JP2017148734A - 溶媒分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱相分離したときの浸透圧が高い熱相分離物質を正浸透プロセスに用いることにより、供給流を高濃度に濃縮し、供給流から効率的に水を回収するための方法を提供する。【解決手段】溶媒1を含有する供給流2を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流3と、半透膜4を介して向流又は並流させることによって溶媒1を熱相分離物質流3に移動させる工程1と、溶媒1が移動した熱相分離物質流3を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流8と熱相分離物質リッチ流3とに分離する工程2と、を有する溶媒分離方法であって、前記熱相分離物質が、特定の疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、前記疎水基の有する炭素数が1〜3個である、溶媒分離方法。【選択図】図1

Description

本発明は、溶液から溶媒を分離するための方法に関するものである。本発明は、例えば汚染された水からの浄水製造に有用であり、特に無機塩を含む水溶液からの水の分離に適している。
溶質を含む溶液から溶媒を分離回収するプロセスは、工業的に広く実施されている。分離された、溶質を含まない高品位な溶媒は、例えば化学工業プロセス用途等に用いられる。溶媒の中で特に水は、工業用途のみならず、農業用途、飲料用途等としても重要である。そのため、無機化合物、有機化合物、細菌等の不純物を含む水溶液から水を分離・精製するプロセスが必要とされている。
水の分離精製方法としては、蒸留法、逆浸透法等が知られている。蒸留法は膨大な熱エネルギーを必要とし、逆浸透法は濃縮できる溶質濃度に限界があって水の回収効率が十分ではない。
そのため、水の分離回収を効率的に行うことのできるプロセスが望まれている。
上記の事情に応えようとして、正浸透を利用する水の分離回収プロセスが検討されてきた。例えば、浸透圧により、供給流を構成する溶液から膜を介して水を引き抜くための浸透物質として熱相分離物質を用い、前記供給流から引き抜いた水を含有する熱相分離物質を加熱することによって水を分離する正浸透プロセスが提案されている(特許文献1〜3)。
米国特許第8852436号明細書 米国特許第8021553号明細書 国際公開第2015/156404号
特許文献1〜3の技術による正浸透プロセスにおいて、例えば無機塩を含む供給流を高濃度に濃縮して、水の回収効率を向上させるためには、高い濃縮限界を持つ熱相分離物質溶液を用いる必要がある。上記濃縮限界は、熱相分離によって濃縮された熱相分離物質溶液の持つ浸透圧の高さによって決まる。
従来の熱相分離物質溶液を用いる正浸透プロセスにおいて、熱相分離物質のポテンシャルは、ある任意の濃度における曇点と、その濃度とは別の任意の濃度における浸透圧によって評価されてきた。しかし、任意の濃度における曇点が同じあっても、その曇点以上の別の温度で熱相分離したときの、濃縮熱相分離物質溶液の濃度は必ずしも同じにはならない。加えて、その濃縮熱相分離物質溶液の浸透圧も、多くの場合で異なる。そのため、正浸透プロセスに用いる熱相分離物質のポテンシャルは、ある温度で熱相分離したときの濃縮熱相分離物質の浸透圧を指標として最適化する必要がある。
すなわち、熱相分離物質の分子構造と濃縮熱相分離物質の浸透圧とを基準として、効率的に溶媒を回収できる熱相分離物質が望まれている。
本発明の目的は、加熱によって熱相分離したときの浸透圧が高い熱相分離物質を見出し、これを正浸透プロセスに用いることにより、供給流を高濃度に濃縮し、供給流から効率的に溶媒(特に水)を回収するための方法を提供することである。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、高い浸透圧を示すものの熱相分離しないアルキレンオキシドポリマーを、適当な疎水基で末端修飾することにより、
該アルキレンオキシドポリマーが熱相分離するようになること、及び、
同じ相分離温度でより高い浸透圧を持つ濃縮熱相分離物質溶液となること、
を見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 溶媒を含有する供給流を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、半透膜を介して向流又は並流させることによって前記溶媒を熱相分離物質流に移動させる工程1と、
前記溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
を有する溶媒分離方法であって、
前記熱相分離物質が、アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、そして前記疎水基の有する炭素数が1〜3個であることを特徴とする、前記溶媒分離方法。
[2] 溶媒を含有する供給流を、無機塩又は有機塩を含む浸透物質流と半透膜を介して向流又は並流させて前記溶媒を前記浸透物質流に移動させて、溶媒リッチの浸透物質流を得る工程1−1と、
前記溶媒リッチの浸透物質流と、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、を混合して混合流を得る工程1−2と、
前記工程1−2により得られた混合流を、浸透物質流と前記溶媒が移動した熱相分離物質流とに分離し、該溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
を有する溶媒分離方法であって、
前記熱相分離物質が、アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、そして前記疎水基の有する炭素数が1〜3個であることを特徴とする、前記溶媒分離方法。
