以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
このフォーカスレンズ32の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒3に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ32を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ36によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1に沿って直進移動することになる。
上述したようにレンズ鏡筒3に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ36がレンズ鏡筒3に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ36と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ32が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ36の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ32は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
フォーカスレンズ32の位置はエンコーダ35によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ32の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒3に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
本実施形態のエンコーダ35としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターン(電極パターン)に、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
フォーカスレンズ32は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。
ここで、図2は、フォーカスレンズ32が駆動可能な駆動可能範囲と、エンコーダ35により検出可能なフォーカスレンズ32の位置(区分位置)との関係を示す図である。本実施形態では、図2に示すように、フォーカスレンズ32が駆動できる駆動範囲が、たとえば、D0〜D20の21の区分に分割されている。すなわち、本実施形態では、エンコーダ35により検出可能なフォーカスレンズ32の区分位置の数である分割区分数Nが21とされており、各区分D0〜D20は、無限遠端側から至近端側に向かって順に、区分番号NDが0〜20に設定されている。すなわち、至近端の区分D0は、区分番号ND=0とされ、その至近側の隣の区分D1は、区分番号ND=1とされる。また、無限遠端の区分D20は、区分番号ND=20とされ、その無限遠側の隣の区分D19は、区分番号ND=19とされる。なお、図2においては、フォーカスレンズ32の現在位置が、D11(区分番号ND=11)内に位置する場面を例示している。
そして、本実施形態では、エンコーダ35は、フォーカスレンズ32が現在位置する区分の位置を検出し、フォーカスレンズ32が現在位置する区分の区分番号ND(たとえば、図2に示す例では、区分番号ND=11)をレンズ制御部37に送信する。
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
レンズメモリ38は、図2に示すエンコーダ35により検出可能なフォーカスレンズ32の位置の情報として、分割区分数N(たとえば、図2に示す例では、分割区分数N=21)、無限遠端の区分番号ND_F(たとえば、図2に示す例では、分割区分数ND_F=0)および至近端の区分番号ND_N(たとえば、図2に示す例では、分割区分数ND_N=20)の情報を記憶している。なお、レンズメモリ38に記憶されている無限遠端の区分番号ND_Fおよび至近端の区分番号ND_Nは、フォーカスレンズ32が機械的に駆動することが可能な駆動範囲における、無限遠端および至近端の区分の位置を示すものである。すなわち、後述するフォーカスレンズ32の駆動可能範囲が制限された場合(たとえば後述する図3に示す場合)における、無限遠端および至近端の区分の位置とは異なる場合がある。
レンズ制御部37は、エンコーダ35から現在レンズ位置の区分番号ND(フォーカスレンズ32の現在位置の区分番号ND)を受信し、受信した現在レンズ位置の区分番号NDを、レンズメモリ38に記憶されている分割区分数N、至近端の区分番号ND_N、無限遠側の区分番号ND_Fとともに、フォーカスレンズ32の位置情報として、レンズ通信部39を介して、カメラ本体2のカメラ通信部29へと送信し、これらの情報を、最終的に後述するカメラ制御部21へと送信する。
