JP2017170765A - ジェル前駆体層を有する積層シートの製造方法 - Google Patents
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このようなジェル状化粧料として、まずジェル前駆体を用意し、これを湿潤させた対象物に当接させ、又はジェル前駆体を対象物に当接させ、その後ジェル前駆体を湿潤させて、対象物上でジェル前駆体をジェル状にすることが行われている。しかし、顔パック等に用いられているジェルやジェル前駆体はそれ自体ではシート状を保持するための強度が不足しているため、このようなジェルやジェル前駆体は通常支持体を伴う(特許文献1等)。例えば、ジェル前駆体を網に絡ませることによりジェル前駆体又は湿潤したジェルのたわみ性を補強することが開示されている(特許文献2)。また、顔パック等の用途では不織布等の支持体が用いられるが、支持体(不織布等)とジェル又はジェル前駆体層との間の接着が不足する場合には、接着剤が用いられている(特許文献3)。
また、エレクトロスピニング法による紡糸を安定的かつ確実にするため、紡糸液にポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーを含有させて繊維構造体を形成することが行われている(特許文献6等)。
また、キサンタンガムやマンナン類などの吸水性や水溶時に増粘作用やゲル化作用を有するゲル化剤をシート状にした乾燥ゲルシートが開示されている(特許文献7)。
一方、押出しラミネート法等により紙基材上に熱可塑性樹脂層を形成した積層シートは広く用いられている(特許文献8等)。
したがって、本願発明は、ジェル前駆体の強度不足を補って、シート状に保持するために、上記のような問題の無い手段を提供することを目的とする。
また、本発明は、シート層及び該シート層上に設けたジェル前駆体層から成る積層シートであって、該シート層が、熱可塑性樹脂を押出成形することにより形成され、押出成形された該熱可塑性樹脂が固化する前に、ジェル前駆体層と貼合されることを特徴とする積層シート(但し、当該方法により製造されたものに限ってもよい。)である。
本発明のシート層は、熱可塑性樹脂から成る。
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリメチルペンテン樹脂などのポリオレフィン系、またポリスチレンやポリエステル樹脂、ナイロン樹脂など押出ラミネートが可能な樹脂を使用することができる。また、グラフト変性ポリエチレンやエチレンとアクリル酸又はアクリル酸エステルの共重合体などを使用してもよい。また、この熱可塑性樹脂には無機顔料などの充填材を添加してもよい。この充填材としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、カオリン、カーボンブラック、金属粉体などが挙げられる。
この水溶性ポリマーを増粘性多糖類と混合する場合には、増粘性多糖類を溶解させずに分散させるために、水以外の有機溶剤に可溶な合成高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドが好ましく、さらに種々の有機溶剤に可溶なポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸が好ましい。
水溶性ポリマーの平均分子量は、好ましくは1万〜800万、より好ましくは5万〜600万、特に好ましくは10万〜200万である。
水溶性多糖類としては、ヒアルロン酸等の水溶性ムコ多糖、ペクチン、キシラン、グルコマンナン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、変性コーンスターチ、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン等が挙げられる。
このような増粘性多糖類として、具体的には、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム等のガラクトマンナン類、キタンサンガム、低アシル型ジェランガム(以下「LAジェランガム」ともいう。)等のジェランガム、ウェランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム等の発酵多糖類、デンプン、デキストリン等のグルコース類、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、オウルラン等が挙げられるが、上記増粘性を有する限りこれら以外の増粘性多糖類も本発明で使用することができる。
