以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システムの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図2における紙面に左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図2における上下方向)が示される。図3、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図3(a)における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向または直交方向である。
まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は基板に部品を実装して実装基板を製造する機能を有している。部品実装システム1は、連結された複数の部品実装装置M1〜M4、部品実装システム1の各装置を統括する管理コンピュータ3、それらをつなぐ通信ネットワーク2、及び管理コンピュータ3と無線通信する携帯端末Tを備えている。管理コンピュータ3は、携帯端末Tと無線で通信する管理側通信部3aを備えている。
部品実装装置M1〜M4は、半田印刷装置(図示省略)によって部品接合用の半田が印刷された基板に部品を実装する。部品実装装置M1〜M4は基板を搬送する基板搬送機構を有しており、これらを直列に連結して基板搬送路が形成されている。部品実装装置M1〜M4は、この基板搬送路に沿って基板を順に搬送して、部品実装作業を実行する。
携帯端末Tは、スマートフォンやタブレットPCなどであり、タッチパネル11、カメラ12、端末側通信部13、姿勢検出センサ14を備えている。タッチパネル11は、液晶パネル、有機ELパネルなどの表示部11aと、タッチパッドなどの入力部11bが組み合わされ、カメラ12の映像や各種情報を表示し、操作コマンドや各種データを入力する機能を有している。カメラ12は、動画や静止画を撮影する撮影部である。カメラ12のレンズはタッチパネル11とは反対面に開口するように設けられており(図6参照)、カメラ12を撮像したい方向に向けると撮像している映像がタッチパネル11に表示される。
すなわち、携帯端末Tは、撮影部(カメラ12)と、撮影部により撮像されている映像を表示するタッチパネル11(表示部11a)を備えている。端末側通信部13は、管理コンピュータ3と無線で通信する。姿勢検出センサ14は、加速度センサ、ジャイロセンサなどのセンサを含んで構成され、携帯端末TのX方向、Y方向、Z方向に対する角度(姿勢)を検出する。
次に図2を参照して部品実装装置M1〜M4の構成を説明する。部品実装装置M1〜M4は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M1について説明する。基台21の中央部には、X方向に延びた一対の搬送ベルトを備えた基板搬送機構22が配設されている。基板搬送機構22は搬送する基板23の幅(Y方向の長さ)に応じて一対の搬送ベルトの間隔を変更することができ、上流側から搬入された基板23を搬送して部品実装作業を実行するための作業位置に位置決保持する。基板搬送機構22の両側方には、部品供給部24が配置されている。部品供給部24には、それぞれ複数のテープフィーダ25が並設されている。テープフィーダ25は、部品を収納したキャリヤテープをピッチ送りすることにより、以下に説明する実装ヘッド28による部品吸着位置に部品を供給する。
基台21上面においてX方向の一方側の端部には、リニア駆動機構を備えたY軸ビーム26がY方向に沿って配設されている。Y軸ビーム26には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸ビーム27が、Y方向に移動自在に結合されている。X軸ビーム27は、X方向に沿って配設されている。2基のX軸ビーム27には、それぞれ実装ヘッド28がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド28は部品を吸着して保持し、昇降可能な複数の吸着ユニットを備える。吸着ユニットのそれぞれの先端には、吸着ノズルが設けられている。
Y軸ビーム26、X軸ビーム27を駆動することにより、実装ヘッド28はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド28は、それぞれ対応した部品供給部24のテープフィーダ25の部品吸着位置から部品を吸着ノズルによって取り出して、基板搬送機構22に位置決めされた基板23に部品を移送搭載する。
部品供給部24と基板搬送機構22との間には、部品認識カメラ29が配設されている。部品供給部24から部品を取り出した実装ヘッド28が部品認識カメラ29の上方を移動する際に、部品認識カメラ29は実装ヘッド28に保持された状態の部品を撮像して部品の保持姿勢を認識する。実装ヘッド28が取り付けられたプレート27aには基板認識カメラ30が取り付けられており、実装ヘッド28と一体的に移動する。
実装ヘッド28が移動することにより、基板認識カメラ30は基板搬送機構22に位置決めされた基板23の上方に移動し、基板23に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板23の位置を認識する。実装ヘッド28による基板23への部品実装動作においては、部品認識カメラ29による部品の認識結果と、基板認識カメラ30による基板位置の認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
上記のように、基板搬送機構22、部品供給部24、Y軸ビーム26、X軸ビーム27、実装ヘッド28、部品認識カメラ29、基板認識カメラ30は、部品実装装置M1に搬入される基板23に部品を実装する部品実装作業を実行する実装作業部31(図5参照)を構成する。
次に図3(a)、図3(b)を参照して、基板搬送機構22の構成について説明する。基板搬送機構22は、基板搬送部32、基板保持部33を備えている。基板搬送部32には、X方向に延伸する一対の板状部材34の内側に、X方向に配設されたモータで駆動される一対の搬送ベルト35が備えられており、上面に載置された基板23をX方向に搬送する。図3(a)において、板状部材34の上端には、搬送ベルト35の上方に張り出す押え板36が設置されている。押え板36は、後述する基板保持部33によって搬送ベルト35から持ち上げられた基板23の両縁部を押え板36の下面で上から押さえ込むことによって、基板23を保持する機能を有する。
