以下、本発明の好ましい実施形態について、詳細に説明する。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
本発明は、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、トナーおよびキャリアを含む二成分現像剤により顕像化する現像プロセスにおいて、余剰の二成分現像剤が現像器から排出されると共に、補給用トナーおよび補給用キャリアが現像器内に補給されるオートリファイニング現像方式における補給用キャリアであって、前記現像器内に含まれる初期キャリアと下記の関係を有する、補給用キャリアである。
かかる構成を有することによって、長期間に亘って印刷機を使用した場合であっても画像品質の劣化を低減し、また、キャリアが感光体表面に数多く付着することを抑制し、トナー飛散による印刷機の機内の汚れを抑制することができる。
上記式1において初期キャリアの抵抗値(X)が5.00×108(Ω・cm)未満であると、カブリや、トナー飛散、転写率低下、キャリア付着が発生する虞がある。また、上記式1において初期キャリアの抵抗値(X)が1.00×1010(Ω・cm)超であると、リード部白抜け性能が劣る虞がある。また、本発明において、補給用キャリアの抵抗値(Y)を上記式2の範囲に収めるように制御することによって、リード部白抜け、カブリやトナー飛散、転写率低下を抑制し、キャリア付着性能を高いレベルで長期間(耐久を通して)保持することが可能である。
上記のように、本発明は、初期キャリアと、補給用キャリアとの抵抗値を一定にすることによって、所期の課題を解決するが、式1、式2に規定するパラメータは、数多くの組み合わせの実験結果から逆算的に導き出したものである。
式1、式2の意味を平たく説明すると、まず、初期キャリアは、式1で規定する初期キャリアの抵抗値(X)が所定値になるように設計する。そして、現像器内に既にある初期キャリアの質量(A)、および、補給される二成分現像剤における補給用キャリアの割合(B)を設定することで、左辺と右辺の値が算出され、その間に収まる抵抗値となるように補給用キャリア(Y)を設計する。ここで、初期キャリアの質量(A)は、耐久を通してほぼ一定の値になり、その変動のレベルは無視できる程度である。
続いて、式2がどのように導出されるかを説明する。
式2は、初期キャリア抵抗値(X)および初期キャリアの質量(A)、ならびに、補給用トナーおよび補給用キャリアにおける補給用キャリアの割合(B)について、数多くの組み合わせについて評価を行い、所期の目的を達成できた補給用キャリアの抵抗値(Y)を振った実験を行うことによって導出した。より具体的には、横軸に(B)、縦軸に(Y/X)を取り、初期キャリアの質量(A)毎に複数のプロットを得、初期キャリア質量(A)毎に、累乗近似式(Y/X=αBβ)を作成した。それにより、複数の累乗近似式が得られるので、αとβとに分けてそれぞれの係数を算出した。これを下限と上限で計算したものが本発明の式2となる。
ここで、一般的に、キャリアの劣化による画質低下、転写率低下、あるいはキャリア付着を抑制するためには、キャリアの補給量を多くして、交換比率を高める必要がある。しかしながら、キャリアの補給量を増やすと廃棄キャリアが増加してしまう。特に、キャリアとトナーとをあらかじめ混合し現像剤として補給する方法では、黒化面積率の高い原稿を複写すると、トナーの消費量が多いため、トナーの補給量を多くする必要がある。その結果、同時にキャリアの補給量も多くなってしまうため、現像剤の廃棄ロスが多くなってしまうという問題がある。本発明によれば、補給用キャリアの補給量も適切なものとすることができるのでこのような問題も解決することができる。
なお、本明細書において、上記式1および式2の少なくとも一方の関係を「特定の関係」と称する場合がある。
本発明において、補給用キャリアの抵抗値と、初期キャリアの抵抗値とを上記の特定の関係とすることによって、初期のみならず、長期間に亘って印刷機を使用した場合であっても(耐久を通して)現像装置内のキャリア抵抗値を一定に保つことができる。つまり、初期キャリアの抵抗値を有意に低くせしめることによって高画質を達成し、闇雲に低くしないように制御することによってトナー帯電量の低下、かぶり等の画質の低下、転写率の低下を抑制することができる。言い換えれば、本発明では、初期キャリアの抵抗値を相対的に下げるが、その下げ幅を一定程度にし、補給用キャリアを通じて現像器内の抵抗値を安定にすることによって、高い画像品質を長期に亘り維持し、所期の課題を解決する。このように、本発明は、使用開始時の抵抗(初期抵抗)と、オートリファイニングキャリアとしてトナーボトルから供給されるキャリアとの抵抗値を意図的に設計する点に特徴を有する。
また特に、プロダクションプリントに求められる印字率の高い画像を連続で印字するためには現像器内に含まれるキャリア量を多くする必要があるが、これはキャリアの入れ替えが遅くなり、耐久を通したキャリア抵抗値のコントロールが難しくなる。また、省資源の観点から補給されるキャリア量を減らすことが求められているが、キャリアの入れ替えが遅くなり、耐久を通したキャリア抵抗値のコントロールが難しくなる。これに対し、本発明では、補給用キャリアの抵抗値と、初期キャリアの抵抗値とを上記の特定の関係とするので、かような問題も解決することができる。
上記式1において、初期キャリア抵抗値(X)は、5.00×108(Ω・cm)以上であるが、キャリア付着の観点から、好ましくは1.00×109(Ω・cm)以上であり、より好ましくは2.00×109(Ω・cm)以上である。
上記式1において、初期キャリア抵抗値(X)は、1.00×1010(Ω・cm)以下であるが、リード部白抜けの観点から、好ましくは5.00×109(Ω・cm)以下であり、より好ましくは3.00×109(Ω・cm)以下である。
また、上記式2において、初期キャリアの質量(A)としては、印字率の高い画像を連続した時の画質確保の観点から、470g以上が好ましく、より好ましくは500〜800gであり、さらに好ましくは570〜800gである。かかる形態については、後でも説明する。
また、上記式2において、補給用トナーおよび補給用キャリアにおける補給用キャリアの割合B(質量%)としては、本発明の所期の効果を奏する観点から、好ましくは3〜25質量%、より好ましくは4〜15質量%、さらに好ましくは5〜12質量%である。
(補給用キャリア)
続いて、本発明の補給用キャリアについて説明する。
本発明の補給用キャリアは、初期キャリアと、式1、式2を満たすように、オートリファイニング現像方式において補給されるものであれば、補給用トナーと別個独立で補給される補給形態の現像プロセスに供されるものであっても、補給用トナーと混合して補給用二成分現像剤として補給される補給形態の現像プロセスに供されるものであってもよい。
本発明の補給用キャリアは、磁性体によって構成されてもよいし、磁性体を含むキャリア芯材の表面に被覆用樹脂が施されてなる樹脂被覆型キャリアであってもよいし、樹脂中に磁性体微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリアであってもよいが、感光体へのキャリア付着を抑制する観点から、磁性体を含むキャリア芯材の表面に被覆用樹脂が施されてなる樹脂被覆型キャリアであることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態によれば、前記補給用キャリアが、キャリア芯材と、前記キャリア芯材の表面を被覆する被覆用樹脂とを含んで構成される。無論、後述する、初期キャリアも同様に、キャリア芯材と、前記キャリア芯材の表面を被覆する被覆用樹脂とを含んで構成されてもよい。
(キャリア芯材)
本発明の補給用キャリアを構成するキャリア芯材の形状は、特に制限されず、例えば粒子状であってもよい。また、このキャリア芯材は、必要に応じて抵抗調整剤などの内添剤を含有するものであってもよい。ここで、抵抗調整剤としては、カーボンブラックや酸化チタン、ITO、酸化スズ等があり、また、特開2004−287196号公報の段落「0039」に記載のものや、特開2014−48455号公報の「0046」の段落に記載のものなどを使用してもよい。
キャリア芯材を構成する磁性体としては、磁場によってその方向に強く磁化する物質、例えば、鉄、式(a):MO・Fe2O3で表わされるフェライト、式(b):MFe2O4で表わされるマグネタイトをはじめとする鉄、ニッケルおよびコバルトなどの強磁性を示す金属、またはこれらの金属を含む合金もしくは化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金(例えば、マンガン−銅−アルミニウムおよびマンガン−銅−錫などのホイスラー合金、二酸化クロムなど)などが挙げられる。
上記式(a)および式(b)において、Mは、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li、Srなどの1価または2価の金属であり、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、当該キャリア芯材としては、比重が鉄やニッケルなどの金属よりも小さく軽量化が図られるので現像装置内における撹拌の衝撃力を小さくすることができる点から、各種のフェライトであることが好ましい。ここで、飽和磁化は、30〜75Am2/kgの範囲内、残留磁化が5.0Am2/kg以下であることが好ましい。飽和磁化の好ましい範囲を、左記のようにすることによって現像器内の現像スリーブとキャリアとの間の保持力を高め、遠心力によるキャリア付着を抑制することができる。また、現像スリーブからキャリア(現像剤)の入れ替えを容易とし、同じ現像剤が繰り返し現像工程で使用される、いわゆるゴーストと呼ばれる画像欠陥の発生を抑制することができる。
このような磁気特性を有するキャリアを用いることにより、キャリアが部分的に凝集することが防止され、現像剤搬送部材の表面に、二成分現像剤が均一分散されて、濃度むらがなく、均一で高精細のトナー画像を形成することが可能になる。なお、このキャリア芯材の飽和磁化は、直流磁化特性自動記録装置「3257−35」(横河電機社製)により測定されるものである。
キャリア芯材の抵抗値は、5.0×106(Ω・cm)〜1.0×109(Ω・cm)の範囲であることが好ましい。より好ましい範囲は、1.0×107(Ω・cm)〜5.0×108(Ω・cm)である。この範囲に抵抗値があると、カブリやトナー飛散、転写率低下を抑制し、キャリア付着とリード部白抜けとを抑制することができる。
