JP2017180751A - 動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造 - Google Patents

動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造 Download PDF

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Abstract

【課題】必要な場合に適切なキャンセル油圧が発生できる機能を維持しつつ、ピストンの移動の応答性を向上できる動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造を提供する。
【解決手段】動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造は、回転可能に設けられたクラッチドラム102と、クラッチドラムに設けられたシリンダ部に当該クラッチドラムの軸方向に移動可能に支持されたピストン108であって、シリンダ部とピストンとの間に設けられた加圧室120の油圧によって軸方向の一方に移動するピストンと、軸方向の他方からピストンに遠心油圧を印加する作動油が収容されるキャンセル室を、ピストンとの間に設けるキャンセルプレート110と、キャンセルプレートに設けられた貫通孔134におけるキャンセル室からの作動油の流出を許容するとともに貫通孔におけるキャンセル室への作動油の流入を禁止し、閉弁方向にプリロードが与えられた逆止弁132と、を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造に関する。
従来、車両の自動変速機に含まれる動力伝達装置として、クラッチを動かすピストンに関して、当該ピストンを収容するシリンダ内の作動油に作用した遠心力に基づく油圧(以下、遠心油圧と称される)によって、当該ピストンが不本意に動作しないよう、遠心油圧キャンセラが設けられたものが、知られている。
遠心油圧キャンセラでは、ピストンを挟んだシリンダ室の反対側にキャンセル室が設けられる。キャンセル室に収容された作動油からピストンに作用する遠心油圧によって、シリンダ室に収容された作動油からピストンに作用する遠心油圧が、相殺される。
キャンセル室が設けられたクラッチドラムの非回転状態が比較的長く続くと、キャンセル室の作動油が抜け落ちてしまう場合がある。キャンセル室から作動油が抜けてしまうと、遠心油圧キャンセラの効果は得られない。そこで、キャンセル室内とキャンセル室外とを繋ぐ通路に、クラッチドラムの回転状態では開き非回転状態では閉じる弁が設けられた遠心油圧キャンセラが、提案されている(特許文献1)。特許文献1において、弁は、上記通路において、キャンセル室内からキャンセル室外への作動油の流れを禁止し、キャンセル室外からキャンセル室内への作動油の流れを許容する逆止弁である。クラッチドラムの回転状態では、弁体が遠心力によって閉弁位置から開弁位置へ移動して開弁状態となるため、キャンセル室内からキャンセル室外への作動油の流れが許容される。他方、クラッチドラムの非回転状態では、弁体は閉弁位置に留まるため、キャンセル室内からキャンセル室外への作動油の流れが禁止される。
特開2010−91083号公報
上記特許文献1の遠心油圧キャンセル構造の場合、弁が閉じた状態では、キャンセル室内に作動油が留まる。よって、弁が閉じた状態で、シリンダ室内の油圧の上昇によりピストンが動作しようとしても、キャンセル室内に留まった作動油によって、ピストンの動作が妨げられてしまう。また、上記特許文献1の遠心油圧キャンセラ構造の場合、クラッチドラムの非回転状態にあっては、弁が閉じている。したがって、上記特許文献1の遠心油圧キャンセラ構造が、クラッチドラムの非回転状態においてピストンの動作が必要となるクラッチに適用された場合、ピストンが動作し難く、ひいては、クラッチの遮断状態から接続状態への切り替えの応答性が低下してしまう虞があった。
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、クラッチドラムの非回転状態において、キャンセル室からの作動油の抜けを防止できるとともに、所要のクラッチの応答性を得ることが可能な動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造を提供することである。
本発明の一態様である動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造は、回転可能に設けられたクラッチドラムと、上記クラッチドラムに設けられたシリンダ部に当該クラッチドラムの軸方向に移動可能に支持されたピストンであって、上記シリンダ部と上記ピストンとの間に設けられた加圧室の油圧によって上記軸方向の一方に移動するピストンと、上記軸方向の他方から上記ピストンに遠心油圧を印加する作動油が収容されるキャンセル室を、上記ピストンとの間に設けるキャンセルプレートと、上記キャンセルプレートに設けられた貫通孔における上記キャンセル室からの作動油の流出を許容するとともに上記貫通孔における上記キャンセル室への作動油の流入を禁止し、閉弁方向にプリロードが与えられた逆止弁と、を備える。
上記構成によれば、上記逆止弁は、閉弁方向にプリロードが与えられている。クラッチドラムの非回転状態にあっては、当該プリロードによって、逆止弁の閉弁状態が維持されることにより、キャンセル室からの作動油の抜けを防止できる。他方、ピストンの動作に伴うキャンセル室の油圧の上昇により、逆止弁はプリロードに抗って開弁状態となり、これにより、キャンセル室の作動油は、貫通孔を介して流出できる。よって、クラッチドラムの非回転状態においてピストンの動作が必要となる場合にあっても、十分なクラッチの応答性を得ることができる。