[3] 前記溶媒が水である、[1]又は[2]に記載の溶媒分離方法。
[4] 前記熱相分離物質リッチ流の浸透圧が100atm以上200atm以下である、[3]に記載の溶媒分離方法。
[5] 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーが、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドから選択される少なくとも1種とのランダムコポリマーの片末端又は両末端に前記疎水基を有する重合体である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
[6] 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーが、エチレンオキシド成分を50質量%以上有するアルキレンオキシドランダムコポリマーの片末端又は両末端に前記疎水基を有する重合体である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
[7] 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーが、エチレンオキシドのホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
[8] 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーの分子量が500Da以上2,500Da以下である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
[9] 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーの熱相分離温度が60℃以上175℃以下である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
[10] アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマー:200ppm以上40,000ppm以下、並びに
無機塩又は有機塩:0.1質量%以上6.0質量%以下
を含有することを特徴とする、精製溶媒。
[11] [2]に記載の溶媒分離方法を使用することを特徴とする、[10]に記載の精製溶媒の製造方法。
本発明によれば、加熱によって熱相分離したときの濃縮熱相分離物質溶液の浸透圧が高い熱相分離物質を用いていることから、供給流を高濃度に濃縮し、供給流から効率的に溶媒(特に水)を回収することが可能になる。
本発明の方法の一例を説明するための概要図である。 本発明の方法の別の一例を説明するための概要図である。
<用語の定義>
本発明における熱相分離物質とは、該熱相分離物質が溶媒に溶解された状態の溶液を加熱することにより、当該溶媒と相分離する性質(熱相分離性)を有する物質を指す。
本明細書におけるポリマーとは、熱相分離性を有し、少なくともアルキレンオキシド部を持つ高分子のことである。
本発明における曇点とは、熱相分離物質を1質量%の水溶液としたときの曇点、及び60質量%の水溶液としたときの曇点のうちのいずれかである。
本発明における熱相分離温度とは、熱相分離物質の60質量%水溶液を加熱した後に静置したときに、10分以内に液滴の合一が確認され、溶媒リッチ相と熱相分離物質リッチ相とに相分離するときの温度、又は上記工程1によって調製された、供給流から得られた溶媒と熱相分離物質とを含有する流れと同一の組成を有する水溶液を加熱して相分離するときの温度である。
本発明における浸透圧とは、以下のいずれかの意味として理解されるべきである。
(1)半透膜を介して存在する溶液において、一方の溶液から他方の溶液へ溶媒を移動させる駆動力を意味する場合。例えば、供給流から熱相分離物質流へ半透膜を介して溶媒を移動させる駆動力を指す。
(2)半透膜を介して存在する2つの溶液間で、溶媒の移動が平衡に達したときの、一方の溶液中の溶質濃度を意味する場合。例えば、溶質が濃縮された供給流と平衡に達している熱相分離物質流の濃度を意味する。
(3)半透膜を介さず、2つの相溶しない溶液を接触させたときに、2つの溶液間での溶媒の移動が平衡に達したときの、一方の溶液中の溶質濃度を意味する場合。後述する実施例においては、本手法によって熱相分離物質の浸透圧を評価した。
上記(1)、(2)、及び(3)のいずれの場合においても、浸透圧が高い値を示す方が、分離回収方法の効率の点で有利である。
<溶媒分離方法>
本発明の溶媒分離方法は、
溶媒を含有する供給流を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、半透膜を介して向流又は並流させることによって前記溶媒を熱相分離物質流に移動させる工程1と、
前記溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
を有する溶媒分離方法(第1の溶媒分離方法)であるか、或いは
溶媒を含有する供給流を、無機塩又は有機塩を含む浸透物質流と半透膜を介して向流又は並流させて前記溶媒を前記浸透物質流に移動させて、溶媒リッチの浸透物質流を得る工程1−1と、
前記溶媒リッチの浸透物質流と、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、を混合して混合流を得る工程1−2と、
前記工程1−2により得られた混合流を、浸透物質流と前記溶媒が移動した熱相分離物質流とに分離し、該溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