フェライトは、公知の方法を適宜参照して作製してもよい。例えば、以下に記載の方法が挙げられる。Fe2O3やMn(OH)2、Mg(OH)2あるいはMnO、MgO、Fe2O3、SrOなどのフェライト原料を、必要に応じ分散媒(例えば水)と混合する。この際、メディアミル、ボールミル、振動ミル等を用いて粉砕、混合し、粉砕物(スラリー)を得る。この際の混合時間としては0.5時間以上であることが好ましく、4〜30時間であることがより好ましい。得られたスラリーを、必要に応じ、公知の乾燥手段(例えば、スプレードライ)にて乾燥する。この際、形状を球状(好ましくは、真球状)にすることが好ましい。その後、必要に応じて粒度調整を行う。その後、仮焼成する。仮焼成に用いる焼成装置としては、例えば、電気炉やロータリーキルンなど公知の焼成装置を用いることができる。仮焼成は、必要に応じて1回以上3回以下行う。仮焼成温度としては、800〜1100℃であることが好ましく、900〜1050℃であることがより好ましい。仮焼成時間としては、1〜15時間であることが好ましく、2〜10時間であることがより好ましい。仮焼成を行うことによって原料を酸化物にする技術的効果がある。
その後、必要に応じて、仮焼成品を、乾式または湿式で粉砕後、場合によって、分散媒(例えば、水)や、セルロース樹脂などのバインダーを用いて粉砕物をスラリー化し、公知の粉砕手段(例えば、湿式ボールミル等)で体積平均粒径(D50)が所望の粒度になるまで粉砕を行う。この際、粉砕補助材(例えば、ステンレスビーズ、ジルコニアビーズなど)を用いてもよい。この際、所望のD50に制御するために、粉砕時間は1〜40時間であることが好ましく、1.5〜35時間であることがより好ましい。
その後、公知の乾燥手段(スプレードライヤー等)を用い造粒乾燥する。その際、公知のバインダ(例えば、PVAなど)を用いてもよい。
次いで、造粒物の本焼成を行う。本焼成は、酸素濃度をコントロールしながら行ってもよい。用いる焼成装置としては、電気炉やロータリーキルンなど公知の焼成装置を用いることができる。
キャリア芯材の粒径は、体積平均粒径で20〜100μmであることが好ましく、より好ましくは25〜80μmである。このキャリア芯材の体積平均粒径は、実施例に記載の方法に従って測定できる。
本発明においては、補給用キャリアが特定の関係を有していることを特徴とする。かかる特定の関係になるように制御する方法は、特に制限はないが、本焼成の温度を調整することがその方法の一つとして挙げられる。本焼成の温度を高くすると、キャリア芯材を構成している結晶粒の距離が短くなり、体積抵抗が低くなる。また、本焼成の温度を高くすると、キャリア形状係数SF−1を大きく、すなわちキャリアを異形化することができる。キャリア芯材の異形化を進ませ、被覆用樹脂で被覆した時に異形化が進んだものほど被覆量が少ない凸部が存在し、抵抗を下げることができる。
補給用キャリアにおいて、キャリア芯材のキャリア形状係数SF−1は、110〜150であることが好ましく、130〜145であることが特に好ましい。
また、後述する初期キャリアにおいて、キャリア芯材のキャリア形状係数SF−1は、110〜150であることが好ましく、130〜145であることが特に好ましい。
補給用キャリアについては、本焼成の温度を、800〜1400℃とするのが好ましく、特には900〜1300℃とするのがより好ましい。また、本焼成の時間は、0.5〜40時間とするのが好ましく、1〜30時間とするのがより好ましく、3〜10時間であることがより好ましい。
他方、後述する初期キャリアについては、本焼成の温度を、800〜1400℃とするのが好ましく、特には900〜1300℃とするのがより好ましい。また、本焼成の時間は、0.5〜40時間とするのが好ましく、1〜30時間とするのがより好ましく、3〜10時間であることがさらに好ましい。
このようにして得られた焼成物を、必要に応じて、粉砕(解砕)、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法などがある。そのようにして、所望の粒径に粒度調整する。
(形状係数SF−1測定法)
上記キャリア芯材の形状係数(SF−1)とは、下記式Aにより算出される数値である。
キャリア芯材のSF−1の測定においては、通常、キャリア芯材を準備する。しかし、試料(測定する対象物)がキャリア芯材単体でなく、二成分現像剤(トナーおよびキャリア)の場合は、前準備の処理を行う。
(前準備)
ビーカーに、二成分現像剤(キャリアおよびトナー)、少量の中性洗剤、純水を添加してよくなじませ、ビーカー底に磁石を当てながら上澄み液を捨てる。さらに、純水を添加し上澄み液を捨てることで、トナーおよび中性洗剤を除くことで、キャリアのみを分離する。40℃にて乾燥し、キャリア単体を得る。
なお、キャリア芯材の表面に樹脂が被覆されてなる場合、表面を覆っている樹脂を除去することによってキャリア芯材の形状係数を測定できる。除去の方法は特に制限はないが、例えば、ビーカーに、樹脂が被覆されたキャリア芯材を入れ、樹脂を溶解することができる有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン、アセトン、THF)を加え、20分程度攪拌後、有機溶剤を捨てる。さらに有機溶剤を加え、同様の操作を3回繰り返したのち、残留有機溶剤を除去できる温度にて24時間程度乾燥し、キャリア芯材粒子を得ることができる。または、るつぼに樹脂が被覆されたキャリア芯材を入れ、樹脂や添加剤を熱分解できる温度まで昇温することによりキャリア芯材粒子を得ることができる。
(測定)
走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上のキャリア芯材粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX(登録商標)AP((株)ニレコ)を用いて解析し、各々のキャリア芯材粒子について、最大長および投影面積を求め、上記式(A)により形状係数SF−1を算出する。算出された各々の粒子の形状係数SF−1の平均値を、本発明における「形状係数SF−1」とする。
(被覆用樹脂)
前記補給用キャリアが、キャリア芯材と、前記キャリア芯材の表面を被覆する被覆用樹脂とを含んで構成される場合において、当該キャリア芯材の表面に被覆される樹脂(「被覆用樹脂」ともいう。)は、ビニルモノマーなどの重合性単量体を重合して得られた樹脂であることが好ましい。このようなビニルモノマーとしては、例えば、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、アクリル酸アルキル系、メタクリル酸アルキル系などが挙げられる。
ビニルモノマーの具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ラウリルスチレンなどのスチレンまたはその誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体(アクリル酸アルキル系);エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン系ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸またはその誘導体などが挙げられる。
これらのビニルモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上の混合比についても特に制限されない。
上記の中で、(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体(アクリル酸アルキル系)であることが好ましい。
また、キャリア芯材の水分吸着量が低減され、帯電性の環境差が低減され、特に高温高湿環境下における帯電量の低下が抑制されるとの観点から、上記ビニルモノマーが、脂環式(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体を含むことが好ましい。よって、本発明の好ましい実施形態によれば、前記補給用キャリアが、キャリア芯材と、前記キャリア芯材の表面を被覆する被覆用樹脂とを含んで構成され、前記被覆用樹脂が、脂環式(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体由来の樹脂を含む。かかる構成を有することによって、帯電量の環境差を低減することが可能となり、特に高温高湿環境下における帯電量を保持することが可能となり、カブリやトナー飛散、転写率低下を抑制することができる。また、脂環式(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体を含む単量体を重合させて得られる樹脂は、適度な機械的強度を有し、被覆材(被覆用樹脂)として適度に膜摩耗されることにより、キャリア芯材表面がリフレッシュされる。なお、本発明の好ましい実施形態によれば、初期キャリアもまた、キャリア芯材と、前記キャリア芯材の表面を被覆する被覆用樹脂とを含んで構成され、前記被覆用樹脂が、脂環式(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体由来の樹脂を含む。
脂環式(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体の具体例としては、炭素数5〜8のシクロアルキル基を有するものが好ましく、具体的には、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチルなどが挙げられる。これらの中では、機械的強度および帯電量の環境安定性の観点から、メタクリル酸シクロヘキシルが特に好ましい。
被覆用樹脂のガラス転移点は、特に限定されないが、95〜120℃であることが好ましい。被覆用樹脂のガラス転移点が上記範囲内であることにより、優れた製膜性が発揮されるので緻密な被覆層が形成される。この被覆用樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計「DSC−7」(パーキンエルマー社製)により測定されるものである。具体的には、試料(被覆用樹脂)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、サンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/min、降温速度10℃/minにて、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行う。ガラス転移点は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点の値とする。
