JP2017150305A - 断熱パネル、断熱工法およびコンクリート躯体の断熱構造 - Google Patents

断熱パネル、断熱工法およびコンクリート躯体の断熱構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 容易に設置することができ、しかも、断熱性能の向上および結露の防止を可能とする断熱パネル、断熱工法、断熱パネル用枠体および断熱パネル構成部材を提供する。【解決手段】 躯体Cの室内側に軟質断熱材層2が配置され、軟質断熱材層2の室内側に硬質断熱材層3が配置されている。硬質断熱材層3の室内側に、軟質断熱材層2との間に硬質断熱材層3が介在するように、枠体4が配置されている。【選択図】 図1

Description

この発明は、断熱パネル、断熱工法およびコンクリート躯体の断熱構造に関し、例えばRC造(鉄筋コンクリート)において、躯体に室内側から設置することで断熱性を高めることを可能とする断熱パネル、断熱工法およびコンクリート躯体の断熱構造に関する。
特許文献1には、断熱工法において、躯体の室内側に配置される軟質断熱材層と軟質断熱材層に積層された硬質断熱材層とからなる断熱材を使用することが提案されている。断熱材の室内側には、表面材が配置され、これにより、内壁が形成される。この特許文献1の断熱材によると、RC造における躯体表面の凹凸や傾斜を軟質断熱材層によって吸収することができ、結露発生を抑えることができるという利点を有している。
特開平10−244609号公報
断熱パネルの断熱性能の向上のためには、断熱材層を厚くすることが好ましいが、上記特許文献1に記載の断熱材では、内壁の構造強度確保の上から、厚くすることに限界があった。また、躯体表面の最大凸部に合わせて、硬質断熱材層の表面が位置決めされることになるが、位置決めの基準が一定しないため、垂直および平行を確保することが困難という問題があった。
この発明の目的は、容易に設置することができ、しかも、断熱性能の向上および結露の防止を可能とする断熱パネル、断熱工法およびコンクリート躯体の断熱構造を提供することにある。
この発明による断熱パネルは、軟質断熱材層、軟質断熱材層に比べて断熱性に優れた硬質断熱材層および枠体を備えた断熱パネルであって、躯体の室内側に軟質断熱材層が配置され、軟質断熱材層の室内側に硬質断熱材層が配置され、硬質断熱材層の室内側に、軟質断熱材層との間に硬質断熱材層が介在するように、枠体が配置されていることを特徴とするものである。
硬質断熱材層を形成する断熱材は、例えばJISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材から得ることができる。JISA9511準拠の発泡プラスチック系断熱材としては、フェノール樹脂発泡体、硬質ウレタンフォームなどが例示される。硬質断熱材層を形成する断熱材は、軟質断熱材層に比べて断熱性に優れるものであれば、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材以外のものであってもよい。
軟質断熱材層は、硬質断熱材層の断熱材に比べて軟らかい材質の断熱材で形成される。具体的には、スポンジ、グラスウールなどとされる。スポンジとしては、ポリウレタンスポンジ、ゴムスポンジ、ポリエチレンスポンジなどを使用できる。グラスウールを使用する場合、ビニールシートなどでカバーされていないものが好ましい。
枠体は、通常、1対の縦桟および複数の横桟からなるものとされる。1対の縦桟と上下に隣り合う横桟との間に形成される空間が断熱材片配置空間とされ、この空間に断熱材片が充填される。1つの断熱パネルで使用される枠体は、1種類としてもよく、横桟の数や位置などが異なる複数種類としてもよい。
