<ガスセンサの構成>
図1は、本実施の形態において製造の対象となるガスセンサ(より詳細には、その本体部)1の外観斜視図である。図2は、係るガスセンサ1の内部の主要構成を示す部分断面図である。本実施の形態において、ガスセンサ1とは、その内部に備わるセンサ素子10(図2)によって所定のガス成分(例えば、NOx等)を検出するためのものである。
なお、センサ素子10は、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質セラミックスを主たる構成材料とする長尺の柱状あるいは薄板状の部材である。センサ素子10は、第1先端部10aの側にガス導入口や内部空所などを備えるとともに、素子体表面および内部に種々の電極や配線パターンを備えた構成を有する。センサ素子10においては、内部空所に導入された被検ガスが内部空所内で還元ないしは分解されて酸素イオンが発生する。ガスセンサ1においては、素子内部を流れる酸素イオンの量が被検ガス中における当該ガス成分の濃度に比例することに基づいて、係るガス成分の濃度が求められる。なお、図2において正面を向いている面をセンサ素子10の主面P1と称し、この主面P1と垂直でかつ長手方向に沿う面を側面P2と称する。主面P1と側面P2とは、ともにセンサ素子10の長手方向に延在するが、主面P1の方が側面P2よりも幅広である。
ガスセンサ1の外側は、主として、第1カバー2と、固定ボルト3と、第2カバー4とから構成される。
第1カバー2は、センサ素子10のうち、使用時に被検ガスに直接に接触する部分、具体的には、ガス導入口11や閉空間12(緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12c)などが備わる第1先端部10aを保護する、略円筒状の外装部材である。なお、ガス導入口11はセンサ素子10の図2における最下端部である第1先端部10aにおいて開口している。緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12cはそれぞれ、センサ素子10の内部に設けられている。ガス導入口11、緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12cは、センサ素子10の長手方向に沿ってこの順に配置されており、拡散律速部を介して連通している。
また、より詳細には、第1カバー2は、外側カバー2aと内側カバー(図示省略)との2層構造となっている。外側カバー2aと内側カバーは、それぞれ、一方側が有底の円筒状をしているとともに、側面部分に気体が通過可能な複数の貫通孔が設けられている。なお、図1には、外側カバー2aに設けられた貫通孔H1を例示しているが、これはあくまで例示であって、貫通孔の配置位置および配置個数は、第1カバー2の内部への被測定ガスの流入態様を考慮して適宜に定められてよい。
固定ボルト3は、ガスセンサ1を測定位置に固定する際に用いられる環状の部材である。固定ボルト3は、ねじ切りがされたボルト部3aと、ボルト部3aを螺合する際に保持される保持部3bとを備えている。ボルト部3aは、ガスセンサ1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット部にボルト部3aが螺合されることで、ガスセンサ1は、第1カバー2の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。
第2カバー4は、ガスセンサ1の他の部位を保護する円筒状部材である。第2カバー4の端部からは、ガスセンサ1と図示しない駆動制御部とを電気的に接続するための図示しない複数のリード線を内部に収容するワイヤーハーネスWHが延在している。
図2は、ガスセンサ1の内部構成、より具体的には、ガスセンサ1から、図1に示した第1カバー2と第2カバー4とを除いた構成を示している。
図2に示すように、ガスセンサ1の内部においては、センサ素子10のうち、ガス導入口11等が備わる第1先端部10aとワイヤーハーネスWHに収容された図示しないリード線との接続端子(電極端子)13などが備わる第2先端部10bとを除く部分に、ワッシャー7と、3つのセラミックサポータ8(8a、8b、8c)と、2つの圧粉体9(9a、9b)とが、それぞれ、センサ素子10が軸中心に位置する態様にて環装されている。セラミックサポータ8は、セラミックス製の碍子である。一方、圧粉体9は、タルクなどのセラミックス粉末を成型したものである。なお、以降の説明においては、ワッシャー7、セラミックサポータ8、および、圧粉体9を環装部品と総称することとし、これらの環装部品がセンサ素子10に環装された状態のものを部品環装体31(図5参照)と称することがある。
また、図2に示すように、ワッシャー7、セラミックサポータ8(8a、8b、8c)、および圧粉体9(9a、9b)の外周には、金属製の円筒状部材であるハウジング5と金属製の円筒状部材である内筒6とが一体となった円筒状の筒状体(内筒溶接品)30が環装されている。
筒状体30は、内筒6の一方端部がハウジング5に溶接されることで、ハウジング5と内筒6とが一体に構成されている部材である。また、ハウジング5と内筒6とは、略同じ内径を有するとともに、同軸に接続されている。なお、筒状体30の内径は、各環装部品の最大外径の設計値よりも大きく設定されている。
ハウジング5内部の一方端側にはテーパー部5cが設けられている。係るテーパー部5cによって、部品環装体31の一方端部側が筒状体30の内部に係止されている。また、内筒6のワッシャー7の直上の位置と圧粉体9aの側方の位置にはそれぞれ、内側に向けて窪んだ凹部6a、6bが形成されている。これらの凹部6a、6bによって、部品環装体31の他方端部側が筒状体30の内部に係止されている。
より詳細には、圧粉体9は環装後に圧縮されており、センサ素子10と密着している。また、凹部6a、6bは、圧粉体9を圧縮させたうえで設けられている。圧粉体9とセンサ素子10との密着状態が実現されることで、筒状体30の内部においては、センサ素子10が固定されるとともに、センサ素子10のガス導入口11等が備わる第1先端部10a側とリード線との接続端子(電極端子)13などが備わる第2先端部10bとの間が封止される。これにより、センサ素子10の第1先端部10aが接する、被検ガス(被測定ガス)が存在する被測定ガス空間と、第2先端部10bが接する例えば大気である基準ガスが存在する基準ガス空間との間の気密性が確保される。凹部6a、6bは、圧粉体9の圧縮状態を維持するために設けられている。
なお、本実施の形態においては、係る気密性確保のための封止(気密封止)が、仮封止(一次圧縮)と本封止(二次圧縮)との2段階でなされる。係る気密封止の詳細については後述する。
また、以降の説明においては、部品環装体31に筒状体30が環装され、かつ、図2に示すように凹部6a、6bが設けられた構成のものを組立体40と称する。一方、一連の組立工程のなかで最後に行われる凹部6bの形成が完了していない状態のものを、中間体40α(図5参照)と称する。
図2に示すような構成を有する組立体40が第1カバー2、固定ボルト3、および第2カバー4にて被覆されたものが、ガスセンサ1である。具体的には、ハウジング5の先端の筒状部5aには、第1カバー2が接続される。また、ハウジング5の外周には、突起部(フランジ部)5bと接触する態様にて固定ボルト3が環装される。さらに、係る環装によって形成される、固定ボルト3とハウジング5との間の環状の溝部(図示省略)に嵌め込む態様にて、第2カバー4が取り付けられる。
以上のような構成を有することで、ガスセンサ1では、所定位置に取り付けられた状態において、センサ素子10の第1先端部10aの周りの雰囲気(第1カバー2内の雰囲気)と外部の雰囲気とが完全に遮断されるようになっており、これにより、被検ガス中における対象ガス成分の濃度を精度良く測定できるようになっている。
<組立体の製造の概要>
次に、ガスセンサ1の製造工程のうち、本実施の形態において主たる対象とする組立体40の製造工程について説明する。図3は、組立体40の製造の手順を概略的に示す図である。
組立体40の製造は、図3に示す手順のうち、中間体組立工程(ステップS1)によって組み立てた中間体40αに対し、その内部を気密に封止するための封止工程を仮封止(一次圧縮)工程(ステップS2)と本封止(二次圧縮)工程(ステップS3)との2段階で行った後、一次加締め工程(ステップS4)によって内筒6に凹部6aを形成し、さらに二次加締め工程(ステップS5)によって内筒6に凹部6bを形成することでなされる。
<製造装置の概要>
図4は、図3に示した手順にて組立体40の製造を行う製造装置100の概略的な構成を示すブロック図である。
製造装置100は、CPU101a、ROM101b、RAM101c等から構成され製造装置100全体の動作を制御する制御部101と、製造装置100に対して種々の実行指示などを与えるためのスイッチやボタン、タッチパネルなどからなる入力インタフェースである操作部102と、製造装置100の種々の動作メニューや動作状態などを表示するディスプレイや計器類などの表示部103と、製造装置100の動作プログラム104pや図示しない動作条件データなどが格納される記憶部104とを備える。製造装置100においては、動作プログラム104pが制御部101にて実行されることにより、後述する一連の動作が自動処理にて行われる。
製造装置100はさらに、実際の組立体の製造を担う構成要素として、搬送処理部110と、中間体組立処理部120と、仮封止処理部130と、本封止/加締め処理部140と、増し締め処理部150とを備える。
搬送処理部110は、中間体40αおよび組立体40を製造装置100内において搬送する処理を担う部位である。搬送処理部110は、中間体40αおよび組立体40が載置される搬送パレット111と、搬送パレット111を所定の手順で各部に移動させるパレット移動機構112と、中間体40αおよび組立体40が載置されている搬送パレット111を各処理部との間で受け渡すパレット受渡機構113とを備える。
中間体組立処理部120は、中間体40αの組み立てを担う部位である。中間体組立処理部120は、センサ素子10に環装部品を環装して部品環装体31を得る第1環装機構121と、部品環装体31に筒状体30を環装して中間体40αを得る第2環装機構122とを備える。
また、中間体組立処理部120は、組立対象となるセンサ素子10、環装部品(ワッシャー7、セラミックサポータ8、圧粉体9)がそれぞれに載置される素子待機部123、環装部品待機部124、および筒状体待機部125をさらに備える。
仮封止処理部130は、センサ素子10の位置決め(固定)を主たる目的として圧粉体9を圧縮させる処理である仮封止(一次圧縮)を担う部位である。仮封止処理部130は、搬送パレット111が載置されるパレット載置台131と、仮封止の際にセンサ素子10を位置決めするための素子位置決めピン132と、仮封止の実行に先立ってセンサ素子10の水平面内における位置を調整するための第1調整治具133Aおよび第2調整治具133Bと、仮封止の際にワッシャー7を押圧する仮封止治具(一次圧縮治具)134とを備える。
また、仮封止処理部130は、素子位置決めピン132の鉛直方向における昇降動作を担う位置決めピン昇降機構132mと、第1調整治具133Aおよび第2調整治具133Bによるセンサ素子10の水平面内位置の調整動作を担う面内位置調整機構133mと、仮封止治具134の鉛直方向における昇降動作を担う仮封止治具昇降機構134mとを、さらに備える。
本封止/加締め処理部140は、ガスセンサ1における被測定ガス空間と基準ガス空間との間の気密の確保(気密封止)を実現する本封止(二次圧縮)と、内筒6を加締めることによる凹部6aの形成(一次加締め)とを担う部位である。本封止/加締め処理部140は、搬送パレット111が載置されるパレット載置台141と、本封止の際にワッシャー7を押圧する本封止治具142と、凹部6aを形成するべく内筒6を加締める第1加締め治具143とを備える。
また、本封止/加締め処理部140は、パレット載置台141の鉛直方向における昇降動作を担う載置台昇降機構141mと、第1加締め治具143の水平面内における移動動作を担う加締め治具移動機構143mとを、さらに備える。
増し締め処理部150は、内筒6を加締めることによる凹部6bの形成(二次加締め)を担う部位である。本実施の形態においては、内筒6に対し一次加締め工程による凹部6aの形成に続いて二次加締め工程により凹部6bを形成することを、増し締めと称する。増し締め処理部150は、搬送パレット111が載置されるパレット載置台151と、増し締めの際にワッシャー7に当接される増し締め補助治具152と、凹部6bを形成するべく内筒6を加締める第2加締め治具153とを備える。
また、増し締め処理部150は、パレット載置台151の鉛直方向における昇降動作を担う載置台昇降機構151mと、第2加締め治具153の水平面内における移動動作を担う加締め治具移動機構153mとを、さらに備える。
<中間体の組み立て>
以下、図3に示した手順にて行う組立体40の製造の詳細を、順次に説明する。
図5は、中間体組立処理部120において行われる中間体組立工程(図3のステップS1)の様子を概略的に示す図である。
中間体組立工程においては、まず、第1環装機構121が、素子待機部123からセンサ素子10を取得して、図示しない保持手段にて保持する。そして環装部品待機部124からワッシャー7、セラミックサポータ8a、圧粉体9a、セラミックサポータ8b、圧粉体9b、セラミックサポータ8cをこの順に取得しつつ、図5(a)に矢印AR1にて示すように該センサ素子10の第1先端部10aの側から環装する。これにより、図5(b)に示す部品環装体31が得られる。なお、センサ素子10および各環装部品は、あらかじめ所定の場所で製造され、中間体組立工程の実行に先立ってそれぞれ素子待機部123および環装部品待機部124に用意される。
より詳細には、各環装部品は円板状または円柱状をなしているが、係る環装を実現するため、ワッシャー7の軸中心位置には、円形状の貫通孔7hが設けられており、セラミックサポータ8a、圧粉体9a、セラミックサポータ8b、圧粉体9b、セラミックサポータ8cにはそれぞれ、センサ素子10の断面形状に応じた矩形状の貫通孔8ah、9ah、8bh、9bh、8chが設けられている。これらの貫通孔が、センサ素子10と嵌め合わされることで、各部材がセンサ素子10に環装される。係る場合において、ワッシャー7と、セラミックサポータ8と、圧粉体9とは、同軸に配置される。
なお、気密性の確保の観点から、セラミックサポータ8の貫通孔と圧粉体9の貫通孔とは、センサ素子10の設計上の断面サイズとの差が0.25mm〜0.35mmであるように、そして、寸法公差が0.1mmであるように構成される。一方、ワッシャー7の貫通孔7hは、センサ素子10の設計上の断面サイズとの差が最低でも1mm以上1.3mm以下であるように設けられる。また、ワッシャー7と、セラミックサポータ8と、圧粉体9とは、外径の値の差が最大でも0.35mm程度に収まるように構成されている。