を有する溶媒分離方法(第2の溶媒分離方法)であって、
前記熱相分離物質が、アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、そして前記疎水基の有する炭素数が1〜3個であることを特徴とする。
<熱相分離物質>
本発明の溶媒分離方法に好適に用いられる熱相分離物質は、
アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、
2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び
2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体
から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、そして
前記疎水基の有する炭素数が1〜3個であることを特徴とする。
上記のアルキレンオキシドホモポリマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド等から選択されるアルキレンオキシドのホモポリマーを挙げることができ、エチレンオキシドのホモポリマーであることが、溶媒(特に水)に対する溶解性が高いことから好ましい。
上記アルキレンオキシドランダムコポリマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド等から選択される2種類以上のアルキレのキシドのコポリマーを挙げることができ、
親水性部としてのエチレンオキシドと、
疎水部としてのプロピレンオキシド及びブチレンオキシドから選択される少なくとも1種と、
のコポリマーであることが、親水性と疎水性とのバランスに優れることから好ましい。このとき、高い浸透圧を保つように、親水性部であるエチレンオキシド成分の質量比は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。一方で、エチレンオキシド成分が多いと、親水性が非常に高いために、末端に疎水基修飾をした場合でも好適な熱相分離性が得られない場合がある。そのため一定量の疎水部を併有することが好ましい。この観点から、エチレンオキシド成分の質量比は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
本発明者らの検討によると、アルキレンオキシドコポリマーを所定の温度で熱相分離させたときの浸透圧について、ランダムコポリマーとブロックコポリマーとを比較すると、ランダムコポリマーの浸透圧の方が高くなった。そのため、本発明の溶媒分離方法において使用される熱相分離物質としてアルキレンオキシドコポリマーの疎水基修飾体を使用する場合、アルキレンオキシドランダムコポリマーの疎水基修飾体であることが好ましい。
アルキレンオキシドホモポリマー、特にエチレンオキシドホモポリマーは、親水性が非常に高く、片末端のみに疎水基修飾を行った場合には、好適な熱相分離性が得られない場合がある。従って、アルキレンオキシドホモポリマーはその両末端を疎水基修飾したうえで、本発明の溶媒分離方法に供することが望ましい。一方のアルキレンオキシドコポリマーは、本発明の好ましい態様においてはもともと親水性と疎水性とのバランスに優れるため、疎水基修飾は片末端のみに行っても両末端に対して行っても、どちらでも本発明の熱相分離物質として優れた機能を発揮することができる。
疎水基修飾をアルキレンオキシドポリマーの両末端に対して行う場合、2つの疎水基は同じであってもよく、異なっていてもよい。
アルキレンオキシドポリマー末端の疎水基は、炭素数が大きくなると、溶媒(特に水)への溶解性が低下し、或いは得られる修飾ポリマーの比重が過度に小さくなって熱相分離時に溶媒層との分離が困難になる場合がある。このような事態を回避するため、疎水基の炭素数は、1〜3であることが好ましい。
本発明における炭素数1〜3の疎水基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、ビニル基、アリル基(2−プロペニル基)、1−プロペニル基、エチニル基、プロパルギル基(2−プロピニル基)、1−プロピニル基、アセチル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、アミノカルボニル基、エチルカルボニル基、3−オキシプロピル基(O=CH−CHCH−基)、2−オキシプロキル基(CH−C(=O)−CH−基)、アミノカルボニルメチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、N−メチル−アミノカルボニル基、N−エチルアミノカルボニル基、シアノメチル基、シアノ基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノメチル基、2−(N−メチル)−エチル基、N−n−プロピルアミノ基、N−エチルアミノメチル基、N−メチルアミノメチル基、N−メチルアミノ基などの他、下記式群
Figure 2017148734
{上記式中、「R」は結合手であることを示す。}のそれぞれで表される基が挙げられる。一般に、酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を含まない方が疎水性は高いため、本発明における疎水基は、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基から選択されることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、エチニル基、プロパルギル基、及び1−プロピニル基から選択されることがより好ましい。