被覆用樹脂の製造方法としては、公知の方法を適宜参照することによって適用することができ、例えば、公知の溶媒(例えば、水、ベンゼンスルホン酸ナトリウム)と、単量体成分とを混合し、公知の重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)などを使って重合することができる。また、粒度分布および分子量の観点から、乳化重合法、ミニエマルション重合法により製造することが好ましい。
被覆用樹脂の重量平均分子量は、20万〜70万であることが好ましい。被覆用樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、優れた製膜性が発揮されるので緻密な被覆層が形成される。この被覆用樹脂の重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるものである。GPCによる分子量測定は、具体的には以下のように行われる。すなわち、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流し、試料を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度50mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。また、検出器には屈折率検出器を用いる。
(補給用キャリアの製造方法)
補給用キャリアの製造方法としては、特に制限されないが、上記のように準備した、キャリア芯材、被覆用樹脂、および必要に応じて抵抗調整剤などの内添剤を混合し、機械的衝撃力を付与することにより得られる方法が好ましい。以下、好ましい実施形態を説明する。
・工程(1):キャリア芯材と、被覆用樹脂の粒子(「被覆用樹脂粒子」ともいう)と、必要に応じ抵抗調整剤とを混合し、キャリア芯材の表面に被覆用樹脂粒子等を層状に付着させてキャリア中間粒子を形成する工程。
・工程(2):キャリア中間粒子を、被覆用樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱しながら機械的衝撃力を付与してキャリア芯材表面に樹脂被覆を施す工程。
・工程(3):キャリア芯材表面に樹脂被覆を施したものを室温まで冷却する工程。
なお、必要に応じて上記工程(1)〜(3)を複数回繰り返して、所望の層厚の樹脂被覆層を形成することもできる。
上記工程(1)〜(3)を経る方法においては、有機溶媒を使用しないことから樹脂被覆層に有機溶媒に起因する穴を形成することなく緻密かつ強固となり、キャリア芯材との接着性の高い樹脂被覆層を有するキャリア芯材を形成することができる。
・工程(1):キャリア中間粒子形成工程
この工程(1)において用いられる被覆用樹脂粒子は、粒度分布および分子量の観点から、乳化重合法、ミニエマルション重合法により製造することが好ましい。
また、キャリア芯材の表面に被覆する被覆用樹脂粒子の粒径は、体積平均粒径で50〜500nmであることが好ましく、より好ましくは80〜150nmである。この被覆用樹脂粒子の体積平均粒径は、「MICROTRAC UPA−150」(日機装社製)により測定されるものである。
この工程(1)において、被覆用樹脂粒子の添加量は、補給用キャリアの場合、キャリアの耐久性と低電気抵抗化との両立の観点より、キャリア芯材100質量部に対して0.5〜7.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.5〜4.0質量部の範囲であり、さらに好ましくは2.5〜4.16質量部であり、よりさらに好ましくは2.8〜4.1である。よって、本発明の好ましい実施形態によれば、補給用キャリアの場合、前記被覆用樹脂の質量が、前記キャリア芯材100質量部に対して、1.5〜4.0質量部である。前記被覆用樹脂の質量をかかる範囲にすることによって補給用キャリアの抵抗値を適切な範囲とすることができ、カブリやトナー飛散、転写率低下、キャリア付着の発生を抑制することができる。また、リード部白抜けを抑制することができる。
他方、後述する、初期キャリアの場合、被覆用樹脂粒子の添加量は、キャリア芯材100質量部に対して0.5〜7.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.5〜6.0質量部の範囲であり、さらに好ましくは2.0〜5.0質量部であり、よりさらに好ましくは2.5〜4.0質量部である。
また、補給用キャリアの被覆用樹脂の添加量(質量部)/初期キャリアの被覆用樹脂の添加量(質量部)の比は、1超〜1.2であることが好ましく、1.05〜1.15であることが好ましい。このような比にすることで、現像器内のキャリア抵抗安定化の技術的効果がある。
このように、被覆用樹脂の添加量が上記範囲内であることにより、帯電性と耐久性とを良好にでき、また上記特定の関係に制御し易くなる。被覆用樹脂の添加量を多くすれば抵抗を高くすることができ、被覆用樹脂の添加量を少なくすれば抵抗を低くすることができるので、当業者であれば、添加量の調整によって、帯電性と耐久性とを良好なものとできる。
なお、必要に応じて添加される抵抗調整剤の添加量は、被覆用樹脂100質量部に対して、1〜60質量部であることが好ましい。
・工程(2):キャリア芯材表面に樹脂被覆を施す工程
この工程(2)において、機械的衝撃力を付与するとは、機械的衝撃力を付与することのできる装置を用いることをいい、このような装置としては、例えば、ターボミル、ピンミル、クリプトロンなどのローターとライナーとを有する摩砕装置、または(水平)撹拌羽根を有する高速撹拌混合装置などが挙げられる。これらのうち、均一な樹脂被覆層を形成することができることから、(水平)撹拌羽根を有する高速撹拌混合装置を用いることが好ましい。
機械的衝撃力を付与する温度、時間は、補給用キャリアの場合、まず、(1)室温程度(例えば、15〜35℃)で、5〜30分間混合攪拌した後、(2)加熱温度として105〜130℃で、10〜60分間混合攪拌するとよい。なお、後者の加熱温度も、左記の範囲に特に制限されず、(被覆用樹脂のガラス転移点+5℃)〜(被覆用樹脂のガラス転移点+20℃)であることが好ましい。無論、(1)を経ず、直接(2)を行ってもよい。なお、このように2回以上に分けて攪拌を行うことによってキャリア芯材表面へ樹脂をより均一に覆うことができ、キャリア芯材の表面を覆わない樹脂粒子が発生することを抑制することができる。以下同様である。
後述する初期キャリアの場合、機械的衝撃力を付与する温度、時間は、まず、(1)室温程度(例えば、15〜35℃)で、5〜30分間混合攪拌した後、(2)加熱温度として105〜130℃で、10〜60分間混合攪拌するとよい。なお、後者の加熱温度も、左記の範囲に特に制限されず、(被覆用樹脂のガラス転移点+5℃)〜(被覆用樹脂のガラス転移点+20℃)であることが好ましい。無論、(1)を経ず、直接(2)を行ってもよい。
ここで、上記の(2)における混合時間(処理時間)を長くすることによって、被覆樹脂の密度が上がり抵抗を下げることができ、他方、混合時間(処理時間)を短くすることによって被覆樹脂の密度が下がり抵抗を上げることができる。本発明においては、このような混合時間(処理時間)を調整することによっても上記特定の関係を満たすように制御することができる。
なお、機械的衝撃力の大きさは、通常、周速3〜20m/secとされ、好ましくは4〜15m/secとされる。かかる範囲であれば、ブロッキングの発生を抑制し、一方、樹脂被覆層や、キャリア芯材が破壊されることを抑制する効果がある。
・工程(3):冷却工程
この工程(3)においては、公知の冷却処理が行われてもよい。公知の冷却処理としては、工程(2)の終了後、樹脂被覆層を有するキャリアを室温で静置することが挙げられる。
また、樹脂被覆型のキャリアの作製方法として、特開2012−103334号公報の図1に示す高速攪拌混合機を用いて、樹脂被覆型のキャリアを作製してもよい。
(キャリア抵抗調整方法)
上記のように、本発明においては、補給用キャリアの抵抗値と、初期キャリアの抵抗値とが特定の関係を有していることを特徴とする。かかる特定の関係になるように制御する方法として、上記では、本焼成の温度の調整(つまり、キャリア芯材の抵抗値の調整)や、被覆用樹脂の添加量(被覆樹脂層に使用する被覆樹脂量)の調整(被覆用樹脂の量を減らすことにより抵抗を下げることができる)や、被覆用樹脂粒子の混合時間(被覆樹脂層形成時の処理時間)の調整(被覆樹脂被覆時の処理時間を延ばすことにより低抵抗化を図ることができる)について記載したが、その他、抵抗調整剤の添加量調整でも調整することが可能である。
ただし、長期間に亘って印刷機を使用した場合(つまり、耐久時)の抵抗値の変動の抑制や、抵抗調整剤のトナーへの移行による帯電量の低下を考慮すると、被覆用樹脂粒子の添加量(被覆樹脂層に使用する被覆樹脂量)の調整や、被覆用樹脂粒子の混合時間(被覆樹脂層形成時の処理時間)の調整によって、キャリア抵抗を調整することが好ましい。換言すれば、本発明によれば、抵抗調整剤を添加せずに、キャリア抵抗調整を行うことができるので、耐久中における抵抗調整剤の脱離がそもそも起こらず、無論、トナーに移行することによる低帯電量トナーの発生や、トナー飛散の悪化が起こらないという効果がある。
(補給用トナー)
本発明の補給用二成分現像剤を構成する補給用トナーは、補給用トナー母体粒子と、必要に応じて外添剤とを含む。
(補給用トナー母体粒子)
補給用トナー母体粒子は、結着樹脂および着色剤を含むことが好ましく、その他の添加剤(内添剤)を含有する場合もある。
(結着樹脂)
本発明の好ましい実施形態によれば、結着樹脂は、結晶性樹脂および非晶性樹脂を含む。また、本発明の好ましい実施形態によれば、前記補給用トナーが、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含む。結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂等の結晶性樹脂を用いることによって、そのシャープメルト性により、トナーの低温定着性を向上させることができ、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減することができる。そうすることで、プリントスピードの高速化、紙種の拡大、環境負荷低減等の問題を解決することができる。