次に、第2環装機構122が、筒状体待機部125から筒状体30を取得し、内筒6の側から部品環装体31に環装させる。具体的には、図5(b)において矢印AR2にて示すように、筒状体30は、センサ素子10の第1先端部10aが備わる側から部品環装体31に環装される。これにより、図5(c)に示すように、中間体40αが得られる。なお、係る時点では中間体40αは未封止の状態であるので、センサ素子10は完全には固定されてはいない。それゆえ、センサ素子10は、例えば外力が作用するなどの原因で長手方向に変位可能な状態となっている。換言すれば、未封止の中間体40αにおいては、センサ素子10は位置決めされてはいない。センサ素子10の位置決めは、次に行う仮封止工程において行われる。
<搬送処理部による搬送と受け渡し>
中間体組立処理部120において組み立てられた中間体40αは、以降、搬送処理部110によって搬送され、後段の処理を行う各部との間で逐次受け渡される。
図6は、搬送処理部110における中間体40αおよび組立体40の搬送と、各部との間における中間体40αおよび組立体40の受渡の様子を概略的に示す平面図である。
搬送処理部110は、概略、中間体40αおよび組立体40を、搬送パレット111に載置した状態で搬送するとともに、各部との間における中間体40αあるいは組立体40の受け渡しも、中間体40αあるいは組立体40を載置した搬送パレット111ごと行うように構成されている。
搬送パレット111の上部には嵌合部111aが備わっており、係る嵌合部111aに中間体40αあるいは組立体40が嵌め合わされることで、中間体40αあるいは組立体40が搬送パレット111に載置固定されるようになっている。より詳細には、ワッシャー7の側を上方とする姿勢の中間体40αあるいは組立体40が、筒状体30の下部を嵌合部111aに嵌合されることで、中間体40αあるいは組立体40は搬送パレット111に載置固定される(図8等参照)。なお、本実施の形態において、筒状体30の下部とは、図2におけるハウジング5の突起部5b以下の部分を指し示すものとする。換言すれば、中間体40αおよび組立体40は、センサ素子10の長手方向が鉛直方向に延在し、かつ、その第2先端部10bの側が上方となる姿勢にて、搬送パレット111により搬送される。このときの中間体40αおよび組立体40の姿勢を、組立姿勢とも称する。
好ましくは、係る載置固定の際、中間体40αおよび組立体40は水平面内において回転ずれを起こさないように位置決めされる。これは例えば、ハウジング5の外周形状に異方性を持たせ、嵌合部111aもこれに応じた形状とすることで実現されてもよいし、搬送パレット111に備わる図示しない保持手段が中間体40αおよび組立体40の水平姿勢を保持する態様であってもよい。
搬送処理部110においては、中間体組立処理部120から組み立てられた中間体40αを受け取る第1受渡位置Pos1と、仮封止処理部130、本封止/加締め処理部140、および増し締め処理部150との間で中間体40αあるいは組立体40を受け渡す第2受渡位置Pos2〜第4受渡位置Pos4があらかじめ定められている。
また、仮封止処理部130、本封止/加締め処理部140、および増し締め処理部150にはそれぞれ、搬送パレット111が載置固定されるパレット載置台131、141、および151が備わっている。パレット載置台131、141、および151はそれぞれ、パレット嵌合部131a、141a、および151aを備えており、各処理部においては、これらパレット嵌合部131a、141a、および151aに搬送パレット111が嵌合されることで、パレット載置台131、141、および151に搬送パレット111が載置固定された状態が実現される。
パレット移動機構112(図6において図示せず)はまず、中間体組立処理部120において中間体40αが組み立てられるタイミングで搬送パレット111を第1受渡位置Pos1に配置する。そして、組み立てられた中間体40αは、図6において図示しないパレット受渡機構113によって、矢印AR3にて示すように第1受渡位置Pos1に配置されている搬送パレット111へと受け渡される。
以降、図6において矢印AR4〜AR6にて示すパレット移動機構112による第2受渡位置Pos2〜第4受渡位置Pos4への搬送パレット111の搬送と、矢印AR7〜AR9にて示すパレット受渡機構113による各受渡位置とパレット載置台との間における搬送パレット111の受渡とが、交互に行われる。
増し締め処理部150における処理の終了後、搬送パレット111が増し締め処理部150から第4受渡位置Pos4へと戻されると、該搬送パレット111が保持している組立体40は組立品待機部170に受け渡される。あるいは、引き続き別の処理部に搬送される態様であってもよい。空になった搬送パレット111は第1受渡位置Pos1に戻され、以降の処理に再び用いられる。
あるいは、ある処理部に対応する受渡位置に手前の受渡位置から中間体40αあるいは組立体40を搬送してきた搬送パレット111と、当該処理部における処理の終了後、次の受渡位置に中間体40αあるいは組立体40を搬送する搬送パレット111とが、異なる態様であってもよい。
<仮封止>
中間体組立処理部120において組み立てられた中間体40αは、仮封止処理部130において行われる仮封止(一次圧縮)工程(図3のステップS2)工程に供される。仮封止工程は、センサ素子10を素子位置決めピン132と当接する位置にて仮に固定することを主たる目的として行う工程である。ここで、「仮に」と言っているのは、この後に行う本封止(二次圧縮)の際にセンサ素子10にわずかながら変位が生じるからである。
図7は、仮封止工程のより具体的な手順を示す図である。図8ないし図11は、仮封止工程の途中の様子を段階的に示す図である。
図8(a)は、中間体40αを保持(載置固定)している搬送パレット111がパレット載置台131に載置された状態を示している。
仮封止処理部130において仮封止工程を行うにあたっては、まず、第1受渡位置Pos1において中間体組立処理部120から受け渡された、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111が、パレット移動機構112によって第2受渡位置Pos2に配置されたうえで、パレット受渡機構113によって図8(a)に示すように中間体40αともども仮封止処理部130のパレット載置台131に載置固定される(ステップS21)。
なお、図8においては、センサ素子10の厚み方向が図面視左右方向となるように、換言すれば、主面P1が図面視左右方向に直交し、側面P2の一方が図面視手前側を向くように、中間体40αが組立姿勢にて載置固定される様子を示している。以降においては、中間体40αが載置固定されている搬送パレット111がパレット載置台131に載置固定された状態を単に、中間体40αがパレット載置台131に固定された状態とも称する。また、図8および以降の図においては適宜、鉛直上方をz軸正方向とする座標を付している。
図8に示すように、搬送パレット111の嵌合部111aの下方には、中間体40αの下方において突出しているセンサ素子10が搬送パレット111と干渉しないように孔部111bが設けられている。加えて、パレット載置台131も、そのパレット嵌合部131aの下方に、孔部131bを有している。係る孔部131bは、搬送パレット111がパレット嵌合部131aに載置された状態において搬送パレット111の孔部111bと同軸となるように、設けられている。
上述したように、センサ素子10は位置決めされてはいないので、矢印AR10にて示すように孔部111bさらには131b内で上下に変位可能な状態となっている。ただし、図示は省略するが、孔部131bは、センサ素子10が搬送パレット111から突出することのないように構成されている。
孔部111bおよび131bは、素子位置決めピン132の昇降空間としても利用される。図8(a)においては図示を省略するが、素子位置決めピン132は、位置決めピン昇降機構132mにて、鉛直方向に昇降自在に、かつ、孔部111bおよび131bに侵入可能に設けられている。
中間体40αがパレット載置台131に固定されると、位置決めピン昇降機構132mが、図8(b)において矢印AR11にて示すように孔部131bおよび孔部111bにおいて素子位置決めピン132が鉛直上方に上昇させて、所定の位置に配置する(ステップS22)。
より詳細には、最終的に組立体40が気密封止された後の状態における、セラミックサポータ8cの最下端部からセンサ素子10の最下端部(第1先端部10a側の端部)までの距離(突き出し長と称する)の目標値をt0とするとき、素子位置決めピン132は、突き出し長がt0よりも短いt1となるように配置される。これにより、センサ素子10は、矢印AR12にて示すように押し上げられ、第2先端部10b側が筒状体30からより突出する。このとき、センサ素子10は第1の位置に配置されているとする。
このように、素子位置決めピン132がセンサ素子10の最下端部を押し上げ、突き出し長がt1となる第1の位置に配置させるのは、後段の工程においてセンサ素子10が第1の位置から下降して、突き出し長がt0に近づくことを見越したものである。なお、突き出し長t0とt1の差は、あらかじめ実験的に定められる。
センサ素子10の第1先端部10a側に素子位置決めピン132が配置されると、図9に示すように、センサ素子10の第2先端部10b側において、第1調整治具133Aおよび第2調整治具133Bにより、センサ素子10の水平面内における位置が調整される(ステップS23)。これは、第1調整治具133Aによるセンサ素子10の厚み方向の調整と第2調整治具133Bによる幅方向の調整との二段階でなされる。
まず、図9において図示しない面内位置調整機構133mが作動することにより、図9(a)に示すように、1対の第1調整治具133Aを用いたセンサ素子10の厚み方向における位置調整がなされる。具体的には、矢印AR13が指し示す枠囲いの中にて示される上面図からわかるように、1対の第1調整治具133Aはそれぞれが矢印AR14にて示すようにx軸方向に進退自在に設けられてなり、主面P1に当接しつつセンサ素子10を両者の間に挟み込むことで、厚み方向についてのセンサ素子10の位置決め(芯出し)を行う。
続いて、同様に、図9において図示しない面内位置調整機構133mが作動することにより、図9(b)に示すように、1対の第2調整治具133Bがセンサ素子10の幅方向の位置調整を行う。具体的には、矢印AR15が指し示す枠囲いの中にて示される上面図からわかるように、1対の第2調整治具133Bはそれぞれが矢印AR16にて示すようにy軸方向に進退自在に設けられてなり、側面P2に当接しつつセンサ素子10を両者の間に挟み込むことで、幅方向についてのセンサ素子10の位置決め(芯出し)を行う。
センサ素子10の水平面内における位置が定められると、続いて、図10に示すように、仮封止治具134による仮封止(一次圧縮)がなされる(ステップS24)。
仮封止治具134は、中間体40αがパレット載置台131に固定された状態において、中間体40αの(より具体的にはセンサ素子10の)鉛直上方となる位置に、図10において図示しない仮封止治具昇降機構134mによって鉛直方向に昇降自在に設けられている。仮封止治具134は、その鉛直方向最下端部が、中間体40αを構成するワッシャー7に上方から当接する略円環状の当接部134aとなっているとともに、鉛直下方に向けて開口している空隙部134bを備える。なお、仮封止治具134は、パレット載置台131に固定された中間体40αと同軸となるように、配置されている。
空隙部134bは、仮封止の際にセンサ素子10が収容される部位である。係る空隙部134bが設けられていることで、仮封止を行うべく仮封止治具134が下降させられた際に仮封止治具134とセンサ素子10との干渉が生じないようになっている。
仮封止は、図10において図示しない仮封止治具昇降機構134mにより、仮封止治具134が図10(a)において矢印AR17にて示すように中間体40αの上方から鉛直下方に向けて下降されることによって、実現される。
仮封止治具134が仮封止治具昇降機構134mによって下降されるとやがて、その当接部134aがワッシャー7に当接する。このとき、センサ素子10は空隙部134bに収容されている。
仮封止治具昇降機構134mは、係る当接の後も図10(b)において矢印AR18にて示すように係る下降を継続させる。すると、仮封止治具134の当接部134aはワッシャー7を押圧し、ワッシャー7に対して鉛直下向きの力(荷重)F1(第1の力)を印加させる。ここで、力F1は、センサ素子10の固定が実現される一方でセンサ素子10に欠け(あるいは割れ)が生じることのない範囲の大きさにて印加される。具体的には、力F1は、ワッシャー7に作用する圧力が15kgf/cm2以上120kgf/cm2以下となるように印加される。実際の力F1の値は、ワッシャー7に当接する当接部134aの面積を鑑みて設定されればよい。
当接部134aからワッシャー7に対して力F1が作用すると、ワッシャー7が鉛直下方にわずかに押し下げられるとともに、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも係る力F1が圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bは圧縮される。そして、係る圧縮に伴い、圧粉体9a、9bとセンサ素子10との間に存在していた隙間はなくなり、圧粉体9a、9bはセンサ素子10に密着する。すると、それまでは鉛直方向に変位可能であったセンサ素子10が圧粉体9a、9bによって固定される。素子位置決めピン132にて位置決めされているセンサ素子10は第1の位置に保たれることから、結果として、センサ素子10が、その最下端部における突き出し長がt1となる第1の位置にて固定されたことになる。
仮封止が終了すると、図11において矢印AR19およびAR20にて示すように、仮封止治具134および素子位置決めピン132が順次に退避させられる(ステップS25)。そして、パレット受渡機構113によって、仮封止後の中間体40αを保持する搬送パレット111がパレット載置台131からパレット移動機構112に受け渡される(ステップS26)。すなわち、搬送パレット111は再び第2受渡位置Pos2に配置される。これにより仮封止工程が終了する。
<本封止および一次加締め>
仮封止処理部130において仮封止がなされた中間体40αは、本封止/加締め処理部140において行われる本封止(二次圧縮)工程(図3のステップS3)およびこれに続く一次加締め工程(図3のステップS4)に供される。本封止工程は、被測定ガス空間と基準ガス空間との間の気密の確保を主たる目的として行う工程である。一次加締め工程は、本封止された中間体40αにおいて、筒状体30内の環装部品を完全に拘束するために行う工程である。
