図1ないし図6は、本発明の実施形態による鞍乗型車両を示している。具体的には、図1は本発明の実施形態による鞍乗型車両を右側から見た図であり、図2は、当該鞍乗型車両を左側から見た図であり、図3は当該鞍乗型車両を上側から見た図である。また、図4、図5、図6は、図1、図2、図3に示す鞍乗型車両を導風カウルを取り除いた状態でそれぞれ示している。なお、以下の実施形態の説明において、前、後、左、右、上、下の各方向は、鞍乗型車両の運転シートに着座した運転者を基準にする。
(鞍乗型車両の基本構成)
図1ないし図3に示すように、本発明の実施形態による鞍乗型車両1は例えば自動二輪車である。図4に示すように、鞍乗型車両1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ3、一対のメインフレーム4、一対のダウンチューブ5、および一対のピボットフレーム6を備えている。ヘッドパイプ3は、鞍乗型車両1の前部かつ上部に配置されている。一対のメインフレーム4は、図6に示すように、ヘッドパイプ3から左右に拡開しつつ、後方へ伸長している。一対のダウンチューブ5は、図4および図5に示すように、ヘッドパイプ3から後方に傾斜しつつ下方へ伸長した後、湾曲し、その後、ほぼ水平方向に後方へ伸長している。ここで、図3、図6、図10および図11中のSは、鞍乗型車両1の左右方向のちょうど中間を前後方向に貫く基準線を示している。一対のダウンチューブ5は、図10に示すように、この基準線Sの左側および右側にそれぞれ位置し、互いに所定距離離間し、かつ互いに平行に配置されている。また、各ピボットフレーム6は、図4および図5に示すように、メインフレーム4の後端部とダウンチューブ5の後端部との間を上下方向に伸長している。また、図示しないが、車体フレーム2は、各メインフレーム4の後端側から後方へ伸長するシートレール、並びにメインフレーム4の間、ダウンチューブ5の間、およびピボットフレーム6の間を連結するブリッジフレーム等を備えている。
また、図4に示すように、車体フレーム2のヘッドパイプ3には、ステアリングシャフト(図示せず)が挿入され、ステアリングシャフトにはブラケットを介してフロントフォーク11の上端側が支持され、フロントフォーク11の下端側には前輪12が支持されている。また、ステアリングシャフトには、ブラケットを介してハンドル13が設けられている。一方、各ピボットフレーム6には、スイングアーム15の前端側が支持され、スイングアーム15の後端側には後輪16が支持されている。また、前輪12と後輪16との間に位置し、一対のメインフレーム4、一対のダウンチューブ5、および一対のピボットフレーム6により囲まれた空間内にはエンジン31が設けられている。エンジン31は、エンジンマウントを介して、各メインフレーム4および各ダウンチューブ5等に固定されている。また、図5に示すように、鞍乗型車両1の左後部には、エンジン31の出力を後輪16に伝達する動力伝達機構として、トランスミッション38およびドライブシャフト39が設けられている。さらに、エンジン31の後方かつ上方には、運転者が着座する運転シート18が設けられ、運転シート18の下方には燃料タンク17が設けられている。また、運転シート18の後方には、排気音を低減するサイレンサ20が設けられている。また、エンジン31の下部後方には、図6に示すように、運転者が足をかける左右一対のステップ19が設けられている。
図7は、鞍乗型車両1に設けられたエンジン31、過給機42、インタークーラ47、サージタンク59、排気マニホールド61および送出配管65等を右側から見た図であり、図8は、これらを図7中の矢示VIII−VIII方向から見た図である。また、図9は、鞍乗型車両1に設けられたエアクリーナ41、過給機42、サージタンク59、燃料タンク17およびサイレンサ20を上側から見た図である。
図7に示すように、エンジン31は、前、後に配置された一対のシリンダを有する横置きV型2気筒のエンジンである。すなわち、エンジン31は、クランクケース32と、クランクケース32の上部前側に配置された前側シリンダ33と、クランクケース32の上部後ろ側に配置された後ろ側シリンダ35とを備えている。前側シリンダ33は、前方に傾斜しており、前側シリンダ33の上部にはシリンダヘッド34が設けられている。また、後ろ側シリンダ35は、後方に傾斜しており、後ろ側シリンダ35の上部にはシリンダヘッド36が設けられている。
また、クランクケース32の底部には、エンジンオイルを貯留するオイル貯留部としてのオイルパン37が設けられている。鞍乗型車両1には、クランクケース32の底側に設けられたオイルパン37にエンジンオイルを貯留し、そのエンジンオイルをポンプで汲み上げて、エンジン31の各部に圧送するウェットサンプ方式が採用されている。
エンジン31の理想状態時(例えば整備によりエンジンオイルの貯留量を整えた直後)には、所定量のエンジンオイルがオイルパン37に貯留されている。図7中のLは、理想状態時に所定量のエンジンオイルがオイルパン37に貯留された状態におけるエンジンオイルの油面の位置、すなわちオイルレベルを示している。オイルレベルLは、オイルパン37の底面よりも高く、かつエンジン31のクランクシャフトの軸線Xよりも低い。
(鞍乗型車両の吸気系)
また、鞍乗型車両1には、燃料燃焼用の空気を浄化するエアクリーナ41が設けられている。図8または図9に示すように、エアクリーナ41は、エンジン31の左方に配置されている。
