以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 記録媒体
まず、本実施形態に係る記録媒体について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る記録媒体100を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態に係る記録媒体100を模式的に示す図1のII−II線断面図である。
記録媒体100は、図1および図2に示すように、基材110と、インク受容層120と、を有している。
1.1. 基材
基材110は、例えば、PPC(Plain Paper Copier)用紙である。なお、基材110は、古紙を解繊して製造されたリサイクルペーパーであってもよいし、OHP(Overhead Projector)に用いるOHPシート(トレンスペアレンシ)であってもよい。また、基材110は、後述するシート製造装置によって製造されたシートであってもよい。図示の例では、基材110の平面形状(基材110の厚さ方向からみた形状)は、長方形であるが、特に限定されない。
基材110は、平面視において(基材110の厚さ方向からみて)、基材110の縁部の少なくとも一部に、インク受容層120が設けられていない余白部112を有している。図示の例では、余白部112は、基材110の縁部の全周に設けられている。余白部112を備えていることにより、例えば後述する図8に示すように、剥離部材320によってインク受容層120を除去する際に、余白部112に剥離部材320を接触させてインク受容層120を除去することができる。これにより、記録媒体100の厚さ方向における剥離部材320の位置を容易に決定することができ、インク受容層120を容易に除去することができる。
基材110の余白部112の幅Wは、例えば、1mm以上10mm以下であり、好ましくは、3mm以上7mm以下である。幅Wが1mm以上であれば、余白部112に剥離部材320を確実に接触させることができる。幅Wが10mm以下であれば、インク受容層120の面積を十分に確保することができ、インクジェット方式によって印刷可能な面積を十分に確保することができる。なお、図示はしないが、余白部112は、基材110の縁部の全周ではなく、縁部の一部(縁部の一辺)のみに設けられていてもよい。
1.2. インク受容層
インク受容層120は、基材110上に設けられている。図示の例では、インク受容層120は、基材110の一方側の面のみに設けられているが、基材110の両面に設けられていてもよい。図示の例では、インク受容層120の平面形状は、長方形であるが、特に限定されない。
インク受容層120は、インクジェット方式によって(例えばインクジェットプリンターによって)印刷される部分である。インク受容層120は、インクジェットプリンターの印刷ヘッドから吐出されたインクを受容し浸透させることができる。
インク受容層120の厚さは、例えば、20μm以上100μm以下であり、好ましくは、30μm以上70μm以下である。インク受容層120の厚さが20μm以上であれば、インクジェットプリンターによって吐出されたインクがインク受容層120下の基材110にまで浸透することを抑制することができる。インク受容層120の厚さが100μm以下であれば、コストを抑えることができる。なお、例えば、インク受容層120を50μmより厚くすることにより、インクの吸収性および保持性により優れた記録媒体(吸収シート)を得ることができる。
インク受容層120は、図1に示すように、インク受容層120に関する情報を含むマーキング部122を有する。図示の例では、マーキング部122は、インク受容層120の隅近傍に設けられているが、その位置および数は、特に限定されない。
マーキング部122は、バーコード(1次元バーコード)またはQRコード(2次元コード)であるが、情報量の多さを考慮すると、マーキング部122は、QRコードであることが好ましい。なお、マーキング部122は、単純な図形、記号、文字、またはこれらを組み合わせたものであってもよい。
マーキング部122に含まれるインク受容層120に関する情報とは、例えば、基材110上にはインク受容層120が設けられているという情報、インク受容層120の厚さの情報、インク受容層120を形成する複合体の組成の情報(例えばセルロース繊維と熱可塑性樹脂との質量比)、余白部112の位置や幅Wの情報などである。例えば基材110からインク受容層120を除去する際に、マーキング部122から、インク受容層120の厚さの情報や余白部112の位置と幅Wの情報を取得することにより、インク受容層120の除去を容易に行うことができる。また、インク受容層120に、インクジェットプリンターによって印刷する際に、マーキング部122から、インク受容層120を形成する複合体の組成の情報を取得することにより、インク受容層120はどのような画像が印刷されるのに適しているか(例えば、写真の印刷に適しているのか、文字の印刷に適しているのか)を知ることができる。
インク受容層120は、セルロース繊維と、セルロース繊維の少なくとも一部を被覆している疎水性材料と、を含む。インク受容層120は、電子写真方式に類する方式による静電塗布(静電力を利用した塗布)により、複合体(セルロース繊維と、セルロース繊維の少なくとも一部を被覆している疎水性材料と、を含む複合体)を基材110に付着させて、加圧加熱されることにより形成される。
1.2.1. セルロース繊維
セルロース繊維は、セルロースによって構成されている繊維である。セルロース繊維は、天然繊維であってもよいし、再生繊維であってもよいし、半合成繊維であってもよい。疎水性材料がセルロース繊維を被覆する前の状態において、セルロース繊維は、粉体状の繊維であってもよい。
インク受容層120に含まれるセルロース繊維の大きさは、例えば、平均(個数平均)で長さ(長径)が1μm以上100μm以下、幅(短径)が1μm以上30μm以下であり、好ましくは、長さが5μm以上30μm以下、幅が5μm以上20μm以下である。セルロース繊維の長さを1μmより小さくするには、コストが高くなってしまうが、上記の範囲であればコストを抑えることができる。さらに、上記の範囲であれば、セルロース繊維の長さを乾式方式で調整することができる。セルロース繊維の長さが100μm以下であれば、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができ、インク受容層120を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができる。したがって、均一性よく、複合体を基材110に静電塗布させることができる。
なお、セルロース繊維の大きさ(長さ、幅)は、例えば、マルバーン社(Malvern Instruments)製の粒子画像分析装置モフォロギG3(MorphologiG3)を用いて測定される。この装置は、自動乾式分散ユニットにより試料を均一に分散させ、該試料の静止画像を解析することにより、粒度および粒子形状を測定する装置である。
インク受容層120に含まれるセルロース繊維の平均アスペクト比は、3未満であり、好ましくは、2以下である。セルロース繊維の平均アスペクト比が3未満であれば、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができ、インク受容層120を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができる。したがって、均一性よく、複合体を基材110に静電塗布させることができる。セルロース繊維の平均アスペクト比を2以下とすることにより、インク受容層120を、インクジェットプリンターによって吐出されたインクが浸透するのにより適した多孔質にすることができる。これにより、特に、インク受容層120においてインクの吸収性を高くすることができる。
なお、セルロース繊維の平均アスペクト比は、例えば、粒子画像分析装置モフォロギG3で測定されたセルロース繊維の平均長さを平均幅で割った値である。
1.2.2. 疎水性材料
疎水性材料は、例えば、加熱処理によりセルロース繊維に融着されて、複合体を形成する。疎水性材料は、セルロース繊維の表面の一部を被覆していてもよいし、セルロース繊維の表面全面を被覆していてもよい。