図12は、本封止(二次圧縮)工程および一次加締め工程のより具体的な手順を示す図である。本封止/加締め処理部140においては、本封止工程と、一次加締め工程とが連続して行われる。図13は、本封止/加締め処理部140の構成を概略的に示す側面図(一部断面図)である。また、図14および図15は、本封止工程の途中の様子を段階的に示す図である。図16は、一次加締めの際の加締め治具移動機構143mの動作について説明するための図である。さらに、図17、図18、および図19は、一次加締め工程の途中の様子を段階的に示す図である。
本封止/加締め処理部140は、パレット載置台141と、本封止治具142と、第1加締め治具143とを主に備える。
図13は、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111がパレット載置台141に載置された状態を示している。なお、図13においても、図8と同様、センサ素子10の厚み方向が図面視左右方向となるように、中間体40αが組立姿勢にて載置固定される様子を示している。また、以降においては、中間体40αが載置固定されている搬送パレット111がパレット載置台141に載置固定された状態を単に、中間体40αがパレット載置台141に固定された状態とも称する。
パレット載置台141は、仮封止処理部130に備わるパレット載置台131と同様の構成を有するが、載置台昇降機構141mによって鉛直方向に昇降自在とされている点で、パレット載置台131とは相異する。載置台昇降機構141mは、サーボシリンダによって構成されている。
また、本封止/加締め処理部140は、パレット載置台141の上方位置に、鉛直方向に延在する支軸140sを有しており、本封止治具142は、係る支軸140sに付設されている。より具体的には、支軸140sは下端部が下方に開口する空隙部140aとなっており、本封止治具142は、該空隙部140aに突出する態様にて支軸140sに固設されている。
係る本封止治具142は、その鉛直方向最下端部が、中間体40αを構成するワッシャー7に上方から当接する略円環状の当接部142aとなっているとともに、鉛直下方に向けて開口している空隙部142bを備える。本封止治具142は、パレット載置台141に固定された中間体40αと同軸となるように、配置されている。
また、支軸140sにはさらに、空隙部140aから側方に延在する態様にて貫通孔140bが設けられており、係る貫通孔140bには、第1加締め治具143が、貫通孔140bの延在方向に沿って進退自在に備わっている。
なお、図13においては図面視左右方向に2つの貫通孔140bが示され、それぞれに第1加締め治具143が備わる態様が示されているが、実際には、後述するように、貫通孔140bは空隙部140aの四方のそれぞれに、つまりは全4箇所に設けられている。そして、第1加締め治具143も、これら4箇所の貫通孔140bのそれぞれに設けられている(図16参照)。
第1加締め治具143は、空隙部140a側を向いた一方端部に爪部143aを有するとともに、他方端部側には加締め治具移動機構143mによってガイドされる被ガイド部143bを有する。
加締め治具移動機構143mは、鉛直方向に伸縮自在に設けられたサーボシリンダ144と、その下端部に設けられた案内部材145とを有する。サーボシリンダ144および案内部材145は、それぞれの第1加締め治具143に対応させて全4箇所に設けられている。案内部材145は、第1加締め治具143の被ガイド部143bをガイドするガイド面146を有している。ガイド面146は、鉛直方向に対して所定角度だけ傾斜しているとともに対応する第1加締め治具143が備わる貫通孔140bの延在方向を含む鉛直面に対しては直交している。そして、第1加締め治具143の被ガイド部143bは、係るガイド面146に接触しつつその傾斜方向に沿って進退可能に設けられている。
本封止/加締め処理部140において本封止工程とこれに続く一次加締め工程とを行うにあたっては、まず、第2受渡位置Pos2において仮封止処理部130から受け渡された、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111が、パレット移動機構112によって第3受渡位置Pos3に配置されたうえで、パレット受渡機構113によって図13に示すように中間体40αともども本封止/加締め処理部140のパレット載置台141に載置固定される(ステップS31)。
係る載置固定がなされると、載置台昇降機構141mが作動し、中間体40αが固定されたパレット載置台141が、図13において矢印AR21にて示すように上昇される。パレット載置台141が上昇を続けるとやがて、図14に示すように、中間体40αのワッシャー7が本封止治具142の当接部142aに当接する(ステップS32)。このとき、センサ素子10は空隙部142bに収容されている。
仮封止治具昇降機構134mは、係る当接の後も図14において矢印AR22にて示すように係る上昇を継続させる。すると、本封止治具142の当接部142aはワッシャー7を押圧し、図15に示すように、ワッシャー7に対して鉛直下向きの力(荷重)F2(第2の力)を印加させる。その際には、F2が仮封止の際に印加した力F1に比して大きくなるようにする。具体的には、力F2は、ワッシャー7に作用する圧力が610kgf/cm2以上となるように印加される。実際の力F2の値は、ワッシャー7に当接する当接部142aの面積を鑑みて設定されればよい。
当接部142aからワッシャー7に対して力F2が作用すると、ワッシャー7が鉛直下方にさらに押し下げられるとともに、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも係る力F2が圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bはさらに圧縮される。その結果、被測定ガス空間と基準ガス空間との間が気密封止される。これにより、本封止(二次圧縮)が実現される(ステップS33)。
なお、力F2を印加する際にワッシャー7に作用する圧力の上限値は、本封止治具142やワッシャー7あるいはセラミックサポータ8の材料強度等を鑑みて適宜に定められればよい。
係る本封止は、素子位置決めピン132をセンサ素子10に当接させることなく行われるので、仮封止の段階でいったんは圧粉体9a、9bによって第1の位置に固定されていたセンサ素子10は、本封止の際にわずかではあるがさらに下降する。本封止後のセンサ素子10の突き出し長をt2とすると、t2はt1よりもt0に近い値となる。この本封止後のセンサ素子10の配置位置を第2の位置とする。t2=t0となるのが理想的ではあるが、Δt=t2−t0の値がガスセンサ1において所望される特性に照らして許容される所定の誤差範囲内であれば、つまりは、第2の位置が組立体40(この段階では中間体40α)におけるセンサ素子10の配置位置としてあらかじめ定められてなる範囲内の位置となっていれば、センサ素子10は良好に固定されたものと判断することができる。それゆえ、本実施の形態においては、第2の位置がそのような範囲をみたすよう、素子位置決めピン132の配置位置が定められる。Δtの許容誤差範囲は、あらかじめ適宜に定められればよい。
なお、本実施の形態において、以上のようにいったん仮封止によってセンサ素子10を固定した後に本封止によって気密封止を実現するという二段階封止を行うのは、封止の際に強い力が加わることに起因してセンサ素子10に欠けや割れが生じることを防ぐためである。係る二段階封止が奏する作用効果の詳細については後述する。
なお、仮封止後の突き出し長t1と本封止後の突き出し長t2との間には強い相関(例えば線型関係)がある場合がある。そのような相関関係があらかじめ特定されている場合、仮封止の際のセンサ素子10の最下端部の位置(つまりは素子位置決めピン132の上端位置)と、仮封止および本封止の際に仮封止治具134および本封止治具142が作用させる力F1、F2の値とを好適に定めれば、係る相関関係に基づいて、本封止後のセンサ素子10の突き出し長t2を、Δtの許容誤差範囲内の値とすることができる。すなわち、センサ素子10を、ガスセンサ1の特性に照らして所望される位置にて固定することができる。
上述した態様にて本封止がなされると、続いて、本封止治具142をワッシャー7に当接させた状態を維持しつつ、一次加締め工程を行う。一次加締めは概略、図15において矢印AR23にて示すように、加締め治具移動機構143mにおいてサーボシリンダ144を矢印AR24にて示すように鉛直下方に伸張させることによって、実現される。
図16は、第1加締め治具143とその移動機構である加締め治具移動機構143mの構成および動作の詳細を説明するための図である。図16(a)下方の概略上面図に示すように、本封止/加締め処理部140においては、4つの第1加締め治具143が、水平面内において互いに対称な4方向に向けて、それぞれ設けられている。それぞれの第1加締め治具143は、水平方向に延在する貫通孔140bに沿って進退自在とされている。そして、中間体40αのワッシャー7が本封止治具142に当接された状態においては、これら4つの第1加締め治具143が、中間体40αの内筒6を中心として、対称に位置することになる。
加締め治具移動機構143mにおいては、それぞれの第1加締め治具143に対応して備わるサーボシリンダ144が矢印AR24にて示すように鉛直下方に伸張されると、これに付随する案内部材145が鉛直下方に下降する。すると、案内部材145は、そのガイド面146に接触している第1加締め治具143の被ガイド部143bに対し鉛直下向きの力を加えて、これを押し下げようとする。しかしながら、上述のように、被ガイド部143bは傾斜面であるガイド面146の傾斜方向に沿って進退可能に設けられてはいるものの、第1加締め治具143全体としては、水平方向に延在する貫通孔140bに沿って進退自在とされている。つまりは、第1加締め治具143の移動方向は水平面内に限定されている。それゆえ、結果的には、サーボシリンダ144の伸張によって案内部材145が下降された場合、図16(a)において矢印AR25にて示すように被ガイド部143bがガイド面146に沿って相対的に上昇させられながら、第1加締め治具143は、矢印AR26にて示すように貫通孔140b内を内筒6の側に向けて移動し、サーボシリンダ144が所定の距離ΔZ伸張すると、図16(b)に示すように、その爪部143aが内筒6の外周面に当接することになる。
なお、図16に示すように、それぞれの第1加締め治具143が有する爪部143aの先端は、内筒6の形状に応じた湾曲面となっているので、爪部143aが内筒6に当接する場合には、その湾曲面全体が内筒6に当接される。
また、図16(b)に示すように、それぞれの爪部143aが内筒6の外周面に当接する際の当接位置(高さ位置)は、ワッシャー7の直上の位置である。本実施の形態に係る製造装置100においては、係る位置関係がみたされるように、本封止工程においてワッシャー7に対して加えられる第2の力F2や、第1加締め治具143の爪部143aの形状を含めた加締め治具移動機構143mの構成や動作態様などが、定められている。
そして、図17に示すように、第1加締め治具143の爪部143aが内筒6の外周面に当接した後も、矢印AR27にて示すように、サーボシリンダ144を鉛直下方に伸張させると、爪部143aによって内筒6が押圧される。これにより内筒6が外周側から加締められ、図18に示すように、内筒6の外周面であってワッシャー7の直上位置には凹部6aが形成される(ステップS41)。これによって筒状体30内の環装部品は完全に拘束される。なお、図16に示したように、第1加締め治具143は四方にのみ存在するので、凹部6aは必ずしも内筒6の周方向全体にわたって一様にかつ連続的に形成されるわけではない。
凹部6aが形成されると、図18において矢印AR28にて示すようにサーボシリンダ144が鉛直上方へと短縮される。これに伴い、内筒6を押圧していた第1加締め治具143も矢印AR29にて示すように退避させられる(ステップS42)。
第1加締め治具143が退避されると、載置台昇降機構141mが再び作動して、矢印AR30にて示すように、パレット載置台141を初期位置まで下降させる(ステップS43)。図19は、パレット載置台141を初期位置まで下降させた後の様子を示している。
そして、パレット受渡機構113によって、一次加締め後の中間体40αを保持する搬送パレット111がパレット載置台141からパレット移動機構112に受け渡される(ステップS44)。すなわち、搬送パレット111は再び第3受渡位置Pos3に配置される。これにより本封止工程及びこれに続く一次加締め工程が終了する。
<二次加締め(増し締め)>
本封止/加締め処理部140において本封止と一次加締めがなされた中間体40αは、増し締め処理部150において行われる二次加締め(増し締め)工程(図3のステップS5)に供される。二次加締め工程は、筒状体30内における環装部品の拘束をより確実化させるために行う工程である。
図20は、二次加締め工程のより具体的な手順を示す図である。図21は、増し締め処理部150の構成を概略的に示す側面図(一部断面図)である。また、図22、図23、図24および図25は、二次加締め工程の途中の様子を段階的に示す図である。
増し締め処理部150は、パレット載置台151と、増し締め補助治具152と、第2加締め治具153とを主に備える。
図21は、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111がパレット載置台151に載置された状態を示している。なお、図21においても、図8と同様、センサ素子10の厚み方向が図面視左右方向となるように、中間体40αが組立姿勢にて載置固定される様子を示している。また、以降においては、中間体40αが載置固定されている搬送パレット111がパレット載置台151に載置固定された状態を単に、中間体40αがパレット載置台151に固定された状態とも称する。
増し締め処理部150は、上述した本封止/加締め処理部140と類似する構成を有する。すなわち、パレット載置台151および載置台昇降機構151mは、本封止/加締め処理部140のパレット載置台141および載置台昇降機構141mと同様の構成を有する。また、増し締め処理部150は、パレット載置台151の上方位置に、鉛直方向に延在する支軸150sを有しており、該支軸150sの下端部は下方に開口する空隙部150aとなっている。そして、増し締め補助治具152は、該空隙部150aに突出する態様にて支軸150sに固設されている。これらの構成は、本封止/加締め処理部140における支軸140s、空隙部140a、本封止治具142の構成態様と同様である。
ただし、増し締め補助治具152の当接部152aの高さ位置は、ワッシャー7が該当接部152aに当接した状態において、中間体40αを構成する圧粉体9aの高さ位置が、第2加締め治具153の爪部153aの高さ位置と一致するように、定められている。これにより、増し締め補助治具152の支軸150sからの突出長さは、本封止治具142の支軸140sからの突出長さよりもよりも小さくなっている。
