JP2017172790A - 表面層付き成形断熱材及びその製造方法 - Google Patents

表面層付き成形断熱材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガスによる断熱性能の低下を抑制し得た長寿命な表面層付き成形断熱材を低コストの提供。【解決手段】炭素繊維フェルト表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とを有する炭素繊維シートを複数積層してなる成形断熱材2と、炭素繊維ファブリックの炭素繊維相互間に充填された炭素マトリックスと、からなる炭素繊維強化炭素複合材料シート2と、により構成され、成形断熱材2は、保護炭素層の質量含有比率が異なる2種類以上の炭素繊維シートが積層されてなり、炭素繊維強化炭素複合材料シート2に接する炭素繊維シートは、そのかさ密度が0.18〜0.35g/cm3で且つ保護炭素層の質量含有比率が最も高く、炭素繊維強化炭素複合材料シート2のかさ密度は、炭素繊維シートのいずれよりも大きく且つ0.3〜1.6g/cm3であり、炭素繊維強化炭素複合材料シート2の前記炭素マトリックスの体積分率が8〜40%である表面層付き成形断熱材。【選択図】図1

Description

本発明は炭素繊維を用いた成形断熱材に関し、詳しくは耐久性を高めるための表面層が設けられた成形断熱材に関する。
炭素繊維系の断熱材は、熱的安定性や断熱性能に優れ且つ軽量であることから、種々の用途で使用されている。このような断熱材には、炭素繊維を交絡してなる炭素繊維フェルトや、炭素繊維フェルトに樹脂材料を含浸させ炭素化させた炭素繊維成形断熱材がある。炭素繊維フェルトは可とう性に優れるという長所を有し、炭素繊維成形断熱材は、形状安定性に優れ、微細な加工が可能であるという長所を有する。
何れの断熱材を使用するかは、使用目的や用途に応じて適宜選択される。後者の炭素繊維成形断熱材は、熱的安定性、断熱性能に優れ且つ形状安定性に優れることから、単結晶シリコン引き上げ装置、多結晶シリコンキャスト炉、金属やセラミックスの焼結炉、真空蒸着炉等の高温炉の断熱材として使用されている。
ところが、単結晶や多結晶シリコンなどの製造装置においては、高温炉内でSiOガスが発生したり、酸素ガスが不純物ガスとして製造雰囲気に混入したりする。SiOガスや酸素ガスは活性(反応性)が高く、炭素繊維成形断熱材とSiOガスとが反応するとSiCが生じ、炭素繊維成形断熱材と酸素ガスとが反応すると炭素酸化物(一酸化炭素、二酸化炭素等)が生じる。これにより特に炭素繊維が劣化し、炭素繊維により構成される骨格構造が崩れ、当該骨格構造が多数の空間を形成することにより得られる断熱作用が低下する。また、この劣化により特に炭素繊維が粉化して炉内雰囲気中に放出されて、製品品質を低下させるというおそれもある。
この問題に対して、特許文献1は、炭素繊維の粉化や劣化を防止する技術を提案している。
特許第4361636号
特許文献1の技術は、嵩密度0.1〜0.4g/cm3の炭素質断熱部材と、炭素繊維構造体に熱分解炭素を浸透せしめた嵩密度0.3〜2.0g/cm3の炭素質保護層と、該炭素質保護層よりも嵩密度の大きい熱分解炭素被膜層とを有し、上記炭素質断熱部材の表面の一部に上記炭素質保護層を接合して接合体が形成され、該接合体の表面のうち少なくとも上記炭素質断熱部材の面に熱分解炭素被膜層が形成されている複合炭素質断熱材に関する。
この技術によると、使用時の消耗、劣化、粉化が小さく、断熱特性に優れた炭素質断熱が得られるとされる。
しかしながら、特許文献1の技術は、炭素繊維の劣化及び粉化の抑制が十分ではない。また、この技術によると、製造工程が複雑となり、製造コストが増大するという問題がある。
ところで、工業炉においては、炉内の気圧が大気圧よりも大きくなることがある。このような場合、圧力差によって炉内雰囲気ガス(窒素ガスやアルゴンガス)の気流が生じるが、成形断熱材の強度が不十分であると気流により成形断熱材の内部組織が変形してしまい、所望の断熱作用が失われてしまう。また、気流や熱対流によって高温となった雰囲気ガスが成形断熱材の内部空間に浸透すると、断熱作用が低下してしまう。上記特許文献1では、このような点について何ら考慮されていない。
この問題を解決するため、炭素繊維強化炭素複合材料あるいはC/Cコンポジット等と呼ばれる、炭素繊維のファブリック(布地)に炭素マトリックスを含浸させた材料を、成形断熱材表面に接合することが行われている。炭素繊維強化炭素複合材料は強度や気密性に優れるので、成形断熱材の内部の変形や雰囲気ガスの浸透を低減・抑制することができる。
ところが、炭素繊維強化炭素複合材料及び炭素繊維系の成形断熱材は、ともに炭素繊維を用いた材料であるものの、良好な接合が困難であるという問題がある。このため、両者の接合には、人造黒鉛や炭素繊維強化炭素複合材料を素材に用いたボルトやナットが使用されている。しかし、この方法では、ボルトやナットを用いた作業に手間がかかるとともに、これらの部材の分だけコスト高になる。また、これらの素材は成形断熱材よりも熱伝導性が高く、ボルトやナットを通じた熱移動により断熱作用が低減してしまうという問題がある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、断熱作用の低下や無用なコスト高を招くことなく、成形断熱材の変形やガスの浸透を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するための成形断熱材に係る本発明は、次のように構成されている。
炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと前記繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とを有する炭素繊維シートのみからなり、前記炭素繊維シートを複数積層してなる成形断熱材と、前記成形断熱材の最表層となる炭素繊維シートに接して積層された、炭素繊維からなる炭素繊維ファブリックと前記炭素繊維ファブリックの炭素繊維相互間に充填された炭素マトリックスと、のみからなる炭素繊維強化炭素複合材料シートと、により構成された表面層付き成形断熱材であって、前記成形断熱材は、保護炭素層の質量含有比率が異なる2種類以上の炭素繊維シートが積層されてなり、炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する炭素繊維シートは、そのかさ密度が0.18〜0.35g/cm3で且つ保護炭素層の質量含有比率が最も高く、前記炭素繊維強化炭素複合材料シートのかさ密度は、炭素繊維シートのいずれよりも大きく且つ0.3〜1.6g/cm3であり、前記炭素繊維強化炭素複合材料シートの前記炭素マトリックスの体積分率が8〜40%である表面層付き成形断熱材。
繊維フェルトと、繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層と、を有する炭素繊維シートが積層成形されてなる成形断熱材であると、成形断熱材の周囲に、不純物として混入或いは炉内で発生した活性ガス(酸素ガス、SiOガス等)が存在する場合、炭素繊維表面を被覆する保護炭素層が炭素繊維に先んじて活性ガスと反応する。これにより炭素繊維と活性ガスとが反応して劣化することが抑制される。
ここで、保護炭素層が酸素ガスと反応する場合、保護炭素層を構成する炭素が炭酸ガスとなって除去され、また、SiOガスと反応する場合にはSiCとなって除去されることなく残存するが、いずれの場合も炭素繊維により構成される骨格構造が維持されるので、当該骨格構造が多数の空間を形成することにより得られる断熱作用が維持される。
そして、上記本発明では、成形断熱材の最表層となる炭素繊維シートに接して、表面層である炭素繊維強化炭素複合材料シートが積層されている。この表面層は、かさ密度が成形断熱材よりも高く且つ0.3〜1.6g/cm3、炭素マトリックスの体積分率が8〜40%に設定されており、これにより気密性や強度が成形断熱材を構成する各炭素繊維シートよりも高くなっている。この表面層が気流や対流による雰囲気ガスの成形断熱材内部への浸透や、圧力による成形断熱材の変形を抑制するように作用する。また、この表面層は、活性ガスによる成形断熱材部分の劣化や摩擦による粉化(発塵)を抑制するようにも作用する。
また、上記本発明の構成では、表面層付き成形断熱材は炭素繊維と炭素質とのみからなるシートにより構成され、ボルトやナット等のその他の要素や、粒状成分等のその他の成分を含んでいない。このため、その他の成分や要素による不具合が生じることがない。
ここで、保護炭素層の質量含有比率の低い炭素繊維シートが炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する場合、熱応力のアンバランスにより両者が剥離しやすくなる。他方、保護炭素層の質量含有比率の高い炭素繊維シートのみにより構成される成形断熱材の使用は、断熱性能が不十分となるとともにコスト高につながる。本発明では、炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する層には、保護炭素層の質量含有比率が高く且つかさ密度が0.18g/cm3以上に規制された炭素繊維シートを用いるとともに、他の部分には保護炭素層の質量含有比率が相対的に低い炭素繊維シートを用いることにより、無用なコスト上昇を抑制しつつ炭素繊維強化炭素複合材料シートの接着性を向上させている。
また、薄い各々の炭素繊維シートの保護炭素層の質量含有比率や積層枚数を制御することにより、所望の質量含有比率を持った断熱材構造を形成することができる。よって、低コストで長寿命な成形断熱材を実現することができる。
ここで、かさ密度や炭素マトリックスの体積分率を大きくしすぎるとコスト高につながるため、炭素繊維強化炭素複合材料シートのかさ密度、炭素マトリックスの体積分率、及び炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する炭素繊維シートのかさ密度の上限は、上記のように規制することが好ましい。
また、成形断熱材の炭素繊維強化炭素複合材料と接する表面に、保護炭素層の質量含有比率の最も高い炭素繊維シートが配置されていればよく、成形断熱材の両方の表面に保護炭素層の質量含有比率の最も高い炭素繊維シートが配置されている構成や、保護炭素層の質量含有比率の最も高い炭素繊維シートが2層以上連続して積層された構成であってもよい。さらに、成形断熱材は、保護炭素層の質量含有比率が最も低い炭素繊維シートと最も高い炭素繊維シートの2種類からなる構成であってもよく、保護炭素層の質量含有比率が異なる3種類以上の炭素繊維シートを用いてなる構成であってもよい。3種類以上の炭素繊維シートを用いる場合には、その質量含有比率が低〜高の順に並ぶように配することが好ましい。
また、炭素繊維シートのうち、炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する面に配置された炭素繊維シート以外の炭素繊維シートは、活性ガスとの反応機会が少ないため、当該炭素繊維シート内には、形状を安定させる接着強度が得られる保護炭素層が含まれていればよい。ここで、保護炭素層の質量含有比率が最も低い炭素繊維シートのかさ密度は、好ましくは0.13〜0.17g/cm3、及び/又は、保護炭素層の質量含有比率が最も高い炭素繊維シートのかさ密度よりも0.02g/cm3以上小さいものとする。
