以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
<全体構成例>
以下、搬送装置が有するヘッドユニットが液体を吐出する液体吐出ヘッドユニットである場合を例に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置の一例を示す概略図である。例えば、液体を吐出する装置は、図示するような画像形成装置である。このような画像形成装置では、吐出される液体は、水性又は油性であるインク等の記録液である。以下、液体を吐出する装置が画像形成装置110である例で説明する。
被搬送物は、例えば記録媒体等である。図示する例では、画像形成装置110は、ローラ130等によって搬送される記録媒体の例であるウェブ120に対して、液体を吐出して画像形成を行う。また、ウェブ120は、いわゆる連続用紙印刷媒体等である。すなわち、ウェブ120は、巻き取りが可能なロール状のシート等である。このように、画像形成装置110は、いわゆるプロダクション・プリンタである。以下の説明では、ローラ130が、ウェブ120の張力を調整等し、図示する方向(以下「搬送方向10」という。)にウェブ120が搬送される例で説明する。また、この例では、画像形成装置110は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の4色のそれぞれのインクを吐出してウェブ120の所定の箇所に画像を形成するインクジェットプリンタである。
図2は、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置の全体構成例を示す概略図である。図示するように、画像形成装置110は、4色のそれぞれのインクを吐出するため、4つの液体吐出ヘッドユニットを有する。
各液体吐出ヘッドユニットは、搬送方向10に搬送されるウェブ120に対して、各色のそれぞれの液体を吐出する。また、ウェブ120は、2対のニップローラ(nip roller)及びローラ230等で搬送されるとする。以下、この2対のニップローラのうち、各液体吐出ヘッドユニットより上流側に設置されるニップローラを「第1ニップローラNR1」という。一方で、第1ニップローラNR1及び各液体吐出ヘッドユニットより下流側に設置されるニップローラを「第2ニップローラNR2」という。なお、各ニップローラは、図示するように、ウェブ120等の被搬送物を挟んで回転する。このように、各ニップローラ及びローラ230は、ウェブ120等を所定の方向へ搬送する機構等である。
また、ウェブ120の記録媒体は、長尺であるのが望ましい。具体的には、記録媒体の長さは、第1ニップローラNR1と、第2ニップローラNR2との距離より長いのが望ましい。さらに、記録媒体は、ウェブに限られない。すなわち、記録媒体は、折り畳まれて格納されるシート、いわゆる「Z紙」等でもよい。
以下、図示する全体構成例では、各液体吐出ヘッドユニットは、上流側から下流側に向かって、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の順に設置されるとする。すなわち、最も上流側に設置される液体吐出ヘッドユニット(以下「ブラック液体吐出ヘッドユニット210K」という。)をブラック(K)用とする。このブラック液体吐出ヘッドユニット210Kの次に設置される液体吐出ヘッドユニット(以下「シアン液体吐出ヘッドユニット210C」という。)をシアン(C)用とする。さらに、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cの次に設置される液体吐出ヘッドユニット(以下「マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210M」という。)をマゼンタ(M)用とする。続いて、最も下流側に設置される液体吐出ヘッドユニット(以下「イエロー液体吐出ヘッドユニット210Y」という。)をイエロー(Y)用とする。
各液体吐出ヘッドユニットは、画像データ等に基づいて、ウェブ120の所定の箇所に、各色のインクをそれぞれ吐出する。このインクを吐出する位置(以下「着弾位置」という。)は、液体吐出ヘッドユニットから吐出される液体が記録媒体に着弾する位置にほぼ等しい、すなわち、着弾位置は、液体吐出ヘッドユニットの直下等である。以下、液体吐出ヘッドユニットによって処理が行われる処理位置を着弾位置とする例で説明する。
この例では、ブラックのインクは、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kの着弾位置(以下「ブラック着弾位置PK」という。)に吐出される。同様に、シアンのインクは、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cの着弾位置(以下「シアン着弾位置PC」という。)に吐出される。さらに、マゼンタのインクは、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210Mの着弾位置(以下「マゼンタ着弾位置PM」という。)に吐出される。また、イエローのインクは、イエロー液体吐出ヘッドユニット210Yの着弾位置(以下「イエロー着弾位置PY」という。)に吐出される。
なお、各液体吐出ヘッドユニットがインクを吐出するそれぞれのタイミングは、各液体吐出ヘッドユニットに接続されるコントローラ520が制御する。また、コントローラ520は、検出結果等に基づいて、タイミングを制御する。
また、液体吐出ヘッドユニットごとに、複数のローラがそれぞれ設置される。図示するように、複数のローラは、例えば、各液体吐出ヘッドユニットを挟んで、上流側と、下流側とにそれぞれ設置される。図示する例では、液体吐出ヘッドユニットごとに、ローラ(以下「第1ローラ」という。)が、各液体吐出ヘッドユニットより上流側にそれぞれ設置される。また、第1ローラとは別にローラ(以下「第2ローラ」という。)が、各液体吐出ヘッドユニットより下流側にそれぞれ設置される。このように、第1ローラ及び第2ローラがそれぞれ設置されると、各着弾位置において、いわゆる「ばたつき」が少なくできる。なお、第1ローラ及び第2ローラは、それぞれ従動ローラである。また、第1ローラ及び第2ローラは、モータ等により回転駆動されるローラであってもよい。
なお、第1の支持部材の例である第1ローラ及び第2の支持部材の例である第2ローラは、従動ローラ等の回転体でなくてもよい。すなわち、第1ローラ及び第2ローラは、被搬送物を支える支持部材であればよい。例えば、第1の支持部材及び第2の支持部材は、断面円形状のパイプ又はシャフト等でもよい。他にも、第1の支持部材及び第2の支持部材は、被搬送物と接する部位が円弧状をした湾曲板等であってもよい。以下、第1の支持部材が第1ローラであり、かつ、第2の支持部材が第2ローラである例で説明する。
具体的には、ウェブ120の所定の箇所に、ブラックのインクを吐出させるため、ブラック着弾位置PKへウェブ120を搬送させるブラック用第1ローラCR1Kが設置される。これに対して、ブラック着弾位置PKから下流側へウェブ120を搬送させるブラック用第2ローラCR2Kが設置される。同様に、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cに対して、シアン用第1ローラCR1C及びシアン用第2ローラCR2Cがそれぞれ設置される。さらに、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210Mに対して、マゼンタ用第1ローラCR1M及びマゼンタ用第2ローラCR2Mがそれぞれ設置される。また、イエロー液体吐出ヘッドユニット210Yに対して、イエロー用第1ローラCR1Y及びイエロー用第2ローラCR2Yがそれぞれ設置される。
液体吐出ヘッドユニットの外形形状の一例を、図3を用いて説明する。まず、図3(a)は、本発明の実施形態に係る画像形成装置110の4つの液体吐出ヘッドユニット210K〜210Yの一例を示す概略平面図である。
図3(a)に示すように、液体吐出ヘッドユニットは、本実施形態では、ライン型のヘッドユニットである。すなわち、画像形成装置110は、記録媒体の搬送方向10の上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に対応する4つの液体吐出ヘッドユニット210K、210C、210M及び210Yを配置する。
また、ブラック(K)の液体吐出ヘッドユニット210Kは、本実施形態では、ウェブ120の搬送方向10と直交する方向に4つのヘッド210K−1、210K−2、210K−3及び210K−4を千鳥状に配置する。これにより、画像形成装置110は、ウェブ120の画像形成領域(印刷領域)の幅方向(搬送方向と直交する方向)の全域に画像を形成することができる。なお、他の液体吐出ヘッドユニット210C、210M及び210Yの構成は、ブラック(K)の液体吐出ヘッドユニット210Kの構成と同様のため、説明を省略する。
なお、この例では、4つのヘッドで液体吐出ヘッドユニットを構成する例を説明したが、単一のヘッドで、液体吐出ヘッドユニットは、構成されても良い。
<検出部の例>