他方、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性樹脂(例えば、非晶性ポリエステル樹脂)とを混合して用いることにより、熱定着時に結晶性ポリエステル樹脂の融点を超えるときに結晶部分が融解し、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性樹脂(例えば、非晶性ポリエステル樹脂)とが相溶化することで低温定着化を図ることができる。しかし、結晶性ポリエステルは抵抗値が低いことからキャリア側の抵抗が低下すると、トナーの帯電量が低下し、カブリが生じて画質が低下してしまう場合がある。また感光体から転写媒体への転写率が低下し、あるいは、キャリア付着といった現象が生じるといった場合がある。これに対し、本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂と、非晶性樹脂(例えば、非晶性ポリエステル樹脂)とを混合して用いても、トナーの帯電量の低下を抑制し、カブリを防ぎ、画質の低下を抑制することができ、また感光体から転写媒体への転写率が低下を抑制し、あるいは、キャリア付着といった現象の発生を抑制することができる。このように、結晶性ポリエステルを使用したトナーではトナー側の抵抗値も低下し、帯電量を保持することが困難になるが、本発明によれば、帯電量の低下を抑制し、キャリア抵抗とトナー抵抗との両方が低くなることを防ぎ、耐久を通してキャリア抵抗値をコントロールすることができ、帯電量を保持することが可能となり、トナー画像定着時の熱エネルギーの低減と高品質の画像提供の両立が可能となる。
(結晶性樹脂)
結晶性樹脂とは、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂などが挙げられるが、帯電性や低温定着性の観点から、特に、結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。よって、本発明の好ましい形態によれば、前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂である。以下、結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
結晶性ポリエステル樹脂における『結晶性』とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10(℃)以内であることを意味する。一方、半値幅が10℃を超える樹脂や、階段状の吸熱量変化を示す、又は明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂(無定形高分子)を意味する。
結晶性ポリエステル樹脂は、公知の触媒(例えば、オクチル酸スズ、チタンテトライソプロポキシド)を利用して、酸成分(例えば、下記の多価カルボン酸)と、アルコール成分(例えば、下記の多価アルコール)とを反応させる一般的なポリエステルの重合法によって製造され得る。
当該重合法の例には、直接重縮合およびエステル交換法が含まれ、当該重合法は、例えばモノマーの種類によって適宜に使い分けられる。
上記結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、180〜250℃の重合温度で製造することができる。必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合で発生する水やアルコールを除去しながら上記モノマーを反応させる。モノマーが反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、例えば、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合すべき酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
また、その他の結着樹脂を含んでいてもよい。その他の結着樹脂を含む、結晶性ポリエステル樹脂としては、一部が変性された変性結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。この「一部が変性された」とは、この結晶性ポリエステル樹脂を「結晶性ポリエステル重合セグメント」として「他の重合セグメント」を含み、当該「他の重合セグメント」として、ビニル重合セグメント、非晶性ポリエステル重合セグメントなどを含むことを言う。
よって、本発明の好ましい実施形態によれば、前記結晶性ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル重合セグメントと、他の重合セグメントとが化学結合している、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂である。かかる構成を有することによって、全体に占めるポリエステル重合セグメントの比率が減り、それによって水分吸着性を低減することができ、トナーの抵抗値低下を低減できる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における他の重合セグメントは、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。かかる範囲であることによって、水分吸着性の低減効果を効率よく発現させ、低温定着性を向上させることができる。
なお、本発明では、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、グラフト状のものだけでなく、ブロック状のものも含まれる。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、前記他の重合セグメントが、ビニル重合セグメントである。ビニル系重合セグメントを有する樹脂成分は水分吸着性が小さいため、ビニル系重合セグメントを有することによって、トナーの抵抗値低下を低減できる。
かような一部が変性された変性結晶性ポリエステル樹脂としては、例えばスチレン−(メタ)アクリル樹脂のセグメント(ビニル重合セグメント)を含む。
上記スチレン−(メタ)アクリル樹脂は、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合体の分子構造を有し、例えば、当該化合物のラジカル重合によって合成することが可能である。上記化合物は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、スチレンおよびその誘導体、ならびに、(メタ)アクリル酸およびその誘導体が含まれる。
上記スチレンおよびその誘導体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ラウリルスチレン、2,4−ジメチルスチレンおよび3,4−ジクロロスチレンが含まれる。
上記(メタ)アクリル酸およびその誘導体の例には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエチルが含まれる。
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合重合生成物の分子構造を有し、例えば、これらの縮合重合によって合成することが可能である。
上記多価カルボン酸は一種でもそれ以上でもよい。当該多価カルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、二重結合を有するジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、これらの無水物、および、これらの低級アルキルエステルが含まれる。中でも、結晶性ポリエステル樹脂を得るためには、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
上記脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,14−テトラデカンジカルボン酸、および1,18−オクタデカンジカルボン酸が含まれる。
上記芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、およびメサコニン酸が含まれる。
上記二重結合を有するジカルボン酸の例には、マレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸および3−オクテンジオイック酸が含まれる。中でも、コストの観点から、フマル酸またはマレイン酸が好ましい。
上記3価以上のカルボン酸の例には、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、および、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、が含まれる。
上記多価アルコールは、一種でもそれ以上でもよい。当該多価アルコールの例には、脂肪族ジオールおよび3価以上のアルコールが含まれる。中でも、脂肪族ジオールが結晶性ポリエステル樹脂を得る観点から好ましく、特に、主鎖部分の炭素数が2〜20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。
当該脂肪族ジオールが、上記直鎖型脂肪族ジオールであると、ポリエステルの結晶性が維持され、当該ポリエステルの溶融温度の降下が抑えられる。このため、耐トナーブロッキング性、画像保存性および低温定着性に優れる。また、実用上、材料を入手しやすい。これらの観点から、当該主鎖部分の炭素数は、5〜14であることがより好ましい。
上記結晶性ポリエステル樹脂の合成に好適に用いられる脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールおよび1,14−エイコサンデカンジオールが含まれる。中でも、入手容易性の観点から、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールまたは1,10−デカンジオールが好ましい。
上記3価以上のアルコールとの例には、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが含まれる。
なお、上記スチレン−(メタ)アクリル樹脂の形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。以下も同様である。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
(非晶性樹脂)