図3(a)において、基板保持部33は、下受けピン配置部U、昇降駆動部37を含んで構成される。下受けピン配置部Uの上面には、基板23の部品Dが実装される実装面23aと反対の裏面23bを下受けする下受けピンPが配置されている。下受けピンPは、下受けする基板23の裏面23bに実装済みの部品Dと干渉しない位置に配置されている。昇降駆動部37は、エアシリンダなどにより下受けピン配置部Uを昇降させる(矢印a)。昇降駆動部37が下受けピン配置部Uを上昇させることにより、下受けピン配置部Uに配置された下受けピンPが基板23の裏面23bを下方から下受けして押え板36に押し付ける。
次に図4を参照して、下受けピン配置部Uの構成について説明する。下受けピン配置部Uは、板状の金属などの上面に、下受けピンPの下端の挿入部Pa(図3(a)参照)を差し込んで配置する取付け穴Hが格子状に設けられている。下受けピン配置部Uの上面には、携帯端末Tのカメラ12で位置および角度を認識するための認識マークMが、四隅、中央、各辺の中点の合計9箇所に配設されている。下受けピン配置部Uは、部品実装装置M1〜M4に着脱自在に構成されており、部品実装装置M1〜M4から取り外して下受けピンPの配置換えを行うことができる。
図4には、基板搬送機構22において下受けピン配置部Uが下受けする基板23と、基板23の裏面23bに実装済みの部品Dの位置を2点鎖線で示している。下受けピンPは基板23の範囲内で、かつ、裏面23bの部品Dと干渉しない位置の取付け穴Hに挿入して配置される。
次に図5を参照して、部品実装システム1の制御系について説明する。携帯端末Tは、端末制御部15、端末記憶部16、表示部11a、入力部11b、カメラ12、端末側通信部13、姿勢検出センサ14を備えている。端末制御部15はCPU機能を備える演算装置であり、情報取得部15a、捕捉枠表示処理部15b、支援表示処理部15c、ピン認識部15d、判定部15eなどの内部処理部を有している。端末記憶部16は記憶装置であり、基板情報16a、配置部情報16b、捕捉枠情報16c、検出角度16d、補正情報16e、ピン位置情報16fなどを記憶する。
作業者が、表示部11aを覗きながら携帯端末Tを下受けピン配置部Uに向けると、カメラ12によって撮影されている下受けピン配置部Uが表示部11aに表示される。すなわち、表示部11aは、カメラ12(撮影部)により撮影されている情報を基に、下受けピン配置部Uの映像を表示する。情報取得部15aは、外部に設けられた管理コンピュータ3(管理部)と端末側通信部13を介して通信して、生産対象となる基板23に関する情報(以下「基板情報16a」と称する。)と下受けピン配置部Uに関する情報(以下「配置部情報16b」と称する。)と捕捉枠情報16cを取得する。情報取得部15aは、取得した基板情報16a、配置部情報16b、捕捉枠情報16cを端末記憶部16にそれぞれ記憶させる。
基板情報16aには、基板23の種類の情報(サイズ、切り欠きの位置などを含む)、基板23へ実装される部品Dの配置情報(両面実装基板の場合は、表面と裏面の部品Dの配置情報)、及び下受けピンPを配置可能な位置の情報の少なくとも1つが含まれる。配置部情報16bには、下受けピン配置部Uのサイズ情報、下受けピン配置部Uに形成された取付け穴Hの位置情報、下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMの位置情報などが含まれる。
捕捉枠情報16cは、カメラ12の映像に重ねて表示する下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMを捉えるための複数の捕捉枠Fに関する情報である。捕捉枠Fの位置は、複数の認識マークMを撮像するカメラ12の角度θ(目標角度θt)に対応してあらかじめ複数作成されている。
ここで図6を参照して、カメラ12の角度θについて説明する。携帯端末Tにおいて、カメラ12のレンズは、タッチパネル11とは反対面に開口している。カメラ12の角度θは、鉛直線VLとカメラ12の光軸12aとがなす角度である。下受けピン配置部Uが水平面上に載置されている場合、下受けピン配置部Uの上方から真下を撮像するカメラ12の角度θが0度となる。図6には、角度が0度、30度、60度の3つカメラ12(携帯端末T)の姿勢を例示している。下受けピン配置部Uを部品実装装置M1〜M4に装着した状態では、携帯端末Tによって真上から撮像することはできず、作業者は30度や60度の角度θから撮影する。
図5において、姿勢検出センサ14は、カメラ12の角度θなどの携帯端末Tの姿勢を検出する。姿勢検出センサ14が検出したカメラ12の角度θは、検出角度16dとして端末記憶部16に記憶される。すなわち、姿勢検出センサ14は、カメラ12(撮像部)の姿勢を検出する姿勢検出手段となる。検出角度16dは、後述する第2捕捉枠決定処理中に適宜更新される。
図5において、捕捉枠表示処理部15bは、捕捉枠情報16cまたは検出角度16dを基に、複数の捕捉枠Fを表示部11aに表示する捕捉枠表示処理を実行する。すなわち捕捉枠表示処理部15bは、下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMを捉えるための複数の捕捉枠Fを表示部11aに表示する。
ここで図7、図8を参照して、認識マークMを捉える捕捉枠Fの位置を決定する捕捉枠決定処理について説明する。捕捉枠決定処理は、捕捉枠表示処理部15bによって実行される。図7は、捕捉枠情報16cに基づく捕捉枠表示処理において、タッチパネル11(表示部11a)に表示される捕捉枠選択画面50の一例を示している。捕捉枠表示処理部15bは、捕捉枠選択画面50に捕捉枠Fを表示する枠表示領域51、作業状況を表示する状況表示領域52、指示を入力する入力領域53を表示させる。
図7において、枠表示領域51には、下受けピン配置部Uに形成される4つの認識マークMを捉えるための4つの捕捉枠Fと捕捉枠Fをつなぐ補助線Faが、カメラ12の3つの目標角度θt(0度、30度、60度)に対応して表示されている。作業者は、枠表示領域51の捕捉枠Fをタップして、カメラ12の目標角度θtを選択する。図7では、60度の目標角度θtの捕捉枠Fが選択されて強調表示された状態を示している。
