JP2017150101A - 製紙用フェルト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の製紙用フェルト1は、基布層11と、この基布層11の製紙面側に配設された表バット層13とを備え、表バット層13は、その表層部に、熱可塑性ポリアミド成分19が結着した繊維を含むことを特徴とする。熱可塑性ポリアミド成分は、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含むポリアミド系エラストマーを含有することが好ましい。
【選択図】図1
Description
搾水性を向上させることを目的として未加工フェルトに樹脂加工を行う場合、樹脂加工により、通気性や空隙量の適正化させることが重要となる。
特許文献2には、補強繊維基材の片面に湿紙接触バット繊維層及び基材上部バット繊維層の2層構造の湿紙側バット層又は湿紙接触バット繊維層、中間バット繊維層及び基材上部バット繊維層の3層構造の湿紙側バット層を、他面に機械側バット層を設けた積層構造の製紙用プレスフェルトにおいて、この製紙用プレスフェルトの湿紙側バット層の中間バット繊維層又は基材上部バット繊維層に分散付着し、湿紙接触バット繊維層には分散付着していないように、100%モジュラス値が1〜100kg/cm2であり、100%伸張後残留歪が20%以下である高分子弾性体を製紙用プレスフェルトの重量に対して0.5〜20重量%の割合で含有させた製紙用プレスフェルトが開示されている。
また、特許文献3には、製紙面とその対面である走行面とを有すると共に、基布層とその製紙面側に配置された表バット層とを備え、表バット層は、該表バット層の内部に配置され溶融分散して固化された熱可塑性樹脂を含有し、この熱可塑性樹脂は、融点以上180℃未満の範囲の温度において樹脂が流動化したときの樹脂粘度が100〜7,000Pa・sであることを特徴とする製紙用プレスフェルトが開示されている。
例えば、非特許文献1には、プレスロール硬度の大小によるニップ圧力曲線が示されており、ロール硬度を大きくすることで最大圧力が上昇することが示されている。これは、フェルトの硬さについても同じことがいえる。また、製紙用フェルト密度も大きいほど、最大圧力が上昇することが示されている。(ここに示されているフェルトは同じ素材を用いたフェルトであり、どちらも樹脂加工を行っていない。このため、非特許文献1には記載されていないが、フェルトの密度が大きいほどフェルトは硬くなる。)
上記特許文献2に示される製紙用フェルトは、上記特許文献1の曲げ剛性が高くなりすぎることを回避するために、柔軟な樹脂による樹脂加工が行われている。しかし、樹脂加工による通気性と空隙量の適正化は行えるものの、柔軟な樹脂ではフェルトの硬さを大きくすることは難しく、搾水性向上の効果を最大限発揮することは難しい。
上記特許文献3に示される製紙用フェルトは、樹脂を表バット層内部に配置させ、樹脂成分の、製紙用フェルトの断面方向における厚さを制御している。このため、このフェルトは搾水性向上と掛け入れ性確保とを両立させているという点で優れている。この構造であれば、搾水性向上に効果のある硬い樹脂成分を使用しても掛け入れ性を確保することが可能である。しかし、製紙用フェルトの断面方向における厚さを制御しやすいフィルム状等の樹脂を用いているために、フェルト表バット層内部に多くの樹脂が存在する。
本発明は、抄紙機への掛け入れ性及び製紙用プレスフェルトとしての耐久性に優れた製紙用フェルト及びその製造方法を提供することを目的とする。
1.基布層と、該基布層の製紙面側に配設された表バット層とを備える製紙用フェルトにおいて、上記表バット層は、その表層部に、熱可塑性ポリアミド成分が結着した繊維を含むことを特徴とする製紙用フェルト。
2.上記基布層における上記表バット層の反対面である走行面側に、更に、裏バット層を備える上記項1に記載の製紙用フェルト。
3.上記熱可塑性ポリアミド成分が、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含むポリアミド系エラストマーを含有する上記項1又は2に記載の製紙用フェルト。
4.上記表バット層は、熱可塑性ポリアミドを含む粒子が水の中に分散した分散液を用いて形成されたものである上記項1乃至3のいずれか一項に記載の製紙用フェルト。
5.上記熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径をR(μm)、上記表バット層を構成する繊維の繊度をD(dtex)、上記熱可塑性ポリアミド成分が結着されていないフェルト材料の通気度をP(cm3/(cm2・秒))とした場合に、下記式(1)で計算されるKRが0.8〜3.0の範囲にある上記項4に記載の製紙用フェルト。
KR=log10〔(D×P)/R〕 (1)