液体吐出ヘッドユニットごとに、検出部の例である記録媒体の位置、移動速度、移動量又はこれらの組み合わせを検出するセンサがそれぞれ設置される。このセンサには、レーザ又は赤外線等の光を利用する光学センサ等が用いられるのが望ましい。なお、光学センサは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等でもよい。さらに、光学センサは、グローバルシャッタであるのが望ましい。グローバルシャッタであると、移動速度が速くても、光学センサは、ローリングシャッタ等と比較して、シャッタタイミングのズレによって発生する、いわゆる画像ズレを少なくできる。また、センサは、例えば、以下に説明する構成が望ましい。
図4は、本発明の一実施形態に係る検出部を実現するハードウェア構成例を示すブロック図である。例えば、検出部は、図示するような検出装置50、制御装置52、記憶装置53及び演算装置54等のハードウェアによって実現される。
まず、検出装置50は、例えば、以下のような装置である。
図5は、本発明の一実施形態に係る検出装置の一例を示す外観図である。
図示する検出装置によって検出を行う場合は、ウェブ等の被搬送物に対して光源から光を当てると形成されるスペックルパターンを撮像する構成である。具体的には、検出装置は、まず、半導体レーザ光源(LD)及びコリメート光学系(CL)等の光学系を有する。また、検出装置は、スペックルパターン等が写る画像を撮像するため、CMOSイメージセンサと、CMOSイメージセンサにスペックルパターンを集光結像するためのテレセントリック撮像光学系(OL)とを有する。
図示する構成の例では、CMOSイメージセンサが、例えば、時刻「TM1」と、時刻「TM2」との各々において、複数回、スペックルパターンが写る画像がそれぞれ撮像される。そして、時刻「TM1」で撮像される画像と、時刻「TM2」で撮像される画像とに基づいて、FPGA(Field−Programmable Gate Array)回路等の演算装置が、相互相関演算等の処理を行う。次に、相関演算等によって算出される相関ピーク位置の移動に基づいて、検出装置等は、時刻「TM1」から時刻「TM2」までに、被搬送物が移動した移動量等を出力する。なお、図示する例は、検出装置のサイズは、幅W×奥行きD×高さHは、15×60×32[mm]とする例である。なお、相関演算の詳細は、後述する。
なお、CMOSイメージセンサは、撮像部を実現するハードウェアの一例であり、FPGA回路は、演算装置の一例である。
図4に戻り、制御装置52は、検出装置50等を制御する。具体的には、制御装置52は、例えば、トリガ信号を検出装置50に対して出力して、CMOSイメージセンサがシャッタを切るタイミングを制御する。また、制御装置52は、検出装置50から、2次元画像を取得できるように制御する。そして、制御装置52は、検出装置50が撮像し、生成される2次元画像を記憶装置53等に送る。
記憶装置53は、いわゆるメモリ等である。なお、制御装置52等から、送られる2次元画像を分割して、異なる記憶領域に記憶できる構成であるのが望ましい。
演算装置54は、マイクロコンピュータ等である。すなわち、演算装置54は、記憶装置53に記憶される画像のデータ等を用いて各種処理を実現するための演算を行う。
制御装置52及び演算装置54は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又は電子回路等である。なお、制御装置52、記憶装置53及び演算装置54は、異なる装置でなくともよい。例えば、制御装置52及び演算装置54は、1つのCPU等であってもよい。
<検出部の機能構成例>
図6は、本発明の一実施形態に係る検出部を用いる機能構成の一例を示す機能ブロック図である。以下、図示するように、ヘッドユニットごとに設置される検出部のうち、ブラック液体吐出ヘッドユニット210K及びシアン液体吐出ヘッドユニット210Cの組み合わせを例に説明する。また、図示するように、ブラック液体吐出ヘッドユニット210K用の検出部52Aが「A位置」に係る検出結果を出力し、シアン液体吐出ヘッドユニット210C用の検出部52Bが「B位置」に係る検出結果を出力する例で説明する。まず、ブラック液体吐出ヘッドユニット210K用の検出部52Aは、例えば、撮像部16A、撮像制御部14A及び画像記憶部15A等で構成される。なお、この例では、シアン液体吐出ヘッドユニット210C用の検出部52Bは、例えば、検出部52Aと同様の構成であり、撮像部16B、撮像制御部14B及び画像記憶部15B等で構成される。以下、検出部52Aを例に説明する。
撮像部16Aは、図示するように、搬送方向10に搬送されるウェブ120を撮像する。なお、撮像部16Aは、例えば、検出装置50等(図4等)によって実現される。
撮像制御部14Aは、シャッタ制御部141A、画像取込部142Aを有する。なお、撮像制御部14Aは、例えば、制御装置52等(図4)によって実現される。
画像取込部142Aは、撮像部16Aによって撮像される画像を取得する。
シャッタ制御部141Aは、撮像部16Aが撮像するタイミングを制御する。
画像記憶部15Aは、撮像制御部14Aが取り込んだ画像を記憶する。なお、画像記憶部15Aは、例えば、記憶装置53等(図4)によって実現される。
計算部53Fは、画像記憶部15A及び15Bに記憶されるそれぞれの画像に基づいて、ウェブ120が有するパターンの位置、ウェブ120が搬送される移動速度及びウェブ120が搬送される移動量が算出できる。また、計算部53Fは、シャッタ制御部141Aに、シャッタタイミングを示す時差Δtのデータを出力する。すなわち、計算部53Fは、「A位置」を示す画像と、「B位置」を示す画像とが時差Δtで、それぞれ撮像されるように、シャッタタイミングをシャッタ制御部141Aに示す。また、計算部53Fは、算出される移動速度となるようにウェブ120を搬送させるモータ等を制御してもよい。なお、計算部53Fは、例えば、コントローラ520等(図2)によって実現される。
ウェブ120は、表面又は内部に散乱性を有する部材である。そのため、ウェブ120にレーザ光が照射されると、反射光が拡散反射する。この拡散反射によって、ウェブ120には、パターンが形成される。すなわち、パターンは、「スペックル」と呼ばれる斑点、いわゆるスペックルパターンである。そのため、ウェブ120を撮像すると、スペックルパターンを示す画像が得られる。この画像からスペックルパターンのある位置がわかるため、ウェブ120の所定の位置がどこにあるかが検出できる。なお、このスペックルパターンは、ウェブ120の表面又は内部に形成される凹凸形状によって、照射されるレーザ光が干渉するため、生成される。
また、光源は、レーザ光を用いる装置に限られない。例えば、光源は、LED(Light Emitting Diode)又は有機EL(Electro−Luminescence)等でもよい。そして、光源の種類によって、パターンは、スペックルパターンでなくともよい。以下、パターンがスペックルパターンである例で説明する。
したがって、ウェブ120が搬送されると、ウェブ120が有するスペックルパターンも一緒に搬送される。そのため、同一のスペックルパターンを異なる時間でそれぞれ検出すると、搬送方向への移動量が求められる。すなわち、同一のスペックルパターンを検出してパターンの移動量が求まると、計算部53Fは、ウェブ120の搬送方向における移動量を求めることができる。この求まる移動量を単位時間あたりに換算すると、計算部53Fは、搬送方向におけるウェブ120が搬送される移動速度を求めることができる。
図示するように、撮像部が搬送方向10において一定の間隔で設置される。そして、各撮像部によって、それぞれの位置で、ウェブ120が撮像される。
時差Δtとすると、時差Δtの間隔で、シャッタ制御部141Aは、撮像部16Aにウェブ120を撮像させる。この撮像によって生成される画像が示すスペックルパターンに基づいて、計算部53Fは、ウェブ120の移動量を求める。具体的には、移動速度V[mm/s]であって、搬送方向10において設置される間隔である相対距離L[mm]とすると、時差Δtは、下記(1)式のように示せる。
Δt=L/V (1)
上記(1)式において、相対距離L[mm]は、「A位置」及び「B位置」の間隔であるため、あらかじめ求めることができる。したがって、時差Δtが定まると、上記(1)式に基づいて、計算部53Fは、移動速度V[mm/s]を求めることができる。このように、スペックルパターンに基づいて、画像形成装置は、精度良く、搬送方向における位置、移動量及び移動速度又はこれらの組み合わせを求めることができる。なお、画像形成装置は、搬送方向における位置、移動量及び移動速度のうち、いずれか複数を組み合わせて出力してもよい。
なお、センサは、搬送方向に対して直交する方向の位置等を検出してもよい。すなわち、センサは、搬送方向及び搬送方向に対して直交する方向のそれぞれの位置を検出するのに兼用されてもよい。このように兼用されると、それぞれの方向についてコストが少なくできる。また、センサの数が少なくできるので、省スペースとすることもできる。
さらに、計算部53Fは、検出部52A及び52Bによって撮像されるそれぞれの画像を示す画像データD1(n)及びD2(n)に対して相互相関演算を行う。以下、相互相関演算によって生成される画像を「相関画像」という。例えば、計算部53Fは、相関画像に基づいて、ずれ量ΔD(n)を計算する。
例えば、相互相関演算は、下記(2)式で示す計算である。
D1★D2*=F−1[F[D1]・F[D2]*] (2)