状況表示領域52には、「作業状況」表示52a(ここでは「枠選択」と表示)と、選択された目標角度θtを示す「選択角度」表示52b(ここでは選択された「60度」を強調表示)が表示されている。入力領域53には、次の作業である後述する支援表示処理に移行するための「撮影開始」ボタン53aが表示されている。作業者が「撮影開始」ボタン53aをタップすると、捕捉枠Fの位置が選択されている目標角度θt(設定目標角度θt)に決定されて支援表示処理に移行する。このように、捕捉枠表示処理部15bは、カメラ12(撮影部)が撮影する下受けピン配置部Uに対するカメラ12の設定目標角度θtに基づいて、表示する複数の捕捉枠Fのそれぞれの位置を決定する捕捉枠決定処理(第1捕捉枠決定処理)を実行する。
図8は、検出角度16dに基づく捕捉枠表示処理において、タッチパネル11(表示部11a)に表示される捕捉枠決定画面60の一例を示している。捕捉枠表示処理部15bは、検出された携帯端末T(カメラ12)の検出角度16dに対応して捕捉枠Fの位置を算出し、捕捉枠決定画面60に枠表示領域61、状況表示領域62、入力領域63を表示させる。枠表示領域61には、カメラ12が撮影している下受けピン配置部Uの映像に、捕捉枠表示処理部15bによって算出された4つの捕捉枠Fと捕捉枠Fをつなぐ補助線Faが重ねて表示されている。
状況表示領域62には、「作業状況」表示62a(ここでは「枠選択」と表示)と、検出されたカメラ12の検出角度16dを表す「検出角度」表示62b(ここでは「25度」と表示)が表示されている。作業者が携帯端末Tの姿勢を変えることによりカメラ12の検出角度16dが変わると、枠表示領域61に表示される捕捉枠Fの位置と状況表示領域62の「検出角度」表示62bの表示が連動して変化する。
作業者は、捕捉枠決定画面60を見ながら4つの捕捉枠Fに下受けピン配置部Uの4つの認識マークMを捉えるように携帯端末Tの姿勢を調整する。捕捉枠表示処理部15bが、4つの捕捉枠Fにそれぞれ認識マークMが捉えられたと認識すると、捕捉枠Fの位置が決定されて支援表示処理に自動的に移行する。このように、捕捉枠表示処理部15bは、姿勢検出センサ14(姿勢検出部)が検出する検出角度16dに基づいて、表示する複数の捕捉枠Fのそれぞれの位置を決定する捕捉枠決定処理(第2捕捉枠決定処理)を実行する。入力領域63には、後述する捕捉枠補正処理に移行するための「補正開始」ボタン63aが表示されている。作業者が「補正開始」ボタン63aをタップすると、捕捉枠補正処理に移行する。
図5において、補正情報16eは、捕捉枠補正処理においてタッチパネル11(入力部11b)より入力されて端末記憶部16に記憶された、タッチパネル11(表示部11a)に表示される捕捉枠Fの位置を補正するための情報である。すなわち、入力部11bは、表示部11aに表示された複数の捕捉枠Fの位置を補正するための補正情報16eを入力する入力手段となる。そして、捕捉枠表示処理部15bは、入力された補正情報16eに基づいて、表示する複数の捕捉枠Fのそれぞれの位置を補正する捕捉枠補正処理を実行する。
ここで図9を参照して、捕捉枠補正処理について説明する。捕捉枠補正処理は、作業者が携帯端末Tの姿勢を調整しても捕捉枠Fに認識マークMを捉えられない場合に実行される。補正枠補正処理では、携帯端末Tの姿勢を調整する代わりに、作業者はタッチパネル11上で捕捉枠Fの位置を直接補正する。図9は、捕捉枠表示処理においてタッチパネル11(表示部11a)に表示される捕捉枠補正画面70の一例を示している。捕捉枠表示処理部15bは、捕捉枠補正画面70に枠表示領域71、状況表示領域72、入力領域73を表示させる。枠表示領域71には、カメラ12が撮影している下受けピン配置部Uの映像に、捕捉枠決定処理によって決定された4つの捕捉枠Fと捕捉枠Fをつなぐ補助線Faが重ねて表示されている。
作業者が枠表示領域71で捕捉枠Fの一つ(ここでは右上)をタップして選択し、認識マークMの上までドラッグして移動させることにより(矢印b)、連動して他の捕捉枠F(ここでは左上)も移動する(矢印c)。捕捉枠表示処理部15bは、移動後の捕捉枠Fが示す位置を撮影するカメラ12の仮想的な角度θ(設定角度)を算出する。このようにして、携帯端末Tの姿勢を調整することなく、作業者は捕捉枠Fの位置を調整する。捕捉枠補正処理によって、例えば第2捕捉枠決定処理において姿勢検出センサ14の検出誤差に起因して発生する、下受けピン配置部Uの映像と検出角度16dに基づく捕捉枠Fの位置ずれを補正することができる。
状況表示領域72には、「作業状況」表示72a(ここでは「補正中」と表示)と、算出されたカメラ12の仮想的な角度θである「設定角度」表示72b(ここでは「5度」と表示)が表示されている。入力領域73には、次の作業である後述するピン配置処理に移行するための「配置開始」ボタン73aが表示されている。作業者が、「配置開始」ボタン73aをタップすることで、補正後の仮想的な角度θに捕捉枠Fの位置が決定されてピン配置処理に移行する。なお、捕捉枠Fが捉える認識マークMの位置は4隅の認識マークMに限定されることなく、基板23のサイズ、形状などに応じて任意に決めることができる。
図5において、支援表示処理部15c(支援情報表示処理部)は、基板情報16a、配置部情報16bに基づいて、カメラ12により撮影されている下受けピン配置部Uの映像に、下受けピン配置部Uへの複数の下受けピンPの配置を支援するための配置支援情報Iを重ねて表示する支援情報表示処理を実行する。支援情報表示処理において、支援表示処理部15c(支援情報表示処理部)は、捕捉枠決定処理および補正枠補正処理によって複数の捕捉枠F内に捉えられた複数の認識マークMの認識結果に基づき、カメラ12により撮影されている下受けピン配置部Uの映像に配置支援情報Iを重ねて表示する。
ここで図10を参照して、下受けピン配置部Uの映像に配置支援情報Iを重ねて表示する支援情報表示処理について説明する。図10は、支援情報表示処理においてタッチパネル11(表示部11a)に表示される支援情報表示画面80の一例を示している。支援表示処理部15cは、支援情報表示画面80に映像表示領域81、状況表示領域82、入力領域83を表示させる。映像表示領域81には、カメラ12が撮影している下受けピン配置部Uの映像に、認識マークMを捉えている4つの捕捉枠Fと捕捉枠Fをつなぐ補助線Faと配置支援情報Iが重ねて表示されている。