6.上記項1乃至5のいずれか一項に記載の製紙用フェルトの製造方法であって、
熱可塑性ポリアミドを含む粒子が水の中に分散した分散液を、基布層と、該基布層の1面側に配設された第1繊維層とを備えるフェルト材料の、該第1繊維層の表面に塗布する工程と、塗布物を乾燥する工程と、乾燥物を、上記熱可塑性ポリアミドの融点より10℃低い温度から、融点より40℃高い温度までの範囲の温度に加熱する工程とを、順次、備え、
上記熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径をR(μm)、上記第1繊維層を構成する繊維の繊度をD(dtex)、上記フェルト材料の通気度をP(cm3/(cm2・秒))とした場合に、下記式(1)で計算されるKRを0.8〜3.0の範囲とすることを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
KR=log10〔(D×P)/R〕 (1)
また、製紙用フェルトの「曲げ剛性上昇値」とは、第1繊維層を構成する繊維への熱可塑性ポリアミド成分の結着の前後における曲げ剛性の差、即ち、フェルト材料の曲げ剛性と、製紙用フェルトの曲げ剛性との差(曲げ剛性の上昇分)を意味する。
上記熱可塑性ポリアミド成分が、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含むポリアミド系エラストマーを含有する場合には、抄紙に際して、表バット層に、繰り返し圧縮、高圧シャワー、サクションボックスによる吸引等の外力を繰り返し受けるにも関わらず、繊維に結着した熱可塑性ポリアミド成分を脱落させにくく、搾水性に優れた製紙用フェルトとして好適である。
本発明の製紙用フェルトの製造方法によれば、抄紙機への掛け入れ性及び製紙用プレスフェルトとしての耐久性が十分な製紙用フェルトを効率よく製造することができる。
本発明は、例えば、図1に示す構成を有し、基布層11と、この基布層11の製紙面側(図1の上面側)に配設された表バット層13とを備え、表バット層13は、その表層部13Bに、熱可塑性ポリアミド成分19が結着した繊維を含む製紙用フェルト1である。また、図2に示すように、本発明の製紙用フェルト1は、基布層11における表バット層13の反対面である走行面側(図2の下面側)に、更に、裏バット層15を備えることができる。本発明の製紙用フェルトは、各層が積層方向に交絡される等により、全体として一体化物である。
上記基布層を構成する繊維は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
上記基布層を構成する繊維は、製紙用フェルトの強度、空隙率及び通気性や、圧力均一性等の特性に応じた適切な材質、形態、繊度等を有するものとすることができる。
また、上記基布層の目付(合計)は、好ましくは150〜1500g/m2であり、より好ましくは250〜1200g/m2である。
上記基布層の厚さ及び目付は、製紙用フェルトの強度、空隙率及び通気性や、ロールマーク防止性等の特性に応じて適切に設定される。
上記表バット層を構成する繊維(以下、「表バット繊維」ともいう)の構成材料としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等の合成樹脂、綿、羊毛、絹等が挙げられる。これらのうち、耐摩耗性、圧縮回復性、耐衝撃性、親水性、耐加水分解性、耐薬品性等の観点から、ポリアミド樹脂が好ましい。
熱可塑性ポリアミドは、特に限定されないが、搾水性の向上効果及び製紙用プレスフェルトとしての耐久性が得られることから、重合体のISO 868に準ずるショアD硬さは、好ましくは25〜70、より好ましくは25〜40である。
〔(ポリアミドブロック)−X−(ポリエーテルブロック)〕n (11)
(式中、Xは、−CO−NH−又は−CO−O−であり、nは、整数である)
ラクタムとしては、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルコン酸、ω−アミノカプリン酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
ジアミンとジカルボン酸との塩の場合のジアミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素原子数36の不飽和ジカルボン酸)等が挙げられる。
グリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等が挙げられる。
ジアミンとしては、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
KR=log10〔(D×P)/R〕 (1)
