JP6211707B2 - 溶媒分離システムおよび方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶液から溶媒を分離するためのシステムおよび方法に関する。
溶液から溶媒を分離回収することは、工業的に広く実施されている。分離されるべき溶媒は、無機化合物および有機化合物から選ばれる溶質を含んでいる。そのため、回収された溶媒はしばしば精製工程を必要とする。精製された溶媒は、化学工業プロセス用途の溶媒として、あるいはその他の様々な用途に用いられるものとして、販売されることもある。
溶媒の中でも、水は、多くの場合、種々の溶質を含有しており、一般的にそのままでは水として使用できない典型的な溶媒である。従って、そのような低品質な水から使用可能な水とするための精製・再生が必要とされている。
水の精製の例としては、例えば、海水の淡水化、工業排水の精製などを挙げることができる。従来技術における水の精製は、例えば蒸留、逆浸透などの、比較的高温・高圧を要求するエネルギー集約型の方法によって行われている。従って、正浸透の技術に注目が集まっている(特許文献1)。
そのため、水の精製・再生を効率的に行う工程が望まれている。
米国特許出願公開第2011/0272355号明細書
本発明は、溶液から効率的に溶媒を分離するためのシステムおよび方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討を行った。その結果、正浸透プロセスを用いた溶媒精製システムにおいて、溶媒が移動した浸透物質流から熱相変化型ポリマー流に溶媒を吸収させる際に、該吸収にかかわる液流それぞれの温度が、相互に特定の関係を有するように制御することによって、溶媒の分離がより効率的に行えることを見出し、本発明をなすにいたった。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1] 溶質および溶媒bを含有する供給流aを、
浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流させ、前記供給流aに含有される溶媒bを前記半透膜oを通過させて浸透物質流dに移動させて流れeを得る第一の工程;
溶媒bおよび浸透物質流dを含有する前記流れeを熱相変化型ポリマー流kと混合して流れfとした後、
溶媒b、浸透物質流d、および熱相変化型ポリマー流kを含有する前記流れfを、
浸透物質流dと、
溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhと
に分離する第二の工程;および
前記流れhを加熱した後、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとに分離する第三の工程;
を有する溶媒分離システムであって、
前記第二の工程が、下記の条件(1)および(2):
(1)混合前の熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および混合後の流れfの温度Tfが、Tk−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にある、
(2)混合後の流れfの温度Tfが、該流れfの曇点以上である
を同時に満足することを特徴とする、前記システム。
[2] 上記第二の工程において、さらに、
混合前の流れeの温度Te、および混合後の流れfの温度Tfが、Te−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にある、[1]に記載のシステム。
[3] 前記溶媒bが水である、[1]または[2]に記載のシステム。
[4] 前記熱相変化型ポリマー流kに含有される熱相変化型ポリマーが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーであって
その末端が水酸基であるか、または
末端の水酸基のひとつ以上が、アルキル基、フェニル基、アリル基、およびアリール基から成る群より選択される一種以上の基で置換されている、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のシステム。
[5] 溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する前記流れhが、50℃以上200℃以下の間に曇点を有するものである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のシステム。
[6] 前記浸透物質流dに含有される浸透物質が、無機塩基、有機塩基、塩、イオン性ポリマー、イオン液体、非イオン性ポリマー、および有機化合物から成る群より選択される一種以上である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のシステム。
[7] 前記第一の工程が正浸透プロセスによるものである、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のシステム。