また、炭素繊維強化炭素複合材料シートのかさ密度は、より好ましくは0.33〜1.4g/cm3、さらに好ましくは0.35〜1.0g/cm3とする。また、炭素繊維強化炭素複合材料シートの炭素繊維の体積分率は、好ましくは10〜60%とし、より好ましくは10〜50%とし、さらに好ましくは10〜30%とする。また、炭素繊維強化炭素複合材料シートの炭素マトリックスの体積分率は、より好ましくは8〜30%とし、さらに好ましくは8〜25%とする。
また、保護炭素層の質量含有比率が最も高い炭素繊維シートのかさ密度は、より好ましくは0.18〜0.33g/cm3、さらに好ましくは0.18〜0.30g/cm3とする。
上記構成においては、炭素繊維強化炭素複合材料シートの厚みは、0.5〜3mmであることが好ましい。
また、炭素繊維強化炭素複合材料シートを構成する炭素繊維は、特に限定されることはなく、例えば石炭又は石油由来の異方性又は等方性ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系、フェノール系、セルロース系等の炭素繊維を、単一種又は複数種混合して用いることができる。なかでも、硬度に優れ高密度化しやすいことから、PAN系の炭素繊維であることが好ましい。また、炭素繊維の微視的な構造としては特に限定されず、形状(巻縮型、直線型、直径、長さ等)が同一のもののみを用いてもよく、また異なる構造のものが混合されていてもよい。ただし、炭素繊維の種類やその微視的構造は、製造される成形断熱材の物性に影響を与えるので、用途に応じて適宜選択するのがよい。
上記の表面層付き成形断熱材は、次のような製造方法により製造することができる。
炭素繊維を交絡させた炭素繊維フェルトに、熱硬化前の熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂溶液を含浸させてプリプレグを作製するプリプレグ作製ステップと、炭素繊維ファブリックに、熱硬化前の熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂溶液を含浸させて炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を作製する前駆体作製ステップと、前記プリプレグを複数積層し、その最表層に前記炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を積層してプリプレグ積層体となす積層ステップと、前記プリプレグ積層体を加圧しつつ加熱して、熱硬化前の前記熱硬化性樹脂を熱硬化させて、前記プリプレグ及び前記炭素繊維強化炭素複合材料シートを結着させる結着ステップと、結着されたプリプレグ積層体を不活性ガス雰囲気で熱処理して、熱硬化後の前記熱硬化性樹脂を炭素化させる炭素化ステップと、を有し、前記積層ステップは、前記炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体に接する面に、前記熱硬化性樹脂の質量含有比率が最も高いプリプレグが配されるように積層するステップである表面層付き成形断熱材の製造方法。
上記製造方法を採用することにより、ボルトやナットを用いることなく、プリプレグ及び炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を積層し、加熱・加圧・炭素化するという簡便で低コストな手法で、本発明に係る表面層付き成形断熱材を製造することができる。
以上に説明したように、本発明によると、低コストでもってガスの浸透やガスによる変形を抑制し得た表面層付き炭素繊維成形断熱材を実現することができる。
図1は、本発明に係る表面層付き成形断熱材の炭素繊維強化炭素複合材料シート近傍の断面顕微鏡写真である。 図2は、ガス透過試験装置を模式的に示す図である。
(実施の形態)
本発明に係る表面層付き成形断熱材は、炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とのみを有する炭素繊維シートが積層成形され、さらに表面層として炭素繊維からなる炭素繊維ファブリックと炭素繊維ファブリックの炭素繊維相互間に充填された炭素マトリックスと、からなる炭素繊維強化炭素複合材料シートが積層されている。ここで、成形断熱材は、炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する面には、保護炭素層の質量含有比率が最も高い炭素繊維シートが配されている。
保護炭素層や炭素マトリックスは、炭素繊維に先んじて活性ガス(酸素ガス、SiOガス等)と反応し、当該シート内、あるいはより内側に配置されたシート内の炭素繊維の劣化を抑制するように作用する。
炭素繊維シートを構成する炭素繊維としては、特に限定されることはなく、例えば石炭又は石油由来の異方性又は等方性ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系、フェノール系、セルロース系等の炭素繊維を、単一種又は複数種混合して用いることができる。
また、炭素繊維強化炭素複合材料シートを構成する炭素繊維としては、特に限定されることはなく、例えば石炭又は石油由来の異方性又は等方性ピッチ系、PAN系、レーヨン系、フェノール系、セルロース系等の炭素繊維を、単一種又は複数種混合して用いることができるが、中でもPAN系であることが好ましい。いずれの炭素繊維も、その微視的な構造としては特に限定されず、形状(巻縮型、直線型、直径、長さ等)が同一のもののみを用いてもよく、また異なる構造のものが混合されていてもよい。ただし、炭素繊維の種類やその微視的構造は、製造される表面層付き成形断熱材の物性に影響を与えるので、用途に応じて適宜選択するのがよい。
炭素繊維シートを構成する炭素繊維フェルトの形状としては、特に限定されることはなく、例えば厚みが3〜15mm程度のものを用いることができる。また、長さや幅は特に限定されることはない。また、炭素繊維フェルトの微視的構造としては、ランダムな方向に配向した炭素繊維が複雑に交わっているものを用いることが好ましい。