枠体内に充填される断熱材片の形状は、枠体の空間に合わせて方形板状とされる。断熱材片は、例えばJISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材から得ることができる。断熱材片を形成する断熱材は、硬質断熱材層を形成する断熱材と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。断熱材片を形成する断熱材は、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材以外のものであってもよい。
軟質断熱材層を形成する断熱材は、断熱性よりも変形容易性を重視して選定され、軟質断熱材層が躯体の室内側に配置されることで、躯体の表面にある凹凸や傾斜が軟質断熱材層によって吸収され、軟質断熱材層と躯体との間に隙間ができることが防止される。したがって、断熱パネルと躯体との間に生じた隙間に室内空気が流入することによる結露発生が防止される。
軟質断熱材層は、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材に比べると、断熱性が劣っており、軟質断熱材層1層だけで所要の断熱性を得ようとすると、断熱材層の厚さを厚くする必要があり、室内面積が狭くなるという問題が生じる。断熱材層を軟質断熱材層と硬質断熱材層との2層構造とすることで、室内面積が狭くなるというデメリットを抑えて、断熱性能の向上および結露の防止が可能となる。
枠体内にも断熱材片が充填されることで、軟質断熱材層および硬質断熱材層の2層と枠体内の断熱材片とを合わせた3層の断熱パネルとなり、さらに、断熱性能が向上したものとなる。枠体を使用することで、内壁の構造強度を高いものとできる。枠体は、天井および床に固定された横木に固定され、これにより、枠体表面の面一が形成される。このようにすることで、枠体を天井および床に対して適正かつ確実に位置決めすることができ、より精度の高い内壁用表面材の面一が形成される。また、枠体を利用して、内壁面から種々物品のビス、釘固定が可能となる。枠体を使用した場合には、枠体が熱橋となる恐れがあるが、枠体の躯体側全面に硬質断熱材層が配置されることで、熱橋ができることが防止されるので、内壁の構造強度確保と断熱性能の向上とを両立させることができる。
軟質断熱材層、硬質断熱材層および断熱材片(枠体)の厚さは、特に限定されるものではなく、断熱性能の向上および結露の防止を考慮して適宜設定される。気密をとる硬質断熱材層の厚みを薄くして、不足分を断熱材片で補うことが好ましく、軟質断熱材層の厚み<硬質断熱材層の厚み<断熱材片の厚みとされていることがより好ましい。
硬質断熱材層および/または断熱材片に使用される好ましい断熱材の1例は、フェノール樹脂発泡体であり、好ましいフェノール樹脂のタイプは、レゾール樹脂である。レゾール樹脂は、フェノール、又はクレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニールフェノール、レゾルシノール等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒドとの、触媒としての水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、又はトリメチルアミンやトリエチルアミン等の脂肪族アミンの存在下での化学反応によって得ることができる。又、密度は20Kg/m2以上、制限酸素指数26%以上、ホルムキャッチャー剤を使用し、VOC発生を抑制したものが好ましい。
通常、硬質断熱材層および/または断熱材片を形成する断熱材の両面には、ガラス繊維混抄紙、寒冷紗、織布、不織布、紙、ライナー紙、エンボス加工紙、複合紙などの面材が積層される。
上記の断熱パネルを設置するに際し、軟質断熱材層、硬質断熱材層および枠体内の断熱材片は、それぞれ、別個に取り付けられるようにしてもよく、また、枠体に予め取り付けられているようにしてもよい。
この断熱パネルは、例えば、既存の鉄筋コンクリート造の建物の断熱性能を向上するために使用することができ、また、新築の鉄筋コンクリート造の建物の断熱性能を確保するために使用することができ、その他種々の建物の断熱性能向上・確保のために使用することができる。
