JP2017177654A - 積層フィルム - Google Patents

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直樹 今津
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昇三 増田
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Abstract

【課題】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に、無機粒子とバインダーとを含む多孔質な樹脂層を有する積層フィルムに関する。さらに詳しくは前記樹脂層へ分散剤とカーボンナノチューブを含んだ分散体を塗布した際に、優れた塗布性、密着性および安定性を発現する樹脂層を有する積層フィルムを提供する。
【解決手段】
本発明は次の構成からなる。
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に、無機粒子(A)とバインダー(B)とを含む樹脂層(X)を有する積層フィルムであって、クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nmにある積層フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に、無機粒子とバインダーとを含む樹脂層を有する積層フィルムに関する。さらに詳しくは前記樹脂層上へ分散剤とカーボンナノチューブとを含む分散体を塗布した際に、優れた塗布性、密着性、および安定性を発現する樹脂層を有する積層フィルムに関する。
近年、タッチパネルの普及により、酸化インジウムスズ(ITO)、銀などの金属やカーボンナノチューブを用いた、導電性機能を有する材料の開発が盛んに行われている。その中でも、カーボンナノチューブは、熱や薬液に対して安定性があり、分散剤を使用することで水や各種溶媒への分散が可能なため、コーティング材料として積極的に検討が進められている。コーティングによってカーボンナノチューブの特性を活かすためには、基板上でカーボンナノチューブによる導電ネットワークを形成させることが必要であり、基板には塗布はじきや塗布ムラの発生が少ない優れた塗布性が求められる。また、導電性フィルムとしての要求特性として、密着性および安定性が必要となる。カーボンナノチューブを用いた導電積層体を作製するために、カーボンナノチューブを均一に分散媒中に分散する場合は、一般的には分散性に優れたイオン性分散剤を用いることで、高濃度のカーボンナノチューブ集合体であっても分散性良く、均一な導電体を作製することができる。一般的にイオン性分散剤は絶縁性物質であり、ヒドロキシル基やカルボキシル基などのイオン性官能基を有するため、高湿度などの環境変化に影響されやすく、密着性および抵抗値安定性が悪い。
したがって、カーボンナノチューブによる優れた導電性フィルムを作製するためには、カーボンナノチューブ分散体に対して、優れた塗布性や分散剤除去能力に優れたアンダーコート層が必要である。例えば特許文献1には、カーボンナノチューブと界面活性剤からなるカーボンナノチューブ分散体をフィルム上に塗布した後、余剰な分散剤を水によるリンスで除去することで、塗布性と導電性の両立を図った導電性フィルムを得る導電性フィルムの製造方法が記載されている。また、特許文献2には、導電性微粒子とバインダー樹脂に、さらにコロイダルシリカを含んだ透明帯電防止膜付き透明基材が記載されている。さらに、特許文献3、及び特許文献4では、無機粒子を多量に含む多孔質膜が記載されている。
特開2009−149516号公報 特開2009−203282号公報 特開2012−167181号公報 特開2013−136216号公報
しかしながら、特許文献1には、耐熱安定性、耐湿熱安定性に関する開示はない。さらに、水によるリンス工程は環境負荷が高く、量産性の大きな障害となりうる。特許文献2では、導電性微粒子とバインダー樹脂、コロイダルシリカが同一の膜内に含まれているため、その導電性コートの塗布性に関する記載はない。特許文献3、特許文献4では無機粒子を多量に含む多孔質膜の記載はあるが、隣接する導電層の塗布性および密着性へ影響を与えるような開示はない。
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に無機粒子とバインダーとを含む樹脂層を有する積層フィルムであり、前記樹脂層へ分散剤とカーボンナノチューブとを含む分散体を塗布した際に、優れた塗布性、密着性および安定性を発現させることが可能となる。
本発明は次の構成からなる。すなわち、
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に、無機粒子(A)とバインダー(B)とを含む樹脂層(X)を有する積層フィルムであって、クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nmにある積層フィルムである。
本発明の積層フィルムによれば樹脂層上へ分散剤とカーボンナノチューブとを含む分散体を塗布した際に、優れた塗布性、密着性、および安定性を発現することができる。
実施例1のPET基板上の樹脂層(X)のクリプトンガス吸着・脱着等温線である。 実施例1のPET基板上の樹脂層(X)の細孔径分布曲線である。
以下、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に、無機粒子(A)とバインダー(B)とを含む樹脂層(X)を有する積層フィルムであって、クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nmにある積層フィルムについて詳細に説明する。
