JP2017176012A - タルト菓子の製造方法 - Google Patents

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Masaaki Miyamoto
昌明 宮本
佳世 木村
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佳世 木村
江里子 原田
Eriko Harada
江里子 原田
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Abstract

【課題】
タルト生地と高水分フィリング材からなるタルト菓子において、水分移行に起因して生じるタルト生地の軟化を抑制し得るタルト生地練り込み用油脂の製造方法とそれを使用したタルト生地の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
特定の固体脂含量を有する油脂50〜90重量部と、あらかじめ水相中で加熱処理してアルファ化度80%以上とした澱粉類を1〜10重量%含有するタルト生地練り込み用油脂組成物を用いてタルト生地を製造し、該タルト生地と高水分フィリング材を組み合わせてタルト菓子を得る。

【選択図】なし

Description

本発明はタルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法に関し、詳しくはタルト生地と高水分フィリング材からなる複合菓子であるタルト菓子において、水分移行に起因して生じるタルト生地の軟化を抑制し得るタルト生地練り込み用油脂の製造方法とそれを使用したタルト生地の製造方法に関する。
タルト菓子は、小麦粉、バターなどの油脂、砂糖及び卵黄を主原料としたタルト生地に高水分のフィリング材やフルーツを載置した複合菓子であり、タルト生地のサクサクした食感とフィリング材やフルーツのみずみずしい食感を同時に楽しめる嗜好性の高い食品である。
しかしながら、タルト菓子の問題点として、高水分フィリング材やフルーツからタルト生地への経時的な水分移行があり、その結果としてタルト生地は調製直後のサクサクした食感が失われ、軟化して歯切れの悪いものになってしまい、フィリング材やフルーツはみずみずしさが失われてしまう問題がある。
上記問題を解決する方法として、タルト生地の主原料の変更による方法が提案されている。
特許文献1は、小麦粉を焼菓子粉砕物に変更するとともに、澱粉や加工澱粉のような賦形剤及び溶融状の固体油脂を混合してベースミックスを得、次いでこのベースミックスと溶融状固体油脂および水を混合した後、タルト台に成型し、焼成するタルト台の製造法である。本方法によるタルト台は、水分の多いフィリング材を入れても、フィリング材からの水分移行及び水浸透が少ないものであると記載されている。本方法は有力なタルト菓子の製造方法ではあるが、焼菓子粉砕物を大量に必要とする方法であり、その調製が容易でないという問題があった。
上記以外に、焼菓子の水分保持効果や食感維持効果を目的とした焼菓子練り込み用油脂に関する提案がなされている。
特許文献2は、SFC値が20℃で4〜50、30℃で3〜40及び40℃で10以下である特性を有する油脂類からなる油相中に、加工澱粉を含有する水相が乳化しており、油相の量が30〜90重量%、加工澱粉の量が1〜20重量%である油中水型乳化油脂組成物に関する。
本乳化油脂組成物利用により、風味の劣化が少なく、かつ水分を安定して保持できる焼菓子が製造可能と記載されているが、本方法は加工澱粉の水分保持能に着目して、水分飛散による焼菓子の食感変化の抑制を目指した発明であり、タルト生地と高水分フィリング材の複合菓子における水分移行抑制には言及されていない。
特許文献3は、アミロペクチンを80重量%以上含有するアルファ化澱粉が水で膨潤した状態で油脂中に分散している、乳化物でない油脂組成物に関する。本油脂組成物利用により、ビスケットやクッキー等の食感をクリスピーにし、また粉っぽさのない製菓類を製造できると記載されているが、本方法の油脂組成物もタルト菓子と高水分フィリング材の複合菓子における水分移行抑制への利用は示唆されていない。
特開2002−335851号公報 特開平11−155482号公報 特開平11−289980号公報
