JP6785143B2 - 製紙用フェルト - Google Patents
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ニードリングを利用して製紙用フェルトを製造する技術は、例えば、特許文献1〜6に記載されている。
また、製紙用フェルトは、湿紙を前工程から受け取り、後工程へと移送するコンベアとしての機能も有する。湿紙を受け取る際には、湿紙が製紙用フェルトの表面に密着し、湿紙を後工程へと送る際には、湿紙が製紙用フェルトの表面から容易且つ均等に分離する必要がある。しかしながら、製紙用フェルトの表面の凹凸が顕著であると、湿紙との密着性及び剥離性が低下して湿紙の移送が不安定化し、その結果、操業中に湿紙の破断が頻発し、生産性が低下してしまう。従って、製紙用フェルトの表面の凹凸が少ないことは、生産性の点からも重要である。
このように、製紙用フェルトの表面は、凹凸が少なく平坦であることが、抄紙機による生産性及び紙の品質にとって重要である。ところが、従来、公知の製紙用フェルトには、通常、表バット繊維層の形成に用いられる短繊維不織布の目付斑(短繊維の水平方向の分布斑)を原因とする比較的大きく且つランダムな凹凸の他に、ニードリング工程においてニードル針が表バット繊維層を貫通して形成された無数の穿孔が一定間隔で並んだ周期的な凹部を有する。但し、製紙用フェルトの製造に使用されるニードル針は、製紙用フェルト用積層物を貫通するブレード部の太さが、一般に30番手から40番手であるため、ニードル針の貫通により形成される各々の穿孔の大きさ(面積)は、最大0.1mm2という微小なものである。ところが、このような微小な穿孔が一定間隔で並ぶため、製紙用フェルトの表面、即ち、表バット繊維層の表面に、周期的な凹部となって現れる。プレスパートにおける搾水時に湿紙に転写形成されるおそれのある凹凸は、主にこの周期的な凹部によるものである。また、この周期的な凹部は、湿紙との密着性及び剥離性を低下させる原因にもなる。
1.基布層と、該基布層の製紙面側に配された表バット繊維層と、該基布層の走行面側に配された裏バット繊維層とを備え、上記表バット繊維層、上記基布層及び上記裏バット繊維層が交絡されてなる製紙用フェルトにおいて、
上記表バット繊維層は、その両端部が該表バット繊維層、上記基布層及び上記裏バット繊維層のうちの1つ又は2つの層の内部に保持された状態で、該表バット繊維層の表面に環状に露出する繊維を含み、該繊維の環状露出部の径が300〜2400μmであることを特徴とする製紙用フェルト。
2.上記表バット繊維層が、繊度の異なる複数種の繊維を含み、全繊維における繊度の平均値より大きい繊度を有する繊維が、上記表バット繊維層の表面に環状に露出している上記項1に記載の製紙用フェルト。
3.上記表バット繊維層が、繊度の異なる複数種の繊維を含み、
上記表バット繊維層が、その基布層側から表面側への断面方向に、大きい繊度を有する第1繊維を主として含む表内バット繊維層と、小さい繊度を有する第2繊維を主として含む表外バット繊維層とからなり、且つ、上記第1繊維の繊度と、上記第2繊維の繊度との差が6dtex以上である上記項1又は2に記載の製紙用フェルト。
4.上記第1繊維の繊度が25〜50dtexであり、上記第2繊維の繊度が3〜25dtexである上記項3に記載の製紙用フェルト。
5.上記表バット繊維層を構成する繊維どうしが、樹脂により接合されている上記項1乃至4のいずれか一項に記載の製紙用フェルト。
上記環状露出部を有する環状部含有繊維20の単位面積当たりの数は、穿孔の開口部の被覆性の観点から、好ましくは100〜1000本/cm2、より好ましくは300〜700本/cm2である。
上記基布層を構成する繊維は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
上記基布層を構成する繊維は、製紙用フェルトの強度、空隙率及び通水性や、圧力均一性等の特性に応じた適切な材質、形態、繊度等を有するものとすることができる。
上記基布層は、穴開け加工、発泡加工等が施された高分子フィルム又はシートに由来するものであってもよい。
また、上記基布層の目付は、単層構造及び多層構造のいずれであっても、全体として、好ましくは100〜1000g/m2であり、より好ましくは300〜800g/m2である。
上記基布層の厚さ及び目付は、製紙用フェルトの強度、空隙率及び通水性や、ロールマーク防止性等の特性に応じて、適切に設定される。