図1は、実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造を含む動力伝達装置の概略構成図である。 図2は、実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造を含む動力伝達装置における各変速段とクラッチおよびブレーキの作動状態の関係を示す作動表である。 図3は、実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造を含む動力伝達装置における各回転要素(ギヤ)の回転速度を示す速度線図である。 図4は、第1実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造の模式図である。 図5は、第1実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造の逆止弁の拡大断面図である。 図6は、第2実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造の模式図である。 図7は、実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造の逆止弁の変形例を示す拡大断面図である。
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、それらの構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも1つを得ることが可能である。
以下に、実施形態の動力伝達装置の構成を図1から図3を参照して説明する。なお、実施形態に係る構成要素や、当該要素の説明について、複数の表現を併記することがある。当該構成要素及び説明について、記載されていない他の表現がされることは妨げられない。さらに、複数の表現が記載されない構成要素及び説明について、他の表現がされることは妨げられない。
図1は、実施形態に係る遠心油圧キャンセル構造を含む動力伝達装置20の概略構成図である。図1に示す動力伝達装置20は、前輪駆動車両に搭載されるエンジンのクランクシャフトに接続されるとともに、エンジンからの動力を左右の駆動輪(前輪)に伝達可能である。なお、動力伝達装置20はこれに限らない。
図1に示すように、動力伝達装置20は、例えばアルミ合金製のトランスミッションケース22と、当該トランスミッションケース22の内部に収容される発進装置(流体伝動装置)23と、オイルポンプ24と、自動変速機25と、ギヤ機構(ギヤ列)40と、デファレンシャルギヤ(差動機構)50およびトランスミッションケース22に取り付けられる油圧制御装置60とを有する。
発進装置23は、入力側のポンプインペラ23pと、出力側のタービンランナ23tと、ステータ23sと、ワンウェイクラッチ23oと、ロックアップクラッチ23cと、ダンパ23dとを有するトルクコンバータである。ただし、発進装置23は、ステータ23sを有さない流体継手であっても良い。
ポンプインペラ23pは、エンジンのクランクシャフトに接続される。タービンランナ23tは、自動変速機25の入力軸(入力部材)26に接続される。ステータ23sは、ポンプインペラ23p及びタービンランナ23tの内側に配置され、タービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油の流れを整流する。ワンウェイクラッチ23oは、ステータ23sの回転方向を一方向に制限する。
オイルポンプ24は、ポンプアッセンブリと、外歯ギヤと、内歯ギヤと、を有するギヤポンプである。ポンプアッセンブリは、ポンプボディとポンプカバーとを有する。外歯ギヤは、ハブを介して発進装置23のポンプインペラ23pに接続される。内歯ギヤは、当該外歯ギヤに噛合する。オイルポンプ24は、エンジンからの動力により駆動され、オイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引して油圧制御装置60へと圧送する。油圧制御装置60は、発進装置23や自動変速機25により要求される油圧を生成する。
自動変速機25は、例えば、8段変速式の変速機として構成される。自動変速機25は、入力軸26と、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための四つのクラッチC1,C2,C3及びC4、二つのブレーキB1,B2、及びワンウェイクラッチF1と、を有する。
自動変速機25の第1遊星歯車機構30は、サンギヤ31と、リングギヤ32と、二つのピニオンギヤ33a,33bと、プラネタリキャリヤ34とを有する。サンギヤ31は、外歯歯車である。リングギヤ32は、サンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車である。ピニオンギヤ33a,33bは、互いに噛合するとともに、一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する。プラネタリキャリヤ34は、二つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転自在(回転自在)且つ公転自在に複数保持する。
第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定される。第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、入力軸26に一体回転可能に連結される。第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリヤ34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
自動変速機25の第2遊星歯車機構35は、第1サンギヤ36aと、第2サンギヤ36bと、リングギヤ37と、複数のショートピニオンギヤ38aと、複数のロングピニオンギヤ38bと、プラネタリキャリヤ39とを有する。第1サンギヤ36a及び第2サンギヤ36bは、外歯歯車である。リングギヤ37は、第1及び第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車である。ショートピニオンギヤ38aは、第1サンギヤ36aに噛合する。ロングピニオンギヤ38bは、第2サンギヤ36b及び複数のショートピニオンギヤ38aに噛合するとともにリングギヤ37に噛合する。プラネタリキャリヤ39は、複数のショートピニオンギヤ38a及び複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持する。