図10では、基板情報16aを基に、配置支援情報Iとして実装対象となる基板23の外形(以下「基板外形I1」と称す。)、基板外形I1内の3つの下受けピンPを配置不可能な領域(以下「配置不可能領域I2」と称する)が表示されている。配置不可能領域I2は、実装対象となる基板23の実装面23aの裏面23bに実装されている部品Dと干渉する領域など、下受けピン配置部Uに下受けピンPが配置されると基板23の裏面23bと干渉する領域を示している。基板外形I1内の配置不可能領域I2でない領域は、下受けピンPを配置可能な領域(以下「配置可能領域I3」と称す。)となる。
すなわち、支援表示処理部15c(支援情報表示処理部)は、基板23に関する情報(基板情報16a)を基に、基板23の外形(基板外形I1)、下受けピンPを配置可能な位置を特定する情報(配置可能領域I3)、および下受けピンPを配置不可能な位置を特定する情報(配置不可能領域I2)の少なくとも1つを配置支援情報Iとして表示する。なお、配置不可能領域I2および配置可能領域I3の表示は、図10に示す下受けピンPを差し込む取付け穴Hを含む領域を特定させて表示する方法に限定されず、例えば取付け穴Hを個別に特定させて表示する方式であってもよい(図11参照)。
このように、配置支援情報Iは、基板23の外形(基板外形I1)、配置可能領域I3などの下受けピンPを配置可能な位置を特定する情報、および配置不可能領域I2などの下受けピンPを配置不可能な位置を特定する情報の少なくとも1つを含んでいる。さらに支援表示処理部15cは、カメラ12が動いて撮影している下受けピン配置部Uの位置が移動した場合、捕捉している認識マークMに連動して捕捉枠F、補助線Fa、配置支援情報Iを移動させて表示させる。すなわち、映像に重ねて表示される配置支援情報Iの下受けピン配置部Uに対する相対位置は変わらない。これにより、作業者が保持する携帯端末Tが動いても、配置支援情報Iは下受けピン配置部Uに重ねて表示することができる。
図10において、状況表示領域82には、「作業状況」表示82a(ここでは「捕捉中」と表示)と、配置支援情報Iとして表示されている実装対象の基板23に関する「基板情報」表示82b(ここでは、基板番号と実装面23aが基板23の表面か裏面かの情報)が表示されている。入力領域83には、次の作業である後述するピン配置処理に移行するための「配置開始」ボタン83aが表示されている。作業者が、「配置開始」ボタン83aをタップすることで、ピン配置処理に移行する。
図5においてピン認識部15dは、ピン配置処理において、カメラ12(撮影部)により撮影されている情報(下受けピン配置部Uの映像)を基に、下受けピン配置部Uに配置済みの下受けピンPの配置位置を認識する。判定部15eは、ピン配置処理において、ピン認識部15dによって認識された配置済みの下受けピンPの配置位置が、下受けピンPを配置不可能な位置(配置不可能領域I2)か否かを判定する。そして支援表示処理部15c(支援情報表示処理部)は、ピン配置処理において、判定部15eによって配置不可能な位置にあると判定された配置済みの下受けピンPを特定する情報を下受けピン配置部Uの映像に重ねて表示する。
ここで図11、図12を参照して、ピン配置処理について説明する。ピン配置処理は、下受けピン配置部Uに下受けピンPを配置する処理(作業)である。図11は、ピン配置処理においてタッチパネル11(表示部11a)に表示されるピン配置画面90の一例を示している。ピン配置処理において、支援表示処理部15cは、ピン配置画面90に映像表示領域91、状況表示領域92を表示させる。映像表示領域91には、カメラ12が撮影している下受けピン配置部Uの映像に、認識マークMを捉えている4つの捕捉枠Fと捕捉枠Fをつなぐ補助線Faと配置支援情報Iが重ねて表示されている。
映像表示領域91には、配置支援情報Iとして基板外形I1と、3つの配置不可能領域I2と、配置可能領域I3にあって下受けピンPを配置する取付け穴Hとして教示される7箇所の取付け穴H*が特定されて表示されている。支援表示処理部15cは、映像において特定する取付け穴Hに色を付すなど特定させて表示する。図11では、取付け穴H*にドットを付して特定している。下受けピン配置部Uには、6本の下受けピンP(1)〜P(6)が配置されている。ピン認識部15dは下受けピンP(1)〜P(6)の配置位置を認識し、判定部15eは下受けピンP(1)〜P(6)が配置不可能領域I2に位置するか否かを判定する。ここでは、下受けピンP(5)が配置不可能領域I2内にあり、判定部15eによって配置不可能な位置にあると判定される。
図11において、支援表示処理部15cは、配置不可能領域I2内の下受けピンP(5)の上部に色を付すなど特定させて表示する。図11では、下受けピンP(5)の上部を黒く塗りつぶしている。これにより、作業者が下受けピンP(5)を配置不可能領域I2に配置したことを容易に視認することができる。状況表示領域92には、「作業状況」表示92a(ここでは「配置中」と表示)と、ピン認識部15dによって認識された配置済みの下受けピンPの情報である「配置ピン情報」表示92bと、配置が教示されている下受けピンPの数である「残数」表示92c(ここでは「7」と表示)が表示されている。
また、「配置ピン情報」表示92bには、配置済みの下受けピンPの本数「6」と、その内訳の配置可能領域I3に配置されている下受けピンP(良ピン)の本数「5」と、配置不可能領域I2に配置されている下受けピンP(不可ピン)の本数「1」が表示されている。状況表示領域92に表示される各情報は、作業者が下受けピン配置部Uに下受けピンPを配置、または、下受けピン配置部Uから下受けピンPを排除して、ピン認識部15dが認識する下受けピンPが変更される度に更新される。そして、下受けピンPを配置すべき取付け穴H*がゼロとなる(すなわち、「残数」表示92cが「0」となる)と、ピン配置作業が完了する。
ところで、映像表示領域91に表示される下受けピンPの上部の位置と差し込まれる取付け穴Hの位置とは、カメラ12の角度θによってずれが発生する。そこでピン認識部15dは、複数の捕捉枠F内に捉えられた複数の認識マークMの認識結果を基にカメラ12の角度θを補正して、下受けピンPの配置位置を認識する。すなわちピン認識部15dは、カメラ12(撮影部)により撮影されている情報(下受けピン配置部Uの映像)と複数の捕捉枠F内に捉えられた複数の認識マークMの認識結果を基に、下受けピン配置部Uに配置済みの下受けピンPの配置位置を認識している。
