JP2017185534A - アルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法 - Google Patents

アルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法 Download PDF

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【課題】難易度の高いアルミニウム樹脂複合積層板の三次元形状を円滑に成形でき、割れやしわ等の外観不良を防止できるアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法を提供する。【解決手段】発泡倍率1.5倍以上10倍以下の発泡合成樹脂層13の両面にアルミニウム板材11,12が積層されてなるアルミニウム樹脂複合積層板からなるブランク材10の外周部を、ブランクホルダー30とダイ20との間に挟持してしわ押さえ力Fを付与した状態でブランク材10を移動させて、ダイ20とパンチ40との間で絞り成形を行うアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法であって、ブランク材10の成形開始前に、ブランク材10を、発泡合成樹脂層13の荷重たわみ温度よりも高い温度で加熱するとともに、しわ押さえ力Fを発泡合成樹脂層13に変形を生じさせない範囲の低圧に保持することにより、ブランク材10を平坦化する第一工程を有する。【選択図】 図2

Description

本発明は、アルミニウム板と発泡合成樹脂層とを積層してなるアルミニウム樹脂複合積層板を所望の形状に成形するための三次元成形方法に関する。
近年の車両の軽量化に伴い、車体や車両部品に用いられる一部の鋼材料をアルミニウム材料や樹脂材料とすることが検討されている。また、これらの部品に、制振性、遮音性、断熱性等を付与するために、二枚のアルミニウム板の間に発泡合成樹脂層を挟んで積層したアルミニウム樹脂複合積層板を用いることが提案されている。
例えば、特許文献1には、二枚のアルミニウム合金板の間に発泡性樹脂層が設けられた積層板が開示されている。また、特許文献2には、特許文献1で挙げられた積層板をヒートインシュレータなど、三次元形状で、かつ熱線遮蔽性に優れた軽量な熱線遮蔽カバーに適用した例が開示されている。さらに、特許文献2には、積層板に対する成形加工の方法としては、張出成形、絞り成形、曲げ成形等のプレス成形や曲げ加工が可能であり、成形加工の後に加熱して樹脂層を発泡させることが記載されている。
また、特許文献3には、熱可塑性樹脂層とアルミニウム材とが積層され、そのアルミニウム材の表層において、表面側に小径が形成された多孔性アルミニウム酸化被膜層が設けられ、素地側にバリア型アルミニウム酸化被膜層が設けられ、アルミニウム材と熱可塑性発泡樹脂層との接合部に、熱可塑性発泡樹脂層と同一成分の非発泡樹脂層が、多孔性アルミニウム酸化被膜層上に、かつその表面から小孔内部に向かって形成されたアルミニウム材/熱可塑性発泡樹脂層の複合材が開示されている。特許文献3には、このような構成とすることにより、密着性と成形性に優れる複合材になると記載されている。
国際公開第2010/029955号公報 国際公開第2010/029946号公報 特開2012‐25145号公報 特開2013‐116475号公報 特開2014‐18854号公報
ところで、例えば特許文献4又は5に開示されているように、従来から金属単体で形成された金属板を成形する際に、しわや割れ等の発生を防止し、さらには成形後のスプリングバックを低減させるための成形方法が提案されている。ところが、特許文献4又は5と同様の方法により特許文献1〜3に記載されるような複合積層板を成形した場合では、二次元形状あるいは若干の深さの三次元形状の製品にプレス成形する場合は有用であるが、より深く複雑な形状に成形すると、アルミニウム板材の表面に微細な凹凸を含む肌荒れやしわ、割れ等の発生を防止することができず、外観不良を引きおこすことが問題となっている。特に、車両の外板に用いられる複合板の場合は、肌荒れ等のない良好な表面を有することが求められ、さらなる改善が望まれている。なお、特許文献1又は2に記載されるように、成形後に芯材樹脂を発泡させることによって成形性を確保しようとする試みもあるが、成形後の樹脂発泡において寸法の変化や歪みが生じ易く、他部品との組立時の障害になるおそれが高い。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、難易度の高い三次元形状を円滑に成形でき、割れやしわ等の外観不良を防止できるアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法を提供することを目的とする。