上記表バット繊維の繊度は、通常、2〜100dtexであり、繊維長は、通常、30〜100mmである。
上記表バット繊維層が、2種以上の繊維を含む場合、構成材料が互いに異なる複数種の繊維、繊度が互いに異なる複数種の繊維等を含むものとすることができる。上記表バット繊維層は、複数種の繊維の組み合わせにより単層構造を構成するものであってもよいし、種類別に各層を形成させ、全体として多層構造を構成するものであってもよい。また、上記表バット繊維層が多層構造を構成する場合は、その基布層側から表面側への断面方向に、繊維の繊度が小さくなるように分布していることが好ましい。
上記環状部含有繊維は、単層構造及び多層構造のいずれにおいても、表バット繊維層を構成するどの表バット繊維に由来するものであってもよい。
また、繊度の大きい太繊維及び繊度の小さい細繊維の間の繊度差は、好ましくは6dtex以上、より好ましくは10dtex以上である。上記太繊維の繊度は、好ましくは25dtex以上、より好ましくは30dtex以上であり、上記細繊維の繊度は、好ましくは25dtex以下、より好ましくは20dtex以下である。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、エチレン・ビニルエステル共重合体等が挙げられる。これらのうち、耐圧縮性、耐屈曲性、耐加水分解性等の観点から、ポリアミド樹脂及びウレタン樹脂が好ましい。
上記ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、アラミド、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
上記ウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン等が挙げられる。
上記表バット繊維層が、樹脂により接合された表バット繊維を含む場合、樹脂の含有割合は、耐圧縮性、耐屈曲性等の観点から、表バット繊維層の全体に対して、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%である。
上記表バット繊維層(P)を構成する表外バット繊維層に含まれる第2繊維の繊度の上限は、好ましくは25dtex、より好ましくは24dtex、更に好ましくは23dtex、特に好ましくは22dtexであり、下限は、好ましくは3dtex、より好ましくは7dtex、更に好ましくは11dtexである。尚、上記表内バット繊維層に含まれる第1繊維の繊度と、上記表外バット繊維層に含まれる第2繊維の繊度との差は、好ましくは6dtex以上、より好ましくは10dtex以上である。また、この第2繊維の長さは、好ましくは50〜100mm、より好ましくは70〜80mmである。
更に、上記表バット繊維層(P)の好ましい態様は、本発明の製紙用フェルトの耐圧縮性、耐屈曲性、耐久性等の観点から、表内バット繊維層及び表外バット繊維層のうちの少なくとも表外バット繊維層を構成する第2繊維どうしが、樹脂により接合されてなるものであり、特に好ましい態様は、表外バット繊維層を構成する第2繊維どうしが、樹脂により接合されており、更に、第1繊維に由来する環状部含有繊維の環状露出部と、表外バット繊維層の表面層における第2繊維とが、樹脂により接合されてなるものである。
上記裏バット繊維の繊度は、通常、10〜50dtexであり、繊維長は、通常、50〜100mmである。
上記裏バット繊維層が、2種以上の繊維を含む場合、構成材料が互いに異なる複数種の繊維、繊度が互いに異なる複数種の繊維等を含むものとすることができる。上記裏バット繊維層は、複数種の繊維の組み合わせにより単層構造を構成するものであってもよいし、種類別に各層を形成させ、全体として多層構造を構成するものであってもよい。
上記裏バット繊維は、好ましくは、融点が170℃以上の樹脂を含む繊維であり、特に好ましくは、融点が180℃以上のポリアミド樹脂を含む繊維である。上記裏バット繊維の繊度は、通常、10〜50dtexである。また、上記裏バット繊維の長さは、特に限定されないが、通常、50〜100mmである。
上記第1工程で用いる裏バット繊維層形成用繊維集積体の数は、特に限定されず、1体及び2体以上のいずれでもよい。
上記裏バット繊維層形成用繊維集積体の目付(合計)は、好ましくは50〜300g/m2であり、より好ましくは80〜250g/m2、更に好ましくは100〜200g/m2である。