また、レンズ制御部37は、たとえばフォーカスレンズ32の焦点調節に要する時間を短縮するために、たとえばカメラ本体2からの信号に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動可能な駆動可能範囲を制限(レンジリミット)する。具体的には、レンズ制御部37は、カメラ制御部21から駆動可能範囲を制限するための信号を受信した場合に、フォーカスレンズ32が機械的に駆動することが可能な駆動範囲のうち、カメラ制御部21により決定された駆動範囲のみにおいてフォーカスレンズ32が駆動可能となるように、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲を制限する。たとえば、図3に示す例において、レンズ制御部37は、フォーカスレンズ32が機械的に駆動できるD0〜D20の21の区分に対応する駆動範囲のうち、D10〜D15の6の区分に対応する範囲のみにおいてフォーカスレンズ32が駆動可能となるように、D10〜D15の6の区分に対応する範囲を駆動可能範囲として制限する。
このように、フォーカスレンズ32が駆動可能な駆動範囲が制限されている場合、レンズ制御部37は、制限されている駆動可能範囲に対応する区分を制限区分とし、現在レンズ位置の区分番号N
Dに加えて、この制限区分の数Nと、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号N
D_Nと、制限区分において至近端に位置する区分の無限遠側の区分番号N
D_Fとを、フォーカスレンズ32の位置情報として、レンズ通信部39を介して、カメラ本体2に送信する。たとえば、図3に示す例では、表1に示すように、現在レンズ位置の区分番号D
nである11と、制限区分の数である6と、制限区分において無限遠端に位置する区分の区分番号N
D_Fである10と、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号N
D_Nである15とを、フォーカスレンズ32の位置情報として、レンズ通信部39を介して、カメラ本体2に送信する。なお、レンズ制御部37によるフォーカスレンズ32の位置情報の送信方法については後述する。
さらに、レンズ制御部37は、上記データの送信に加えて、カメラ制御部21からの指令に基づいて、フォーカスレンズ32の駆動、絞り34による開口径の調節などレンズ鏡筒3全体の制御を実行する。
レンズ通信部39は、カメラ制御部21とマウント部4に設けられた電気信号接点部41を介して、カメラ本体2のカメラ通信部29と、互いに信号の授受が可能に構成されている。レンズ通信部39は、レンズ鏡筒3の通信インターフェースであり、また、カメラ通信部29はカメラ本体2の通信インターフェースであり、レンズ鏡筒3のレンズ制御部37と、カメラ本体2のカメラ制御部21は、これら通信インターフェースを使用して、互いにデータ通信を実行する。なお、本実施形態においては、通信インターフェースであるレンズ通信部39とカメラ通信部29との間においては、ホットライン通信と、コマンドデータ通信との2種類のデータ通信が併用して実行される。そのため、構造上は、ホットライン通信を行なう通信ラインと、コマンドデータ通信を行なう通信ラインとは別個に設けられている。
ホットライン通信は、コマンドデータ通信を行なう周期よりも短い第1の所定周期(本実施形態においては、たとえば、1ミリ秒)ごとに実行される通信である。本実施形態においては、フォーカスレンズ32の駆動指令(フォーカスレンズ32の駆動パルス)など、レンズ鏡筒3を制御するためのデータについては、ホットライン通信によりデータの送受信が実行される。
一方、コマンドデータ通信は、ホットライン通信を行なう周期よりも長い第2の所定周期((本実施形態においては、たとえば、16ミリ秒)ごとに実行される通信である。本実施形態においては、上述したフォーカスレンズ32の位置データ(分割区分数N、至近端の区分番号ND_N、無限遠側の区分番号ND_F、および現在レンズ位置の区分番号ND)など、レンズ鏡筒3の現在の状況を示すデータについて、コマンドデータ通信によりデータの送受信が実行される。
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDやCMOSなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるカメラメモリ24に記録される。なお、カメラメモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。撮像素子22の構造の詳細は後述する。
カメラ本体2には、撮像素子22で撮像される像を観察するための観察光学系が設けられている。本実施形態の観察光学系は、液晶表示素子からなる電子ビューファインダ(EVF)26と、これを駆動する液晶駆動回路25と、接眼レンズ27とを備えている。液晶駆動回路25は、撮像素子22で撮像され、カメラ制御部21へ送出された撮影画像情報を読み込み、これに基づいて電子ビューファインダ26を駆動する。これにより、ユーザは、接眼レンズ27を通して現在の撮影画像を観察することができる。なお、光軸L2による上記観察光学系に代えて、または、これに加えて、液晶ディスプレイをカメラ本体2の背面等に設け、この液晶ディスプレイに撮影画像を表示させることもできる。
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、カメラ通信部29およびレンズ通信部39を介して、レンズ制御部37から、フォーカスレンズ32の位置情報(すなわち、分割区分数N、至近端の区分番号ND_N、無限遠側の区分番号ND_F、および現在レンズ位置の区分番号ND)などの各種レンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へデフォーカス量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、位相検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出、およびコントラスト検出方式による撮影光学系の焦点状態の検出を行う。なお、具体的な焦点状態の検出方法については、後述する。