本発明の製紙用フェルトの製造方法は、熱可塑性ポリアミドを含む粒子が水の中に分散した分散液(以下、「水分散液」という)を、基布層と、該基布層の1面側に配設された第1繊維層とを備えるフェルト材料の、該第1繊維層の表面に塗布する工程(以下、「塗布工程」という)と、塗布物を乾燥する工程(以下、「乾燥工程」という)と、乾燥物を、上記熱可塑性ポリアミドの融点より10℃低い温度から、融点より40℃高い温度までの範囲の温度に加熱する工程(以下、「加熱工程」という)とを、順次、備え、上記熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径をR(μm)、上記第1繊維層を構成する繊維の繊度をD(dtex)、上記フェルト材料の断面方向の通気度をP(cm3/(cm2・秒))とした場合に、下記式(1)で計算されるKRを0.8〜3.0の範囲とすることを特徴とする。
KR=log10〔(D×P)/R〕 (1)
上記フェルト材料は、基布層と、加熱工程後に表バット層となる第1繊維層とを備え、必要により、加熱加工前に裏バット層となる第2繊維層を、第1繊維層の反対面側に備えてもよい。上記フェルト材料は、ニードリング等による交絡一体化物であることが好ましい。
上記基布層は、上記「1.製紙用フェルト」における基布層の説明が適用される。一方、上記第1繊維層は、単層型及び複層型のいずれでもよく、上記「1.製紙用フェルト」における表バット層を構成する繊維、目付等の説明が適用される。特に、単層型の場合の繊維の繊度D、及び、複層型の場合の最表層を構成する繊維の繊度Dは、いずれも、水分散液を塗布した後の、熱可塑性ポリアミド含有粒子の保持性が向上することから、好ましくは0.1〜100dtex、より好ましくは0.3〜70dtex、更に好ましくは1〜50dtex、特に好ましくは2〜30dtexである。また、フェルト材料が上記第2繊維層を備える場合は、上記「1.製紙用フェルト」における裏バット層を構成する繊維、目付等の説明が適用される。
上記熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径Rは、水分散液の、フェルト材料の第1繊維層への塗布により、第1繊維層を構成する繊維どうしの間への保持性の観点から、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.7〜10μm、更に好ましくは1〜5μmである。
また、上記水分散液に含まれる熱可塑性ポリアミド含有粒子の固形分濃度は、水分散液の塗布により、熱可塑性ポリアミド含有粒子の、第1繊維層内への保持を円滑に進めるために、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。
上記水分散液の塗布量は、水分散液の固形分濃度、粘度等により、適宜、選択され、特に限定されない。
上記乾燥工程において、塗布物を乾燥する方法は、水分散体の主たる媒体である水を除去するものであれば、特に限定されない。乾燥温度は、好ましくは、乾燥工程に続いて行われる加熱工程以下の温度であり、圧力、雰囲気等は、特に限定されない。
上記加熱工程において、乾燥物を加熱する方法は、上記熱可塑性ポリアミドの融点より10℃低い温度から、融点より40℃高い温度までの範囲の温度に加熱するものであれば、特に限定されない。加熱温度は、好ましくは、熱可塑性ポリアミドの融点から、融点より30℃高い温度までの範囲の温度である。
また、製紙用フェルトの掛入性を向上させるために、熱可塑性ポリアミド成分を繊維表面に結着させた後、柔軟剤による表面処理を行ってもよい。この処理を行う場合、グリセリン、ジエチレングリコール、アニオン系柔軟剤、カチオン系柔軟剤、非イオン系柔軟剤等、従来、公知の繊維製品用柔軟剤を用いることができる。
(A)表バット層を構成する表バット繊維の繊度が大きくなると、表バット繊維どうしの空隙に熱可塑性ポリアミド含有粒子が入りやすくなり、熱処理工程により得られた製紙用フェルトにおける結着部の厚さTが大きくなること
(B)熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径Rが大きくなるほど、表バット繊維どうしの空隙に熱可塑性ポリアミド含有粒子が入り難くなり、熱処理工程により得られた製紙用フェルトにおける結着部の厚さTが小さくなること
(C)表バット層の目付又は密度に関連して、例えば、JIS L 1096−A(フラジール形法)に準ずる通気度Pが大きくなると、表バット繊維どうしの空隙に熱可塑性ポリアミド含有粒子が入りやすくなり、熱処理工程により得られた製紙用フェルトにおける結着部の厚さTが大きくなること
熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径Rと、表バット層を構成する表バット繊維の繊度Dと、表バット層(表外バット層)の通気度Pとを、上記式(1)に代入して得られる計算値KRが0.8〜3.0の範囲にあれば、本発明の効果を十分に発揮する高性能の製紙用フェルトを効率よく得ることができることとなる。尚、表バット層(表外バット層)が繊度の異なる表バット繊維を複数種含む場合、平均繊度Daveを用いることができる。下記式(3)は、繊度の異なる表バット繊維を3種用いた場合に平均繊度Daveを求める計算式である。
100/Dave=(X1/D1)+(X2/D2)+(X3/D3) (3)
(式中、D1は第1繊維の繊度(dtex)、X1は第1繊維の混紡率(%)、D2は第2繊維の繊度(dtex)、X2は第2繊維の混紡率(%)、D3は第3繊維の繊度(dtex)、X3は第3繊維の混紡率(%)であり、X1+X2+X3=100%である)
本発明の製紙用フェルトは、抄紙に際して、表バット層に、繰り返し圧縮、高圧シャワー、サクションボックスによる吸引等の外力を繰り返し受けるにも関わらず、表バット繊維に結着した熱可塑性ポリアミド成分の脱落率が低く、耐久性に優れる。
1.パラメータKRの有効性の確認(実施例1〜3)
実施例1
ナイロンモノフィラメントの撚糸を用いて、2重織組織で織り上げられた織布からなり、全体目付が450g/m2の基布に、平均繊度22dtexの6ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が440g/m2の表内バット層用繊維シートをニードリングにより交絡一体化した。次いで、表内バット層の表面に、平均繊度3.3dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が300g/m2の表外バット層用繊維シートを載置して、ニードリングを行い、交絡一体化した。その後、ニードリングを繰り返すことで高密度化し、更にプレス加工を行うことで、フェルト(F1)を得た。このフェルト(F1)について、JIS L 1096−A(フラジール形法)に準ずる通気度を、TEXTEST社製通気性試験機「FX3300」(型式名)を用いて測定したところ、8.32cm3/(cm2・秒)であった。
次に、フェルト(F1)を仕上げ加工機へセットし、ポリアミド12に由来するブロックと、ポリエーテルに由来するブロックとを有する共重合体(融点:約140℃、ISO 868に準ずるショアD硬さ:30)からなる熱可塑性エラストマー粒子(平均粒径:2.5μm)を含む水分散体(住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名))の固形分濃度を6質量%に調整した水分散液を、フェルト(F1)の表面全体に、1000cm3/m2の散布量になるようにスプレーした。その後、予備乾燥を行い、続いて140℃の熱風を吹き付けて、共重合体を溶融させることで、表外バット層の繊維の表面に共重合体が結着された製紙用フェルト(S1)を得た。この製紙用フェルト(S1)における共重合体の目付は60g/m2であった。
この製紙用フェルト(S1)の製造において、D=3.3(dtex)、P=8.32(cm3/(cm2・秒))、R=2.5(μm)であるから、式(1)によるKRは、1.0である。
ナイロンモノフィラメントの撚糸を用いて、1重織組織で織り上げられた織布を2枚重ね、全体目付が570g/m2の基布の1面側に、平均繊度26dtexの6ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が400g/m2の表内バット層用繊維シートを、他面側に、平均繊度26dtexの6ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が200g/m2の裏バット層用繊維シートを、重ねて、これらをニードリングにより交絡一体化した。次いで、表内バット層の表面に、平均繊度11dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が220g/m2の表外バット層用繊維シートを載置して、ニードリングを行い、交絡一体化した。その後、ニードリングを繰り返すことで高密度化し、更にプレス加工を行うことで、フェルト(F2)を得た。このフェルト(F2)の通気度は、17.9cm3/(cm2・秒)であった。
次に、実施例1と同様の操作を行い、共重合体の目付が60g/m2である製紙用フェルト(S2)を得た。
この製紙用フェルト(S2)の製造において、D=11(dtex)、P=17.9(cm3/(cm2・秒))、R=2.5(μm)であるから、式(1)によるKRは、1.9である。