第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、自動変速機25の出力部材として機能する。入力軸26からリングギヤ37に伝達された動力は、ギヤ機構40、デファレンシャルギヤ50、及びドライブシャフト51を介して左右の駆動輪に伝達される。また、プラネタリキャリヤ39は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持される。当該プラネタリキャリヤ39の回転方向は、ワンウェイクラッチF1により一方向に制限される。
クラッチC1は、ピストンと、複数の摩擦プレートと、複数のセパレータプレートと、作動油が供給される油室とを有する油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)である。クラッチC1は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを互いに接続するとともに、リングギヤ32及び第1サンギヤ36aの接続を解除することができる。
クラッチC2は、ピストンと、複数の摩擦プレートと、複数のセパレータプレートと、作動油が供給される油室とを有する油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC2は、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39とを互いに接続するとともに、入力軸26及びプラネタリキャリヤ39の接続を解除することができる。
クラッチC3は、ピストンと、複数の摩擦プレートと、複数のセパレータプレートと、作動油が供給される油室とを有する油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC3は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32とクラッチC1のクラッチドラムとを互いに接続するとともに、リングギヤ32及びクラッチC1のクラッチドラムの接続を解除することができる。
クラッチC4は、ピストンと、複数の摩擦プレートと、複数のセパレータプレートと、作動油が供給される油室とを有する油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチである。クラッチC4は、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続するとともに、プラネタリキャリヤ34及び第2サンギヤ36bの接続を解除することができる。
ブレーキB1は、複数の摩擦プレートと、複数のセパレータプレートと、作動油が供給される油室とを有する油圧サーボを有する多板摩擦式油圧ブレーキである。ブレーキB1は、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に回転不能に固定するとともに、第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる。
ブレーキB2は、複数の摩擦プレートと、複数のセパレータプレートと、作動油が供給される油室とを有する油圧サーボを有する多板摩擦式油圧ブレーキである。ブレーキB2は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39をトランスミッションケース22に回転不能に固定するとともに、プラネタリキャリヤ39のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる。
ワンウェイクラッチF1は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39に連結(固定)されるインナーレースと、アウターレースと、複数のスプラグと、複数のスプリング(板バネ)と、保持器とを有する。ワンウェイクラッチF1は、インナーレースに対してアウターレースが一方向に回転した際に各スプラグを介してトルクを伝達するとともに、インナーレースに対してアウターレースが他方向に回転した際にインナーレース及びアウターレースを相対回転させる。ただし、ワンウェイクラッチF1は、ローラ式といったようなスプラグ式以外の構成を有するものであっても良い。
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2及びワンウェイクラッチF1は、油圧制御装置60による作動油の給排を受けて動作する。図2は、一つの実施形態の自動変速機25の各変速段と、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2、及びワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表である。自動変速機25では、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1を図2に示すように係合または解放させて接続関係を変更することで、前進回転方向に8通りおよび後進回転方向に2通りの動力伝達経路、すなわち第1速段から第8速段の前進段と第1速段から第2速段の後進段とを設定することができる。なお、図2において、「白丸」は係合、「黒丸」はエンジンブレーキ時に係合することを意味する。また、図3は、自動変速機25が変速した際の各回転要素、例えばサンギヤ31、リングギヤ32、プラネタリキャリヤ34、第2サンギヤ36b、プラネタリキャリヤ39、リングギヤ37、第1サンギヤ36aにおける回転速度の関係を例示する速度線図である。
例えば、前進第1速段(1st)は、クラッチC1とワンウェイクラッチF1を係合させるとともに、残りのクラッチC2,C3,C4およびブレーキB1,B2を解放させることにより形成される。なお、エンジンブレーキ状態のときにはブレーキB2も係合する。
前進第2速段(2nd)は、クラッチC1とブレーキB1を係合させるとともに、残りのクラッチC2,C3,C4、ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
前進第3速段(3rd)は、クラッチC1,C3を係合させるとともに、残りのクラッチC2,C4、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