また、鞍乗型車両1には、エアクリーナ41により浄化された空気を圧縮する過給機42が設けられている。過給機42は、エアクリーナ41により浄化された空気を圧縮するコンプレッサ部43と、コンプレッサ部43を駆動するタービン部44とを備えている。
図7に示すように、過給機42は、エンジン31の左右方向一側、具体的には前側シリンダ33の右方に配置されている。より具体的には、過給機42は、鞍乗型車両1の側面視において、前側シリンダ33と重なる位置に配置されている。また、過給機42は、オイルレベルLよりも高い位置に配置されている。また、過給機42は、クランクシャフトの軸線Xよりも高い位置に配置されている。また、過給機42は、コンプレッサ部43がタービン部44よりも前側となるように配置されている。また、過給機42は、左右方向においてエアクリーナ41の反対側に配置されている。
過給機42がエンジン31の側方に配置されているので、例えば上記特許文献2の第2図に示されているような、過給機がエンジンの前方に配置された従来の鞍乗型車両と比較して、鞍乗型車両1の走行中に、例えば回転する前輪12によって巻き上げられた飛び石、砂、その他地面に散在した物が過給機42に当たり難い。したがって、過給機42を飛び石等から保護することができる。また、過給機42がエンジン31の側方に配置されているので、過給機がエンジンの前方または後方に配置された従来の鞍乗型車両と比較して、鞍乗型車両1を前後方向に小さくすることができる。
また、過給機42が、鞍乗型車両1の側面視において、前側シリンダ33と重なる位置に配置されているので、例えば上記特許文献3の第1図に示されているような、過給機がエンジンの後方に配置された従来の鞍乗型車両と比較して、運転シート18に着座した運転者の足と過給機42との間に長い距離が確保されており、過給機42が各ステップ19から大きく離れている。過給機42のタービン部44は、エンジン31の排気を利用してタービンホイールを回転させるため、排気の熱により高温となる。また、過給機42のコンプレッサ部43は空気を圧縮するので高温となる。過給機42と運転者の足との間の距離を長くすることで、過給機42から発せられる高温の熱が運転者の足に伝わることを防止でき、運転者を保護することができる。
また、過給機42は、オイルレベルLよりも高い位置に配置されているので、過給機42へ供給したエンジンオイルを自由落下によりオイルパン37へ戻すことができる。すなわち、過給機42は、タービン部44に設けられたタービンホイールを回転させると共に、コンプレッサ部43に設けられたコンプレッサインペラを回転させるためのベアリングを備えている。鞍乗型車両1は、この過給機42のベアリングを潤滑し、または冷却するために、オイルパン37に貯留されたエンジンオイルをポンプで汲み上げ、エンジン31の各部だけでなく、過給機42のベアリングへ供給する機構を備えている。過給機42が、オイルパン37に貯留されたエンジンオイルのオイルレベルLよりも高い位置に配置されているので、過給機42のベアリングに供給されたエンジンオイルを重力によりオイルパン37へ落とすことができる。したがって、過給機42へ供給したエンジンオイルを回収するポンプを別途設ける必要がないので、鞍乗型車両1の部品点数を減らして製造コストを削減することができると共に、鞍乗型車両1の軽量化を図ることができる。
また、エアクリーナ41と過給機42との間には、エアクリーナ41により浄化された空気を過給機42のコンプレッサ部43へ送るインレット配管45が設けられている。インレット配管45は、左右方向に伸長し、図8に示すように、ラジエータ46とインタークーラ47との間に形成された空間に配置されている。インレット配管45の左端はエアクリーナ41の排出口41Aに接続され、インレット配管45の右端はコンプレッサ部43の吸入口43Aに接続されている。
また、図7に示すように、鞍乗型車両1において、エンジン31の前方には、エンジン31を冷却する冷却水を、走行時に受ける風(走行風)を利用して冷却するラジエータ46、および過給機42により圧縮されて高温となった空気を、走行風を利用して冷却するインタークーラ47が設けられている。ラジエータ46およびインタークーラ47は、左右一対のダウンチューブ5において後方に傾斜しつつ上下方向に伸長している部分の前側に、上下方向に並んで配置されている。また、インタークーラ47はラジエータ46よりも上側に配置されている。また、図8に示すように、ラジエータ46およびインタークーラ47はいずれも鞍乗型車両1の左右方向中間部に配置されている。
ここで、図10は、インタークーラ47を、ダウンチューブ5、エアクリーナ41および過給機42と共に示している。図10に示すように、インタークーラ47は、複数の空気通路およびこれら空気通路間に配置された放熱フィンを有するコア48と、コア48の下側に配置され、過給機42のコンプレッサ部43から送られた空気をコア48へ供給するロワーチューブ49と、コア48の上側に配置され、コア48を通って冷却された空気をスロットルボディ54(図7参照)に向けて排出するアッパーチューブ51を備えている。
また、ロワーチューブ49には、コンプレッサ部43からの空気をロワーチューブ49内へ流入させる吸入部50が設けられている。吸入部50は、ロワーチューブ49の後部の左右方向中間部に配置されている。また、吸入部50とコンプレッサ部43の排出口43Bとの間には両者間を接続するアウトレット配管53が設けられている。