(1)樹脂層(X)および積層フィルム
本発明における樹脂層(X)は、無機粒子(A)とバインダー(B)とを含む。また、本発明の積層フィルムはクリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nmにある。細孔直径分布のピークトップとは、樹脂層(X)に存在する細孔の直径の再頻値が5〜30nmにあることを意味する。細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nmにあることで、無機粒子(A)とバインダー(B)とを含む樹脂層(X)の空隙率を大きくすることができ、後述するカーボンナノチューブ分散体を塗布した際に、ぬれ広がる面積が増大させ、均一な塗布性を発現させることができ、さらに無機粒子(A)同士の隙間に、カーボンナノチューブ分散剤が吸着し、優れた抵抗値安定性を発現させることができる。より好ましくは、細孔直径10〜20nmである。
本発明の積層フィルムは、クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径5〜30nmの範囲にある細孔体積が全細孔体積中に占める割合が50vol%以上であることが好ましい。細孔直径5〜30nmの範囲にある細孔体積の全細孔体積中に占める割合とは、樹脂層(X)の全体積に対して、樹脂層(X)に存在する細孔直径5〜30nmの範囲にある細孔体積の割合であることを意味する。細孔直径5〜30nmの範囲にある細孔体積の全細孔体積中に占める割合が50vol%以上であることで、カーボンナノチューブ分散体の均一な塗布性および優れた抵抗値安定性を発現させることができる。より好ましくは細孔直径5〜30nmの範囲にある細孔体積の全細孔体積中に占める割合が50vol%以上、70vol%以下である。
本発明の積層フィルムは、エリプソメトリーにより測定した空隙率が15%以上、50%以下であることが好ましい。エリプソメトリーにより測定した空隙率とは、積層フィルムに含まれる空気の体積割合を意味する。空隙率を算出するために樹脂層(X)を樹脂層(X)/空気混合層として空気の割合を算出することができる。エリプソメトリーにより測定した空隙率が15%以上、50%以下であることで、カーボンナノチューブ分散体の均一な塗布性および優れた抵抗値安定性を発現させることができる。より好ましくは空隙率が15%以上、30%以下である。
また本発明の樹脂層(X)は、水接触角が25°以上、70°以下であることが好ましい。水接触角を25°以上、70°以下とすることで、樹脂層(X)上に後述するカーボンナノチューブ分散体を塗布した際に、樹脂層(X)は、表面粗さRa(中心線平均粗さ)の効果と合わせて、塗布はじきや塗布ムラが少なくカーボンナノチューブ分散体を均一に塗布することが可能となる。樹脂層(X)の水接触角が25°以上であれば、例えば60℃90%RHのような高温高湿下においても樹脂層(X)の膨潤や吸湿による耐湿熱接着性の低下を抑制することができる。樹脂層(X)の水接触角は、樹脂層(X)に含まれる無機粒子(A)の含有量を調節し、樹脂層(X)の表面積を増加させると小さくなる。よって、樹脂層(X)の水接触角は、無機粒子(A)の含有量や、バインダー(B)に含まれる親水性官能基の共重合量、親水性官能基の種類によって、適宜調整することができる。
さらに、本発明の積層フィルムはヘイズが3.0%以下であることが好ましい。積層フィルムのヘイズを3.0%以下とすることで、樹脂層(X)に前述した本発明の効果を発現させることが可能となる。また、積層フィルムのヘイズを3.0%以下とすると、導電性コート用のアンダーコートフィルムとして用いた場合、例えば、タッチパネル、電子ペーパーなどの透明性が求められる用途に好ましく用いることができる。
(2)無機粒子(A)
樹脂層(X)に含まれる無機粒子(A)とは、有機化合物以外の化合物の中で、共有結合を有し、2種以上の原子からなる分子が最小単位となる化合物からなる粒子をいう。本発明において樹脂層(X)が無機粒子(A)を含有することにより、樹脂層(X)表面のぬれ性が向上する。その結果、樹脂層(X)の上に形成される導電層に含まれるカーボンナノチューブが分散しやすくなるため好ましい。
無機粒子(A)の組成としては、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、セリア、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、各種金属酸化物からなる粒子などが好ましい。バインダーへの分散性や、粒子の硬度、耐熱性、耐アルカリ接着性の点から無機コロイド粒子が好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。特にシリカ粒子またはアルミナ被覆シリカ粒子や、シリカ粒子およびアルミナ被覆シリカ粒子を混合したものが好ましい。
また、シリカ粒子が鎖状形シリカ粒子であることが最も好ましい。鎖状形の説明については後述する。
無機粒子(A)の含有量は、樹脂層(X)全体を100質量%としたとき5質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。無機粒子(A)の含有量が5質量%未満であると、良好な塗布性を得ることができない場合がある。この理由は、上述したとおり、樹脂層(X)上にカーボンナノチューブ分散体を塗布した際に、無機粒子(A)同士の隙間にカーボンナノチューブ分散剤が吸着するためと推定している。一方、無機粒子(A)の含有量が60質量%を超えると、樹脂層(X)の造膜性を維持することができない場合がある。無機粒子(A)の含有量は好ましくは、5質量%以上、50質量%以下である。本発明の樹脂層(X)中における無機粒子(A)の含有量を上記の範囲とすることで、樹脂層(X)と後述する導電性コート層との接着性および接着性を付与しやすくなるため好ましい。また、無機粒子(A)を用いることで無機粒子(A)が樹脂層(X)中に良好に分散し、クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nm細孔を有する樹脂層(X)を作製しやすくなるため好ましい。