前進第4速段(4th)は、クラッチC1,C4を係合させるとともに、残りのクラッチC2,C3、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
前進第5速段(5th)は、クラッチC1,C2を係合させるとともに、残りのクラッチC3,C4、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
前進第6速段(6th)は、クラッチC2,C4を係合させるとともに、残りのクラッチC1,C3、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
前進第7速段(7th)は、クラッチC2,C3を係合させるとともに、残りのクラッチC1,C4、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
前進第8速段(8th)は、クラッチC2、ブレーキB1を係合させるとともに、残りのクラッチC1,C3,C4、ブレーキB2およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
後進第1段(REV1)は、クラッチC3、ブレーキB2を係合させるとともに、残りのクラッチC1,C2,C4、ブレーキB1およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
後進第2段(REV2)は、クラッチC4、ブレーキB2を係合させるとともに、残りのクラッチC1,C2,C3、ブレーキB1およびワンウェイクラッチF1を解放させることにより形成される。
図1に戻り、ギヤ機構40は、カウンタドライブギヤ41と、カウンタシャフト42と、カウンタドリブンギヤ43と、ドライブピニオンギヤ(ファイナルドライブギヤ)44と、デフリングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)45とを有する。
カウンタドライブギヤ41は、自動変速機25の第2遊星歯車機構35のリングギヤ37に連結される。カウンタシャフト42は、自動変速機25の入力軸26と平行に延びる。カウンタドリブンギヤ43は、カウンタシャフト42に固定されるとともに、カウンタドライブギヤ41に噛合する。ドライブピニオンギヤ44は、カウンタドリブンギヤ43から軸方向に離間するようにカウンタシャフト42に一体に成形(あるいは固定)される。デフリングギヤ45は、ドライブピニオンギヤ44に噛合するとともにデファレンシャルギヤ50に連結される。
第1実施形態
上述したように構成される動力伝達装置20に適用可能な遠心油圧キャンセル構造を備えるクラッチ機構を以下に示す。本実施形態の遠心油圧キャンセル構造は、例えば、遮断状態から接続状態への切り替わりによりクラッチドラムを非回転状態から回転状態とするクラッチであって、クラッチドラムに支持された摩擦係合要素を、加圧室の油圧によって軸方向の一方に押すピストンを有するようなクラッチに利用することが好適である。一例としては、本実施形態の遠心油圧キャンセル構造を、図1におけるクラッチC4に適用することで効果を得ることができる。
図4は、クラッチC4の拡大図である。クラッチC4は、クラッチハブ100と、クラッチドラム102と、摩擦プレート104と、セパレータプレート106と、ピストン108と、キャンセルプレート110と有する。なお、以下では、回転中心Aの軸方向を単に軸方向と称し、回転中心Aの径方向を単に径方向と称する。
クラッチハブ100は、動力入力部材としての第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34に一体化(連結)され、当該プラネタリキャリヤ34と一体に回転する。クラッチドラム102は、動力出力部材(動力の伝達対象)としての第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bに連結(固定)され、当該第2サンギヤ36bと一体に回転する。
クラッチドラム102は、自動変速機25の回転中心A(入力軸26の軸)を中心として回転可能に設けられた略円筒状の外周壁部112と、略円盤状の底壁部114と、略円筒状の内周壁部116とを有する。外周壁部112は、クラッチドラム102の回転中心Aの軸方向に延びている。さらに、外周壁部112は、クラッチC3のクラッチドラムに係合(固定)され、当該クラッチC3のクラッチドラムと連結部材とを介して第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bに連結される。底壁部114は、外周壁部112の軸方向の一端(図4では右端)から径方向の内方に延びている。内周壁部116は、底壁部114の内周部から外周壁部112の内側に位置するように軸方向に延びている。外周壁部112、底壁部114、及び内周壁部116は、例えばアルミニウム合金等を鋳造することにより一体に成形される。
クラッチドラム102の内周壁部116には、図示を省略しているが例えば鉄製のスリーブが嵌合され、このスリーブ内に、環状のフロントサポートが嵌挿される。フロントサポートは、クラッチC4及び当該クラッチC4を収容するトランスミッションケース22に固定され、当該トランスミッションケース22の一部を形成する。
クラッチドラム102の内周壁部116は、トランスミッションケース22のフロントサポートにより回転自在に支持される。なお、フロントサポートの筒状部に、発進装置23(トルクコンバータ)のステータ23sに連結されたステータシャフトが、ワンウェイクラッチ23oを介して回転不能に連結(固定)される。
クラッチドラム102の底壁部114は、外側底壁部114aと、内側底壁部114b、接続壁部114cとを有する。外側底壁部114aは、外周壁部112の基端から内周壁部116側(内方)に向かって延びている。内側底壁部114bは、外側底壁部114aに対してエンジン側(クラッチドラム102の開放側の端部と反対側すなわち図4おける右側)にずれた位置に設けられるとともに、外側底壁部114aと内周壁部116との間に延びる。接続壁部114cは、略円筒状で軸方向に延び、外側底壁部114aと内側底壁部114bとを接続する。したがって、底壁部114は、内周側が突出した段付構造となる。また、クラッチドラム102は、内側壁部114b、接続壁部114c、内周壁部116によってピストン108を収容するシリンダ部を形成する。