[8] [1]〜[7」のいずれか一項に記載のシステムを使用して、無機化合物および有機化合物から選択される溶質と溶媒bとを含有する供給流aから溶媒bを分離することを特徴とする、溶媒の分離方法。
[9] 溶質および溶媒bを含有する供給流aを、
浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流させ、前記供給流aに含有される溶媒bを前記半透膜oを通過させて浸透物質流dに移動させて流れeを得る第一の工程;
溶媒bおよび浸透物質流dを含有する前記流れeと熱相変化型ポリマー流kを向流抽出装置Sに導入し、溶媒bを流れeから熱相変化型ポリマー流kに移動させて、
浸透物質流dと、
溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhと
に分離する第二の工程;ならびに
前記流れhを加熱した後、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとに分離する第三の工程
を有することを特徴とする、溶媒分離システム。
[10] 前記第二の工程において、混合前の熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および向流抽出装置S内の温度Tsが、Tk−Ts=0.1℃以上80℃以下の関係にある、[9]に記載のシステム。
[11] 前記第二の工程において、混合前の流れeの温度Te、および向流抽出装置内の温度Tsが、Te−Ts=0.1℃以上80℃以下の関係にある、[9]または[10]に記載のシステム。
[12] 前記溶媒bが水である、[9]〜[11]のいずれか一項に記載のシステム。
[13] 前記熱相変化型ポリマー流kに含有される熱相変化型ポリマーが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーであって、
その末端が水酸基であるか、または
末端の水酸基の一つ以上が、アルキル基、フェニル基、アリル基、およびアリール基から成る群より選択される一種以上の基で置換されている、[9]〜[12]のいずれか一項に記載のシステム。
[14] 溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhが、50℃以上200℃以下の間に曇点を有するものである、[9]〜[13]のいずれか一項に記載のシステム。
[15] 前記浸透物質流dに含有される浸透物質が、無機塩基、有機塩基、塩、イオン性ポリマー、イオン液体、非イオン性ポリマー、および有機化合物から成る群より選択される一種以上である、[9]〜[14]のいずれか一項に記載のシステム。
[16] 前記第一の工程が正浸透プロセスによるものである、[9]〜[15]のいずれか一項に記載のシステム。
[17] [9]〜[16]のいずれかに記載のシステムを使用して、無機化合物および有機化合物から選択される溶質と溶媒bとを含有する供給流aから溶媒bを分離することを特徴とする、溶媒の分離方法。
[18] 供給流aと浸透物質流dとが半透膜oを介して向流または並流する構造を有し、
前記供給流aの注入口、および供給流aが浸透物質流dと前記半透膜oを介して向流または並流した後の流れcの排出口、ならびに前記浸透物質流dの注入口、および浸透物質流dが供給流a前記半透膜oを介して向流または並流した後の流れeの排出口を有するユニットA;
流れeと熱相変化型ポリマー流kとを向流させ、前記流れe中の溶媒bを前記熱相変化型ポリマー流kへと抽出して流れhとする構造を有し、
前記流れeの注入口および抽出後の流れeの排出口、ならびに熱相変化型ポリマー流kの注入口、および流れhの排出口を有し、かつ、温度調節機能を有する向流抽出装置S;ならびに
前記流れhを加熱するための熱交換器q2、およびセパレーターBを有し、
前記セパレーターBは、前記流れhを、熱相変化型ポリマー流kと、溶媒bとに分離する機能を有し、そして該セパレーターは、前記流れhの注入口と、前記熱相変化型ポリマー流kの排出口と、前記溶媒bの排出口と、を有するユニットB;を有することを特徴とする、溶媒分離装置。
本発明によれば、効率的に溶液から溶媒を分離することが可能となる。
本発明は、例えば海水の淡水化、工業排水の精製、有価物の濃縮、シェールガス・油田をはじめとするガス田・油田の掘削に使用する注入水の精製、シェールガス・油田をはじめとするガス田・油田から排出される随伴水の処理などの用途に好適に適用することができる。
図1は、本発明のシステムのある実施態様の概要を説明するための概念図である。 図2は、本発明のシステムの別の実施態様の概要を説明するための概念図である。 図3は、向流抽出装置の一例を説明するための概念図である。 図4は、本発明のシステムの実施形態の一例である。 図5は、本発明のシステムの実施形態の別の一例である。
以下に本発明の詳細を具体的に説明する。
先ず、本発明における各要素の関係および機能を以下に説明する。
溶質とは、無機化合物および有機化合物から選択される物質をいい、好ましくは溶媒bに溶解する。