また、アッパーチューブ51には、コア48からアッパーチューブ51内へ流出した空気をスロットルボディ54に向けて排出する排出部52が設けられている。排出部52は、アッパーチューブ51の右部に配置されている。
また、図7に示すように、鞍乗型車両1において、エンジン31の前側シリンダ33のシリンダヘッド34の上方には、スロットルボディ54が設けられている。また、スロットルボディ54の内部にはスロットルバルブ55が設けられている。
また、インタークーラ47とスロットルボディ54との間には、インタークーラ47により冷却された空気をスロットルボディ54へ送るインタークーラアウト配管56が設けられている。ここで、図11はインタークーラアウト配管56、スロットルボディ54、サージタンク59等を示している。図11に示すように、インタークーラアウト配管56の前端は、インタークーラ47のアッパーチューブ51に設けられた排出部52に接続され、インタークーラアウト配管56の後端は、スロットルボディ54に接続されている。
また、図7に示すように、鞍乗型車両1には、スロットルバルブ55が閉じられたときにコンプレッサ部43とスロットルバルブ55との間の余剰圧力をコンプレッサ部43の上流側に逃がすためのエアバイパス配管57およびエアバイパスバルブ58が設けられている。エアバイパス配管57は、コンプレッサ部43の下流側に位置するインタークーラアウト配管56と、コンプレッサ部43の上流側に位置するインレット配管45との間を接続している。また、エアバイパスバルブ58は、エアバイパス配管57を開閉するバルブである。
また、図7に示すように、鞍乗型車両1において、エンジン31の前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35の上方には、インタークーラ47により冷却され、スロットルボディ54を通って送られた空気を一時的に貯えるサージタンク59が設けられている。また、サージタンク59はスロットルボディ54の後方に配置されている。図11に示すように、スロットルボディ54は、ホースまたはパイプ等の配管により、サージタンク59の前端部に設けられた吸入口59Aに接続されている。
また、サージタンク59の下部に設けられた排気口(図示せず)は、前側シリンダ33のシリンダヘッド34に設けられた吸気ポート、および後ろ側シリンダ35のシリンダヘッド36に設けられた吸気ポートに、それぞれ吸気管60を介して接続されている。また、図示しないが、各吸気管60にはインジェクタが設けられている。
鞍乗型車両1における吸気系の動作は次の通りである。すなわち、外部からエアクリーナ41に取り込まれた空気は、エアクリーナ41により浄化される。浄化された空気はインレット配管45を通って過給機42のコンプレッサ部43へ送られ、コンプレッサ部43により圧縮される。圧縮された空気はアウトレット配管53を通り、さらにインタークーラ47のロワーチューブ49を通ってインタークーラ47のコア48へ送られ、コア48により冷却される。冷却された空気は、インタークーラ47のアッパーチューブ51、インタークーラアウト配管56、およびスロットルボディ54を通り、吸入口59Aからサージタンク59内へ流入し、サージタンク59において一時的に貯えられる。さらに、サージタンク59に一時的に貯えられることにより整流された空気は、吸気管60を通って前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35にそれぞれ供給される。
(鞍乗型車両の排気系)
一方、鞍乗型車両1には、図7に示すように、エンジン31の前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35から排出される排気を過給機42のタービン部44に供給する排気マニホールド61が設けられている。また、鞍乗型車両1には、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35からタービン部44に供給された排気をタービン部44からサイレンサ20(図4参照)へ送り出す送出配管65が設けられている。タービン部44は、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35からの排気の熱エネルギーを利用して、タービンホイールを回転させ、コンプレッサ部43を駆動する。
ここで、図12は、過給機42、排気マニホールド61および送出配管65等を示している。図12に示すように、排気マニホールド61は、前側シリンダ33から排出される排気をタービン部44に供給する第1の排気通路を形成する前側排気管62と、後ろ側シリンダ35から排出される排気をタービン部44に供給する第2の排気通路を形成する後ろ側排気管63とを備えている。排気マニホールド61は、前側排気管62と後ろ側排気管63とを鋳造により一体に成型し、または前側排気管62と後ろ側排気管63とを溶接により結合することにより形成されている。
前側排気管62の一端は、前側シリンダ33のシリンダヘッド34の前部に設けられた排気ポートに接続されている。前側排気管62は、シリンダヘッド34の排気ポートから前方へ僅かに伸長した後、湾曲し、その後、右方へ伸長した後、湾曲し、その後、前側シリンダ33の右方を後方へ伸長している。
また、後ろ側排気管63の一端は、後ろ側シリンダ35のシリンダヘッド36の後部に設けられた排気ポートに接続されている。後ろ側排気管63は、シリンダヘッド36の排気ポートから後方へ僅かに伸長した後、湾曲し、その後、右方へ伸長した後、湾曲し、その後、後ろ側シリンダ35の右方を前方へ伸長し、さらに、前側シリンダ33の右方を前方へ伸長している。