これらの中で、特にガラクトマンナン類及びキタンサンガムは、マンノース及びガラクトースから成る又はこれらを多く含み、水溶時に増粘効果が高いため好ましい。ガラクトマンナン類としては、グアーガム、タラガム及びローカストビーンガムが好ましい。
このような例として以下の例が挙げられるが、これらに限定されない。
ガラクトマンナン類は、キタンサンガムやカッパ型カラギーナン(κカラギーナン)と併用することで増粘する。
ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム等は、カルシウムやマグネシウムなどの二価の陽イオンと混合することで増粘する。このような二価の陽イオンを含む化合物として、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウムなどの水溶性カルシウム塩、塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩が挙げられる。
タマリンドシードガムは、アルコール類、グリコール類、グリセリン、糖類、カテキンなどと混合することで増粘する。例えば、化粧水などに含まれるアルコール類によって増粘する。
本発明のジェル前駆体層として、上記の水溶性ポリマーや多糖類を繊維状にしたもの又はこれを支持体に塗布したものを用いることができる。
この支持体としては、例えば、メッシュシート;不織布、織布、編み地、紙などの繊維シート、それらの積層体や、例えば、ポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂などの合成樹脂製フィルムを用いてもよい。また、支持体とナノ繊維層との剥離を容易にするため、支持体の表面にシリコーン樹脂の塗布などの剥離処理を施してもよい。
このジェル前駆体層は、支持体上に上記水溶性ポリマーや水溶性多糖類を0.1〜50μmの厚さで塗布したものを用いることができる。
塗布方法は適宜公知の方法を選択すればよいが、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グアビアコーター等の公知の塗工機を用いて行うことができる。また、乾燥は公知の乾燥機を用いることができる。
エレクトロスピニング法は、周知の手段によって行うことができ、一般的に、高分子材料(熱可塑性樹脂等)を溶解した溶液をシリンジに充填し、シリンジのノズルと導電性のコレクターとの間に高電圧を印可して、溶液をジェット状に飛散させ、飛散の過程で溶媒が揮発することで繊維をコレクターに堆積させる。
支持体上にナノ繊維層を形成するために、支持体を導電性にしてそのままコレクターとして用いてもよいが、ノズルとコレクターとの間に支持体を置いてもよい。
紡糸液中の増粘性多糖類の添加量は、水溶性ポリマー100重量部に対して好ましくは10部〜900部、より好ましくは20部〜600部、さらに好ましくは50部〜400部である。シートの目付にもよるが、添加量が10部以下であると水を添加しても十分な増粘効果が得られず、900部以上であるとシートの骨格となる繊維が少ないため強度が低下し、ハンドリングが困難となる。
このような製法により得られたナノ繊維層においては、主に水溶性ポリマーにより形成される繊維の隙間に、主に増粘性多糖類により形成される粒子が分散して存在する。
この繊維の繊維径は、通常5nm〜50μmである。
この粒子の平均粒子径は通常100μm以下であり、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは0.1〜10μmである。平均粒子径が100μmより大きい場合には、水を添加した際に粒子が水と接触する部位が優先的に溶解し粒子内部への水の浸透を阻害するため、溶解速度が低下する。
この押出しラミネート法に用いる装置の一例を図1に示す。押出成形機1のホッパーに熱可塑性樹脂を投入し、Tダイ2から押出された熱可塑性樹脂は、ニップロール4とクーリングロール5により、基材ロール3から供給される支持体上のジェル前駆体層と圧着され、積層シートとなり、製品ロール6に収納される。
また、シート層を複数の熱可塑性樹脂層で形成する場合など、2以上の熱可塑性樹脂層を積層するときは、熱可塑性樹脂層間の密着性や生産効率の点から、複数台の押出機を用いて各熱可塑性樹脂を溶融状態でそれぞれのTダイに導き、各Tダイから同時に押出して積層接着する方法が適している。このような多層の熱可塑性樹脂層を同時に形成可能な方法は、押出しラミネート法の中で特に共押出しラミネート法と呼ばれる。さらに、熱可塑性樹脂層同士の間に接着性樹脂層を挟んで、樹脂層間の接着性を高めてもよい。なお、いずれの場合でも、必要に応じてジェル前駆体層や熱可塑性樹脂の接着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理等を行ってもよい。