上記の断熱パネルを設置する断熱工法は、まず、躯体の室内側全面に軟質断熱材層を配置し、次いで、軟質断熱材層の室内側全面に硬質断熱材層を配置し、次いで、硬質断熱材層の室内側に複数の枠体を互いに接するように配置することを特徴とするものであってもよく(第1の発明の断熱工法)、まず、躯体の室内側全面に軟質断熱材層を配置し、次いで、軟質断熱材層の室内側に、躯体側に硬質断熱材層が配置された複数の枠体を互いに接するように配置することを特徴とするものであってもよく(第2の発明の断熱工法)、躯体側に軟質断熱材層および硬質断熱材層が配置された複数の枠体を予め用意し、これらの複数の枠体を躯体の室内側に互いに接するように配置することを特徴とするものであってもよい(第3の発明の断熱工法)。
第1から第3までの発明の断熱工法のいずれを使用するかは、断熱の対象となる躯体の状況(大きさ、形状など)に応じて適宜選択することができる。第1から第3までの断熱工法の2つ以上を組み合わせて使用することもできる。いずれにしろ、この発明の断熱工法によると、断熱性能の向上および結露の防止を可能とする上記の断熱パネルを容易に設置することができる。
各発明の断熱工法の実施に際しては、硬質断熱材層に生じた目地を室内側から塞ぐことが好ましい。また、枠体と断熱材片との間に生じた目地を室内側から塞ぐことが好ましい。目地を塞ぐには、例えば室内側から気密テープを貼り付ければよい。
各発明の断熱工法の実施に際し、断熱材片を接着剤によって硬質断熱材層に貼り付けるようにしてもよい。この場合、枠体と断熱材片との間に生じた目地を室内側から塞ぐ作業(枠体と断熱材片との間の気密テープ)を省略することが好ましい。このようにすることで、施工性と気密性とを高いレベルで両立させることができる。
各発明の断熱工法の実施に際し、各枠体の縦桟の断面形状がL字状とされており、コーナー部の納まり用として、全体として断面が方形になるように、断面形状がL字状の縦桟(単体の縦桟)を枠体の縦桟に嵌め合わせることが好ましい。
出隅においては、L字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第1の枠体とL字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第2の枠体とが直交するように直接突き合わされることで、別途の角材は不要とされる。
入隅においては、L字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第1の枠体とL字状の単体の縦桟が枠体の縦桟に嵌め合わされた第2の枠体とが直交するように角材を介して突き合わされる。
上記の断熱パネルを構成する(各断熱工法で使用される)部材としては、1対の縦桟および複数の横桟からなる枠体(断熱パネル用枠体)が単体で使用されることがあり、また、必要に応じて、この枠体に断熱材層(硬質断熱材層のみまたは硬質断熱材層および軟質断熱材層の両方)が予め貼り付けられたもの(断熱パネル構成部材)が使用されることがある。
1対の縦桟および複数の横桟は、いずれも断面方形状であってよいが、縦桟については、隣り合う枠体の縦桟に嵌め合わせ可能な嵌合部が形成されていることが好ましい。このような嵌合部を得るには、例えば、縦桟の断面形状をL字状として、一方の縦桟の向きと他方の縦桟の向きとが逆になるようにすればよい。
このようにすると、隣り合う枠体間の相対位置が若干ずれたとしても、隙間が生じにくいものとなり、仕上げ精度の向上が図れるとともに、気密性が向上する。
また、上記の断熱パネル用枠体としては、1対の縦桟および複数の横桟からなおり、各横桟の室内側の面は、各縦桟の室内側の面よりも凹まされていることが好ましい。
このようにすると、横桟の室内側にスペースが形成され、このスペースを利用して配線等を通すことができる。
複数の横桟のうち縦桟の端部に配置されているものは、縦桟の端面よりも突出するようになされていることがある。
このようにすると、端部の横桟を使用して、相手側の横桟等との正面からのビス固定が可能となり、固定を容易にかつ確実に行うことができる。