非晶性樹脂は、特に限定されるものではないが、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。なお、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg1とし、2度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg2としたとき、上記非晶性樹脂のTg1が、35〜80℃であることが好ましく、特に45〜65℃であることが好ましい。また、上記非晶性樹脂のTg2は20〜70℃であることが好ましく、特に30〜55℃であることが好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg1およびTg2)は、非晶性樹脂(特に非晶性ポリエステル樹脂)のTgは、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量測定装置を用いて得ることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行う。2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、非晶性樹脂(特に非晶性ポリエステル樹脂)のオンセット温度をTgとする。
非晶性樹脂は、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などであってもよいし。さらに、非晶性樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂であってもよく、非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、下記の、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。
また、その他の結着樹脂を含んでいてもよい。その他の結着樹脂を含む、非晶性ポリエステル樹脂としては、一部が変性された変性非晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。この「一部が変性された」とは、この非晶性ポリエステル樹脂を「非晶性ポリエステル重合セグメント」として「他の重合セグメント」を含み、当該「他の重合セグメント」として、ビニル重合セグメント、結晶性ポリエステル重合セグメントなどを含むことを言う。
よって、本発明の好ましい実施形態によれば、前記非晶性ポリエステル樹脂が、非晶性ポリエステル重合セグメントと、他の重合セグメントとが化学結合している、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂である。かかる構成を有することによって、全体に占めるポリエステル重合セグメントの比率が減り、それによって水分吸着性を低減することができ、トナーの抵抗値低下を低減できる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における他の重合セグメントは、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。かかる範囲であることによって、水分吸着性の低減効果を効率よく発現させ、低温定着性を向上することができる。
なお、本発明では、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、グラフト状のものだけでなく、ブロック状のものも含まれる。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、前記他の重合セグメントが、ビニル重合セグメントである。ビニル系重合セグメントを有する樹脂成分は水分吸着性が小さいため、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂が、ビニル系重合セグメントを有することによってトナーの抵抗値低下を低減できる。
かような一部が変性された変性非晶性ポリエステル樹脂としては、例えばスチレン−(メタ)アクリル樹脂のセグメント(ビニル重合セグメント)を含む。
上記スチレン−(メタ)アクリル樹脂は、ラジカル重合性の不飽和結合を有する化合物のラジカル重合体の分子構造を有し、例えば、当該化合物のラジカル重合によって合成することが可能である。上記化合物は、一種でもそれ以上でもよく、その例には、スチレンおよびその誘導体、ならびに、(メタ)アクリル酸およびその誘導体が含まれる。
上記スチレンおよびその誘導体の例には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ラウリルスチレン、2,4−ジメチルスチレンおよび3,4−ジクロロスチレンが含まれる。
上記(メタ)アクリル酸およびその誘導体の例には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエチルが含まれる。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸;これらの無水物やこれらの低級(炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を含むことが望ましい。
多価カルボン酸としては、定着性を確保するため、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用してもよい。これら多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール、脂環式ジオールが望ましく、より望ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、定着性を確保するため、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。これら多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記結着樹脂を合成する際のモノマー成分には、得られる樹脂の分子量を調整するための連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤は、一種でもそれ以上でもよく、本実施形態の効果を奏する範囲内において、上記の目的を達成可能な量で用いられる。当該連鎖移動剤の例には、2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン、および、スチレンダイマー、が含まれる。
(着色剤)
本発明の補給用トナー母体粒子には着色剤を添加することができる。着色剤としては公知の着色剤が使用できる。
具体的には、イエロートナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にC.I.ピグメントイエロー74が好ましい。イエロートナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量部である。
具体的には、マゼンタトナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などが挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にC.I.ピグメントレッド122が好ましい。マゼンタトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.00〜7.00質量部であることが好ましく、より好ましくは1.52〜4.16質量部である。
具体的には、シアントナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー15:3などが挙げられる。シアントナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量部である。
ブラックトナーに含有される着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
(内添剤)
本発明の補給用トナー母体粒子は、必要に応じて、荷電制御剤、離型剤などの内添剤を含む。
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤及び負帯電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
(外添剤)
本発明の補給用トナー母体粒子には、流動性や帯電性を改善する目的で外添剤を添加することもできる。外添剤としては、例えば、数平均一次粒子径5〜30nmの粒径の、シリカ粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
耐熱保管性及び環境安定性の観点から、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されていてもよく、表面処理剤は、特に好ましくは、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(補給用トナーの製造方法)
次に、本発明の補給用トナーの製造方法について説明する。本発明の補給用トナー母体粒子の製造方法は、乳化凝集法であることが好ましい。乳化凝集法を採用することによって、補給用トナー母体粒子の小粒径化が図れ、微粉成分の発生を抑制できることで粒度分布がシャープな補給用トナー粒子を得られる利点がある。また、製造時の所要エネルギーが少ないという利点もある。
乳化凝集法による補給用トナー製造では、粒子表面性すなわち凝集安定性の異なる複数種の微粒子(着色剤、結着樹脂、離型剤等)を用いて粒径成長させる。
乳化凝集法は、結着樹脂を含む結着樹脂微粒子の分散液、着色剤微粒子の分散液、離型剤の分散液などの補給用トナー母体粒子を構成する成分の分散液を、水系の環境下にて混合し、凝集剤の添加によってこれらを凝集させ、必要に応じて凝集停止剤を添加して粒径制御を行い、融着によって形状制御を行なう方法で、これにより、補給用トナー母体粒子を製造する。
まず、結着樹脂の樹脂微粒子を形成し、この樹脂微粒子を凝集、融着させる。より具体的には、結着樹脂微粒子(結晶性樹脂および/または非晶性樹脂)を水系媒体中へ投入、分散させ、結着樹脂微粒子の分散液を作製する。この際、必要に応じ、結着樹脂には離型剤を予め含有させておいてもよいし、別途、水系媒体中に離型剤を分散させ、離型剤分散液を作製しておいてもよい。この際、予め分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤)を使用しておいてもよく、公知のpH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム)などでpHを8〜11程度に調整してもよい。また、製造した結着樹脂を予め所望の粒径になるように粉砕しておいてもよい。