操作部28は、シャッターレリーズボタンなどの撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
次に、本実施形態に係る撮像素子22について説明する。
図4は、撮像素子22の撮像面を示す正面図、図5は、図4のV部分を拡大して焦点検出画素222a,222bの配列を模式的に示す正面図である。
本実施形態の撮像素子22は、図5に示すように、複数の撮像画素221が、撮像面の平面上に二次元的に配列され、緑色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する緑画素Gと、赤色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する赤画素Rと、青色の波長領域を透過するカラーフィルタを有する青画素Bがいわゆるベイヤー配列(Bayer Arrangement)されたものである。すなわち、隣接する4つの画素群223(稠密正方格子配列)において一方の対角線上に2つの緑画素が配列され、他方の対角線上に赤画素と青画素が1つずつ配列されている。このベイヤー配列された画素群223を単位として、当該画素群223を撮像素子22の撮像面に二次元状に繰り返し配列することで撮像素子22が構成されている。
なお、単位画素群223の配列は、図示する稠密正方格子以外にも、たとえば稠密六方格子配列にすることもできる。また、カラーフィルタの構成や配列はこれに限定されることはなく、補色フィルタ(緑:G、イエロー:Ye、マゼンタ:Mg,シアン:Cy)の配列を採用することもできる。
図6は、撮像画素221の一つを拡大して示す正面図、図8は断面図である。一つの撮像画素221は、マイクロレンズ2211と、光電変換部2212と、図示しないカラーフィルタから構成され、図8の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2212が造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2211が形成されている。光電変換部2212は、マイクロレンズ2211により撮影光学系の射出瞳(たとえばF1.0)を通過する撮像光束を受光する形状とされ、撮像光束を受光する。
また、撮像素子22の撮像面の中心、ならびに中心から左右対称位置の3箇所には、上述した撮像画素221に代えて焦点検出画素222a,222bが配列された焦点検出画素列22a,22b,22cが設けられている。そして、図5に示すように、一つの焦点検出画素列は、複数の焦点検出画素222aおよび222bが、互いに隣接して交互に、横一列(22a,22c,22c)に配列されて構成されている。本実施形態においては、焦点検出画素222aおよび222bは、ベイヤー配列された撮像画素221の緑画素Gと青画素Bとの位置にギャップを設けることなく密に配列されている。
なお、図4に示す焦点検出画素列22a〜22cの位置は図示する位置にのみ限定されず、何れか一箇所、二箇所にすることもでき、また、四箇所以上の位置に配置することもできる。また、実際の焦点検出に際しては、複数配置された焦点検出画素列22a〜22cの中から、撮影者が操作部28を手動操作することにより所望の焦点検出画素列を、焦点検出エリアとして選択することもできる。
図7(A)は、焦点検出画素222aの一つを拡大して示す正面図、図9(A)は、焦点検出画素222aの断面図である。また、図7(B)は、焦点検出画素222bの一つを拡大して示す正面図、図9(B)は、焦点検出画素222bの断面図である。焦点検出画素222aは、図7(A)に示すように、マイクロレンズ2221aと、半円形状の光電変換部2222aとから構成され、図9(A)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222aが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221aが形成されている。また、焦点検出画素222bは、図7(B)に示すように、マイクロレンズ2221bと、光電変換部2222bとから構成され、図9(B)の断面図に示すように、撮像素子22の半導体回路基板2213の表面に光電変換部2222bが造り込まれ、その表面にマイクロレンズ2221bが形成されている。そして、これら焦点検出画素222aおよび222bは、図5に示すように、互いに隣接して交互に、横一列に配列されることにより、図4に示す焦点検出画素列22a〜22cを構成する。
なお、焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは、マイクロレンズ2221a,2221bにより撮影光学系の射出瞳の所定の領域(たとえばF2.8)を通過する光束を受光するような形状とされる。また、焦点検出画素222a,222bにはカラーフィルタは設けられておらず、その分光特性は、光電変換を行うフォトダイオードの分光特性と、図示しない赤外カットフィルタの分光特性を総合したものとなっている。ただし、撮像画素221と同じカラーフィルタのうちの一つ、たとえば緑フィルタを備えるように構成することもできる。