前側排気管62の他端側と、後ろ側排気管63の他端側とは、過給機42のタービン部44の上方で出会い、互いに結合して1本の結合管部64となって下方へ伸長し、タービン部44の上部に形成された吸込口44Aに達している。そして、排気マニホールド61の結合管部64とタービン部44の吸込口44Aとは、排気マニホールド61の結合管部64の端部に設けられたフランジ64Aと、タービン部44の吸入口44Aの周囲に設けられたフランジ44Bとをボルト等により固定することにより接続されている。このように、排気マニホールド61、すなわち、前側排気管62および後ろ側排気管63は、過給機42のタービン部44よりも高い位置に配置されており、タービン部44の上方からタービン部44に接続されている。
一方、送出配管65は、過給機42のタービン部44から排出された排気をエンジン31の後方へ送出する第3の排気通路を形成する配管である。送出配管65の前端は、図12に示すように、タービン部44の排出口44Cに接続されている。具体的には、送出配管65の前端とタービン部44の排出口44Cとは、送出配管65の前端部に設けられたフランジ65Aと、タービン部44の排出口44Cの周囲に設けられたフランジ44Dとをボルト等により固定することにより接続されている。
また、送出配管65は、タービン部44の排出口44Cから、エンジン31の右方を、エンジン31の後方へ直線状に伸長している。具体的には、送出配管65の前端側は、後ろ側排気管63の直ぐ下側に位置し、後ろ側排気管63に沿って伸長している。すなわち、後ろ側排気管63と送出配管65とは、エンジン31の右方において、互いに隣接し、かつ同じ方向(前後方向)に互いに平行に伸長している。より具体的には、送出配管65は、タービン部44の排出口44Cの僅かに後方へ進んだ位置から、後ろ側シリンダ35の後部を超え、後ろ側排気管63が後ろ側シリンダ35の排気ポートに向かって左方へ湾曲し始める位置に達するまでの間、後ろ側排気管63に沿い、後ろ側排気管63に隣接している。
さらに、送出配管65の後端側は、エンジン31の右後方を、鞍乗型車両1の後部へ向かって直線状に伸長した後、サイレンサ20に接近するように湾曲し、送出配管65の後端はサイレンサ20に接続されている。
ここで、鞍乗型車両1では、ドライブシャフト39等の動力伝達機構が車両の左後部に配置されているので、その反対側の車両の右後部において、送出配管65の配管レイアウトの自由度が高い。したがって、送出配管65を後ろ側排気管63に沿うように容易に配管することができる。また、送出配管65を前後方向に直線状に伸長する形状とすることができ、排気効率を高めることができる。
また、送出配管65には、排気に含まれる一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等の有害な物質を無害な物質に変換する触媒66が設けられている。触媒66は、送出配管65の前端側であって後ろ側排気管63に隣接する部分に配置されている。
また、鞍乗型車両1において、後ろ側排気管63および送出配管65の前端側が保温カバー71によりまとめて覆われている。保温カバー71は例えばステンレス等の金属により形成されている。保温カバー71は、後ろ側排気管63および送出配管65においてエンジン31の右方を通る部分を覆っている。保温カバー71は、後ろ側排気管63の大部分を覆っており、また、送出配管65において後ろ側排気管63に沿って伸長している部分を覆っている。また、保温カバー71は、後ろ側排気管63と送出配管65の前端側をまとめて包み込むように、それらの全周を包囲している(図14参照)。また、保温カバー71は、送出配管65に設けられた触媒66をも覆っている。
鞍乗型車両1における排気系の動作は次の通りである。すなわち、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35から排出された排気は、排気マニホールド61における前側排気管62および後ろ側排気管63を通って過給機42のタービン部44へ送られた後、タービン部44から送出配管65を通ってサイレンサ20へ送られ、サイレンサ20から外部へ排出される。また、過給機42において、タービン部44に設けられたタービンホイールは、前側排気管62および後ろ側排気管63を通ってタービン部44へ送られた排気の熱エネルギー(排気の圧力)により回転する。これに伴い、コンプレッサ部43に設けられたコンプレッサインペラが回転する。これにより、インレット配管45を通ってコンプレッサ部43に送られた空気の圧縮が行われる。
ここで、鞍乗型車両1において、過給機42のタービン部44が前側シリンダ33の右方に配置されており、タービン部44と前側シリンダ33とが互いに接近している。これにより、前側排気管62を短くすることができる。したがって、前側排気管62を流通する排気の熱エネルギーの低下を抑えることができる。
これに対し、タービン部44と前側排気管62との位置関係と比較して、タービン部44と後ろ側排気管とは互いに離れている。この結果、後ろ側排気管63は、前側排気管62と比較して長い。しかしながら、送出配管65の前端側が、後ろ側排気管63の下側を、後ろ側排気管63に沿って伸長しているので、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の熱エネルギーの低下を抑制することができる。すなわち、送出配管65にはタービン部44から排出された高温の排気が流通する。送出配管65を後ろ側排気管63に沿うように配置し、後ろ側排気管63と送出配管65とを広い範囲において互いに隣接させることにより、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑えることができ、当該排気の熱エネルギーの低下を抑制することができる。