また、別途、水系媒体中に着色剤微粒子を分散させ、着色剤微粒子分散液を作製しておく。この際も、分散のために、上記適宜公知の界面活性剤を使用してもよい。
次いで、水系媒体中で前述の結着樹脂微粒子と、離型剤と、着色剤微粒子とを凝集させ、これら粒子を融着させて補給用トナー母体粒子を作製する。この際、これらを一緒にして凝集させてもよいし、任意の順序で凝集させてもよい。好適な形態では、樹脂微粒子分散液と、離型剤分散液とを混合した水系媒体中に、着色剤微粒子分散液を添加して、アルカリ金属塩やアルカリ土類(第2族)金属塩の等を凝集剤として添加した後、樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、樹脂微粒子同士を融着させる。この際の粒子成長反応の温度は、70〜90℃程度が好ましく、時間は、30〜180分程度である。そして、補給用トナー母体粒子の大きさが目標の大きさになった時に、塩(凝集停止剤)を添加して凝集を停止させる。
その後、反応系を加熱処理することにより、補給用トナー母体粒子の形状を所望の形状にするまで熟成を行い、補給用トナー母体粒子を完成させる。熟成処理として、液温を85〜100℃にして、0.5〜6時間加熱撹拌を行い、平均円形度を通常、0.91以上好ましくは0.920〜0.996になるまで粒子の融着を進行させる。
なお、体積基準のメジアン径は、例えば、ベックマン・コールター社製コールターマルチサイザー3によって測定できる。平均円形度は、後述する実施例で使用した方法により測定できる。なお、熟成工程では熱および撹拌によるせん断をトナー粒子に加えることにより、凝集粒子中の樹脂微粒子同志を融着させるとともに粒子の円形度および表面性を制御することができる。
(凝集剤)
凝集粒子形成工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、電荷中和反応と架橋作用を使い粒子を成長させるものとして金属塩から選択されるものが好適である。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酢酸亜鉛などを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(凝集停止剤)
凝集粒子の成長を停止させる凝集停止剤としては凝集作用を緩和させる塩が用いられる。例えば塩化ナトリウム、多価有機酸またはその塩、アミノ酸、ポリホスホン酸またはこれらの塩を使用することができる。また系内のpHを変化させることによって凝集作用を緩和させる方法も用いることができる。
上記のように補給用トナー母体粒子を作製し、公知の方法(例えば、ヘンシェルミキサー等による混合)で、上記の外添剤を添加することによって、補給用トナーを作製することができる。
(補給用二成分現像剤)
本発明の補給用キャリアは、上記の補給用トナーと組み合わされることで、補給用二成分現像剤となる。
すなわち、本発明によれば、上記の補給用キャリアと、補給用トナーと、を含む、補給用二成分現像剤が提供される。
本発明の補給用二成分現像剤は、補給用キャリアと、補給用トナーとを、好ましくは上記Bの範囲になるように、トナーボトルの中に封入し、10回程度上下に振ることによって作製することができる。
他方で、本発明の初期二成分現像剤は、初期キャリアと、初期トナーとを、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機(Vブレンダー)などの種々の公知の混合装置を用いて混合することにより得られる。Vブレンダーを用いる場合、回転数は、好ましくは10〜35rpmで、より好ましくは15〜30rpmである。また、混合時間は、好ましくは10〜30分で、より好ましくは15〜25分である。初期キャリアと、初期トナーとを予め、上記のような条件で混合をすることによって、これらが十分攪拌されて現像器内で使用されることになり好ましい。なお、補給用キャリアと、補給用トナーとは、現像器内に補給された後に、現像器内で十分攪拌されうる。
補給用キャリアと補給用トナーとの混合比は、補給用キャリア100質量部に対して補給用トナー300〜2500質量部であることが好ましく、500〜2000質量部であることがより好ましい。
初期キャリアと初期トナーとの混合比は、初期キャリア100質量部に対して初期トナー5.00〜9.00質量部であることが好ましく、6.00〜8.20質量部であることがより好ましい。
(初期キャリアおよび初期トナー)
続いて、初期キャリアおよび初期トナーについて説明する。
まず、初期キャリアであるが、式1に示される抵抗値になるようにキャリアを製造し、上記の特定の関係を満たすようにする以外は、基本的に補給用キャリアについてした説明が同様に妥当する。ここで、キャリア抵抗調整方法については、上記述べたとおりである。また、補給用キャリアを説明する際に、初期キャリアについて説明を行う部分があったが、それも参照することで初期キャリアを準備することができる。
次に、初期トナーであるが、画質維持の観点で、補給用トナーと同じものを用いることがよい。ここで、初期トナーの説明は、上記の補給用トナーの説明が同様に妥当する。
(画像形成方法)
以下、本発明に係るオートリファイニング現像方式を採用した電子写真画像形成方法について、具体的に説明する。
本発明の補給用キャリアおよび補給用二成分現像剤は、静静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、トナーおよびキャリアを含む二成分現像剤により顕像化する現像プロセスにおいて、余剰の二成分現像剤が現像器から排出されると共に、補給用トナーおよび補給用キャリアが現像器内に補給される、特定のオートリファイニング現像方式を採用した電子写真画像形成方法において用いられるものである。
このような電子写真画像形成方法においては、現像器内に含まれる初期キャリアと特定の関係を有する、補給用キャリアを用いれば、他は特に限定されず公知のものを用いることができる。
本発明に係るオートリファイニング現像方式を採用した電子写真画像形成方法は、公知の画像形成装置を用いて行われてもよく、例えば、特開2014−240923号公報の図1の装置を用いて行ってもよい。同文献に開示される図1の画像形成装置は、画像読取部、操作表示部、画像処理部、画像形成部、用紙搬送部、定着部および制御部を備える。
当該画像形成装置は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー像形成装置である。画像形成装置には、CMYKの4色に対応する感光ドラムを中間転写ベルトの走行方向(鉛直方向)に直列配置し、中間転写ベルトに一回の手順で各色トナー像を順次転写させる縦型タンデム方式が採用されている。すなわち、画像形成装置は、感光ドラム上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルトに転写(一次転写)し、中間転写ベルト上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に転写(二次転写)することにより、画像を形成する。
本発明の好ましい実施形態によれば、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、トナーおよびキャリアを含む二成分現像剤により顕像化する現像プロセスを有する、画像形成方法であって、前記現像プロセスが、現像器から余剰の二成分現像剤が排出されると共に、上記の補給用二成分現像剤が現像器内に補給されるオートリファイニング現像方式であり、前記現像器内に含まれる初期キャリアの質量が、470g以上である、画像形成方法が提供される。
プロダクションプリント分野では印字率(黒化面積率)が高い画像が連続で出力されることが想定され、その時に初期キャリア質量が少ないと(初期の二成分現像剤量が少ないと)、新たに補給されたトナーとキャリアとが混合される時間が少なく、十分に帯電されないトナーが現像されることになる。よって、一定以上の初期キャリア質量(特には、470g以上)であることで、トナー飛散やカブリ等の不良の発生を抑制することができる。
ここで、現像器の容量であるが、例えば初期キャリア質量が470gであると、現像剤初期キャリアの嵩密度1.6g/ccとして、293.75ccの空間が必要となり、実際にはその1.2倍程度の容量で、352.5ccが現像器の容量が必要である。初期キャリア量が470gでは印字率100%の画像に追従するのは困難であるため、600g程度の現像剤が必要となる。その際は、450cc程度の現像器となる。なお、実施例の評価方法で使用している「bizhub Press(登録商標) C1070」では初期の現像剤量は620gに設定されている。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「重量部」または「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
<トナー母体粒子の製造例1>
(1)着色剤微粒子分散液の調製
n−ラウリル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に添加し、この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)24.5質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス(登録商標)Wモーション CLM−0.8」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理を行うことにより、体積基準のメジアン径が126nmである着色剤微粒子の分散液を調製した。これを着色剤微粒子分散液〔A〕とする。
(2)離型剤分散液の調製
パラフィンワックス(融点:73℃)50質量部、n−ラウリル硫酸ナトリウム 2質量部、イオン交換水200質量部を添加した後、120℃に加熱して、IKA社製、ウルトラタラックス(登録商標)T50で混合・分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が200nm、固形分20%の離型剤分散液を得た。これを離型剤分散液〔B〕とする。