第2の発明の断熱工法で使用される断熱パネル構成部材は、枠体の躯体側に硬質断熱材層が固定されたものとされる。
硬質断熱材層は、例えば、枠体の躯体側の全面に貼り付けられる。硬質断熱材層の枠体への貼り付けは、硬質断熱材層の一部(例えば左半面)だけを枠体に重ね合わせて貼り付けるようにし、硬質断熱材層の残部(例えば右半面)を枠体から露出するようにして行ってもよい。硬質断熱材層の大きさ(面積)は、枠体と同じであってもよく、枠体よりも大きくてもよい。
また、第3の発明の断熱工法で使用される断熱パネル構成部材は、枠体の躯体側に硬質断熱材層が固定され、硬質断熱材層の躯体側に軟質断熱材層が固定されたものとされる。
硬質断熱材層は、例えば、枠体の躯体側の全面に貼り付けられる。硬質断熱材層の枠体への貼り付けは、硬質断熱材層の一部(例えば左半面)だけを枠体に重ね合わせて貼り付けるようにし、硬質断熱材層の残部(例えば右半面)を枠体から露出するようにして行ってもよい。硬質断熱材層の大きさ(面積)は、枠体と同じであってもよく、枠体よりも大きくてもよい。軟質断熱材層は、硬質断熱材層の躯体側の全面に貼り付ければよく、軟質断熱材層の一部(例えば右半面)だけを硬質断熱材層に重ね合わせて貼り付けるようにし、軟質断熱材層の残部(例えば左半面)を硬質断熱材層から露出するようにして行ってもよい。
この発明によるコンクリート躯体の断熱構造は、コンクリート躯体の平面状の室内側表面に第1の断熱材層が配置され、前記第1の断熱材層の室内側に第2の断熱材層が配置され、前記第2の断熱材層の室内側に複数の枠体が配置され、前記第1の断熱材層は前記第2の断熱材層より変形が容易であることを特徴とするものである。
この発明の断熱パネルによると、躯体の表面にある凹凸や傾斜が軟質断熱材層によって吸収され、断熱パネルと躯体との間に隙間ができることが防止されて、断熱パネルと躯体との間に生じた隙間に室内空気が流入することによる結露発生が防止される。また、枠体を使用することで、内壁の構造強度を高いものとでき、しかも、精度の高い内壁用表面材の面一が形成される。こうして、室内面積が狭くなるというデメリットを抑えて、断熱性能の向上、結露の防止および内壁の構造強度確保を達成することができる。
この発明の断熱工法によると、上記の断熱パネルを容易に設置することができる。
この発明のコンクリート躯体の断熱構造によると、躯体の表面にある凹凸や傾斜が第2の断熱材層より変形が容易である第1の断熱材層によって吸収され、断熱パネルと躯体との間に隙間ができることが防止されて、断熱材層とコンクリート躯体との間に生じた隙間に室内空気が流入することによる結露発生が防止される。また、枠体を使用することで、内壁の構造強度を高いものとでき、しかも、精度の高い内壁用表面材の面一が形成される。こうして、室内面積が狭くなるというデメリットを抑えて、断熱性能の向上、結露の防止および内壁の構造強度確保を達成することができる。
図1は、この発明による断熱パネルおよびコンクリート躯体の断熱構造の1実施形態を示す断面図である。 図2は、この発明による断熱工法の第1実施形態で使用される枠体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は一部を切り欠いた側面図である。 図3は、図2の枠体を複数配置した状態を示す平面図である。 図4は、この発明による断熱工法の第2実施形態で使用される断熱パネル構成部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。 図5は、この発明による断熱工法の第3実施形態で使用される断熱パネル構成部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。 図6は、この発明による断熱パネルおよび断熱工法で使用される枠体の他の例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。 図7は、図6の枠体の取付け状態の例を示す側面図である。 図8は、この発明による断熱工法の第1実施形態を実施するに際しての好ましい気密性確保構造の1例を示す斜視図である。 図9は、この発明による断熱工法の第1実施形態を実施するに際しての好ましい気密性確保構造の他の例を示す斜視図である。 図10は、この発明による断熱工法を実施するに際しての好ましいコーナー部(出隅および入隅)の納まりを示す水平断面図である。