上記表バット繊維層形成用繊維集積体は、表バット繊維を含む集積体である。この表バット繊維層形成用繊維集積体は、表バット繊維のみからなるものであってもよいし、この表バット繊維と、加熱により溶融して接着剤として作用する繊維(溶融性繊維)とからなるものであってもよい。
上記表バット繊維は、好ましくは、融点が170℃以上の樹脂を含む繊維であり、特に好ましくは、融点が180℃以上のポリアミド樹脂を含む繊維である。上記表バット繊維の繊度は、通常、2〜100dtexである。また、上記表バット繊維の長さは、特に限定されないが、通常、30〜100mmである。
一方、上記溶融性繊維は、好ましくは、融点が150℃以下の樹脂を含む繊維である。上記溶融性繊維の繊度は、通常、2〜20dtexである。また、上記溶融性繊維の長さは、特に限定されないが、通常、50〜100mmである。
上記表バット繊維層形成用繊維集積体が、表バット繊維と、溶融性繊維とからなる場合、溶融性繊維の含有割合の上限は、両者の合計を100質量%とすると、好ましくは10質量%である。
上記第2工程で用いる表バット繊維層形成用繊維集積体の数は、特に限定されず、1体及び2体以上のいずれでもよい。また、上記表バット繊維層形成用繊維集積体は、上記第1工程で用いる裏バット繊維層形成用繊維集積体と同一であってもよいし、異なってもよい。
上記表バット繊維層形成用繊維集積体の目付(合計)は、好ましくは300〜1000g/m2であり、より好ましくは400〜900g/m2、更に好ましくは500〜800g/m2である。
従って、繊度が互いに異なる複数種の表バット繊維を含む単層構造の表バット繊維層形成用繊維層を形成する場合には、繊度が互いに異なる複数種の表バット繊維を含む表バット繊維層形成用繊維集積体を用いることが好ましい。また、多層構造の表バット繊維層形成用繊維層を形成する場合には、繊度が互いに異なる表バット繊維を別々に含む、複数種の表バット繊維層形成用繊維集積体を用いることが好ましい。この場合、第3工程により、より大きい繊度を有する表バット繊維を露出しやすくさせ、第3積層物又は製紙用フェルトの表バット繊維層の表面層における密度を高くすることができることから、表バット繊維全体のうち、より大きい繊度を有する表バット繊維を主として含む表バット繊維層形成用繊維集積体を第1積層物の基布層側表面の直上に載置し、より小さい繊度を有する表バット繊維を主として含む表バット繊維層形成用繊維集積体を最上部に載置して、ニードリングを行うことが好ましい。繊度が互いに異なる表バット繊維を別々に含む、3体以上の表バット繊維層形成用繊維集積体を用いる場合も同じである。
上記の太繊度表バット繊維及び細繊度表バット繊維は、製紙用フェルトの製造後、上記の第1繊維及び第2繊維となる原料繊維である。
上記表バット繊維層形成用繊維集積体が、繊度が(略)一定の繊維(溶融性繊維を含む態様を含む)からなる場合、該繊維の略中央部の一部が表バット繊維層形成用繊維層の表面側に突き出され、環状部を形成する。
一方、上記表バット繊維層形成用繊維集積体が、互いに繊度の異なる複数種の繊維からなる場合、大きい繊度を有する繊維及び小さい繊度を有する繊維の両方における、各繊維の略中央部の一部が表バット繊維層形成用繊維層の表面側に突き出されることがある。一般に、より大きい繊度を有する繊維に対するニードル針の衝突確率が高くなるため、太繊度表バット繊維が表バット繊維層形成用繊維層の表面側に突き出されやすく、この太繊度表バット繊維による環状露出部が形成される。また、上記第2積層物が、基布層を上面側として載置した第1積層物に、上記の第1表バット繊維層形成用繊維集積体及び第2表バット繊維層形成用繊維集積体を、順次、積載した積層物である場合には、第2積層物の裏側(裏バット繊維層形成用繊維層側)からのニードリングにより、ニードル針は、第1表バット繊維層形成用繊維集積体に含まれる太繊度表バット繊維に最初に接触するため、太繊度表バット繊維が表バット繊維層形成用繊維層の表面側に突き出されやすく、主として、この太繊度表バット繊維による環状部が形成される。上記第2表バット繊維層形成用繊維集積体が溶融性繊維を含む場合、この溶融性繊維による環状部が形成されることがある。