本発明は、タルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法に関し、詳しくはタルト生地と高水分フィリング材からなるタルト菓子において、水分移行に起因して生じるタルト生地の軟化を抑制し得るタルト生地練り込み用油脂の製造方法とそれを使用したタルト生地の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定のSFCを有する油脂と水相中であらかじめアルファ化させた澱粉または加工澱粉を含有する水相を用いて調製した練り込み用油中水型乳化組成物を用いてタルト生地を調製し、これと高水分フィリング材を組み合わせた複合菓子とすることにより、水分移行によるタルト生地の経時的な食感変化を大幅に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下である。
(1) 固体脂含量(SFC値)が20℃で20〜40%、30℃で5〜15%、35℃で8%以下である油脂50〜90重量部、あらかじめ水相中で加熱処理してアルファ度80%以上とした澱粉類を1〜10重量%含有することを特徴とするタルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法。
(2) 澱粉類が、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉及びアルファ化澱粉から選択される1種または2種以上の加工澱粉である(1)記載のタルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法。
(3) (1)または(2)記載のタルト生地練り込み用油脂組成物を15〜30重量%含有することを特徴とするタルト生地の製造方法。
(4) (3)記載の方法で製造されたタルト生地と高水分フィリング材を組み合わせることを特徴とするタルト菓子の製造方法。
本発明によるタルト生地練り込み用油脂組成物をタルト生地に使用することにより、タルト生地と高水分フィリング材を組み合わせた複合菓子であるタルト菓子において、水分移行によるタルト生地及び高水分フィリング材の経時的な食感変化を抑制することができる。
本発明のタルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法について、詳細に説明する。
本発明のタルト生地練り込み用油脂組成物は、焼菓子の練り込み用に使用できる油中水型乳化物であり、ファットスプレッドまたはマーガリンのいずれの形態であっても良い。
本発明のタルト生地練り込み用油脂組成物は、固体脂含量(SFC値)が20℃で20〜40%、30℃で5〜15%、35℃で8%以下である油脂50〜90重量部を油相として含有する。SFC値が上記範囲にあれば、油脂組成物をタルト生地練り込みに使用する際の作業性に優れ、焼成後のタルト生地がサクサクした食感と優れた口溶けを有するものとなる。20℃及び30℃のSFC値が下限未満であると軟らかすぎるし、逆に上限を超えると硬すぎる場合がある。35℃のSFC値が上限を超えると、焼菓子の口溶けが悪くなるとともに食感が硬くなりすぎる傾向がある。
上記油脂としては、ヤシ油、パーム核油、ババス油、パーム油、パーム高融点部、パーム中融点部、パーム低融点部、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油などの各種植物油脂、動物油脂、これらの油脂の分別油、エステル交換油、硬化油から選択される油脂の1種以上を適宜配合することにより調製することができる。好ましくは、トランス酸含量を低減するために、部分硬化油を含有しない分別油、エステル交換油、極度硬化油などを配合して調製したものが望ましい。
本発明のタルト生地練り込み用油脂組成物は、あらかじめ水相中で加熱処理してアルファ度80%以上とした澱粉類を1〜10重量%含有する。すなわち、水相中に澱粉類を添加し、澱粉類の糊化開始温度以上の温度で糊化に十分な時間の加熱処理を行って、澱粉類をアルファ化度80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上としてから、油相と撹拌混合して油中水型乳化物としてタルト生地練り込み用油脂組成物を得ることができる。
上記の澱粉類としては、コメ、小麦、タピオカ、馬鈴薯、コーン由来の澱粉、かかる澱粉を加工処理した酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、アルファ化澱粉のような加工澱粉から選択される1種または2種以上を使用する。アルファ化澱粉使用の場合は、前記加熱処理により十分に水で膨潤させてアルファ化度を80%以上としてから、油相と撹拌混合すればよい。澱粉類のアルファ化度が80%未満である場合や、アルファ化澱粉の水での膨潤後のアルファ化度が80%未満の場合は、タルト生地と高水分フィリング材の複合菓子における水分移行抑制効果が不十分になる。なお、アルファ化度は定法であるβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定できる(中村道徳,貝沼圭二編,「生物化学実験法19 澱粉・関連糖質実験法」,学会出版センター(1986))。