疎水性材料は、セルロース繊維同士を結着させて、多孔質のインク受容層120を形成する。さらに、疎水性材料は、セルロース繊維を安定した負帯電性にする。これにより、静電塗布によりインク受容層120を形成することができる。例えば、疎水性材料が被覆されていないセルロース繊維では、環境(具体的には湿度)によって帯電性が変化しやすく、静電塗布によりインク受容層120を形成することが困難な場合がある。また、疎水性材料が被覆されていないセルロース繊維では、インクとの親和性が高く、インクが滲んでしまう場合がある。疎水性材料をセルロースに被覆させることにより、セルロース繊維の帯電性を安定させることができ、インクの滲みを抑えることができる。
疎水性材料は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む。疎水性材料は、熱可塑性樹脂であってもよい。さらに、疎水性材料は、熱可塑性樹脂の表面に配置された無機物材料と、熱可塑性樹脂の表面および内部の少なくとも一方に配置された白色顔料と、を含んでもよい。
1.2.2.1. 熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂を含むことにより、疎水性材料は、加熱処理によりセルロース繊維に融着される。熱可塑性樹脂は、セルロース繊維同士を結着させて、多孔質のインク受容層120を形成する。さらに、熱可塑性樹脂は、セルロース繊維を安定した負帯電性にする。熱可塑性樹脂は、疎水性であってもよい。ただし、無機物材料によって疎水性材料全体が疎水性であれば、熱可塑性樹脂は、親水性であってもよい。セルロース繊維を被覆する前の状態において、熱可塑性樹脂は、粉体状の樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いる。
熱可塑性樹脂の質量をW1、セルロース繊維の質量をW2としたとき、(W1/(W1+W2))値は、0.1以上0.4未満であり、好ましくは、0.15以上0.25以下である。(W1/(W1+W2))値が0.1以上であれば、セルロース繊維の結着力を確保することができ、セルロース繊維がインク受容層120から脱落することを抑制することができる。(W1/(W1+W2))値が0.4未満であれば、インク受容層120の疎水性が高くなりすぎてインクを弾いてしまうことを抑制することができ、印刷品質を向上させることができる。複合体が基材110に付着される前の状態であっても、複合体が基材110に付着されてインク受容層120を形成している状態であっても、(W1/(W1+W2))値は、上記の範囲であることが好ましい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば、50℃以上180℃以下であり、好ましくは、55℃以上160℃以下である。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が50℃以上であれば、摩擦程度の加熱でインク受容層120が剥がれることを抑制することができ、インク受容層120の強度が低下することを抑制することができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が180℃以下であれば、例えばインク受容層120となる複合体を加熱加圧して定着する際や、あるいはインク受容層120を加熱により軟化させて剥離部によって剥離する際に、記録媒体100を180℃より高い温度まで加熱する必要がなく、セルロース繊維が熱によりダメージを受けることを抑制することができる。
1.2.2.2. 無機物材料
無機物材料は、例えば、無機物からなる微粒子である。無機物材料は、熱可塑性樹脂の表面に配置される。無機物材料により、インク受容層120となる複合体は、安定した負帯電性を有することができる。なお、複合体が無機物材料を含んでいるか否かは、複合体の帯電量の変化の他、複合体の安息角の減少によっても確認することができる。無機物材料は、複合体が凝集することを抑制する凝集抑制剤としての機能を有していてもよい。
無機物材料としては、例えば、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウムを挙げることができる。無機物材料は、上記材料の1種類から構成されていてもよいし、複数種類から構成されていてもよい。
無機物材料の体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、1nm以上100nm以下であり、好ましくは5nm以上50nm以下である。無機物材料は、粒径が小さく、重量あたりの表面積の割合が大きく、これに伴い摩擦帯電する際の表面も大きい。そのため、無機物材料の粒子径が上記範囲内であれば、良好な帯電効果を得ることができる。さらに、無機微粒子の粒子径が上記範囲内であれば、熱可塑性樹脂の表面に良好にコーティングを行うことができる。
なお、無機物材料の体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折・散乱法や、動的光散乱法等により測定することができる。
無機物材料の含有量は、セルロース繊維および熱可塑性樹脂の混合物100質量%に対して、例えば、0.5質量%以上10質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上5質量%以下である。無機物材料の含有量の範囲が上記範囲であれば、インク受容層120となる複合体は、より安定した負帯電性を有することができる。
無機物材料を含む複合体(インク受容層120を形成する複合体)の平均帯電量の絶対値は、3μC/g以上である。複合体の平均帯電量の絶対値が高い方が、静電塗布により、容易に複合体を基材110に付着させてインク受容層120を形成することができる。
なお、複合体の帯電量は、複合体同士を摩擦帯電させて測定することができる。帯電量の測定は、例えば、標準キャリアと称する粉体と複合体とを空気中で撹拌(混合)し、その粉体の帯電量を測定することにより行うことができる。標準キャリアとしては、例えば、日本画像学会から購入可能(正帯電極性または負帯電極性トナー用標準キャリア、「P−01またはN−01」として入手可能)な、フェライトコアを表面処理した球形キャリアで、正帯電極性トナー用または負帯電極性トナー用の標準キャリア、パウダーテック株式会社から入手可能なフェライトキャリア等を用いることができる。
より具体的には、複合体の平均帯電量は、例えば、次のようにして求めることができる。上記キャリアを80質量%、および複合体を20質量%の混合粉体を、アクリル製の容器に投入し、60秒間100rpmで容器をボールミル架台に載せて容器を回転させ、キャリアと複合体(粉体)との混合を行う。混合を行った複合体とキャリアとの混合物について吸引式小型帯電量測定装置(例えば、トレック社製Modl210HS−2)により測定することで、平均帯電量の絶対値を求めることができる。
無機物材料は、疎水性である。無機物材料は、疎水処理されている。具体的には、無機物材料をシラン化合物により化学的に処理することにより、無機物材料を疎水処理することができる。無機物材料の疎水処理に用いられるシラン化合物としては、例えば、トリメチルシラン、ジメチルシラン、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリイソブチルシラン等のアルキルシラン類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
1.2.2.3. 白色顔料
白色顔料は、インク受容層120の白色度を調整することができる。例えば、白色顔料によって、白色度が低い基材110に対しても、あるいは白色度の低いセルロース繊維を用いた場合でも、白色度の高いインク受容層120を形成することができ、印刷の見栄え(品質)を向上させることができる。
白色顔料の材料としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、リトポン、酸化アルミニウム、酸化珪素、三酸化アンチモン、燐酸チタニウム、酸化亜鉛、鉛白、酸化ジルコニウム等の無機顔料やポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の有機微粉末等を用いる。好ましくは、白色顔料としては、二酸化チタンや炭酸カルシウムを用いる。