無機粒子(A)の平均1次粒径は15nm以上、80nm以下であることが好ましい。無機粒子(A)の平均1次粒径が15nm未満であると、樹脂層(X)の表面が平滑になりすぎ、後述するカーボンナノチューブ分散体を塗布した際に、良好な塗布性を発現させることができない場合がある。また、無機粒子(A)の平均1次粒径が80nmを超えると、樹脂層(X)に塗布ムラや亀裂が発生し、積層フィルムの透明性や塗布性が低下する場合がある。ここでいう無機粒子(X)の平均1次粒径とは、原子間力顕微鏡(以降、AFMと記す)で観察した樹脂層表面における粒子の直径のことをいう。ここで粒子の直径とは、粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径、すなわち、円相当径(ヘイウッドHeywood径)のことをいう。樹脂層表面における粒子の直径の測定は、AFMにより樹脂層の表面を測定した後、装置付属のソフトにより粒経分析を行うことで取得することが可能である。
本発明に用いる粒子の形状としては、1次粒子の形状が例えば球形、回転楕円体形、幾何学的な形状(立方体・ロッド状・板状・繊維状・テトラポッド形・三角柱形)の粒子が挙げられる。また、2次粒子の形状として、鎖状形、パールネックレス状形などが挙げられる。表面凹凸付与の観点より、球形、鎖状形、パールネックレス状形が好ましい。また、必要に応じてこれらの粒子を混合し併用することができる。
粒子の形状が球形とは、粒子が立体的な球状の粒子であることをいう。球形の無機粒子としては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”、“ナノユース”、“セルナックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズや日本触媒(株)社製の“シーホスター”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。粒子の形状が鎖状形とは、球形の1次粒子が数珠状に連結及び/又は分岐し、鎖状の構造を形成した形状であることをいう。1次粒子の平均粒子径が3〜20nmであることが好ましい。1次粒子の平均連結数は、2〜30個であることが好ましく、2〜30個の1次粒子が鎖状に連結した無機粒子であることが好ましい。鎖状形のシリカ粒子としては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズなどが好ましく用いられる。粒子の形状がパールネックレス状形とは、3次元の各方向に分岐した構造を有する形状であり、パールネックレス状形である粒子は数珠の球に相当する球状粒子と糸に相当する粒子とから構成されることをいう。パールネックレス状形の無機粒子としては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズなどが好ましく用いられる。
(3)バインダー(B)
本発明において、バインダー(B)とは、上記の無機粒子(A)と混合できるものであれば特に限定されない。例えばフェノール樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂などが好ましい。相溶性の観点から、バインダー(B)は水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂および水性アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含むことが最も好ましい。
樹脂層(X)の厚みは後述するようにカーボンナノチューブ分散体塗布時に分散剤が移行できる厚みであれば限定されない。光学干渉による反射防止効果が有効に得られる厚みであれば、光線透過率が向上するため好ましい。このため、後述するオーバーコート層の厚みと合わせた厚みが20〜400nmの範囲にあることが好ましい。
(4)架橋剤(C)
本発明では、樹脂層(X)に、無機粒子(A)とバインダー(B)以外に、架橋剤(C)を含んでもよい。架橋剤は特に限定されないが、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物およびカルボジイミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。架橋剤の含有量は、樹脂層(X)全体を100質量%とした際に、20質量%以下であることが好ましい。架橋剤の含有量が20質量%以下であることで、前記樹脂層へ分散剤とカーボンナノチューブとを含む分散体を塗布した際に、優れた塗布性、密着性および安定性を発現させることが可能となるため好ましい。
(5)熱可塑性樹脂フィルム
本発明の積層フィルムにおいて用いられる熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂から形成されるフィルムであって、熱によって溶融もしくは軟化するフィルムの総称であって、特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂の例として、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンフィルムなどのポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂などのアクリル樹脂、ナイロン樹脂などのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂はモノポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。また、複数の樹脂を用いてもよい。