本発明は、発泡倍率1.5倍以上10倍以下の発泡合成樹脂層の両面にアルミニウム板材が積層されてなるアルミニウム樹脂複合積層板からなるブランク材の外周部を、ブランクホルダー(しわ押さえ)とダイとの間に挟持してしわ押さえ力を付与した状態で前記ブランク材を移動させて、前記ダイとパンチとの間で絞り成形を行うアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法であって、前記ブランク材の成形開始前に、前記ブランク材を、前記発泡合成樹脂層の荷重たわみ温度よりも高い温度で加熱するとともに、前記しわ押さえ力を前記発泡合成樹脂層に変形を生じさせない範囲の低圧に保持することにより、前記ブランク材を平坦化する第一工程を有することを特徴とする。
アルミニウム樹脂複合積層板は、金属単体で形成された金属板を成形する場合に比べて、三次元成形を施すことが非常に難しい。つまり、発泡合成樹脂とアルミニウムとで適正な成形条件が異なることから、芯材である発泡合成樹脂により形成された発泡合成樹脂層と、その両面に配置されるアルミニウム板材の変形量の差によってアルミニウム板材の表面に微細な凹凸を含む肌荒れやしわ、割れ等が発生することで、外観不良を引き起こしやすい。また、加工条件次第では、発泡合成樹脂自体が加圧力により変形・収縮して、この影響をアルミニウム板材が受けることから、アルミニウム板材の表面に生じる外観不良の発生を助長するおそれがある。このため、発泡合成樹脂層の両面にアルミニウム板材が積層された三層からなるアルミニウム樹脂複合積層板においては、これらの材料毎の成形条件を考慮して成形を行わなければならず、加工工程が煩雑になっている。
この点、本発明の三次元成形方法においては、ブランク材の成形開始前、すなわちブランク材に絞り成形を施す前に、第一工程においてブランク材を平坦化することにより、ブランク材のうねりや内部に存在する歪みを取り除いているので、絞り加工時において、しわ押さえ力及びプレス力をブランク材全周にわたって均一に付加できる。さらに、この第一工程において、ブランク材が発泡合成樹脂層の荷重たわみ温度よりも高い温度に加熱されているので、パンチとダイとの間に材料を円滑に流動させることができる。なお、発泡合成樹脂層の荷重たわみ温度は、プラスチック‐荷重たわみ温度の求め方(JIS K 7191)に規定された試験方法(A法、フラットワイズ)により得られる温度であり、発泡合成樹脂層を形成する発泡合成樹脂が一定の荷重を受けた際に変形する温度(熱変形温度ともいう)のことを表しており、融点に近いほど成形には有利である。このように、本発明のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法によれば、角筒絞り容器等の難易度の高い成形の三次元形状であっても円滑に成形でき、割れやしわ等の外観不良を防止できる。
本発明のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法は、前記第一工程後に、前記ブランク材を前記パンチに当接させてから前記ダイの先端が前記パンチの先端コーナーR部の基端点位置に到達するまで、前記ブランク材を移動させる第二工程と、該第二工程後に、前記ダイの先端が前記先端コーナーR部の基端点位置から三次元成形の最終成形深さ(絞り成形終了点)に到達するまで、前記ブランク材を移動させる第三工程とを有し、前記第三工程における前記ブランク材の成形速度(移動速度)を、前記第二工程における前記ブランク材の前記ブランク材の成形速度の2倍以上20倍以下とする。