白色顔料の配合量としては、例えば、熱可塑性樹脂90部に対して、1部以上30部以下であり、好ましくは5部以上20部以下である。熱可塑性樹脂90部に対して白色顔料の配合量が1部以上であれば、白色度が低くなり過ぎることを抑制することができる。熱可塑性樹脂90部に対して白色顔料の配合量が20部より高くなると、コストも高くなってしまう。
なお、記録媒体100では、白色顔料以外の顔料や染料を含んでもよい。この場合、静電塗布により、色紙を簡単に低コストで得ることができる。
記録媒体100は、例えば、以下の特徴を有する。
記録媒体100では、セルロース繊維と、セルロース繊維の少なくとも一部を被覆している疎水性材料と、を含むインク受容層120を備える。このような記録媒体100では、セルロース繊維の表面に疎水性材料が付着しているため、セルロース繊維同士の凝集を抑えることができ、インク受容層120は多孔質となってインクの吸収性を高めることができる。また、セルロース繊維の表面に付着した疎水性材料により、横方向(厚さ方向と直交する方向)へのインクの滲みを抑えることができる。例えば熱可塑性樹脂がセルロース繊維に付着されていないと、セルロース繊維同士の結着がなくなるだけでなく、インク受容層は、インクとの親和性が高く、インクが滲んでしまう場合がある。したがって、記録媒体100は、インクジェット方式での良好な印刷が可能である。さらに、記録媒体100は、印刷されたインク受容層120など不要となったインク受容層120を除去することにより、基材110の再利用が可能である。よって、記録媒体100は、インクジェット方式での良好な印刷が可能であり、かつ、再生が可能である。
記録媒体100では、セルロース繊維の平均アスペクト比は、3未満であってもよい。そのため、記録媒体100では、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができ、インク受容層120を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができる。したがって、均一性よく、複合体を基材110に静電塗布させ、インク受容層120を形成することができる。また、セルロース繊維の平均アスペクト比を3未満とすることによりインクの保持性を高めることができ、インクの吸収性と保持性を両立させることができる。
記録媒体100では、疎水性材料は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。そのため、記録媒体100では、加熱処理により疎水性材料をセルロース繊維に融着させることができる。
記録媒体100では、熱可塑性樹脂の質量をW1、セルロース繊維の質量をW2としたとき、(W1/(W1+W2))値は、0.1%以上0.4未満であってもよい。そのため、記録媒体100では、セルロース繊維がインク受容層120から脱落することを抑制しつつ、インク受容層120においてインクが弾かれることを抑制することができる。
記録媒体100では、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、50℃以上180℃以下であってもよい。そのため、記録媒体100では、インク受容層120の強度が低下することを抑制しつつ、インク受容層120となる複合体を加熱加圧により定着、あるいはインク受容層を加熱により軟化させて剥離する場合に、セルロース繊維が熱によりダメージを受けることを抑制することができる。
記録媒体100では、セルロース繊維の平均長さは、1μm以上100μm以下であってもよい。そのため、記録媒体100では、乾式方式でセルロース繊維の長さを小さくすることができ、かつ、セルロース繊維同士が絡み合うことを抑制することができ、インク受容層120を形成する複合体からなる粉体の帯電量の分布の均一性を向上させることができる。したがって、均一性よく、複合体を基材110に静電塗布させることができる。
記録媒体100では、疎水性材料は、白色顔料を含んでもよい。そのため、記録媒体100では、白色顔料によって、白色度が低い基材110に対しても、あるいは白色度の低いセルロース繊維を用いた場合でも、白色度の高いインク受容層120を形成することができ、印刷の見栄えを向上させることができる。
記録媒体100では、疎水性材料は、疎水性の無機物材料を含んでもよい。そのため、記録媒体100では、インク受容層120となる複合体は、安定した帯電性(負帯電性)を有することができる。
記録媒体100では、基材110は、平面視において、基材110の縁部の少なくとも一部に、インク受容層120が設けられていない余白部112を有してもよい。そのため、記録媒体100では、剥離部材320によってインク受容層120が除去される際に、余白部112に剥離部材320を接触させてインク受容層120を除去することができる。したがって、記録媒体100では、記録媒体100の厚さ方向における剥離部材320の位置を容易に決定することができ、インク受容層120を容易に除去することができる。
記録媒体100では、インク受容層120は、インク受容層120に関する情報を含むマーキング部122を有してもよい。そのため、記録媒体100では、例えば基材110からインク受容層120を除去する際に、マーキング部122から、インク受容層120の厚さの情報や余白部112の位置と幅Wの情報を取得することにより、インク受容層120の除去を容易に行うことができる。また、インク受容層120に、インクジェットプリンターによって印刷する際に、マーキング部122から、インク受容層120を形成する複合体の組成の情報を取得することにより、インク受容層120はどのような画像が印刷されるのに適しているか(例えば、写真の印刷に適しているのか、文字の印刷に適しているのか)を知ることができる。
記録媒体100では、マーキング部122は、バーコードまたはQRコードであってもよい。このような記録媒体100では、マーキング部122が単純な図形、記号、または文字である場合に比べて、インク受容層120に関する多くの情報を含むことができる。
以上のように、記録媒体100は、インクジェット方式での印刷に好適であり、再生することが可能である。尤も、記録媒体100は、インクジェット方式での印刷のみならず、電子写真方式での印刷にも利用することができる。この場合には、インク受容層120を形成する複合体に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度または熱変形温度(JIS K 7191 荷重たわみ温度)が、電子写真方式のプリンターの定着温度よりも高くなるようにすればよい。例えば、プリンターの定着温度が160℃の場合、熱可塑性樹脂の熱変形温度を180℃とすればよい。印刷されトナーが付着したインク受容層120は、除去して再生することが可能である。
2. 記録媒体製造装置
次に、本実施形態に係る記録媒体製造について、図面を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る記録媒体製造装置1000を示す機能ブロック図である。記録媒体製造装置1000は、本発明に係る記録媒体を製造する。以下では、本発明に係る記録媒体として記録媒体100を製造する記録媒体製造装置1000について説明する。
記録媒体製造装置1000は、図3に示すように、受容層形成部200と、受容層剥離部(記録媒体処理装置)300と、を備える。
2.1. 受容層形成部
図4は、受容層形成部200を模式的に示す図である。受容層形成部200は、複合体を、基材110に付着させてインク受容層120を形成する。受容層形成部200は、図4に示すように、基材供給部210と、搬送部220と、感光体230と、帯電部240と、露光部250と、現像部260と、転写部270と、定着部280を含む。搬送部220、感光体230、帯電部240、露光部250、現像部260、転写部270、および定着部280は、例えば、筐体290に収容されている。
基材供給部210は、搬送部220に基材110を供給する。基材供給部210は、搬送部220に基材110を連続的に投入するための自動投入部である。基材110は、例えば、受容層剥離部300においてインク受容層120が除去された基材である。基材供給部210は、基材110を1枚ごとに(毎葉に)供給してもよい。