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下は、図1の上下をいうものとする。
図1は、この発明による断熱パネルおよびコンクリート躯体の断熱構造の1実施形態を示しており、断熱パネル(1)は、RC造の躯体(C)の室内側に配置された軟質断熱材層(2)と、軟質断熱材層(2)の室内側に配置された硬質断熱材層(3)と、硬質断熱材層(3)の室内側に配置された格子状の枠体(4)と、枠体(4)内に充填された板状の断熱材片(5)とを備えている。
軟質断熱材層(2)は、ポリウレタンスポンジによって形成されている。硬質断熱材層(3)および板状の断熱材片(5)は、フェノール樹脂発泡体によって形成されている。
枠体(4)は、図2にも示すように、1対の縦桟(11)および複数の横桟(12)からなる木枠とされている。
板状の断熱材片(5)は、横桟(12)と同じ厚さ(図1における左右方向の寸法)とされて、1対の縦桟(11)と上下に隣り合う横桟(12)との間に形成された空間に嵌め入れられている。
図2(a)に示されているように、各横桟(12)の厚さ(図2(a)における上下方向の寸法=図1における左右方向の寸法)は、縦桟(11)の厚さ(図2(a)における上下方向の寸法=図1における左右方向の寸法)よりも薄くなされて、各横桟(12)の躯体側の面(12a)は、各縦桟(11)の躯体側の面(11a)と面一とされ、各横桟(12)の室内側の面(12b)は、各縦桟(11)の室内側の面(11b)よりも凹まされている。これにより、横桟(12)の室内側に電気配線等を通すことができるスペース(面(11b)と面(12b)との間の間隙)が形成されている。
各部材の寸法の1例を挙げると、軟質断熱材層(2)の厚さが10mm、硬質断熱材層(3)の厚さが15mm、縦桟(11)の厚さが40mm、幅が40mm、高さが1950mm、横桟(12)の厚さが30mm、幅が410mm、高さが30mm、横桟(12)と横桟(12)との間隔が450mm、断熱材片(5)の厚さが30mm、幅が410mm、高さが450mmなどとされている。
すなわち、軟質断熱材層(2)の厚み<硬質断熱材層(3)の厚み<断熱材片(5)の厚みとされて、気密をとる硬質断熱材層(3)の厚みを薄くして、不足分を断熱材片(5)で補うようになされている。
上記の断熱パネル(1)によると、ポリウレタンスポンジによって形成されていることで変形が容易な軟質断熱材層(2)が躯体(C)の室内側に配置されていることで、躯体(C)の表面にある凹凸や傾斜が軟質断熱材層(2)によって吸収される。したがって、軟質断熱材層(2)と躯体(C)との間に隙間ができることが防止され、断熱パネル(1)と躯体(C)との間に生じた隙間に室内空気が流入することによる結露発生が防止される。
ポリウレタンスポンジによって形成されている軟質断熱材層(2)は、相対的に断熱性が劣っており、軟質断熱材層(2)1層だけで所要の断熱性を得ようとすると、軟質断熱材層(2)の厚さを厚くする必要があり、室内面積が狭くなるという問題が生じる。フェノール樹脂発泡体によって形成されている硬質断熱材層(3)は、相対的に断熱性が優れており、硬質断熱材層(3)の厚さを例えば15mm程度としても、これが全面に使用されていることで、熱橋を防止することができ、十分な断熱性の向上を達成することができる。そして、枠体(4)内にある空間を利用して、この空間に断熱材片(5)が充填されていることで、さらに、断熱性能が向上している。