炭素繊維強化炭素複合材料シートを構成する炭素繊維ファブリックとしては、特に限定されることはなく、炭素繊維からなる織布、編布、不織布等であればよい。例えば、フェルト、2次元クロス等を用いることができる。2次元クロスとしては、1K〜24Kの平織、朱子織、綾織クロス等を用いることができる。また、炭素繊維ファブリックの炭素繊維の体積分率は、高い方が高密度の炭素繊維強化炭素複合材料を作製しやすく、劣化に対する耐久性やガスの透過性を抑制することができる。また、炭素繊維ファブリックの厚みは3〜15mmであることが好ましく、炭素繊維強化炭素複合材料シートの厚みは0.5〜3mmであることが好ましい。
また、繊維フェルトや炭素繊維ファブリックは、長尺や長幅なものを用いて表面層付き成形断熱材を作製後に切断等してもよく、表面層付き成形断熱材のサイズにあらかじめ切断してもよい。
保護炭素層及び炭素マトリックスは、炭素繊維の表面全部、あるいは、炭素繊維の表面の一部を被覆し、あるいは炭素繊維相互間を埋めるように存在しているものである。また、保護炭素層や炭素マトリックスは炭素質であればよく、その由来となる化合物は特に限定されることはない。なかでも、繊維フェルトや繊維ファブリックに含浸可能な樹脂材料の炭素化物を用いることが好ましく、両者が同一の樹脂材料の炭素化物であることがより好ましい。このような樹脂材料としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂を用いると、積層した炭素繊維シート及び炭素繊維強化炭素複合材料シートを熱硬化により簡便かつ強固に結着させることができる。
ここで、熱硬化性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、熱硬化性樹脂は、そのまま繊維フェルトや繊維ファブリックに含ませてもよく、溶剤で希釈して繊維フェルトに含ませてもよい。溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコールを用いることができる。
本実施の形態の構成では、成形断熱材の少なくとも1つの表面には、炭素マトリックスの質量含有比率が高い炭素繊維強化炭素複合材料シートが表面層として設けられており、活性ガス源(熱源)側の表面に炭素繊維強化炭素複合材料シートを配置することにより、気流による変形や断熱性能の低下が抑制される。さらにこの層は炭素繊維の劣化や粉化をも抑制する。したがって、断熱作用が長期間にわたって得られ、成形断熱材の長寿命化が図られる。
また、炭素繊維シート及び炭素繊維強化炭素複合材料シートを積層させる方法では、シートごとの保護炭素層の質量含有比率を制御し易いとともに、工程増を招くことなく成形断熱材を作製することができるので、製造コストを低減することができる。
また、炭素繊維シートのうち、保護炭素層の質量含有比率が最も低い炭素繊維シートのかさ密度は、0.13〜0.17g/cm3とすることが好ましい。
また、保護炭素層の質量含有比率が最も高い炭素繊維シートのかさ密度は、0.18〜0.35g/cm3とする、あるいは、保護炭素層の質量含有比率が最も低い炭素繊維シートのかさ密度よりも0.02g/cm3以上大きくすることが好ましい。より好ましくは、両者をともに満たすようにする。
また、炭素繊維強化炭素複合材料シートのかさ密度は、0.30〜1.6g/cm3で且つ炭素繊維シートのいずれよりも大きいものとし、炭素繊維強化炭素複合材料シートの炭素マトリックスの体積分率は8〜40%とする。また、炭素繊維強化炭素複合材料シートの炭素繊維の体積分率を10〜60%とする。
次に、成形断熱材の製造方法について説明する。
(繊維フェルトの準備)
繊維フェルトは、公知の方法で作製したものを用いることができ、好ましくは炭素繊維が三次元的に配向しやすい方法を採用する。繊維フェルトの形成方法としては、例えば開繊機により開繊、空気圧で上昇させ降り積もらせた後、ニードルパンチを用いる方法、溶液中で撹拌・混合し、抄紙網上に堆積させる方法、カード機などのカーディング手段により繊維フェルトを紡出した後、ニードルパンチを用いる方法等が例示できる。
(プリプレグ作製ステップ)
こののち、繊維フェルトに熱硬化性樹脂溶液を噴霧し、熱硬化性樹脂溶液に浸漬し、あるいは熱硬化性樹脂溶液を塗布してプリプレグとなす。このとき、熱硬化性樹脂溶液の質量含有比率の異なる複数種類のプリプレグを作製する。
また、炭素繊維の集合体を開繊、堆積しつつ熱硬化性樹脂溶液をスプレーして、繊維フェルトの作製と同時に熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグを作製してもよい。熱硬化性樹脂は、溶媒に溶解した状態で繊維フェルトに含浸させることが好ましい。
(炭素繊維ファブリックの準備)
炭素繊維ファブリックは、公知の方法で作製したものを用いることができ、編布、織布、不織布等を用いることができる。
(炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体作製ステップ)
こののち、炭素繊維ファブリックに熱硬化性樹脂溶液を噴霧し、熱硬化性樹脂溶液に浸漬し、あるいは熱硬化性樹脂溶液を塗布して炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体となす。
この熱硬化性樹脂溶液については、特に限定されることはないが、プリプレグと炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体とにおいて同一の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
(積層ステップ)