搬送部220は、基材110を感光体230に向けて搬送する。搬送部220は、搬送ベルト222と、搬送ローラー224と、を有している。搬送ベルト222は、搬送ローラー224の回転に伴い、移動可動である。基材110は、搬送ベルト222上に載置されて搬送される。なお、搬送部220は、搬送ベルト222ではなく、搬送ローラー対によって基材110を挟持し搬送してもよい。
感光体230は、基材110に複合体(インク受容層120となる複合体)を転写させる。感光体230は、円筒状(ドラム状)の形状を有している。感光体230の表面(外周面)は、例えば、有機感光体によって形成されている。感光体230は、回転駆動される。感光体230の周囲には、感光体230の回転方向に沿って、帯電部240、露光部250、現像部260、および転写部270が順に配列されている。
帯電部240は、感光体230の表面を一様に帯電させる。帯電部240は、例えば、感光体230の表面を、負電位に帯電させる。帯電部240は、例えば、オゾンを照射するコロナ帯電器や帯電ブラシ、帯電フィルムであり、図示の例では、ローラーの形状を有している。
露光部250は、感光体230の表面を露光し、感光体230の表面の電位を調整する。露光部250は、感光体230の表面に例えばレーザー光を照射し、複合体が感光体230の表面に移動付着されるような電位に調整する。露光部250は、例えば、感光体230の表面の一部を徐電することにより、感光体230の表面の電位を調整する。
現像部260は、複合体を、感光体230の表面に移動付着させる。現像部260は、カートリッジ261を有している。カートリッジ261には、攪拌機(アジテーター)262、供給ローラー263、現像ローラー264、およびブレード265が収容されている。複合体は、カートリッジ261内の貯蔵部に収容されている。カートリッジ261は、受容層形成部200に着脱可能に装着されている。攪拌機262は、回転することにより複合体を攪拌し帯電させて、供給ローラー263に供給する。現像ローラー264は、供給ローラー263と電位差を有し、複合体を静電付着させる。ブレード265は、複合体を薄膜化し、摩擦帯電させる。現像ローラー264の表面に付着された複合体は、感光体230と現像ローラー264との間の電位差により、感光体230の表面に移動付着する。感光体230と現像ローラー264との電位は、適宜設定される。
転写部270は、感光体230の表面に付着された複合体を、基材110に転写する。図示の例では、転写部270は、ローラーの形状を有し、搬送ベルト222を移動させるローラーとしても機能を有している。転写部270は、搬送ベルト222を挟んで感光体230と対向し、感光体230とともに基材110を挟持可能な位置に設けられている。転写部270は、所定の電位を有している。感光体230の表面に付着された複合体は、感光体230と転写部270との間の電位差により、基材110に転写される。すなわち、複合体は、基材110に静電塗布される。搬送部220は、複合体が設けられた基材110を、定着部280に向けて搬送する。
定着部280は、基材110に転写された複合体を、基材110に定着させる。図示の例では、定着部280は、ローラーの形状を有している。定着部280は、例えば、基材110および複合体を挟持して加熱および加圧することにより、複合体を基材110に定着させる。定着部280が加圧する圧力は、例えば、100kg以上1000kg以下である。定着部280が加熱する温度は、例えば、100℃以上250℃以下であり、好ましくは、120℃以上200℃以下である。
以上により、基材110と、複合体からなるインク受容層120と、を含む記録媒体100を形成することができる。記録媒体100は、例えば、図示せぬローラー対によって、受容層形成部200の外部に排出される。なお、記録媒体100を外部に排出するためのローラー対は、定着部280が兼ねてもよい。
2.2. 受容層剥離部
図5は、受容層剥離部300を模式的に示す図である。受容層剥離部300は、インク受容層120を、基材110から除去する。受容層剥離部300は、搬送部310と、剥離部材320と、を含む。搬送部310および剥離部材320は、例えば、筐体340に収容されている。
搬送部310は、例えば、基材110と、インクジェット方式によって印刷されたインク受容層120と、を含む記録媒体100を、剥離部材320に向けて搬送する。搬送部310は、搬送ベルト312と、搬送ローラー314と、を有している。搬送ベルト312は、搬送ローラー314の回転に伴い、移動可動である。記録媒体100は、搬送ベルト312上に載置されて搬送される。図示の例では、搬送部310は、記録媒体100を水平方向に搬送している。なお、搬送部310は、搬送ベルト312ではなく、搬送ローラー対によって記録媒体100を挟持し搬送してもよい。
剥離部材320は、例えば、インクジェット方式によって印刷された記録媒体100のインク受容層120を、基材110から除去する。剥離部材320としては、例えば、略板状の形状を有する金属製のスクレイパーを用いる。剥離部材320の記録媒体100に対する切込み量は、例えば、インク受容層120の厚さに設定されている。搬送ローラー314は、加熱機構を有していてもよい。これにより、搬送ベルト312を介して、記録媒体100を加熱することができる。具体的には、記録媒体100を、インク受容層120に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に加熱する。この加熱によりインク受容層120を軟化させることができ、剥離部材320によって例えばスクレイプして容易にインク受容層120を除去することができる。
剥離部材320によってインク受容層120が除去された記録媒体100(基材110)は、搬送部310によって排紙トレイ330に搬送される。排紙トレイ330に収容された基材110は、例えば、受容層形成部200の基材供給部210に供給される。
なお、図示はしないが、受容層剥離部300は、剥離部材320に付着したインク受容層120の材料(複合体)をクリーニングする機構を備えていていもよい。記録媒体100から削り取られた複合体は、図示せぬ回収部に回収されて再利用されてもよい。
また、上記では、搬送部220、感光体230、帯電部240、露光部250、現像部260、転写部270、および定着部280は、筐体290に収容され、搬送部310、剥離部材320、および排紙トレイ330は、筐体340に収容されていたが、これらの部材は、1つの筐体に収容されていてもよい。
記録媒体製造装置1000は、例えば、以下の特徴を有する。
記録媒体製造装置1000では、セルロース繊維と、セルロース繊維の一部を被覆している疎水性材料と、を含む複合体を、基材110に付着させてインク受容層120を形成する受容層形成部200を備える。そのため、記録媒体製造装置1000では、インクジェット方式での良好な印刷が可能であり、例えば印刷されたインク受容層120を除去することにより、基材110の再利用が可能な記録媒体100を製造することができる。
記録媒体製造装置1000では、インク受容層120を、基材110から除去する受容層剥離部300を備える。そのため、記録媒体製造装置1000では、例えば印刷されたインク受容層120を除去することができ、基材110の再利用が可能である。
記録媒体製造装置1100では、インク受容層120を、加熱しスクレイプして基材110から除去する。そのため、記録媒体製造装置1100では、加熱によりインク受容層120を軟化させることができ、容易にインク受容層120を除去することができる。
3. 記録媒体製造装置の変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る記録媒体製造装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、本実施形態の第1変形例に係る記録媒体製造装置1100の受容層剥離部300を模式的に示す図である。以下、本実施形態の第1変形例に係る記録媒体製造装置1100において、上述した記録媒体製造装置1000の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
記録媒体製造装置1100の受容層剥離部300は、図6に示すように、回転ドラム350を有している点において、上述した記録媒体製造装置1000の受容層剥離部300と異なる。インクジェット方式によって印刷された記録媒体100は、回転ドラム350の表面に付着(吸着)される。なお、便宜上、図6では、記録媒体100の図示を省略している。