第三工程におけるブランク材の成形速度を、第二工程におけるブランク材の成形速度の2倍以上20倍以下とすることで、発泡合成樹脂層の圧縮方向への塑性流動を抑え、しわやしわ起因による割れ等の外観不良の発生を抑制することができる。
本発明のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法において、前記パンチによるプレス力を、前記第二工程における前記ブランク材と前記パンチとの当接開始点から前記第三工程における前記最終成形深さにかけて漸次低下させるとともに、前記しわ押さえ力を、前記当接開始点から前記最終成形深さにかけて漸次低下させるとよい。
ブランク材とパンチとの当接開始点から加工終わりの最終成形深さ(絞り成形終了点)に到達するまでの第二工程及び第三工程において、上記のとおりのプレス条件を設定することで、良好な成形性を確保しつつ、外面が平滑で意匠性に優れる三次元成形品を製造することができる。この場合、ブランク材とパンチとの当接開始点でパンチに対する抵抗が最も大きくなることから、最大のプレス力を付加する。そして、その後は最終成形深さに到達するまで漸次荷重を低下させるが、第二工程のパンチの先端コーナーR部に沿って曲げ加工が終了するまでは、そのブランク材の厚み方向の塑性変形を考慮して、成形速度を低く設定しておくことにより、割れ等が発生することを確実に防止できる。また、最終形状にフランジ部を付与する場合や、さらに深く絞り成形する場合においては、第三工程の後に、プレス(ダイ及びブランクホルダー)を上下にパルス振動させながら、徐々に下降させる第四工程を設けることにより、成形負荷を軽減し、割れやしわ等の外観不良を抑制できる。
このように、工程ごとに異なる制御を行うことで、難易度の高い角筒絞り成形においても、割れやしわ等を発生させることなく、十分な成形性が得られる。したがって、本発明のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法は、種々の形状への加工が求められる実成形への適用も可能である。
本発明によれば、アルミニウム樹脂複合積層板を角筒絞り容器等の難易度の高い三次元形状に加工する場合にも円滑に成形を行うことができ、三次元成形品の表面に割れやしわ等の外観不良が生じることを防止できる。
本発明の一実施形態のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法を説明するものであり、ブランク板をプレス成形金型に設置した状態を示す断面図である。 第一工程を説明するプレス成形金型の断面図であり、図1の状態からダイを移動させて、ブランクホルダーとダイとの間にブランク板の外周部を挟持してしわ押さえ力を付与した状態を表すものである。 第二工程を説明するプレス成形金型の断面図であり、図2の状態からブランク材を移動させて、ブランク材とパンチとを当接させた当接開始点を説明するものである。 第二工程を説明するプレス成形金型の半断面図であり、図3の状態からダイの先端がパンチの先端コーナーR部の基端点位置に到達するまで、ブランク板を移動させた状態を表すものである。 第三工程を説明するプレス成形金型の断面図であり、図4の状態からダイの先端を先端コーナーR部の基端点位置から最終成形深さに到達するまでブランク板を移動させた状態を表すものである。 成形時間毎のプレス力としわ押さえ力とダイの下降移動速度との関係を表すグラフである。 第四工程を説明するプレス成形金型の断面図である。
以下、本発明に係るアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法の実施形態を説明する。
本発明のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法により成形される三次元成形品としては、有底円筒、有底角筒等の筒状成形品、一方を開孔した箱状成形品、ドーム状成形品等があり、一方(通常、外面側)が凸面となり、他方(内面側)が凹面となっている形状を有するものである。なお、その凸面の一部に若干の範囲で凹面を有する形状も含まれる。