冷却成形後のこのシート層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmである。
また、冷却成形後のこのジェル前駆体層の厚さは、通常0.1〜50μmである。
なお、多糖類の粘度は、20℃の蒸留水に0.5質量%溶解させたときのB形回転式粘度計により測定した粘度(mPa・s)とした(以下「0.5%粘度」という。)。
ポリビニルピロリドン(ISPジャパン(株)製PVP−K90、平均分子量120万、以下「PVP」という。)4.5gを100mlバイアル瓶に採取し、エタノール25.5gを加えて、スターラーを用いて1時間撹拌し、PVPエタノール溶液(濃度15質量%)を作製した。このPVPエタノール溶液に、グアーガム(三晶(株)製SUPERGELCSA200/50、平均粒径55μm、0.5%粘度460mPa・s)4.5gを分散させて、エレクトロスピニング用紡糸液を得た。この紡糸液の全固形分濃度は26.1質量%であり、PVPとグアーガムの質量比は1:1である。
この紡糸液を、先端にゲージNo.18G金属製ノンべベル針を装着した10mlシリンジに5g採取し、コレクタードラムに支持体として剥離紙(林コンバーテック(株)社製K8シロP(01))を固定したエレクトロスピニング装置(カトーテック製、NEU)に装着し、ノズル−コレクター間距離10cm、印加電圧8.0kV、吐出速度20μL/分、コレクター回転速度2m/分、トラバース距離15cm、トラバース速度5cm/分の条件にて、1時間かけて剥離紙上に紡糸を行い、剥離紙上に6g/m2のジェル前駆体層を形成した。
グアーガムに代えてキサンタンガム(三晶(株)製KELTROL CG、平均粒径45μm、0.5%粘度725mPa・s)を用いた以外は実施例1と同様にして積層シートを得た。ジェル前駆体層の厚さは10μm、シート層の厚さは30μmであった。
実施例3
グアーガムに代えてグアーガムとキサンタンガム(三晶(株)製KELTROL CG)との質量比80:20の混合物(0.5%粘度1240mPa・s)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層シートを得た。ジェル前駆体層の厚さは10μm、シート層の厚さは30μmであった。
シート層の厚さが10μmとなるように押出ラミネートの積層速度を調製した以外は実施例1と同様にして、積層シートを得た。
実施例5
シート層の厚さが60μmとなるように押出ラミネートの積層速度を調製した以外は実施例1と同様にして、積層シートを得た。
実施例6
剥離紙上にバーコーターを用いて、実施例1で用いたエレクトロスピニング用紡糸液を塗布し、80℃の乾燥炉で1分間乾燥した。この塗布層(ジェル前駆体層)の乾燥後の塗布量は6.0g/m2であった。その後、実施例1と同様にして、積層シートを得た。塗布層(ジェル前駆体層)の厚さは6μm、シート層の厚さは30μmであった。
実施例1と同様の方法で作製したジェル前駆体層に、厚さ30μmの低密度ポリエチレンフィルム(日本製紙製、ワンラップ)を重ね、チルドロールと樹脂ロールを一対備えた卓上スーパーカレンダー装置を用いて、ロール温度115℃、線圧50kgf/cm条件にてポリエチレンフィルムがチルドロールに接するように通紙して、ジェル前駆体層と低密度ポリエチレンフィルム(シート層)とを貼合して、積層シートを得た。ジェル前駆体層の厚さは7μm、シート層の厚さは30μmであった。
実施例1と同様の方法で作製したジェル前駆体層に、シート層として、厚さ25μmのポリエステルフィルム上にアクリル樹脂系粘着剤をバーコーターを用いて塗布し、105℃の乾燥炉で1分間乾燥することで層厚60μmの粘着フィルムを作製した。粘着フィルムの粘着面側とアクリル板との粘着力は0.25N/25mmであった。この粘着フィルムを用いて、ジェル前駆体層と粘着層が接するように貼り合わせ、その上を2kg重量のゴム製ロールを5往復させて、ジェル前駆体層とシート層が積層された積層シートを得た。ジェル前駆体層の厚さは10μm、シート層の厚さは60μmであった。
(溶解性)
顔面頬部に予め霧吹きで蒸留水を約1.0ccとなるよう噴霧し、湿潤状態とした上で、作製した積層シートのジェル前駆体層面を前記湿潤状態の肌の上に当て、積層シートのジェル前駆体層が溶解して、ジェル状物質になるかどうかを評価した。
ジェル前駆体層の溶解性を下記基準で評価した。