ここで、図7および図8は、記録媒体製造装置1100の受容層剥離部300において、回転ドラム350の表面に記録媒体100が付着した状態を模式的に示す図である。図7は、平面図であり、図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。
記録媒体製造装置1100の受容層剥離部300では、図7および図8に示すように、剥離部材320は、回転ドラム350の周囲に設けられている。記録媒体製造装置1100の受容層剥離部300では、剥離部材320がインク受容層120に接した状態で回転ドラム350が回転することにより、基材110からインク受容層120を除去する。回転ドラム350は、記録媒体100を加熱するための加熱機構を有していてもよいし、剥離部材320が加熱機構を有していてもよい。また、剥離部材320の幅(回転ドラム350の回転軸方向の長さ)が、インク受容層120の幅より短い場合は、剥離部材320を回転軸方向に移動させる移動機構を有することにより、インク受容層120の全面を除去することが可能である。インク受容層120が除去された記録媒体100(基材110)は、例えば先端がテーパー状の棒状部材(図示せず)によって回転ドラム350から剥がされ、搬送ローラー314を介して、排紙トレイ330に搬送される。
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る記録媒体製造装置について、図面を参照しながら説明する。図9は、本実施形態の第2変形例に係る記録媒体製造装置1200の受容層剥離部300を模式的に示す平面図である。以下、本実施形態の第2変形例に係る記録媒体製造装置1100において、上述した記録媒体製造装置1000,1100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上述した記録媒体製造装置1000では、剥離部材320は、板状の形状を有するスクレイパーであった。これに対し、記録媒体製造装置1200では、図9に示すように、剥離部材320は、金属製の切削バイトである。記録媒体製造装置1200では、例えば記録媒体製造装置1100に比べて、回転ドラム350に吸着された記録媒体100を高速で回転させて、剥離部材320により、インク受容層120を切削除去する。剥離部材320は、回転ドラム350の回転軸に沿って移動することができる。剥離部材320および回転ドラム350は、加熱機構を有していなくてもよい。
剥離部材320(切削バイト)は、1つでもよいが、図9に示すように、複数設けられていてもよい。図示の例では、5つの剥離部材320が、回転ドラム350の回転軸方向に一列に並んで設けられている。剥離部材320を複数設けることにより、インク受容層120を除去する処理の速度を速くすることができる。5つの剥離部材320が回転ドラム350の回転軸に沿って移動することにより、インク受容層120を短時間で除去することが可能となる。
3.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る記録媒体製造装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第2変形例に係る記録媒体製造装置1300の受容層剥離部300を模式的に示す図である。
上述した記録媒体製造装置1000の受容層剥離部300は、図5に示すように、記録媒体100の一方の面側にのみ剥離部材320を有していた。これに対し、記録媒体製造装置1300の受容層剥離部300は、図10に示すように、記録媒体100の一方の面100a側に第1剥離部材320aを有し、さらに記録媒体100の他方の面100b側に第2剥離部材320bを有している。面100a,100bは、互いに反対方向を向く面である。
さらに、記録媒体製造装置1300の受容層剥離部300は、一方の面100a側に第1検出部360aを有し、他方の面100b側に第2検出部360bを有している。図示の例では、記録媒体100は、例えば、搬送ローラー314によって鉛直方向に搬送される。
検出部360a,360bは、剥離部材320a,320bよりも記録媒体100の搬送経路の上流側に設けられている。図示の例では、第1検出部360aは、第1剥離部材320aの上方に設けられ、第2検出部360bは、第2剥離部材320bの上方に設けられている。
第1検出部360aは、記録媒体100の一方の面100aの状態を検出する。そして、図示せぬ制御部は、第1検出部360aの検出結果に基づいて、一方の面100aにインク受容層120が設けられているか否か判定する。第2検出部360bは、記録媒体100の他方の面100bの状態を検出する。そして、図示せぬ制御部は、第2検出部360bの検出結果に基づいて、他方の面100bにインク受容層120が設けられているか否か判定する。このように、検出部360a,360bは、インク受容層120が形成された基材110の面を検出することができる。
制御部は、一方の面100aにのみインク受容層120が設けられていると判定した場合、第1剥離部材320aを一方の面100aに向けて移動させる制御を行う。そして、第1剥離部材320aは、一方の面100aの受容層120を除去する。制御部は、他方の面100bにのみインク受容層120が設けられていると判定した場合、第2剥離部材320bを他方の面100bに向けて移動させる制御を行う。そして、第2剥離部材320bは、他方の面100bの受容層120を除去する。
制御部は、両方の面100a,100bにインク受容層120が設けられていると判定した場合は、検出部360a,360bの検出結果に基づいて、インク受容層120が印刷済みか否か判定する。そして、制御部は、面100a,100bのうち印刷済みの面側の剥離部材を移動させる制御を行い、該剥離部材は、印刷済みのインク受容層120を除去する。検出部360a,360bは、例えば、光学的手法を用いて、面100a,100bの状態(インク受容層120の有無、印刷済みの有無)を検出することができる検出器である。検出部360a,360bは、マーキング部122を検出し、制御部は、マーキング部122の有無またはマーキング部122に含まれる情報から、インク受容層120の有無や印刷済みか否かを判定してもよい。
なお、図示はしないが、受容層形成部200は、基材110の一方の面100a側に受容層120を形成した後、基材110の表裏を反転させ他方の面100bに受容層120を形成することにより、基材110の両面100a,100bにインク受容層120を形成することができる。
記録媒体製造装置1300では、インク受容層120が形成される基材110の面を検出して、インク受容層120を基材110から除去する。そのため、記録媒体製造装置1300では、受容層剥離部300に記録媒体100を投入する際に、記録媒体100の面の向きを考慮する必要がなく、手間を省くことができる。
なお、本発明に係る記録媒体製造装置(受容層剥離部300)では、インク受容層120を研削または研磨することにより基材110から除去してもよい。
4. 記録媒体の製造方法
次に、本実施形態に係る記録媒体100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態に係る記録媒体100の製造方法を説明するためのフローチャートである。
以下では、印刷されたインク受容層120を基材110から除去し、該基材110に新たにインク受容層120を形成して記録媒体100を製造する方法について説明する。また、以下では、上述した記録媒体製造装置1000を用いて、記録媒体100を製造する方法について説明する。
まず、基材110からインク受容層120を除去する(ステップS1)。具体的には、インク受容層120を加熱して軟化させスクレイプして基材110から除去する。なお、インク受容層120を、加熱せずに、切削して基材110から除去してもよい。
なお、記録媒体製造装置1300(図10参照)を用いて記録媒体100を製造する場合は、インク受容層120が形成されている基材110の面を検出して、インク受容層120を基材110から除去することができる。
次に、複合体を基材110に静電塗布により付着させて、インク受容層120を形成する(ステップS2)。インク受容層120は、マーキング122を有するように形成される。なお、インク受容層120となる複合体は、例えば、以下のようにして形成される。