本発明に用いる澱粉類としては、好ましくは加工澱粉の利用が好ましく、さらに好ましくは酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、アルファ化澱粉から選択される1種または2種以上の利用が好ましい。かかる加工澱粉利用により、焼成後のタルト生地のサクサクした食感をより長期間に渡って保持させることができる。
本発明のタルト生地練り込み用油脂組成物に対する澱粉類の含有量は、1〜10重量%であり、好ましくは2〜8重量%、もっとも好ましくは3〜7重量%である。澱粉類の含有量が下限未満であると、タルト生地と高水分フィリング材の複合菓子における水分移行抑制効果が不十分になる。逆に上限を超えると、焼成後のタルト生地の口溶けと風味が低下する傾向にある。
本発明の油脂組成物は、例えば以下の油中水型乳化物であるマーガリンの調製方法により、調製することができる。
設定された配合において、55〜75℃で融解した油脂に対し、油溶性乳化剤や油脂に溶解する成分を溶解し油相とする。一方、設定された配合において、水、澱粉類及び水に溶解する成分、たとえば水溶性の風味素材などは水に混合し水相とする。水相を澱粉類の糊化開始温度より0〜25℃高い温度で、数分〜数十分間、保持して澱粉類をアルファ化度80%以上とする。例えば、コーンスターチの場合は85〜95℃、小麦澱粉の場合は90〜95℃で1〜10分間程度でアルファ化度80%以上とすることができる。なお、澱粉類をアルファ化度80%以上とする場合の水に対する澱粉類の含有量は、水相中に10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%であるのが望ましい。
油相および水相の準備が終了した後、油相を攪拌しながら水相を添加することで、油中水型に略乳化した調合液を得る。このとき、攪拌が不十分である場合や、あるいは油相の温度が低すぎる場合は、乳化が反転することもあるので、十分に攪拌しかつ、十分な温度に保つ必要である。
調合液はポンプにより送液し、適宜殺菌装置等を通過させた後、油中水型乳化油脂組成物の製造装置へ供される。油中水型乳化油脂組成物の製造装置へ供される直前の段階で、調合液は溶解(融解)状態でかつ、40〜80℃である必要があり、より望ましくは50〜70℃であり、さらに望ましくは55〜65℃である。油中水型乳化油脂組成物の製造装置へ供される直前の調合液の温度が低すぎる場合は、その段階で油脂結晶が発生し、最終製品に粒状結晶が存在することがある。また、温度が高すぎる場合は、油中水型乳化油脂組成物の製造装置において余分の冷却エネルギーが必要となる場合がある。
油中水型乳化油脂組成物の製造装置としては、冷却機能を有する各種のものを使用することができる。具体的には、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の掻き取り式急冷混和機を備えた装置をあげることができる。これらの装置により、一例として、調合液を1〜8℃/秒の速度で、冷却装置の出口で3〜15℃まで冷却する。冷却速度は、より望ましくは1〜7℃/秒であり、更に望ましくは1〜5℃/秒である。冷却速度が遅すぎると、粒状結晶が発生しやすくなる場合があり、また冷却速度が速すぎると、不必要により大きな冷却エネルギーが必要となる場合がある。
冷却装置を出た油中水型乳化油脂組成物は、B筒と呼ばれるピンマシンを通過させた後、ダンボールケースへ流し込まれる。その後、必要に応じてエージングないしテンパリングが行われた後冷蔵される。なお、目標とする結晶量を得るために、少なくとも24〜48時間程度の冷蔵時間を要する場合がある。
本発明のタルト生地練り込み用油脂組成物を原材料として15〜30重量%含有させて製造したタルト生地は、焼成後にサクサクした食感と優れた口溶けを有するものである。タルト生地としては、前記油脂組成物以外の原材料として、砂糖、全卵、小麦粉、塩、香料、色素などを適宜使用して、シュガーバッター法やフラワーバッター法などにより生地を作成し、その後オーブンを用いて170〜180℃、20〜35分間の焼成を行うことにより調製することができる。なお、タルト生地形状としては、カップ型のタルトカップ、クッキー、ビスケットなど適宜選択することができる。
上記により調製したタルト生地と高水分フィリング材を組み合わせることにより、サクサクした食感のタルト生地とみずみずしい食感の高水分フィリング材が調和した嗜好性の高いタルト菓子を製造することができる。また、該タルト生地は、高水分フィリング材からタルト生地への水分移行を抑制する効果を有することから、前記組み合わせにより比較的長期間、例えば冷蔵7日間のような保存後にも、タルト生地はサクサク感を保持し、高水分フィリング材はみずみずしい食感を保持するようなタルト菓子を得ることができる。