図12は、ピン配置処理のその他の実施例においてタッチパネル11(表示部11a)に表示されるピン配置画面100の一例を示している。ピン配置処理のその他の実施例では、下受けピンPを配置すべき取付け穴Hは教示されていない。作業者は、基板外形I1の内側で配置不可能領域I2ではない配置可能領域I3にある適当な取付け穴Hに下受けピンPを配置するピン配置作業を実行する。支援表示処理部15cは、ピン配置画面100に映像表示領域101、状況表示領域102、入力領域103を表示させる。映像表示領域101には、カメラ12が撮影している下受けピン配置部Uの映像に、認識マークMを捉えている4つの捕捉枠Fと捕捉枠Fをつなぐ補助線Faと配置支援情報Iが重ねて表示されている。
映像表示領域101には、配置支援情報Iとして基板外形I1と、3つの配置不可能領域I2が表示されている。下受けピン配置部Uには5本の下受けピンP(7)〜P(11)が既に配置済みで、作業者は下受けピンP(12)を下受けピン配置部Uを配置すべく下受けピン配置部Uの上方を移動させている(矢印d)。ピン認識部15dは移動している下受けピンP(12)の位置を認識し、判定部15eは下受けピンP(12)が配置不可能領域I2に位置するか否かを判定する。
そして、支援表示処理部15cは、配置不可能領域I2に侵入すると下受けピンP(12)*の上部に色を付すなど特定させて配置不可能領域I2内であることを警告する。ここでは、配置不可能領域I2に侵入した下受けピン(12)*の上部を黒く塗りつぶしている。また、支援表示処理部15cは、配置不可能領域I2から脱出すると下受けピンP(12)の特定表示を削除する。これにより、作業者が下受けピンP(12)が配置不可能領域I2内であるか否かを容易に視認することができる。
図12において、状況表示領域102には、「作業状況」表示102a(ここでは「配置中」と表示)と、ピン認識部15dによって認識された配置済みの下受けピンPの情報である「配置ピン情報」表示102bが表示されている。「配置ピン情報」表示102bには、配置済みの下受けピンPの本数「6」と、その内訳の配置可能領域I3に配置されている下受けピンP(良ピン)の本数「5」と、配置不可能領域I2に配置されている下受けピンP(不可ピン)の本数「0」が表示されている。状況表示領域102に表示される各情報は、ピン認識部15dが認識する下受けピンPが変更される度に更新される。
入力領域103には、ピン配置作業を終了するための「配置終了」ボタン103aが表示されている。作業者が、下受けピンPの配置を終えて「配置終了」ボタン103aをタップすることで、下受けピン配置部Uに配置される下受けピンPの配置位置が確定される。
図5において、ピン位置情報16fは、ピン認識部15dによってピン配置作業の完了時に作成される下受けピン配置部Uにおける下受けピンPの配置位置を特定する情報である。ピン位置情報16fは、カメラ12が下受けピン配置部Uを撮影することにより得られた映像、または、ピン認識部15dによって認識された下受けピンPの配置位置の情報(下受けピンPが挿入された取付け穴Hを特定する情報)として端末記憶部16に記憶される。記憶されたピン位置情報16fは、端末側通信部13を介して管理コンピュータ3に送信される。すなわち、端末側通信部13は、認識された下受けピンPの配置位置を管理コンピュータ3(管理部)へ送信する装置側送信部となる。
上記のように携帯端末Tは、基板23の実装面23aの裏面23bを下受けする下受けピンPの下受けピン配置部Uへの配置を支援する下受けピン配置支援装置を構成する。
図5において、部品実装装置M1〜M4は、実装制御部38、実装記憶部39、実装作業部31、通信部40を備えている。実装記憶部39は、実装制御部38による実装作業部31の制御に必要な実装作業パラメータを含む部品実装データを記憶する。実装制御部38は、部品実装データに基づいて実装作業部31を制御して、部品実装装置M1〜M4に搬入される基板23に部品Dを実装する部品実装作業を実行させる。通信部40は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3との間で信号の授受を行う。
図5において、管理コンピュータ3は、管理制御部41、管理記憶部42、管理入力部43、管理表示部44、通信部45、管理側通信部3aを備えている。管理制御部41はCPU機能を備える演算装置であり、捕捉枠情報作成部41a、ピン位置取得部41b、可能位置作成部41cなどの内部処理部を有している。管理記憶部42は記憶装置であり、部品実装システム1を統括制御するための部品実装データの他、基板情報データ42a、配置部情報データ42b、捕捉枠情報データ42c、ピン位置情報データ42dなどを記憶する。
管理入力部43は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時に用いられる。管理表示部44は液晶パネルなどの表示装置であり、管理入力部43による操作時の案内画面などの各種画面を表示する。通信部45は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M1〜M4との間で信号の授受を行う。
管理コンピュータ3は、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)の外部に設けられた管理部であり、携帯端末Tと管理側通信部3aを介して無線で通信することにより各種情報の授受を行う。管理側通信部3aは、管理記憶部42に記憶される情報を携帯端末Tからの要求に応じて要求元の携帯端末Tに送信する。すなわち、管理側通信部3aは、管理記憶部42(記憶部)に記憶される情報を管理コンピュータ3(管理部)の外部へ送信する管理側送信部となる。そして、管理側送信部(管理側通信部3a)は、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)からの要求に応じて記憶される情報を携帯端末T(下受けピン配置支援装置)に送信する。