まず、粉砕したセルロース繊維に熱可塑性樹脂を融着させる。具体的には、セルロース繊維と熱可塑性樹脂とを空気中で混合した後、加熱処理により熱可塑性樹脂をセルロース繊維に融着させる。加熱処理の温度は、例えば、100℃以上200℃以下である。
次に、熱可塑性樹脂が融着したセルロース繊維の表面に、無機物材料を配置させる。具体的には、熱可塑性樹脂が融着したセルロース繊維と、無機物材料と、を高速回転するミキサーに投入し混合する。ミキサーとしては、例えば、FMミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどを用いる。
熱可塑性樹脂を融着させる工程と、無機物材料を配置させる工程と、により、セルロース繊維の少なくとも一部を、疎水性材料で被覆させることができる。
なお、複合体に白色顔料を含める場合には、セルロース繊維に熱可塑性樹脂を融着させる前に、熱可塑性樹脂に白色顔料を配置させる。具体的には、熱可塑性樹脂と白色顔料とをホッパーで混合した後、二軸混練押出機に投入し溶融混練する。
以上の工程により、インク受容層120となる複合体を形成することができる。複合体は、攪拌機262により攪拌した状態でカートリッジ261内に収容される。
このような複合体を、上述のように、静電塗布により感光体230の表面に移転させ、転写部270によって複合体を基材110に転写する。そして、定着部280により、複合体を基材110に定着して、インク受容層120を形成することができる。
以上の工程により、記録媒体100を製造することができる。
記録媒体100の製造方法では、複合体を基材110に静電塗布により付着させる。したがって、記録媒体100の製造方法では、容易に、複合体を基材110に付着させることができる。
5. 基材の製造方法
基材110は、例えば、古紙等を解繊して形成される。これにより、資源を節約することができる。以下では、古紙を解繊して基材110を形成するためのシート製造装置について説明する。図12は、基材110を形成するためのシート製造装置2000を模式的に示す図である。
シート製造装置2000は、図12に示すように、供給部10と、製造部102と、を備える。製造部102は、シートを製造する。製造部102は、粗砕部12と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、シート形成部80と、切断部90と、を有している。
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部12に原料を連続的に投入するための自動投入部である。供給部10によって供給される原料は、例えば、古紙やパルプシートなどの繊維を含むものである。
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を、大気中(空気中)等の気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。粗砕部12は、例えば、粗砕刃14と、シューター(ホッパー)16と、を有している。粗砕部12は、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部12としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕刃14によって裁断された原料は、シューター16で受けてから管2を介して、解繊部20に移送(搬送)される。
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料(被解繊物)を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂(複数の繊維同士を結着させるための樹脂)粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態(独立した状態)で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態(いわゆる「ダマ」を形成している状態)で存在してもよい。
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中(空気中)等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20として、本実施形態ではインペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有している。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を有している。ドラム部41としては、例えば、篩(ふるい)を用いる。ドラム部41は、網(フィルター、スクリーン)を有し、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子(網を通過するもの、第1選別物)と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ(網を通過しないもの、第2選別物)と、を分けることができる。例えば、第1選別物は、管7を介して、混合部50に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して、解繊部20に戻される。具体的には、ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、混合部50に搬送する。第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、吸引部(サクション機構)48と、を含む。
吸引部48は、選別部40の開口(網の開口)を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47および吸引部48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74およびサクション機構76と同様である。
ウェブVは、選別部40および第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、混合部50へと搬送される。
回転体49は、ウェブVが混合部50に搬送される前に、ウェブVを切断することができる。図示の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから突出している突部49bと、を有している。突部49bは、例えば、板状の形状を有している。図示の例では、突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられている。基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bは、基部49aを軸として回転することができる。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの解繊物の量の変動を小さくすることができる。
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられている。図示の例では、回転体49は、ウェブVの経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に(張架ローラー47aの横に)設けられている。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられている。これにより、メッシュベルト46が突部49bによって磨耗する(破損する)ことを抑制することができる。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下である。これは、メッシュベルト46が損傷を受けずにウェブVを切断することが可能な距離である。
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物(第1ウェブ形成部45により搬送された第1選別物)と、樹脂を含む添加物と、を混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有している。図示の例では、添加物は、添加物供給部52からシューター(ホッパー)9を介して管54に供給される。管54は、管7と連続している。
