JP2017177808A - ガスバリア性フィルムのベースフィルムおよびガスバリア性フィルム並びに有機elデバイス - Google Patents

ガスバリア性フィルムのベースフィルムおよびガスバリア性フィルム並びに有機elデバイス Download PDF

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忠司 吉岡
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Abstract

【課題】フレキシブル性の高い(折り曲げても割れない)ガスバリア性フィルムを実現するためのガスバリア性フィルムのベースフィルムを提供する。【解決手段】環状オレフィン樹脂フィルム上に硬化樹脂層(A)を有するガスバリア性フィルムのベースフィルムであって、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠した直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを特徴とする、ガスバリア性フィルムのベースフィルムである。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性が必要とされる、食品、医薬品の包装用途、太陽電池、電子ペーパー、有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスなどの電子部材に使用されるガスバリア性フィルムのベースフィルム、およびこのベースフィルムを用いたガスバリア性フィルム、並びにこのガスバリア性フィルムを用いた有機ELデバイスに関する。
ガスバリア性フィルムは、通常、基材フィルム上にガスバリア層が積層された構成となっている。ガスバリア層としては、無機酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の蒸着膜が一般的に知られている。
基材フィルムとしては、各種プラスチックフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の樹脂からなるプラスチックフィルムが知られており、これらの中でもポリエチレンテレフタレートフィルムが広く用いられている。
一方、有機エレクトロルミネッセンス(EL)や液晶等の電子デバイスのガスバリア性フィルムとして、低リタゼーション(複屈折率が小さい)で透明性が高い環状オレフィン樹脂フィルムを基材フィルムとして使用したガスバリア性フィルムが知られている(特許文献1〜3)。
また一方では、基材フィルムとガスバリア層との密着性向上などのために、基材フィルムとガスバリア層との間に、ハードコート層を配置することが提案されている(特許文献3、4)。
特開2007−83644号公報 特開2013−102277号公報 特開2015−24536号公報 特開2006−224577号公報
今後、有機エレクトロルミネッセンス(EL)や液晶等の電子デバイスは、湾曲や屈曲に耐え得る高度なフレキシブル性の付与が検討され、これに使用されるガスバリア性フィルムも湾曲や屈曲に耐え得る高度なフレキシブル性が求められることが予想される。
しかし、基材フィルムとして環状オレフィン樹脂フィルムを使用し、基材フィルムとガスバリア層との間にハードコート層を配置させたガスバリア性フィルムは、折り曲げたときに基材フィルムが割れて破断するという問題があることが判明した。
従って、本発明の目的は、上述の課題に鑑み、フレキシブル性の高い(折り曲げても割れない)ガスバリア性フィルムを実現するためのガスバリア性フィルムのベースフィルム提供することにある。本発明の他の目的は、本発明のガスバリア性フィルムのベースフィルムを用いたガスバリア性フィルム、およびこのガスバリア性フィルムを用いた有機ELデバイスを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の本発明によって達成される。
[1]環状オレフィン樹脂フィルム上に硬化樹脂層(A)を有するガスバリア性フィルムのベースフィルムであって、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠した直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを特徴とする、ガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[2]前記硬化樹脂層(A)が熱硬化樹脂層もしくは活性エネルギー線硬化樹脂層である、[1]に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[3]前記硬化樹脂層(A)の厚みが0.3μm以上4μm未満である、[1]または[2]に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[4]前記硬化樹脂層(A)のナノインデンテーション法により測定される押し込み硬さが、200〜600N/mmの範囲である、[1]〜[3]のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[5]前記硬化樹脂層(A)の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)が2.0nm未満である、[1]〜[4]のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[6]前記環状オレフィン樹脂フィルムの硬化樹脂層(A)を有する面とは反対面に硬化樹脂層(B)を有し、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠した直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[7]前記硬化樹脂層(B)が粒子を含有し、該粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)が0.7以下である、[6]に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[8]前記硬化樹脂層(B)の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)が2.0nm以上10.0nm以下である、[6]または[7]に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルムの少なくとも一方の面にガスバリア層を備えた、ガスバリア性フィルム。
[10]前記ガスバリア層が少なくとも亜鉛酸化物あるいは亜鉛硫化物を含有する、[9]に記載のガスバリア性フィルム。
[11]前記ガスバリア層が、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層である、[9]または[10]に記載のガスバリア性フィルム。
[12]前記酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相における、Zn原子濃度が20〜40atom%、Si原子濃度が5〜20atom%、Al原子濃度が0.5〜5atom%、O原子濃度が35〜70atom%である、[11]に記載のガスバリア性フィルム。
[13]前記ガスバリア層の面に封止粘着剤層を有する、[9]〜[12]に記載のガスバリア性フィルム。
[14][9]〜[13]のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを備えた、有機ELデバイス。
本発明によれば、フレキシブル性が高い(折り曲げても割れない)ガスバリア性フィルムを実現するためのガスバリア性フィルムのベースフィルムを提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、環状オレフィン樹脂フィルムの硬化樹脂層(A)とは反対面に硬化樹脂層(B)を設けることにより、カール抑制性、フィルムの耐傷性、および滑り性が向上する。
本発明のガスバリア性フィルムのベースフィルムを用いることにより、フレキシブル性の高い(折り曲げても割れない)ガスバリア性フィルムを得ることができる。また、本発明の好ましい態様のベースフィルムを用いることにより、ガスバリア性が良好なガスバリア性フィルムを得ることができる。またさらに、本発明の好ましい態様のベースフィルムを用いることにより、カール抑制性、フィルムの耐傷性、および滑り性が向上したガスバリア性フィルムを得ることができる。
また、本発明のガスバリア性フィルムは、有機ELデバイスに好適である。
本発明のガスバリア性フィルムを製造するための巻き取り式スパッタリング装置を模式的に示す概略図である。
本発明のガスバリア性フィルムのベースフィルム(以下、単に「ベースフィルム」と略記することがある)は、環状オレフィン樹脂フィルム上に硬化樹脂層(A)を有する。
本発明のベースフィルムは、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠した直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを特徴とする。つまり、ベースフィルムを、硬化樹脂層(A)が外側になるように直径2mmの円筒形マンドレルに巻き付けたときに、その巻き付け部分の硬化樹脂層(A)にクラックが発生しないことを意味する。
以下の説明において、直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを、「マンドレル値が2mm以下」ということがある。
ベースフィルムのマンドレル値が2mm以下であると、ベースフィルムを折り重ねても、折目部分が割れて破断することはない。しかし一方、ベースフィルムのマンドレル値が2mmより大きくなると(直径2mmの円筒形マンドレルに巻き付けたときに硬化樹脂層(A)にクラックが発生すると)、折目部分からベースフィルムが破断することがある。
これは、環状オレフィン樹脂フィルム自体は、折り重ねても折目部分から破断することはないが、環状オレフィン樹脂フィルム上に従来の一般的なハードコート層を積層したベースフィルムの場合は、折り重ねるとハードコート層にクラックが発生し、そのクラックが原因でベースフィルムが割れて破断することがある。
上記現象は、環状オレフィン樹脂フィルムを用いたときの特有の現象である。従来から広く用いられているポリエチレンテレフタレートフィルムでは、ハードコート層にクラックが発生してもポリエチレンテレフタレートフィルムが破断することはない。
フレキシブルなデバイスに対応するには、それに用いられるガスバリア性フィルムおよびそのベースフィルムは、数千から数万回程度の折り曲げ動作に耐え得るだけの屈曲耐久性が必要であり、上記したようにベースフィルムは、折り重ねても破断しないことが重要である。
[環状オレフィン樹脂フィルム]
本発明にかかる環状オレフィン樹脂フィルムは、環状オレフィン樹脂(COP)あるいは環状オレフィン共重合樹脂(COC)を主成分とする樹脂フィルムである。ここで、主成分とするとは、樹脂フィルムを構成する樹脂成分のうち、COPあるいはCOCの構成比率が50質量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
環状オレフィン樹脂フィルムは、従来から広く用いられているポリエチレンテレフタレートフィルムに比べて、相対的に透湿性が小さく、高い透明性を有しており、有機ELデバイスに使用した際に、発光効率が向上するという特長がある。さらに、低リタゼーション(複屈折率が小さい)で、有機ELデバイスに使用した際、色の視野角依存性が小さいという利点を備えている。
環状オレフィン樹脂(COP)とは、「主鎖に環状オレフィンを含有した繰り返し単位」のみを重合させた樹脂を意味する。環状オレフィン共重合樹脂(COC)とは、少なくとも「主鎖に環状オレフィンを含有した繰り返し単位」と「主鎖に環状オレフィンを含有しないオレフィンからなる繰り返し単位」を共重合させた樹脂を意味する。
COP、COCを構成する環状オレフィンとしては、例えば、