また、図7(A)、図7(B)に示す焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bは半円形状としたが、光電変換部2222a,2222bの形状はこれに限定されず、他の形状、たとえば、楕円形状、矩形状、多角形状とすることもできる。
ここで、上述した焦点検出画素222a,222bの画素出力に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する、いわゆる位相差検出方式について説明する。
図10は、図5のX-X線に沿う断面図であり、撮影光軸L1近傍に配置され、互いに隣接する焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2が、射出瞳350の測距瞳351,352から照射される光束AB1−1,AB2−1,AB1−2,AB2−2をそれぞれ受光していることを示している。なお、図10においては、複数の焦点検出画素222a,222bのうち、撮影光軸L1近傍に位置するもののみを例示して示したが、図10に示す焦点検出画素以外のその他の焦点検出画素についても、同様に、一対の測距瞳351,352から照射される光束をそれぞれ受光するように構成されている。
ここで、射出瞳350とは、撮影光学系の予定焦点面に配置された焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bの前方の距離Dの位置に設定された像である。距離Dは、マイクロレンズの曲率、屈折率、マイクロレンズと光電変換部との距離などに応じて一義的に決まる値であって、この距離Dを測距瞳距離と称する。また、測距瞳351,352とは、焦点検出画素222a,222bのマイクロレンズ2221a,2221bにより、それぞれ投影された光電変換部2222a,2222bの像をいう。
なお、図10において焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2の配列方向は一対の測距瞳351,352の並び方向と一致している。
また、図10に示すように、焦点検出画素222a−1,222b−1,222a−2,222b−2のマイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2は、撮影光学系の予定焦点面近傍に配置されている。そして、マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2の背後に配置された各光電変換部2222a−1,2222b−1,2222a−2,2222b−2の形状が、各マイクロレンズ2221a−1,2221b−1,2221a−2,2221b−2から測距距離Dだけ離れた射出瞳350上に投影され、その投影形状は測距瞳351,352を形成する。
すなわち、測距距離Dにある射出瞳350上で、各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳351,352)が一致するように、各焦点検出画素におけるマイクロレンズと光電変換部の相対的位置関係が定められ、それにより各焦点検出画素における光電変換部の投影方向が決定されている。
図10に示すように、焦点検出画素222a−1の光電変換部2222a−1は、測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−1に向う光束AB1−1によりマイクロレンズ2221a−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222a−2の光電変換部2222a−2は測距瞳351を通過し、マイクロレンズ2221a−2に向う光束AB1−2によりマイクロレンズ2221a−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
また、焦点検出画素222b−1の光電変換部2222b−1は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−1に向う光束AB2−1によりマイクロレンズ2221b−1上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。同様に、焦点検出画素222b−2の光電変換部2222b−2は測距瞳352を通過し、マイクロレンズ2221b−2に向う光束AB2−2によりマイクロレンズ2221b−2上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。
そして、上述した2種類の焦点検出画素222a,222bを、図5に示すように直線状に複数配置し、各焦点検出画素222a,222bの光電変換部2222a,2222bの出力を、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれに対応した出力グループにまとめることにより、測距瞳351と測距瞳352とのそれぞれを通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関するデータが得られる。そして、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。
そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出エリアにおける焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができる。