◎:ジェル前駆体層が即座に溶解し、ジェル状物質になる。
○:ジェル前駆体層が溶解しジェル状物質になるが、溶解に時間が掛かる。
作製した積層シートを10cm角に切り、予め霧吹きで蒸留水を約1.0ccとなるよう噴霧し湿潤状態とした顔面頬部に、ジェル前駆体層とシート層が積層された状態でジェル前駆体層面を当てた際の肌の凹凸への追従性を下記の基準で評価した。
◎:ジェル前駆体層面のほぼ全てが肌の凹凸に追従して密着する。
○:ジェル前駆体層面のほとんどが肌の凹凸に追従して密着しない。
△:ジェル前駆体層面の一部が肌の凹凸に追従して密着しない。
×:ジェル前駆体層面の多くの部分が肌の凹凸に追従して密着しない。
各実施例及び比較例で作製した積層シートを10cm角に切り、予め霧吹きで蒸留水を約1.0ccとなるよう噴霧し湿潤状態とした顔面頬部上に、ジェル前駆体層とシート層が積層された状態でジェル前駆体層面を当て、ジェル前駆体層を完全に溶解せしめた後、シート層を肌から除去した際にベタツキを感じるかどうかを評価した。
ベタツキ性は下記基準で評価した。
○:シート層を除去する際に肌にベタツキを感じない。
×:シート層を除去する際に肌にベタツキを感じる。
実施例6の積層シートのジェル前駆体層は蒸留水への溶解速度が若干遅く、一部肌との間に目立たない程度浮きが発生したが、ベタツキも含めた使用感は良好な積層シートが得られた。
比較例1の積層シートは、全体にシワが入り、均一な積層シートを得ることができなかった。加熱時に低密度ポリエチレンフィルムが収縮して、ジェル前駆体層とフィルムとの界面に剥離が発生し、冷却時にジェル前駆体層がフィルムの収縮に追随してシワが入ったものと考えられる。
比較例2の積層シートを肌から除去したところ、フィルムを剥離する際に、粘着剤によると考えられる肌を引っ張る感触があり、剥離後に肌に不快なベタツキ感が残った。
2 Tダイ
3 基材ロール
4 ニップロール
5 クーリングロール
6 製品ロール
Claims (11)
- シート層及び該シート層上に設けたジェル前駆体層から成る積層シートを製造する方法であって、熱可塑性樹脂を押出成形することにより形成されるシート層を、押出成形された該熱可塑性樹脂が固化する前に、ジェル前駆体層と貼合することを特徴とする方法。
- 前記ジェル前駆体層の少なくとも一部が繊維状である請求項1に記載の方法。
- 前記積層シートが更にジェル前駆体層上に支持体を有し、該ジェル前駆体層が、該支持体上にエレクトロスピニング法によって形成されたナノ繊維を含む請求項1又は2に記載の方法。
- 前記ジェル前駆体層が水溶性ポリマー(但し、増粘性多糖類を除く)及び増粘性多糖類を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記増粘性多糖類を室温で蒸留水に0.5重量%溶解させたときのB形回転式粘度計による粘度が100mPa・s以上である請求項4に記載の方法。
- 前記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸から成る群から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の方法。
- 前記増粘性多糖類が、下記(1)〜(3)のいずれかである請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
(1)ガラクトマンナン類、キサンタンガム、ジェランガム、又はナトリウムカルボキシメチルセルロース、
(2)ガラクトマンナン類とキタンサンガム又はカッパ型カラギーナンとの混合物、
(3)ジェランガム、カラギーナン、ペクチン又はアルギン酸ナトリウムと二価の陽イオンとの混合物であって該陽イオンがカルシウムイオン又はマグネシウムイオンである混合物 - 前記ガラクトマンナン類がグアーガム、タラガム又はローカストビーンガムである請求項7に記載の方法。
- シート層及び該シート層上に設けたジェル前駆体層から成る積層シートであって、該シート層が、熱可塑性樹脂を押出成形することにより形成され、押出成形された該熱可塑性樹脂が固化する前に、ジェル前駆体層と貼合されることを特徴とする積層シート(但し、当該方法により製造されたものに限る。)。
- 前記ジェル前駆体層の少なくとも一部が繊維状である請求項9に記載の積層シート。
- 前記積層シートが更にジェル前駆体層上に支持体を有し、該ジェル前駆体層が、該支持体上にエレクトロスピニング法によって形成されたナノ繊維を含む請求項9又は10に記載の積層シート。
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