摩擦プレート104は、軸方向に移動可能にクラッチハブ100に支持されている。クラッチハブ100の外周面100aには、スプライン100bが設けられる。スプライン100bは、軸方向に延び、各摩擦プレート104の内周部に形成された凹凸部と係合可能である。つまり、クラッチハブ100のスプライン100bに、軸方向に移動可能に、複数の摩擦プレート104が嵌合されて、摩擦プレート104とクラッチハブ100とが一体的に回転する。摩擦プレート104は、両面に摩擦材が貼着された環状部材である。
セパレータプレート106は、クラッチドラム102の軸方向に移動可能にクラッチドラム102に支持されている。クラッチドラム102の外周壁部112の内周面112aには、スプライン112bが設けられる。スプライン112bは、クラッチドラム102の軸方向に延び、各セパレータプレート106の外周部に形成された凹凸部と係合可能である。つまり、外周壁部112のスプライン112bに、クラッチドラム102の軸方向に移動可能に、複数のセパレータプレート106が嵌合されて、セパレータプレート106とクラッチハブ100とが一体的に回転する。この場合、セパレータプレート106は、軸方向において、クラッチハブ100のスプライン100bに嵌合された複数の摩擦プレート104と交互に配置される。また、外周壁部112のスプライン112bには、その端部、例えば図4における摩擦プレート104のうち最も左に位置する摩擦プレート104と当接可能となるようにバッキングプレート(外摩擦板)106aが嵌合される。バッキングプレート106aは、外周壁部112に装着されたスナップリング112cにより軸方向に支持される。セパレータプレート106は、両面が平滑に形成された環状部材である。
ピストン108は、クラッチドラム102に設けられたシリンダ部に当該クラッチドラム102の軸方向に移動可能に支持され、摩擦プレート104とセパレータプレート106とをクラッチドラム102の軸方向に押圧して係合させる。内周壁部116の外周面は、ピストン108をクラッチドラム102の軸方向に移動自在に支持する。ピストン108は、受圧部108aと、押圧部108bと、円筒状の延出部108cとを有する。受圧部108aの内周部は、内周壁部116の外周面により移動自在に支持される。また、受圧部108aの外周部は、接続壁部114cにより移動自在に支持される。押圧部108bは、受圧部108aの外周部と延出部108cを介して接続されて、最もエンジン側(図4における右側)に位置するセパレータプレート106と当接する。
押圧部108bの外周部に、クラッチドラム102の外周壁部112のスプライン112bと係合可能な凹凸部が形成される。これにより、ピストン108は、スプライン112bによってもガイドされる。また、ピストン108の延出部108cは、クラッチドラム102の底壁部114の一部を形成する接続壁部114cと嵌合される。延出部108cの外周面と接続壁部114cの内周面との間にはOリング118等のシール部材が配置される。また、受圧部108aと内周壁部116との間にはOリング119等のシール部材が配置される。これにより、クラッチドラム102の底壁部114の内側壁部114d(シリンダ部の一部)とピストン108の受圧部108aの受圧面108dとの間にクラッチC4を係合させるための作動油が供給される加圧室120が形成される。
クラッチドラム102の内周壁部116は、遠心油圧キャンセル構造を形成するキャンセルプレート110を、クラッチドラム102と一体回転するように支持する。キャンセルプレート110は、ピストン108を挟んで加圧室120とは反対側(図4における左側)に位置する。キャンセルプレート110は、略円盤状の内側隔壁部110aと、略円盤状の外側隔壁部110bと、接続隔壁部110cとを有する。接続隔壁部110cは、内側隔壁部110aの外径側と外側隔壁部110bの内径側とを接続する。内側隔壁部110aの内径側端部110dは、内周壁部116に装着されたスナップリング等により軸方向に支持される。また、外側隔壁部110bの外径側端部110eには、シール部材122(例えばリップシール)が装着される。シール部材122は、ピストン108の延出部108cの内周面に摺接する。これにより、キャンセルプレート110は、ピストン108の背面108eとキャンセルプレート110のキャンセル室内面110fとにより、クラッチドラム102が回転したときに加圧室120内で発生する遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル遠心油圧を発生するためのキャンセル室124を形成する。
キャンセルプレート110のキャンセル室内面110fとピストン108の背面108eとの間には、ピストン108の押圧部108bをセパレータプレート106から離間させた状態に付勢するための複数のリターンスプリング126が配置されている。
クラッチC4の加圧室120には、図1に示す油圧制御装置60から作動油(クラッチC4の係合油圧)が内周壁部116に設けられた油路128を通って供給される。その結果、ピストン108の押圧部108bは、油圧制御装置60の油圧制御にしたがったタイミングおよび移動速度でセパレータプレート106に向かって移動し、セパレータプレート106と摩擦プレート104とを押圧してクラッチC4を係合状態とする。また、油圧制御装置60の油圧制御により加圧室120から作動油を排出することでピストン108を逆方向(図4の右方向)に移動させて、押圧部108bをセパレータプレート106から離反させ、セパレータプレート106と摩擦プレート104との押圧を解除してクラッチC4を解放状態とする。