プリプレグを複数積層し、その最表層に炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を積層して、プリプレグ積層体となす。このとき、熱硬化性樹脂溶液の質量含有比率の最も高いプリプレグが、少なくとも炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体に接するように配されるようにする。積層枚数は、作製する表面層付き成形断熱材の厚みやプリプレグの厚みに応じて適宜選択すればよい。
また、例えば円筒形の成形断熱材を作製する場合、熱硬化樹脂含有量が変化したプリプレグ及び炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を、円柱ないし円筒状のマンドレルにらせん状に巻いて積層させる構成としてもよい。
(結着ステップ)
プリプレグ積層体を目的の厚みとなるようにプレス機を用いて加圧しつつ、熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度に加熱し、所定の時間(例えば、1〜10時間)保持して、プリプレグ及び炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を結着する。
(炭素化ステップ)
結着されたプリプレグ積層体を、不活性雰囲気で1500〜2500℃で所定の時間(例えば、1〜20時間)加熱し、熱硬化性樹脂を炭素化させて、成形断熱材を得る。
ここで、特に2000℃以上の温度で熱処理する場合、保護炭素層や炭素マトリックスの黒鉛構造が発展する場合もあるが、本発明の保護炭素層や炭素マトリックスは、非晶質炭素からなる構造、黒鉛質炭素からなる構造、両者が混在した構造全てを含むものを意味する。
実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
(プリプレグの作製)
石炭由来の等方性ピッチ系炭素繊維(平均直径13μm)からなる、ニードルパンチ法により作製された繊維フェルト(厚み10mm、幅200mm、長さ200mm)を、レゾールタイプの熱硬化性フェノール樹脂溶液に浸漬して、繊維フェルトに熱硬化性フェノール樹脂が含浸されたプリプレグを作製した。このとき、浸漬時間や溶液濃度を変化させることにより、熱硬化性フェノール樹脂の質量含有比率の異なる5種類のプリプレグを作製した。
以下、2000℃で熱処理した場合に熱硬化性フェノール樹脂が炭素化してなる炭素質量が、炭素繊維100質量部に対して44質量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したプリプレグをプリプレグA、該炭素質量が炭素繊維100質量部に対して59質量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したプリプレグをプリプレグB、該炭素質量が炭素繊維100質量部に対して72質量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したプリプレグをプリプレグC、該炭素質量が炭素繊維100質量部に対して88質量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したプリプレグをプリプレグD、該炭素質量が炭素繊維100質量部に対して109量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したプリプレグをプリプレグEと称する。
(炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体の作製)
ポリアクリロニトリル系炭素繊維(平均直径7μm)からなる、ニードルパンチ法により作製されたフェルト状の炭素繊維ファブリック(厚み5mm、幅200mm、長さ200mm)を、レゾールタイプの熱硬化性フェノール樹脂溶液に浸漬して、繊維フェルトに熱硬化性フェノール樹脂が含浸された炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を2種類作製した。このとき、2000℃で熱処理した場合に熱硬化性フェノール樹脂が炭素化してなる炭素質量が、炭素繊維100質量部に対して131質量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したものを炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体A、炭素繊維100質量部に対して42質量部となるように熱硬化性フェノール樹脂を添加したものを炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Bと称する。
(実施例1)
プリプレグAを6層、プリプレグBを1層、プリプレグCを1層、プリプレグDを1層、プリプレグEを1層、炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Aを1層、この順に積層して、プリプレグ積層体を作製した。
このプリプレグ積層体をホットプレス機に設置し、加圧しつつ200℃で1時間30分保持して、熱硬化性フェノール樹脂を熱硬化させてプリプレグ相互を結着させた。このとき、プリプレグ積層体の厚みが40mmとなるように加圧した。
こののち、不活性雰囲気で2000℃で5時間熱処理して、熱硬化性フェノール樹脂を炭素化させて、実施例1に係る表面層付き成形断熱材を作製した。なお、実施例1に係る成形断熱材部分(炭素繊維強化炭素複合材料シートは含まれない)のかさ密度は、0.20g/cm3であり、炭素繊維強化炭素複合材料シートの厚みは約0.8mm、その他の炭素繊維シートの厚みは約4.0mmであった。
(実施例2)