なお、上記(2)式において、画像データD1(n)、すなわち、「A位置」で撮像される画像を示す画像データを「D1」とする。同様に、上記(2)式において、画像データD2(n)、すなわち、「B位置」で撮像される画像を示す画像データを「D2」とする。さらに、上記(2)式において、フーリエ変換を「F[]」で示し、逆フーリエ変換を「F−1[]」で示す。さらにまた、上記(2)式において、複素共役を「*」で示し、相互相関演算を「★」で示す。
上記(2)式に示すように、画像データD1及びD2に対して、相互相関演算「D1★D2」を行うと、相関画像を示す画像データが、得られる。なお、画像データD1及びD2が2次元画像データであると、相関画像を示す画像データは、2次元画像データとなる。また、画像データD1及びD2が1次元画像データであると、相関画像を示す画像データは、1次元画像データとなる。
なお、相関画像において、例えば、ブロードな輝度分布が問題となる場合には、位相限定相関法が用いられてもよい。位相限定相関法は、例えば、下記(3)式で示す計算である。
D1★D2*=F−1[P[F[D1]]・P[F[D2]*]] (3)
なお、上記(3)式において、「P[]」は、複素振幅において位相のみを取り出すことを示す。また、振幅は、すべて「1」とする。
このようにすると、計算部53Fは、ブロードな輝度分布であっても、相関画像に基づいて、ずれ量ΔD(n)を計算できる。
相関画像は、画像データD1及びD2の相関関係を示す。具体的には、画像データD1及びD2の一致度が高いほど、相関画像の中心に近い位置には、急峻なピーク、いわゆる相関ピークとなる輝度が出力される。そして、画像データD1及びD2が一致すると、相関画像の中心及びピークの位置は、重なる。
このような計算によって計算されるタイミングに基づいて、ブラック液体吐出ヘッドユニット210K及びシアン液体吐出ヘッドユニット210Cは、それぞれ液体を吐出する。なお、液体を吐出するタイミングは、コントローラ520が出力するブラック液体吐出ヘッドユニット210K用の第1信号SIG1及びシアン液体吐出ヘッドユニット210C用の第2信号SIG2等によって制御される。
図2に戻り、以下の説明では、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kに対して設置される検出装置等の装置を「ブラック用センサSENK」という。同様に、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cに対して設置される検出装置等の装置を「シアン用センサSENC」という。さらに、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210Mに対して設置される検出装置等の装置を「マゼンタ用センサSENM」という。さらにまた、イエロー液体吐出ヘッドユニット210Yに対して設置される検出装置等の装置を「イエロー用センサSENY」という。また、以下の説明では、ブラック用センサSENK、シアン用センサSENC、マゼンタ用センサSENM及びイエロー用センサSENYを総じて、単に「センサ」という場合がある。
また、以下の説明において、「センサが設置される位置」は、検出等が行われる位置を指す。したがって、「センサが設置される位置」に、検出装置等の装置がすべて設置される必要はなく、ケーブル等で接続され、センサ以外の装置は、他の位置に設置されてもよい。なお、図2に図示するブラック用センサSENK、シアン用センサSENC、マゼンタ用センサSENM及びイエロー用センサSENYは、センサが設置される位置の例を示す。
このように、センサが設置される位置は、各着弾位置に近い位置であるのが望ましい。各着弾位置に対して近い位置にセンサが設置されると、各着弾位置と、センサとの距離が短くなる。そして、各着弾位置と、センサとの距離が短くなると、検出における誤差が少なくできる。そのため、画像形成装置は、センサによって、記録媒体の位置を精度良く検出できる。
各着弾位置に近い位置は、具体的には、各第1ローラ及び各第2ローラの間である。すなわち、図示する例では、ブラック用センサSENKが設置される位置は、図示するように、ブラック用ローラ間INTK1であるのが望ましい。同様に、シアン用センサSENCが設置される位置は、図示するように、シアン用ローラ間INTC1であるのが望ましい。さらに、マゼンタ用センサSENMが設置される位置は、図示するように、マゼンタ用ローラ間INTM1であるのが望ましい。さらにまた、イエロー用センサSENYが設置される位置は、図示するように、イエロー用ローラ間INTY1であるのが望ましい。
このように、各ローラ間に、センサが設置されると、センサは、各着弾位置に近い位置で記録媒体の位置等を検出できる。ローラ間は、移動速度が比較的安定している場合が多い。そのため、画像形成装置は、記録媒体の位置を精度良く検出できる。
センサが設置される位置は、各ローラ間において、着弾位置より第1ローラに近い位置であるのが望ましい。すなわち、センサが設置される位置は、各着弾位置より上流側であるのが望ましい。
具体的には、ブラック用センサSENKが設置される位置は、ブラック着弾位置PKから上流側に向かってブラック用第1ローラCR1Kが設置される位置までの間(以下「ブラック用上流区間INTK2」という。)であるのが望ましい。同様に、シアン用センサSENCが設置される位置は、シアン着弾位置PCから上流側に向かってシアン用第1ローラCR1Cが設置される位置までの間(以下「シアン用上流区間INTC2」という。)であるのが望ましい。さらに、マゼンタ用センサSENMが設置される位置は、マゼンタ着弾位置PMから上流側に向かってマゼンタ用第1ローラCR1Mが設置される位置までの間(以下「マゼンタ用上流区間INTM2」という。)であるのが望ましい。さらにまた、イエロー用センサSENYが設置される位置は、イエロー着弾位置PYから上流側に向かってイエロー用第1ローラCR1Yが設置される位置までの間(以下「イエロー用上流区間INTY2」という。)であるのが望ましい。
ブラック用上流区間INTK2、シアン用上流区間INTC2、マゼンタ用上流区間INTM2及びイエロー用上流区間INTY2にセンサが設置されると、画像形成装置は、記録媒体の位置を精度良く検出できる。
このような位置にセンサが設置されると、センサが各着弾位置より上流側に設置される。そのため、画像形成装置は、まず、上流側でセンサによって直交方向、搬送方向又は両方向において記録媒体の位置を精度良く検出できる。ゆえに、画像形成装置は、各液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出するタイミング、ヘッドユニットの移動する量又は両方を計算できる。すなわち、上流側で位置が検出された後にウェブ120が着弾位置へ搬送されると、その間に吐出タイミングの算出又はヘッドユニットの移動等が行われるため、画像形成装置は、精度良く着弾位置を変更することができる。
なお、各液体吐出ヘッドユニットの直下をセンサが設置される位置とすると、制御動作分の遅れ等によって、色ズレが生じてしまう場合がある。したがって、センサが設置される位置は、各着弾位置より上流側であると、画像形成装置は、色ズレを少なくし、画質を向上できる。また、各着弾位置付近等を、センサ等を設置する位置とするのは、制約される場合がある。そのため、センサが設置される位置は、各着弾位置より各第1ローラに近い位置であるのが望ましい。
また、センサの位置は、例えば、各液体吐出ヘッドユニットのそれぞれの直下等でもよい。以下の説明では、センサが各液体吐出ヘッドユニットの直下にある例を図示して説明する。この例のように、センサが直下にあると、直下における正確な移動量が、センサによって検出できる。したがって、制御動作等が速く行えるのであれば、センサは、各液体吐出ヘッドユニットの直下により近い位置にあるのが望ましい。一方で、センサは、各液体吐出ヘッドユニットの直下になくてもよく、直下にない場合であっても、同様の計算が行われる。
また、誤差が許容できるのであれば、センサの位置は、各液体吐出ヘッドユニットのそれぞれの直下又は各第1ローラ及び各第2ローラの間であって、各液体吐出ヘッドユニットの直下より下流となる位置等でもよい。
また、画像形成装置は、エンコーダ等の計測部を更に備えてもよい。以下、計測部がエンコーダによって実現される例で説明する。具体的には、エンコーダは、例えば、ローラ230が有する回転軸に対して設置される。このようにすると、ローラ230の回転量に基づいて搬送方向における移動量を計測できる。この計測結果をセンサによる検出結果と併せて利用すると、より精度良く、画像形成装置は、ウェブ120に対して液体を吐出できる。
<制御部の例>
制御部の例であるコントローラ520(図2)は、例えば、以下に説明する構成である。
図7は、本発明の一実施形態に係る制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。例えば、コントローラ520は、情報処理装置等である上位装置71と、プリンタ装置72とを有する。図示する例では、コントローラ520は、上位装置71から入力される画像データ及び制御データに基づいて、プリンタ装置72に、記録媒体に対して画像を画像形成させる。
上位装置71は、例えば、PC(Personal Computer)等である。また、プリンタ装置72は、プリンタコントローラ72C及びプリンタエンジン72Eを有する。