これらの熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂フィルムの代表例として、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメタクリレートフィルムやポリスチレンフィルムなどのアクリル系フィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、フッ素系フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどを挙げることができる。
これらのうち、機械的特性、寸法安定性、透明性などの点で、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルムなどが好ましく、更に、機械的強度、汎用性などの点でポリエステルフィルムが特に好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは38〜250μm、最も好ましくは75〜150μmである。また、熱可塑性樹脂フィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであってもよい。
(6)樹脂層(X)の形成方法
本発明では、一例として前述した無機粒子(A)、バインダー(B)、並びに必要に応じて、架橋剤(C)や溶媒を含有する塗料組成物を熱可塑性樹脂フィルム上へ塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥させることによって、熱可塑性樹脂フィルム上に樹脂層を形成することができる。
また、本発明では、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合されているものを指す。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
塗料組成物を熱可塑性樹脂フィルムへ塗布する方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができる。
インラインコート法とは、熱可塑性樹脂フィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、熱可塑性樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)熱可塑性樹脂フィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)熱可塑性樹脂フィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)熱可塑性樹脂フィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、熱処理を施し熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム、またはAフィルムに、フィルムの製膜工程とは別工程で塗料組成物を塗布する方法である。
(7)導電性コート層
本発明において導電性コートとは、導電性材料と分散剤、溶媒を含む導電性塗料をフィルムなどの基板上へ塗布することを示す。また、このように形成された層を導電性コート層と呼ぶ。ここで、導電性コートされた基板を導電性コート基板ということもある。
本発明において導電性材料とは、導電性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属ナノワイヤー、導電ポリマー、ITOなどが好ましく、特にカーボンナノチューブが最も好ましい。
本発明において導電性材料の分散剤は特に限定されないが、分散性の観点よりイオン性分散剤を用いることが好ましい。イオン性分散剤に含まれる官能基は特に限定されないが、例えば、アミノ基、イミノ基、メチロール基、イソシアナート基、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、ヒドラジド基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アセトアセチル基、アジリジン基、アセタール基、スピロオルソエステル基、活性エステル基、環状カーボネート基、イソプロペニル基、アルデヒド基、プロパルギル基、アジド基を含むイオン性分散剤が好ましい。中でも、例えば導電性材料としてカーボンナノチューブを用いる場合、カーボンナノチューブ分散性の観点よりカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含むイオン性分散剤が最も好ましい。
イオン性分散剤としてはアニオン性分散剤やカチオン性分散剤、両性分散剤がある。例えば導電性材料としてカーボンナノチューブを用いる場合、カーボンナノチューブ分散能が高く、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、分散性、および分散保持性に優れることから、アニオン性分散剤が好ましい。なかでも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸の塩がカーボンナノチューブ分散体においてカーボンナノチューブを効率的に分散することができ好ましい。
本発明において、カルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