プリプレグAを8層、プリプレグCを1層、プリプレグEを1層、炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Aを1層、この順に積層して、プリプレグ積層体を作製したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2に係る表面層付き成形断熱材の作製を行った。なお、実施例2に係る成形断熱材部分(炭素繊維強化炭素複合材料シートは含まれない)のかさ密度は、0.18g/cm3であり、炭素繊維強化炭素複合材料シートの厚みは約0.8mm、その他の炭素繊維シートの厚みは約4.0mmであった。
(実施例3)
プリプレグAを9層、プリプレグEを1層、炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Aを1層、この順に積層して、プリプレグ積層体を作製したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3に係る表面層付き成形断熱材の作製を行った。なお、実施例3に係る成形断熱材部分(炭素繊維強化炭素複合材料シートは含まれない)のかさ密度は、0.18g/cm3であり、炭素繊維強化炭素複合材料シートの厚みは約0.8mm、その他の炭素繊維シートの厚みは約4.0mmであった。
(比較例1)
プリプレグAを10層積層して、プリプレグ積層体を作製したこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1に係る成形断熱材を作製した。なお、比較例1に係る成形断熱材のかさ密度は、0.16g/cm3であった。
(比較例2)
プリプレグAを10層積層し、この上に炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Aを1層積層して、プリプレグ積層体を作製したこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例2に係る成形断熱材の作製を行った。しかし、2000℃の熱処理において炭素繊維強化炭素複合材料シートがプリプレグAの積層体の焼成物からはがれおち、表面層付きの成形断熱材を得ることはできなかった。
(比較例3)
プリプレグAを10層積層し、この上に炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Bを1層積層して、プリプレグ積層体を作製したこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例3に係る成形断熱材の作製を行った。しかし、2000℃の熱処理において炭素繊維強化炭素複合材料シートがプリプレグBの積層体の焼成物からはがれおち、表面層付きの成形断熱材を得ることはできなかった。
また、上記プリプレグA〜E及び炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体A〜Bを、上記の実施例1と同じ条件でプレス及び炭素化を行った場合の、それぞれのシートのかさ密度、炭素繊維及び保護炭素層ないし炭素マトリックス(熱硬化性フェノール樹脂の炭素化物)の体積分率は、それぞれ下記表1に示すとおりである。
ここで、炭素繊維および保護炭素層ないし炭素マトリックスの体積分率は、以下のように求めた。炭素繊維および保護炭素層ないし炭素マトリックスの見掛け密度をn−ブタノール浸漬法で求めた。ここでいう見掛け密度とは、n−ブタノールが炭素繊維又は保護炭素層ないし炭素マトリックスに浸透する開気孔を除いた密度をいう。保護炭素層ないし炭素マトリックスの体積は、炭素化前の熱硬化性樹脂の質量に熱処理温度における炭素化収率を掛け、見掛け密度を除して求めた。同様に、炭素繊維の体積は、炭素繊維の質量(熱硬化性樹脂の含浸前の炭素繊維フェルトの質量)に見掛け密度を除して求めた。各々の体積分率は、各シート中の炭素繊維等の体積を各シートの体積で除して求めた。
上記実施例1に係る表面層付き成形断熱材及び比較例1に係る表面層付き成形断熱材について、以下の条件で3点曲げ強さ、層間剥離強さ、ガス透過率、酸化消耗率を測定した。また、上記実施例2、3に係る表面層付き成形断熱材について、以下の条件で3点曲げ強さ、層間剥離強さ、ガス透過率を測定した。この結果を下記表2に示す。
(3点曲げ試験)
上記の(表面層付き)成形断熱材を長さ20cm、幅4cm、厚さ約4cmの大きさに切断して試験片とした。この試験片をエー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC-1210)を用いて、支点間距離15cm、クロスヘッドスピード2mm/minで、3点曲げ強さを測定した。このとき、厚さ方向は、炭素繊維シート及び炭素繊維強化炭素複合材料シートの積層方向とし、炭素繊維強化炭素複合材層を上面にくるよう設置した。この結果から、次の式(1)に従って曲げ強さFsを算出した。
s=(3PfL)/(2Wh2) ・・・(1)
ここで、Pfは試験片が破断するまでの最大荷重、Lは支点間距離、Wは試験片の幅、hは試験片の厚さである。
(層間剥離試験)
上記の(表面層付き)成形断熱材を長さ4cm、幅4cm、厚さ約4cmの大きさに切断して試験片とした。2液性接着剤を用いて、この試験片の炭素繊維シート及び炭素繊維強化炭素複合材料シートの積層方向(厚さ方向)上下面に剥離試験用治具に接着し、エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC-1210)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/minで厚さ方向に引っ張ることにより、層間剥離強さを測定した。この結果から、次の式(2)に従って剥離強さIsを算出した。
s=Pi/S ・・・(2)
ここで、Piは試験片が破断するまでの最大荷重、Sは(試験片の長さ)×(試験片の幅)である。
(ガス透過試験)