また、第2加締め治具153(爪部153a、被ガイド部153b)、該第2加締め治具153が配置される貫通孔150b、および、第2加締め治具153を水平面内において移動させるための加締め治具移動機構153mの構成(サーボシリンダ154、案内部材155、ガイド面156)も、第1加締め治具143(爪部143a、被ガイド部143b)、該第1加締め治具143が配置される貫通孔140b、および、第1加締め治具143を水平面内において移動させるための加締め治具移動機構143mの構成(サーボシリンダ144、案内部材145、ガイド面146)と、ほぼ同様である。それゆえ、増し締め処理部150における構成の詳細な説明は省略する。
ただし、第2加締め治具153の爪部153aの形状と、第1加締め治具143の爪部143aの形状とは多少異なっていてもよく、図21ないし図25において例示している、第2加締め治具153の爪部153aの形状は、図13ないし図19において例示している第1加締め治具143の爪部143aとは異なっている。
以上のような構成を有する増し締め処理部150において、二次加締め(増し締め)工程を行うにあたっては、まず、第3受渡位置Pos3において本封止/加締め処理部140から受け渡された、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111が、パレット移動機構112によって第4受渡位置Pos4に配置されたうえで、パレット受渡機構113によって図21に示すように、中間体40αともども増し締め処理部150のパレット載置台151に載置固定される(ステップS51)。
係る載置固定がなされると、載置台昇降機構151mが作動し、中間体40αが固定されたパレット載置台141が、図21において矢印AR31にて示すように上昇される。パレット載置台141が上昇を続けるとやがて、図22に示すように、中間体40αのワッシャー7が増し締め補助治具152の当接部152aに当接する(ステップS52)。このとき、センサ素子10は空隙部152bに収容されている。
係る態様にてワッシャー7が当接部152aに当接すると、図22において矢印AR32にて示すように、加締め治具移動機構153mにおいてサーボシリンダ154を鉛直下方に伸張させる。すると、矢印AR33にて示すように、第2加締め治具153は貫通孔150b内を内筒6の側に向けて移動し、やがては図23に示すように、その爪部153aが、圧粉体9aの側方位置において内筒6の外周面に当接することになる。
そして、爪部153aが内筒6の外周面に当接した後も矢印AR34にて示すようにサーボシリンダ144を鉛直下方に伸張させると、爪部153aによって内筒6が押圧される。これにより内筒6が外周側から加締められ、図24に示すように、内筒6の外周面には圧粉体9aの側方位置に凹部6bが形成される(ステップS53)。係る凹部6bが形成されることで、筒状体30内における環装部品の拘束がより確実化されることになる。そして、係る凹部6bの形成により、組立体40が組み立てられたことになる。
凹部6bが形成されると、図18において矢印AR35にて示すようにサーボシリンダ154が鉛直上方へと短縮される。これに伴い、内筒6を押圧していた第2加締め治具153も矢印AR36にて示すように退避させられる(ステップS54)。
第2加締め治具153が退避されると、載置台昇降機構151mが再び作動して、矢印AR37にて示すように、パレット載置台151を初期位置まで下降させる(ステップS55)。図25は、パレット載置台141を初期位置まで下降させた後の様子を示している。
そして、パレット受渡機構113によって、組立体40を保持する搬送パレット111がパレット載置台151からパレット移動機構112に受け渡される(ステップS56)。すなわち、搬送パレット111は再び第4受渡位置Pos4に配置される。これにより二次加締め(増し締め)締め工程が終了する。その後、組立体40は、後段の工程に供されるべく、組立品待機部170に受け渡される。
<二段階封止の効果>
次に、上述の態様にて行う二段階封止の効果について、封止を一段階のみ行う場合(以下、対比例)との対比により説明する。図26は、対比例における気密封止の手順を示す図である。
対比例における手順のうち、ステップS1001からステップS1004は、図3あるいは図7に示した本実施の形態に係る二段階封止の場合のステップS1と、ステップS2の一部であるステップS21〜S23と同じである。
しかしながら、以降の工程については両者は相違する。対比例の場合、二段階封止の場合であれば仮封止を行う段階で早くも、気密化のための封止工程を行う(ステップS1005)。しかも、係る封止工程は、素子位置決めピンを退避させることなく行う。そして、係る封止工程に続いて一次加締め工程(ステップS1006)を行った後、素子位置決めピンを退避させ(ステップS1007)、最後に、二段階封止の場合と同様、二次加締め工程が行われる(ステップS1008)。
図27は、係る対比例における封止の様子を示す模式断面図およびその部分拡大図である。なお、対比例における封止は、本実施の形態における仮封止処理部130と同様の構成を有する処理部にて実施されるので、以下においては便宜上、仮封止処理部130の構成要素を用いて封止の様子を説明する。ただし、図27においては搬送パレット111が載置されるパレット載置台131を省略している。また、以下の説明においては仮封止治具134を単に封止治具134とも称する。
対比例における封止は、図27(a)に示すように、センサ素子10を素子位置決めピン132に当接させた状態で、図示しない封止治具昇降機構134mが、矢印AR38にて示すように、封止治具134を中間体40αの上方から鉛直下方に向けて当接させることによって実現される。対比例における封止が素子位置決めピン132を退避させることなくセンサ素子10を当接させた状態で行われるのは、前もってセンサ素子10の位置決めを行うことなくいきなり封止を行うので、センサ素子10の位置決めについても封止に併せて行う必要があるからである。また、係る位置決めを行う要請から、素子位置決めピン132は、図27(a)に示すようにセンサ素子10の突き出し長がt0となるように配置される。
また、対比例における封止の際に封止治具134がワッシャー7に対し印加する力Faの大きさは、上述した二段階封止における本封止と同様、気密封止を実現する必要から、本封止の際に印加する力F2と同程度であることが求められる。すなわち、ワッシャー7に作用する圧力が610kgf/cm2以上となるように印加される必要がある。このような力Faがワッシャー7に作用すると、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも係る力Faが圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bは圧縮され、その結果、被測定ガス空間と基準ガス空間との間が気密封止される。
ただし、対比例の場合、センサ素子10の最下端部が素子位置決めピン132と接触しているために、図27(b)に示すように、センサ素子10の第1先端部10aにも力Faと同程度の力Fbが作用する。センサ素子10の長手方向に垂直な断面は、ワッシャー7等の環装部品の断面よりも小さいため、第1先端部10aに作用する圧力は環装部品に作用する圧力よりも大きくなる。それゆえ、対比例の場合、センサ素子10の強度が力Fbに耐えきれず、センサ素子10に欠けや割れが生じる不具合が起こり得る。
これに対し、本実施の形態で行う二段階封止の場合、仮封止の際にはセンサ素子10の最下端部は素子位置決めピン134と当接してはいるものの、仮封止の際に圧粉体を圧縮するために加える力F1は、気密性を確保するために行う本封止の際に加える力F2よりも十分小さい。また、本封止の際は、センサ素子10の最下端部は素子位置決めピン134とは当接していないので、対比例の場合とは異なり、気密封止に際してセンサ素子10の第1先端部10aに強い力が作用することもない。それゆえ、本実施の形態で行う二段階封止の場合、センサ素子10に欠けや割れが生じることはない。よって、本実施の形態の場合、組立体40の気密封止の際にセンサ素子10においた欠けや割れが原因となった不具合が発生することを、確実に防ぐことができる。
しかも、仮封止の際の素子位置決めピンの配置位置と、仮封止の際に圧粉体に作用させる力F1と、本封止の際に圧粉体に作用させる力F2とを、好適に定めることで、センサ素子を所望の位置に適切に固定することもできる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、ガスセンサの組立途中において行う、圧粉体の圧縮によってセンサ素子を位置決め固定するとともにセンサ素子の両端側の空間を気密に封止する工程を、センサ素子の位置決めを主たる目的とする仮封止(一次圧縮)と、係る仮封止に続いて素子位置決めピンを用いることなく行う本封止(二次圧縮)との二段階で行うようにすることで、センサ素子に欠けや割れを生じさせることなく、筒状体の内部においてセンサ素子を固定しつつ気密封止することができる。
また、素子位置決めピンの配置を、本封止の際のセンサ素子の位置ずれを考慮してさだめることで、センサ素子に欠けや割れを生じさせることなく、筒状体の内部においてセンサ素子を所望の位置に固定しつつ気密封止することができる。
(実施例1)
本封止の際に気密封止を実現するために必要な力(荷重)を評価するべく、中間体40αとして、センサ素子10の長手方向に垂直な断面のサイズが4.25mm×1.45mmでありワッシャー7、セラミックサポータ8a、8b、8c、圧粉体9(9a、9b)の外径がそれぞれ8.9mm、8.85mm、8.7mm、8.7mm、8.9mmであるものを複数用意し、それぞれについて相異なる封止条件で封止を行うことにより5通りの評価用の組立体を作製したうえで、それぞれの組立体についてリーク試験を行った。
組立体の作製は、素子位置決めピン132を使用しなかったほかは図26に示す対比例と同様の手順にて行った。なお、素子位置決めピン132を用いず、かつ仮封止を行っていないのは、圧粉体9による固定がなされる限りにおいて、センサ素子10が固定される位置はリーク量に影響しないと考えられるからである。
封止の際に(仮)封止治具134がワッシャー7に対し印加する荷重を450kgf、500kgf、550kgf、600kgf、650kgfの5水準に違えた。その際、(仮)封止治具134としては、当接部134aの内径が6.2mmで外径が7.7mmのものを用いた。すなわち、当接部134aの面積は、(7.72−6.22)π≒65.5mm2である。
図28は、リーク試験の様子を概略的に示す図である。リーク試験は、図28に示すようにセンサ素子10の第1先端部10a側が鉛直下方となる姿勢にて評価用の組立体に付随する固定ボルト3を試験用固定台190に螺合することによって、組立体を試験用固定台190に固定した状態で、試験用固定台190の下方から矢印AR39にて示すようにエアーを流し、そのときに第2先端部10bの近傍において生じる、矢印AR40にて示すような評価用の組立体の内部からエアーの流量をリーク量として求めることにより行った。
なお、試験用固定台190にはシールゴム191が備わっており、固定ボルト3が試験用固定台190に螺合された状態においてハウジング5のフランジ部5bと試験用固定台190との間をシールするようになっている。これにより、リーク試験に際しエアーの流路は組立体内部のみとなっている。
リーク試験時に流すエアーの圧力は0.4MPaとし、また、リーク量が0.10cm3/min.以下であれば、気密封止は良好に実現されているものと判断した。なお、この0.10cm3/min.というしきい値は、ガスセンサ1の内部に対する被測定ガスのリーク量の上限値である。仮にガスセンサ1の内部に対する比測定ガスのリークがあったとしても、リーク量がこの値以下であるならば、ガス成分の濃度測定には影響しない。
図29は、上述した条件のもとで行ったリーク試験における封止荷重とエアーのリーク量との関係を示す図である。図29からは、ばらつきを考慮しても、封止荷重が400kgf以上であれば、リーク量は0.10cm3/min.以下となることが見込まれる。なお、(仮)封止治具134の当接部134aの面積が65.5mm2=0.655mm2であることから、400kgf以上という封止荷重は圧力換算するとおよそ610kgf/cm2以上となる。
(実施例2)
仮封止の実効性を確認するべく、実施例1に用いたものと同じ条件にて作製された中間体40αについて、圧粉体9によるセンサ素子10の固定に必要な荷重と、センサ素子10に欠けが発生する荷重との評価を行った。
具体的には、組立体の作製手順のうち、ステップS1とステップ2の一部であるステップS21からステップS24までを、封止荷重を8水準に違えつつ行い、センサ素子10の固定の可否と、各水準における欠けの発生頻度とを評価した。各水準における封止荷重は、5kgf、10kgf、20kgf、40kgf、80kgf、100kgf、180kgf、および300kgfとした。
評価は、各水準について5個の中間体40αを対象に行った。(仮)封止治具134は実施例1と同じものを用いた。素子位置決めピン132としては、直径が1.5mmの円柱状の部材を用い、突き出し長t1が15mmとなるように配置した。
各水準における封止荷重と、センサ素子10の固定の成否と、センサ素子10における欠けの発生頻度とを表1に一覧にして示す。なお、本実施例においては、15mmという突き出し長t1が維持されていればセンサ素子10は固定されていると判断し、表1においては、「OK」と示している。一方、15mmという突き出し長t1が維持されていなければセンサ素子10は固定されていないと判断し、表1においては、「NG」と示している。
表1に示すように、センサ素子10は、封止荷重が10kgf以上の場合には好適に固定された。一方、封止荷重が5kgfの場合には固定されず、それゆえ、封止荷重が5kgfの場合については、欠けの発生について評価することができなかった。
一方、欠け発生頻度についてみれば、封止荷重が10kgf以上80kgf以下の場合には欠けは発生しなかったが、100kgf以上では欠けが発生した。
以上の結果からは、封止荷重が10kgf以上80kgf以下であれば、欠けを発生させることなくセンサ素子10を固定できることがわかる。なお、(仮)封止治具134の当接部134aの面積が65.5mm2=0.655mm2であることから、10kgf以上80kgf以下という封止荷重は圧力換算するとおよそ15kgf/cm2以上120kgf/cm2以下となる。
(実施例3)
本実施例では、仮封止後の突き出し長t1と本封止後の突き出し長t2との相関について評価した。
具体的には、仮封止時の突き出し長t1(つまりは素子位置決めピン132の配置位置)と、仮封止時および本封止時の封止荷重とを種々に違えつつ、図3に示す手順にて評価用の組立体を作製し、本封止後の突き出し長t2とを評価した。
図30は、本封止後の突き出し長t2を仮封止時の突き出し長t1に対してプロットした図である。図30に示すように、各データ点は直線状に分布した。係る分布に基づいて回帰直線を求めると、
t2=1.0358t1+1.3174 ・・・(1)
という関係式が得られるとともに、相関係数Rについて
R2=0.997 ・・・(2)