このように、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35のそれぞれからタービン部44へ供給される排気の熱エネルギーの低下を抑制することができるので、タービン部44の駆動に関するエネルギー効率を良くすることができる。
また、後ろ側排気管63に送出配管65を沿わせて後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑制することにより、前側排気管62と後ろ側排気管63との長さが異なるにもかかわらず、前側シリンダ33の排気温度と後ろ側シリンダ35の排気温度との差を小さくすることができる。これにより、前側シリンダ33と後ろ側シリンダ35との間で、燃調または点火時期の設定を互いに近づけることができ、エンジン出力の低下を抑えることができる。
また、鞍乗型車両1の送出配管65において、触媒66が後ろ側排気管63に隣接する位置に配置されているので、後ろ側排気管63を流通する排気の熱を利用して触媒66の温度を迅速に高めることができる。したがって、例えば冷間始動時において触媒66の温度がその活性温度に達する時間を短くすることができる。
さらに、保温カバー71により後ろ側排気管63および送出配管65の前端側を覆うことにより、後ろ側排気管63を流通する排気の熱の後ろ側排気管63外への放出と、送出配管65を流通する排気の熱の送出配管65外への放出を抑えることができる。これにより、後ろ側排気管63および送出配管65をそれぞれ流通する排気の温度低下を抑えることができる。したがって、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑える効果を高めることができる。また、保温カバー71により触媒66を覆うことにより、冷間始動時において、触媒66の温度がその活性温度に達する時間を、より一層短くすることができる。保温カバー71のこのような有用性は、後述する右側導風カウル81が設けられた本実施形態による鞍乗型車両1において、より高まる。これについては後述する。
(導風カウル)
また、鞍乗型車両1は、図1ないし図3に示すように、左右一対の導風カウル、すなわち、右側導風カウル81および左側導風カウル91を備えている。右側導風カウル81は、走行風を少なくとも過給機42へ導く第1のダクトの具体例であり、左側導風カウル91は走行風を少なくともエアクリーナ41へ導く第2のダクトの具体例である。
右側導風カウル81は、図1に示すように、鞍乗型車両1の右部に設けられている。右側導風カウル81は、エンジン31の右方を前後方向に伸長している。また、右側導風カウル81の上下方向における位置は、鞍乗型車両1の上下方向の略中間の位置に設定されており、具体的には、エンジン31のクランクケース32の上部に対応する位置、または前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35の下部に対応する位置に設定されている。
また、右側導風カウル81の前端部は、エンジン31右前方に位置している。具体的には、本実施形態において、右側導風カウル81の前端部は、フロントフォーク11の上下方向中間部であって、フロントフォーク11の右方に位置している。また、右側導風カウル81の前端は、フロントフォーク11の上下方向中間部よりも前方に位置している。
また、右側導風カウル81の後端部は、エンジン31の右後方に位置している。具体的には、本実施形態において、右側導風カウル81の後端部は燃料タンク18の右側後方に位置し、右側導風カウル81の後端は、サイレンサ20の右前部に近い位置に達している。
また、図3に示すように、本実施形態における右側導風カウル81は、その外側面(右面)のいかなる部分も、ハンドル13の右端よりも左側であり、かつ右側のステップ19の右端よりも左側に位置している。このように、右側導風カウル81が右外側に大きく張り出していないので、鞍乗型車両1の車幅を小さくすることができる。
ここで、図13は、右側導風カウル81の詳細な構成を示し、図14は、図13中の矢示XIII−XIII方向から見た右側導風カウル81の断面を示している。図13に示すように、右側導風カウル81は、流入部82、第1のカバー部としての前側カバー部83、第2のカバー部としての中間カバー部84、後ろ側カバー部85および流出部86を有している。
流入部82は、右側導風カウル81の前端部であり、例えば図13中の前端位置P1から位置P2までの部分である。流入部82は筒状に形成されている。また、流入部82の前端部には、走行風を右側導風カウル81内へ流入させる流入口87が形成されている。流入口87は前方に向いて開口している。また、流入口87は、図1に示すように、前輪12よりも高く、ヘッドパイプ3よりも低い位置に配置されている。また、流入口87はフロントフォーク11の右方に位置している。