そして、本発明に用いられるアルミニウム樹脂複合積層板は、図1にブランク材10を模式的に図示したように、発泡合成樹脂層13の両面にそれぞれアルミニウム板材11,12が積層された構成である。以下では、三次元成形における凸面となる側の一方のアルミニウム板材を第1アルミニウム板材11とし、三次元成形における凹面となる側の他方のアルミニウム板材を第2アルミニウム板材12とする。
アルミニウム樹脂複合積層板のブランク材10は、引張強さが20MPa以上80MPa以下、耐力が5MPa以上70MPa以下、伸びが15%以上であるとよく、さらに望ましくは、伸びが17.5%以上であると成形性の面で好ましい。このブランク材10として、例えば、発泡合成樹脂層13、第1アルミニウム板材11、第2アルミニウム板材12を接着剤を介して積層することにより製造されるものを好適に用いることができる。
この場合、第1アルミニウム板材11は、マグネシウムを1.5質量%以上1.8質量%以下、銅を0.02質量%以下含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなり、引張強さが150MPa以上250MPa以下、耐力が55MPa以上240MPa以下、伸びが10%以上であるのが好ましい。また、第2アルミニウム板材12は、銅(Cu)を0.01質量%以上0.2質量%以下含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなり、引張強さが60MPa以上140MPa以下、耐力が40MPa以上120MPa以下、伸びが20%以上であるのが好ましい。そして、発泡合成樹脂層13は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等を用いることができる。なお、発泡合成樹脂層13は、1.5倍以上10倍以下の発泡倍率で均一に発散した発泡性樹脂を用いることにより、遮音性、遮熱性に優れたものとなる。また、発泡合成樹脂の融点は100℃以上であることが望ましい。また、接着剤は、芯材である発泡合成樹脂層13の材質と同系樹脂の主成分を選定することが好ましく、例えば発泡合成樹脂層13がポリプロピレンで構成される場合は、ポリプロピレンが主成分の接着剤等が好適である。
そして、この接着剤を発泡合成樹脂層13の両面又はアルミニウム板材11,12の片面に塗布し、両アルミニウム板材11,12の間に発泡合成樹脂層13を挟み、これらをホットプレスやホットロールにより加圧・加熱することにより、発泡合成樹脂層13の両面にアルミニウム板材11,12を一体に積層する。
次に、このようにして得られるアルミニウム樹脂複合積層板のブランク材10の三次元成形方法においては、例えば図1〜図5に示すプレス用金型100を用いる。プレス用金型100は、成形後の三次元成形品の底面と略同形状の成形孔21を有するダイ20と、成形孔21と略同形状の貫通孔31を有するブランクホルダー30と、三次元成形品の底部を絞ることが可能な柱状形状のパンチ40とを備えるものである。そして、本実施形態の三次元成形方法では、このプレス用金型100を用いて、以下に説明する第一工程から第三工程を経て、ブランク材10に絞り成形を施す。
(第一工程)
まず、プレス用金型100を、ブランク材10の発泡合成樹脂層13の荷重たわみ温度よりも高い温度に予め加温しておく。なお、発泡合成樹脂層13の荷重たわみ温度は、プラスチック‐荷重たわみ温度の求め方(JIS K 7191)に規定された試験方法(A法、フラットワイズ)により得られる温度であり、発泡合成樹脂層13を形成する発泡合成樹脂が一定の荷重を受けた際に変形する温度(熱変形温度ともいう)のことを表している。そして、図1に示すように、ブランクホルダー30上に、第1アルミニウム板材11が成形品の外面となるようにブランク材10を配置した後、ダイ20を下降移動させることにより、図2に示すように、ブランク材10の外周部を、ブランクホルダー30とダイ20との間に挟持してしわ押さえ力Fを付与する。しわ押さえ力Fは、ブランク材10の発泡合成樹脂層13に変形を生じさせない範囲の低圧に保持する。この際、ブランクホルダー30とダイ20とは予め加温されているので、ブランクホルダー30とダイ20との間にブランク材10の外周部が挟まれることにより加熱される。そして、ブランク材10の外周部がブランクホルダー30とダイ20との間で挟持される際に、外周部だけではなくブランク材10全体が平坦化される効果が望める。