ナイロンモノフィラメントの撚糸を用いて、1重織組織で織り上げられた織布を3枚重ね、全体目付が940g/m2の基布の1面側に、平均繊度58dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が440g/m2の表内バット層用繊維シートを、他面側に、平均繊度58dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が220g/m2の裏バット層用繊維シートを、重ねて、これらをニードリングにより交絡一体化した。次いで、表内バット層の表面に、平均繊度27dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が250g/m2の表外バット層用繊維シートを載置して、ニードリングを行い、交絡一体化した。その後、ニードリングを繰り返すことで高密度化し、更にプレス加工を行うことで、フェルト(F3)を得た。このフェルト(F3)の通気度は、43.2cm3/(cm2・秒)であった。
次に、実施例1と同様の操作を行い、共重合体の目付が60g/m2である製紙用フェルト(S3)を得た。
この製紙用フェルト(S3)の製造において、D=27(dtex)、P=43.2(cm3/(cm2・秒))、R=2.5(μm)であるから、式(1)によるKRは、2.7である。
また、画像処理を行い、幅200μmの中に10区間設定し、各区間内に多くの結着部が存在する断面方向における結着部の厚さ(長さ)を測定し、10点あたりの平均値を算出し、これを結着部の厚さTとした。製紙用フェルト(S1)の厚さTは165μm、製紙用フェルト(S2)の厚さTは286μm、製紙用フェルト(S3)の厚さTは331μmであった。
図7は、製紙用フェルト(S1)〜(S3)における、式(1)によるKRと、曲げ剛性上昇値との関係を示すグラフである。このグラフによれば、式(1)によるKR及び曲げ剛性の間にも正の相関があり、その相関係数は、図6における、結着部の厚さTと、曲げ剛性上昇値との間の相関係数より高いことが分かる。これは、結着部の厚さTを求める際のばらつきによるものであり、例えば、図5に示した製紙用フェルト(S3)において、10区間の厚さの測定値は、160〜560μmと大きくばらついている。一般的な製紙用フェルトの大きさは、丈(長さ)方向に5〜50m(100m超えるものもある)であり、幅は1.5〜10m(10mを超えるものもある)であるため、結着部の厚さTの正確性を上げるためには、測定区間数を大幅に増やすことが必要となるが、現実的ではない。これに対し、式(1)によるKRを用いることにより、より簡便に、より正確な曲げ剛性上昇値を把握することが可能である。そして、曲げ剛性上昇値が高くなりすぎないようなKRを設定することが、後述する評価により示される本発明の効果を得るのに有用である。
実施例4
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、共重合ポリアミド(融点:約130℃、ISO 868に準ずるショアD硬さ:60)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:0.7μm)を含む水分散体(住友精化社製「セポルジョンPA200」(商品名))を用い、その固形分濃度を6質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F1)に対して実施例1と同様の操作を行い、製紙用フェルト(S4)を得た。
この製紙用フェルト(S4)の製造において、D=3.3(dtex)、P=8.32(cm3/(cm2・秒))、R=0.7(μm)であるから、式(1)によるKRは、1.6である。
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、共重合ポリアミド(融点:約130℃、ISO 868に準ずるショアD硬さ:60)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:0.7μm)を含む水分散体(住友精化社製「セポルジョンPA200」(商品名))を用い、その固形分濃度を6質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F2)に対して実施例2と同様の操作を行い、製紙用フェルト(S5)を得た。
この製紙用フェルト(S5)の製造において、D=11(dtex)、P=17.9(cm3/(cm2・秒))、R=0.7(μm)であるから、式(1)によるKRは、2.4である。
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、非反応型ウレタン樹脂(融点:約178℃、ISO 868に準ずるショアD硬さは不明)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:0.07μm)を含む自己乳化液(第一工業製薬社製「スーパーフレックス300」(商品名))を用い、その固形分濃度を6質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F1)に対して実施例1と同様の操作を行い、製紙用フェルト(H1)を得た。尚、この製品は、融点以下の温度で乾燥させても樹脂皮膜を形成する乳化液であり、上記実施例と同様の構成を有する製紙用フェルトを得ることができる。