得られた導電性コート基板は、例えば基板がフィルムであれば導電性フィルムとして、前述したようにタッチパネル、電子ペーパーなどの電極として用いることができる。導電性フィルムは要求特性として、導電性や透明性、基材であるフィルムと導電層との接着性や耐湿熱接着性が必要である。本発明において、導電性コート用のアンダーコートフィルムとは、導電性フィルムを得るために、導電性塗料を塗布する基材フィルムを示す。導電性コート用のアンダーコートフィルムの要求特性として、基材である熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層の接着性、耐湿熱接着性、水接触角の制御、低ヘイズを有することが好ましい。
また、導電性コート用のアンダーコートフィルムには、導電性塗料の塗布性も有することが好ましい。一般的な熱可塑性樹脂フィルム(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム)の表面に導電性塗料を塗布すると、導電性塗料が熱可塑性樹脂フィルム上ではじいたり、塗布ムラを発生させてしまったりする場合がある。導電性塗料が均一に塗布されないと、導電性コート層の導電性が低下する場合がある。また、導電性塗料中にはカーボンナノチューブなどの導電性材料を塗料中に分散させる目的で分散剤を含むことが多いが、一般的に分散剤は絶縁物質であるため、導電性塗料が均一に塗布されないと、導電性コート層の導電性を低下させてしまう場合がある。本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム上へ樹脂層(X)を設けることで、導電性塗料のはじきや塗布ムラを抑制し均一な導電性コート層を形成させることが可能となり、上述した導電性コート用のアンダーコートフィルムの要求特性を満たすため好ましい。そのため、本発明の積層フィルムは、導電性コート用のアンダーコートフィルムとして好適に用いることができる。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布測定
以下実施例/比較例にて作成した積層フィルム(基材/樹脂層)A5サイズ(約1g、基材含む)をガラスセルに入れて、室温で約5時間減圧脱気した。測定装置は日本ベル製BELSORP−maxで、以下の測定条件で実施した。
(吸着質Kr、死容積測定ガスHe、測定温度77K、飽和蒸気圧0.331kPa、恒温槽・配管温度40℃、測定モード等温での吸着・脱着過程、測定相対圧0〜0.7、平衡設定時間1相対圧につき180s、前処理温度・時間室温×約5時間減圧脱気)。
解析条件として、比表面積解析法はBET多点法(相対圧約0〜0.4の吸着過程のみを使用)を用いた。解析にはクリプトンガス吸着・脱着等温線のうち、脱着過程を用いた。25℃条件下、相対圧(平衡圧/飽和蒸気圧)を0〜0.7まで変化させ、積層フィルムにクリプトンガスを吸着させた。次に、相対圧(平衡圧/飽和蒸気圧)を0.7〜0まで変化させ、積層フィルムからクリプトンガスを脱着させた。この一連の工程から図1に示すような相対圧とクリプトンガス吸着体積に関するクリプトンガスの吸着・脱着等温線を得た。なお、図1に示す平衡圧設定時間は1相対圧につき180sであるが、その際に変化させる絶対圧のピッチは平均0.1kPaであり、また相対圧(平衡圧/飽和蒸気圧)のピッチは平均0.04であった。また、絶対圧のピッチおよび相対圧のピッチについては、標準偏差がそれぞれ0.005および0.016であった。クリプトンガス吸着・脱着等温線は、メソ孔の存在を意味する典型的なIV型等温線である。得られたクリプトンガスの吸着・脱着等温線からKelvin式を用いて細孔径分布を求めた。クリプトンガスの吸着・脱着等温線から各相対圧におけるクリプトンガスの吸着体積が分かるため、これをKelvin式およびクリプトンの原子半径を用いて規格化することにより、積層フィルムの細孔直径分布(dV/dlogd)を得ることができる。詳細を以下に記載する。
細孔半径(r)は,その圧力(P)での吸着層の厚み(t)と毛管凝縮コア半径(r)の和である(式(1))。
=t + r (1)
コア半径( r) は、r = rと近似してKelvin式(2)で求める。
ln(P/P)=−(2γcosθV/RT)(1/r) (2)
ここで、r:メニスカス半径 θ:接触角 P:吸着平衡圧 γ:表面張力 R:気体定数 P :飽和蒸気圧 V:モル体積 T:絶対温度である。
求めた細孔半径rを2倍することで細孔直径dを求める。
細孔体積の変化量(dV)は,脱着過程で圧力がPからP(P > P)へ減少したとすると、その時のクリプトンガスの脱着量(dV)と、半径(rpn)、厚み(t)とから以下の手順で求める。
クリプトンガスの脱着量(dV)は,新たな毛管凝縮層(コア)からの蒸発量(dVnk)と、すでに蒸発が終了した空の細孔の多分子吸着層からの脱離量(dVnm)との和である。
dV=dVnk+dVnm (3)
従って、dVnk=dV−dVnm (4)
上式の多分子吸着層からの脱離量(dVnm)は次式で求める。
dVnm=dtΣS− 2πtdtΣL (5)
ここで、S:表面積 (=2 V/ r)、L:細孔の長さ(=S/2πr)である。
この(5)式の結果を(4)式に代入すると、新たな毛管凝縮層(コア)からの蒸発量(dVnk)が求まるので,これにコア断面積ファクター(Q)を乗じることで細孔体積の変化量(dV)が計算できる。
dV=Q×dVnk (6)
ここで、Q=(rpn/(rpn−t)) (7)である。
細孔直径分布dV/dlogdの数値は、基材を含めた全体の質量で規格化されている。なお、クリプトンガスが進入できる貫通孔が存在しない場合は、クリプトンガス吸着等温線測定ができず、細孔径分布解析を行うことができない。