プリンタコントローラ72Cは、プリンタエンジン72Eの動作を制御する。まず、プリンタコントローラ72Cは、上位装置71と、制御線70LCを介して制御データを送受信する。さらに、プリンタコントローラ72Cは、プリンタエンジン72Eと、制御線72LCを介して制御データを送受信する。この制御データの送受信によって、制御データが示す各種印刷条件等がプリンタコントローラ72Cに入力され、プリンタコントローラ72Cは、レジスタ等によって、印刷条件等を記憶する。次に、プリンタコントローラ72Cは、制御データに基づいて、プリンタエンジン72Eを制御し、印刷ジョブデータ、すなわち、制御データに従って画像形成を行う。
プリンタコントローラ72Cは、CPU72Cp、印刷制御装置72Cc及び記憶装置72Cmを有する。なお、CPU72Cp及び印刷制御装置72Ccは、バス72Cbによって接続され、相互に通信を行う。また、バス72Cbは、通信I/F(interface)等を介して、制御線70LCに接続される。
CPU72Cpは、制御プログラム等によって、プリンタ装置72全体の動作を制御させる。すなわち、CPU72Cpは、演算装置及び制御装置である。
印刷制御装置72Ccは、上位装置71から送信される制御データに基づいて、プリンタエンジン72Eと、コマンド又はステータス等を示すデータを送受信する。これにより、印刷制御装置72Ccは、プリンタエンジン72Eを制御する。また、図6に示す画像記憶部15A及び15Bは、例えば、記憶装置72Cm等によって実現される。さらに、図6に示す計算部53Fは、例えば、CPU72Cp等によって実現される。なお、画像記憶部15A、15B及び計算部53Fは、他の演算装置及び記憶装置で実現されてもよい。
プリンタエンジン72Eには、データ線70LD−C、70LD−M、70LD−Y及び70LD−K、すなわち、複数のデータ線が接続される。そして、プリンタエンジン72Eは、複数のデータ線を介して、上位装置71から画像データを受信する。次に、プリンタエンジン72Eは、プリンタコントローラ72Cによる制御に基づいて、各色の画像形成を行う。
プリンタエンジン72Eは、データ管理装置72EC、72EM、72EY及び72EK、すなわち、複数のデータ管理装置を有する。また、プリンタエンジン72Eは、画像出力装置72Ei及び搬送制御装置72Ecを有する。
図8は、本発明の一実施形態に係る制御部が有するデータ管理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。例えば、複数のデータ管理装置は、同一の構成である。以下、各データ管理装置が同一の構成である例で説明し、データ管理装置72ECを例に説明する。したがって、重複する説明は、省略する。
データ管理装置72ECは、ロジック回路72EClと、記憶装置72ECmとを有する。図示するように、ロジック回路72EClは、データ線70LD−Cを介して上位装置71と接続される。また、ロジック回路72EClは、制御線72LCを介して印刷制御装置72Ccと接続される。なお、ロジック回路72EClは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はPLD(Programmable Logic Device)等で実現される。
ロジック回路72EClは、プリンタコントローラ72C(図7)から入力される制御信号に基づいて、上位装置71から入力される画像データを記憶装置72ECmに記憶する。
また、ロジック回路72EClは、プリンタコントローラ72Cから入力される制御信号に基づいて、記憶装置72ECmからシアン用画像データIcを読み出す。次に、ロジック回路72EClは、読み出されたシアン用画像データIcを画像出力装置72Eiに送る。
なお、記憶装置72ECmは、3頁程度の画像データを記憶できる容量を有するのが望ましい。3頁程度の画像データが記憶できると、記憶装置72ECmは、上位装置71から入力される画像データ、画像形成中の画像データ及び次に画像形成するための画像データを記憶できる。
図9は、本発明の一実施形態に係る制御部が有する画像出力装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図示するように、画像出力装置72Eiは、出力制御装置72Eicと、各色の液体吐出ヘッドユニットであるブラック液体吐出ヘッドユニット210K、シアン液体吐出ヘッドユニット210C、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210M及びイエロー液体吐出ヘッドユニット210Yとを有する。
出力制御装置72Eicは、各色の画像データを各色の液体吐出ヘッドユニットにそれぞれ出力する。すなわち、出力制御装置72Eicは、入力される画像データに基づいて、各色の液体吐出ヘッドユニットを制御する。
出力制御装置72Eicは、複数の液体吐出ヘッドユニットを同時又は個別に制御する。すなわち、出力制御装置72Eicは、タイミングの入力を受けて、各液体吐出ヘッドユニットに液体を吐出させるタイミングを変える制御等を行う。なお、出力制御装置72Eicは、プリンタコントローラ72C(図7)から入力される制御信号に基づいて、いずれかの液体吐出ヘッドユニットを制御してもよい。さらに、出力制御装置72Eicは、ユーザによる操作等に基づいて、いずれかの液体吐出ヘッドユニットを制御してもよい。
なお、図7に示すプリンタ装置72は、上位装置71から画像データを入力する経路と、制御データに基づく上位装置71及びプリンタ装置72の間での送受信に用いられる経路とをそれぞれ異なる経路とする例である。
また、プリンタ装置72は、例えば、ブラック1色で画像形成を行う構成とされてもよい。ブラック1色で画像形成を行う場合において、画像形成を行う速度を速くするため、例えば、1つのデータ管理装置と、4つのブラック液体吐出ヘッドユニットとを有する構成等でもよい。このようにすると、複数のブラック液体吐出ヘッドユニットによって、それぞれブラック用のインクが吐出される。そのため、1つのブラック液体吐出ヘッドユニットとする構成と比較して、速い画像形成を行うことができる。
搬送制御装置72Ec(図7)は、ウェブ120を搬送させるモータ、機構及びドライバ装置等である。例えば、搬送制御装置72Ecは、各ローラ等に接続されるモータ等を制御し、ウェブ120を搬送させる。
<相関演算例>
図10は、本発明の一実施形態に係る相関演算方法の一例を示す構成図である。例えば、検出部は、図示するような構成によって、相関演算を行うと、センサの位置におけるウェブの相対位置、移動量、移動速度又はこれらの組み合わせ等を演算することができる。
具体的には、検出部は、図示するように、第1の2次元フーリエ変換部FT1、第2の2次元フーリエ変換部FT2、相関画像データ生成部DMK、ピーク位置探索部SR、演算部CAL及び変換結果記憶部MEMを有する構成である。
第1の2次元フーリエ変換部FT1は、第1画像データD1を変換する。具体的には、第1の2次元フーリエ変換部FT1は、直交方向用のフーリエ変換部FT1a及び搬送方向用のフーリエ変換部FT1bを有する構成である。
直交方向用のフーリエ変換部FT1aは、直交方向に、第1画像データD1を1次元フーリエ変換する。そして、搬送方向用のフーリエ変換部FT1bは、直交方向用のフーリエ変換部FT1aによる変換結果に基づいて、搬送方向に、第1画像データD1を1次元フーリエ変換する。このようにして、直交方向用のフーリエ変換部FT1a及び搬送方向用のフーリエ変換部FT1bが、直交方向及び搬送方向に、それぞれ1次元フーリエ変換する。このようにして変換された変換結果を、第1の2次元フーリエ変換部FT1は、相関画像データ生成部DMKに出力する。
同様に、第2の2次元フーリエ変換部FT2は、第2画像データD2を変換する。具体的には、第2の2次元フーリエ変換部FT2は、直交方向用のフーリエ変換部FT2a、搬送方向用のフーリエ変換部FT2b及び複素共役部FT2cを有する構成である。
直交方向用のフーリエ変換部FT2aは、直交方向に、第2画像データD2を1次元フーリエ変換する。そして、搬送方向用のフーリエ変換部FT2bは、直交方向用のフーリエ変換部FT2aによる変換結果に基づいて、搬送方向に、第2画像データD2を1次元フーリエ変換する。このようにして、直交方向用のフーリエ変換部FT2a及び搬送方向用のフーリエ変換部FT2bが、直交方向及び搬送方向に、それぞれ1次元フーリエ変換する。
次に、複素共役部FT2cは、直交方向用のフーリエ変換部FT2a及び搬送方向用のフーリエ変換部FT2bによる変換結果の複素共役を計算する。そして、複素共役部FT2cが計算した複素共役を、第2の2次元フーリエ変換部FT2は、相関画像データ生成部DMKに出力する。
続いて、相関画像データ生成部DMKは、第1の2次元フーリエ変換部FT1から出力される第1画像データD1の変換結果と、第2の2次元フーリエ変換部FT2から出力される第2画像データD2の変換結果とに基づいて、相関画像データを生成する。
相関画像データ生成部DMKは、積算部DMKa及び2次元逆フーリエ変換部DMKbを有する構成である。
積算部DMKaは、第1画像データD1の変換結果と、第2画像データD2の変換結果とを積算する。そして、積算部DMKaは、積算結果を2次元逆フーリエ変換部DMKbに出力する。
2次元逆フーリエ変換部DMKbは、積算部DMKaによる積算結果を2次元逆フーリエ変換する。このように、2次元逆フーリエ変換が行われると、相関画像データが生成される。そして、2次元逆フーリエ変換部DMKbは、相関画像データをピーク位置探索部SRに出力する。