この製紙用フェルト(H1)の製造において、D=3.3(dtex)、P=8.32(cm3/(cm2・秒))、R=0.07(μm)であるから、式(1)によるKRは、2.6である。
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、非反応型ウレタン樹脂(融点:約178℃、ISO 868に準ずるショアD硬さは不明)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:0.07μm)を含む自己乳化液(第一工業製薬社製「スーパーフレックス300」(商品名))を用い、その固形分濃度を6質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F2)に対して実施例2と同様の操作を行い、製紙用フェルト(H2)を得た。
この製紙用フェルト(H2)の製造において、D=11(dtex)、P=17.9(cm3/(cm2・秒))、R=0.07(μm)であるから、式(1)によるKRは、3.4である。
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、非反応型ウレタン樹脂(融点:約178℃、ISO 868に準ずるショアD硬さは不明)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:0.07μm)を含む自己乳化液(第一工業製薬社製「スーパーフレックス300」(商品名))を用い、その固形分濃度を6質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F3)に対して実施例3と同様の操作を行い、製紙用フェルト(H3)を得た。
この製紙用フェルト(H3)の製造において、D=27(dtex)、P=43.2(cm3/(cm2・秒))、R=0.07(μm)であるから、式(1)によるKRは、4.2である。
実施例6
予備乾燥後の熱風温度を130℃とした以外は、フェルト(F1)に対して実施例1と同様の操作を行い、製紙用フェルト(S6)を得た。
実施例7
予備乾燥後の熱風温度を160℃とした以外は、フェルト(F1)に対して実施例1と同様の操作を行い、製紙用フェルト(S7)を得た。
まず、長さ0.3m、幅0.15mの製紙用フェルトと、それらの製造に用いられた長さ0.3m、幅0.15mのフェルト(F1)を、エンドレスベルト形状に縫い合わせ(連結後の全長は1.2m)、プレスロール試験機に取り付けた。製紙用フェルト部は、試験機上でエンドレスベルト状に回転し、試験中、1周(1回転)に1回、トップロールとボトムロールで構成される1対のプレス部で圧縮される構造である。次に、試験機上の製紙用フェルト部の走行速度を100m/分とし、表バット層の表面に常温の水をシャワーしながら、プレス回数が15,000回になるまで、製紙用フェルト部を走行させた。尚、プレス部の圧力は、41.2kN/mとした。各製紙用フェルトを用いたプレスロール試験について、この試験前後の重量変化量(M1)を測定する。その後、製紙用フェルトと、フェルト(F1)との重量差(M0)に対する上記重量変化量(M1)の割合を算出し、これを「結着部の残存率」とした。その結果、結着部の残存率は、製紙用フェルト(S1)では83%、製紙用フェルト(S6)では60%、製紙用フェルト(S7)では92%であり、十分高かった。これらより、予備乾燥後に吹き当てる熱風の温度が高いほど、結着部の残存率は高くなる傾向にあるが、いずれの場合においても、使用上、問題となるような残存率ではない。
実施例8
ナイロンモノフィラメントの撚糸を用いて、2重織組織で織り上げられた織布からなり、全体目付が560g/m2の基布の1面側に、平均繊度17dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が510g/m2の表バット層用繊維シートを、他面側に、平均繊度17dtexの66ナイロンステープルファイバー(短繊維)からなり、全体目付が200g/m2の裏バット層用繊維シートを、重ねて、これらをニードリングにより交絡一体化した。その後、ニードリングを繰り返すことで高密度化し、更にプレス加工を行うことで、フェルト(F8)を得た。このフェルト(F8)の通気度は、22.7cm3/(cm2・秒)であった。