親水部及び疎水部の双方を持つ熱相分離ポリマーを熱相分離する際、一般に、分子量が低すぎると、熱相分離しないか、或いは熱相分離したとしてもポリマーの濃度が高くならない傾向にある。一方、分子量が大きすぎると、粘度が過度に高くなり、循環プロセスにおける取り扱い性が悪くなる他、送液ポンプの必要エネルギーも高くなる。以上の理由から、本発明における熱相分離物質としての疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーの分子量は、好ましくは500以上5,000以下、より好ましくは500以上2,500以下、更に好ましくは800以上2,500以下である。この分子量の単位はDa(ダルトン)である。
疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーの熱相分離温度については、外気温よりも十分に高いことが望まれる。一方、容器の耐圧性能の観点から、水の蒸気圧が1MPaを下回る温度であることが望ましい。従って、本発明における疎水基含有アルキレンオキシドポリマーの熱相分離温度は、60℃以上175℃以下であることが好ましく、70℃以上150℃以下であることが更に好ましい。
<溶媒分離方法>
本発明の溶媒分離方法は、
溶媒を含有する供給流を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、半透膜を介して向流又は並流させることによって前記溶媒を熱相分離物質流に移動させる工程1と、
前記溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
を有する溶媒分離方法(第1の溶媒分離方法)であるか、或いは
溶媒を含有する供給流を、無機塩又は有機塩を含む浸透物質流と半透膜を介して向流又は並流させて前記溶媒を前記浸透物質流に移動させて、溶媒リッチの浸透物質流を得る工程1−1と、
前記溶媒リッチの浸透物質流と、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、を混合して混合流を得る工程1−2と、
前記工程1−2により得られた混合流を、浸透物質流と前記溶媒が移動した熱相分離物質流とに分離し、該溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
を有する溶媒分離方法(第2の溶媒分離方法)であって、
上記のような疎水基修飾ポリアルキレンオキシドポリマーを熱相分離物質として用いる。
以下に、本発明の溶媒分離回収方法の上記2つの場合について、適宜に図を参照しつつその構成を述べる。
[第1の溶媒分離方法]
本発明における第1の溶媒分離方法の典型的な例を図1に示した。
図1の溶媒分離方法は、
溶媒1を含有する供給流2を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流3と、正浸透ユニット12中で半透膜4を介して向流させて溶媒1を熱相分離物質流3に移動させて流れ5を得る工程1と、
流れ5と膜回収流11とを合流させて流れ9を得て、該流れ9を熱交換器6で加熱し、分離装置7において溶媒リッチ流8と熱相分離物質流3とに分離し、ろ過ユニット14中で溶媒リッチ流8をろ過膜15によって精製して精製溶媒流10と膜回収流11とを得る工程2と、
を有する溶媒分離方法である。
正浸透プロセスにおける供給流の濃縮及び溶媒の精製において、供給流の濃縮限界(溶媒の回収率)は、浸透物質溶液の浸透圧の高さで決まる。従って熱相分離物質溶液を浸透物質溶液として用いる図1の溶媒分離方法においては、熱相分離物質流3の浸透圧の高さが供給流の濃縮限界を決定する。従って、熱相分離物質流3の浸透圧は、高ければ高いほど、溶媒の分離効率が高くなる。しかしながら、浸透圧を過度に高くしようとすると、熱相分離物質流3の粘度が過度に高くなる等の不都合が生じるおそれがある。
供給流の濃縮及び溶媒の精製に必要な浸透圧としては、本発明の方法を適用する具体的な場面によって少し異なる。例えば、供給流としての海水から水(精製水)を製造する場面では、供給流からの水の回収率を70%とすると、100atm以上の浸透圧が望ましい。油田又はガス田の随伴水のような、高い塩濃度(例えば8質量%)の供給流を処理する場面では、供給流からの水の回収率を50%とすると、145atm以上の浸透圧が望ましい。
これらを総合的に考慮すると、熱相分離物質流3の浸透圧は、100atm以上200atm以下に調整されることが好ましく、145atm以上175atm以下に調整されることがより好ましい。この範囲の浸透圧を与える熱相分離物質の濃度は、概ね50質量%以上95質量%以下であり、好ましくは65質量%以上85質量%以下である。
正浸透ユニット12の温度は、10℃以上50℃以下に調整されることが好ましく15℃以上35℃以下に調整されることがより好ましい。熱交換器6によって流れ9が加熱される温度は、用いられる熱相分離物質の曇点を基準として、曇点以上(曇点+100℃)以下とすることが好ましく、(曇点+20℃)以上(曇点+80℃)以下とすることがより好ましい。
半透膜4は、溶媒を通過させるが溶質を通過させないようなサイズの孔を有することが好ましい。本発明においては、この半透膜4として、逆浸透膜を利用することもできるが、正浸透膜を使用することが好ましい。
半透膜4の材質は特に限定されないが、例えば、酢酸セルロース系、ポリアミド系、ポリベンゾイミダゾール系、ポリビニルアルコール系などが挙げられる。半透膜の形態は、平膜、中空糸膜などのいずれであってもよい。しかし、平膜を用いると溶液の片流れが生じるため、膜の有効利用の観点から、中空糸膜の方が好ましい。膜モジュールの形態も、プレートアンドフレーム型、中空糸型、スパイラル型などのいずれであってもよい。