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどの単環式オレフィン、
ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環式オレフィン、
などが挙げられる。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
環状オレフィン共重合樹脂(COC)を構成する環状オレフィン以外の他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
本発明にかかる環状オレフィン樹脂フィルムは、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」、「ゼオノア」(登録商標)、積水化学工業(株)の「エッシーナ」、JSR(株)の「アートン」、日立化成(株)の「オプトレッツ」、三井化学(株)の「アペル」などがある。
環状オレフィン樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、高い柔軟性(折り曲げ性)を確保するという観点から厚みは小さい方が好ましく、具体的には、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。下限の厚みは、引張りや衝撃に対する強度を確保するという観点から10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上が特に好ましい。
本発明における環状オレフィン樹脂フィルムは、低リターデーションであることが好ましい。具体的には、波長550nmの光に対する面内方向のリターデーション(Re550)が500nm以下であることが好ましく、400nm以下が好ましく、300nm以下が特に好ましい。下限は0nmである。
有機ELデバイスの有機EL素子を水蒸気から保護するために用いられるガスバリア性フィルムの場合、ベースフィルムを構成する環状オレフィン樹脂フィルムのリターデーションRe550は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。
また、本発明のベースフィルムは、有機EL表示装置の円偏光板を構成する位相差フィルム(1/4波長板)を兼ねることができる。この場合、環状オレフィン樹脂フィルムは位相差フィルム(1/4波長板)として機能することが好ましい。この場合の環状オレフィン樹脂フィルムのリターデーションRe550は、110〜170nmの範囲が好ましく、120〜150nmの範囲がより好ましく、130〜145nmの範囲が特に好ましい。
環状オレフィン樹脂フィルムの波長550nmの光に対する面内方向のリターデーション(Re550)は、下記式で表される値である。
|nx−ny|×d
(式中、nxは環状オレフィン樹脂フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率を表し、nyは環状オレフィン樹脂フィルムの面内の進相軸方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。)
ここで、面内とは、環状オレフィン樹脂フィルム面内を指し、該フィルムの厚み方向に垂直な面内を指す。リターデーションは、実施例で使用したような複屈折計を用いて平行ニコル回転法により測定できる。
[硬化樹脂層(A)]
本発明にかかる硬化樹脂層(A)は、マンドレル値が2mm以下であることが重要である。即ち、環状オレフィン樹脂フィルム上に硬化樹脂層(A)が積層されたベースフィルムを、硬化樹脂層(A)を外側にして直径2mmの円筒形マンドレルに巻き付けたときに、硬化樹脂層(A)にクラックが発生しないことが重要である。
このような硬化樹脂層(A)は、架橋密度を制御することによって調整することができる。例えば、硬化樹脂層(A)が活性エネルギー線硬化樹脂層である場合、構成する樹脂の重合前のモノマーやオリゴマーの官能基数や分子量を制御することによって調整することができる。
本発明にかかる硬化樹脂層(A)は、熱硬化樹脂層あるいは活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましく、耐屈曲性の観点から、特に活性エネルギー線硬化樹脂層であることがより好ましい。
熱硬化樹脂層は、少なくとも熱硬化樹脂を含有する組成物を硬化せしめた層である。かかる熱硬化樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂等があげられる。これらの樹脂の中でも、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
また、熱硬化樹脂層は、上記樹脂を架橋する架橋剤(例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤)を含有することができる。
上述したように、本発明における硬化樹脂層(A)は活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましい。以下、硬化樹脂層(A)が活性エネルギー線硬化樹脂層である態様について詳細に説明する。
活性エネルギー線硬化樹脂層は、少なくとも活性エネルギー線硬化樹脂を含有する組成物を硬化せしめた層である。活性エネルギー線硬化樹脂は、活性エネルギー線によって重合されて硬化する樹脂を意味する。かかる活性エネルギー線硬化樹脂としては、分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する化合物(モノマーやオリゴマー)が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。かかる化合物としては、例えば、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、ポリエーテル系化合物、シリコーン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、ウレタン系化合物が好ましい。ここで、ウレタン系化合物とは、分子内にウレタン結合「−NHC(O)O−」を有する化合物である。
さらに、ウレタン系化合物として、分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するウレタン系化合物が好ましい。かかるウレタン系化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートあるいはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
尚、本発明において、「・・・(メタ)アクリレート」なる表現は、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」との2つの化合物を含む。
分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するウレタン系化合物(ウレタン(メタ)アクリレートあるいはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
a)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、1〜5官能のポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物、
b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、1〜5官能のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物、
c)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、ポリカーボネートジオールおよび1〜5官能のヒドロキシ変性(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物、
d)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、1〜5官能のヒドロキシ変性エポキシ(メタ)アクリレートとを反応させて得られる化合物。
e)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、
f)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトルエンジイソシアネートウレタンオリゴマー、
g)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマー、
などが挙げられる。
上記ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
また、ウレタン系化合物(ウレタン(メタ)アクリレートあるいはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)またはウレタン系化合物を含む組成物は、市販されており用いることができる。例えば、共栄社化学社製のAT−600、UA−101l、UA−306H、UA−306T、UA−306l、UF−8001、UF−8003等、日本合成化学社製のUV7550B、UV−7650B、UV−6300B等、新中村化学社製のU−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−2PPA、UA−NDP等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl−270、Ebecryl−284、Ebecryl−264、Ebecryl−9260、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製のUN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等、三菱レイヨン製のRQシリーズ、荒川化学工業製のビームセットシリーズ、大日精化工業(株)製のセイカビームシリーズ、アイカ工業(株)製のアイカアイトロンシリーズ、DIC(株)製のユニディックシリーズ、大成ファインケミカル(株)の8KXシリーズ等が挙げられる。
上記した分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するウレタン系化合物の中でも、硬化樹脂層(A)の耐屈曲性を向上させるという観点から、分子内におけるエチレン性不飽和基の数は、5個以下が好ましく、4個以下がより好ましく、3個以下が特に好ましい。下限のエチレン性不飽和基の数は1個以上が好ましく、2個以上がより好ましい。
分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するウレタン系化合物におけるエチレン性不飽和基の数が5個を超えると耐屈曲性が低下することがある。
分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するウレタン系化合物の含有量は、硬化樹脂層(A)の固形分総量100質量%に対して20〜90質量%の範囲が好ましく、30〜85質量%の範囲がより好ましく、40〜80質量%の範囲が特に好ましい。
硬化樹脂層(A)は、上記したウレタン系化合物に加えて、さらにウレタン系化合物以外の重合性化合物(モノマー)、すなわち、分子中にエチレン性不飽和基を2〜8個有する重合性化合物(モノマー)を含有することができる。ウレタン系化合物以外の重合性化合物(モノマー)の含有量は、ウレタン系化合物100質量部に対して1〜80質量部の範囲が好ましく、3〜70質量部の範囲が好ましく、5〜60質量部の範囲が特に好ましい。
ウレタン系化合物以外の化合物(モノマー)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化樹脂層は、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
上記光重合開始剤の含有量は、硬化樹脂層(A)(活性エネルギー線硬化樹脂層)の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましい。