図5において、基板情報データ42aは、生産対象となる基板23に関する情報であり、基板23の種類の情報、基板23へ実装される部品Dの配置情報、及び下受けピンPを配置可能な位置(配置可能領域I3)の情報の少なくとも1つが含まれる。配置部情報データ42bは、部品実装装置M1〜M4に装着される下受けピン配置部Uに関する情報であり、下受けピン配置部Uのサイズ情報、下受けピン配置部Uに形成された取付け穴Hの位置情報、下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMの位置情報などが含まれる。すなわち、管理記憶部42は、基板23に関する情報と下受けピン配置部Uに関する情報を記憶する記憶部である。
捕捉枠情報データ42cは、携帯端末Tにおいて表示部11aに捕捉枠Fを表示するための情報であり、捕捉枠情報作成部41aによって作成される。捕捉枠情報作成部41aは、下受けピン配置部Uにおける複数の認識マークMの位置と、カメラ12(撮影部)が撮影する下受けピン配置部Uに対するカメラ12の設定目標角度θtに基づいて、捕捉枠情報データ42cを作成する。
また、管理側通信部3aは、携帯端末Tからの要求に応じて、管理記憶部42に記憶される配置支援情報Iを含む基板情報データ42a(基板情報16a)、配置部情報データ42b(配置部情報16b)、捕捉枠情報データ42c(捕捉枠情報16c)を携帯端末Tに送信する。すなわち、管理コンピュータ3(管理部)は、配置支援情報I(基板情報16a)を携帯端末T(下受けピン配置支援装置)に送信する管理側通信部3a(管理側送信部)を備える。そして、管理側通信部3a(管理側送信部)は、管理記憶部42(記憶部)に記憶される捕捉枠情報データ42c(捕捉枠情報16c)を携帯端末T(下受けピン配置支援装置)へ送信する。
図5において、ピン位置取得部41bは、携帯端末Tから送信されたピン位置情報16fを、管理側通信部3aを介して取得して、ピン位置情報データ42dとして管理記憶部42に記憶させる。すなわち、ピン位置取得部41bは、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)から送信された認識された下受けピンPの配置位置(ピン位置情報16f)を取得する。
可能位置作成部41cは、取得して記憶されるピン位置情報データ42dを基に、(記憶されるデータが下受けピン配置部Uの映像の場合は下受けピンPの配置位置を認識した後に、)配置不可能領域I2および配置可能領域I3を抽出して基板情報データ42aに記憶させる。すなわち、可能位置作成部41cは、取得した下受けピンPの配置位置(ピン位置情報データ42d)を基に、下受けピン配置部Uにおける下受けピンPを配置可能な位置情報(配置可能領域I3)を作成する配置可能位置情報作成部となる。そして、管理記憶部42は、作成された配置可能位置情報(配置可能領域I3)を含む基板情報データ42aを記憶する記憶部となる。
これにより、例えば部品実装装置M1の下受けピン配置部Uに配置された下受けピンPの配置位置より作成された配置不可能領域I2および配置可能領域I3に基づいて、同じ基板23が搬送される部品実装装置M2〜M4の下受けピン配置部Uのピン配置作業を実行することができる。すなわち、ピン位置情報16fが管理コンピュータ3によって共有される。
次に図13を参照して、基板23の実装面23aの裏面23bを下受けする下受けピンPの下受けピン配置部Uへの配置を支援する下受けピン配置支援方法において実行される下受けピン配置支援処理について説明する。下受けピン配置支援処理は、作業者が下受けピン配置部Uに下受けピンPを配置するピン配置作業を行う際に、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)と管理コンピュータ3(管理部)を備える部品実装システム1(下受けピン配置支援システム)によって実行される。携帯端末Tを用いたピン配置作業は、下受けピン配置部Uを部品実装装置M1〜M4から取り外した状態でも、部品実装装置M1〜M4に装着した状態でも、同様の手順で実行される。
図13において、まず作業者が携帯端末Tを操作することにより、情報取得部15aは、ピン配置作業を行う下受けピン配置部Uを取り付ける(または、既に取り付けられている)部品実装装置M1〜M4において生産対象となる基板23の基板情報16a、配置部情報16b、該当する下受けピン配置部Uの捕捉枠情報16cの送信を管理コンピュータ3に要求する。要求を受け取った管理コンピュータ3は、管理記憶部42に記憶する基板情報データ42a、配置部情報データ42b、捕捉枠情報データ42cより、該当する基板情報16a、配置部情報16b、捕捉枠情報16cを携帯端末Tに送信する。情報取得部15aは、これらの情報を受信して端末記憶部16に記憶する(ST1:情報取得工程)。
すなわち、管理コンピュータ3(管理部)は、下受けピン配置部Uへの複数の下受けピンPの配置を支援するための基板情報16a(配置支援情報I)、配置部情報16b、捕捉枠情報16cを携帯端末T(下受けピン配置支援装置)に送信する。携帯端末T(下受けピン配置支援装置)は、生産対象となる基板23に関する情報(基板情報16a)と下受けピン配置部Uに関する情報(配置部情報16b)、および捕捉枠情報16cとを取得する。
すなわち、携帯端末Tの情報取得部15aは、管理コンピュータ3(管理部)と通信して、カメラ12の映像に重ねて表示する下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMを捉えるための複数の捕捉枠Fに関する捕捉枠情報16cを取得する捕捉枠情報取得部となる。さらに情報取得部15aは、管理コンピュータ3(管理部)から送信される基板情報16aに含まれる配置可能領域I3(配置可能位置情報)を取得する配置可能位置情報取得部となる。
図13において、次いで捕捉枠表示処理部15bは、捕捉枠決定処理を実行して認識マークMを捉える捕捉枠Fの位置を決定する(ST2:捕捉枠決定工程)。ここで、図14を参照して、捕捉枠決定工程(ST2)において実行される捕捉枠決定処理の第1実施例である第1捕捉枠決定処理の詳細について説明する。第1捕捉枠決定処理では、まず捕捉枠表示処理部15bは、捕捉枠情報16cに基づいて、図7に示す下受けピン配置部Uをカメラ12で撮影する目標角度θtに対応する複数の捕捉枠Fを表示した捕捉枠選択画面50を、携帯端末Tのタッチパネル11(表示部11a)に表示する(ST21)。