絶対圧および相対圧を変化させることにより得られたクリプトンガスの吸着・脱着等温線から、さらに積層フィルムの細孔直径分布(dV/dlogd)を得た。すなわち細孔直径分布において、細孔直径d(nm)それぞれに対応する細孔直径分布dV/dlogd(cm/g)が算出される。得られたデータについて、横軸を細孔直径d(nm)、縦軸を細孔直径分布dV/dlogd(cm/g)としたプロットを作成した。それぞれのデータをマイクロソフトエクセル2010の散布図(平滑線とマーカー)を用いてグラフ化し、そのグラフ中の累積相対度数が最も大きい細孔直径を、細孔直径分布のピークトップとした。また、細孔直径1〜100nmの範囲にある細孔体積の全細孔体積中に占める割合は、クリプトンガス吸着により測定した細孔分布のうち、細孔直径5〜30nmの範囲にある累積相対度数を加えることで求めた。
(2)エリプソメトリーによる空隙率測定
以下実施例/比較例にて形成した積層フィルム(基材/樹脂層)の試料からの反射光の偏光状態の変化を測定し、試料の光学定数を計算により求めた。装置として、高速分光エリプソメーターM−2000(J.A.Woollam社製)、回転補償子型(RCE:Rotating CompensatorEllipsometer)、300mm R−Thetaステージを用いた。
測定条件として、入射角:65、70、75度、測定波長:195nm〜1,680nm、解析ソフト:WVASE32、ビーム径:2mm×8mm程度で測定を行った。計算に用いた光学モデルは、樹脂層(X)/基材である。
計算は、各試料で測定されたΔ(位相差)とψ(振幅反射率)のスペクトルを計算モデルから算出された(Δ、ψ)と比較し、測定値(Δ、ψ)に近づくように誘電関数や膜厚を変化させてフィッティングを行った。ここで示されたフィッティング結果は、測定値と理論値がベストフィット(平均二乗誤差が最小に収束)した結果である。なお、樹脂層(X)および基材の光学定数はリファレンスから算出した値で固定した。
試料の空隙率を算出するために樹脂層(X)を樹脂層(X)/空気混合層として空気の体積割合を算出した。光学モデルは、樹脂層(X)・空気混合層/基材とした。混合層の樹脂層(X)は上記で算出した光学定数で固定した。
(3)導電性コート層塗布性評価
樹脂層(X)に導電性コート層を形成したサンプルに対して、目視による塗布ハジキ、塗布ムラの有無を評価した。評価基準は評価基準「○」を良好なカーボンナノチューブ塗布性と判定した。
○:目視により明確に塗布ハジキ、塗布ムラが確認されない。
△:目視により一部塗布ハジキ、塗布ムラが確認される。
×:目視により明確に塗布ハジキ、塗布ムラが確認される。
(4)導電性コート層接着性評価
樹脂層(X)上に導電性コート層を形成したサンプルに対して、JIS5600−5−6(1999年制定)に準拠し、カット間隔2mmで5×5の25マスの切れ目を入れた。次に、切れ目を入れた部分に、ニチバン18mm“セロテープ”(登録商標)(品番:CT−18S)を、切れ目が見えるようにしっかりと指で“セロテープ”(登録商標)を擦った。そして、樹脂層に対して約60°の角度で“セロテープ”(登録商標)を瞬間的に引き剥がし、マスの剥離数をカウントした。尚、マスの一部のみが剥離した場合でも、1マスとカウントする。評価回数は5回とし、その平均値を求めた。評価基準は以下のように定めた。評価基準「○」以上を良好な接着性と判定した。
○:マスの剥離数が3マス以下
×:マスの剥離数が4マス以上。
(5)導電性コート層湿度依存性評価
樹脂層(X)に導電性コート層を形成したサンプルに対して、5cm(幅方向)×10cm(長さ方向)にサンプリングし、1枚の導電性コート層側の長さ方向の各端部から0.5cmに銀ペースト(太陽インキ製造株式会社、ECM−100 AF4820)を塗布し、90℃、30分乾燥し電極を形成した。電極間の長さは9cm、電極間の幅は5cmとした。小型環境試験器(エスペック株式会社、SH−221)中に、電極付積層フィルムの両電極にクリップを付けた状態で入れ、温度25℃・湿度30%RHで30分間保持し、続いて同じサンプルを温度25℃・湿度90%RHで30分間保持した。小型環境試験機中での端子間抵抗値は、マルチ入力データ収集システム(キーエンス、NR−500、NR−TH08)を用いて30秒ごとに記録した。小型環境試験器中の温度・湿度は、温湿度プローブ(日本シンテック、NS−04AP)によりモニターした。温度25℃・湿度30%RHで30分保持した後の安定した端子間抵抗値を、25℃、湿度30%の端子間抵抗値[A]とし、続いてこのサンプルを温度25℃・湿度90%RHで30分保持した後の安定した端子間抵抗値を、25℃、湿度90%の端子間抵抗値[B]とし、[B]/[A]を算出し上昇率を導電性コート層の湿度依存性とした。
本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[樹脂層(X)作製]
以下の手順で樹脂層(X)作製用の塗布液を調整した。親水アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(高松油脂株式会社製「ペスレジンA647−GEX」固形分濃度:20質量%)を樹脂層(X)用の樹脂とし、シリカ粒子の水分散体(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOUP」固形分濃度:15質量%)を樹脂層(X)に含まれるシリカ粒子とした。前記ペスレジンA647−GEXとスノーテックスOUPと純水を質量比で2.6:10.9:1.5の割合で混合し、固形分5質量%の樹脂層(X)作製用の塗布液とした。厚み100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム 東レ(株)製“ルミラー”(登録商標)U48を使用した。UR100線のグラビアロールを用いて、ライン速度に対するグラビアロールの回転比を1.5倍に設定し、基材上に前記樹脂層(X)用の塗液を塗布した。塗布後、125℃の乾燥機内で1分間乾燥させた。この方法で作製した樹脂層(X)の厚みは約800nmで、樹脂層(X)の樹脂とシリカ粒子の質量比は7:3であった。