なる値が得られた。すなわち、本封止後の突き出し長t2と仮封止時の突き出し長t1との間には強い相関関係(線型関係)があることが確認された。この結果は、仮封止時の突き出し長t1を管理することで、本封止後の突き出し長t2を管理することができることを指し示している。
例えば、本封止後の突き出し長t2を16.0mm±0.5mmとしたい場合には、式(1)より、仮封止時の突き出し長t1をおよそ13.7mm〜16.7mmの範囲内の値として設定し、圧粉体9に対して15kgf/cm2以上120kgf/cm2以下なる圧力が印加されるように仮封止治具134により封止荷重を与えればよいことになる。
<ガスセンサの構成>
図1は、本実施の形態において製造の対象となるガスセンサ(より詳細には、その本体部)1の外観斜視図である。図2は、係るガスセンサ1の内部の主要構成を示す部分断面図である。本実施の形態において、ガスセンサ1とは、その内部に備わるセンサ素子10(図2)によって所定のガス成分(例えば、NOx等)を検出するためのものである。
なお、センサ素子10は、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質セラミックスを主たる構成材料とする長尺の柱状あるいは薄板状の部材である。センサ素子10は、第1先端部10aの側にガス導入口や内部空所などを備えるとともに、素子体表面および内部に種々の電極や配線パターンを備えた構成を有する。センサ素子10においては、内部空所に導入された被検ガスが内部空所内で還元ないしは分解されて酸素イオンが発生する。ガスセンサ1においては、素子内部を流れる酸素イオンの量が被検ガス中における当該ガス成分の濃度に比例することに基づいて、係るガス成分の濃度が求められる。なお、図2において正面を向いている面をセンサ素子10の主面P1と称し、この主面P1と垂直でかつ長手方向に沿う面を側面P2と称する。主面P1と側面P2とは、ともにセンサ素子10の長手方向に延在するが、主面P1の方が側面P2よりも幅広である。
ガスセンサ1の外側は、主として、第1カバー2と、固定ボルト3と、第2カバー4とから構成される。
第1カバー2は、センサ素子10のうち、使用時に被検ガスに直接に接触する部分、具体的には、ガス導入口11や閉空間12(緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12c)などが備わる第1先端部10aを保護する、略円筒状の外装部材である。なお、ガス導入口11はセンサ素子10の図2における最下端部である第1先端部10aにおいて開口している。緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12cはそれぞれ、センサ素子10の内部に設けられている。ガス導入口11、緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12cは、センサ素子10の長手方向に沿ってこの順に配置されており、拡散律速部を介して連通している。
また、より詳細には、第1カバー2は、外側カバー2aと内側カバー(図示省略)との2層構造となっている。外側カバー2aと内側カバーは、それぞれ、一方側が有底の円筒状をしているとともに、側面部分に気体が通過可能な複数の貫通孔が設けられている。なお、図1には、外側カバー2aに設けられた貫通孔H1を例示しているが、これはあくまで例示であって、貫通孔の配置位置および配置個数は、第1カバー2の内部への被測定ガスの流入態様を考慮して適宜に定められてよい。
固定ボルト3は、ガスセンサ1を測定位置に固定する際に用いられる環状の部材である。固定ボルト3は、ねじ切りがされたボルト部3aと、ボルト部3aを螺合する際に保持される保持部3bとを備えている。ボルト部3aは、ガスセンサ1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット部にボルト部3aが螺合されることで、ガスセンサ1は、第1カバー2の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。
第2カバー4は、ガスセンサ1の他の部位を保護する円筒状部材である。第2カバー4の端部からは、ガスセンサ1と図示しない駆動制御部とを電気的に接続するための図示しない複数のリード線を内部に収容するワイヤーハーネスWHが延在している。
図2は、ガスセンサ1の内部構成、より具体的には、ガスセンサ1から、図1に示した第1カバー2と第2カバー4とを除いた構成を示している。
図2に示すように、ガスセンサ1の内部においては、センサ素子10のうち、ガス導入口11等が備わる第1先端部10aとワイヤーハーネスWHに収容された図示しないリード線との接続端子(電極端子)13などが備わる第2先端部10bとを除く部分に、ワッシャー7と、3つのセラミックサポータ8(8a、8b、8c)と、2つの圧粉体9(9a、9b)とが、それぞれ、センサ素子10が軸中心に位置する態様にて環装されている。セラミックサポータ8は、セラミックス製の碍子である。一方、圧粉体9は、タルクなどのセラミックス粉末を成型したものである。なお、以降の説明においては、ワッシャー7、セラミックサポータ8、および、圧粉体9を環装部品と総称することとし、これらの環装部品がセンサ素子10に環装された状態のものを部品環装体31(図5参照)と称することがある。
また、図2に示すように、ワッシャー7、セラミックサポータ8(8a、8b、8c)、および圧粉体9(9a、9b)の外周には、金属製の円筒状部材であるハウジング5と金属製の円筒状部材である内筒6とが一体となった円筒状の筒状体(内筒溶接品)30が環装されている。
筒状体30は、内筒6の一方端部がハウジング5に溶接されることで、ハウジング5と内筒6とが一体に構成されている部材である。また、ハウジング5と内筒6とは、略同じ内径を有するとともに、同軸に接続されている。なお、筒状体30の内径は、各環装部品の最大外径の設計値よりも大きく設定されている。
ハウジング5内部の一方端側にはテーパー部5cが設けられている。係るテーパー部5cによって、部品環装体31の一方端部側が筒状体30の内部に係止されている。また、内筒6のワッシャー7の直上の位置と圧粉体9aの側方の位置にはそれぞれ、内側に向けて窪んだ凹部6a、6bが形成されている。これらの凹部6a、6bによって、部品環装体31の他方端部側が筒状体30の内部に係止されている。
より詳細には、圧粉体9は環装後に圧縮されており、センサ素子10と密着している。また、凹部6a、6bは、圧粉体9を圧縮させたうえで設けられている。圧粉体9とセンサ素子10との密着状態が実現されることで、筒状体30の内部においては、センサ素子10が固定されるとともに、センサ素子10のガス導入口11等が備わる第1先端部10a側とリード線との接続端子(電極端子)13などが備わる第2先端部10bとの間が封止される。これにより、センサ素子10の第1先端部10aが接する、被検ガス(被測定ガス)が存在する被測定ガス空間と、第2先端部10bが接する例えば大気である基準ガスが存在する基準ガス空間との間の気密性が確保される。凹部6a、6bは、圧粉体9の圧縮状態を維持するために設けられている。
なお、本実施の形態においては、係る気密性確保のための封止(気密封止)が、仮封止(一次圧縮)と本封止(二次圧縮)との2段階でなされる。係る気密封止の詳細については後述する。
また、以降の説明においては、部品環装体31に筒状体30が環装され、かつ、図2に示すように凹部6a、6bが設けられた構成のものを組立体40と称する。一方、一連の組立工程のなかで最後に行われる凹部6bの形成が完了していない状態のものを、中間体40α(図5参照)と称する。
図2に示すような構成を有する組立体40が第1カバー2、固定ボルト3、および第2カバー4にて被覆されたものが、ガスセンサ1である。具体的には、ハウジング5の先端の筒状部5aには、第1カバー2が接続される。また、ハウジング5の外周には、突起部(フランジ部)5bと接触する態様にて固定ボルト3が環装される。さらに、係る環装によって形成される、固定ボルト3とハウジング5との間の環状の溝部(図示省略)に嵌め込む態様にて、第2カバー4が取り付けられる。
以上のような構成を有することで、ガスセンサ1では、所定位置に取り付けられた状態において、センサ素子10の第1先端部10aの周りの雰囲気(第1カバー2内の雰囲気)と外部の雰囲気とが完全に遮断されるようになっており、これにより、被検ガス中における対象ガス成分の濃度を精度良く測定できるようになっている。
<組立体の製造の概要>
次に、ガスセンサ1の製造工程のうち、本実施の形態において主たる対象とする組立体40の製造工程について説明する。図3は、組立体40の製造の手順を概略的に示す図である。
組立体40の製造は、図3に示す手順のうち、中間体組立工程(ステップS1)によって組み立てた中間体40αに対し、その内部を気密に封止するための封止工程を仮封止(一次圧縮)工程(ステップS2)と本封止(二次圧縮)工程(ステップS3)との2段階で行った後、一次加締め工程(ステップS4)によって内筒6に凹部6aを形成し、さらに二次加締め工程(ステップS5)によって内筒6に凹部6bを形成することでなされる。
<製造装置の概要>
図4は、図3に示した手順にて組立体40の製造を行う製造装置100の概略的な構成を示すブロック図である。
製造装置100は、CPU101a、ROM101b、RAM101c等から構成され製造装置100全体の動作を制御する制御部101と、製造装置100に対して種々の実行指示などを与えるためのスイッチやボタン、タッチパネルなどからなる入力インタフェースである操作部102と、製造装置100の種々の動作メニューや動作状態などを表示するディスプレイや計器類などの表示部103と、製造装置100の動作プログラム104pや図示しない動作条件データなどが格納される記憶部104とを備える。製造装置100においては、動作プログラム104pが制御部101にて実行されることにより、後述する一連の動作が自動処理にて行われる。
製造装置100はさらに、実際の組立体の製造を担う構成要素として、搬送処理部110と、中間体組立処理部120と、仮封止処理部130と、本封止/加締め処理部140と、増し締め処理部150とを備える。
搬送処理部110は、中間体40αおよび組立体40を製造装置100内において搬送する処理を担う部位である。搬送処理部110は、中間体40αおよび組立体40が載置される搬送パレット111と、搬送パレット111を所定の手順で各部に移動させるパレット移動機構112と、中間体40αおよび組立体40が載置されている搬送パレット111を各処理部との間で受け渡すパレット受渡機構113とを備える。
中間体組立処理部120は、中間体40αの組み立てを担う部位である。中間体組立処理部120は、センサ素子10に環装部品を環装して部品環装体31を得る第1環装機構121と、部品環装体31に筒状体30を環装して中間体40αを得る第2環装機構122とを備える。
また、中間体組立処理部120は、組立対象となるセンサ素子10、環装部品(ワッシャー7、セラミックサポータ8、圧粉体9)がそれぞれに載置される素子待機部123、環装部品待機部124、および筒状体待機部125をさらに備える。
仮封止処理部130は、センサ素子10の位置決め(固定)を主たる目的として圧粉体9を圧縮させる処理である仮封止(一次圧縮)を担う部位である。仮封止処理部130は、搬送パレット111が載置されるパレット載置台131と、仮封止の際にセンサ素子10を位置決めするための素子位置決めピン132と、仮封止の実行に先立ってセンサ素子10の水平面内における位置を調整するための第1調整治具133Aおよび第2調整治具133Bと、仮封止の際にワッシャー7を押圧する仮封止治具(一次圧縮治具)134とを備える。
また、仮封止処理部130は、素子位置決めピン132の鉛直方向における昇降動作を担う位置決めピン昇降機構132mと、第1調整治具133Aおよび第2調整治具133Bによるセンサ素子10の水平面内位置の調整動作を担う面内位置調整機構133mと、仮封止治具134の鉛直方向における昇降動作を担う仮封止治具昇降機構134mとを、さらに備える。
本封止/加締め処理部140は、ガスセンサ1における被測定ガス空間と基準ガス空間との間の気密の確保(気密封止)を実現する本封止(二次圧縮)と、内筒6を加締めることによる凹部6aの形成(一次加締め)とを担う部位である。本封止/加締め処理部140は、搬送パレット111が載置されるパレット載置台141と、本封止の際にワッシャー7を押圧する本封止治具142と、凹部6aを形成するべく内筒6を加締める第1加締め治具143とを備える。
また、本封止/加締め処理部140は、パレット載置台141の鉛直方向における昇降動作を担う載置台昇降機構141mと、第1加締め治具143の水平面内における移動動作を担う加締め治具移動機構143mとを、さらに備える。
増し締め処理部150は、内筒6を加締めることによる凹部6bの形成(二次加締め)を担う部位である。本実施の形態においては、内筒6に対し一次加締め工程による凹部6aの形成に続いて二次加締め工程により凹部6bを形成することを、増し締めと称する。増し締め処理部150は、搬送パレット111が載置されるパレット載置台151と、増し締めの際にワッシャー7に当接される増し締め補助治具152と、凹部6bを形成するべく内筒6を加締める第2加締め治具153とを備える。
また、増し締め処理部150は、パレット載置台151の鉛直方向における昇降動作を担う載置台昇降機構151mと、第2加締め治具153の水平面内における移動動作を担う加締め治具移動機構153mとを、さらに備える。
<中間体の組み立て>
以下、図3に示した手順にて行う組立体40の製造の詳細を、順次に説明する。
図5は、中間体組立処理部120において行われる中間体組立工程(図3のステップS1)の様子を概略的に示す図である。
中間体組立工程においては、まず、第1環装機構121が、素子待機部123からセンサ素子10を取得して、図示しない保持手段にて保持する。そして環装部品待機部124からワッシャー7、セラミックサポータ8a、圧粉体9a、セラミックサポータ8b、圧粉体9b、セラミックサポータ8cをこの順に取得しつつ、図5(a)に矢印AR1にて示すように該センサ素子10の第1先端部10aの側から環装する。これにより、図5(b)に示す部品環装体31が得られる。なお、センサ素子10および各環装部品は、あらかじめ所定の場所で製造され、中間体組立工程の実行に先立ってそれぞれ素子待機部123および環装部品待機部124に用意される。
より詳細には、各環装部品は円板状または円柱状をなしているが、係る環装を実現するため、ワッシャー7の軸中心位置には、円形状の貫通孔7hが設けられており、セラミックサポータ8a、圧粉体9a、セラミックサポータ8b、圧粉体9b、セラミックサポータ8cにはそれぞれ、センサ素子10の断面形状に応じた矩形状の貫通孔8ah、9ah、8bh、9bh、8chが設けられている。これらの貫通孔が、センサ素子10と嵌め合わされることで、各部材がセンサ素子10に環装される。係る場合において、ワッシャー7と、セラミックサポータ8と、圧粉体9とは、同軸に配置される。