活性エネルギー線硬化樹脂層を得るための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、α線、β線、γ線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましく用いられる。
紫外線を照射するための光源としては、特に限定されないが、例えば、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく用いられる。また、紫外線を照射するときに、低酸素濃度下の雰囲気下、例えば、酸素濃度が500ppm以下の雰囲気下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができるので好ましい。
紫外線の照射光量は、50mJ/cm以上が好ましく、100mJ/cm以上がより好ましく、特に150mJ/cm以上が好ましい。上限は2000mJ/cm以下が好ましく、1000mJ/cm以下がより好ましい。
上述したように、硬化樹脂層(A)は、分子内に1〜5個のエチレン性不飽和基を有するウレタン系化合物を含有する組成物を硬化せしめた層(活性エネルギー線硬化樹脂層)であることが好ましく、さらに、上記ウレタン系化合物と、上記ウレタン系化合物以外の重合性化合物(分子中にエチレン性不飽和基を2〜8個有する重合性化合物(モノマー))とを含有する組成物を硬化せしめた層(活性エネルギー線硬化性樹脂層)であることが好ましい。
硬化樹脂層(A)は、環状オレフィン樹脂フィルム上に、ウェットコーティング法により塗布されることが好ましく、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法等の塗布方法を用いることができる。
硬化樹脂層(A)の塗布に先立ち、環状ポリオレフィン樹脂フィルムの硬化樹脂層(A)を塗布する面に、コロナ処理、プラズマ処理、真空紫外線処理等の親水化処理を施すことが好ましい。
硬化樹脂層(A)の厚みは、良好な耐屈曲性を得るという観点から、4μm未満が好ましく、3μm未満がより好ましく、2μm未満が特に好ましい。硬化樹脂層(A)の厚みが4μm以上となると、ベースフィルムおよびガスバリア性フィルムの耐屈曲性が低下することがある。下限の厚みは、良好な密着性やガスバリア性を得るという観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上が特に好ましい。
硬化樹脂層(A)の表面は平滑であることが好ましい。硬化樹脂層(A)上にガスバリア層を積層するとき、硬化樹脂層(A)の表面平滑性が低いと、ガスバリア層にピンホールやクラックが発生し、ガスバリア性を損なうことがある。
硬化樹脂層(A)の表面平滑性は、例えば、原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)で表すことができる。硬化樹脂層(A)表面の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)は、2.0nm未満が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1.0nm以下が特に好ましい。下限は特に限定されないが、0.1nm程度である。硬化樹脂層(A)の表面粗さ(Ra)を上記範囲とするには、例えば、硬化樹脂層(A)は、硬化樹脂層(A)の厚みより平均粒子径が大きい粒子を含まないことが好ましい。もし、上記粒子を含む場合は、硬化樹脂層(A)の固形分総量100質量%に対して2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、さらに0.5質量%以下が好ましい。
また、硬化樹脂層(A)は、硬度が高すぎるとマンドレル値2mm以下を実現することが難しく、一方、硬化樹脂層(A)の硬度が低すぎると、硬化樹脂層(A)上に積層されるガスバリア層のガスバリア性が低下することがある。従って、これらの観点から、硬化樹脂層(A)は適度な硬度を有することが好ましく、かかる硬度は、ナノインデンテーション法により測定される押し込み硬さ(以下、「押し込み硬さ」と略記することがある)で表すことが適当である。
硬化樹脂層(A)の押し込み硬さは、上記観点、つまり、硬化樹脂層(A)のマンドレル値2mm以下を達成しながら、ガスバリア層のガスバリア性を向上させるという観点から、200〜600N/mmの範囲が好ましく、250〜550N/mmの範囲がより好ましく、特に300〜500N/mmの範囲が好ましい。硬化樹脂層(A)に上述した活性エネルギー線硬化樹脂層を適用することにより、硬化樹脂層(A)の押し込み硬さを上記範囲とすることができる。
また、硬化樹脂層(A)に良好な耐屈曲性を付与するという観点から、鉛筆硬度はH以下が好ましく、F以下がより好ましい。鉛筆硬度の下限は、6B程度である。鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4(1999年)に準拠し750gの荷重で測定されたものである。
[ベースフィルムの構成]
本発明のベースフィルムは、環状オレフィン樹脂フィルム上に硬化樹脂層(A)を有する。
本発明のベースフィルムは、環状オレフィン樹脂フィルムの一方の面に硬化樹脂層(A)を有し、他方の面(環状オレフィン樹脂フィルムの硬化樹脂層(A)を有する面とは反対面)に硬化樹脂層(B)を有していることが好ましい。ここで、硬化樹脂層(B)は、組成、厚み、その他添加物の種類または含有量等において、硬化樹脂層(A)と実質的に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
環状オレフィン樹脂フィルムの一方の面に硬化樹脂層(A)を有し、他方の面(以下「反対面」ということがある)に硬化樹脂層(B)を有することにより、ベースフィルムのカールが抑制され、環状オレフィン樹脂フィルムの耐傷性が向上する。また、後述するように、硬化樹脂層(B)に粒子を含有させることにより、ベースフィルムおよびこのベースフィルムを用いたガスバリア性フィルムの滑り性が向上し、製造工程における搬送性や巻き取り性が良好となる。
[硬化樹脂層(B)]
硬化樹脂層(B)が積層されたベースフィルムは、ベースフィルムのフレキシブル性を確保するという観点から、前述した耐屈曲性を有することが好ましい。つまり、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠し、ベースフィルムを、硬化樹脂層(B)が外側となるように直径2mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分の硬化樹脂層(B)にクラックが発生しないことが好ましい。つまり、本発明のベースフィルムが硬化樹脂層(B)を有する場合、どちらの面を外側にして折り曲げてもクラックが発生しないことが好ましい。
硬化樹脂層(B)に良好な耐屈曲性を付与するという観点から、硬化樹脂層(B)のナノインデンテーション法により測定される押し込み硬さは、200〜600N/mmの範囲が好ましく、250〜550N/mmの範囲がより好ましく、特に300〜500N/mmの範囲が好ましい。
また、硬化樹脂層(B)に良好な耐屈曲性を付与するという観点から、鉛筆硬度はH以下が好ましく、F以下がより好ましい。鉛筆硬度の下限は、6B程度である。鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4(1999年)に準拠し750gの荷重で測定されたものである。
硬化樹脂層(B)は、熱硬化樹脂層あるいは活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましく、耐屈曲性の観点から、特に活性エネルギー線硬化樹脂層であることがより好ましい。硬化樹脂層(B)を構成する熱硬化樹脂層および活性エネルギー線硬化樹脂層は、前述の硬化樹脂層(A)を構成する熱硬化樹脂層および活性エネルギー線硬化樹脂層と同様の組成を採用することができる。
硬化樹脂層(B)の厚みは、良好な耐屈曲性を確保するという観点およびベースフィルムのカールを抑制するという観点から、4μm未満が好ましく、3μm未満がより好ましく、2μm未満が特に好ましい。下限の厚みは、ベースフィルムに良好な耐擦傷性を付与するという観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上が特に好ましい。
ベースフィルムおよびこのベースフィルムを用いたガスバリア性フィルムに良好な滑り性を付与するという観点から、硬化樹脂層(B)は、粒子を含有することが好ましい。以下、硬化樹脂層(B)が粒子を含有する態様について詳細に説明する。
[硬化樹脂層(B)が粒子を含有する態様]
ベースフィルムの高い透明性を確保しながら滑り性を付与するという観点から、硬化樹脂層(B)は、硬化樹脂層(B)の厚みより平均粒子径が十分に小さい粒子を含有することが好ましい。例えば、硬化樹脂層(B)に含有される粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。下限の比率は、小さくなり過ぎると良好な滑り性が得られないことから、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上が特に好ましい。
硬化樹脂層(B)は、平均粒子径が硬化樹脂層(B)の厚みより十分に小さい粒子を含有し、硬化樹脂層(B)の表面に該粒子による突起が形成されていることが好ましい。これによって、さらに、ベースフィルムの高い透明性を確保しながら滑り性を付与することができる。硬化樹脂層(B)の表面に粒子による突起が形成されているかどうかは、硬化樹脂層(B)の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって、容易に確認することができる。
硬化樹脂層(B)に含有させる粒子の平均粒子径(r)は0.02〜0.5μmの範囲が好ましく、0.03〜0.4μmの範囲がより好ましく、0.04〜0.2μmの範囲が特に好ましい。
硬化樹脂層(B)に含有させる粒子の平均粒子径(r)が0.02μm未満であると良好な滑り性が得られなくなることがあり、一方、平均粒子径(r)が0.5μmより大きくなるとヘイズ値が大きくなり透明性が低下することがある。
硬化樹脂層(B)に含有させる粒子の含有量は、高い透明性を確保しながら滑り性を向上させるという観点から、硬化樹脂層(B)の固形分総量100質量%に対して2〜40質量%の範囲が好ましく、3〜30質量%の範囲がより好ましく、5〜20質量%の範囲が特に好ましい。
硬化樹脂層(B)に含有させる粒子としては、有機粒子や無機粒子が挙げられる。
有機粒子を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、あるいは上記樹脂の合成に用いられる2種以上のモノマーの共重合樹脂が挙げられる。これらの中でもアクリル系樹脂粒子が好ましく用いられる。
アクリル系樹脂粒子としては、アクリル樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、アクリルモノマーあるいはメタクリルモノマーと他のモノマー、例えば、スチレン、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、シリコーンアクリレート、シリコーンメタクリレート等との共重合樹脂粒子が挙げられる。
これらの有機粒子は乳化重合法により合成されることが好ましく、乳化重合法で合成されることによって平均粒子径が0.5μm以下の有機粒子を得ることができる。
無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ゼオライトなどの無機粒子が挙げられる。これらの中でもシリカ粒子が好ましく、特にコロイダルシリカや気相法シリカ(乾式シリカやヒュームドシリカとも言う)が好ましい。
無機粒子、例えば、シリカ粒子は、有機化合物で変性(表面処理)することが好ましい。無機粒子を有機化合物で表面処理することにより、硬化樹脂層(B)の表面側(ベースフィルムの環状オレフィン樹脂フィルムとは反対側)に粒子を多く局在(浮上)させることができる。これによって、硬化樹脂層(B)表面に粒子による突起が形成されやすくなり、比較的少ない粒子含有量で高い滑り性を付与することができる。