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と添加物とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
添加物供給部52としては、図12に示すようなスクリューフィーダーや、図示せぬディスクフィーダーなどを用いる。添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂を含む。樹脂が供給された時点では、複数の繊維は結着されていない。樹脂は、シート形成部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。
添加物供給部52から供給される樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。添加物供給部52から供給される添加物は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
なお、添加物供給部52から供給される添加物には、繊維を結着させる樹脂の他、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤 、繊維等を燃えにくくするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物(第1選別物と添加物との混合物)は、管54を介して、堆積部60に移送される。
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物(繊維)をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有している。ドラム部61としては、回転する円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子(網を通過するもの)を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、ウェブWを形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有している。
メッシュベルト72は、移動しながら、堆積部60の開口(網の開口)を通過した通過物を堆積する。メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通しにくく空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト72上にウェブWが形成される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方(堆積部60側とは反対側)に設けられている。サクション機構76は、下方に向く気流(堆積部60からメッシュベルト72に向く気流)を発生させることができる。サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70(ウェブ形成工程)を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。メッシュベルト72に堆積されたウェブWは、シート形成部80へと搬送される。
なお、図示の例では、ウェブWを調湿する調湿部78が設けられている。調湿部78は、ウェブWに対して水や水蒸気を添加して、ウェブWと水との量比を調節することができる。
シート形成部80は、メッシュベルト72に堆積したウェブWを加圧加熱してシートSを成形する。シート形成部80では、ウェブWにおいて混ぜ合された解繊物および添加物の混合物に、熱を加えることにより、混合物中の複数の繊維を、互いに添加物(樹脂)を介して結着することができる。
シート形成部80は、ウェブWを加圧する加圧部82と、加圧部82により加圧されたウェブWを加熱する加熱部84と、を備えている。加圧部82は、一対のカレンダーローラー85で構成され、ウェブWに対して圧力を加える。ウェブWは、加圧されることによりその厚さが小さくなり、ウェブWの密度が高められる。加熱部84としては、例えば、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロワー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器を用いる。図示の例では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備えている。加熱部84を加熱ローラー対86として構成することにより、加熱部84を板状のプレス装置(平板プレス装置)として構成する場合に比べて、ウェブWを連続的に搬送しながらシートSを成形することができる。ここで、カレンダーローラー85(加圧部82)は、加熱ローラー86(加熱部84)によってウェブWに印加される圧力よりも高い圧力をウェブWに印加することができる。なお、カレンダーローラー85や加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
切断部90は、シート形成部80によって成形されたシートSを切断する。図示の例では、切断部90は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
以上により、所定のサイズの単票の基材110(シート)が成形される。切断された単票の基材110は、排出部96へと排出される。
なお、シート製造装置2000では、解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、分級部(図示せず)に移送されてもよい。そして、分級部において分級された分級物が、選別部40に搬送されてもよい。分級部は、解繊部20を通過した解繊物を分級する。具体的には、分級部は、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの(樹脂粒や色剤や添加剤など)を分離して除去する。これにより、解繊物の中で比較的大きいもしくは密度の高いものである繊維の占める割合を高めることができる。分級部としては、例えば、サイクロン、エルボージェット、エディクラシファイヤーなどを用いる。
また、本発明に係るシート製造装置によって製造されるシートは、シート状にしたものを主に指す。しかしシート状ものに限定されず、ボード状、ウェブ状であってもよい。本明細書におけるシートは、紙と不織布に分けられる。紙は、パルプや古紙を原料とし薄いシート状に成形した態様などを含み、筆記や印刷を目的とした記録紙や、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙などを含む。不織布は紙より厚いものや低強度のもので、一般的な不織布、繊維ボード、ティッシュペーパー(清掃用ティッシュペーパー)、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体(廃インクや油)吸収材、吸音材、断熱材、緩衝材、マットなどを含む。なお、原料としてはセルロースなどの植物繊維やPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエステルなどの化学繊維や羊毛、絹などの動物繊維であってもよい。
6. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
6.1. 再利用可能性評価
下記の実施例1,2,3,4において、インク受容層120の形成およびインク受容層120の除去を繰り返し、基材110の再利用が可能か否か評価した。
6.1.1. 実施例1
6.1.1.1. 複合体の調製
未印刷のPPC用紙をシュレッダーで裁断後、薬研式ミルで粉砕し、25μm開口の篩をパスしたセルロース繊維を得た。このセルロース繊維のサイズを、粒子画像分析装置モフォロギG3を用いて測定した。得られたセルロース繊維のサイズは、個数平均で長さ(長径)が18μm、幅(短径)が9μmであり、平均アスペクト比は2であった。