タルト菓子形状にも特に制限はなく、カップ型のタルトカップのカップ内に高水分フィリングを載置又は充填したもの、クッキーやビスケットの形状のタルト生地2枚の間に高水分フィリング材をサンドしたものなどが例示できる。
前記高水分フィリング材とは、特に制限はないが、水分30〜95重量%のカスタードクリーム、生チョコレート、チーズクリーム、ホイップクリーム、ジャム類、フルーツ類などの他、生クリームや牛乳、クリームチーズ、フルーツ、卵、糖類等を適宜配合して調製したフィリング用組成物などが例示できる。
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載する。
なお、固体脂含量(SFC値)は、IUPAC.2 150 SOLID CONTENT DETERMINATION IN FATS BY NMRに準じて測定した。
(エステル交換油Aの調製)
パーム油(ヨウ素価52)66部、パームステアリン(ヨウ素価40)31部、高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1)3部からなる配合油を、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行いエステル交換油を得た。本エステル交換油を常法通り精製して、エステル交換油Aを得た。
(エステル交換油Bの調製)
パーム油(ヨウ素価52)50部、パームステアリン(ヨウ素価40)10部、パーム核オレイン(ヨウ素価25)40部からなる配合油を、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行いエステル交換油を得た。本エステル交換油を常法通り精製して、エステル交換油Bを得た。
実施例1
あらかじめ加熱融解した上記エステル交換油A 15部、エステル交換油B 40部、パーム分別低融点部(ヨウ素価67)17部の混合油に対し、レシチン0.2部、蒸留モノグリセライド0.5部、ショ糖ポリステアレート(HLB1)0.2部を添加混合して品温約60℃の油相を得た。前記混合油のSFCは、20℃で30.0%、30℃で11.8%、35℃で4.5%であった。
25℃の水21.9部に対し、酸化澱粉(商品名:せいうん500、王子コーンスターチ株式会社製)5部、食塩1部及び脱脂粉乳0.1部を添加した。その後撹拌しながら10℃/分の速度で80℃まで加熱し、酸化澱粉をアルファ化度95%とした。
次いで、油相に対し水相を撹拌しながら添加し、さらに80℃まで加熱して油中水型に略乳化した調合液を得た。本調合液を油中水型乳化油脂組成物製造装置(コンビネーター)へ供し、油中水型乳化油脂組成物としてタルト生地練り込み用油脂組成物を得た。
比較例1
あらかじめ加熱融解した上記エステル交換油A 16部、エステル交換油B 42.8部、パーム分別低融点部(ヨウ素価67)18.2部の混合油に対し、レシチン0.2部、蒸留モノグリセライド0.5部、ショ糖ポリステアレート(HLB1)0.2部を添加混合して品温約60℃の油相を得た。前記混合油のSFCは、20℃で30.0%、30℃で11.8%、35℃で4.5%であった。
25℃の水21.9部に対し、食塩1部及び脱脂粉乳0.1部を添加した。その後撹拌しながら10℃/分の速度で80℃まで加熱した。
次いで、油相に対し水相を撹拌しながら添加し、さらに80℃まで加熱して油中水型に略乳化した調合液を得た。本調合液を油中水型乳化油脂組成物製造装置(コンビネーター)へ供し、油中水型乳化油脂組成物として澱粉類無添加のタルト生地練り込み用油脂組成物を得た。
比較例2
実施例1において、水相の10℃/分の速度で80℃まで加熱を、60℃までの加熱に変更して、実施例1同様に油中水型乳化油脂組成物としてタルト生地練り込み用油脂組成物を調製した。加熱後の水相の酸化澱粉のアルファ化度は30%であった。
実施例2
約20℃の室温に戻した実施例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部に対し、粉糖15.2部及び食塩0.2部を添加し、泡だて器で白っぽくなってふんわりするまで良く混ぜた。その後、全卵8.6部を少しずつ添加、混合した。次いで、薄力粉45.6部及び強力粉5.1部を添加し、ゴムベラを用いてさっくりと混ぜ合わせた。全体がポロポロとなってから、手で押し固めてから上下をラップに包み、