無機粒子の変性(表面処理)に使用する有機化合物としては、下記の一般式(1)〜(3)が挙げられ、これらの有機化合物を単独もしくは組み合わせて用いることができる。
2n+1−(CH−Si(Q) ・・・・一般式(1)
(一般式(1)において、nは1〜10の整数、mは1〜5の整数を表す。Qは炭素数1〜5のアルコキシ基またはハロゲン原子を表す。)
B−R−SiR (OR3−n ・・・・一般式(2)
D−R−Rf ・・・・一般式(3)
(一般式(2)および(3)において、BおよびDはそれぞれ独立に反応性部位を表し、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1から3のアルキル基、あるいは前記アルキル基から導出されるエステル構造を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素あるいは炭素数が1から4のアルキル基を表し、Rfはフルオロアルキル基を表し、nは0から2の整数を表す。)。
一般式(1)の化合物として、具体的には下記の化合物を例示することができる。
CHCHSi(OCH
13CHCHSi(OCH
17CHCHSi(OCH
13CHCHCHSi(OCH
13CHCHCHCHSi(OCH
13CHCHSi(OC
17CHCHCHSi(OC
13CHCHCHCHSi(OC
13CHCHSiCl
13CHCHSiBr
13CHCHCHSiCl
13CHCHSi(OCH)Cl
一般式(2)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
一般式(3)の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
硬化樹脂層(B)が上述したような粒子を含有する場合は、高い透明性を確保しながら滑り性を向上させるという観点から、硬化樹脂層(B)表面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定される表面粗さ(Ra)は、2.0nm以上10.0nm以下の範囲であることが好ましい。硬化樹脂層(B)(B)の表面粗さ(Ra)が2.0nm未満となると、滑り性が低下することがある。また、表面粗さ(Ra)が10.0nmを超えると、透明性が低下することがある。上記観点から、さらに、硬化樹脂層(B)が上述したような粒子を含有する場合の硬化樹脂層(B)表面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定される表面粗さ(Ra)は、2.5nm以上7.0nm以下の範囲であることが好ましく、3.0nm以上6.0nm以下の範囲であることが特に好ましい。
環状オレフィン樹脂フィルムは、平滑性が高いために滑り性が十分ではなく、搬送性や巻き取り性を向上させるために、環状オレフィン樹脂フィルムの片面に保護フィルムを積層することが行われているが、上述したような粒子を含有する硬化樹脂層(B)を設けることにより、滑り性が向上するので保護フィルムの積層を省略することができる。
本発明における硬化樹脂層(B)は、粒子を含有しない態様、および硬化樹脂層(B)表面に粒子による突起を有しない態様を含む。硬化樹脂層(B)が粒子を含有しない場合、あるいは硬化樹脂層(B)表面に粒子による突起が形成されていない場合、ベースフィルムの滑り性を向上させるために、硬化樹脂層(B)の面に保護フィルムを積層することができる。
上記の硬化樹脂層(B)が粒子を含有しない態様および粒子による突起を有しない態様における硬化樹脂層(B)表面の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)は、2.0nm未満が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1.0nm以下が特に好ましい。下限は特に限定されないが、0.1nm程度である。このように硬化樹脂層(B)の表面が平滑であると、硬化樹脂層(B)上にガスバリア層を積層したときのガスバリア性が向上する。
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、本発明のベースフィルムの少なくとも一方の面にガスバリア層が積層されたものであり、高いフレキシブル性を有する。
本発明のベースフィルムが、環状オレフィン樹脂フィルムの一方の面のみに硬化樹脂層(A)を有し、反対面に硬化樹脂層(B)を有しない場合、硬化樹脂層(A)上にガスバリア層を積層することが好ましい。
本発明のベースフィルムが、環状オレフィン樹脂フィルムの一方の面に硬化樹脂層(A)を有し、反対面に硬化樹脂層(B)を有する場合、どちらか一方の面にのみガスバリア層を積層してもよいし、硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)のそれぞれの面にガスバリア層を積層してもよい。硬化樹脂層(B)上にガスバリア層を積層する場合の硬化樹脂層(B)表面の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)は、2.0nm未満が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1.0nm以下が特に好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムは、前述した耐屈曲性を有することが好ましい。つまり、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠し、ガスバリア性フィルムを、ガスバリア層が外側となるように直径2mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分のガスバリア層、硬化樹脂層(A)、あるいは硬化樹脂層(B)にクラックが発生しないことが好ましい。ベースフィルムの両面にガスバリア層が積層されたガスバリア性フィルムにおいては、上記耐屈曲性試験を両面でそれぞれ行い、いずれの面もクラックが発生していないことが好ましい。
また、ガスバリア層が片面のみに積層されたガスバリア性フィルムにおいては、ガスバリア層とは反対側が外側となるように直径2mmの円筒マンドレルに巻き付けたとき、その巻き付け部分にクラックが発生しないことが好ましい。
つまり、本発明のガスバリア性フィルムは、どちらの面を外側にして折り曲げてもクラックが発生しないことが好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率は、1×10−1g/m/day以下であることが好ましく、1×10−2g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−3g/m/day以下であることが特に好ましい。
[ガスバリア層]
ガスバリア層は、公知の材料を用いて積層することができる。ガスバリア層は単一膜であってもよいし、複数膜の積層構成であってもよい。ガスバリア層の厚みは、10〜1000nmの範囲が好ましく、20〜500nm範囲がより好ましく、30〜300nmの範囲が特に好ましい。上記ガスバリア層の厚みは、ガスバリア層が複数膜の積層構成の場合は合計の厚みを意味する。
ガスバリア層を形成する材料としては、例えば、
i)Si,Zn、Al、Ti、Zr、Sn、In、Nb、Mo、Ta等の元素の酸化物、窒化物、硫化物またはこれらの混合物、
ii)有機ケイ素化合物、
iii)ガスバリア性樹脂、
iv)高分子化合物にイオンを注入したもの、
などが挙げられる。
以下、これらの材料について詳細に説明する。
[i)の材料について]
上記したi)の材料の中でも酸化物あるいは硫化物が好ましく、さらにSi,Zn、Alの酸化物あるいは硫化物が好ましく、特に、少なくとも亜鉛(Zn)酸化物あるいは亜鉛(Zn)硫化物を含有することが好ましい。
ガスバリア層は、亜鉛酸化物あるいは亜鉛硫化物と、他の元素、例えばSi、Al、Ti、Zr、Sn、In、Nb、Mo、Ta等の酸化物、窒化物、硫化物またはこれらの混合物を含有することが好ましい。
高いガスバリア性を付与するという観点および耐屈曲性が良好であるという観点から、例えば、(a)酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層、(b)硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層、が好ましく用いられる。
<(a)酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層>
この共存相の組成としては、ICP発光分光分析法により測定されるZn原子濃度は20〜40atom%、Si原子濃度は5〜20atom%、Al原子濃度は0.5〜5atom%、O原子濃度は35〜70atom%であることが好ましい。
Zn原子濃度が40atom%より大きくなる、もしくはSi原子濃度が5atom%より小さくなると、酸化亜鉛の結晶成長を抑制する酸化物が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、十分なガスバリア性が得られない場合がある。Zn原子濃度が20atom%より小さくなる、またはSi原子濃度が20atom%より大きくなると、ガスバリア層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下する場合がある。
Al原子濃度が5atom%より大きくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が過剰に高くなるため膜の硬度が上昇し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。Al原子濃度が0.5atom%より小さくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が不十分となり、層を形成する粒子間の結合力が向上できないため、柔軟性が低下する場合がある。
O原子濃度が70atom%より大きくなると、ガスバリア層内の欠陥量が増加するため、高いガスバリア性が得られない場合がある。O原子濃度が35atom%より小さくなると、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの酸化状態が不十分となり、結晶成長が抑制できず粒子径が大きくなるため、ガスバリア性が悪化する場合がある。
上記観点から、さらに、Zn原子濃度が25〜35atom%、Si原子濃度が10〜15atom%、Al原子濃度が1〜3atom%、O原子濃度が50〜64atom%であることが好ましい。
上記組成は、ガスバリア層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的とするガスバリア層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで調整することができる。
上記共存相からなるガスバリア層の組成分析は、ICP発光分光分析法を使用して、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの各元素を定量分析し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび含有する無機酸化物の組成比を知ることができる。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)として存在すると仮定して算出する。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。
上記のガスバリア層を形成する方法は特に限定されず、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの単体材料を使用する場合は、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムをそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。これらの方法の中でも、ガスバリア層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