ガス透過試験装置100は、図2に示すように、平板状の台42上にキャップ状の容器41が載置されており、これにより一次側空間20が形成されている。一次側空間20には透過セル21が備えられている。また、台42の中央部には貫通孔が設けられ、ここに配管35が接続されている。この台42よりも下方の空間が、二次側空間30である。また、ガス透過試験装置100は、一次側空間20及び二次側空間30の圧力を測定する圧力計31を備えている。
また、一次側空間20内部にガスを供給する吸気管23が設けられるとともに、ロータリー式真空ポンプ34にそれぞれ接続され、一次側空間20又は二次側空間内部のガスを排気する排気管25,33が設けられている。これらの管にはそれぞれバルブ22,24,32が設けられている。
上記の(表面層付き)成形断熱材を長さ6cm、幅6cm、厚さ約2cmの大きさに切断して試験片10とし、ガス透過試験装置100の透過セル21内に設置した。この試験片10は、ガス漏れが発生しないよう周囲がシリコーンゴム11で目止めされており、且つ上下面にはシリコーンゴム製のOリング12が設置されている。これにより、一次側空間20内部のガスは、透過セル21内部の試験片10を経由しない限り、二次側空間30に移動することはできないようになっている。
測定は次のようにして行った。まず、バルブ24,32を開け、真空ポンプ34により、一次側空間20及び二次側空間30が一定の真空値になるまで減圧する。次いで、バルブ24,32を閉じ、真空ポンプ34の作動を停止する。そして、バルブ22を開けて一次側空間20に窒素ガスを一定のガス圧で供給する。窒素ガスは、一次側空間20から試験片10を透過して二次側空間30へと移動し、これにより、二次側空間30の圧力が上昇し始める。その圧力上昇率を圧力計31を用いて測定した。この圧力上昇率から次の式(3)、(4)を用いてガス透過率(K)を算出した。
K=(Qh)/(ΔPA)・・・(3)
Q={(p2−p1)V0}/t・・・(4)
ここで、Kは窒素ガス透過率、Qは通気量、ΔPは一次側と二次側の圧力差、Aは透過面積、hは試験片の厚さ、p1は二次側の初期圧力、p2は二次側の最終圧力、V0は二次側の容積、tは測定時間である。
このとき、次の式(5)式が成り立つような平均圧力Pm(一次側空間と二次側空間の圧力の平均値)の範囲で測定するため、平均圧力Pmが約50〜110kPaとなる範囲で測定を行った。表2に示しているガス透過率は平均圧力Pmに対してガス透過率Kを3点以上プロットした際の最小二乗法による近似直線において、Pm=100kPaのときの値を示している。
K=aPm+b ・・・(5)
ここで、a、bは定数である。
(酸化消耗試験)
上記の(表面層付き)成形断熱材を5cm×5cm×厚さ約4cmの大きさに切断して試験片とし、空気雰囲気中550℃で8時間保持した際の重量変化を測定し、(6)式に示すように初期重量との差分から算出した。
酸化消耗率={(試験前質量−試験後質量)/試験前質量}×100 ・・・(6)
この結果から、実施例1、比較例1を比較すると、層間剥離強さはほぼ同じでありながら、実施例1では3点曲げ強さが約1.5倍高く、ガス透過率が約3倍透過し難く、酸化消耗率が約20%低減できることが分かる。また、実施例1〜3は、層間剥離強さ、3点曲げ強さ、ガス透過率ほぼ同等であることが分かる。
なお、3点曲げ試験後において、実施例1、比較例1ともに、層間の剥離は確認されなかった。また、層間剥離試験において、実施例1ではプリプレグAとプリプレグBとの界面、実施例2ではプリプレグAとプリプレグCとの界面、実施例3ではプリプレグAとプリプレグEとの界面に相当する部分で、それぞれ剥離が確認された。つまり、いずれの実施例も、成形断熱材部分(炭素繊維シート)と表面層である炭素繊維強化炭素複合材料シートとの間での剥離はなく、成形断熱材に表面層が良好に接着されていることが分かる。
以上のことから、本発明の製造方法によると、プリプレグ及び炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を積層・熱硬化・炭素化という簡便な手法で、ガス透過率を低め、強度を増すことのできる炭素繊維強化炭素複合材料シートからなる表面層を成形断熱材に良好に接合できることが分かる。
なお、比較例2、3での層間の剥離は、次の理由によると考えられる。フェノール樹脂が炭素化する際に体積収縮が起こるが、比較例2では炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体AとプリプレグAとのフェノール樹脂の含有量の差が大きい。このため、両者に係る体積収縮の応力の差が大きく、これにより両者が剥離する。
また、比較例3では、炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体BとプリプレグAとのフェノール樹脂の含有量の差は比較的小さいものの、炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体Bに含まれるフェノール樹脂量が炭素化後の体積分率で6.4%と少なく、接着力が不十分となり、炭素化工程において作用する熱応力によって、炭素繊維シートと炭素繊維強化炭素複合材料シートとがはがれてしまうためと考えられる。このため、炭素繊維強化炭素複合材料シートの炭素マトリックスの体積分率は、8%以上とする。
また、実施例1〜3の結果から、成形断熱材の炭素繊維強化炭素複合材料と接する表面に、保護炭素層の質量含有比率が最も高く、且つそのかさ密度が0.18g/cm3以上である炭素繊維シート(プリプレグC〜Eに由来する炭素繊維シート)が配置されていればよく、その他の部分における炭素繊維シートの種類や数については特に限定する必要がないことが分かる。