半透膜4は、単層構成を有していてもよいし、支持層上に活性層が形成された多層構造を有していてもよい。多層構造である場合、支持層の材質と活性層の材質とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。支持層の材質と活性層の材質とが同じである多層構造とは、例えば、同一素材から成るが緻密性において異なる2層を有する場合等が挙げられる。
半透膜4が多層構造を有する場合、熱相分離物質流3を流す面は、該半透膜4の活性層側の面でもよく、活性層の反対側であってもよい。しかしながら、内部濃度分極による溶媒の透過速度の低下を避けるため、熱相分離物質流3は活性層側の面に流すことが好ましい。
分離装置7としては、例えば、分離槽、コアレッサ、遠心分離機、ナノフィルター等を用いることができる。ろ過ユニット14中のろ過膜15としては、例えばナノフィルターを好適に使用することができる。ナノフィルターの孔径は例えば5〜50nmとすることが、良好な分離性能を得られる観点から好ましい。
[第2の溶媒分離方法]
本発明における第2の溶媒分離方法の典型的な例を図2に示した。
図2の溶媒分離方法は、
溶媒1を含有する供給流2を、無機塩又は有機塩を含む浸透物質流103と、正浸透ユニット12中で半透膜4を介して向流させて溶媒1を浸透物質流103に移動させて、溶媒リッチの浸透物質流105を得る工程1−1と、
前記溶媒リッチの浸透物質流105を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流3と混合して混合流113を得る工程1−2と、
前記工程1−2により得られた混合流113を、分離装置107中で浸透物質流103と、溶媒1を含む熱相分離物質流3から成る流れ108とした後、該流れ108を熱交換器6で加熱し、分離装置7において溶媒リッチ流8と熱相分離物質リッチ流112とに分離し、ろ過ユニット14中で溶媒リッチ流8をろ過膜15によって精製して精製溶媒流10と膜回収流11を得る工程2と、
を有する溶媒分離方法である。上記膜回収流11は、熱相分離物質リッチ流112を混合して熱相分離物質流3を再生する。上記工程1−1における正浸透ユニット12中では、供給流2と浸透物質流103とを半透膜4を介して並流させてもよい。上記前記熱相分離物質リッチ流112の浸透圧は、100atm以上200atm以下であることが好ましい。
ここで、浸透物質流103に含有される無機塩又は有機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムシリケート、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、二ナトリウムリン酸一水素、一ナトリウムリン酸二水素、リン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸マンガン、クエン酸ナトリウム等を挙げることができる。これらのうち、硫酸アンモニウム又はチオ硫酸ナトリウムを使用することが、高い浸透圧の浸透物質流を容易に得られる点において有利である。
浸透物質流103の浸透圧は、100atm以上200atm以下に調整されることが好ましく、145atm以上175atm以下に調整されることがより好ましい。この範囲の浸透圧を与える塩の濃度は、概ね12質量%以上45質量%以下であり、好ましくは18質量%以上40質量%以下である。
正浸透ユニット12の温度は、10℃以上50℃以下に調整されることが好ましく、15℃以上35℃以下に調整されることがより好ましい。
本発明の第2の溶媒分離方法における半透膜4としては、第1の溶媒分離方法における半透膜4として上述したのと同じ材質の膜を使用することができる。第2の溶媒分離方法における半透膜4が支持層上に活性層が形成された多層構造を有している場合には、浸透物質流103を流す面は、該半透膜4の活性層側の面でもよく、活性層の反対側であってもよい。しかしながら、供給流2に由来するファウリング(膜の詰まり)を避けるため、浸透物質流103は活性層の反対側の面に流すことが好ましい。
熱相分離物質流3、熱交換器6、及び分離装置7については、第1の溶媒分離方法において上記に説明したところと同様である。
<溶媒分離方法の適用>
本発明における供給流とは、溶媒及び溶質から構成される溶液から成る流れである。溶媒は液体状であり、好ましくは水である。
本発明の溶媒分離方法に供給される供給流としては、例えば、以下のものから成る流れを例示することができる。
海水(溶質:塩化ナトリウム等;溶媒:水等)、
工業排水(溶質:医薬品、ラテックス等;溶媒:水等)、
有価物を含有する液体(溶質:医薬品、ラテックス等;溶媒:水等)、
ガス田・油田等から排出される随伴水(溶質:塩化ナトリウム、油、ガス等;溶媒:水等)等。
本発明の溶媒分離方法は、上記のような例を供給流として、該供給流から精製された溶媒を分離・回収することができる。
本発明の溶媒分離方法によって得られる精製溶媒(例えば精製水)は、
例えば、飲料水、工業用水、農業用水、各種化学合成における溶媒、シェールガス・オイル採掘時の注入水等として好適に使用することができる。
本発明の溶媒分離方法によって得られた精製溶媒は、例えば、
上記の熱相分離物質(疎水基修飾アルキレンオキシドポリマー):200ppm以上40,000ppm以下、及び
無機塩又は有機塩(特に好ましくは硫酸アンモニウム):0.1質量%以上6.0質量%以下
を含有する精製溶媒であることができる。
以下、本発明の溶媒分離方法によって得られる精製溶媒について、より具体的に説明する。
本発明の方法によると、精製溶媒中の熱相分離物質の濃度は、その上限値を40,000ppm以下とすることができ、好ましくは10,000ppm以下とすることができ、より好ましくは5,000ppm以下とすることができ、更に好ましくは4,000ppm以下とすることができ、特に2,500ppm以下とすることができる。精製溶媒が熱相分離物質を含有することにより、後述するように、配管の錆抑制、凍結防止等の効果が発現する。特に熱相分離物質濃度が40,000ppm以下である場合には、精製溶媒の粘度が過度に高くならないから、さらに後続の精製工程(例えば、ナノフィルターによるろ過工程)が容易に行えることとなり、好ましい。