より確実にブランク材10全体を平坦化させるには、ダイ20の内側にパンチ40と対向する上下移動自在なカウンターパンチ等を設けておき、ブランク材10の外周部と同様に、パンチ40とカウンターパンチとの間にブランク材10の内側を発泡合成樹脂層13に変形を生じさせない範囲の低圧で挟持して保持するとよい。この場合、ブランク材10の外周部がブランクホルダー30とダイ20との間で挟持されるとともに、ブランク材10の内側がパンチ40とカウンターパンチとの間で挟持されることで、外周部とともに内側も加熱される。
このように、第一工程では、ブランク材10の成形開始前に、ブランク材10を、発泡合成樹脂層13の荷重たわみ温度よりも高い温度で加熱するとともに、しわ押さえ力Fを発泡合成樹脂層13に変形を生じさせない範囲の低圧に保持することにより、ブランク材10のうねりやブランク材10内部に存在する歪みを取り除き、ブランク材10を平坦化する。
(第二工程及び第三工程)
次に、第二工程と第三工程では、ブランクホルダー30とダイ20との間にブランク材10の外周部を挟持してしわ押さえ力Fを保持した状態でブランク材10を下降移動させることにより、ダイ20とパンチ40との間でブランク材10に絞り成形を施して、図5に示す三次元成形品10Aを成形する。本実施形態では、ブランク材10を移動させて、図3に実線で示すようにブランク材10をパンチ40に当接させてから、図3に二点鎖線で示すようにダイ20の先端22がパンチ40の先端コーナーR部41の基端点位置S1に到達するまで(距離H)が第二工程とされ、ダイ20の先端22が、図4に示すようにパンチ40の先端コーナーR部41の基端点位置S1から、図5に示すように最終成形深さ(絞り成形終了点)に到達するまでが第三工程とされ、第一工程から第三工程までが連続して行われる。
また、第二工程及び第三工程においては、ブランク材10の成形速度(移動速度)と、パンチ40によるプレス力Pと、しわ押さえ力Fとを制御し、異なるプレス条件で成形を施す。まず、第三工程におけるブランク材10の成形速度を、第二工程におけるブランク材10の成形速度の2倍以上20倍以下の高速にし、パンチ40の先端コーナーR部41に沿って曲げ加工が終了するまでの第二工程では、そのブランク材10の厚み方向の塑性変形を考慮して、成形速度を低く設定する。そして、パンチ40によるプレス力Pは、パンチ40に対する抵抗が最も大きくなるブランク材10とパンチ40との当接開始点において最大のプレス力Pを付加し、この当接開始点から第三工程における最終成形深さS2にかけて漸次低下させる。また、しわ押さえ力Fは、ブランク材10とパンチ40との当接開始点から最終成形深さS2にかけて漸次低下させる。
このように、第二工程及び第三工程において絞り成形を施す際には、成形開始前の第一工程においてブランク材10を平坦化することにより、ブランク材10のうねりや内部に存在する歪みを取り除いているので、しわ押さえ力F及びプレス力Pを全周において均一に付加できる。また、第一工程において、ブランク材10の外周部が発泡合成樹脂層13の荷重たわみ温度よりも高い温度に加熱されているので、パンチ40とダイ20との間に材料を円滑に流動させることができる。なお、発泡合成樹脂層13の加熱温度は、発泡合成樹脂の融点に近いほど成形には有利である。また、第三工程におけるブランク材10の成形速度を、第二工程におけるブランク材10の成形速度の2倍以上20倍以下の高速にすることで、発泡合成樹脂層13の圧縮方向への塑性流動を抑え、しわ等の外観不良の発生を抑制することができる。
第二工程及び第三工程における絞り成形の一例として、ブランク材10として、引張強さが20MPa以上80MPa以下、耐力が5MPa以上70MPa以下、伸びが15%以上の厚み2mm以上5mm以下とされるものを用いて、底面積が5000mm以上25000mm以下で深さが5mm以上50mm以下の角筒絞り容器を成形する場合においては、ブランク材10の成形速度を、例えば第二工程で0.2(mm/sec)以上0.7(mm/sec)以下、第三工程で1.4(mm/sec)以上4.0(mm/sec)以下とし、しわ押さえ力を、第二工程の開始時で20(kN)以上30(kN)以下、第三工程終了時で10(kN)以上20(kN)以下とし、これら第二工程の開始時から第三工程終了時までの間を段階的あるいは連続的に漸次低下させるとよい。また、パンチ40によるプレス力Pは、第二工程で30(kN)以上40(kN)以下、第三工程で15(kN)以上25(kN)以下とされているとよく、これら第二工程開始時から第三工程終了時までの間を段階的あるいは連続的に漸次低下させるとよい。