<(b)硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相からなる層>
硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相においては、硫化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい硫化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるためにガスバリア層が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されることによりガスバリア性が高められると推測される。
また、結晶成長が抑制された硫化亜鉛を含む硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相は、無機酸化物または金属酸化物だけで形成された層よりも柔軟性が優れるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくいという利点がある。
この共存相の組成は、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9であることが好ましい。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.9より大きくなると、硫化亜鉛の結晶成長を抑制する酸化物が不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、高いガスバリア性が得られない場合がある。また、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7より小さくなると、ガスバリア層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下するため、機械的な曲げに対するガスバリア性フィルムの柔軟性が低下する場合がある。硫化亜鉛のモル分率は、さらに0.75〜0.85の範囲が好ましい。
この共存相からなるガスバリア層は、硫化亜鉛および二酸化ケイ素が上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、他の金属酸化物、例えば、Al、Ti、Zr、Sn、In、Nb、Mo、Ta、Pd等の金属酸化物を含有することができる。ここで主成分とは、ガスバリア層の全組成に対して60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であることが好ましい。
上述のガスバリア層を形成する方法は、特に限定されず、公知の気相製膜方法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。
[ii)有機ケイ素化合物]
ケイ素含有有機化合物としては、例えば、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシラン、プロポキシシラン、ジプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、デカメチルシクロペンタシラザン、ウンデカメチルシクロヘキサシラザンなどが挙げられる。中でも取り扱い上の観点からヘキサメチルジシロキサン、テトラエトキシシランが好ましい。
上記有機ケイ素化合物を原料としてプラズマCVD法などで製膜することにより、酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、窒化ケイ素膜などの無機膜を形成することができる。
また、上記有機ケイ素化合物を公知の湿式塗布方式(スリットダイコーターやグラビアコーターなどを用いた塗布方式)により塗布後、真空紫外線(エキシマ光)を照射することにより、酸化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、窒化ケイ素膜などの無機膜を形成することができる。
[iii)ガスバリア性樹脂]
ガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、又はその部分ケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。これらの樹脂を公知の湿式塗布方式(スリットダイコーターやグラビアコーターなどを用いた塗布方式)で塗布することによりガスバリア層を形成することができる。
[iv)高分子化合物にイオンを注入したもの]
ガスバリア層は、高分子化合物を含む層にイオン注入して形成することができる。かかる高分子化合物としては、ケイ素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
これらの高分子化合物の中でもケイ素含有高分子化合物が好ましく、さらにケイ素含有高分子化合物の中でもポリシラザン系化合物が好ましい。
高分子化合物を含有する層は、公知の湿式塗布方法(スリットダイコーターやグラビアコーターなどを用いた塗布方式)を用いて形成することができる。
高分子化合物を含む層に注入されるイオンとしては、例えば、水素、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等のガスが好ましく用いられる。
上述したガスバリア層を構成する材料の中でも、水蒸気透過率を小さくするという観点から、少なくとも酸化亜鉛を含むことが好ましい。さらに、ガスバリア層は、前述した(a)酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層であることが特に好ましい。
[封止粘着剤層]
本発明のガスバリア性フィルムは、有機ELデバイス等に貼合するための封止粘着剤層が積層されていることが好ましい。封止粘着剤層は、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側の面に積層されていることが好ましい。
封止粘着剤層は、封止樹脂と粘着付与樹脂を含有することが好ましい。封止樹脂としては、ゴム系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマーおよびシリコーン系ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
上記封止樹脂の中でも、水蒸気透過率を小さくするという観点から、ゴム系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーおよびスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
ゴム系ポリマーは、天然ゴム又は合成ゴム等のゴム弾性を有するものである。例えば、天然ゴム、ブタジエン単独重合体(ブタジエンゴム)、クロロプレン単独重合体(クロロプレンゴム)、イソプレン単独重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体、イソブチレン系重合体、またはこれらを変性したものが挙げられる。ゴム系ポリマーの中でも、イソブチレン系重合体が好ましい。
イソブチレン系重合体は、主鎖および/または側鎖に、イソブチレン由来の繰り返し単位を有する重合体をいう。イソブチレン由来の繰り返し単位の含有比率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限の含有比率は99質量%程度である。
イソブチレン系重合体としては、イソブチレン単独重合体(ポリイソブチレン)、イソブチレン−イソプレン共重合体(ブチルゴム)、イソブチレン−nブテン共重合体、イソブチレン−ブタジエン共重合体、およびこれらの重合体を臭素化または塩素化して得られるハロゲン化重合体などが挙げられる。これらの中でも、イソブチレン−イソプレン共重合体(ブチルゴム)が好ましい。
ゴム系ポリマーの数平均分子量(Mn)は、5万〜300万の範囲が好ましく、10万〜200万の範囲がより好ましく、15万〜150万の範囲が特に好ましい。ゴム系ポリマーの数平均分子量(Mn)が上記範囲内であることで、水蒸気透過率の小さい封止フィルムが得られる。
ゴム系ポリマーの数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
ポリオレフィン系ポリマーは、主鎖および/または側鎖に、オレフィン系モノマー由来の繰り返し単位を有する重合体であり、オレフィン系モノマー単独重合体や共重合体、あるいはこれらを変性したものが挙げられる。
かかるオレフィン系モノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数3〜20のα−オレフィン、あるいはシクロブテン、テトラシクロドデセン、ノルボルネン等の炭素数4〜20の環状オレフィンが挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン由来の繰り返し単位を有する重合体もしくは該重合体を変性したものである。例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体および該共重合体の水素添加物であるスチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および該共重合体の水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム)、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソブチレンジブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体等が挙げられる。
(メタ)アクリル系ポリマーは、主鎖および/または側鎖に、(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位を有する重合体である。例えば、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、またはこれらを変性したものが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
(メタ)アクリル系ポリマーにおける(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位の含有比率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70以上が特に好ましい。上限の含有比率は99質量%程度である。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステル、あるいは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル等の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
ポリエステル系ポリマーは、多価カルボン酸とポリオールとの重縮合により得られる重合体またはこれを変性したものである。かかる多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等が挙げられる。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族アルコールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールが挙げられる。
シリコーン系ポリマーは、主鎖および/または側鎖に、(ポリ)シロキサン構造を有する重合体またはこれを変性したものである。かかるシリコーン系ポリマーとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