右側導風カウル81の前側カバー部83は、右側導風カウル81における前側部分であり、例えば図13中の位置P2から位置P3までの部分である。前側カバー部83は、主に過給機42、前側排気管62においてエンジン31の右方を通る部分、およびインタークーラ47の右側面を覆っている。例えば、前側カバー部83の上側壁部、右側壁部および下側壁部はそれぞれ、大きな孔が形成されていない壁板であり、過給機42の上部、右部、下部、前側排気管62において前側シリンダ33の右方を通る部分、およびインタークーラ47の右側面を覆っている。また、前側カバー部83の左側壁部には、インレット配管45、アウトレット配管53、および前側排気管62において前側シリンダ33の前方を通る部分を配管することを可能にし、かつ、インタークーラ47のコア48を通った後の走行風を右側導風カウル81内に流入させることを可能にするための穴(図示せず)が形成されている。
右側導風カウル81の中間カバー部84は、右側導風カウル81の前後方向中間部分であり、例えば図13中の位置P3から位置P4までの部分である。中間カバー部84は、後ろ側排気管63においてエンジン31の右方を通る部分、送出配管65においてエンジン31の右方を通る部分、および保温カバー71を覆っている。中間カバー部84は、図14に示すように、筒状に形成され、後ろ側排気管63および送出配管65においてエンジン31の右方を通る部分をまとめて包囲しつつ、図13に示すように、前後方向に直線状に伸長している。また、中間カバー部84は、保温カバー71をその外側から覆っている。また、本実施形態において、中間カバー部84は前側カバー部83よりも細い管状に形成されている。また、中間カバー部84の後端側の左側壁部には、後ろ側排気管63において後ろ側シリンダ35の後方を通る部分を配管することを可能にするための孔(図示せず)が形成されている。
右側導風カウル81の後ろ側カバー部85は、右側導風カウル81の後ろ側部分であり、例えば図13中の位置P4から位置P5までの部分である。後ろ側カバー部85は、送出配管65においてエンジン31の後ろ側に位置する部分を覆っている。後ろ側カバー部85は筒状に形成され、送出配管65においてエンジン31の後ろ側に位置する部分を包囲している。また、後ろ側カバー部85は、前後方向に直線状に伸長している。また、本実施形態において、後ろ側カバー部85は、中間カバー部84よりも細い管状に形成されている。
右側導風カウル81の流出部86は、右側導風カウル81の後端部であり、例えば図13中の位置P5から後端位置P6までの部分である。流出部86は筒状に形成されている。また、流出部86は、右側導風カウル81内を流通した高温の空気を排出すべき方向を定めるために所定の形状を有している(例えば図13に示すように上向きに湾曲している)。また、流出部86の後端部には、後ろ側カバー部85から運ばれた高温の空気を外部へ流出させる流出口88が形成されている。流出口88は、鞍乗型車両1の運転者が足を置くステップ19よりも後ろ側に位置している。
以上のような構成を有する右側導風カウル81において、鞍乗型車両1の走行中、走行風が、鞍乗型車両1の前方から流入口87を通って流入部82に流入する。そして、流入部82内へ流入した走行風は、流入部82により前側カバー部83へ導かれ、前側カバー部83、中間カバー部84、後ろ側カバー部85および流出部86の内部を順次流通し、流出口88から排出される。
前側カバー部83内を流通する走行風は、過給機42のコンプレッサ部43に吹き当たる。これにより、コンプレッサ部43により圧縮された空気が冷却される。また、前側カバー部83内において、過給機42の周囲は過給機42から発せられる熱により高温となり、また、前側排気管62の周囲の空気は、前側排気管62を流通する排気の熱により高温となる。前側カバー部83内を流通する走行風は、これら高温の空気を流出口88へ向けて押し流す。
また、中間カバー部84内においては、後ろ側排気管63および送出配管65内を流通する排気の熱が保温カバー71に伝わり、さらに、その熱が保温カバー71からその外側へ放出される。中間カバー部84内を流通する走行風は、保温カバー71から放出された熱により高温になった空気を流出口88へ向けて押し流す。なお、後ろ側排気管63および送出配管65の外周面と保温カバー71の内周面との間の空間は、保温カバー71の外周面と中間カバー部84の内周面との間の空間と比較して小さいため、中間カバー部84において、走行風の大部分は、保温カバー71の外周面と中間カバー部84の内周面との間の空間を流通する。
また、後ろ側カバー部85内では、送出配管65を流通する排気の熱により、送出配管65の周囲の空気の温度が上昇する。後ろ側カバー部85内を流通する走行風は、送出配管65の周囲の高温の空気を流出口88へ向けて押し流す。
また、鞍乗型車両1の走行中、走行風は、鞍乗型車両1の前方からインタークーラ47のコア48を通り、コア48の後方へ流れる。コア48を通った走行風は、コア48の空気通路を流通する圧縮空気の熱を受けて温度が上昇している。このとき、前側カバー部83内の圧力は、コア48の後方の箇所の圧力よりも低いので、コア48の後方へ流れ出た高温の走行風は、前側カバー部83の左側壁部に形成された上記穴から前側カバー部83内へ流入し、右側導風カウル81内を流出口88へ向かって流れる。
このように右側導風カウル81内を流通する走行風、およびこの走行風により押し流された高温の空気は、流出部86によりその排出方向が定められ、流出口88から、鞍乗型車両1の後部において走行時に圧力が低くなる部分、例えば、リヤカウルと後輪16との間等に排出される。また、右側導風カウル81内において走行風により押し流された高温の空気は、流出口88から、運転シート18に着座した運転者よりも後ろ側、具体的には、右側のステップ19よりも後ろ側に排出される。