すなわち、捕捉枠表示処理部15bは、取得した捕捉枠情報16cを基に、複数の捕捉枠Fを表示部11aに表示する。作業者がタッチパネル11(入力部11b)を操作して所定の目標角度θt(設定目標角度θt)を選択すると、その目標角度θtに対応する複数の捕捉枠Fが決定される(ST22)。すなわち、第1捕捉枠決定処理では、下受けピン配置部Uをカメラ12(撮影部)で撮影する設定目標角度θtに基づいて、表示する複数の捕捉枠Fのそれぞれの位置が決定される。
次に図15を参照して、捕捉枠決定工程(ST2)において実行される捕捉枠決定処理の第2実施例である第2捕捉枠決定処理の詳細について説明する。第2捕捉枠決定処理では、あらかじめ設定される目標角度θtに換わって、姿勢検出センサ14が検出する携帯端末Tの姿勢(カメラ12の角度θ)を使用するところが第1捕捉枠決定処理とは異なる。第2捕捉枠決定処理では、まず姿勢検出センサ14(姿勢検出部)が、携帯端末T(カメラ12)の角度θを検出する(ST31)。次いで捕捉枠表示処理部15bは、図8に示す検出された検出角度16dに対応する捕捉枠Fを表示した捕捉枠決定画面60を、携帯端末Tのタッチパネル11(表示部11a)に表示する(ST32)。
次いで作業者は、表示されている捕捉枠決定画面60を見ながらカメラ12の角度θを調整し(ST33においてNo)、タッチパネル11(入力部11b)において所定の操作をすると、その検出角度16dに対応する複数の捕捉枠Fの位置が決定される(ST33においてYes)。すなわち、第2捕捉枠決定処理では、下受けピン配置部Uを撮影するカメラ12(撮影部)の検出角度16dを検出し、検出された検出角度16dに基づいて、表示する複数の捕捉枠Fのそれぞれの位置が決定される。なお、作業者がカメラ12の角度θを調整している間(ST33においてNo)、捕捉枠決定画面60に表示される捕捉枠Fの位置は姿勢検出センサ14が検出した検出角度16dに対応して刻々と更新される(ST31,ST32)。
図13において、捕捉枠決定工程(ST2)において表示する複数の捕捉枠Fの位置が決定されると、捕捉枠表示処理部15bは、カメラ12が撮像している下受けピン配置部Uの映像に決定された複数の捕捉枠Fを重ねてタッチパネル11(表示部11a)に表示する(ST3:捕捉枠表示工程)。すなわち捕捉枠表示処理部15bは、タッチパネル11(表示部11a)に、下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMを捉えるための複数の捕捉枠Fを表示する(図9参照)。
次いで作業者は、複数の捕捉枠Fが表示されている下受けピン配置部Uの認識マークMを捉えるように捕捉枠Fの位置を補正する(ST4:捕捉枠位置補正工程)。捕捉枠Fの位置を補正する方法は、表示位置が固定された捕捉枠F内に撮影されている認識マークMが入るように作業者が携帯端末Tの姿勢を変えてカメラの角度θを調整する方法と、図9に示す作業者が捕捉枠Fの位置をタッチパネル11上で補正して補正情報16eを決定する捕捉枠補正処理による方法がある。捕捉枠補正処理では、入力されたタッチパネル11(表示部11a)に表示された複数の捕捉枠Fの位置を補正するための補正情報16eに基づいて、表示する複数の捕捉枠Fのそれぞれの位置を補正する。
図13において、捕捉枠表示処理部15bにより捕捉枠F内に認識マークMが捉えられたと認識されるまでの間(ST5においてNo)、作業者は上記のいずれかで捕捉枠Fの位置を補正する(ST3,ST4)。全ての捕捉枠F内に認識マークMが入り、捕捉枠表示処理部15bが捕捉枠F内に認識マークMが捉えられたと認識すると(ST5においてYes)、支援表示処理部15cは、表示されている下受けピン配置部Uに下受けピンPの配置を支援するための配置支援情報Iを重ねて表示する(ST6:配置支援情報表示工程)。
すなわち、支援表示処理部15cは、複数の捕捉枠F内に捉えられた複数の認識マークMの認識結果に基づき、タッチパネル11(表示部11a)に、下受けピン配置部Uを撮影することにより得られた映像に下受けピン配置部Uへの複数の下受けピンPの配置を支援するための配置支援情報Iを重ねて表示する(図10参照)。図10の例では、配置支援情報Iとして、基板23に関する情報(基板情報16a、取得した配置可能位置情報)を基に、基板23の外形(基板外形I1)、下受けピンPを配置可能な位置を特定する情報(配置可能領域I3)、および下受けピンPを配置不可能な位置を特定する情報(配置不可能領域I2)が映像に重ねて表示されている。
図13において、次いでピン認識部15dは、表示されている映像から下受けピン配置部Uに配置された下受けピンPのピン配置位置を認識する(ST7:ピン認識工程)。すなわち、ピン認識部15dは、下受けピン配置部Uを撮影することにより得られた映像から、下受けピン配置部Uに配置済みの下受けピンPの配置位置を認識する。なお、映像に加えて、複数の捕捉枠F内に捉えられた複数の認識マークMの認識結果から下受けピンPの配置位置を認識させてもよい。次いで判定部15eは、認識された配置済みの下受けピンPの配置位置が、下受けピンPを配置不可能な位置か否かを判定する(ST8:判定工程)。
下受けピンPが配置不可能な位置にあると判定された場合(ST8においてYes)、支援表示処理部15cはタッチパネル11(表示部11a)に、配置不可能な位置(配置不可能領域I2)にあると判定された配置済みの下受けピンPを特定する情報を重ねて表示する(ST9:不可ピン表示処理工程)。また、下受けピンPが配置可能な位置にあると判定された場合(ST8においてNo)、支援表示処理部15cはタッチパネル11(表示部11a)に、配置可能な位置(配置可能領域I3)にあると判定された配置済みの下受けピンPを特定する情報を重ねて表示する(ST10:良ピン表示処理工程)。
図11に示す例では、配置不可能領域I2にあると判定された下受けピンP(5)には、上部を黒で塗りつぶして特定させる不可ピン表示処理がされている。そして、配置可能領域I3にある(配置不可能領域I2にはない)と判定された下受けピンP(1)〜P(4),P(6)には、その上部を斜線でハッチングして特定させる良ピン表示処理がされている。このように、配置不可能領域I2に配置された下受けピンP(5)と配置可能領域I3に配置された下受けピンP(1)〜P(4),P(6)とに、視覚で区別できる異なる情報を重ねて表示させることで、作業者が再配置すべき下受けピンP(5)を容易に視認することができる。