ラップに挟んだ状態で麺棒で5mmの厚みに伸ばした。最後にタルト型に生地を敷いて、型からはみ出した生地は麺棒でおとして、カップ型のタルト生地を得た。タルト生地にフォークで穴を開け、170℃、25分焼成し、その後焼き色を見ながらさらに5〜10分焼成して、焼成したタルト生地を得た。
得られた焼成済タルト生地を1晩室温で冷却後、フィリング材としてスイートフロマージュ(水分約48%のクリームチーズ風味フィリング、不二製油株式会社製)を約20g充填し、充填直後と冷蔵保管6日後のタルト菓子の食感評価を、パネラー10名で行った。パネラー評価を平均した結果を表1に示す。
(タルト生地食感の評価基準) いずれも○以上を合格とした。
◎サクサクして非常に良好
○サクサクして良好
△サクサク感にやや乏しい又はやや硬すぎてザクザクする
×ソフトで歯ごたえがない又は硬すぎる
(フィリング材食感の評価基準)
◎非常にみずみずしい
○みずみずしい
△ややパサついている
×パサつきが激しい
比較例3
実施例2において、実施例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部に代えて、比較例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部を使用して、実施例2同様に焼成したタルト生地を得た。
得られた焼成済タルト生地を実施例2同様にフィリング材と組み合わせ、タルト菓子を調製し、実施例2同様に食感を評価した。評価結果を表1に示す。
比較例4
実施例2において、実施例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部に代えて、比較例2で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部を使用して、実施例2同様に焼成したタルト生地を得た。
得られた焼成済タルト生地を実施例2同様にフィリング材と組み合わせ、タルト菓子を調製し、実施例2様に食感を評価した。評価結果を表1に示す。
表1
Figure 2017176012
表1に示すように、水相にあらかじめアルファ化度80%以上とした酸化澱粉を配合した実施例1のタルト生地練り込み用油脂組成物を用いて調製したタルト生地を使用した実施例2では、タルト菓子において冷蔵6日後のタルト生地及びフィリング材の食感変化抑制効果が確認された。酸化澱粉無添加の比較例1のタルト生地練り込み用油脂組成物を用いた比較例3及び酸化澱粉のアルファ化度が80%未満の比較例2のタルト生地練り込み用油脂組成物を用いた比較例4では、タルト菓子において冷蔵6日後のタルト生地及びフィリング材の食感変化がかなり大きいものであった。
(エステル交換油Cの調製)
パーム油分別低融点部(沃素価67)34部、パーム核油分別低融点部(沃素価26)30部、菜種極度硬化油(沃素価1.2)27部及び菜種油9部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、その後、常法通り精製を行ってエステル交換油Cを得た。
実施例3
あらかじめ加熱融解した上記エステル交換油A 10部、エステル交換油C 59.5部、菜種油13.5部の混合油に対し、レシチン0.2部、蒸留モノグリセライド0.5部、ショ糖ポリステアレート(HLB1)0.2部を添加混合して品温約60℃の油相を得た。前記混合油のSFCは、20℃で33.3%、30℃で14.9%、35℃で7.6%であった。
25℃の水13部に対し、酸化澱粉(商品名:せいうん500、王子コーンスターチ株式会社製)3部、食塩1部及び脱脂粉乳0.1部を添加した。その後撹拌しながら10℃/分の速度で80℃まで加熱し、酸化澱粉をアルファ化度95%とした。
次いで、油相に対し水相を撹拌しながら添加し、さらに80℃まで加熱して油中水型に略乳化した調合液を得た。本調合液を油中水型乳化油脂組成物製造装置(コンビネーター)へ供し、油中水型乳化油脂組成物としてタルト生地練り込み用油脂組成物を得た。
比較例5
あらかじめ加熱融解したパーム油(ヨウ素価52)36部、パーム低融点部(ヨウ素価67)33.2部、パーム極度硬化油(ヨウ素価1)3部の混合油に対し、レシチン0.2部、蒸留モノグリセライド0.5部、ショ糖ポリステアレート(HLB1)0.2部を添加混合して品温約60℃の油相を得た。前記混合油のSFCは、20℃で19.2%、30℃で9.1%、35℃で5.8%であった。次いで、実施例3同様に酸化澱粉を添加し加熱処理した水相との調合液を調製し、実施例3同様にタルト生地練り込み用油脂組成物を得た。
比較例6