(3)非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製
(3−1)非晶性ポリエステル樹脂の合成
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物360質量部、テレフタル酸80質量部、フマル酸55質量部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ、200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ、軟化点が104℃になった時点で取り出し、非晶性ポリエステル樹脂を合成した。
(3−2)非晶性ポリエステル樹脂粒子微分散液の調製
得られた非晶性ポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径(D50)が250nmである非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔1〕を調製した。
(4)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製
(4−1)結晶性ポリエステル樹脂の合成
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、1,6−ヘキサンジオール 118質量部、テトラデカン二酸271質量部、および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.8質量部を10回に分割して入れ、235℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下にて1時間反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂を合成した。
(4−2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製
得られた結晶性ポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径(D50)が200nmである結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔2〕を調製した。
(5)トナー母体粒子の作製
<トナー母体粒子1の製造例>
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔1〕を固形分換算で250質量部、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔2〕を固形分換算で50質量部、離型剤分散液〔B〕を固形分換算で25質量部、イオン交換水2000質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。その後、着色剤微粒子分散液〔A〕を固形分換算で40質量部投入した。次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)測定した平均円形度が0.955になった時点で30℃に冷却し、トナー母体粒子の分散液を調製した。
このトナー母体粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成し、このウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥することにより、トナー母体粒子〔1〕を作製した。
<トナー母体粒子の製造例2>
トナー母体粒子の製造例1において、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔1〕の代わりに、下記の通りに調製したビニル変性非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔3〕を用いたことの他は同様にして、トナー母体粒子〔2〕を作製した。
(6)ビニル変性非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製
(6−1)ビニル変性非晶性ポリエステル樹脂の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 480質量部
テレフタル酸 130質量部
フマル酸 85質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 8.6質量部
スチレン 131質量部
ブチルアクリレート 30質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、ビニル変性非晶性ポリエステル樹脂(ハイブリット非晶性ポリエステル樹脂)を得た。
(6−2)ビニル変性非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製
得られたビニル変性非晶性ポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径(D50)が170nmであるビニル変性非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔3〕を調製した。
<トナー母体粒子の製造例3>
トナー母体粒子の製造例1において、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔2〕の代わりに、下記の通りに調製したビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔4〕を用いたことの他は同様にして、トナー母体粒子〔3〕を作製した。
(7)ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製
(7−1)ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂の合成
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
テトラデカン二酸 271質量部
1,6−ヘキサンジオール 118質量部
チタンテトライソプロポキシド 0.8質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 8.6質量部
スチレン 131質量部
ブチルアクリレート 30質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリット結晶性ポリエステル樹脂)を得た。
(7−2)ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製
得られたビニル変性結晶性ポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメジアン径(D50)が170nmであるビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔4〕を調製した。
<トナー母体粒子の製造例4>
トナー母体粒子の製造例1において、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔1〕の代わりに、ビニル変性非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔3〕を、結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔2〕の代わりに、ビニル変性結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液〔4〕を用いたことの他は同様にして、トナー母体粒子〔4〕を作製した。
<トナー1〜4の作製>
(外添剤処理工程)
(外添剤の添加)
上記で作製したトナー母体粒子〔1〕〜〔4〕に、それぞれ疎水性シリカ(数平均一次粒径12nm、疎水化度68)を1.0質量%および疎水性酸化チタン(数平均一次粒径20nm、疎水化度64)を1.5質量%添加した。「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業(株)製)を用いて混合を行った後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去することによりトナー〔1〕〜〔4〕を製造した。
<キャリア1の作製>
(キャリア芯材粒子1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe2O3:50mol%およびSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて2時間粉砕した。バインダーとしてPVAを固形分に対して0.4質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1250℃、5時間保持し、本焼成を行った。
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後、磁力選鉱により低磁力品を分別し、キャリア芯材粒子1を得た。キャリア芯材粒子の粒径(体積平均粒径:D50)は32μm、抵抗値は8.26×107(Ω・cm)、飽和磁化は60.4Am2/kg、残留磁化は0.8Am2/kgであった。なお、キャリア芯材粒子の粒径は、以下のように測定した。
(キャリア個数平均粒径測定)
磁性体粒子(キャリア芯材粒子)の体積基準のメディアン径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置「HEROS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて湿式にて測定した。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定した。そして、測定用の磁性体粒子(キャリア芯材粒子)を0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機「US−1」(asone社製)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを「HEROS KA」に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始した。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作製し、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50とした。