こうして、断熱材層を軟質断熱材層(2)と硬質断熱材層(3)との2層構造とし、さらに、枠体(4)内の断熱材片(5)とを合わせた3層の断熱パネル(1)とすることで、室内面積が狭くなるというデメリットを抑えた上で、断熱性能の向上および結露の防止を両立させることができる。
枠体(4)は、その上下端部が天井および床に固定されている横木(9)に固定され、これにより、枠体(4)が天井および床に対して適正かつ確実に位置決めされて、枠体(4)表面の面一が形成される。枠体(4)を使用することで、人や物が壁にぶつかったりした際の断熱材片(5)のへこみ等が防止される。また、枠体(4)を利用して、内壁面から種々物品のビス、釘固定が可能となる。枠体(4)を使用した場合には、枠体(4)が熱橋となる恐れがあるが、枠体(4)の躯体側全面に硬質断熱材層(3)が配置されていることで、熱橋ができることが防止され、内壁の構造強度確保と断熱性能の向上とを両立させることができる。
図2に示した枠体(4)を使用して上記の断熱パネル(1)を得るには、まず、躯体(C)の室内側全面に軟質断熱材層(2)を配置し、次いで、軟質断熱材層(2)の室内側全面に硬質断熱材層(3)を配置し、次いで、硬質断熱材層(3)の室内側に複数の枠体(4)を互いに接するように配置し、次いで、断熱材片(5)を枠体(4)内に形成されている空間に配置すればよい(断熱工法の第1実施形態)。
軟質断熱材層(2)および硬質断熱材層(3)は、接着剤を使用して貼り付ければよい。枠体(4)は、予め躯体(C)に接着剤等で固定されている横木(9)に、ビスで固定すればよい。横木(9)は、軟質断熱材層(2)および硬質断熱材層(3)の貼り付け前に躯体(C)に固定してもよく、軟質断熱材層(2)および硬質断熱材層(3)の貼り付け後に躯体(C)に固定してもよい。断熱材片(5)は、枠体(4)内に形成されている空間に合わせて方形板状に切断して、空間内に嵌め入れればよい。枠体(4)は、必要に応じて適宜な寸法に切断される。部材同士の固定は、タッカー、ビス、くぎ、ネジなどの固定具による機械式固定、接着剤・テープなどによる接着式固定などの適宜な手段で行われる。
図2に示すように、各縦桟(11)は、断面形状がL字状とされており、一方の縦桟(11)の向きと他方の縦桟(11)の向きとが逆になるように配置されている。これにより、隣り合う枠体(4)の縦桟(11)に嵌め合わせ可能な凸部(13a)および凹部(13b)からなる嵌合部(13)が形成されている。したがって、枠体(4)同士を隣り合って配置した際には、図3に示すように、それぞれの凸部(13a)と凹部(13b)とが嵌め合わされて、互いに位置決めされる。各縦桟(11)は、断面形状が方形であってもよいことはもちろんであるが、嵌合部(13)が形成されているものとすることで、隣り合う枠体(4)間の相対位置が若干ずれたとしても、凸部(13a)と凹部(13b)とが接触している状態が維持されて隙間が生じにくいものとなり、仕上げ精度の向上が図れるとともに、気密性が向上する。
上記の断熱パネル(1)を得るには、図4に示した断熱パネル構成部材(6)を使用することもできる。この断熱パネル構成部材(6)は、図2に示した枠体(4)と、枠体(4)の躯体側に貼り付けられた硬質断熱材層(3)とからなる。
図4に示した断熱パネル構成部材(6)を使用して上記の断熱パネル(1)を得るには、まず、躯体(C)の室内側全面に軟質断熱材層(2)を配置し、次いで、軟質断熱材層(2)の室内側に、図4に示した断熱パネル構成部材(6)を互いに接するように配置し、次いで、断熱材片(5)を断熱パネル構成部材(6)の枠体(4)内に形成されている空間に合わせて方形板状に切断して、嵌め入れればよい(断熱工法の第2実施形態)。
この断熱工法の第2実施形態によると、硬質断熱材層(3)が予め枠体(4)に貼り付けられているので、第1実施形態のものに比べて、現場での作業を軽減することができる。
上記の断熱パネル(1)を得るには、図5に示した断熱パネル構成部材(7)を使用することもできる。この断熱パネル構成部材(7)は、図2に示した枠体(4)と、枠体(4)の躯体側に貼り付けられた硬質断熱材層(3)と、硬質断熱材層(3)の躯体側に貼り付けられた軟質断熱材層(2)とからなる。