あらかじめ加熱融解したエステル交換油A 15部、パーム核油極度硬化油(ヨウ素価1)30部、エステル交換油B 10.7部の混合油に対し、レシチン0.2部、蒸留モノグリセライド0.5部、ショ糖ポリステアレート(HLB1)0.2部を添加混合して品温約60℃の油相を得た。前記混合油のSFCは、20℃で43.0%、30℃で16.3%、35℃で9.4%であった。次いで、実施例3同様に酸化澱粉を添加し加熱処理した水相との調合液を調製し、実施例3同様にタルト生地練り込み用油脂組成物を得た。
実施例4
実施例2において、実施例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部に代えて、実施例3で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部を使用して、実施例2同様に焼成したタルト生地を得た。
得られた焼成済タルト生地を実施例2同様にフィリング材と組み合わせ、タルト菓子を調製し、実施例2様に食感を評価した。評価結果を表2に示す。
比較例7
実施例2において、実施例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部に代えて、比較例5で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部を使用して、実施例2同様に焼成したタルト生地を得た。
得られた焼成済タルト生地を実施例2同様にフィリング材と組み合わせ、タルト菓子を調製し、実施例2様に食感を評価した。評価結果を表2に示す。
比較例8
実施例2において、実施例1で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部に代えて、比較例6で調製した生地練り込み用油脂組成物25.3部を使用して、実施例2同様に焼成したタルト生地を得た。
得られた焼成済タルト生地を実施例2同様にフィリング材と組み合わせ、タルト菓子を調製し、実施例2様に食感を評価した。評価結果を表2に示す。
表2
Figure 2017176012
表2に示すように、油相中の油脂SFCが、20℃で20〜40%、30℃で5〜15%、35℃で8%以下であり、あらかじめアルファ化度80%以上とした酸化澱粉を含有する実施例3のタルト生地練り込み用油脂を用いた実施例4では、タルト菓子において冷蔵6日後のタルト生地及びフィリング材の食感変化抑制効果が確認された。SFCが上記範囲より低めの比較例5のタルト生地練り込み用油脂を用いた比較例7では、タルト菓子において冷蔵6日後のタルト生地及びフィリング材の食感変化がかなり大きいものであった。また、SFCが上記範囲より高めの比較例6のタルト生地練り込み用油脂を用いた比較例8では、焼成直後のタルト生地食感がやや硬くゴリゴリしたものであり、冷蔵6日後のタルト生地及びフィリング材の食感変化もやや大きいものであった。
本発明により、タルト生地と高水分フィリング材を組み合わせた複合菓子であるタルト菓子において、水分移行によるタルト生地及び高水分フィリング材の経時的な食感変化を抑制することができるタルト生地練り込み用油脂組成物及び該油脂組成物を用いたタルト生地の製造法を提供することができる。

Claims (4)

  1. 固体脂含量(SFC値)が20℃で20〜40%、30℃で5〜15%、35℃で8%以下である油脂50〜90重量部、あらかじめ水相中で加熱処理してアルファ化度80%以上とした澱粉類を1〜10重量%含有することを特徴とするタルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法。
  2. 澱粉類が、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉及びアルファ化澱粉から選択される1種または2種以上の加工澱粉である請求項1記載のタルト生地練り込み用油脂組成物の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2記載のタルト生地練り込み用油脂組成物を15〜30重量%含有することを特徴とするタルト生地の製造方法。
  4. 請求項3記載の方法で製造されたタルト生地と高水分フィリング材を組み合わせることを特徴とするタルト菓子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2020067390A1 (ja) * 2018-09-28 2020-04-02 株式会社J-オイルミルズ パン類用生地の製造方法
JP2020162592A (ja) * 2019-03-29 2020-10-08 日清オイリオグループ株式会社 タルト用油脂組成物

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