キャンセル室124には、内周壁部116に設けられた供給油路130を通して、作動油(例えばキャンセル油、ドレン油)が供給される。クラッチドラム102が回転している場合、加圧室120内では遠心力によって作動油が径方向外方に移動して受圧面108dを軸方向の一方(図4の左方)に押圧するような油圧(遠心油圧)が発生する。つまり、油圧制御装置60による制御とは別に、押圧部108bをセパレープレート106に向けて移動させるような油圧が発生する。一方でキャンセル室124内でも遠心力によって作動油が径方向外方に移動して、背面108eを軸方向他方(図4の右方)に押圧するような油圧(遠心油圧)が発生する。つまり、押圧部108bをセパレータプレート106から離間させるような油圧(加圧室120で発生する遠心油圧とは逆方向のキャンセル遠心油圧)が発生する。その結果、加圧室120で発生した遠心油圧をキャンセル室124で発生したキャンセル遠心油圧によって相殺することができる。
本実施形態のキャンセルプレート110には、逆止弁132が設けられている。キャンセルプレート110には、キャンセル室内面110fとその反対側であるキャンセル室外面110gとの間で貫通する貫通孔134が設けられており、逆止弁132は、貫通孔134に設けられている。この逆止弁132は、貫通孔134におけるキャンセル室124からの作動油の流出を許容し、貫通孔134におけるキャンセル室124への作動油の流入を禁止するように構成されている。貫通孔134は、図5に示すように、キャンセル室内面110f側の細径孔134aとキャンセル室外面110g側の細径孔134aより大径の大径孔134bとが連結されて形成される段付孔である。貫通孔134の連結部は、キャンセル室内面110f側からキャンセル室外面110g側に向かい拡径するテーパ面の弁座を形成し、当該弁座に弁体であるチェックボール136がスプリング138によって弁座方向(細径孔134aの方向)に付勢されている。スプリング138は、大径孔134bの一部に設けられた突起部等のステイ138aによって支持されている。
キャンセル室124の油圧によりチェックボール136を開弁方向に押す力がスプリング138の弾性的な付勢力(プリロード)を越えた場合、チェックボール136が大径孔134b側に移動(開弁)して、キャンセル室124内の作動油がキャンセル室外面110g側へ流出することを許容する。また、キャンセル室124の油圧がスプリング138の付勢力以下の場合、逆止弁132は閉弁状態を維持して、キャンセル室外面110g側からキャンセル室124への作動油の流入を禁止する。また、キャンセル室124内の作動油のキャンセル室外面110g側への流出(漏れ)を禁止する。
例えば、クラッチC4は、クラッチドラム102の非回転状態で加圧室120に作動油を供給して昇圧させて、ピストン108(押圧部108b)をセパレータプレート106に向けて移動させて、クラッチ係合(接続)状態にする場合がある。例えば、図2において、前進第8速段(8th)から前進第6速段(6th)にシフトダウンする場合、図1、図4に示されるように、クラッチC4のクラッチドラム102は、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bに連結されているので、図2に示されるように、前進第8速段では、クラッチC4のクラッチドラム102は、ブレーキB1によって非回転状態になっている。そして、図3に示されるように、クラッチドラム102の非回転状態でクラッチC4を係合させた後、クラッチドラム102を回転させることになる。このような場合に、仮に、キャンセル室124に作動油が残っていると、その残っている作動油がピストン108をクラッチ係合方向に移動させる場合の抵抗になってしまうことがある。つまり、クラッチC4の接続時の応答性の低下の原因になる場合がある。この点、逆止弁132を備える本実施形態の遠心油圧キャンセル構造の場合、加圧室120の昇圧によりピストン108が係合方向(図4の左方向)に移動した場合、キャンセル室124の油圧は上昇する。そして、キャンセル室124の油圧によりチェックボール136を開弁方向に押す力がスプリング138の弾性的な付勢力(プリロード)を越えた時点で、逆止弁132が開弁し、キャンセル室124内の作動油のキャンセル室外面110g側への流出を許容する。したがって、スプリング138の付勢力を適宜設定して逆止弁132の開弁圧を設定しておくことにより、キャンセル室124に残留する作動油がピストン108の移動の妨げになることを低減し、クラッチC4の応答性を向上させることができる。なお、クラッチC4の場合、前進第8速段(8th)から前進第4速段(4th)にシフトダウンする場合もクラッチドラム102が非回転状態でクラッチ接続を行うことになるので、同様の効果を得ることができる。なお、逆止弁132は、クラッチドラム102が回転している状態であっても、加圧室120の昇圧に応じて開弁する。また、逆止弁132は、クラッチドラム102の回転状態にあっては、チェックボール136(弁体)に作用した遠心力により、当該チェックボール136が閉弁位置から開弁位置へ移動し、逆止弁132が開弁状態となるよう、構成されてもよい。すなわち、クラッチドラム102の回転状態において逆止弁132が閉弁状態を維持することは、必須では無い。
この場合、逆止弁132の開弁圧は適宜設定できる。例えば、開弁圧の下限値は、クラッチドラム102の回転により貫通孔134が車両上下方向で最も下方となる位置(下死点)にきたときの作動油の自重により開弁しない圧力に設定することができる。例えば、キャンセル室124における貫通孔134の下死点よりも上方の容積をVとし、下死点を通り車両上下方向と交差する断面積をS、作動油の密度をρとしたとき、逆止弁132の開弁圧は、p>V×ρ/Sに設定することができる。
このように、逆止弁132の開弁圧を設定することにより、クラッチドラム102の非回転状態や作動油が供給されていないような状態において、キャンセル室124から作動油が必要以上に流出することがなくなる。つまり、キャンセル室124の作動油の保持性を向上し、クラッチドラム102が回転した際に必要なキャンセル遠心油圧を発生させることができる。
逆止弁132は、キャンセルプレート110に少なくとも1つ形成されればよいが、略円環状のキャンセルプレート110の周方向に等間隔で複数形成されることが望ましい。例えば、周方向に4個設けることで、キャンセル室124内の油圧の偏りを軽減して、ピストン108の移動をよりスムーズにすることができる。