(磁化の測定)
フェライト粒子及びキャリアの磁化の測定は、以下のようにして求めた。すなわち、測定装置として、高感度型振動試料型磁力計「VSM−P7−15型」(東英工業社製)を使用し、試料は25mgを用いて測定磁場を−5000/4π A/m(−5kOe)から5000/4π A/m(+5kOe)まで段階的に変化させて、磁場の強さ1000/4π A/m(1000Oe)における磁化σ1000(A・m2/kg)を求め、この値を飽和磁化とした。
残留磁化の値は、上記磁化の測定の中で、磁場の強さ0における磁化の値(A・m2/kg)として求めた。
(キャリア芯材粒子2〜3の作製)
表1に示した条件にした以外は「キャリア芯材粒子1」の作製と同様にして「キャリア芯材粒子2」〜「キャリア芯材粒子3」を作製した。
(芯材被覆用樹脂の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸メチルを「質量比=50:50」(共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、「被覆材」を作製した。得られた被覆材における重量平均分子量は50万であった。
(キャリア1の作製)
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、芯材粒子として上記で準備した「キャリア芯材粒子」100質量部と、「被覆材」を3.2質量部投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆材を被覆させて、「キャリア1」を製造した。
(キャリア2〜12の作製)
表2に示した条件にした以外は「キャリア1」の作製と同様にして「キャリア2」〜「キャリア12」を作製した。
(初期二成分現像剤の作製)
表3に示す抵抗値(X)を有する初期キャリア579.7質量部(A)と、表3に示す初期トナー40.3質量部とを配合して初期二成分現像剤を作製した。初期二成分現像剤の作製は、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)環境下で、Vブレンダーを用いて、初期トナーと、初期キャリアとを混合することにより行った。Vブレンダーの回転数を20rpm、撹拌時間を20分間で処理を行い、さらに、混合物を目開き125μmのメッシュで篩い分けて作製した。なお、すべての実施例、比較例で、初期トナーの質量は、「40.3質量部」であった。
なお、「表3に示す抵抗値(X)を有する初期キャリア」は、上記で作製したキャリア種から表3に示す抵抗値(X)であるものを選択して使用している。
(補給用キャリアおよび補給用トナー(補給用二成分現像剤)ボトルの作製)
図1に示すトナーボトル(現像剤収容容器1)に、表3に示す補給用トナー990質量部と、表3に示す抵抗値(Y)を有する補給用キャリアとを、「補給用キャリア/補給用二成分現像剤(補給用トナー+補給用キャリア)(質量%)」比率が、表3に示す(B)に示されるように封入し(例えば10質量%であれば補給用キャリアを110質量部添加)、10回上下に振ることによりトナーボトルを作製した。なお、「表3に示す抵抗値(Y)を有する補給用キャリア」は、上記で作製したキャリア種から表3に示す抵抗値(Y)であるものを選択して使用している。
なお、図1に示すように、現像剤収容容器1は、現像剤を収容する中空の容器本体2と、容器本体2に取り付けられる排出部材3と、排出部材3に取り付けられるキャップ4を有している。突条部12は、容器本体2の後端部から先端部に向けて螺旋状に形成されている。なお、突条部12の螺旋の向きは、容器本体2の回転方向に対応させて設定される。排出部材3は、容器本体2の開口部を塞ぐようにして容器本体2に取り付けられる。また、口部16は、円筒状に形成されている。図1に示す現像剤収容容器1は、特開2015−045815号公報に示すものと同様である。
<評価方法>
以上のようにして得られた二成分現像剤を用いて、デジタル印刷機「bizhub PRESS(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)の現像方式を正転現像方式に変更して下記の実写テストを行い、評価を行った。
(キャリア付着)
初期および120万枚印刷後に無画像チャートを現像し、その感光体表面に付着しているキャリア個数をルーペ観察により5視野カウントし、その平均の100cm2当たりのキャリア付着個数をもってキャリア付着とした。なお、キャリア付着個数が50個以下を実用レベル(合格)とし、10個以下を特に優れているものと評価した。なお、ここで言う「キャリア」は、初期キャリアと、補給用キャリアとが混合されたものである。
−評価基準−
◎:10個以下、
○:10個より大きく30個以下、
×:30個より大きい。
(トナーの機内飛散(汚れ)の評価)
トナーの機内飛散(汚れ)は、高温高湿(30℃・80%RH)環境下において、白紙を120万枚プリントした後、トナーの機内への飛散状況を目視で観察し、下記評価基準により評価した。評価が◎と○であれば合格とする。なお、ここで言う「トナー」は、初期トナーと、補給用トナーとが混合されたものである。
−評価基準−
◎:機内がトナーにて汚れていない状態、
○:僅かに機内へのトナー飛散が見られる状態、
×:トナー飛散が非常に多く、機内をメンテナンスする必要がある状態。
(カブリ濃度)
まず、画像形成前のA4サイズの白紙について、反射濃度計「RD−918(マクベス社製)を用いて20箇所の絶対画像濃度を測定して平均することにより、白紙濃度を算出した。
温度20℃、相対湿度50%RHの常温常湿環境下において、初期およびA4判上質紙上に印字率が5%の文字画像を120万枚プリントし、その後、白紙をプリントした。当該白紙について、上記と同様に20箇所の絶対画像濃度を測定して平均することにより平均濃度を算出し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
評価が○であれば合格とした。
−評価基準−
○:カブリ濃度が0.010未満の時、
×:カブリ濃度が0.010以上の時。
(リード部白抜け)
「リード部白抜け」という現象は、図2に示すように、ベタ部BTとハーフトーン部HTが副走査方向に隣接するパッチ画像を正転現像により現像する場合において、ベタ部BTとハーフトーン部HTの境界においてハーフトーン部HTの境界部分が白く抜ける現象をいう(特開2011−085640号公報を参照)。
図2(a)は、ベタ部BTとハーフトーン部HTが副走査方向に隣接するトナー像の一例を示す模式図であり、図2(b)は、現像領域GRにおいて感光体ドラム31Yと現像ローラ46Yが同じ方向に移動しながら現像を行う現像方式(正転現像)を示す模式図である。
温度20℃、相対湿度50%RHの常温常湿環境下において、初期およびA4判上質紙上に印字率が5%の文字画像を120万枚プリント後、図2に示す画像をプリントし、リード部白抜け評価を実施した。評価が△又は○であれば合格とした。
−評価基準−
○:まったくリード部白抜けが発生していない、
△:目視でリード部白抜けが認識できるが許容範囲内である、
×:著しくリード部白抜けが発生しており、許容範囲外である。
(キャリア抵抗の測定)
本発明のキャリア抵抗とは、磁気ブラシ(素材:アルミ)による現像条件下に動的に測定される抵抗である。感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア芯材を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより(測定装置: KEITHLEY社製、型番6487)、キャリア芯材の抵抗を下記式により求めた。
DVR(Ωcm)=(V/I)×(N×L/Dsd)、
DVR:キャリア抵抗(Ωcm)、
V:現像スリーブとドラム間の電圧(V)、
I:測定電流値(A)、
N:現像ニップ幅(cm)、
L:現像スリーブ長(cm)、
Dsd:現像スリーブとドラム間距離(cm)。
本発明においては、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmにて測定を行った。
<考察>
表4に示されるように、本発明のすべての実施例は、キャリア付着、機内汚れ(トナー飛散)、カブリ、リード部白抜けを抑制し、優れたものと言える。より詳しくは、キャリア抵抗低下を有意に防いでキャリア付着を抑止し、キャリア抵抗上昇を有意に防いでリード部白抜けを防ぎ、帯電量の低下を防ぐことでトナー飛散、カブリを抑制している。
これに対し、比較例1は、初期キャリアとしてキャリア2を使用しているが、キャリア2はキャリア芯材に対する被覆用樹脂の添加量が過剰のため抵抗が高くなり過ぎ、式1に規定する初期キャリアの抵抗値の上限を超えてしまいリード部白抜けが発生してしまっている。
比較例2は、初期キャリアとしてキャリア3を使用しているが、キャリア3はキャリア芯材に対する被覆用樹脂の添加量が過少のため抵抗が低くなり過ぎ、式1に規定する初期キャリアの抵抗値の下限を下回り、キャリア付着が発生し、機内の汚れも発生し、カブリも発生している。
比較例3は、補給用キャリアとしてキャリア9を使用しているが、キャリア9は、処理時間(120℃混合時間)が短過ぎ抵抗が高くなってしまい、式2にて算出される補給用キャリアの抵抗値の上限値を超えてしまう。それによりリード部白抜けが発生してしまっている。
また、比較例4は、補給用キャリアとしてキャリア10を使用している。比較例4と、実施例6との差異は、基本的に、樹脂の被覆量と、補給用キャリアの比率(B)である。前者の樹脂の被覆量には大きな差異はないが、後者の補給用キャリアの比率(B)は、実施例6では15質量%であるのに対し、比較例4では10質量%である。ここで、補給用キャリアの比率(B)が高いと、補給用キャリア量が多くなるため、抵抗値の適正範囲が変わる。その影響によって、比較例4では、式2にて算出される補給用キャリアの抵抗値の下限値を下回る。それにより、機内汚れ、カブリ、リード部白抜けが発生してしまっている。
比較例5は、初期キャリアの抵抗値が過度に高い。また、比較例6は、初期キャリアの抵抗値が過度に高く、他方、補給用キャリアの抵抗値が過度に低くなっている。また、比較例7は、初期キャリアの抵抗値が過度に低くなっている。また、比較例9は、初期キャリアの抵抗値が過度に低く、補給用キャリアの抵抗値も過度に低くなっている。よって、これらも本発明の所期の目的を達成することができていない。