なお、気密性の確保の観点から、セラミックサポータ8の貫通孔と圧粉体9の貫通孔とは、センサ素子10の設計上の断面サイズとの差が0.25mm〜0.35mmであるように、そして、寸法公差が0.1mmであるように構成される。一方、ワッシャー7の貫通孔7hは、センサ素子10の設計上の断面サイズとの差が最低でも1mm以上1.3mm以下であるように設けられる。また、ワッシャー7と、セラミックサポータ8と、圧粉体9とは、外径の値の差が最大でも0.35mm程度に収まるように構成されている。
次に、第2環装機構122が、筒状体待機部125から筒状体30を取得し、内筒6の側から部品環装体31に環装させる。具体的には、図5(b)において矢印AR2にて示すように、筒状体30は、センサ素子10の第1先端部10aが備わる側から部品環装体31に環装される。これにより、図5(c)に示すように、中間体40αが得られる。なお、係る時点では中間体40αは未封止の状態であるので、センサ素子10は完全には固定されてはいない。それゆえ、センサ素子10は、例えば外力が作用するなどの原因で長手方向に変位可能な状態となっている。換言すれば、未封止の中間体40αにおいては、センサ素子10は位置決めされてはいない。センサ素子10の位置決めは、次に行う仮封止工程において行われる。
<搬送処理部による搬送と受け渡し>
中間体組立処理部120において組み立てられた中間体40αは、以降、搬送処理部110によって搬送され、後段の処理を行う各部との間で逐次受け渡される。
図6は、搬送処理部110における中間体40αおよび組立体40の搬送と、各部との間における中間体40αおよび組立体40の受渡の様子を概略的に示す平面図である。
搬送処理部110は、概略、中間体40αおよび組立体40を、搬送パレット111に載置した状態で搬送するとともに、各部との間における中間体40αあるいは組立体40の受け渡しも、中間体40αあるいは組立体40を載置した搬送パレット111ごと行うように構成されている。
搬送パレット111の上部には嵌合部111aが備わっており、係る嵌合部111aに中間体40αあるいは組立体40が嵌め合わされることで、中間体40αあるいは組立体40が搬送パレット111に載置固定されるようになっている。より詳細には、ワッシャー7の側を上方とする姿勢の中間体40αあるいは組立体40が、筒状体30の下部を嵌合部111aに嵌合されることで、中間体40αあるいは組立体40は搬送パレット111に載置固定される(図8等参照)。なお、本実施の形態において、筒状体30の下部とは、図2におけるハウジング5の突起部5b以下の部分を指し示すものとする。換言すれば、中間体40αおよび組立体40は、センサ素子10の長手方向が鉛直方向に延在し、かつ、その第2先端部10bの側が上方となる姿勢にて、搬送パレット111により搬送される。このときの中間体40αおよび組立体40の姿勢を、組立姿勢とも称する。
好ましくは、係る載置固定の際、中間体40αおよび組立体40は水平面内において回転ずれを起こさないように位置決めされる。これは例えば、ハウジング5の外周形状に異方性を持たせ、嵌合部111aもこれに応じた形状とすることで実現されてもよいし、搬送パレット111に備わる図示しない保持手段が中間体40αおよび組立体40の水平姿勢を保持する態様であってもよい。
搬送処理部110においては、中間体組立処理部120から組み立てられた中間体40αを受け取る第1受渡位置Pos1と、仮封止処理部130、本封止/加締め処理部140、および増し締め処理部150との間で中間体40αあるいは組立体40を受け渡す第2受渡位置Pos2〜第4受渡位置Pos4があらかじめ定められている。
また、仮封止処理部130、本封止/加締め処理部140、および増し締め処理部150にはそれぞれ、搬送パレット111が載置固定されるパレット載置台131、141、および151が備わっている。パレット載置台131、141、および151はそれぞれ、パレット嵌合部131a、141a、および151aを備えており、各処理部においては、これらパレット嵌合部131a、141a、および151aに搬送パレット111が嵌合されることで、パレット載置台131、141、および151に搬送パレット111が載置固定された状態が実現される。
パレット移動機構112(図6において図示せず)はまず、中間体組立処理部120において中間体40αが組み立てられるタイミングで搬送パレット111を第1受渡位置Pos1に配置する。そして、組み立てられた中間体40αは、図6において図示しないパレット受渡機構113によって、矢印AR3にて示すように第1受渡位置Pos1に配置されている搬送パレット111へと受け渡される。
以降、図6において矢印AR4〜AR6にて示すパレット移動機構112による第2受渡位置Pos2〜第4受渡位置Pos4への搬送パレット111の搬送と、矢印AR7〜AR9にて示すパレット受渡機構113による各受渡位置とパレット載置台との間における搬送パレット111の受渡とが、交互に行われる。
増し締め処理部150における処理の終了後、搬送パレット111が増し締め処理部150から第4受渡位置Pos4へと戻されると、該搬送パレット111が保持している組立体40は組立品待機部170に受け渡される。あるいは、引き続き別の処理部に搬送される態様であってもよい。空になった搬送パレット111は第1受渡位置Pos1に戻され、以降の処理に再び用いられる。
あるいは、ある処理部に対応する受渡位置に手前の受渡位置から中間体40αあるいは組立体40を搬送してきた搬送パレット111と、当該処理部における処理の終了後、次の受渡位置に中間体40αあるいは組立体40を搬送する搬送パレット111とが、異なる態様であってもよい。
<仮封止>
中間体組立処理部120において組み立てられた中間体40αは、仮封止処理部130において行われる仮封止(一次圧縮)工程(図3のステップS2)工程に供される。仮封止工程は、センサ素子10を素子位置決めピン132と当接する位置にて仮に固定することを主たる目的として行う工程である。ここで、「仮に」と言っているのは、この後に行う本封止(二次圧縮)の際にセンサ素子10にわずかながら変位が生じるからである。
図7は、仮封止工程のより具体的な手順を示す図である。図8ないし図11は、仮封止工程の途中の様子を段階的に示す図である。
図8(a)は、中間体40αを保持(載置固定)している搬送パレット111がパレット載置台131に載置された状態を示している。
仮封止処理部130において仮封止工程を行うにあたっては、まず、第1受渡位置Pos1において中間体組立処理部120から受け渡された、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111が、パレット移動機構112によって第2受渡位置Pos2に配置されたうえで、パレット受渡機構113によって図8(a)に示すように中間体40αともども仮封止処理部130のパレット載置台131に載置固定される(ステップS21)。
なお、図8においては、センサ素子10の厚み方向が図面視左右方向となるように、換言すれば、主面P1が図面視左右方向に直交し、側面P2の一方が図面視手前側を向くように、中間体40αが組立姿勢にて載置固定される様子を示している。以降においては、中間体40αが載置固定されている搬送パレット111がパレット載置台131に載置固定された状態を単に、中間体40αがパレット載置台131に固定された状態とも称する。また、図8および以降の図においては適宜、鉛直上方をz軸正方向とする座標を付している。
図8に示すように、搬送パレット111の嵌合部111aの下方には、中間体40αの下方において突出しているセンサ素子10が搬送パレット111と干渉しないように孔部111bが設けられている。加えて、パレット載置台131も、そのパレット嵌合部131aの下方に、孔部131bを有している。係る孔部131bは、搬送パレット111がパレット嵌合部131aに載置された状態において搬送パレット111の孔部111bと同軸となるように、設けられている。
上述したように、センサ素子10は位置決めされてはいないので、矢印AR10にて示すように孔部111bさらには131b内で上下に変位可能な状態となっている。ただし、図示は省略するが、孔部131bは、センサ素子10が搬送パレット111から突出することのないように構成されている。
孔部111bおよび131bは、素子位置決めピン132の昇降空間としても利用される。図8(a)においては図示を省略するが、素子位置決めピン132は、位置決めピン昇降機構132mにて、鉛直方向に昇降自在に、かつ、孔部111bおよび131bに侵入可能に設けられている。
中間体40αがパレット載置台131に固定されると、位置決めピン昇降機構132mが、図8(b)において矢印AR11にて示すように孔部131bおよび孔部111bにおいて素子位置決めピン132が鉛直上方に上昇させて、所定の位置に配置する(ステップS22)。
より詳細には、最終的に組立体40が気密封止された後の状態における、セラミックサポータ8cの最下端部からセンサ素子10の最下端部(第1先端部10a側の端部)までの距離(突き出し長と称する)の目標値をt0とするとき、素子位置決めピン132は、突き出し長がt0よりも短いt1となるように配置される。これにより、センサ素子10は、矢印AR12にて示すように押し上げられ、第2先端部10b側が筒状体30からより突出する。このとき、センサ素子10は第1の位置に配置されているとする。
このように、素子位置決めピン132がセンサ素子10の最下端部を押し上げ、突き出し長がt1となる第1の位置に配置させるのは、後段の工程においてセンサ素子10が第1の位置から下降して、突き出し長がt0に近づくことを見越したものである。なお、突き出し長t0とt1の差は、あらかじめ実験的に定められる。
センサ素子10の第1先端部10a側に素子位置決めピン132が配置されると、図9に示すように、センサ素子10の第2先端部10b側において、第1調整治具133Aおよび第2調整治具133Bにより、センサ素子10の水平面内における位置が調整される(ステップS23)。これは、第1調整治具133Aによるセンサ素子10の厚み方向の調整と第2調整治具133Bによる幅方向の調整との二段階でなされる。
まず、図9において図示しない面内位置調整機構133mが作動することにより、図9(a)に示すように、1対の第1調整治具133Aを用いたセンサ素子10の厚み方向における位置調整がなされる。具体的には、矢印AR13が指し示す枠囲いの中にて示される上面図からわかるように、1対の第1調整治具133Aはそれぞれが矢印AR14にて示すようにx軸方向に進退自在に設けられてなり、主面P1に当接しつつセンサ素子10を両者の間に挟み込むことで、厚み方向についてのセンサ素子10の位置決め(芯出し)を行う。
続いて、同様に、図9において図示しない面内位置調整機構133mが作動することにより、図9(b)に示すように、1対の第2調整治具133Bがセンサ素子10の幅方向の位置調整を行う。具体的には、矢印AR15が指し示す枠囲いの中にて示される上面図からわかるように、1対の第2調整治具133Bはそれぞれが矢印AR16にて示すようにy軸方向に進退自在に設けられてなり、側面P2に当接しつつセンサ素子10を両者の間に挟み込むことで、幅方向についてのセンサ素子10の位置決め(芯出し)を行う。
センサ素子10の水平面内における位置が定められると、続いて、図10に示すように、仮封止治具134による仮封止(一次圧縮)がなされる(ステップS24)。
仮封止治具134は、中間体40αがパレット載置台131に固定された状態において、中間体40αの(より具体的にはセンサ素子10の)鉛直上方となる位置に、図10において図示しない仮封止治具昇降機構134mによって鉛直方向に昇降自在に設けられている。仮封止治具134は、その鉛直方向最下端部が、中間体40αを構成するワッシャー7に上方から当接する略円環状の当接部134aとなっているとともに、鉛直下方に向けて開口している空隙部134bを備える。なお、仮封止治具134は、パレット載置台131に固定された中間体40αと同軸となるように、配置されている。
空隙部134bは、仮封止の際にセンサ素子10が収容される部位である。係る空隙部134bが設けられていることで、仮封止を行うべく仮封止治具134が下降させられた際に仮封止治具134とセンサ素子10との干渉が生じないようになっている。
仮封止は、図10において図示しない仮封止治具昇降機構134mにより、仮封止治具134が図10(a)において矢印AR17にて示すように中間体40αの上方から鉛直下方に向けて下降されることによって、実現される。
仮封止治具134が仮封止治具昇降機構134mによって下降されるとやがて、その当接部134aがワッシャー7に当接する。このとき、センサ素子10は空隙部134bに収容されている。
仮封止治具昇降機構134mは、係る当接の後も図10(b)において矢印AR18にて示すように係る下降を継続させる。すると、仮封止治具134の当接部134aはワッシャー7を押圧し、ワッシャー7に対して鉛直下向きの力(荷重)F1(第1の力)を印加させる。ここで、力F1は、センサ素子10の固定が実現される一方でセンサ素子10に欠け(あるいは割れ)が生じることのない範囲の大きさにて印加される。実際の力F1の値は、ワッシャー7に当接する当接部134aの面積を鑑みて設定されればよい。
当接部134aからワッシャー7に対して力F1が作用すると、ワッシャー7が鉛直下方にわずかに押し下げられるとともに、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも係る力F1が圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bは圧縮される。そして、係る圧縮に伴い、圧粉体9a、9bとセンサ素子10との間に存在していた隙間はなくなり、圧粉体9a、9bはセンサ素子10に密着する。すると、それまでは鉛直方向に変位可能であったセンサ素子10が圧粉体9a、9bによって固定される。素子位置決めピン132にて位置決めされているセンサ素子10は第1の位置に保たれることから、結果として、センサ素子10が、その最下端部における突き出し長がt1となる第1の位置にて固定されたことになる。
仮封止が終了すると、図11において矢印AR19およびAR20にて示すように、仮封止治具134および素子位置決めピン132が順次に退避させられる(ステップS25)。そして、パレット受渡機構113によって、仮封止後の中間体40αを保持する搬送パレット111がパレット載置台131からパレット移動機構112に受け渡される(ステップS26)。すなわち、搬送パレット111は再び第2受渡位置Pos2に配置される。これにより仮封止工程が終了する。
<本封止および一次加締め>