なお、貫通孔134(逆止弁132)のキャンセルプレート110における回転中心からの位置によりキャンセル室124に保持される作動油の量が決まる。つまり、貫通孔134の位置(回転中心からの半径R)は、キャンセル室124内で貫通孔134の位置よりも径方向外側に収容される作動油によって所要のキャンセル遠心油圧が得られるように設定される。貫通孔134は、例えば、キャンセルプレート110の径方向の外側の外径側端部110eよりも径方向の内側の内径側端部110dに近い位置に設けられる。つまり、図4において、二点鎖線Bで示される位置より外周側の円筒領域に作動油が保持可能となり、キャンセル遠心油圧を生じさせる作動油の容積を確保しやすくなる。また、二点鎖線Bで示される位置より内側の円筒領域の作動油は、逆止弁132により排出可能となる。
上述の説明では、クラッチC4に適用した遠心油圧キャンセル構造を示したが、クラッチC3にもこの遠心油圧キャンセル構造は適用可能であり、同様の効果を得ることができる。クラッチ3Cの場合、前進第2速段(2th)から前進第3速段(3th)にシフトアップする場合、前進第8速段(8th)から前進第7速段(7th)にシフトダウンする場合、前進第8速段(8th)から前進第3速段(3th)にシフトダウンする場合にもクラッチドラム102が非回転状態でクラッチ接続動作をすることになる。したがって、本実施形態の遠心油圧キャンセル構造を備えることで、上述シフトチェンジの際の応答性の向上が可能となる。
第2実施形態
第1実施形態で示した構造により、クラッチC4が非回転状態で加圧室120に作動油を供給してピストン108を係合方向に移動させる場合に、キャンセル室124に存在する作動油が抵抗にならないようにできる。一方、図6に示すように、クラッチC4が係合状態(クラッチ接続状態)から解放状態(クラッチ遮断状態)に移行する場合、例えば、前進第6速段(6th)から前進第5速段(5th)にシフトダウンする場合、油圧制御装置60は加圧室120から作動油を排出させる。その結果、ピストン108の受圧部108aが加圧室120側(図6の右方向)に移動して係合を解除する。それに伴いキャンセル室124は容積拡大となる。この場合、クラッチドラム102は回転状態でありキャンセル室124には作動油で満たされている場合があるが、キャンセル室124は容積拡大に伴い内部が負圧となるので、キャンセルプレート110に設けられた逆止弁132は閉弁状態となる。つまり、キャンセル室124は略密封状態となり、ピストン108の解放方向への移動の抵抗となる場合がある。
そこで、第2実施形態の遠心油圧キャンセル構造のキャンセルプレート110は、貫通孔134(逆止弁132)よりもクラッチドラム102の回転中心の近くに開口部140を備えている。この開口部140は、キャンセルプレート110を挟んでキャンセル室124と当該キャンセル室124の反対側とを繋ぐ。つまり、開口部140は、キャンセルプレート110を貫通してキャンセル室外面110gとキャンセル室内面110fとを連通させている。
この開口部140は、略円環状のキャンセルプレート110に一つだけ設けられている。例えば、同様な開口部140がキャンセルプレート110に複数形成された場合、いずれかの開口部140が空気の入口となり、他の開口部140が作動油の出口になってしまう。つまり、キャンセル室124の作動油の保持を十分に行えなくなってしまう場合がある。一方、開口部140をキャンセルプレート110に一つだけ形成した場合、作動油が流出するための空気の導入がないため、一つだけ形成された開口部140からの作動油の漏れは起こりにくい。開口部140の径は極小さなもので十分であり、作動油の粘性によりキャンセル室124から作動油が漏れない程度の径とすることができる。もし、キャンセル室124が負圧になろうとする場合、開口部140からキャンセル室124外の空気等を取り込み可能となる。その結果、キャンセル室124内は負圧になりにくく、キャンセル室124への作動油の流入を禁止する逆止弁132を有する遠心油圧キャンセル構造が、ピストン108の解放方向への移動を妨げる原因になることを軽減する。つまり、ピストン108の解放時の応答性を向上することができる。
なお、開口部140を設けた場合、キャンセル室124の油圧が高まると開口部140から作動油が漏れる場合がある。しかしながら、開口部140は、キャンセルプレート110において、逆止弁132(貫通孔134)よりも更に回転中心に近い位置に形成されている。つまり、開口部140から作動油が漏れる場合は、既に逆止弁132が開弁状態となり、作動油がキャンセル室外面110g側に排出される。したがって、開口部140からの作動油の漏れは、キャンセル室124の作動油の保持性能には影響しない。
このように、第2実施形態の遠心油圧キャンセル構造によれば、クラッチドラム102が非回転状態のときにクラッチ接続を行う場合およびクラッチドラム102が回転状態でクラッチ接続を解放する場合の両方において、クラッチC4のピストン108の応答性を向上することができる。
図7は、上述した第1実施形態、第2実施形態の遠心油圧キャンセル構造に利用可能な逆止弁の他の例の断面図である。図7に示す逆止弁は、キャンセルプレート110に形成された貫通孔134をキャンセル室外面110g側から覆う板ばね142である。板ばね142で構成する逆止弁の開弁圧は、チェックボール136及びスプリング138で構成される逆止弁132の開弁圧の設定と同様に、キャンセル室124における貫通孔134の下死点Mよりも上方の容積をVとし、下死点Mを通り車両上下方向と交差する断面積をS、作動油の密度をρとしたとき、板ばね142の開弁圧は、p>V×ρ/Sに設定することができる。板ばね142は、例えば圧力付与が解除された後は形状復帰(閉弁)するような弾性を有する材料が採用可能であり、例えば、ステンレス鋼の薄片で形成することができる。板ばね142は、ネジ等によりキャンセル室外面110gに固定することができる。このように、シンプルな構成の板ばね142を用いることにより、部品コストの低減ができるとともに、開弁圧の設定を材料の選択や板厚の選択によって容易に行うことができるため、設計自由度の向上に寄与できる。