[カーボンナノチューブ合成触媒調製]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製MJ−30)を約1,000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、10〜20メッシュの範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39質量%であった。
[カーボンナノチューブの製造]
前記の触媒を用い、カーボンナノチューブを合成した。固体触媒132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を作製した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却して触媒付きカーボンナノチューブ組成物を得た。この触媒付きカーボンナノチューブ組成物を129g用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブ組成物を得た。
[カーボンナノチューブの酸化処理]
前記のカーボンナノチューブ組成物を約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay 60〜61質量%)に添加した。その後、約140℃のオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このカーボンナノチューブ組成物の平均外径を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、1.7nmであった。また2層カーボンナノチューブの割合は90質量%であり、波長532nmで測定したラマンG/D比は80であり、燃焼ピーク温度は725℃であった。
[重量平均分子量:35,000のカルボキシメチルセルロースの製造]
10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5A(重量平均分子量:80,000、分子量分布(Mw/Mn):1.6、エーテル化度:0.7))水溶液500gを三口フラスコに加えて、1級硫酸(キシダ化学(株)社製)を用いてpH2に調整した。この容器を120℃に昇温したオイルバスに移し、加熱還流下で攪拌しながら9時間加水分解反応を行った。三口フラスコを放冷後、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整し反応停止した。加水分解後のカルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。その結果、重量平均分子量は約35,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。また収率は97質量%であった。前記10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量平均分子量:35,000)水溶液20gを30cmに切断した透析チューブ(スペクトラムラボラトリーズ(株)社製、Biotech CE透析チューブ(分画分子量:3,500−5,000D、16mmφ)に加え、この透析チューブをイオン交換水1,000gが入ったビーカーに浮かべて2時間透析を行った。その後、新しいイオン交換水1,000gと入れ替えて再度2時間透析を行った。この操作を3回繰り返した後、新しいイオン交換水1,000gが入ったビーカー中で12時間透析を行い、透析チューブからカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を取り出した。この水溶液についてエバポレーターを用いて減圧濃縮した後、凍結乾燥機を用いて乾燥した結果、粉末状のカルボキシメチルセルロースナトリウムが70質量%の収率で得られた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量は透析前と同等であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィースペクトルにおけるピーク面積について透析前のカルボキシメチルセルロースナトリウムが57質量%であったのに対し、透析後では硫酸アンモニウムのピーク面積が減少し、カルボキシメチルセルロースナトリウムのピーク面積が91質量%に向上した。
[カーボンナノチューブ分散体作製]
この10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量平均分子量:35,000)水溶液を用いてウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物(乾燥質量換算で25mg)、3.5質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5Aを加水分解した(重量平均分子量:35,000))水溶液1.8g、ジルコニアビーズ(東レ(株)社製、“トレセラム”(登録商標)、ビーズサイズ:0.8mm)13.3gを容器に加え、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整した。この容器を振動ボールミル((株)入江商会社製、VS−1、振動数:1,800cpm(60Hz))を用いて2時間振盪させ、カーボンナノチューブペーストを調製したところ、このカーボンナノチューブ含有組成物ペースト中の分散剤の吸着量は88質量%、粒径は2.9μmであった。