ピーク位置探索部SRは、生成された相関画像データにおいて、最も急峻となる(すなわち、立ち上がりが急になる。)ピーク輝度(ピーク値)があるピーク位置を探索する。まず、相関画像データには、光の強さ、すなわち、輝度の大きさを示す値が入力される。また、輝度は、マトリクス状に入力される。
なお、相関画像データでは、輝度は、エリアセンサの画素ピッチ間隔、すなわち、画素サイズ間隔で並ぶ。そのため、ピーク位置の探索は、いわゆるサブピクセル処理を行ってから、探索が行われるのが望ましい。このように、サブピクセル処理が行われると、ピーク位置が精度良く探索できる。そのため、検出部は、位置、移動量及び移動速度等を精度良く出力できる。
例えば、ピーク位置探索部SRによる探索は、以下のように行われる。
図11は、本発明の一実施形態に係る相関演算におけるピーク位置の探索方法の一例を示す図である。図では、横軸は、相関画像データが示す画像における搬送方向の位置を示す。一方で、縦軸は、相関画像データが示す画像の輝度を示す。
以下、相関画像データが示す輝度のうち、第1データ値q1、第2データ値q2及び第3データ値q3の3つのデータを例に説明する。つまり、この例では、ピーク位置探索部SR(図10)は、第1データ値q1、第2データ値q2及び第3データ値q3を繋ぐ曲線kにおけるピーク位置Pを探索する。
まず、ピーク位置探索部SRは、相関画像データが示す画像の輝度の各差分を計算する。そして、ピーク位置探索部SRは、計算した差分のうち、最も差分の値が大きくなるデータ値の組み合わせを抽出する。次に、ピーク位置探索部SRは、最も差分の値が大きくなるデータ値の組み合わせに隣接する組み合わせを抽出する。このようにすると、図示する、第1データ値q1、第2データ値q2及び第3データ値q3のように、ピーク位置探索部SRは、3つのデータを抽出できる。そして、抽出される3つのデータを繋いで曲線kを算出すると、ピーク位置探索部SRは、ピーク位置Pを探索できる。このようにすると、ピーク位置探索部SRは、サブピクセル処理等の演算量を少なくし、より高速にピーク位置Pを探索できる。なお、最も差分の値が大きくなるデータ値の組み合わせの位置が、最も急峻な位置となる。また、サブピクセル処理は、上記の処理以外の処理でもよい。
以上のように、ピーク位置探索部SRがピーク位置を探索すると、例えば、以下のような演算結果が得られる。
図12は、本発明の一実施形態に係る相関演算の演算結果例を示す図である。図は、相互相関関数の相関強度分布を示す。なお、図では、X軸及びY軸は、画素の通し番号を示す。図示する「相関ピーク」のようなピーク位置が、ピーク位置探索部SR(図10)によって探索される。
なお、図では、Y方向に変動がある例を説明したが、X方向に変動がある場合には、ピーク位置は、X方向にもずれた位置に発生する。
図10に戻り、演算部CALは、ウェブの相対位置、移動量又は移動速度等を演算する。例えば、演算部CALは、相関画像データの中心位置と、ピーク位置探索部SRによって探索されるピーク位置との差を計算すると、相対位置及び移動量を演算することができる。
また、演算部CALは、例えば、移動量を時間で除算して移動速度を計算できる。
以上のようにして、検出部は、相関演算によって、相対位置、移動量又は移動速度等を検出できる。なお、相対位置、移動量又は移動速度等の検出方法は、これに限定されない。例えば、検出部は、以下のように、相対位置、移動量又は移動速度等を検出してもよい。
まず、検出部は、第1画像データ及び第2画像データのそれぞれの輝度を2値化する。すなわち、検出部は、輝度があらかじめ設定される閾値以下であれば、「0」とし、一方で、輝度が閾値より大きい値であると、「1」とする。このように2値化された第1画像データ及び第2画像データを比較して、検出部は、相対位置を検出してもよい。
また、検出部は、これ以外の検出方法によって、相対位置、移動量又は移動速度等を検出してもよい。例えば、検出部は、いわゆるパターンマッチング処理等によって、各画像データに写るそれぞれのパターンから相対位置を検出してもよい。
<全体処理例>
図13は、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置による全体処理の一例を示すフローチャートである。例えば、あらかじめウェブ120(図1)に形成される画像を示す画像データが画像形成装置110に入力されるとする。次に、画像形成装置110は、画像データに基づいて、図13に示す全体処理を行い、ウェブ120に画像データが示す画像を形成する。
なお、図13は、1つの液体吐出ヘッドユニットに対する処理を示す。すなわち、図13は、例えば、図2に示す例では、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kに係る処理である。また、他の色の液体吐出ヘッドユニットに対しては、例えば、図13に示す処理が並列又は前後して別途行われる。
ステップS01では、画像形成装置は、位置、移動速度、移動量又はこれらの組み合わせを検出する。すなわち、ステップS01では、画像形成装置は、センサによって、ウェブ120の位置、移動速度、移動量又はこれらの組み合わせを検出する。
例えば、ステップS01では、画像形成装置は、図10に示す構成によって、位置、移動速度、移動量又はこれらの組み合わせを検出する。
ステップS02では、画像形成装置は、ウェブ120上に画像形成させる箇所が着弾位置に搬送されるのにかかる時間を計算する。
例えば、まず、上流側のセンサ、すなわち、ブラック用センサSENK(図2)等によって、ウェブ120がある規定量搬送されるのに要した時間が検出される。この検出結果に基づいて、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kが吐出を行うタイミングが生成される。ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kが吐出を行うタイミングが生成されると、下流側のセンサ、すなわち、シアン用センサSENC(図2)等による検出では、ブラック用センサSENKによる検出結果が積算される。例えば、シアン用センサSENC等によって、ブラックと同様に、ウェブ120がある規定量搬送されるのに要した時間が検出される。この検出結果に基づいて、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cが吐出を行うタイミングが補正される。以下、更に下流側となるマゼンタ及びイエローについても、同様に行われるとする。
また、以下の方法等で時間が計算されてもよい。まず、センサが設置される位置から着弾位置までの距離は、あらかじめ入力されるとする。また、所定の箇所は、画像データ等によって定まるとする。次に、画像形成装置は、ステップS01によって移動速度を検出する。このようにすると、「距離÷移動速度=時間」の計算によって、所定の箇所が着弾位置に搬送されるのにかかる時間が計算できる。
ステップS01及びステップS02は、前(例えば、シアンに対して、ブラック)の液体吐出ヘッドユニットによって、液体が吐出されるタイミングに基づいて処理が行われる。続いて、ステップS03は、前の着弾位置より下流に設置されるセンサ(例えば、シアン用センサSENC(図2))が設置される位置で行われる処理である。以下、前の液体吐出ヘッドユニットによって、液体が吐出されるタイミングを「第1タイミングT1」という。これに対して、次の(この例では、シアン)液体吐出ヘッドユニットによって、液体が吐出されるタイミングを「第2タイミングT2」という。さらに、第1タイミングT1及び第2タイミングT2の間において、センサによって検出が行われるタイミングを「第3タイミングT3」という。
ステップS03では、画像形成装置は、所定の箇所を検出する。なお、ステップS03は、第3タイミングT3で行われる。
ステップS04では、画像形成装置は、ステップS03による検出結果に基づいて、ずれ量を計算し、ずれ量に基づいて、次の着弾位置で液体が吐出されるタイミング、すなわち、第2タイミングT2を調整する。
上記の処理は、例えば、以下のようなタイミングチャート及び概念図で説明できる。
図14は、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置による全体処理の一例を示すタイミングチャート及び概念図である。図示する例は、第1タイミングT1をブラックの液体が吐出されるタイミング、第2タイミングT2をシアンの液体が吐出されるタイミングとする例である。また、この例では、ブラック液体吐出ヘッドユニット210K及びシアン液体吐出ヘッドユニット210Cの間に設置されるシアン用センサSENCが検出を行うタイミングを第3タイミングT3とする。
なお、この例において、シアン用センサSENCが検出を行う位置を以下「検出位置PSEN」という。検出位置PSENは、図示するように、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cの着弾位置から「設置距離D」の位置であるとする。また、以下の例では、各センサが設置される間隔は、各液体吐出ヘッドユニットの設置間隔(相対距離L)と同一であるとする。