三次元成形品10Aのように、ブランク材10の外周部がブランクホルダー30とダイ20との間に残されずに有底筒状の形状を成形する場合は、第三工程で成形を終了する。
一方、図7に示す三次元成形品10Bのように、ブランク材10の外周部に絞り成形がされていない未加工のフランジ部15を形成する場合には、第一工程から第三工程までの工程に加えて、第三工程後に、ブランクホルダー30とダイ20との間にブランク材10の外周部が挟持された状態で、ブランクホルダー30及びダイ20とともにブランク材10を上下移動させながら多段パルス式の深絞り成形を行う第四工程を施す。なお、第一工程から第三工程までは、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
(第四工程)
第四工程は、第三工程におけるブランク材10の外周部がダイ20とブランクホルダー30との間に挟持された状態を維持し、この状態で、ダイ20及びブランクホルダー30を上下移動させながら多段パルス式の深絞り成形を行う。つまり、第四工程では、図7に示すように、フランジ状に形成された外周部の面積に応じてしわ押さえ力Fを漸次低下させながら、ブランク材10を挟持したダイ20とブランクホルダー30との上下移動を制御することにより、パルス式の上下移動を段階的に繰り返しながら、ブランク材10に徐々に深絞り成形を施す。なお、フランジ状の外周部の面積が小さい場合には、しわ押さえ力Fを十分に大きく保持することにより、ダイ20とブランクホルダー30との間にブランク材10の外周部が挟持された状態を維持することが好ましい。このように、第三工程後に第四工程を付加することにより、深絞りの三次元成形品10Bにおいて側壁部14からフランジ部15にかけてのコーナーR部16に特に発生しやすい割れやしわ等の外観不良を有効に抑制でき、成形性を向上させることができる。つまり、プレス(ダイ20及びブランクホルダー30)を上下に微細に振動させながら徐々に下降させることにより、成形負荷を軽減して割れやしわ等の外観不良を抑制できる。
このように、本実施形態の三次元成形方法によれば、角筒絞り容器等の難易度の高い成形の三次元形状であっても円滑に成形でき、割れやしわ等の外観不良を防止できる。
さらに、第二工程及び第三工程又は、第二工程から第四工程までにおいて、上記のとおりのプレス条件を設定することで、良好な成形性を確保しつつ、割れやしわ等が発生することを確実に防止して外面が平滑で意匠性に優れる三次元成形品を製造できる。
ブランク材として、引張強さが40MPa、耐力が25MPa、伸びが17.2%の厚み3.5mmのアルミニウム樹脂複合積層板を用いて、本実施形態の三次元成形方法により、底部が98mm×170mm(底面積が16660mm)で深さが30mmの角筒絞り容器(先端コーナーR部の半径r=3mm)を製造した。第1アルミニウム板材には、一般的な半連続鋳造、熱間圧延及び冷間圧延(中間焼鈍を含む)を経て5000系合金のH22調質材で形成された引張強さが190MPa、耐力が140MPa、伸びが16%の厚み0.35mmの板材を用い、第2アルミニウム板材には、第1アルミニウム板材と同様の方法により1000系合金のH24調質材で形成された引張強さが120MPa、耐力が110MPa、伸びが27%の厚み0.15mmの板材を用いた。また、発泡合成樹脂層は、ポリプロピレン(融点170℃、耐熱温度120℃)を選び、発泡倍率は2.5倍とした。なお、耐熱温度とは、例えば外力を受けない状態で樹脂製品が変形・変質しないでその機能が保てる温度である。また、ポリプロピレンの荷重たわみ温度は、77℃である。また、接着剤には、ポリプロピレンが主成分の接着剤を用いた。なお、ブランク材の機械的特性は、JIS‐Z2241の5号試験片を作製して引張試験を行い、引張強さ、0.2%耐力及び伸びを測定した。