上述した封止樹脂を単独もしくは複数種組み合わせて用いることができる。封止粘着剤層における封止樹脂の含有量は、封止粘着剤層の固形分総量100質量%に対して、25〜90質量%の範囲が好ましく、30〜80質量%の範囲がより好ましく、40〜70質量%の範囲が特に好ましい。
封止粘着剤層は、さらに粘着付与樹脂を含有することが好ましい。かかる粘着付与樹脂としては、例えば、脂環族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂、およびロジン系樹脂が挙げられる。これらの粘着付与樹脂の中でも脂環族系石油樹脂が好ましく、さらに脂環族系水添石油樹脂の中でも、水素添加テルペン系樹脂、水素添加エステル系樹脂、C5系石油樹脂の水素添加樹脂、C9系石油樹脂の水素添加樹脂が好ましい。
封止粘着剤層における粘着付与樹脂の含有量は、封止粘着剤層の固形分総量100質量%に対して、5〜60質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましく、15〜40質量%の範囲が特に好ましい。
封止樹脂と粘着付与樹脂との質量比(封止樹脂/粘着付与樹脂)は、20/80〜95/5であることが好ましく、30/70〜90/10であることがより好ましい。
封止粘着剤層は、架橋構造が形成されていてもよい。架橋構造が形成されることで、封止粘着剤層は、十分な凝集力を有するものとなり、接着性により優れ、かつ、水蒸気透過率がより低いものとなる。
封止粘着剤層中に架橋構造を形成する際は、接着剤等における公知の架橋構造形成方法を利用することができる。例えば、水酸基やカルボキシル基を有する封止樹脂を用いる場合、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の架橋剤を用いることで、架橋構造を形成することができる。
封止粘着剤層の厚みは、5〜150μmの範囲が好ましく、10〜100μmの範囲がより好ましく、20〜80μmの範囲が特に好ましい。また、封止粘着剤層は、水蒸気透過率が、40g/m/day以下であることが好ましく、30g/m/day以下であることがより好ましく、20g/m/day以下であることが特に好ましい。
[ガスバリア性フィルムの適用例]
本発明のガスバリア性フィルムは、医薬品などの包装材、有機EL照明、有機ELディスプレイなどの有機ELデバイス、太陽電池などの電子デバイスに用いることができる。
特に、本発明のガスバリア性フィルムは、フレキシブル性が高く、優れた耐屈曲性を有することから、フレキシブル(折り曲げ可能)な有機ELデバイスに好適である。
本発明の有機ELデバイスは、本発明のガスバリア性フィルムを備えた有機ELデバイスである。本発明のガスバリア性フィルムを備えた有機ELデバイスは、公知の方法、例えば、特開2010−80289号公報、特開2012−57065号公報、特開2014−166753号公報、特開2015−191800号公報等に記載の方法により作製することができる。
以下、本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)ベースフィルムの硬化樹脂層(A)の耐屈曲性(A)の評価
円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠して、直径2mmの円筒形マンドレルに、ベースフィルムの硬化樹脂層(A)側が外側になるように巻き付け、その巻き付け部分の硬化樹脂層(A)にクラックが生じるか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:クラックが確認できない。
×:クラックが確認される。
(2)ベースフィルムの硬化樹脂層(B)の耐屈曲性(B)の評価
上記(1)と同様にして耐屈曲性を評価した。但し、直径2mmの円筒形マンドレルに、ベースフィルムの硬化樹脂層(B)側が外側になるように巻き付け、硬化樹脂層(B)にクラックが発生しているかどうかを評価した。
(3)ガスバリア性フィルムの耐屈曲性(C−1、C−2)の評価
上記(1)と同様にして耐屈曲性を評価した。但し、耐屈曲性(C−1)の評価は、直径2mmの円筒形マンドレルに、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側が外側になるように巻き付けた。耐屈曲性(C−2)の評価は、直径2mmの円筒形マンドレルに、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側が内側となるように(ガスバリア層側が円筒形マンドレルに接するように)巻き付けた。
(4)ナノインデンテーション法による押し込み硬さの測定
(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いて測定した。ベースフィルムの測定面(硬化樹脂層(A)面もしくは硬化樹脂層(B)面)とは反対面を、接着剤(東亞合成(株)製「“アロンアルファ”(登録商標)」を介して専用のサンプル固定台に固定し、硬化樹脂層(A)あるいは硬化樹脂層(B)の押し込み硬さ(HIT(N/mm))を、稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いて下記条件にて測定した。測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理した。
<測定条件>
・測定モード:負荷−除荷試験
・最大荷重:100mN
・最大荷重に達した時の保持時間:1秒
・荷重速度、除荷速度:10mN/sec
・押し込み深さ:膜厚の1/10
(5)各層の厚み
ベースフィルムおよびガスバリア性フィルムの断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡(日立製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、断面観察用サンプルの断面を観察し、硬化樹脂層(A)、硬化樹脂層(B)およびガスバリア層の厚みを測定した。環状オレフィン樹脂フィルムと硬化樹脂層(A)あるいは硬化樹脂層(B)との界面、および硬化樹脂層(A)とガスバリア層との界面は、透過型電子顕微鏡による断面観察写真によって判断した。
(6)硬化樹脂層(B)に含有される粒子の平均粒子径の測定
硬化樹脂層(B)の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察(約1万〜30万倍)し、その断面写真の幅(硬化樹脂層(B)の厚み方向に直交する長さ)1μmに存在する全ての粒子の最大長さを計測し、それらを算術平均した値を粒子の平均粒子径とした。
(7)原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)の測定
硬化樹脂層(A)および硬化樹脂層(B)の表面粗さ(Ra)を、日立ハイテクサイエンス製の原子間力顕微鏡「AFM5100N」を用い、下記条件による測定した。
・走査モード:DFM
・走査範囲:5μm×5μm
・データ数:256×256
・測定環境:25℃、大気中
(8)ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率の測定
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cmの条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標) )を使用して測定した。サンプル数は1水準当たり2検体とし、測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を水蒸気透過率(g/m/day)とした。
(9)ガスバリア層の組成分析
ガスバリア層の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。試料を、硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸で加温溶解して濾別した。不溶解分は加熱灰化したのち、炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して、先の濾液とあわせて定容とした。この溶液について、亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子の含有量を測定し、原子数比に換算した。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)として存在すると仮定して求めた計算値とした。
(10)ベースフィルムおよびガスバリア性フィルムの滑り性の評価
ベースフィルムおよびガスバリア性フィルムをカットして2枚のシート片(20cm×15cm)を作製した。2枚のシート片の硬化樹脂層(A)面(またはガスバリア層面)と反対面とが向き合うように2枚のシート片を僅かにずらして重ね合わせて平滑な台上の置き、下方のシート片を指で台上に固定し、上方のシート片を手で滑らせる方法で滑り性の良否判定を行った。測定環境は23℃、55%RHである。
○:上方のシート片の滑り性が良好である。
×:上方のシート片がスムーズに滑らない。
(11)ベースフィルムのフレキシブル性(A)の評価
短辺3cm×長辺10cmのベースフィルムを用意し、硬化樹脂層(A)側が外側となるように、長辺の中央部のところで折り重ねたとき、折目からベースフィルムが割れて破断するかどうかを評価した。
○:破断しない。
×:破断する。
(12)ベースフィルムのフレキシブル性(B)の評価
上記(11)と同様にして、硬化樹脂層(B)側が外側となるように、長辺の中央部のところで折り重ねたとき、折目からベースフィルムが割れて破断するかどうかを評価した。
(13)ガスバリア性フィルムのフレキシブル性(C−1、C−2)の評価
上記(11)と同様にして評価した。但し、フレキシブル性(C−1)の評価は、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側が外側となるように、長辺の中央部のところで折り重ねたとき、折目からガスバリア性フィルムが割れて破断するかどうかを評価した。フレキシブル性(C−2)の評価は、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側が内側となるように、長辺の中央部のところで折り重ねたとき、折目からガスバリア性フィルムが割れて破断するかどうかを評価した。
(14)硬化樹脂層(B)表面における粒子による突起の有無の判断
硬化樹脂層(B)表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて約1万〜10万倍の倍率で観察し、粒子による突起の有無を確認する。
(15)環状オレフィン樹脂フィルムのリターデーション(Re550)の測定
環状オレフィン樹脂フィルムの波長550nmに光に対する面内方向のリターデーション(Re550)について、王子計測器社製複屈折計KOBRA−WRを用いて、平行ニコル回転法により測定した。
[実施例1]
下記の要領でベースフィルムを作製した。
<硬化樹脂層(A)の積層>
厚みが50μmの環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)の「ZeonorFilm」(登録商標)ZF14−050:リターデーションRe550=3nm)の一方の面に、コロナ処理を施し、下記の硬化樹脂層(A)用塗布液a1をグラビアコーターで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて硬化樹脂層(A)を形成した。この硬化樹脂層(A)の厚みは1.5μmであった。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a1>
3官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂塗布液(日本合成化学(株)の「UV−7550B」)を、有機溶剤(MEK)で固形分濃度が20質量%となるように希釈した。
[実施例2]
硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の塗布液a2に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(A)の厚みは1.5μmであった。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a2>
荒川化学工業(株)製の紫外線硬化性ハードコーティング剤「ビームセット1200」を、有機溶剤(MEK)で固形分濃度が20質量%となるように希釈した。
[実施例3]
硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の塗布液a3に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(A)の厚みは1.5μmであった。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a3>
大日精化工業(株)製の紫外線硬化性樹脂「セイカビーム IL−PC2」を、有機溶剤(MEK)で固形分濃度が20質量%となるように希釈した。
[実施例4]
硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の塗布液a4に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(A)の厚みは1.5μmであった。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a4>
下記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA)140質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)907」)5質量部、有機溶剤(MEK)で希釈して、固形分濃度が20質量%に調製した。
<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA)の合成>
4つ口フラスコに、ビスフェノールF型ジエポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名:エポトートYDF−8170C、エポキシ当量:159)を3180質量部、アクリル酸(三菱化学(株)製、商品名:アクリル酸)1440質量部、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル4.6質量部、合成触媒としてジメチルアミノエチルメタアクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルDM)23質量部を入れ、攪拌しながら95℃まで昇温させ、95℃に保持した状態で14時間反応を続けた。酸価が1mgKOH/g以下になったところで内温が60℃になるまで冷却してエポキシ(メタ)アクリレートを得た。
次に、4つ口フラスコに、上記エポキシ(メタ)アクリレート298質量部、酢酸エチル711.3質量部を入れ、内温60℃になるように加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.21質量部を添加し、攪拌しながら、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名:タケネート600)199質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業(株)製試薬、商品名:ジエチレングリコール、分子量106)27.3質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成(株)製、商品名:アロニックスM−306)187質量部の混合物を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、質量平均分子量19800のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(UA)を得た。
[実施例5]
環状オレフィン樹脂フィルムを、リターデーションRe550が140nmである環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン(株)の「ZeonorFilm」(登録商標)ZM14−140;厚みが28μm)に変更し、かつ硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の塗布液a5に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(A)の厚みは1.5μmであった。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a5>
アイカ工業(株)製の紫外線硬化性コート剤「アイカアイトロン(登録商標)Z−850−3」を、有機溶剤(MEK)で固形分濃度が20質量%となるように希釈した。
[比較例1]
硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の塗布液a6に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a6>
10官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂塗布液(日本合成化学(株)の「UV−1700B」)を、有機溶剤(MEK)で固形分濃度が20質量%となるように希釈した。
[比較例2]
硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の塗布液a7に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。
<硬化樹脂層(A)用塗布液a7>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート30質量部、N−ビニルピロリドン8質量部、メチルメタクリレート2質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)3質量部、有機溶剤(MEK)60質量部を混合して調製した。
[比較例3]
硬化樹脂層(A)用塗布液を下記の熱可塑性樹脂を含む塗布液a8に変更する以外は、実施例1と同様にしてベースフィルムを作製した。
<熱可塑性樹脂塗布液a8>
熱可塑性樹脂であるポリウレタン樹脂の水分散体(第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス150」固形分濃度:30質量%)を固形分濃度が20質量%となるように純水で希釈して調製した。
[実施例11〜15および比較例11〜13]
実施例1〜5および比較例1〜3で作製したベースフィルムの硬化樹脂層(A)の上に、下記のガスバリア層を厚みが150nmとなるように積層してガスバリア性フィルムを作製した。
<ガスバリア層の積層>
図1に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置を使用し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極12に設置してアルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを実施し、ベースフィルム4の硬化樹脂層(A)(不図示)の面上にガスバリア層を積層した。
具体的な操作は以下の通りである。まず、スパッタ電極12に酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3で焼結されたスパッタターゲットを設置した巻き取り式スパッタ装置1の巻き取り室6の中で、巻き出し軸7にベースフィルムのガスバリア層を設ける側の面がスパッタ電極12に対向するようにセットし、巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、クーリングドラム11に通した。減圧度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、直流電源により投入電力4000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、ガスバリア層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロール13,14,15を介して巻き取り軸16に巻き取った。
このガスバリア層の組成は、Zn原子濃度が27.5atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.1atom%であった。
[評価]
上記の実施例および比較例で得られたベースフィルムおよびガスバリア性フィルムについて、前述の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2017177808
実施例1〜5のベースフィルム、およびこれらのベースフィルムを用いた実施例11〜15のガスバリア性フィルムは、耐屈曲性およびフレキシブル性が良好である。また、実施例11〜15のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性(水蒸気透過率が小さい)を有する。
一方、比較例1、2のベースフィルム、およびこれらのベースフィルムを用いた比較例1、2のガスバリア性フィルムは、硬化樹脂層(A)として従来の一般的な高硬度なハードコート剤を用いており、耐屈曲性およびフレキシブル性が低下している。
比較例3のベースフィルムは、硬化樹脂層(A)に替えて熱可塑性樹脂層を用いており、耐屈曲性およびフレキシブル性が良好であるが、このベースフィルムを用いた比較例13のガスバリア性フィルムは、ガスバリア性(水蒸気透過率)が悪化している。
[実施例6]
実施例1のベースフィルムの硬化樹脂層(A)が積層された面とは反対面に、下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b1をグラビアコーターで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成した。この硬化樹脂層(B)の厚みは1.5μm、粒子の平均粒子径は0.13μm、粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.09であった。この硬化樹脂層(B)の表面には、粒子による突起が確認された。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b1>
3官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂塗布液(日本合成化学(株)の「UV−7550B」)に、下記のシリカ粒子分散液c1を固形分換算で塗布液の全固形分に対して8質量%となるように添加し、有機溶剤(MEK)で希釈して固形分濃度が20質量%の塗布液を調製した。
<シリカ粒子分散液c1>
コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製の「オルガノシリカゾル MEK−ST−ZL」)150質量部に、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13.7質量部と10質量%蟻酸水溶液1.7質量部を混合し、70℃にて1時間撹拌した。次いで、フッ素化合物(HC=CH−COO−CH−(CFF)13.8質量部および2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.57質量部を加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌して表面処理されたシリカ粒子の分散液を得た。
[実施例7]
実施例3のベースフィルムの硬化樹脂層(A)が積層された面とは反対面に、下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b2をグラビアコーターで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成した。この硬化樹脂層(B)の厚みは1.5μm、粒子の平均粒子径は0.13μm、粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.09であった。この硬化樹脂層(B)の表面には、粒子による突起が確認された。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b2>