供給流aとは、溶媒bおよび溶質によって構成される溶液である。溶媒bは液体である。この供給流aとしては、例えば、海水(溶質として塩化ナトリウムなど;溶媒として水など)、工業排水(溶質として各種無機物、有機物など;溶媒として水など)、有価物を含有する液体(溶質として医薬品、ラテックスなどの有価物;溶媒として水など)、ガス田・油田から排出される随伴水(溶質として塩化ナトリウム、油、ガスなど;溶媒として水など)などを挙げることができる。前記随伴水の例としては、例えば、シェール(頁岩)をフラクチャリング流体で水圧破砕した後、生産されたガス・油とともに地上に戻ってくる、塩を含む水などである。この随伴水は、塩化ナトリウムを中心とする塩を高濃度で含有する。
溶媒bとは、あらゆる無機溶媒または有機溶媒であることができる。溶媒bは、供給流aにおいて液体として存在する。この溶媒bは水である場合が多い。
浸透物質流dは、供給流aよりも高い浸透圧をもち、かつ、半透膜oを著しく変性させない流体である。供給流aと浸透物質流dとを半透膜oを介して接触させると、供給流a中の溶媒bが、半透膜oを透過し浸透物質流dに移動する。このような浸透物質流dを用いることにより、半透膜oを用いて正浸透プロセスを稼働させることができる。
正浸透プロセスとは、半透膜oを介して浸透圧の異なる二つの液を接触させ、浸透圧の低い側から高い側へ溶媒を移動させるプロセスのことである。
上記の浸透物質流dは、浸透物質と、必要に応じてその溶媒と、からなる。
浸透物質は、例えば、無機塩基、有機塩基、塩、イオン性ポリマー、イオン液体、非イオン性ポリマー、有機化合物などであることができる。
前記無機塩基とは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどである。
前記有機塩基とは、例えば、水酸化テトラエチルアンモニウムなどである。
前記塩とは、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムシリケート、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、二ナトリウムリン酸一水素、一ナトリウムリン酸二水素、リン酸カリウム、炭酸カリウム、硫酸マンガン、クエン酸ナトリウムなどである。
これらの無機塩基、有機塩基、または塩を浸透物質流dとして適用するためには、これらを溶媒に溶解する。この場合の溶媒としては、例えば水が好適である。
前記イオン性ポリマーとは、例えば、ポリアクリル酸、低分子ポリエチレンスルフォン酸ナトリウム塩、ポリメチルアクリルナトリウム塩など;および、これらのコポリマーなどである。これらのイオン性ポリマーを浸透物質流dとして適用するためには、これらを溶媒に溶解する。この場合の溶媒としては、例えば水が好適である。
前記イオン液体とは、100℃以下の融点を有する塩のことである。具体的には、例えば、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩、モルホリニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。これらのイオン液体は、例えば、Sigma−Aldrich発行(2012年10月)のイオン液体カタログに掲載されており、市販品として入手することができる。具体例には、例えば、ブチルトリメチルアンモニウムbis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、1−ブチル−3メチルピリジニウムbis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3メチルピロリジニウムbis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3メチルピペリジニウムbis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムbis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、4−エチル−4−メチルモルホリニウムメチルカーボネート溶液などである。これらイオン液体は、これをそのまま浸透物質流dとして適用することができ、または、溶媒(例えば水)に溶解して使用することもできる。
前記非イオン性ポリマーとしては、例えば、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーなどである。上記ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーは、水素原子の一部または全部がアルキル基、フェニル基、アリル基、またはアリール基で置換されていてもよい。これら非イオン性ポリマーを浸透物質流dとして適用するためには、溶媒に溶解する。この場合の溶媒としては、例えば水が好適である。