なお、これら位相差検出方式による像ズレ量の演算と、これに基づくデフォーカス量の演算は、カメラ制御部21により実行される。
また、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出することでも求めることができる。
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に駆動信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
また、本実施形態において、カメラ制御部21は、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する際に、レンズ鏡筒3から受信したフォーカスレンズ32の位置情報(すなわち、分割区分数N、至近端の区分番号ND_N、無限遠側の区分番号ND_F、および現在レンズ位置の区分番号ND)に基づいて、焦点検出を行う。たとえば、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ32が無限遠端近傍に位置する場合に、合焦位置が無限遠端近傍に存在しないものと判断した場合には、フォーカスレンズ32を無限遠端まで駆動させずに、フォーカスレンズ32を至近側へと駆動させることで、焦点検出に要する時間を短縮することができる。
次いで、レンズ制御部37により実行されるフォーカスレンズ32の位置情報の送信処理について、図3に示す場面例に基づいて詳細に説明する。
なお、図3に示す例では、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲が制限されている場面を例示しているが、このような場面の一例としては、たとえば、焦点調節に要する時間を短縮するために、カメラ制御部21により、フォーカスレンズ32の焦点調節処理を前回の焦点調節処理において検出された合焦位置の周辺で行う旨の信号が、カメラ制御部21からレンズ制御部37に対して送信され、この信号に基づいて、カメラ制御部37により駆動可能範囲が制限される場面が挙げられる。
また、上記の場面に限定されず、たとえば、撮影者により花などを撮影するための接写撮影モードが選択された場合に、カメラ制御部21からレンズ制御部37に対して、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲を至近側に制限するための信号を送信することで、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲を至近側に制限する構成としてもよいし、あるいは、撮影者により風景などを撮影するための撮影モードが選択された場合に、カメラ制御部21からレンズ制御部37に対して、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲を無限遠側に制限するための信号を送信することで、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲を無限遠側に制限する構成としてもよい。また、レンズ制御部37が駆動可能範囲を制限するか否かを判断する構成としてもよい。なお、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲を制限するための信号が、カメラ制御部21からレンズ制御部37に送信される場合、上記信号は、コマンドデータ通信によりレンズ制御部37へと送信される。
たとえば、図3に示す場面例において、レンズ制御部37は、カメラ制御部21から送信された信号に基づいて、フォーカスレンズ32が機械的に駆動できる駆動範囲(D0〜D20の区分に対応する範囲)のうち、D10〜D15の6の区分に対応する範囲を駆動可能範囲として設定する。そして、レンズ制御部37は、制限されている駆動可能範囲に対応する区分(D10〜D15の6の区分)を制限区分として設定し、この制限区分の数を6として算出する。また、レンズ制御部37は、エンコーダ35から現在のフォーカスレンズ32が存在する区分の区分番号である11を取得する。
そして、図3に示す場面例において、レンズ制御部37は、表1に示すように、現在レンズ位置の区分番号Dnである11と、制限区分の数である6と、制限区分において無限遠端に位置する区分の区分番号ND_Fである10と、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号ND_Nである15とを、フォーカスレンズ32の位置情報として、レンズ通信部39を介して、カメラ本体2のカメラ通信部29へと送信し、これらの情報を、最終的にカメラ制御部21へと送信する。
これにより、レンズ制御部37は、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲が制限された場合でも、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲におけるフォーカスレンズ32の位置を、カメラ制御部21に適切に把握させることができる。すなわち、図3に示す場面例において、カメラ制御部21は、現在レンズ位置の区分番号Dnである11と、制限区分の数である6と、制限区分において無限遠端に位置する区分の区分番号ND_Fである10と、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号ND_Nである15とを、フォーカスレンズ32の位置情報として受信することで、制限された駆動可能範囲におけるフォーカスレンズ32の位置関係を特定することができ、その結果、図3に示す場面例では、フォーカスレンズ32が無限遠端付近に位置していると判断することができる。