仮封止処理部130において仮封止がなされた中間体40αは、本封止/加締め処理部140において行われる本封止(二次圧縮)工程(図3のステップS3)およびこれに続く一次加締め工程(図3のステップS4)に供される。本封止工程は、被測定ガス空間と基準ガス空間との間の気密の確保を主たる目的として行う工程である。一次加締め工程は、本封止された中間体40αにおいて、筒状体30内の環装部品を完全に拘束するために行う工程である。
図12は、本封止(二次圧縮)工程および一次加締め工程のより具体的な手順を示す図である。本封止/加締め処理部140においては、本封止工程と、一次加締め工程とが連続して行われる。図13は、本封止/加締め処理部140の構成を概略的に示す側面図(一部断面図)である。また、図14および図15は、本封止工程の途中の様子を段階的に示す図である。図16は、一次加締めの際の加締め治具移動機構143mの動作について説明するための図である。さらに、図17、図18、および図19は、一次加締め工程の途中の様子を段階的に示す図である。
本封止/加締め処理部140は、パレット載置台141と、本封止治具142と、第1加締め治具143とを主に備える。
図13は、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111がパレット載置台141に載置された状態を示している。なお、図13においても、図8と同様、センサ素子10の厚み方向が図面視左右方向となるように、中間体40αが組立姿勢にて載置固定される様子を示している。また、以降においては、中間体40αが載置固定されている搬送パレット111がパレット載置台141に載置固定された状態を単に、中間体40αがパレット載置台141に固定された状態とも称する。
パレット載置台141は、仮封止処理部130に備わるパレット載置台131と同様の構成を有するが、載置台昇降機構141mによって鉛直方向に昇降自在とされている点で、パレット載置台131とは相異する。載置台昇降機構141mは、サーボシリンダによって構成されている。
また、本封止/加締め処理部140は、パレット載置台141の上方位置に、鉛直方向に延在する支軸140sを有しており、本封止治具142は、係る支軸140sに付設されている。より具体的には、支軸140sは下端部が下方に開口する空隙部140aとなっており、本封止治具142は、該空隙部140aに突出する態様にて支軸140sに固設されている。
係る本封止治具142は、その鉛直方向最下端部が、中間体40αを構成するワッシャー7に上方から当接する略円環状の当接部142aとなっているとともに、鉛直下方に向けて開口している空隙部142bを備える。本封止治具142は、パレット載置台141に固定された中間体40αと同軸となるように、配置されている。
また、支軸140sにはさらに、空隙部140aから側方に延在する態様にて貫通孔140bが設けられており、係る貫通孔140bには、第1加締め治具143が、貫通孔140bの延在方向に沿って進退自在に備わっている。
なお、図13においては図面視左右方向に2つの貫通孔140bが示され、それぞれに第1加締め治具143が備わる態様が示されているが、実際には、後述するように、貫通孔140bは空隙部140aの四方のそれぞれに、つまりは全4箇所に設けられている。そして、第1加締め治具143も、これら4箇所の貫通孔140bのそれぞれに設けられている(図16参照)。
第1加締め治具143は、空隙部140a側を向いた一方端部に爪部143aを有するとともに、他方端部側には加締め治具移動機構143mによってガイドされる被ガイド部143bを有する。
加締め治具移動機構143mは、鉛直方向に伸縮自在に設けられたサーボシリンダ144と、その下端部に設けられた案内部材145とを有する。サーボシリンダ144および案内部材145は、それぞれの第1加締め治具143に対応させて全4箇所に設けられている。案内部材145は、第1加締め治具143の被ガイド部143bをガイドするガイド面146を有している。ガイド面146は、鉛直方向に対して所定角度だけ傾斜しているとともに対応する第1加締め治具143が備わる貫通孔140bの延在方向を含む鉛直面に対しては直交している。そして、第1加締め治具143の被ガイド部143bは、係るガイド面146に接触しつつその傾斜方向に沿って進退可能に設けられている。
本封止/加締め処理部140において本封止工程とこれに続く一次加締め工程とを行うにあたっては、まず、第2受渡位置Pos2において仮封止処理部130から受け渡された、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111が、パレット移動機構112によって第3受渡位置Pos3に配置されたうえで、パレット受渡機構113によって図13に示すように中間体40αともども本封止/加締め処理部140のパレット載置台141に載置固定される(ステップS31)。
係る載置固定がなされると、載置台昇降機構141mが作動し、中間体40αが固定されたパレット載置台141が、図13において矢印AR21にて示すように上昇される。パレット載置台141が上昇を続けるとやがて、図14に示すように、中間体40αのワッシャー7が本封止治具142の当接部142aに当接する(ステップS32)。このとき、センサ素子10は空隙部142bに収容されている。
載置台昇降機構141mは、係る当接の後も図14において矢印AR22にて示すように係る上昇を継続させる。すると、本封止治具142の当接部142aはワッシャー7を押圧し、図15に示すように、ワッシャー7に対して鉛直下向きの力(荷重)F2(第2の力)を印加させる。その際には、F2が仮封止の際に印加した力F1に比して大きくなるようにする。実際の力F2の値は、ワッシャー7に当接する当接部142aの面積を鑑みて設定されればよい。
当接部142aからワッシャー7に対して力F2が作用すると、ワッシャー7が鉛直下方にさらに押し下げられるとともに、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも係る力F2が圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bはさらに圧縮される。その結果、被測定ガス空間と基準ガス空間との間が気密封止される。これにより、本封止(二次圧縮)が実現される(ステップS33)。
なお、力F2を印加する際にワッシャー7に作用する圧力の上限値は、本封止治具142やワッシャー7あるいはセラミックサポータ8の材料強度等を鑑みて適宜に定められればよい。
係る本封止は、素子位置決めピン132をセンサ素子10に当接させることなく行われるので、仮封止の段階でいったんは圧粉体9a、9bによって第1の位置に固定されていたセンサ素子10は、本封止の際にわずかではあるがさらに下降する。本封止後のセンサ素子10の突き出し長をt2とすると、t2はt1よりもt0に近い値となる。この本封止後のセンサ素子10の配置位置を第2の位置とする。t2=t0となるのが理想的ではあるが、Δt=t2−t0の値がガスセンサ1において所望される特性に照らして許容される所定の誤差範囲内であれば、つまりは、第2の位置が組立体40(この段階では中間体40α)におけるセンサ素子10の配置位置としてあらかじめ定められてなる範囲内の位置となっていれば、センサ素子10は良好に固定されたものと判断することができる。それゆえ、本実施の形態においては、第2の位置がそのような範囲をみたすよう、素子位置決めピン132の配置位置が定められる。Δtの許容誤差範囲は、あらかじめ適宜に定められればよい。
なお、本実施の形態において、以上のようにいったん仮封止によってセンサ素子10を固定した後に本封止によって気密封止を実現するという二段階封止を行うのは、封止の際に強い力が加わることに起因してセンサ素子10に欠けや割れが生じることを防ぐためである。係る二段階封止が奏する作用効果の詳細については後述する。
なお、仮封止後の突き出し長t1と本封止後の突き出し長t2との間には強い相関(例えば線型関係)がある場合がある。そのような相関関係があらかじめ特定されている場合、仮封止の際のセンサ素子10の最下端部の位置(つまりは素子位置決めピン132の上端位置)と、仮封止および本封止の際に仮封止治具134および本封止治具142が作用させる力F1、F2の値とを好適に定めれば、係る相関関係に基づいて、本封止後のセンサ素子10の突き出し長t2を、Δtの許容誤差範囲内の値とすることができる。すなわち、センサ素子10を、ガスセンサ1の特性に照らして所望される位置にて固定することができる。
上述した態様にて本封止がなされると、続いて、本封止治具142をワッシャー7に当接させた状態を維持しつつ、一次加締め工程を行う。一次加締めは概略、図15において矢印AR23にて示すように、加締め治具移動機構143mにおいてサーボシリンダ144を鉛直下方に伸張させることによって、実現される。
図16は、第1加締め治具143とその移動機構である加締め治具移動機構143mの構成および動作の詳細を説明するための図である。図16(a)下方の概略上面図に示すように、本封止/加締め処理部140においては、4つの第1加締め治具143が、水平面内において互いに対称な4方向に向けて、それぞれ設けられている。それぞれの第1加締め治具143は、水平方向に延在する貫通孔140bに沿って進退自在とされている。そして、中間体40αのワッシャー7が本封止治具142に当接された状態においては、これら4つの第1加締め治具143が、中間体40αの内筒6を中心として、対称に位置することになる。
加締め治具移動機構143mにおいては、それぞれの第1加締め治具143に対応して備わるサーボシリンダ144が矢印AR24にて示すように鉛直下方に伸張されると、これに付随する案内部材145が鉛直下方に下降する。すると、案内部材145は、そのガイド面146に接触している第1加締め治具143の被ガイド部143bに対し鉛直下向きの力を加えて、これを押し下げようとする。しかしながら、上述のように、被ガイド部143bは傾斜面であるガイド面146の傾斜方向に沿って進退可能に設けられてはいるものの、第1加締め治具143全体としては、水平方向に延在する貫通孔140bに沿って進退自在とされている。つまりは、第1加締め治具143の移動方向は水平面内に限定されている。それゆえ、結果的には、サーボシリンダ144の伸張によって案内部材145が下降された場合、図16(a)において矢印AR25にて示すように被ガイド部143bがガイド面146に沿って相対的に上昇させられながら、第1加締め治具143は、矢印AR26にて示すように貫通孔140b内を内筒6の側に向けて移動し、サーボシリンダ144が所定の距離ΔZ伸張すると、図16(b)に示すように、その爪部143aが内筒6の外周面に当接することになる。
なお、図16に示すように、それぞれの第1加締め治具143が有する爪部143aの先端は、内筒6の形状に応じた湾曲面となっているので、爪部143aが内筒6に当接する場合には、その湾曲面全体が内筒6に当接される。
また、図16(b)に示すように、それぞれの爪部143aが内筒6の外周面に当接する際の当接位置(高さ位置)は、ワッシャー7の直上の位置である。本実施の形態に係る製造装置100においては、係る位置関係がみたされるように、本封止工程においてワッシャー7に対して加えられる第2の力F2や、第1加締め治具143の爪部143aの形状を含めた加締め治具移動機構143mの構成や動作態様などが、定められている。
そして、図17に示すように、第1加締め治具143の爪部143aが内筒6の外周面に当接した後も、矢印AR27にて示すように、サーボシリンダ144を鉛直下方に伸張させると、爪部143aによって内筒6が押圧される。これにより内筒6が外周側から加締められ、図18に示すように、内筒6の外周面であってワッシャー7の直上位置には凹部6aが形成される(ステップS41)。これによって筒状体30内の環装部品は完全に拘束される。なお、図16に示したように、第1加締め治具143は四方にのみ存在するので、凹部6aは必ずしも内筒6の周方向全体にわたって一様にかつ連続的に形成されるわけではない。
凹部6aが形成されると、図18において矢印AR28にて示すようにサーボシリンダ144が鉛直上方へと短縮される。これに伴い、内筒6を押圧していた第1加締め治具143も矢印AR29にて示すように退避させられる(ステップS42)。
第1加締め治具143が退避されると、載置台昇降機構141mが再び作動して、矢印AR30にて示すように、パレット載置台141を初期位置まで下降させる(ステップS43)。図19は、パレット載置台141を初期位置まで下降させた後の様子を示している。
そして、パレット受渡機構113によって、一次加締め後の中間体40αを保持する搬送パレット111がパレット載置台141からパレット移動機構112に受け渡される(ステップS44)。すなわち、搬送パレット111は再び第3受渡位置Pos3に配置される。これにより本封止工程及びこれに続く一次加締め工程が終了する。
<二次加締め(増し締め)>
本封止/加締め処理部140において本封止と一次加締めがなされた中間体40αは、増し締め処理部150において行われる二次加締め(増し締め)工程(図3のステップS5)に供される。二次加締め工程は、筒状体30内における環装部品の拘束をより確実化させるために行う工程である。
図20は、二次加締め工程のより具体的な手順を示す図である。図21は、増し締め処理部150の構成を概略的に示す側面図(一部断面図)である。また、図22、図23、図24および図25は、二次加締め工程の途中の様子を段階的に示す図である。
増し締め処理部150は、パレット載置台151と、増し締め補助治具152と、第2加締め治具153とを主に備える。
図21は、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111がパレット載置台151に載置された状態を示している。なお、図21においても、図8と同様、センサ素子10の厚み方向が図面視左右方向となるように、中間体40αが組立姿勢にて載置固定される様子を示している。また、以降においては、中間体40αが載置固定されている搬送パレット111がパレット載置台151に載置固定された状態を単に、中間体40αがパレット載置台151に固定された状態とも称する。
増し締め処理部150は、上述した本封止/加締め処理部140と類似する構成を有する。すなわち、パレット載置台151および載置台昇降機構151mは、本封止/加締め処理部140のパレット載置台141および載置台昇降機構141mと同様の構成を有する。また、増し締め処理部150は、パレット載置台151の上方位置に、鉛直方向に延在する支軸150sを有しており、該支軸150sの下端部は下方に開口する空隙部150aとなっている。そして、増し締め補助治具152は、該空隙部150aに突出する態様にて支軸150sに固設されている。これらの構成は、本封止/加締め処理部140における支軸140s、空隙部140a、本封止治具142の構成態様と同様である。
ただし、増し締め補助治具152の当接部152aの高さ位置は、ワッシャー7が該当接部152aに当接した状態において、中間体40αを構成する圧粉体9aの高さ位置が、第2加締め治具153の爪部153aの高さ位置と一致するように、定められている。これにより、増し締め補助治具152の支軸150sからの突出長さは、本封止治具142の支軸140sからの突出長さよりもよりも小さくなっている。