以上説明したように、本実施形態の動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造20は、クラッチドラム102と、ピストン108と、キャンセルプレート110と、逆止弁132とを備える。クラッチドラム102は、回転可能に設けられる。ピストン108は、クラッチドラム102に設けられたシリンダ部(外周壁部112と、底壁部114と、内周壁部116)にクラッチドラム102の軸方向に移動可能に支持され、シリンダ部とピストン108との間に設けられた加圧室120の油圧によって軸方向の一方に移動する。キャンセルプレート110は、軸方向の他方からピストン108に遠心油圧を印加する作動油が収容されるキャンセル室124を、ピストン108との間に設ける。逆止弁132は、キャンセルプレート110に設けられた貫通孔134におけるキャンセル室124からの作動油の流出を許容するとともに貫通孔134におけるキャンセル室124への作動油の流入を禁止し、閉弁方向にプリロードが与えられる。この構成によれば、例えば、逆止弁132は、閉弁方向にプリロードが与えられている。クラッチドラム102の非回転状態にあっては、当該プリロードによって、逆止弁132の閉弁状態が維持されることにより、キャンセル室124からの作動油の抜けを防止できる。他方、ピストン108の動作に伴うキャンセル室124の油圧の上昇により、逆止弁132はプリロードに抗って開弁状態となり、これにより、キャンセル室124の作動油は、貫通孔134を介して流出できる。よって、クラッチドラム102の非回転状態においてピストン108の動作が必要となる場合にあっても、十分なクラッチの応答性を得ることができる。
また、本実施形態の動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造20のキャンセルプレート110には、当該キャンセルプレート110を挟んでキャンセル室124と当該キャンセル室124の反対側とを繋ぐ1つのみの開口部140が設けられてもよい。この構成によれば、例えば、ピストン108が解放方向に移動することでキャンセル室124内部が負圧になるような場合には、開口部140を介して空気がキャンセル室124に導入され、キャンセル室124が負圧にならないようにすることができる。その結果、キャンセル室124への作動油の流入を禁止する逆止弁132を有する遠心油圧キャンセル構造において、ピストン108の解放時の応答性を向上することができる。また、キャンセル室124に空気を導入するための入口が一つとなり、他に出入り口が存在しないので、一つだけ設けられた開口部140から作動油が漏れないようにすることができる。
また、本実施形態の動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造20のキャンセルプレート110に設けられた開口部140は、貫通孔134よりもクラッチドラム102の回転中心の近くに設けられてもよい。この構成によれば、開口部140は、貫通孔134よりもクラッチドラム102の回転中心の近くに位置されているので、キャンセル室124内の油圧が上昇した場合には、作動油の流出を目的にする逆止弁132から先に作動油が流出するため、開口部140からの作動油の漏れは遠心油圧キャンセル構造の性能に影響しない。
また、ピストン108は、遮断状態から接続状態への切り替わりによりクラッチドラム102を非回転状態から回転状態とするクラッチC4の、クラッチドラム102に支持された摩擦係合要素(摩擦プレート104、セパレータプレート106)を、加圧室120の油圧によって軸方向の一方に押すものであってもよい。この構成によれば、クラッチドラム102が非回転状態のときにクラッチ接続を行う場合、クラッチC4のピストン108の応答性を向上することができる。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、高さ、数、配置、位置等)は、適宜に変更して実施することができる。
20…動力伝達装置、25…自動変速機、102…クラッチドラム、104…摩擦プレート、106…セパレータプレート、108…ピストン、108a…受圧部、108b…押圧部、108d…受圧面、108e…背面、110…キャンセルプレート、110a…内側壁部、110b…外側壁部、110d…内径側端部、110e…外径側端部、110f…キャンセル室内面、110g…キャンセル室外面、112…外周壁部、114…底壁部、114a…外側壁部、114b…内側壁部、114d…内側壁部、116…内周壁部、120…加圧室、124…キャンセル室、132…逆止弁、134…貫通孔、140…開口部、142…板ばね。

Claims (4)

  1. 回転可能に設けられたクラッチドラムと、
    前記クラッチドラムに設けられたシリンダ部に当該クラッチドラムの軸方向に移動可能に支持されたピストンであって、前記シリンダ部と前記ピストンとの間に設けられた加圧室の油圧によって前記軸方向の一方に移動するピストンと、
    前記軸方向の他方から前記ピストンに遠心油圧を印加する作動油が収容されるキャンセル室を、前記ピストンとの間に設けるキャンセルプレートと、
    前記キャンセルプレートに設けられた貫通孔における前記キャンセル室からの作動油の流出を許容するとともに前記貫通孔における前記キャンセル室への作動油の流入を禁止し、閉弁方向にプリロードが与えられた逆止弁と、
    を備えた動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造。
  2. 前記キャンセルプレートには、当該キャンセルプレートを挟んで前記キャンセル室と当該キャンセル室の反対側とを繋ぐ1つのみの開口部が設けられる請求項1に記載の動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造。
  3. 前記キャンセルプレートに設けられた前記開口部は、前記貫通孔よりも前記クラッチドラムの回転中心の近くに設けられる請求項2に記載の動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造。
  4. 前記ピストンは、遮断状態から接続状態への切り替わりにより前記クラッチドラムを非回転状態から回転状態とするクラッチの、前記クラッチドラムに支持された摩擦係合要素を、前記加圧室の油圧によって前記軸方向の一方に押す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達装置の遠心油圧キャンセル構造。
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