そして、プレス用金型を予め表1に示す加熱温度に加温しておき、第一工程から第四工程におけるプレス条件を表1に示すように設定し、角筒絞り容器の成形を行った。また、図6には、実施例3の第一工程から第四工程におけるプレス条件をグラフ化した。なお、図6において、ブランク材の下降移動速度Vは、第二工程及び第三工程においては、絞り成形時のブランク材の成形速度を表している。また、図6において、しわ押さえ力は符号F、プレス力は符号Pとし、第一工程を区間A、第二工程を区間B、第三工程を区間C、第四工程を区間Dで表示した。
表1からわかるように、ブランク材の絞り成形を開始する前(第二工程前)に、第一工程においてブランク材を平坦化することにより、割れやしわ等の外観不良を防止できる。
また、図6に示すように第一工程から第三工程の工程ごとに異なる制御を行うことで、難易度の高い角筒絞り成形においても、しわ等を発生させることなく、良好な成形性が得られる。このように、本発明の三次元成形方法は、種々の形状への加工が求められるアルミニウム樹脂複合積層板の実成形への適用も可能である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
10 ブランク材
11 第1アルミニウム板材
12 第2アルミニウム板材
13 発泡合成樹脂層
20 ダイ
21 成形孔
22 先端
30 ブランクホルダー(しわ押さえ)
31 貫通孔
40 パンチ
41 先端コーナーR部
100 プレス用金型

Claims (3)

  1. 発泡倍率1.5倍以上10倍以下の発泡合成樹脂層の両面にアルミニウム板材が積層されてなるアルミニウム樹脂複合積層板からなるブランク材の外周部を、ブランクホルダーとダイとの間に挟持してしわ押さえ力を付与した状態で前記ブランク材を移動させて、前記ダイとパンチとの間で絞り成形を行うアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法であって、
    前記ブランク材の成形開始前に、前記ブランク材を、前記発泡合成樹脂層の荷重たわみ温度よりも高い温度で加熱するとともに、前記しわ押さえ力を前記発泡合成樹脂層に変形を生じさせない範囲の低圧に保持することにより、前記ブランク材を平坦化する第一工程を有することを特徴とするアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法。
  2. 前記第一工程後に、前記ブランク材を前記パンチに当接させてから前記ダイの先端が前記パンチの先端コーナーR部の基端点位置に到達するまで、前記ブランク材を移動させる第二工程と、
    該第二工程後に、前記ダイの先端が前記先端コーナーR部の基端点位置から三次元成形の最終成形深さに到達するまで、前記ブランク材を移動させる第三工程とを有し、
    前記第三工程における前記ブランク材の成形速度を、前記第二工程における前記ブランク材の成形速度の2倍以上20倍以下とすることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法。
  3. 前記パンチによるプレス力を、前記第二工程における前記ブランク材と前記パンチとの当接開始点から前記第三工程における前記最終成形深さにかけて漸次低下させるとともに、
    前記しわ押さえ力を、前記当接開始点から前記最終成形深さにかけて漸次低下させることを特徴とする請求項2に記載のアルミニウム樹脂複合積層板の三次元成形方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019181494A (ja) * 2018-04-04 2019-10-24 日本製鉄株式会社 複合積層板を用いたかしめ継ぎ手または負角構造体の成形方法、並びにかしめ継ぎ手及び負角構造体
CN113977917A (zh) * 2021-09-14 2022-01-28 江苏新泉模具有限公司 一种用于成型膜片倒扣的模具
CN114954666A (zh) * 2022-06-14 2022-08-30 合肥长安汽车有限公司 一种a柱加强件的上铰链加强结构及其制造方法

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