次にこのカーボンナノチューブ含有組成物ペーストをカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.15質量%となるようにイオン交換水で希釈し、その希釈液10gに対して再度28質量%アンモニア水溶液でpH10に調整した。その水溶液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)社製、VCX−130)出力20W、1.5分間(2kW・min/g)、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機((株)トミー精工、MX−300)にて10,000G、15分遠心処理し、カーボンナノチューブ分散体9gを得た。この分散体中のAFMにより測定したときのカーボンナノチューブ含有組成物の分散体の平均直径は1.7nmであり、孤立分散していた。また、カーボンナノチューブ含有組成物の分散体の長さは3.9μmであった。その後、水を添加して終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.06質量%となるように調製してフィルム塗布液とした。
[導電性コート層の作製]
前記作製法で作製したフィルム塗布液を、前記樹脂層(X)上に、バーコート法によって塗布、乾燥させることで、導電性コート層を作製した。なお、バーコートの番手は6番、乾燥温度100℃、乾燥時間60秒である。
(実施例2)
樹脂層(X)の作成時に架橋剤(C)としてオキサゾリン化合物((株)日本触媒製“エポクロス”WS−500)を樹脂層(X)の固形分100質量%に対して10質量%となるよう添加した以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムおよび導電性コート層を作製した。
(比較例1)
樹脂層(X)の作成時に無機粒子(A)としてシリカ粒子の水分散体(日産化学工業株式会社製「スノーテックスO」固形分濃度:20質量%)を使用した以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムおよび導電性コート層を作製した。
(比較例2)
樹脂層(X)の作成時に架橋剤(C)としてオキサゾリン化合物((株)日本触媒製“エポクロス”WS−500)を樹脂層(X)の固形分100質量%に対して10質量%となるよう添加した以外は比較例1と同様の方法で積層フィルムおよび導電性コート層を作製した。
(比較例3)
樹脂層(X)の作成時に無機粒子(A)を添加しないこと以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムおよび導電性コート層を作製した。
樹脂層(X)の組成、樹脂層(X)の表面性状および導電性コート層塗布後の特性評価については表1〜3に記載する。実施例1および2は空隙率が高く、樹脂層(X)にはクリプトンガスが進入できる貫通孔が存在しており、クリプトンガス吸着等温線測定に基づいた細孔径分布測定が可能であったと推察される。一方、比較例1〜3は空隙率が低く、樹脂層(X)にはクリプトンガスが進入できる貫通孔はほとんど存在しないため、クリプトンガス吸着等温線測定ができず細孔径分布が分析できなかったと推察される。
Figure 2017177654
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本発明の積層フィルムはカーボンナノチューブなどの導電性材料に対して良好な優れた塗布性、密着性、および安定性を発現させることから、タッチパネルや電子ペーパー部材である透明導電フィルムのアンダーコートフィルムとして好ましく用いることができる。

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片側に、無機粒子(A)とバインダー(B)とを含む樹脂層(X)を有する積層フィルムであって、クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径分布のピークトップが細孔直径5〜30nmにある積層フィルム。
  2. クリプトンガス吸着により測定した細孔直径分布において、細孔直径5〜30nmの範囲にある細孔体積の全細孔体積中に占める割合が50vol%以上である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. エリプソメトリーにより測定した空隙率が15%以上、50%以下である請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記無機粒子(A)がシリカ粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記シリカ粒子が鎖状形シリカ粒子である請求項4に記載の積層フィルム。
  6. 前記樹脂層(X)全体を100質量%としたとき樹脂層(X)に含まれる前記無機粒子(A)の含有量が5質量%以上、60質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 前記バインダー(B)が水性ポリエステル樹脂、水性ウレタン樹脂および水性アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの樹脂を含む請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルムの樹脂層(X)上に導電性コート層を有する積層フィルム。
  9. 前記導電性コート層が分散剤とカーボンナノチューブとを含む請求項8に記載の積層フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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