右側導風カウル81によれば、過給機42、前側排気管62、保温カバー71、および送出配管65(保温カバー71により覆われていない部分)から放出された熱により高温となった空気、並びにコア48を通って高温となった空気を、運転者よりも後ろ側へ排出することができる。これにより、このような高温の空気が運転者の足等にかかることを防ぐことができる。
また、右側導風カウル81によれば、走行風を過給機42のコンプレッサ部43へ導くことができる。これにより、コンプレッサ部43へ吹き当たる走行風の量を増やすことができ、過給機42のコンプレッサ部43により圧縮された空気の冷却効果を高めることができる。したがって、インタークーラ47と協働し、コンプレッサ部43により圧縮された空気を迅速に冷却することができる。
また、右側導風カウル81において、中間カバー部84および後ろ側カバー部85を細長い管状に形成したことにより、中間カバー部84および後ろ側カバー部85を流通する走行風の流れを速くすることができる。また、中間カバー部84および後ろ側カバー部85を直線状に伸長する形状としたことにより、中間カバー部84および後ろ側カバー部85内を通る走行風の流れを円滑にすることができる。したがって、右側導風カウル81によれば、過給機42、前側排気管62、保温カバー71等から放出された熱により高温となった空気、並びにコア48を通って高温となった空気を、運転者の足の後ろ側へ円滑に運ぶことができる。
また、運転者の足の近くを通過する後ろ側排気管63および送出配管65を右側導風カウル81により覆うことにより、運転者の足等が後ろ側排気管63または送出配管65に接触することを防止できる。したがって、後ろ側排気管63の熱および送出配管65の熱から運転者を保護することができる。
また、右側導風カウル81によれば、過給機42、前側排気管62、後ろ側排気管63、送出配管65、保温カバー71等に飛び石等が当たることを防ぐことができ、これらの部品を保護することができる。
また、右側導風カウル81の流入口87を前輪13よりも高い位置に配置したことにより、地面からの飛び石等が流入口87から右側導風カウル81内に入って過給機42等に当たることを抑制することができ、過給機42等を保護することができる。また、前輪12とヘッドパイプ3との間であって、フロントフォーク11の右方には、他の部品があまり配置されていない空き領域が存在している。このような障害物の少ない箇所に流入口87を配置することで、走行風を右側導風カウル81内へ効率よく取り込むことができ、また、右側導風カウル81内へ取り込む走行風の量を増やすことができる。
また、右側導風カウル81の流出口88をステップ19よりも後ろ側に配置したことにより、過給機42、前側排気管62、保温カバー71等から放出された熱により高温となった空気、並びにコア48を通って高温となった空気を、運転者の足の後ろ側へ排出することができ、高温の空気が運転者にかかることを確実に防ぐことができる。
また、後ろ側排気管63および送出配管65においてエンジン31の右方を通る部分を保温カバー71で覆い、保温カバー71の外周側を右側導風カウル81により覆う構成としたことにより、後ろ側排気管63および送出配管65のそれぞれを流通する排気の温度が、右側導風カウル81を流通する走行風により低下することを抑制することができる。したがって、右側導風カウル81に走行風を通し、過給機42等の熱により高温となった空気を走行風により運転者よりも後ろ側へ排出する構成を採用した場合でも、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑える効果を維持することができる。
また、触媒66を保温カバー71で覆い、保温カバー71の外周側を右側導風カウル81により覆う構成としたことにより、触媒66が、右側導風カウル81を流通する走行風により冷やされることを抑制することができる。したがって、右側導風カウル81に走行風を通し、過給機42等の熱により高温となった空気を走行風により運転者よりも後ろ側へ排出する構成を採用した場合でも、触媒66において活性温度への到達時間を短くする効果を維持することができる。
また、運転者の足の近くに配置された後ろ側排気管63および送出配管65を保温カバー71および右側導風カウル81で二重に覆うことにより、後ろ側排気管63または右側導風カウル81から発せられる高温の熱が運転者の足等に伝わることを確実に防止することができる。
一方、左側導風カウル91は、図2に示すように、鞍乗型車両1の左部に設けられている。本実施形態において、左側導風カウル91の形状および配置は、右側導風カウル81と略左右対称となるように設定されている。すなわち、左側導風カウル91は、エンジン31の左方を前後方向に伸長している。また、左側導風カウル91の上下方向における位置は、鞍乗型車両1の上下方向の略中間の位置に設定されている。また、左側導風カウル91の前端部は、エンジン31左前方、具体的には、フロントフォーク11の上下方向中間部であって、フロントフォーク11の左方に位置している。また、左側導風カウル91の前端は、フロントフォーク11の上下方向中間部よりも前方に位置している。また、左側導風カウル91の後端部は、エンジン31の左後方、具体的には、燃料タンク18の左側後方に位置している。また、左側導風カウル91の後端は、サイレンサ20の左前部に近い位置に達している。また、図3に示すように、左側導風カウル91は、その外側面(左面)のいかなる部分も、ハンドル13の左端よりも右側であり、かつ左側のステップ19の左端よりも右側に位置している。