一方で、精製溶媒中の熱相分離物質の濃度の下限値は、200ppm以上であることが好ましく、500ppm以上がより好ましく、1,000ppm以上が特に好ましい。200ppm以上の熱相分離物質が精製溶媒中に存在することにより、配管の錆抑制、凍結防止等の効果が有効に発現することとなり、好ましい。
更に、本発明の方法によると、精製溶媒中の無機塩又は有機塩の濃度を、6.0質量%以下とすることができ、好ましくは3.0質量%以下とすることができ、特に1.5質量%以下とすることができる。一方、精製溶媒中の無機塩又は有機塩の濃度の下限値は、0.1質量%以上であり、好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上である。
このような精製溶媒は、適当量の塩及び疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーを含有していることから、凝固点が純溶媒の場合よりも低くなっており、凍結防止の効果を奏する。
一方、塩を含有する溶媒は、配管に錆を発生させる場合のあることが、本発明者らの検討によって明らかとなった。しかし、本発明の溶媒分離方法によって得られる精製溶媒は、配管の錆を防ぐことができることが見出された。該精製溶媒が、無機塩又は有機塩とともに適当量の疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーを含有することの効果であると考えられる。
従って、特に溶媒が水であるときには、シェールガス・オイル採掘時の注入水として好適に使用可能である。特に、凝固点が低くなっていることから、採掘場所が寒冷地であるときの凍結防止のメリットは大きく、配管の錆抑制も同時に達成することが可能である。
本発明の溶媒分離方法に使用される熱相分離物質について、以下に実施例の形式で検証した。
以下の実施例及び比較例における各種の評価は、それぞれ、以下のとおりに行った。
(1)濃度の評価
各ポリマーの60質量%の水溶液を調製した。この水溶液を耐圧容器に入れ、5〜6atmに加圧し、150℃に加熱した。150℃に到達後5分間静置してから、ポリマーが濃縮された層を取出し、アタゴ社製「PAL−RI」を用いて、屈折率により濃縮ポリマーの濃度を測定した。
(2)浸透圧の評価
溶媒を含まないポリマーのそれぞれを、これと相溶しない無機塩水溶液(濃度10質量%の硫酸アンモニウム水溶液)と直接(半透膜を介さずに)接触させ、溶媒(水)の移動が平衡に達するまで静置した。平衡時のポリマー溶液の濃度及び無機塩溶液の濃度から相図を作成した。この相図を用い、平衡時の各ポリマー溶液の濃度をこれと同じ浸透圧を示す無機塩溶液の濃度に変換し、該無機塩溶液の濃度から浸透圧を導いた。硫酸アンモニウム濃度の測定には、アリザリンレッド及び塩化バリウムを用いる硫酸イオンの滴定法によった。
下記の実施例及び比較例で示す表中の分子量の値は、いずれも、末端修飾を行う前のベースポリマーについての値である。
比較例1及び2
本比較例1及び2においては、末端基未修飾のエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)コポリマーについて、ブロックコポリマーとランダムコポリマーとの比較を行った。
分子量2,000、EO成分の質量比が50質量%であるEO/POブロックコポリマー(比較例1)とランダムコポリマー(比較例2)とを比較した。結果を表1に示した。
Figure 2017148734
表1によると、ランダムコポリマー(比較例)の浸透圧の方が、5atm以上も高いという結果が得られた。従って、以降に開示するコポリマーの疎水基修飾検討には、ランダムコポリマーを用いることにした。
比較例3、並びに実施例1及び2
本比較例3並びに実施例1及び2では、EO/POコポリマーに対する末端疎水基(アルキル基)修飾の効果について検討した。
分子量1,500、EO成分の質量比が80質量%であるEO/POランダムコポリマー(比較例3)と、該コポリマーの片末端をメチル基(実施例1)又はイソプロピル基(実施例2)で修飾したポリマーと、の比較を行った。結果を表2に示した。
Figure 2017148734
表2によると、比較例3では150℃において熱相分離しなかったが、コポリマーの末端を疎水基で修飾することにより、熱相分離するようになり、155atmを超える高い浸透圧を示した。
EO成分を含むアルキレンオキシドコポリマーは、含有されるEO成分の質量比によってポリマーの浸透圧が左右され、EO質量比が高いほど浸透圧が高くなることが知られている。しかし、EO成分の質量比を過度に高くすると、親水性が過度に高くなり、熱相分離しなくなる。しかしながら、該ポリマーの末端を適当な疎水基で修飾することにより、熱相分離させることができるようになる。
実施例2の濃縮ポリマー溶液の浸透圧は163atmを示している。この値は、塩化ナトリウムの20質量%水溶液に相当する非常に高い浸透圧である。従って、本発明の方法における熱相分離物質として実施例2のポリマーを用いると、供給流を高い濃度に濃縮することが可能である。
比較例4〜6及び実施例3
次に、熱相分離しないポリマーに対する両末端疎水基修飾の効果を検証した。
浸透圧は非常に高いものの、150℃まで曇点が確認できないEOのホモポリマー(比較例4〜6)と、両末端をアリル基で修飾したEOホモポリマー(実施例3)との比較を行った。結果を表3に示した。
Figure 2017148734