まず、第1タイミングT1において、画像形成装置は、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kに液体を吐出させるように、第1信号SIG1を「ON」にする。そして、画像形成装置は、第1信号SIG1を「ON」とするタイミングで、画像データを取得する。図示する例では、第1タイミングT1で取得される画像は、第1画像信号PAで示し、画像データは、図6に示す「A位置」における画像データD1(n)に相当する。
この画像データD1が取得されると、画像形成装置は、所定の箇所の位置及びウェブ120が搬送される移動速度V等を検出できる(図13に示すステップS01)。また、移動速度が検出できると、画像形成装置は、相対距離Lを移動速度Vで除算して(L÷V)、次の着弾位置に、所定の箇所が搬送されるのに、かかる時間を計算できる(図13に示すステップS02)。
次に、第3タイミングT3において、画像形成装置は、画像データを取得する。図示する例では、第3タイミングT3で取得される画像は、第2画像信号PBで示し、画像データは、図8に示す「B位置」における画像データD2(n)に相当する(図13に示すステップS03)。次に、画像形成装置は、画像データD1(n)及びD2(n)に対して相互相関演算を行う。このようにすると、画像形成装置は、ずれ量ΔD(0)を計算できる。
ローラに熱膨張がない、かつ、ローラとウェブ120との間に滑りがない等の状態、すなわち、いわゆる理想状態では、画像形成装置は、ウェブ120が有する所定の箇所を、相対距離Lを移動速度Vで搬送するのに、「L÷V」の時間がかかる。
したがって、図10に示す「撮像周期T」は、例えば、「撮像周期T=撮像時差=相対距離L/移動速度V」に設定される。図示する例では、ブラック用センサSENK及びシアン用センサSENCのそれぞれのセンサが、相対距離Lの間隔で設置される。もし、理想状態であれば、ブラック用センサSENKで検出されたウェブ120が有する所定の箇所は、「L÷V」時間後に、検出位置PSENの位置に搬送される。
一方で、実際には、ローラに熱膨張が発生する場合又はローラとウェブ120との間に滑りが発生する場合が多い。なお、図10に示す相関演算方法において、「撮像周期T=相対距離L/移動速度V」と設定すると、ブラック用センサSENKで画像データD1(n)が撮像されるタイミングと、シアン用センサSENCで画像データD2(n)が撮像されるタイミングとの時差は、「L÷V」となる。このように、「L÷V」を「撮像周期T」として、画像形成装置は、ずれ量ΔD(0)を計算してもよい。以下、図示する第3タイミングという例で説明する。
第3タイミングT3において、画像形成装置は、第2距離の例であるずれ量ΔD(0)を計算する。そして、画像形成装置は、設置距離D、ずれ量ΔD(0)及び移動速度Vに基づいて、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cが液体を吐出するタイミング、すなわち、第2タイミングT2を調整する(図13に示すステップS04)。
ローラに熱膨張がない等の理想状態では、画像形成装置は、移動速度Vで設置距離Dを搬送するのに、「D÷V」の時間がかかる。そこで、ステップS02では、「L÷V」に基づいて、「D÷V」の時間が計算され、第2タイミングT2が決定されている。一方で、実際には、液体を吐出する対象となる位置は、ローラに熱膨張等のため、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cが液体を吐出する位置からずれ量ΔD(0)の位置にある。そのため、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cが液体を吐出する位置に、所定の箇所が搬送されるには、「ΔD(0)÷V」の時間がかかる。そこで、画像形成装置は、第2タイミングT2、すなわち、第2信号SIG2を「ON」とするタイミングを「L÷V」に基づいて決定されたタイミング(理想状態用)から、ずれ量ΔD(0)に液体が吐出できるタイミングに調整する。
具体的には、調整されるタイミングの調整量は、「(ΔD(0)―D)/V」である。このように、画像形成装置は、第2タイミングT2を「(ΔD(0)―D)/V」だけずらすように調整する。このようにすると、ローラに熱膨張等があっても、画像形成装置は、ずれ量ΔD(0)、設置距離D及び移動速度Vに基づいて調整するため、被搬送物が搬送される方向において、吐出される液体の着弾位置の精度をより向上できる。
なお、検出を行うタイミング、すなわち、第3タイミングT3は、例えば、液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出する位置に、被搬送物が搬送される最小の時間(以下単に「最小時間」という。)に基づいて定まるのが望ましい。すなわち、ローラに熱膨張等は、状況等によって異なるため、ウェブ120が、液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出する位置に搬送されるまでにかかる時間は、様々である。そこで、ユーザ等は、あらかじめ搬送にかかる時間を複数計測する。そして、計測される時間のうち、最も時間の短い時間である、最小時間を決定する。このようにして、まず、最小時間は、あらかじめ決定される。
次に、最小時間で検出位置に所定の箇所が搬送されるとし、画像形成装置には、最小時間で検出位置に所定の箇所が搬送される時間より早いタイミングが、第3タイミングT3に設定される。ウェブ120は、最小時間で搬送される可能性がある。そのため、最小時間で搬送されるのより、早いタイミングで検出が行われないと、所定の箇所が見逃される場合がある。したがって、画像形成装置は、最小時間に基づいて、第3タイミングT3を決定すると、精度良く検出を行うことができる。
他にも、画像形成装置には、モードごとに、それぞれの理想の移動速度があらかじめ設定されてもよい。なお、理想の移動速度は、熱膨張等がない状態での移動速度である。また、「D」は、設計上、あらかじめ定まる。そして、画像形成装置は、まず、理想の移動速度を「V」とし、「D/V」を計算して、理想状態において、液体を吐出するタイミングを定める。その後、ずれ量がわかると、画像形成装置は、ずれ量に基づいて、理想状態におけるタイミングを調整し、液体吐出ヘッドユニットに液体を吐出させるタイミングを決定できる。
このように、ステップS04で調整されるタイミングで信号が送信されると、画像形成装置は、信号が示すタイミングで液体を吐出する。このようにして、1つ又は複数の液体が吐出されると、ウェブ120上に画像データが示す画像が画像形成される。
以上ではタイミングを調整して決定する例を記載したが、画像形成装置は、ずれ量と「V」と「D」とから液体吐出ヘッドユニットに液体を吐出させるタイミングを直接演算して決定しても良い。
<機能構成例>
図15は、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。図示するように、画像形成装置110は、複数の液体吐出ヘッドユニットと、液体吐出ヘッドユニットごとに検出部110F10と、制御部110F20とを備える。さらに、画像形成装置110は、計算部53Fを備える。
検出部110F10は、図示するように、液体吐出ヘッドユニットごとに設置される。具体的には、図2に示す例では、検出部110F10は、図示するように4つとなる。また、検出部110F10は、搬送方向におけるウェブ120の位置、移動速度、移動量又はこれらの組み合わせを検出する。なお、検出部110F10は、例えば、図4又は図9に示すハードウェア構成等によって実現される。また、検出部110F10は、図8では、検出部52A及び52Bに相当する。
計算部53Fは、複数の検出結果に基づいて、液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出できる着弾位置に、被搬送物が搬送される時間を計算する。すなわち、計算部53Fは、ずれ量等に基づいて、制御部110F20が液体を吐出するタイミングを決定するのに用いる計算結果を出力する。
制御部110F20は、検出部110F10による検出結果に基づく調整等により、決定されるタイミングで、複数の液体吐出ヘッドユニットに液体をそれぞれ吐出させる。なお、制御部110F20は、例えば、図10に示すハードウェア構成等によって実現される。
また、望ましくは、検出部110F10が検出を行う位置、すなわち、センサが設置される位置等は、ブラック用ローラ間INTK1等のように、ブラック着弾位置PK等の着弾位置に近い位置が良い。すなわち、ブラック用ローラ間INTK1等で検出が行われると、画像形成装置110は、搬送方向における位置、移動速度又は移動量等を精度良く検出できる。
さらに、望ましくは、検出部110F10が検出を行う位置、すなわち、センサが設置される位置等は、ブラック用上流区間INTK2等のように、各ローラ間のうち、着弾位置より上流側の位置がより良い。すなわち、ブラック用上流区間INTK2等で検出が行われると、画像形成装置110は、搬送方向における位置、移動速度又は移動量等を精度良く検出できる。そのうえ、画像形成装置110は、検出部110F10による検出結果に基づいて、計算及びタイミングを生成して、各液体吐出ヘッドユニットに液体を吐出させることができる。