次に、フェルト(F8)を仕上げ加工機へセットし、ポリアミド12に由来するブロックと、ポリエーテルに由来するブロックとを有する共重合体(融点:約140℃、ISO 868に準ずるショアD硬さ:30)からなる熱可塑性エラストマー粒子(平均粒径:2.5μm)を含む水分散体(住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名))の固形分濃度を5質量%に調整した水分散液を、フェルト(F8)の表面全体に、1000cm3/m2の散布量になるようにスプレーした。その後、予備乾燥を行い、続いて140℃の熱風を吹き付けて、共重合体を溶融させることで、表外バット層の繊維の表面に共重合体が結着された製紙用フェルト(S8)を得た。この製紙用フェルト(S8)における共重合体の目付は50g/m2であった。
この製紙用フェルト(S8)の製造において、D=11(dtex)、P=22.7(cm3/(cm2・秒))、R=2.5(μm)であるから、式(1)によるKR値は、2.0である。
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、共重合ポリアミド(融点:約130℃、ISO 868に準ずるショアD硬さ:60)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:0.7μm)を含む水分散体(住友精化社製「セポルジョンPA200」(商品名))を用い、その固形分濃度を5質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F8)に対して実施例8と同様の操作を行い、製紙用フェルト(S9)を得た。
この製紙用フェルト(S9)の製造において、D=11(dtex)、P=22.7(cm3/(cm2・秒))、R=0.7(μm)であるから、式(1)によるKRは、2.6である。
住友精化社製「セポルジョンNE205」(商品名)に代えて、高分子量ウレタン樹脂(融点:約90℃、ISO 868に準ずるショアD硬さは不明)からなる熱可塑性樹脂粒子(平均粒径:2μm)を含む自己乳化液(DIC社製「ボンディック1672NE」(商品名))を用い、その固形分濃度を5質量%に調整した水分散液を用いた以外は、フェルト(F8)に対して実施例1と同様の操作を行い、製紙用フェルト(H4)を得た。
この製紙用フェルト(H4)の製造において、D=11(dtex)、P=22.7(cm3/(cm2・秒))、R=2(μm)であるから、式(1)によるKRは、2.1である。
Claims (6)
- 基布層と、該基布層の製紙面側に配設された表バット層とを備える製紙用フェルトにおいて、
前記表バット層は、その表層部に、熱可塑性ポリアミド成分が結着した繊維を含むことを特徴とする製紙用フェルト。 - 前記基布層における前記表バット層の反対面である走行面側に、更に、裏バット層を備える請求項1に記載の製紙用フェルト。
- 前記熱可塑性ポリアミド成分が、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含むポリアミド系エラストマーを含有する請求項1又は2に記載の製紙用フェルト。
- 前記表バット層は、熱可塑性ポリアミドを含む粒子が水の中に分散した分散液を用いて形成されたものである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製紙用フェルト。
- 前記熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径をR(μm)、前記表バット層を構成する繊維の繊度をD(dtex)、前記熱可塑性ポリアミド成分が結着されていないフェルト材料の通気度をP(cm3/(cm2・秒))とした場合に、下記式(1)で計算されるKRが0.8〜3.0の範囲にある請求項4に記載の製紙用フェルト。
KR=log10〔(D×P)/R〕 (1) - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製紙用フェルトの製造方法であって、
熱可塑性ポリアミドを含む粒子が水の中に分散した分散液を、基布層と、該基布層の1面側に配設された第1繊維層とを備えるフェルト材料の、該第1繊維層の表面に塗布する工程と、塗布物を乾燥する工程と、乾燥物を、前記熱可塑性ポリアミドの融点より10℃低い温度から、融点より40℃高い温度までの範囲の温度に加熱する工程とを、順次、備え、
前記熱可塑性ポリアミド含有粒子の平均粒径をR(μm)、前記第1繊維層を構成する繊維の繊度をD(dtex)、前記フェルト材料の通気度をP(cm3/(cm2・秒))とした場合に、下記式(1)で計算されるKRを0.8〜3.0の範囲とすることを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
KR=log10〔(D×P)/R〕 (1)
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