EOホモポリマーの両末端をアリル基修飾することによって、高親水性ポリマーも熱相分離できるようになった。実施例3のポリマーは、実施例1及び2のランダムコポリマーと比較した浸透圧が151atmと、やや低いが、ホモポリマーの場合はポリマー製造の際の使用モノマーが1種類であるという製造上のメリットがある。
比較例7及び8、並びに実施例4〜6
これらの実験例では、熱相分離するポリマーに対する疎水基修飾の効果を検証した。
分子量2,500、EO成分の質量比70質量%のEO/POランダムコポリマー(比較例7)、及びEO成分の質量比80質量%のEO/POランダムコポリマー(比較例8)は、いずれも、150℃において熱相分離可能である。該ポリマーと、これに対して片末端疎水基修飾したポリマー(実施例4〜6)との比較を行った。結果を表4に示した。
Figure 2017148734
共重合割合が同じEO/POランダムコポリマーを考えたとき、一般に、分子量が高い方が熱相分離後のポリマー濃度が高くなる。
しかし、片末端をアリル基修飾した実施例4のポリマーは、分子量が2,000であるにもかかわらず、これよりも大きな分子量2,500を有する比較例7のポリマーと比べて、熱相分離濃度が10質量%以上高くなることが確認された(表4)。このとき、浸透圧においては10atm以上の非常に大きな向上が確認された。
これは、疎水基修飾によって、熱による水素結合の切断に起因するポリマー同士の疎水的な会合が促進されたためであると考えられる。疎水基修飾はポリマーの親水性を低下させる。しかしながら、疎水基修飾によって、親水性の低下効果よりも、熱相分離濃度の向上による浸透圧の向上効果が顕著に表れることが、この結果から分かる。
同様に、分子量2,500、EO重量比80wt%のEO/POランダムコポリマー(比較例8)と、該ポリマーにメチル基及びイソプロピル基を付加したポリマー(実施例5及び6)との比較によっても、それぞれ5atm以上もの浸透圧の向上が確認された。
比較例9及び実施例7
本比較例9及び実施例7では、低分子量ポリマーに対する末端疎水基修飾の効果を検証した。
いずれも分子量500の、EP成分質量比50質量%のEO/POランダムコポリマー(比較例9)と、該ポリマーの片末端をイソプロピル基で修飾したポリマー(実施例7)との比較を行った。結果を表5に示した。
Figure 2017148734
一般に、ポリマー分子量が低くなると、熱相分離による該ポリマーと溶媒との分離は難しくなる。分子量が500であると、EO成分の質量比が比較的に低い50質量%であっても、150℃における熱相分離が見られない。しかし、表5を参照すると、低分子ポリマーの片末端を疎水基修飾することによって、EO比が70質量%と高くなっても熱相分離が可能となることがわかる。
本発明において、第1の溶媒分離方法を採用する場合の工程1の場面(供給流から半透膜を介して溶媒を熱相分離物質流へ移動させる場面)においては、半透膜の内部に生じる内部濃度分極及び半透膜の外側の極く近傍に発生する外部濃度分極が、正味の浸透圧差を低下させ、単位膜面積及び単位時間あたりの溶媒の移動量が低下する。これらの濃度分極は、浸透物質溶液を構成する溶質の粘度を小さくすることにより、低減可能である。
すなわち、熱相分離物質を低分子量化して粘度を小さくすることにより、供給流の濃縮及び溶媒の回収の双方を、効率的に行うことができるようになる。
本発明の構成より、50質量%を超える高いEO成分質量比を持ち、かつ低分子量のアルキレンコポリマーを熱相分離物質として用いることができるようになるため、より効率的な溶媒回収方法を提供することが可能になる。
比較例10〜18及び実施例8〜11
以下の実験例では、末端修飾する疎水基の炭素数について検討した。
分子量1,500、EO成分の質量比が80質量%である、150℃において熱相分離しないEP/POランダムコポリマー(比較例10)に対して、分子量、EO成分質量比を変更しつつ、種々の炭素数を有する疎水基による修飾効果を検証した。結果を表6に示した。
Figure 2017148734
上述の比較例1〜9及び実施例1〜7により、アルキレンオキシドポリマーの末端を疎水基修飾することによって、熱相分離しないほど親水性の高いポリマーを熱相分離できるようになること、及びアルキレンオキシドポリマーをより浸透圧の高い状態で濃縮できるようになることが検証された。
しかし、アルキレンオキシドポリマーの末端修飾に使用する疎水基の炭素数が大きくなると、
疎水性が過度に高くなり、水に対する溶解性が損なわれるケース(比較例11及び12)、並びに
ポリマーの比重が過度に小さくなり、熱相分離状態における水との分離が難しくなるケース(比較例13〜18)
のあることが確認された。
上記の実施例8〜11の結果から、疎水基修飾なしでは熱相分離しないようなポリマー(例えば比較例18)を熱相分離するように、又は
もともと熱相分離するポリマーをより浸透圧の高い状態で濃縮できるように、
するためには、疎水基の有する炭素数が1〜3の場合が適していることが検証された。
実施例12
本実施例では、本発明の溶媒分離方法によって製造される精製水が、金属配管の防錆性に優れ、凝固点の低いものであることを示すためのモデル実験を行った。すなわち、本発明の溶媒分離方法によって製造される精製水の一例が有する組成の水溶液を調製し、該水溶液の錆発生性及び氷点下環境における凝固性を調べた。
熱相分離物質として分子量2,000、EO重量比70%、片末端アリル基修飾のエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダムコポリマーを3.7質量%、及び無機塩として硫酸アンモニウムを2.73質量%含む水溶液を調製した。
この水溶液を、SUS316製の配管に10日間暴露したが、SUS配管に錆の発生は確認されなかった。
また、上記の水溶液を、−0.1℃の環境において12時間静置したが、凝固しなかった。