図5に示した断熱パネル構成部材(7)を使用して上記の断熱パネル(1)を得るには、躯体(C)の室内側全面に、図5に示した断熱パネル構成部材(7)を互いに接するように配置し、次いで、断熱材片(5)を断熱パネル構成部材(7)の枠体(4)内に形成されている空間に合わせて方形板状に切断して、嵌め入れればよい(断熱工法の第3実施形態)。
この断熱工法の第3実施形態によると、軟質断熱材層(2)および硬質断熱材層(3)が予め枠体(4)に貼り付けられているので、第1および第2実施形態のものに比べて、現場での作業を軽減することができる。
枠体(4)の形状については、上記のものに限られず、適宜変更することができる。図6に、枠体(8)の他の実施形態を示す。
図6において、枠体(8)は、1対の縦桟(14)および複数の横桟(15)(16)からなる木枠とされている。
各縦桟(14)は、図2に示したものと同一形状であり、断面形状がL字状とされることで、隣り合う枠体(8)の縦桟(13)に嵌め合わせ可能な凸部(17a)および凹部(17b)からなる嵌合部(17)が形成されている。
最上段と最下段とにある横桟(16)は、縦桟(14)の端面から突出するように設けられている。中間段の横桟(15)は、図2に示したものとは違う上下間隔で配置されている。
この枠体(8)では、最上段と最下段とにある横桟(16)が縦桟(14)の端面から突出するように設けられていることで、図7に示すように、壁に固定されたL字状の横木(10)に嵌め合わせることができる。このようにすると、ビスによる固定に際し、ビスを斜めに打ち込むのではなく、水平に打ち込むことができ、固定作業が容易となる。
図示省略するが、この枠体(8)に硬質断熱材層(3)を貼り付けた状態で使用するようにしてもよく(図4参照)、この枠体(8)に硬質断熱材層(3)および軟質断熱材層(2)を貼り付けた状態で使用するようにしてもよい(図5参照)。
上記において、断熱材として予め切断した断熱材(廃材)を用いることにより、工期を短縮でき、しかも、廃材が出ない断熱工法を実施することができる。
上記の断熱工法の実施に際しては、図8および図9に示すように、気密性確保のための構造を追加することが好ましい。
図8において、硬質断熱材層(3)の施工に際しては、隣り合う硬質断熱材同士の間に生じた目地(J1)に、室内側から気密テープ(21)が貼り付けられる。そして、断熱材片(5)の施工に際しては、枠体(4)と断熱材片(5)との間に生じた目地(J2)に、室内側から気密テープ(22)が貼り付けられる。気密テープ(22)は、目地(J2)を塞ぐとともに、断熱材片(5)を固定する機能も有しており、断熱材片(5)に接着剤を塗布することは省略することができる。
気密テープ(21)(22)としては、例えばパイオラン(登録商標)などのアクリル系気密テープが使用されるが、これに限定されるものではない。
図9において、硬質断熱材層(3)の施工に際しては、隣り合う硬質断熱材同士の間に生じた目地(J1)に、室内側から気密テープ(21)が貼り付けられる。そして、枠体(4)と断熱材片(5)との間の気密テープ(22)は省略されて、断熱材片(5)は、接着剤(23)によって硬質断熱材層(3)に貼り付けられる。
接着剤としては、例えばクロロプレンゴム系溶剤形接着剤が使用されるが、これに限定されるものではない。
図8の気密構造とすることで、極めて高い気密状態を得ることができ、これにより、IV地域と区分されている南東北〜九州における累積結露発生時間を0とすることができる。
また、図9の気密構造とすることによっても、極めて高い気密状態を得ることができ、これにより、IV地域と区分されている南東北〜九州における累積結露発生時間を0とすることができる。図9の気密構造は、施工性の点で、図8の気密構造よりも優れており、より好ましい。
各枠体(4)の縦桟(11)の断面形状がL字状とされていることから、図10に示すように、コーナー部の納まり用として、全体として断面が方形になるように、断面形状がL字状の単体の縦桟(20)が枠体(4)の縦桟(11)に嵌め合わされる。