また、画像形成装置110は、図示するように、計測部110F30を備える構成であるのが望ましい。計測部110F30があると、画像形成装置110は、より確実に記録媒体の位置等を検出できる。例えば、ローラ230の回転軸等に、エンコーダ等の計測装置が設置されるとする。そして、計測部110F30は、エンコーダ等によって、記録媒体の移動量を計測する。このように、計測部110F30によって計測された計測結果が更に入力されると、画像形成装置110は、搬送方向における記録媒体の位置等をより確実に検出できる。
<比較例>
図16は、比較例に係る装置の全体構成例を示す概略図である。図示する画像形成装置110Aは、図2に示す例と比較すると、センサが設置されず、エンコーダ240が設置される点が異なる。また、図16では、ローラ220及びローラ230がウェブ120を搬送する。なお、エンコーダ240は、ローラ230が有する回転軸に対して設置されるとする。
画像形成装置110Aでは、各液体吐出ヘッドユニットは、ローラ230の周長を整数倍した位置に配置される。このようにして、ローラの回転周期に同期するローラが有する偏心によるズレがキャンセルされる。また、各液体吐出ヘッドユニットが設置される位置のズレは、テストプリント等によって各液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出するそれぞれのタイミングを補正することでキャンセルされる場合等もある。
また、画像形成装置110Aでは、エンコーダ240が出力するエンコーダ信号に基づいて、各液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出する。
図17は、比較例に係る装置における着弾位置のズレの一例を示す図である。図は、図16に示す画像形成装置110Aにおいて、各液体吐出ヘッドユニットから吐出された液体が着弾した位置のズレの一例を示す。
第1グラフG1は、実際のウェブの位置を示す。一方で、第2グラフG2は、エンコーダ240(図16)からのエンコーダ信号に基づいて算出されるウェブの位置である。つまり、第1グラフG1と、第2グラフG2とに差があると、搬送方向において、実際にウェブがある位置と、算出されるウェブの位置とが異なるため、着弾位置にズレが発生しやすい。
例えば、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kによる液体の吐出において、ズレ量σが発生した例である。また、ズレ量は、液体吐出ヘッドユニットごとに異なる場合がある。すなわち、ブラック以外の吐出では、各ズレ量は、ズレ量σと異なる場合が多い。
ズレ量は、例えば、ローラの偏心、ローラの熱膨張、ウェブとローラとの間に発生する滑り、記録媒体の伸び縮み及びこれらの組み合わせが原因となって発生する。
図18は、ローラの偏心等が着弾位置のズレに与える影響の一例を示す図である。図示するグラフは、ローラの熱膨張、偏心及びローラとウェブとの間の滑りによる影響の一例を示す。すなわち、各グラフは、エンコーダ240(図16)からのエンコーダ信号に基づいて算出されるウェブの位置と、実際の位置との差を縦軸の「ズレ量」で示す。また、図18は、ローラが「φ60」の外径、かつ、ローラの材質がアルミである例を示す。
第3グラフG3は、ローラに偏心量「0.01mm」がある場合のズレ量を示す。第3グラフG3で示すように、偏心によるズレ量は、ローラの回転周期と同期する周期となる場合が多い。また、偏心によるズレ量は、偏心量に比例する場合が多いが、累積はしない場合が多い。
第4グラフG4は、ローラに偏心と、熱膨張とがある場合のズレ量を示す。なお、熱膨張は、「−10℃」の温度変化があった場合の例である。
第5グラフG5は、ローラに偏心と、ウェブとローラとの間に発生する滑りとがある場合のズレ量を示す。なお、ウェブとローラとの間に発生する滑りは、「0.1パーセント」であった場合の例である。
また、ウェブの蛇行等を少なくするため、ウェブを搬送方向に引っ張る、いわゆるテンションをかける場合がある。このテンションによっては、ウェブには、伸び縮みが発生する場合がある。また、ウェブの伸び縮みは、ウェブの厚み、幅又は塗布量等によって異なる場合がある。
<まとめ>
本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッドユニットごとに、搬送方向における位置、移動速度又は移動量等の検出結果を求める。そのため、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置は、ずれ量等に基づいて、液体吐出ヘッドユニットごとに液体を吐出させるタイミング等を決定できる。そのため、図16に示す比較例等と比較すると、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置は、搬送方向において、液体の着弾位置に発生するズレを精度良く補償できる。
また、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置は、図16に示す比較例等と比較すると、各液体吐出ヘッドユニットをローラの周長を整数倍した位置に配置する必要が少ないため、各液体吐出ヘッドユニットを設置する制約を少なくできる。
さらに、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置では、図16に示す比較例のようにローラの回転量等に基づいて移動量が算出されるのではなく、ウェブの位置を直接検出できるので、ローラの熱膨張等の影響が、精度良くキャンセルできる。他にも、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッドユニットに近い位置で検出が行われると、ウェブの伸び縮み等の影響が、精度良くキャンセルできる。
このように、ローラの偏心、ローラの熱膨張、ウェブとローラとの間に発生する滑り、記録媒体の伸び縮み及びこれらの組み合わせ等による影響を少なくできると、液体を吐出する装置は、搬送方向において、吐出される液体の着弾位置の精度をより向上できる。
また、液体を吐出して記録媒体に画像を形成する場合には、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置は、吐出される各色の液体の着弾位置が精度良くなると、色ずれが少なくなり、形成される画像の画質を向上させることができる。
さらに、それぞれの検出部は、異なる2以上のタイミングで被搬送物が有するパターンに基づいて、液体吐出ヘッドユニットごとに、被搬送物の位置、移動速度又は移動量をそれぞれ検出する。このようにすると、それぞれの検出結果に基づいて、各液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出するタイミングがそれぞれ制御されるため、液体を吐出する装置は、搬送方向において、液体の着弾位置に発生するズレをより精度良く補償できる。
<変形例>
複数の液体吐出ヘッドユニットが液体を吐出するタイミングを調整する場合には、液体を吐出する装置は、それぞれの液体吐出ヘッドユニットに対応するセンサと、最も上流に位置する液体吐出ヘッドユニットに対応するセンサとの検出結果に基づいて、各タイミングを調整してもよい。
具体的には、図2に示すように、上流からブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの順に、液体吐出ヘッドユニットが設置されるとする。すなわち、この例では、ブラック用センサSENKが最も上流に位置する液体吐出ヘッドユニットに対応するセンサとなる。
そして、この例では、液体を吐出する装置は、ブラック用センサSENKによる検出結果と、シアン用センサSENCによる検出結果とに基づいて、シアン液体吐出ヘッドユニット210Cが液体を吐出するタイミングを調整する。さらに、液体を吐出する装置は、ブラック用センサSENKによる検出結果と、マゼンタ用センサSENMによる検出結果とに基づいて、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210Mが液体を吐出するタイミングを調整する。同様に、イエロー液体吐出ヘッドユニット210Yが液体を吐出するタイミングは、ブラック用センサSENKによる検出結果と、イエロー用センサSENYによる検出結果とに基づいて調整される。
このように、最も上流に位置するセンサによる検出結果が用いられると、誤差が積算されにくい。そのため、液体を吐出する装置は、液体の着弾位置に発生するズレをより精度良く補償できる。
ただし、誤差が許容できる範囲であれば、検出結果の組み合わせは、上記の通りでなくともよい。すなわち、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210Mが液体を吐出するタイミングを調整するのに、液体を吐出する装置は、シアン用センサSENCによる検出結果と、マゼンタ用センサSENMによる検出結果とに基づいて、調整を行ってもよい。
図4に示す検出装置50は、例えば、以下のようなハードウェアで実現されてもよい。
図19は、本発明の一実施形態に係る検出部を実現するハードウェア構成の第1変形例を示す概略図である。以下の説明では、上記に説明した装置と同様の装置には同一の符号を付し、説明を省略する。
上記に説明したハードウェア構成と比較すると、検出装置が、光学系を複数有する構成である点が異なる。すなわち、上記に説明したハードウェア構成は、いわゆる「単眼」であるのに対して、第1変形例のハードウェア構成は、「複眼」である。
