90値の測定は行わなかった。
[比較例9]
中和時のpHを8.0とした以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末の作製を試みたが、ほとんど晶析できなかった。また、ゲル状でろ過が困難となり、極めて収率が悪くなった。僅かに得られた水酸化ニッケルを実施例8と同様の工程Bの条件で酸化ニッケル粉末を得た。
中和時のpHを8.0とした以外は実施例8と同様にして酸化ニッケル粉末の作製を試みたが、ほとんど晶析できなかった。また、ゲル状でろ過が困難となり、極めて収率が悪くなった。僅かに得られた水酸化ニッケルを実施例8と同様の工程Bの条件で酸化ニッケル粉末を得た。
[比較例10]
硫酸ニッケル80g/Lとした以外は比較例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
硫酸ニッケル80g/Lとした以外は比較例1と同様にして酸化ニッケル粉末を得た。
上記した実施例1〜16及び比較例1〜10について、工程Aのアルカリ水溶液の種類及びpH、添加したシラン、金属アルコキシドの種類及びニッケルに対するシリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、ジルコニウムの品位、原料ニッケル塩及び濃度、また、工程Bの添加したシラン、金属アルコキシドの種類及びニッケルに対するシリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、ジルコニウムの各品位、焙焼温度について下記表1に示す。
実施例及び比較例で得られた酸化ニッケル粉末の塩素品位の分析は、酸化ニッケル粉末を塩素の揮発を抑制できる密閉容器内にてマイクロ波照射下で硝酸に溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製 Magix)を用いて検量線法で評価することによって行った。同様に硫黄、ボロン、アルミニウム、チタン、ジルコニウムも適切な方法により元素濃度も分析した。酸化ニッケル粉末の粒径はレーザー散乱法により測定し、その粒度分布から積算90%での粒径D90を求めた。また、比表面積の分析は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。得られた酸化ニッケル粉末が含有するシラン、金属アルコキシド由来の元素及び品位、比表面積、塩素品位とD90を下記の表2にまとめて示す。
上記の結果から分かるように、全ての実施例において、塩素品位は100質量ppm以下、硫黄品位は300質量ppm以下となっている。また含有元素はシラン、金属アルコキシド由来で100〜3000質量ppmの範囲にあり、さらに比表面積が5.5m2/g以上と非常に大きく、D90値は1μm以下となっており、微細な酸化ニッケル粉末が得られていることが分かる。
一方、比較例1〜10では、何らかの指標において目的の酸化ニッケル粉末が得られないことが分かった。特にシラン、金属アルコキシドを中和時に添加又は洗浄に使用しない場合は、比表面積が4〜5m2/g程度と高い比表面積は得られず、シラン、金属アルコキシドのニッケルに対するシリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、ジルコニウムの各品位を高濃度で中和時に添加すると水酸化ニッケルの凝集が見られ、工程Bにより得られた酸化ニッケル粉末のD90値は高いなど、実施例と比較すると目的の酸化ニッケル粉末は得られないことが分かる。また比較例の多くは塩素品位が90〜270質量ppmと実施例より高くなる傾向にあることが分かる。
Claims (10)
- シリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、及びジルコニウムからなる群のうち少なくとも1種の元素の合計の品位が100質量ppm以上3000質量ppm以下、塩素品位が100質量ppm未満、比表面積が5.5m2/g以上であることを特徴とする酸化ニッケル粉末。
- シリコン、ボロン、アルミニウム、チタン、及びジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種の元素の合計の品位が300質量ppm以上3000質量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化ニッケル粉末。
- レーザー散乱法で測定したD90が1μm以下であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の酸化ニッケル粉末。
- 硫黄品位が300質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化ニッケル粉末。
- ニッケル塩水溶液にアルカリ水溶液を混合することでpH8.3〜9.0で中和して水酸化ニッケルを生成する中和工程と、前記水酸化ニッケルを洗浄液で洗浄した後に700〜950℃の非還元性雰囲気中において熱処理することより酸化ニッケル粉末を得る熱処理工程とを有する酸化ニッケルの製造方法であって、
前記アルカリ水溶液若しくは前記洗浄液又はそれらの両方に、[化1]で示されるシラン及び[化2]で示される金属アルコキシドの中のうちの少なくとも一方を添加することを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法。
[化1]
Rx−Si−(OR′)y
(ここで、0≦x≦2、2≦y≦4、及びx+y=4であって、R及びR′は各々CH3、C2H5、C3H7、及びC6H5のうちの1種以上である)
[化2]
(RO)x−M−(OR′)y
(ここで、MはB、Al、Ti及びZrのうちのいずれかであり、0≦x≦2及び2≦y≦4であり、MがTi又はZrの場合はx+y=4、MがB又はAlの場合はx+y=3であり、R及びR′は各々主に炭化水素基である) - 前記洗浄液に前記シラン及び前記金属アルコキシドのうちの少なくとも一方を添加する場合は、前記洗浄液はアルカリ水溶液であることを特徴とする、請求項5に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 前記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム水溶液のうちの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法
- 前記非還元性雰囲気中が大気中であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 前記ニッケル塩水溶液のニッケル濃度が50〜130g/Lであることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
- 前記熱処理工程の後に解砕メディアを用いないで解砕を行う解砕工程を有することを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
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