次に、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tg:56℃、分子量:10000)ペレットをハイスピードミルで粗粉砕し、顆粒状にした後、ジェットミルに投入し、1μm〜40μmの粒径範囲の粉体を得た。この粉体を分級して得られた体積基準平均粒径が12μmのポリエステル樹脂と、上記セルロース繊維とが、2:8(重量比)になるように空気中で混合した後、加熱処理により樹脂をセルロース樹脂に融着させ複合化した。
次に、無機物材料として表面を疎水化処理した二酸化シリコン微粒子が重量比で1.5%になるように、ポリエステル樹脂によって被覆されたセルロース繊維に加え、卓上ブレンダーに投入し、翼端速度30m/sで60秒間攪拌処理した。この粉体の平均帯電量を、上述した「1.2.2.2. 無機物材料」で説明した方法で測定した。平均帯電量は、−6μC/gであった。以上により、インク受容層となる複合体を得た。
上記のように製造された複合体をカートリッジ(図4参照)に充填し、受容層形成部200にセットした。カートリッジ内には、現像ローラー、供給ローラー、ブレード、そして複合体が貯蔵されるところに攪拌機(アジテーター)が配置されている。
6.1.1.2. インク受容層の形成
図4に示すような電子写真方式に類する受容層形成部200(基本的な機構はセイコーエプソン社製プリンターLP9200Bを用いた)により、基材110としてA4サイズの未使用紙(富士ゼロックス社製リサイクルプリンター用紙G70)に上記複合体をベタ印刷した。その際、図1に示すように長辺方向および短辺方向とも縁部から5mm分を余白とした(余白部の幅Wを5mmとした)。さらに、加圧加熱(400kg、150℃)処理をすることで、50μm厚さのインク受容層120を形成した。以上により、基材110およびインク受容層120を有する記録媒体100を製造した。
6.1.1.3. インクジェット印刷
得られた記録媒体100のインク受容層120に、顔料インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PX−M5041F)で印刷した。
長繊維が絡まった通常の紙と異なり、インク受容層120は、疎水性の疎水材料で一部を覆われた短繊維(繊維粉)で形成された多孔質層であるため、インクの吸収性がよい上に、紙面方向のインクの滲みが抑えられ、エッジがシャープな印刷品質の文字を得ることができた。
6.1.1.4. インク受容層の除去
インクジェット方式で印刷された記録媒体100を加熱可能な回転ドラム350に吸着させ、図8に示すように、回転させながら、金属性のスクレイパー(剥離部材320)を少しずつ記録紙表面に当てながら動かして、インク受容層120を除去した。
記録媒体100には余白部112が設けられているため、インク受容層120の端面にスクレイパーを当てることができ、この位置をインク受容層120の削除開始位置とすることができた。さらに、加熱によりインク受容層120が軟化するため、容易にインク受容層120をスクレイプ除去することができた。
以上の方法でインク受容層120の形成およびインク受容層120の除去を5回繰りかえしたが、基材110(用紙G70)への大きなダメージはみられず、再利用が可能であることがわかった。
6.1.2. 実施例2
実施例2では、実施例1で用いたポリエステル樹脂90部に対して、白色顔料である炭酸カルシウム10部をホッパー内で混合した後、二軸混練押出機に投入し溶融混練して白色の樹脂ペレットを製造した。以後の工程は、実施例1と同様である。
実施例2では、実施例1に比べて、より白色度の高いインク受容層120を形成することができた。さらに、基材110への大きなダメージはみられず、再利用が可能であることがわかった。
6.1.3. 実施例3
実施例3では、基材110として、用紙G70の代わりに透明のOHPシートを用いたこと以外は、実施例1と同様である。顔料インクジェットプリンター(PX−M5041F)で印刷後、加熱スクレイプによりインク受容層120をきれいに除去することができた。基材110への大きなダメージはみられず、再利用が可能であることがわかった。
6.1.4. 実施例4
実施例4では、インクジェット印刷後のインク受容層120の除去を、加熱スクレイプではなく、加熱せずに切削により行ったこと以外は、実施例1と同様である。図9に示すように、回転ドラム350に印刷された記録媒体100を吸着させ、インク受容層120の厚さ分の切り込み量に設定された複数の金属製のバイトを当て、回転ドラム350を回転させながら、インク受容層120を除去した。基材110への大きなダメージはみられず、再利用が可能であることがわかった。
6.2. セルロース繊維の脱落およびインクの弾き評価
セルロース繊維に対するポリエステル樹脂の質量比を変えて、セルロース繊維の脱落およびインクの弾きについて評価した。本評価では、上記の実施例1、下記の実施例5,6および比較例1,2で形成した記録媒体100を用いた。
実施例5では、ポリエステル樹脂の質量をW1、セルロース繊維の質量をW2としたとき、(W1/(W1+W2))値(以下、「樹脂比率」ともいう)を0.1(ポリエステル樹脂:セルロース繊維=1:9)としたこと以外は、実施例1と同様である。
実施例6では、樹脂比率を0.3(ポリエステル樹脂:セルロース繊維=3:7)としたこと以外は、実施例1と同様である。
比較例1では、樹脂比率を0.05(ポリエステル樹脂:セルロース繊維=0.5:9.5)としたこと以外は、実施例1と同様である。
比較例2では、樹脂比率を0.4(ポリエステル樹脂:セルロース繊維=4:6)としたこと以外は、実施例1と同様である。
実施例1,5,6および比較例1,2のインク受容層120の表面を指で擦った場合に、指にセルロース繊維の付着があるかどうか視認して、セルロース繊維の脱落を評価した。さらに、インク受容層120に、顔料インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PX−205)で黒ベタ印刷した場合の画質を目視して、インクの弾きを評価した。評価結果を表1に示す。
なお、表1における記号が表す意味は、以下の通りである。
(セルロース繊維の脱落)
×:付着多量にあり、△:付着わずかにあり、○:付着なし
(インクの弾き)
×:弾きあり、△:一部弾いたように見える、○:弾きなし
表1により、樹脂比率を、0.1以上0.4未満とし、好ましくは、0.15以上0.25以下とすることにより、セルロース繊維の脱落を抑制し、かつインクの弾きを抑制できることがわかった。なお、樹脂比率が0.1未満である比較例1では、複合体の帯電性も低下するため、静電塗布によりインク受容層120を形成することが困難であった。
6.3. 隠蔽性評価
セルロース繊維のアスペクト比を変えて、インク受容層の隠蔽性について評価した。本評価では、上記の実施例1、下記の実施例7および比較例3で形成した記録媒体100を用いた。
実施例7では、セルロース繊維の平均アスペクト比を2.6としたこと以外は、実施例1と同様である。
比較例3では、セルロース繊維の平均アスペクト比を3としたこと以外は、実施例1と同様である。
実施例1,7および比較例3の記録媒体100をインク受容層120側から目視し、インク受容層120の下の基材110が視認できるかどうか評価した(隠蔽性を評価した)。
実施例1では、インク受容層120は透けておらず、インク受容層120の下の基材110を視認することはできなかった(隠蔽性は高かった)。実施例7では、静電塗布によりインク受容層120を形成することはできたが、隠蔽性が低く、インク受容層120が透けてインク受容層120の下の基材110を視認することができた。これは、実施例7では、アスペクト比が実施例1に比べて大きくなったために、嵩高いものになったことと、複合体の帯電分布が不均一となり、静電塗布によって基材110上に付着される複合体の量が少なくなったためだと考えられる。比較例3では、静電塗布によって基材110上にインク受容層120を形成することが困難であった。これは、比較例3では、アスペクト比が大きく、長さが100μmを超えるセルロース繊維が多くなり、繊維の絡み合いが生じて、複合体の帯電分布がより不均一となったためであると考えられる。
以上により、セルロース繊維の平均アスペクト比を、3未満であり、好ましくは、2以下とすることにより、隠蔽性の高いインク受容層120を形成できることがわかった。
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。