また、以下の変形例では、複眼のうち、上流側にある第1撮像レンズ12Aを用いて検出を行う位置を「A位置」とし、第1撮像レンズ12Aより下流にある第2撮像レンズ12Bを用いて検出を行う位置を「B位置」とする。また、以下の変形例では、「L」を第1撮像レンズ12Aと、第2撮像レンズ12Bとの間の距離と読み替える。
検出対象の例であるウェブ120には、第1光源及び第2光源からレーザ光等がそれぞれ照射される。なお、第1光源が光を照射する位置を「A位置」とし、同様に、第2光源が光を照射する位置を「B位置」とする。
第1光源及び第2光源は、レーザ光を発光する発光素子と、発光素子から発光されるレーザ光を略平行光にするコリメートレンズとを有する。また、第1光源及び第2光源は、ウェブ120の表面に対して斜め方向からレーザ光を照射させる位置に設置される。
検出装置50は、エリアセンサ11と、「A位置」に対向する位置に第1撮像レンズ12Aと、「B位置」に対向する位置に第2撮像レンズ12Bとを有する。
エリアセンサ11は、例えば、シリコン基板111上に、撮像素子112を形成する構成のセンサである。なお、撮像素子112上は、2次元画像をそれぞれ取得できる「A領域11A」と、「B領域11B」とがあるとする。また、エリアセンサ11は、例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ又はフォトダイオードアレイ等である。そして、エリアセンサ11は、筐体13に収容される。さらに、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12Bは、第1レンズ鏡筒13A及び第2レンズ鏡筒13Bにそれぞれ保持される。
この例では、図示するように、第1撮像レンズ12Aの光軸は、「A領域11A」の中心と一致する。同様に、第2撮像レンズ12Bの光軸は、「B領域11B」の中心と一致する。そして、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12Bは、「A領域11A」と、「B領域11B」とに、それぞれ光を結像させ、2次元画像を生成する。
他にも、検出装置50は、以下に説明する構成等でもよい。
図20は、本発明の一実施形態に係る検出部を実現するハードウェア構成の第2変形例を示す概略図である。以下、図19と異なる点、すなわち、検出装置50のハードウェア構成を抜粋して図示する。図19に示す構成と比較すると、検出装置50の構成は、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12Bが一体となり、レンズ12Cとなる点が異なる。一方で、エリアセンサ11等は、例えば、図19に示す構成と同様である。
また、この例では、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12Bのそれぞれの像が干渉して結像しないように、アパーチャ121等が用いられるのが望ましい。このように、アパーチャ121等が用いられると、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12Bのそれぞれの像を結像する領域がそれぞれ制限できる。そのため、それぞれの結像が干渉するのを少なくでき、検出装置50は、「A位置」及び「B位置」において生成される画像に基づいて、上流となるセンサの位置で移動速度を計算できる。そして、下流に設置されるセンサの位置で同様に、移動速度が計算できる。このように、上流側と、下流側で計算されるそれぞれの移動速度の速度差に基づいて、画像形成装置は、液体を吐出するタイミングを制御してもよい。
図21は、本発明の一実施形態に係る検出部を実現するハードウェア構成の第3変形例を示す概略図である。図20に示す構成と比較すると、図21(A)に示す検出装置50の構成は、エリアセンサ11が第2エリアセンサ11'である点が異なる。一方で、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12B等の構成は、例えば、図20と同様である。
第2エリアセンサ11'は、例えば、図21(B)に示す構成等である。具体的には、図21(B)に図示するように、ウェハaには、複数の撮像素子bが形成される。次に、図21(B)に図示するような撮像素子がウェハaからそれぞれ切り出される。この切り出される複数の撮像素子である第1撮像素子112A及び第2撮像素子112Bがそれぞれシリコン基板111上に形成される。これに対して、第1撮像レンズ12A及び第2撮像レンズ12Bは、第1撮像素子112A及び第2撮像素子112Bの間隔に合わせて、位置が定められる。
撮像素子は、撮像用に製造されることが多い。そのため、撮像素子のX方向及びY方向の比、すなわち、縦横比は、正方、「4:3」又は「16:9」等のように、画像フォーマットに合わせる比である場合が多い。本実施形態では、一定の間隔に離れる2点以上における画像が撮像される。具体的には、2次元における一方向であるX方向、すなわち、搬送方向10(図2)に一定の間隔に離れる点ごとに、画像が撮像される。これに対して、撮像素子は、画像フォーマットに合わせる縦横比である。そのため、X方向において、一定の間隔に離れる2点について撮像する場合には、Y方向に係る撮像素子が使用されない場合がある。また、画素密度を上げる場合等には、X方向及びY方向のいずれの方向において画素密度の高い撮像素子を用いるため、コストアップ等になる場合がある。
そこで、図21に示すような構成とすると、シリコン基板111上には、一定の間隔に離れる第1撮像素子112A及び第2撮像素子112Bが、形成できる。そのため、Y方向に係る撮像素子が使用されない撮像素子が少なくできる。したがって、撮像素子の無駄が少なくできる。また、第1撮像素子112A及び第2撮像素子112Bは、精度の良い半導体プロセスで形成されるため、第1撮像素子112A及び第2撮像素子112Bの間隔が、精度良くできる。
図22は、本発明の一実施形態に係る検出部に用いられる複数の撮像レンズの一例を示す概略図である。図示するようなレンズアレイが検出部を実現するのに用いられてもよい。
図示するレンズアレイは、2つ以上のレンズが集積される構成である。具体的には、図示するレンズアレイは、縦及び横方向に、3行3列であり、計9つの撮像レンズA1乃至C3を有する例である。このようなレンズアレイが用いられると、9点を示す画像が撮像できる。この場合には、9点の撮像領域を有するエリアセンサが用いられる。
このようにすると、例えば、2つの撮像領域に対する演算は、同時に実行、すなわち、並列で実行されやすい。次に、それぞれの演算結果が平均される又はエラー除去が行われると、1つの演算結果を用いる場合等と比較して、検出装置は、精度良く計算したり、計算の安定性を向上させたりすることができる。また、速度が変動するアプリケーションソフトに基づいて演算が実行される場合がある。この場合であっても、相関演算が行える領域が広がるため、確度の高い速度演算結果が得られやすくなる。
なお、第1の支持部材及び第2の支持部材は、兼ねられてもよい。例えば、第1の支持部材及び第2の支持部材は、以下のような構成でもよい。
図23は、本発明の一実施形態に係る液体を吐出する装置の変形例を示す概略図である。図2と比較すると、図示する構成では、第1の支持部材及び第2の支持部材の配置が異なる。図示するように、第1の支持部材及び第2の支持部材は、例えば、第1部材RL1、第2部材RL2、第3部材RL3、第4部材RL4及び第5部材RL5によって実現されてもよい。すなわち、各液体吐出ヘッドユニットの上流側に設けられる第2の支持部材と、各液体吐出ヘッドユニットの下流側に設けられる第1の支持部材とは、兼用されてもよい。なお、第1の支持部材及び第2の支持部材は、ローラで兼ねられてもよく、湾曲板で兼ねられてもよい。
なお、本発明に係る液体を吐出する装置は、1以上の装置を有する液体を吐出するシステムによって実現されてもよい。例えば、ブラック液体吐出ヘッドユニット210Kとシアン液体吐出ヘッドユニット210Cが同じ筐体の装置であり、マゼンタ液体吐出ヘッドユニット210Mとイエロー液体吐出ヘッドユニット210Yが同じ筐体の装置であり、この両者を有する液体を吐出するシステムによって実現されても良い。
また、本発明に係る液体を吐出する装置及び液体を吐出するシステムでは、液体は、インクに限られず、他の種類の記録液又は定着処理液等でもよい。すなわち、本発明に係る液体を吐出する装置及び液体を吐出するシステムは、インク以外の種類の液体を吐出する装置に適用されてもよい。
したがって、本発明に係る液体を吐出する装置及び液体を吐出するシステムは、画像を形成するに限られない。例えば、形成される物体は、三次元造形物等でもよい。
さらに被搬送物は、用紙等の記録媒体に限られない。被搬送物は、液体が付着可能な材質であればよい。例えば、液体が付着可能な材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス又はこれらの組み合わせ等の液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、本発明に係る実施形態では、画像形成装置、情報処理装置又はこれらの組み合わせ等のコンピュータに液体を吐出させる方法のうち、一部又は全部を実行させるためのプログラムによって実現されてもよい。
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。