本発明は、加熱によって熱相分離したときの濃縮熱相分離物質溶液の浸透圧が高い熱相分離物質として、特定の疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーを用いることにより、供給流を高濃度に濃縮し、供給流から効率的に水を回収するための方法を提供するものである。
本発明は、無機物質、有機物質、細菌等を含む溶液から溶媒を回収する分野、上記溶液を濃縮することにより廃棄物量を減らす分野等において、好適に適用することができる。特に、水溶液の濃縮及び水の回収を行う分野において有効であり、例えば、海水の淡水化、生活排水の濃縮及び再生、工場排水の濃縮及び再生、オイル田・ガス田の随伴水の濃縮及び水の回収等に利用できる。
本発明の方法によって得られた精製溶媒、特に精製水は、シェールガス・オイル採掘時の注入水として好適である。
1 溶媒
2 供給流
3 熱相分離物質流
4 半透膜
5 溶媒1及び熱相分離物質流3を含有する流れ
6 熱交換器
7 分離装置
8 溶媒リッチ流
9 流れ5及び膜回収流11を含有する流れ
10 精製溶媒
11 膜回収流
12 正浸透ユニット
13 濃縮された供給流
14 ろ過ユニット
15 ろ過膜
103 浸透物質流
105 溶媒リッチの浸透物質流
107 分離装置
108 溶媒1及び熱相分離物質流3を含有する流れ
112 熱相分離物質リッチ流
113 混合流

Claims (11)

  1. 溶媒を含有する供給流を、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、半透膜を介して向流又は並流させることによって前記溶媒を熱相分離物質流に移動させる工程1と、
    前記溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
    を有する溶媒分離方法であって、
    前記熱相分離物質が、アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、そして前記疎水基の有する炭素数が1〜3個であることを特徴とする、前記溶媒分離方法。
  2. 溶媒を含有する供給流を、無機塩又は有機塩を含む浸透物質流と半透膜を介して向流又は並流させて前記溶媒を前記浸透物質流に移動させて、溶媒リッチの浸透物質流を得る工程1−1と、
    前記溶媒リッチの浸透物質流と、熱相分離物質を含有する熱相分離物質流と、を混合して混合流を得る工程1−2と、
    前記工程1−2により得られた混合流を、浸透物質流と前記溶媒が移動した熱相分離物質流とに分離し、該溶媒が移動した熱相分離物質流を前記熱相分離物質の曇点以上に加熱して、溶媒リッチ流と熱相分離物質リッチ流とに分離する工程2と、
    を有する溶媒分離方法であって、
    前記熱相分離物質が、アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーであり、そして前記疎水基の有する炭素数が1〜3個であることを特徴とする、前記溶媒分離方法。
  3. 前記溶媒が水である、請求項1又は2に記載の溶媒分離方法。
  4. 前記熱相分離物質リッチ流の浸透圧が100atm以上200atm以下である、請求項3に記載の溶媒分離方法。
  5. 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーが、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドから選択される少なくとも1種とのランダムコポリマーの片末端又は両末端に前記疎水基を有する重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
  6. 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーが、エチレンオキシド成分を50質量%以上有するアルキレンオキシドランダムコポリマーの片末端又は両末端に前記疎水基を有する重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
  7. 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーが、エチレンオキシドのホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
  8. 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーの分子量が500Da以上2,500Da以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
  9. 前記疎水基修飾アルキレンオキシドポリマーの熱相分離温度が60℃以上175℃以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶媒分離方法。
  10. アルキレンオキシドホモポリマーの両末端に疎水基を有する重合体、2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの片末端に疎水基を有する重合体、及び2種類以上のアルキレンオキシドのコポリマーの両末端に疎水基を有する重合体から選択される疎水基修飾アルキレンオキシドポリマー:200ppm以上40,000ppm以下、並びに
    無機塩又は有機塩:0.1質量%以上6.0質量%以下
    を含有することを特徴とする、精製溶媒。
  11. 請求項2に記載の溶媒分離方法を使用する工程を有することを特徴とする、請求項10に記載の精製溶媒の製造方法。
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