これに対して、従来においては、図3に示すように、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲が制限されている場合であっても、表2に示すように、現在のフォーカスレンズ32が存在する区分である11に加え、フォーカスレンズ32が機械的に駆動可能な駆動範囲に対応する分割区分数である21と、その無限遠端の区分番号N
D_Fである0と、その至近端の区分番号N
D_Nである20とが、フォーカスレンズ32の位置情報として送信された。そのため、カメラ制御部は、制限された駆動可能範囲におけるフォーカスレンズ32の位置関係を把握することができず、たとえば図3に示す場面例においては、フォーカスレンズ32が駆動範囲の中央付近に位置していると誤って判断してしまう場合があった。
そのため、従来では、フォーカスレンズ32の焦点調節を行う際に、誤ったフォーカスレンズ32の位置に基づいて焦点調節が行われ、これにより、焦点調節に時間がかかってしまう場合があった。これに対して、本実施形態では、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲が制限された場合でも、制限された駆動可能範囲におけるフォーカスレンズ32の位置関係(たとえば図3に示す場面例においては、フォーカスレンズ32が無限遠端近傍に位置していること)を把握することができるため、これにより、フォーカスレンズ32の位置に基づいて焦点調節を適切に実行することができ、その結果、焦点調節に要する時間を短縮などの効果を得ることができる。なお、本実施形態において、レンズ制御部37からカメラ制御部21へのフォーカスレンズ位置の送信は、コマンドデータ通信で行われる。
以上のように、本実施形態では、フォーカスレンズ32の駆動可能範囲が制限された場合に、フォーカスレンズ32の位置情報として、制限された駆動可能範囲に対応する制限区分の数Nと、制限区分において無限遠端に位置する区分の区分番号ND_Fと、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号ND_Nと、制限区分におけるフォーカスレンズ32が存在する区分とを、フォーカスレンズ32の位置情報として、カメラ本体2に送信する。これにより、本実施形態では、カメラ本体2に、制限された駆動可能範囲におけるフォーカスレンズ32の位置を適切に把握させることができ、これにより、フォーカスレンズ32の位置情報に基づいて、フォーカスレンズ32の焦点調節などを適切に行うことができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した実施形態に加えて、分割区分数N、至近端の区分番号ND_N、無限遠側の区分番号ND_F、および現在レンズ位置の区分番号NDのデータ容量を、1バイト(255)以内にするため、これらのデータ容量を圧縮し、圧縮したデータを、レンズ制御部37からカメラ制御部21に送信する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、たとえば図3に示す場面例においては、現在レンズ位置の区分番号D
nの11と、制限区分の数である6と、制限区分において無限遠端に位置する区分の区分番号N
D_Fである10と、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号N
D_Nである15とを、フォーカスレンズ32の位置情報として、カメラ本体2に送信する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、制限区分において無限遠端に位置する区分の区分番号N
D_Fを0にオフセットするとともに、これに伴って、制限区分において至近端に位置する区分の区分番号N
D_Nおよび現在レンズ位置の区分番号D
nをオフセットすることで、表3に示すように、制限区分の数である6と、制限区分において無限遠端に位置する区分に対応する0と、制限区分において至近端に位置する区分に対応する5と、現在レンズ位置の区分に対応する1とを、フォーカスレンズ32の位置情報として、カメラ本体2に送信する構成としてもよい。この場合、カメラ本体2に送信されるデータ容量を小さくすることができるため、上述したような圧縮処理を行うことなく、フォーカスレンズ32の位置情報をカメラ本体2に送信することができる。
さらに、上述した実施形態においては、フォーカスレンズ32の位置データとして、分割区分数N、至近端の区分番号ND_N、無限遠側の区分番号ND_F、および現在レンズ位置の区分番号ND(圧縮後のものも含む)をカメラ本体2のカメラ制御部21に送信するような構成を例示したが、駆動可能範囲が無限遠側に制限されている場合には、分割区分数Nおよび現在レンズ位置の区分番号ND(圧縮後のものも含む)のみを送信するような構成としてもよい。あるいは、制限された駆動可能範囲において、無限遠端に位置する区分の区分番号ND_Fと至近端に位置する区分の区分番号ND_N、および、現在レンズ位置の区分番号ND(圧縮後のものも含む)のみを送信するような構成としてもよい。このように送信するデータ数を削減することで、データ送信時の通信負荷をより低減することが可能となる。また、上述した実施形態では、至近側の区分番号ND_Nおよび無限遠側の区分番号ND_Fのいずれか一方をゼロとするような構成としたが、このような構成に特に限定されるものではない。