図12に示す例では、配置可能領域I3にあると判定された下受けピンP(7)〜P(11)には、その上部を斜線でハッチングして特定させる良ピン表示処理がされている。そして、ピン配置作業中の下受けピンP(12)には、配置可能領域I3内を移動中は上部を斜め格子線でハッチングして特定させる良ピン表示処理が、配置不可能領域I2内を移動中は上部を黒で塗りつぶして特定させる不可ピン表示処理がされている。このように、ピン配置作業中の下受けピンP(12)に対して、配置不可能領域I2にある場合と配置可能領域I3に有る場合とで、視覚で区別できる異なる情報を重ねて表示させることで、作業者が下受けピンP(12)を配置可能な位置を容易に視認することができる。
なお、映像に重ねる視覚で区別できる情報は、上記の下受けピンPの上面への色や模様の付加に限定されることはない。例えば、下受けピンPの情報を文字で重ねて付加したり、下受けピンPを指すアイコンを重ねて表示させたりしてもよい。
図13において、全ての下受けピンPでピン配置が完了していない場合(ST11においてNo)、ピン認識工程(ST7)、判定工程(ST8)、および不可ピン表示処理工程(ST9)もしくは良ピン表示処理工程(ST10)が繰り返される。ピン配置作業が完了すると(ST11においてYes)、ピン認識部15dによってピン位置情報16fが作成される(ST12:ピン位置情報作成工程)。図11の例では教示される全ての取付け穴H*に下受けピンPが配置されたと認識されると、図12の例では「配置終了」ボタン103aがタップされると、ピン配置作業が完了したと判断される。
作成されたピン位置情報16f(認識された下受けピンPの配置位置)は、端末側通信部13によって管理コンピュータ3(管理部)に送信される(ST13:ピン位置送信工程)。
次に図16を参照して、作業者が下受けピン配置部Uに下受けピンPを配置するピン配置作業を行う際に、管理コンピュータ3(下受けピン配置支援管理部)によって実行される下受けピン配置支援管理処理(下受けピン配置支援管理方法)について説明する。図16において、管理コンピュータ3のピン位置取得部41bは、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)と通信して携帯端末Tから送信される下受けピンPの配置位置を含むピン位置情報16fを取得する(ST41:ピン位置取得工程)。取得したピン位置情報16fは、ピン位置情報データ42dとして管理記憶部42に記憶される。
次いで管理コンピュータ3の可能位置作成部41cは、ピン位置情報データ42dの認識された下受けピンPの配置位置を基に、下受けピン配置部Uにおける下受けピンPを配置可能な位置情報(配置可能領域I3)を作成し、管理記憶部42に記憶される基板情報データ42aに追加して更新する(ST42:配置可能位置情報作成工程)。
次いで管理コンピュータ3の捕捉枠情報作成部41aは、下受けピン配置部Uに形成された複数の認識マークMの位置と、下受けピン配置部Uを撮影する設定目標角度θtに基づいて、下受けピン配置部Uを撮影する映像に重ねて表示する複数の認識マークMを捉えるための複数の捕捉枠Fに関する捕捉枠情報16cを作成する。作成された捕捉枠情報16cは、管理記憶部42に記憶される捕捉枠情報データ42cに追加される(ST43:捕捉枠情報作成工程)。なお、捕捉枠情報作成工程(ST43)は、配置可能位置情報作成工程(ST42)よりも前に実行してもよい。
図16において、次いで携帯端末T(下受けピン配置支援装置)からの送信要求を受信すると(ST44においてYes)、管理コンピュータ3(管理部)は、下受けピン配置部Uへの複数の下受けピンPの配置を支援するための基板情報16a(配置支援情報I)、配置部情報16b、捕捉枠情報16cを要求元の携帯端末T(下受けピン配置支援装置)に送信する(ST45:情報送信工程)。このように、管理コンピュータ3は、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)における下受けピン配置支援処理で使用される各種情報を作成して管理する。
すなわち、管理コンピュータ3は、下受けピン配置部Uへの複数の下受けピンPの配置を支援するための配置支援情報Iを携帯端末T(下受けピン配置支援装置)に送信する管理側通信部3a(管理側送信部)を備えている。そして管理コンピュータ3は、基板23の実装面23aの裏面23bを下受けする下受けピンPの下受けピン配置部Uへの配置を支援する携帯端末T(下受けピン配置支援装置)の外部に設けられる下受けピン配置支援管理装置となる。
なお、作業者が部品実装装置M1の下受けピン配置部Uへのピン配置作業を終え、部品実装装置M1と同じピン配置で部品実装装置M2のピン配置作業をする場合は、以下の手順で作業が行われる。すなわち、部品実装装置M1のピン位置情報16fが携帯端末Tから送信された後(ST13)、管理コンピュータ3はそのピン位置情報16fを取得して(ST41)、配置可能領域I3を含む基板情報データ42aを作成する(ST42)。次いで管理コンピュータ3が送信した(ST45)基板情報16aを携帯端末Tが取得して(ST1)、部品実装装置M2のピン配置作業(ST2〜ST13)が行われる。
このように、部品実装装置M1の下受けピン配置部Uにおける下受けピンPを配置可能な位置情報(配置可能領域I3)を基に、下受けピンPを配置可能な位置を特定する情報(配置可能領域I3)を部品実装装置M2の下受けピン配置部Uの映像に重ねて表示することができる(ST6)。これによって、同じ基板23に対して部品実装作業が行われる部品実装装置M1と部品実装装置M2(部品実装装置M3,M4も同様)で、下受けピン配置部Uに同じピン配置で下受けピンPを配置することを容易に実現することができる。
上記説明したように本実施の形態の携帯端末Tは、基板23の実装面23aの裏面23bを下受けする下受けピンPの下受けピン配置部Uへの配置を支援する下受けピン配置支援装置である。下受けピン配置支援装置は、撮影部(カメラ12)と、撮影部により撮影されている情報を基に、下受けピン配置部Uの映像を表示する表示部11aと、映像に下受けピン配置部Uへの複数の下受けピンPの配置を支援するための配置支援情報Iを重ねて表示する支援情報表示処理部(支援表示処理部15c)とを備えている。
これによって、携帯端末T(下受けピン配置支援装置)は、大掛かりな装置構成を必要とせずに作業者による下受けピンPの下受けピン配置部Uへの配置を支援することができる。