ここで、図15は、左側導風カウル91の詳細な構成を示している。図15に示すように、左側導風カウル91は、流入部92、前側カバー部93、後ろ側カバー部94および流出部95を有している。
流入部92は、左側導風カウル91の前端部(例えば前端位置P11から位置P12までの部分)であり、略筒状に形成されている。また、流入部92の前端部には、走行風を左側導風カウル91内へ流入させる流入口96が形成されている。
左側導風カウル91の前側カバー部93は、左側導風カウル91における前側部分(例えば位置P12から位置P13までの部分)である。前側カバー部93は、主にエアクリーナ41、およびインタークーラ47の左側面を覆っている。また、前側カバー部93の右側壁部には、インレット配管45を配管することを可能にし、かつ、インタークーラ47のコア48を通った後の走行風を左側導風カウル91内に流入させることを可能にするための穴(図示せず)が形成されている。
左側導風カウル91の後ろ側カバー部94は、左側導風カウル91の前後方向中間から後ろ側にかけての部分(例えば位置P13から位置P14までの部分)である。後ろ側カバー部94は、筒状に形成され、前後方向に直線状に伸長している。
左側導風カウル91の流出部95は、左側導風カウル91の後端部(例えば位置P14から後端位置P15までの部分)である。流出部95は筒状に形成され、また、左側導風カウル91内を流通した空気を排出すべき方向を定めるために所定の形状を有している(例えば図15に示すように上向きに湾曲している)。また、流出部95の後端部には、左側導風カウル91内を流通した空気を外部へ排出する流出口97が形成されている。
以上のような構成を有する左側導風カウル91において、鞍乗型車両1の走行中、走行風は、鞍乗型車両1の前方から流入口96を通って流入部92内へ流入し、さらに前側カバー部93内を後方へ流通する。前側カバー部93内を流通する走行風の一部はエアクリーナ41に取り込まれ、浄化された後、過給機42のコンプレッサ部43へ供給される。また、前側カバー部93内を流通する走行風の他の一部はエアクリーナ41の周囲を通過し、後ろ側カバー部94および流出部95の内部を順次流れ、流出口97へ向かう。また、インタークーラ47のコア48を通った高温の走行風は、前側カバー部93の左側壁部に形成された上記穴から前側カバー部93内へ流入し、左側導風カウル91内を流れ、流出口97へ向かう。このように左側導風カウル91内を流れる走行風は、流出口97から、鞍乗型車両1の後部において走行時に圧力が低くなる部分、例えば、リヤカウルと後輪16との間等に排出される。また、この走行風は、流出口97から、運転シート18に着座した運転者よりも後ろ側、具体的には、左側のステップ19よりも後ろ側に排出される。
左側導風カウル91によれば、エアクリーナ41を覆い、走行風をエアクリーナ41へ導くことにより、エアクリーナ41における空気の吸気効率を高めることができる。また、左側導風カウル91でエアクリーナ41を覆うことで、エアクリーナ41の吸気音が外部に漏れることを抑制することができると共に、飛び石等からエアクリーナ41を保護することができる。また、前輪12よりも高い位置に配置された流入口87から空気を取り込むことにより、温度が低く、かつゴミの少ない空気をエアクリーナ41に送ることができる。
また、左側導風カウル91の形状および配置を、右側導風カウル81の形状および配置と略左右対称となるように設定することにより、鞍乗側車両1の左右の重量バランスをとることができ、また、鞍乗型車両1の外観のデザイン性を高めることができる。
なお、図13に示す右側導風カウル81の形状は一例にすぎない。右側導風カウル81の形状を次のように変更してもよい。右側導風カウル81の前端をフロントフォーク11とインタークーラ47との間の位置へ後退させ、これに伴い、流出口87の位置もフロントフォーク11とインタークーラ47との間の位置へ後退させてもよい。左側導風カウル91についても同様である。また、鞍乗型車両1にフロントカウルを設け、右側導風カウル81の前端部および左側導風カウル91の前端部をフロントカウルに連結してもよい。また、走行風を流入させる流入口をフロントカウルに形成し、このフロントカウルの流入口に、右側導風カウル81の流入口87および左側導風カウル91の流入口96を接続してもよい。また、左側導風カウル91の形状または配置を、右側導風カウル81の形状または配置と異ならせてもよい。
また、上述した各実施形態では、エンジン31の下部後方にバー状のステップ19が設けられた鞍乗型車両1を例にあげたが、本発明は、例えばエンジンの前部側方に板状のステップ(ステップボード)が設けられた鞍乗型車両にも適用することができる。
また、上述した各実施形態では、鞍乗型車両として自動二輪車を例にあげたが、本発明は他の種類の鞍乗型車両にも適用することができる。また、本発明は、3気筒以上のV型エンジンにも適用することができる。また、本発明は、前側シリンダがクランクケースから前方へ水平方向に伸長し、後ろ側シリンダがクランクケースから上方へ垂直方向に伸長する、いわゆるL型エンジンにも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。