大日精化工業(株)製の紫外線硬化性樹脂「セイカビーム IL−PC2」に、上記シリカ粒子分散液c1を固形分換算で塗布液の全固形分に対して8質量%となるように添加し、有機溶剤(MEK)で希釈して固形分濃度が20質量%の塗布液を調製した。
[実施例8]
実施例4のベースフィルムの硬化樹脂層(A)が積層された面とは反対面に、下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b3をグラビアコーターで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成した。この硬化樹脂層(B)の厚みは1.5μm、粒子の平均粒子径は0.08μm、粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.05であった。この硬化樹脂層(B)の表面には、粒子による突起が確認された。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b3>
アイカ工業(株)製の紫外線硬化性コート剤「アイカアイトロン(登録商標)Z−850−3」に、下記シリカ粒子分散液c2を固形分換算で塗布液の全固形分に対して10質量%となるように添加し、有機溶剤(MEK)で希釈して固形分濃度が20質量%の塗布液を調製した。
(シリカ粒子分散液c2)
気相法シリカ(日本アエロジル(株)の「アエロジルOX50」)を有機溶剤(MEK)中で分散してシリカ濃度が15質量%の分散液を得た。分散装置としてビーズミルを用いた。
次に、この分散液300質量部に、フルオロアルキルアルコキシシラン(信越化学(株)製の「KBM7103」)を8質量部混合し、50℃で1時間加熱撹拌して、表面処理されたシリカ粒子の分散液を得た。
[実施例9]
下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b4に変更した以外は、実施例6と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(B)の表面には粒子による突起は確認されなかった。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b4>
3官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂塗布液(日本合成化学(株)の「UV−7550B」)を、有機溶剤(MEK)で固形分濃度が20質量%となるように希釈した。
[実施例10]
実施例5のベースフィルムの硬化樹脂層(A)が積層された面とは反対面に、上記の硬化樹脂層(B)用塗布液b3をグラビアコーターで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成した。この硬化樹脂層(B)の厚みは1.5μm、粒子の平均粒子径は0.08μm、粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.05であった。この硬化樹脂層(B)の表面には、粒子による突起が確認された。
[比較例4]
比較例1のベースフィルムの硬化樹脂層(A)が積層された面とは反対面に、下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b5をグラビアコーターで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて硬化樹脂層(B)を形成した。この硬化樹脂層(B)の厚みは1.5μm、粒子の平均粒子径は0.13μm、粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.09であった。この硬化樹脂層(B)の表面には、粒子による突起が確認された。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b5>
10官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化性樹脂塗布液(日本合成化学(株)の「UV−1700B」)に、上記シリカ粒子分散液c1を固形分換算で塗布液の全固形分に対して8質量%となるように添加し、有機溶剤(MEK)で希釈して固形分濃度が20質量%の塗布液を調製した。
[比較例5]
下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b6に変更した以外は、比較例1と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(B)の厚みは1.5μm、粒子の平均粒子径は0.13μm、粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)は、0.09であった。この硬化樹脂層(B)の表面には、粒子による突起が確認された。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b6>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート87質量部、上記シリカ粒子分散液c1を固形分換算で8質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶剤(MEK)に混合して調製した。
[比較例6]
下記の硬化樹脂層(B)用塗布液b7に変更し、かつ硬化樹脂層(B)の厚みを5μmに変更した以外は、比較例1と同様にしてベースフィルムを作製した。この硬化樹脂層(B)の表面には粒子による突起は確認されなかった。
<硬化樹脂層(B)用塗布液b7>
紫外線硬化性のハードコート剤(JSR(株)の「デソライトZ7524」登録商標)を用いた。
[実施例16〜実施例20及び比較例14〜16]
実施例6〜10および比較例4〜6のベースフィルムの硬化樹脂層(A)上に、前述の実施例11〜15と同様にしてガスバリア層を積層し、ガスバリア性フィルムを作製した。
[評価]
上記実施例で得られたベースフィルムおよびガスバリア性フィルムについて、前述の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2017177808
実施例6〜10のベースフィルムは、実施例1、3〜5のベースフィルムの反対面に硬化樹脂層(B)を積層したものであるが、硬化樹脂層(B)側の耐屈曲性(B)およびフレキシブル性(B)が良好である。
また、実施例6〜8および10は、硬化樹脂層(B)が、硬化樹脂層(B)の厚みより十分に平均粒子径が小さい粒子を含有し、硬化樹脂層(B)表面に該粒子による突起が形成されているため、滑り性が良好である。
尚、実施例6〜10のベースフィルムにおいて、硬化樹脂層(A)側の耐屈曲性(A)、フレキシブル性(A)、表面粗さ(Ra)、押し込み硬さは、実施例1、3〜5と同等の結果であった。
同様に、実施例6〜10のベースフィルムの硬化樹脂層(A)上にガスバリア層を積層した実施例16〜20のガスバリア性フィルムも、耐屈曲性(C)およびフレキシブル性(C)が良好である。また、実施例16〜18および20は、実施例6〜8および10のベースフィルムを用いているので、滑り性が良好であった。
一方、比較例4〜6のベースフィルムは、比較例1のベースフィルムの反対面に硬化樹脂層(B)を積層したものであるが、この硬化樹脂層(B)の押し込み硬さが高いため、耐屈曲性およびフレキシブル性が低下している。
同様に、比較例4〜6のベースフィルムの硬化樹脂層(A)上にガスバリア層を積層した比較例14〜16のガスバリア性フィルムも、耐屈曲性(C−1)(C−2)およびフレキシブル性(C−1)(C−2)がいずれも低下している。
1 巻き取り式スパッタリング装置
4 ベースフィルム
6 巻き取り室
7 巻き出し軸
8、9、10 巻き出し側ガイドロール
11 クーリングドラム
12 スパッタ電極
13、14、15 巻き取り側ガイドロール
16 巻き取り軸

Claims (14)

  1. 環状オレフィン樹脂フィルム上に硬化樹脂層(A)を有するガスバリア性フィルムのベースフィルムであって、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠した直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを特徴とする、ガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  2. 前記硬化樹脂層(A)が熱硬化樹脂層もしくは活性エネルギー線硬化樹脂層である、請求項1に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  3. 前記硬化樹脂層(A)の厚みが0.3μm以上4μm未満である、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  4. 前記硬化樹脂層(A)のナノインデンテーション法により測定される押し込み硬さが、200〜600N/mmの範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  5. 前記硬化樹脂層(A)の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)が2.0nm未満である、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  6. 前記環状オレフィン樹脂フィルムの硬化樹脂層(A)を有する面とは反対面に硬化樹脂層(B)を有し、円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1:1999)に準拠した直径2mmの円筒マンドレルを用いて行う耐屈曲性試験においてクラックが発生しないことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  7. 前記硬化樹脂層(B)が粒子を含有し、該粒子の平均粒子径(r:μm)と硬化樹脂層(B)の厚み(d:μm)との比率(r/d)が0.7以下である、請求項6に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  8. 前記硬化樹脂層(B)の原子間力顕微鏡で測定される表面粗さ(Ra)が2.0nm以上10.0nm以下である、請求項6または7に記載のガスバリア性フィルムのベースフィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性フィルムのベースフィルムの少なくとも一方の面にガスバリア層を備えた、ガスバリア性フィルム。
  10. 前記ガスバリア層が少なくとも亜鉛酸化物あるいは亜鉛硫化物を含有する、請求項9に記載のガスバリア性フィルム。
  11. 前記ガスバリア層が、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層である、請求項9または10に記載のガスバリア性フィルム。
  12. 前記酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相における、Zn原子濃度が20〜40atom%、Si原子濃度が5〜20atom%、Al原子濃度が0.5〜5atom%、O原子濃度が35〜70atom%である、請求項11に記載のガスバリア性フィルム。
  13. 前記ガスバリア層の面に封止粘着剤層を有する、請求項9〜12に記載のガスバリア性フィルム。
  14. 請求項9〜13のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを備えた、有機ELデバイス。
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