また、第2加締め治具153(爪部153a、被ガイド部153b)、該第2加締め治具153が配置される貫通孔150b、および、第2加締め治具153を水平面内において移動させるための加締め治具移動機構153mの構成(サーボシリンダ154、案内部材155、ガイド面156)も、第1加締め治具143(爪部143a、被ガイド部143b)、該第1加締め治具143が配置される貫通孔140b、および、第1加締め治具143を水平面内において移動させるための加締め治具移動機構143mの構成(サーボシリンダ144、案内部材145、ガイド面146)と、ほぼ同様である。それゆえ、増し締め処理部150における構成の詳細な説明は省略する。
ただし、第2加締め治具153の爪部153aの形状と、第1加締め治具143の爪部143aの形状とは多少異なっていてもよく、図21ないし図25において例示している、第2加締め治具153の爪部153aの形状は、図13ないし図19において例示している第1加締め治具143の爪部143aとは異なっている。
以上のような構成を有する増し締め処理部150において、二次加締め(増し締め)工程を行うにあたっては、まず、第3受渡位置Pos3において本封止/加締め処理部140から受け渡された、中間体40αを保持(載置固定)する搬送パレット111が、パレット移動機構112によって第4受渡位置Pos4に配置されたうえで、パレット受渡機構113によって図21に示すように、中間体40αともども増し締め処理部150のパレット載置台151に載置固定される(ステップS51)。
係る載置固定がなされると、載置台昇降機構151mが作動し、中間体40αが固定されたパレット載置台151が、図21において矢印AR31にて示すように上昇される。パレット載置台151が上昇を続けるとやがて、図22に示すように、中間体40αのワッシャー7が増し締め補助治具152の当接部152aに当接する(ステップS52)。このとき、センサ素子10は空隙部152bに収容されている。
係る態様にてワッシャー7が当接部152aに当接すると、図22において矢印AR32にて示すように、加締め治具移動機構153mにおいてサーボシリンダ154を鉛直下方に伸張させる。すると、矢印AR33にて示すように、第2加締め治具153は貫通孔150b内を内筒6の側に向けて移動し、やがては図23に示すように、その爪部153aが、圧粉体9aの側方位置において内筒6の外周面に当接することになる。
そして、爪部153aが内筒6の外周面に当接した後も矢印AR34にて示すようにサーボシリンダ154を鉛直下方に伸張させると、爪部153aによって内筒6が押圧される。これにより内筒6が外周側から加締められ、図24に示すように、内筒6の外周面には圧粉体9aの側方位置に凹部6bが形成される(ステップS53)。係る凹部6bが形成されることで、筒状体30内における環装部品の拘束がより確実化されることになる。そして、係る凹部6bの形成により、組立体40が組み立てられたことになる。
凹部6bが形成されると、図24において矢印AR35にて示すようにサーボシリンダ154が鉛直上方へと短縮される。これに伴い、内筒6を押圧していた第2加締め治具153も矢印AR36にて示すように退避させられる(ステップS54)。
第2加締め治具153が退避されると、載置台昇降機構151mが再び作動して、矢印AR37にて示すように、パレット載置台151を初期位置まで下降させる(ステップS55)。図25は、パレット載置台141を初期位置まで下降させた後の様子を示している。
そして、パレット受渡機構113によって、組立体40を保持する搬送パレット111がパレット載置台151からパレット移動機構112に受け渡される(ステップS56)。すなわち、搬送パレット111は再び第4受渡位置Pos4に配置される。これにより二次加締め(増し締め)締め工程が終了する。その後、組立体40は、後段の工程に供されるべく、組立品待機部170に受け渡される。
<二段階封止の効果>
次に、上述の態様にて行う二段階封止の効果について、封止を一段階のみ行う場合(以下、対比例)との対比により説明する。図26は、対比例における気密封止の手順を示す図である。
対比例における手順のうち、ステップS1001からステップS1004は、図3あるいは図7に示した本実施の形態に係る二段階封止の場合のステップS1と、ステップS2の一部であるステップS21〜S23と同じである。
しかしながら、以降の工程については両者は相違する。対比例の場合、二段階封止の場合であれば仮封止を行う段階で早くも、気密化のための封止工程を行う(ステップS1005)。しかも、係る封止工程は、素子位置決めピンを退避させることなく行う。そして、係る封止工程に続いて一次加締め工程(ステップS1006)を行った後、素子位置決めピンを退避させ(ステップS1007)、最後に、二段階封止の場合と同様、二次加締め工程が行われる(ステップS1008)。
図27は、係る対比例における封止の様子を示す模式断面図およびその部分拡大図である。なお、対比例における封止は、本実施の形態における仮封止処理部130と同様の構成を有する処理部にて実施されるので、以下においては便宜上、仮封止処理部130の構成要素を用いて封止の様子を説明する。ただし、図27においては搬送パレット111が載置されるパレット載置台131を省略している。また、以下の説明においては仮封止治具134を単に封止治具134とも称する。
対比例における封止は、図27(a)に示すように、センサ素子10を素子位置決めピン132に当接させた状態で、図示しない封止治具昇降機構134mが、矢印AR38にて示すように、封止治具134をワッシャー7に対し中間体40αの上方から鉛直下方に向けて当接させることによって実現される。対比例における封止が素子位置決めピン132を退避させることなくセンサ素子10を当接させた状態で行われるのは、前もってセンサ素子10の位置決めを行うことなくいきなり封止を行うので、センサ素子10の位置決めについても封止に併せて行う必要があるからである。また、係る位置決めを行う要請から、素子位置決めピン132は、図27(a)に示すようにセンサ素子10の突き出し長がt0となるように配置される。
また、対比例における封止の際に封止治具134がワッシャー7に対し印加する力Faの大きさは、上述した二段階封止における本封止と同様、気密封止を実現する必要から、本封止の際に印加する力F2と同程度であることが求められる。このような力Faがワッシャー7に作用すると、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも係る力Faが圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bは圧縮され、その結果、被測定ガス空間と基準ガス空間との間が気密封止される。
ただし、対比例の場合、センサ素子10の最下端部が素子位置決めピン132と接触しているために、図27(b)に示すように、センサ素子10の第1先端部10aにも力Faと同程度の力Fbが作用する。センサ素子10の長手方向に垂直な断面は、ワッシャー7等の環装部品の断面よりも小さいため、第1先端部10aに作用する圧力は環装部品に作用する圧力よりも大きくなる。それゆえ、対比例の場合、センサ素子10の強度が力Fbに耐えきれず、センサ素子10に欠けや割れが生じる不具合が起こり得る。
これに対し、本実施の形態で行う二段階封止の場合、仮封止の際にはセンサ素子10の最下端部は素子位置決めピン134と当接してはいるものの、仮封止の際に圧粉体を圧縮するために加える力F1は、気密性を確保するために行う本封止の際に加える力F2よりも十分小さい。また、本封止の際は、センサ素子10の最下端部は素子位置決めピン134とは当接していないので、対比例の場合とは異なり、気密封止に際してセンサ素子10の第1先端部10aに強い力が作用することもない。それゆえ、本実施の形態で行う二段階封止の場合、センサ素子10に欠けや割れが生じることはない。よって、本実施の形態の場合、組立体40の気密封止の際にセンサ素子10において欠けや割れが原因となった不具合が発生することを、確実に防ぐことができる。
しかも、仮封止の際の素子位置決めピンの配置位置と、仮封止の際に圧粉体に作用させる力F1と、本封止の際に圧粉体に作用させる力F2とを、好適に定めることで、センサ素子を所望の位置に適切に固定することもできる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、ガスセンサの組立途中において行う、圧粉体の圧縮によってセンサ素子を位置決め固定するとともにセンサ素子の両端側の空間を気密に封止する工程を、センサ素子の位置決めを主たる目的とする仮封止(一次圧縮)と、係る仮封止に続いて素子位置決めピンを用いることなく行う本封止(二次圧縮)との二段階で行うようにすることで、センサ素子に欠けや割れを生じさせることなく、筒状体の内部においてセンサ素子を固定しつつ気密封止することができる。
また、素子位置決めピンの配置を、本封止の際のセンサ素子の位置ずれを考慮してさだめることで、センサ素子に欠けや割れを生じさせることなく、筒状体の内部においてセンサ素子を所望の位置に固定しつつ気密封止することができる。
(実施例1)
本封止の際に気密封止を実現するために必要な力(荷重)を評価するべく、中間体40αとして、センサ素子10の長手方向に垂直な断面のサイズが4.25mm×1.45mmでありワッシャー7、セラミックサポータ8a、8b、8c、圧粉体9(9a、9b)の外径がそれぞれ8.9mm、8.85mm、8.7mm、8.7mm、8.9mmであるものを複数用意し、それぞれについて相異なる封止条件で封止を行うことにより5通りの評価用の組立体を作製したうえで、それぞれの組立体についてリーク試験を行った。
組立体の作製は、素子位置決めピン132を使用しなかったほかは図26に示す対比例と同様の手順にて行った。なお、素子位置決めピン132を用いず、かつ仮封止を行っていないのは、圧粉体9による固定がなされる限りにおいて、センサ素子10が固定される位置はリーク量に影響しないと考えられるからである。
封止の際に(仮)封止治具134がワッシャー7に対し印加する荷重を450kgf、500kgf、550kgf、600kgf、650kgfの5水準に違えた。その際、(仮)封止治具134としては、当接部134aの内径が6.2mmで外径が7.7mmのものを用いた。
図28は、リーク試験の様子を概略的に示す図である。リーク試験は、図28に示すようにセンサ素子10の第1先端部10a側が鉛直下方となる姿勢にて評価用の組立体に付随する固定ボルト3を試験用固定台190に螺合することによって、組立体を試験用固定台190に固定した状態で、試験用固定台190の下方から矢印AR39にて示すようにエアーを流し、そのときに第2先端部10bの近傍において生じる、矢印AR40にて示すような評価用の組立体の内部からのエアーの流量をリーク量として求めることにより行った。
なお、試験用固定台190にはシールゴム191が備わっており、固定ボルト3が試験用固定台190に螺合された状態においてハウジング5のフランジ部5bと試験用固定台190との間をシールするようになっている。これにより、リーク試験に際しエアーの流路は組立体内部のみとなっている。
リーク試験時に流すエアーの圧力は0.4MPaとし、また、リーク量が0.10cm3/min.以下であれば、気密封止は良好に実現されているものと判断した。なお、この0.10cm3/min.というしきい値は、ガスセンサ1の内部に対する被測定ガスのリーク量の上限値である。仮にガスセンサ1の内部に対する被測定ガスのリークがあったとしても、リーク量がこの値以下であるならば、ガス成分の濃度測定には影響しない。
図29は、上述した条件のもとで行ったリーク試験における封止荷重とエアーのリーク量との関係を示す図である。図29からは、ばらつきを考慮しても、封止荷重が400kgf以上であれば、リーク量は0.10cm3/min.以下となることが見込まれる。
(実施例2)
仮封止の実効性を確認するべく、実施例1に用いたものと同じ条件にて作製された中間体40αについて、圧粉体9によるセンサ素子10の固定に必要な荷重と、センサ素子10に欠けが発生する荷重との評価を行った。
具体的には、組立体の作製手順のうち、ステップS1とステップ2の一部であるステップS21からステップS24までを、封止荷重を8水準に違えつつ行い、センサ素子10の固定の可否と、各水準における欠けの発生頻度とを評価した。各水準における封止荷重は、5kgf、10kgf、20kgf、40kgf、80kgf、100kgf、180kgf、および300kgfとした。
評価は、各水準について5個の中間体40αを対象に行った。(仮)封止治具134は実施例1と同じものを用いた。素子位置決めピン132としては、直径が1.5mmの円柱状の部材を用い、突き出し長t1が15mmとなるように配置した。
各水準における封止荷重と、センサ素子10の固定の成否と、センサ素子10における欠けの発生頻度とを表1に一覧にして示す。なお、本実施例においては、15mmという突き出し長t1が維持されていればセンサ素子10は固定されていると判断し、表1においては、「OK」と示している。一方、15mmという突き出し長t1が維持されていなければセンサ素子10は固定されていないと判断し、表1においては、「NG」と示している。
表1に示すように、センサ素子10は、封止荷重が10kgf以上の場合には好適に固定された。一方、封止荷重が5kgfの場合には固定されず、それゆえ、封止荷重が5kgfの場合については、欠けの発生について評価することができなかった。
一方、欠け発生頻度についてみれば、封止荷重が10kgf以上80kgf以下の場合には欠けは発生しなかったが、100kgf以上では欠けが発生した。
以上の結果からは、封止荷重が10kgf以上80kgf以下であれば、欠けを発生させることなくセンサ素子10を固定できることがわかる。
(実施例3)
本実施例では、仮封止後の突き出し長t1と本封止後の突き出し長t2との相関について評価した。
具体的には、仮封止時の突き出し長t1(つまりは素子位置決めピン132の配置位置)と、仮封止時および本封止時の封止荷重とを種々に違えつつ、図3に示す手順にて評価用の組立体を作製し、本封止後の突き出し長t2とを評価した。
図30は、本封止後の突き出し長t2を仮封止時の突き出し長t1に対してプロットした図である。図30に示すように、各データ点は直線状に分布した。係る分布に基づいて回帰直線を求めると、
t2=1.0358t1+1.3174 ・・・(1)
という関係式が得られるとともに、相関係数Rについて
R2=0.997 ・・・(2)
なる値が得られた。すなわち、本封止後の突き出し長t2と仮封止時の突き出し長t1との間には強い相関関係(線型関係)があることが確認された。この結果は、仮封止時の突き出し長t1を管理することで、本封止後の突き出し長t2を管理することができることを指し示している。