図1に、実施例1に係る表面層付き成形断熱材の表面層近傍の断面顕微鏡写真を示す。この写真からわかるように、繊維間の空隙が少ないシート1と、繊維間の空隙が相対的に多いシート2とが、剥離することなく接合されていることが分かる。この繊維間の空隙が少ないシート1が炭素繊維強化炭素複合材料シートであり、繊維間の空隙が相対的に多いシート2が成形断熱材を構成する炭素繊維シートである。
なお、上記実施例では炭素繊維シートに用いる炭素繊維は平均直径13μm、炭素繊維強化炭素複合材料シートに用いる炭素繊維は平均直径7μmとしたが、この太さに限定されることはない。ただし、繊維の直径は、製造される成形断熱材の断熱性能やかさ密度等に影響を及ぼすので、目的とする断熱性能・かさ密度に応じて直径等を選択すればよい。
また、上記実施例では同じ厚みの炭素繊維シートを10層積層したが、この積層枚数や厚みに限定されることはなく、目的とする断熱性能・かさ密度・厚み等に応じて、異なる厚みの炭素繊維シートを積層したり、積層枚数を変更したりすることができる。
上記で説明したように、本発明によると、コスト上昇を伴うことなく、ガスによる変形や断熱性能の低下を抑制し得た表面層付き成形断熱材を実現できるので、その産業上の利用可能性は大きい。
1 炭素繊維強化炭素複合材料シート(表面層)
2 成形断熱材
10 試験片
11 目止め
12 Oリング
20 一次側空間
21 透過セル
22 バルブ
23 吸気管
24 バルブ
25 排気管
30 二次側空間
31 圧力計
32 バルブ
33 排気管
34 ロータリー式真空ポンプ
35 配管
41 容器
42 台
100 ガス透過試験装置

Claims (6)

  1. 炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと前記繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とを有する炭素繊維シートのみからなり、前記炭素繊維シートを複数積層してなる成形断熱材と、
    前記成形断熱材の最表層となる炭素繊維シートに接して積層された、炭素繊維からなる炭素繊維ファブリックと前記炭素繊維ファブリックの炭素繊維相互間に充填された炭素マトリックスと、のみからなる炭素繊維強化炭素複合材料シートと、
    により構成された表面層付き成形断熱材であって、
    前記成形断熱材は、保護炭素層の質量含有比率が異なる2種類以上の炭素繊維シートが積層されてなり、
    炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する炭素繊維シートは、そのかさ密度が0.18〜0.35g/cm3で且つ保護炭素層の質量含有比率が最も高く、
    前記炭素繊維強化炭素複合材料シートのかさ密度は、炭素繊維シートのいずれよりも大きく且つ0.3〜1.6g/cm3であり、
    前記炭素繊維強化炭素複合材料シートの前記炭素マトリックスの体積分率が8〜40%である、
    表面層付き成形断熱材。
  2. 前記炭素繊維強化炭素複合材料シートの厚みは、0.5〜3mmである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の表面層付き成形断熱材。
  3. 前記炭素繊維強化炭素複合材料シートを構成する炭素繊維が、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維であり、
    前記炭素繊維強化炭素複合材料シートにおける炭素繊維の体積分率が、10〜60%である、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面層付き成形断熱材。
  4. 前記成形断熱材を構成する炭素繊維シートのうち、前記保護炭素層の質量含有比率の最も低い炭素繊維シートのかさ密度が0.13〜0.16g/cm3である、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の表面層付き成形断熱材。
  5. 前記成形断熱材を構成する炭素繊維シートのうち、前記保護炭素層の質量含有比率の最も低い炭素繊維シートのかさ密度が、前記保護炭素層の質量含有比率の最も高い炭素繊維シートのかさ密度よりも0.02g/cm3以上小さい、
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の表面層付き成形断熱材。
  6. 請求項1に記載の表面層付き成形断熱材を製造する方法であって、
    炭素繊維を交絡させた炭素繊維フェルトに、熱硬化前の熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂溶液を含浸させてプリプレグを作製するプリプレグ作製ステップと、
    炭素繊維ファブリックに、熱硬化前の熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂溶液を含浸させて炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を作製する前駆体作製ステップと、
    前記プリプレグを複数積層し、その最表層に前記炭素繊維強化炭素複合材料シート前駆体を積層してプリプレグ積層体となす積層ステップと、
    前記プリプレグ積層体を加圧しつつ加熱して、熱硬化前の前記熱硬化性樹脂を熱硬化させて、前記プリプレグ及び前記炭素繊維強化炭素複合材料シートを結着させる結着ステップと、
    結着されたプリプレグ積層体を不活性ガス雰囲気で熱処理して、熱硬化後の前記熱硬化性樹脂を炭素化させる炭素化ステップと、を有し、
    前記積層ステップは、前記炭素繊維強化炭素複合材料シートに接する面に、前記熱硬化性樹脂の質量含有比率が最も高いプリプレグが配されるように積層するステップである、
    ことを特徴とする表面層付き成形断熱材の製造方法。
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