直径0.25mmのナイロン6からなるモノフィラメントの単糸を経糸及び緯糸として用いて得られた、目付が約200g/m2の1重織の織布Aと、経糸として直径0.20mmのナイロン6からなるモノフィラメントを6本撚り合わせた撚糸を、緯糸として直径0.35mmのナイロン610からなるモノフィラメントの単糸を、それぞれ、用いて得られた、目付が約600g/m2の経2重織の織布Bとを、前者が上側になるように重ねて、基布とした。次いで、この基布の裏面側(織布B側)に、繊度44dtex及び長さ70mmのナイロン66短繊維からなる、目付が200g/m2の不織布Pを載置し、不織布Pに対してニードルパンチングを行った。これにより裏バット繊維層形成用繊維層を形成した。その後、基布層の表面側(織布A側)に、繊度44dtex及び長さ70mmのナイロン66短繊維からなる、目付が400g/m2の不織布Qを載置し、不織布Qに対してニードルパンチングを行った。これにより表内バット繊維層形成用繊維層を形成した。更に、表内バット繊維層形成用繊維層の上に、繊度17dtex及び長さ70mmのナイロン66短繊維97質量%と、繊度17dtex及び長さ70mmの低融点ポリアミド繊維(融点:約140℃)3質量%とからなる、目付が200g/m2の不織布Rを載置し、不織布Rに対してニードルパンチングを行った。これにより、表外バット繊維層形成用繊維層を形成した。その後、得られた積層物Lに対して、カレンダー処理(線圧:20kg/cm、温度:145℃)を行い、製紙用フェルト(F1)を得た。
また、製紙用フェルト(F1)の表外バット繊維層の表面に、富士フイルム社製プレスケールフィルムを載置し、ロールで加圧(線圧:1kg/cm)する圧力発色フィルムテストを行った(図6参照)。図6より、製紙用フェルト(F1)の製造時に不織布Rへ行ったニードルパンチングにより、表外バット繊維層の表面に、穿孔の開口部が直線状に残っていたことに起因する筋状の凹凸が明らかである。
比較例1で得られた積層物Lの裏バット繊維層に対してニードルパンチングを行い、表内バット繊維層形成用繊維層の繊維を表外バット繊維層形成用繊維層の表面に押し出し、その両端部を、表外バット繊維層形成用繊維層、表内バット繊維層形成用繊維層、基布層及び裏バット繊維層形成用繊維層のうちの1つ又は2つの内部に保持させつつ、繊維の略中央部を、表外バット繊維層形成用繊維層の表面から突き出させた。その後、カレンダー処理(線圧:20kg/cm、温度:145℃)を行い、露出した環状部を屈曲させて、図4に示す構造を有する製紙用フェルト(F2)を得た。
また、製紙用フェルト(F2)においても、比較例1と同様にして、圧力発色フィルムテストを行った(図10参照)。図10には、図6のような筋状の凹凸が見られないことが明らかである。
Claims (5)
- 基布層と、該基布層の製紙面側に配された表バット繊維層と、該基布層の走行面側に配された裏バット繊維層とを備え、前記表バット繊維層、前記基布層及び前記裏バット繊維層が交絡されてなる製紙用フェルトにおいて、
前記表バット繊維層は、その両端部が該表バット繊維層、前記基布層及び前記裏バット繊維層のうちの1つ又は2つの層の内部に保持された状態で、該表バット繊維層の表面に環状に露出する繊維を含み、該繊維の環状露出部の径が300〜2400μmであり、該繊維の単位面積当たりの数が100〜1000本/cm 2 であることを特徴とする製紙用フェルト。 - 前記表バット繊維層が、繊度の異なる複数種の繊維を含み、全繊維における繊度の平均値より大きい繊度を有する繊維が、前記表バット繊維層の表面に環状に露出している請求項1に記載の製紙用フェルト。
- 前記表バット繊維層が、繊度の異なる複数種の繊維を含み、
前記表バット繊維層が、その基布層側から表面側への断面方向に、大きい繊度を有する第1繊維を主として含む表内バット繊維層と、小さい繊度を有する第2繊維を主として含む表外バット繊維層とからなり、且つ、前記第1繊維の繊度と、前記第2繊維の繊度との差が6dtex以上である請求項1又は2に記載の製紙用フェルト。 - 前記第1繊維の繊度が25〜50dtexであり、前記第2繊維の繊度が3〜25dtexである請求項3に記載の製紙用フェルト。
- 前記表バット繊維層を構成する繊維どうしが、樹脂により接合されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製紙用フェルト。
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