図10(a)に示す出隅において、断面L字状の単体の縦桟(20)が縦桟(11)に嵌め合わされた第1の枠体(4A)と、断面L字状の単体の縦桟(20)が縦桟(11)に嵌め合わされた第2の枠体(4B)とが直交するように直接突き合わされている。これにより、別途の角材は不要とされている。
図10(b)に示す入隅において、断面L字状の単体の縦桟(20)が縦桟に嵌め合わされた第1の枠体(4A)と、断面L字状の単体の縦桟(20)が縦桟(11)に嵌め合わされた第2の枠体(4B)とが直交するように角材(19)を介して突き合わされている。
こうして、枠体(4)の縦桟(11)を断面L字状とした場合のコーナー部の納まりに関しては、枠体(4)の縦桟(11)と同一形状の単体の縦桟(20)を使用することで、簡単に実施することができる。
なお、枠体(4)の縦桟の断面形状自体を方形にした場合には、L字状の単体の縦桟を省略することができ、出隅においては、第1の枠体と第2の枠体とが直交するように直接突き合わされることで、別途の角材は不要とされ、入隅においては、第1の枠体と第2の枠体とが直交するように角材を介して突き合わされる。
上記において、軟質断熱材層(2)がポリウレタンスポンジとされ、硬質断熱材層(3)および断熱材片(5)がフェノール樹脂発泡体とされているのは、1例であり、相対的に変形が容易な軟質断熱材層(2)と相対的に断熱性に優れた硬質断熱材層(3)および断熱材片(5)という条件を有している断熱材であれば、軟質断熱材層(2)、硬質断熱材層(3)および断熱材片(5)を形成する断熱材として種々のものが使用できる。例えば、硬質断熱材層(3)および断熱材片(5)を形成する断熱材は、JISA9511に記載のフェノール樹脂発泡体以外の発泡プラスチック系断熱材としてもよいし、グラスウールのような繊維状の断熱材であってもよい。また、軟質断熱材層(2)には、ポリウレタンスポンジに代えてグラスウールを使用することもできる。
(1) 断熱パネル
(2) 軟質断熱材層
(3) 硬質断熱材層
(4) 枠体(断熱パネル用枠体)
(5) 断熱材片
(6) 断熱パネル構成部材
(7) 断熱パネル構成部材
(8) 枠体
(C) コンクリート躯体

Claims (5)

  1. 軟質断熱材層、軟質断熱材層に比べて断熱性に優れた硬質断熱材層および枠体を備えた断熱パネルであって、躯体の室内側に軟質断熱材層が配置され、軟質断熱材層の室内側に硬質断熱材層が配置され、硬質断熱材層の室内側に、軟質断熱材層との間に硬質断熱材層が介在するように、枠体が配置されていることを特徴とする断熱パネル。
  2. 請求項1記載の断熱パネルを設置する断熱工法であって、まず、躯体の室内側全面に軟質断熱材層を配置し、次いで、軟質断熱材層の室内側全面に硬質断熱材層を配置し、次いで、硬質断熱材層の室内側に複数の枠体を互いに接するように配置することを特徴とする断熱工法。
  3. 請求項1記載の断熱パネルを設置する断熱工法であって、まず、躯体の室内側全面に軟質断熱材層を配置し、次いで、軟質断熱材層の室内側に、躯体側に硬質断熱材層が配置された複数の枠体を互いに接するように配置することを特徴とする断熱工法。
  4. 請求項1記載の断熱パネルを設置する断熱工法であって、躯体側に軟質断熱材層および硬質断熱材層が配置された複数の枠体を予め用意し、これらの複数の枠体を躯体の室内側に互いに接するように配置することを特徴とする断熱工法。
  5. コンクリート躯体の断熱構造であって、
    コンクリート躯体の平面状の室内側表面に第1の断熱材層が配置され、前記第1の断熱材層の室内側に第2の断熱材層が配置され、
    前記第2の断熱材層の室内側に複数の枠体が配置され、
    前記第1の断熱材層は前記第2の断熱材層より変形が容易であることを特徴とするコンクリート躯体の断熱構造。
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