前記有機化合物の好適な例としては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、エタノール、プロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールのモノエーテル体、ジエチレングリコールのモノエーテル体、エチレングリコールのジエーテル体、ジエチレングリコールのジエーテル体、エチレングリコールのモノエステル体、ジエチレングリコールのモノエステル体、エチレングリコールのジエステル体、ジエチレングリコールのジエステル体、多糖類(例えば、糖類の二量体、三量体など)などを挙げることができる。前記糖類の例としては、例えば、グルコース、フルクトースなどを挙げることができる。これら有機化合物を浸透物質流dとして適用するためには、溶媒に溶解する。この場合の溶媒としては、例えば水が好適である。
本実施形態における好ましい浸透物質は、硫酸アンモニウム、リン酸水素二ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、および硫酸マグネシウムから成る群より選ばれる1種以上である。特に、硫酸アンモニウムおよびチオ硫酸ナトリウムは、水に溶解したときの浸透圧が高く、半透膜oを通して溶媒をより多く移動させることができるため、好ましい。特に、チオ硫酸ナトリウムは、塩の逆拡散が小さいため、好ましい。
これらの浸透物質は、単独で、あるいは混合して用いることが可能である。浸透物質流dは、後述の熱相変化型ポリマー流kに含まれるポリマー成分を、微量含んでいてもよい。
浸透物質流dにおける溶媒は、供給流aから分離すべき溶媒bと同種の溶媒とすることが好ましい。溶媒bが水である場合は、浸透物質dにおける溶媒も水であることが好ましい。
浸透物質流dにおける浸透物質の濃度は、供給流aの浸透圧より高くなるように設定される。浸透物質流dの浸透圧は、供給流aの浸透圧より高ければ、その範囲内で変動しても構わない。二つの液体間の浸透圧差を判断するには、以下のいずれかの方法によることができる。
(1)二つの液体を混合後、二相分離する場合:二相分離後に、体積が増えた方の液体の方が浸透圧が高いと判断する、または
(2)二つの液体を混合後、二相分離しない場合:半透膜oを介して二つの液体を接触させ、一定時間の経過後に体積が大きくなった液体の方が浸透圧が高いと判断する。この時の一定時間とは、その浸透圧差に依存するが、一般的に数分から数時間である。
半透膜oとは、溶媒bは透過させるが、溶質は透過させない機能を有する膜である。例えば、該半透膜oによる塩化ナトリウムの阻止率としては、10%以上が好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは98%以上である。半透膜oの形状としては、例えば、中空糸、平膜、スパイラル膜などが挙げられる。
半透膜oを構成する材料としては、例えば、公知技術において逆浸透膜として使用されている材料などが挙げられる。具体的には、例えば、酢酸セルロース、ポリスルフォンなどから構成される支持膜の表面にポリアミド層を設けたものなどがある。
流れeとは、浸透圧物質流dと、供給流aから半透膜oを透過した溶媒bとから成る流れである。つまり、溶媒bが供給流aから半透膜oを介して浸透圧物質流dに移動することにより、流れeが形成される。
熱相変化型ポリマーとは、曇点以下の温度においては、該ポリマーと溶媒bとが相溶する性質を有し、曇点を超える温度においては、該ポリマーリッチ相と溶媒bリッチ相とが相分離する性質を有するポリマーである。熱相変化型ポリマーは、熱相変化型ポリマー流kにおいて高い浸透圧を発生させる機能を持ち、流れeから熱相変化型ポリマー流kへ、溶媒bを移動させる働きの源となる。
このような熱相変化型ポリマーとしては、具体的には例えば、エトキシヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ−n−ビニルカプロラクタム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマー、ポリアルキレンオキサイド、Triton(登録商標) X−114、ポリビニルアルコールアセテート、エトキシレートセルロース、アクリレートアクリリックコポリマー、リンを含むポリオレフィン、一部をエチルまたはメチルで置換したセルロースエーテル、ビニルアルコールとメチルビニルケトンとのコポリマー、プロピレングリコールメタクリレートとメチルメタクリレートとのコポリマー、マレイン酸ジエステルの(コ)ポリマーなどの他;
米国特許出願公開第2011/0272355号明細書に記載されているポリマーなどを挙げることができる。
熱相変化型ポリマーとしては、熱相変化型ポリマー流kにおいて高い浸透圧を発現し、かつ、流れhの曇点を低くするポリマーであることが好ましい。このような熱相変化型ポリマーとして、好ましくは、
(1)ポリエチレングリコールの末端の水酸基の一つ以上を、アルキル基、フェニル基、アリル基、およびアリール基から成る群より選択される一種以上の基で置換して成るポリマー、または
(2)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーの末端の水酸基の一つ以上を、アルキル基、フェニル基、アリル基、およびアリール基から成る群より選択される一種以上の基で置換して成るポリマー、
から選択され、より好ましくは
(1)直鎖のポリエチレングリコールの末端の水酸基の一つ以上をアルキル基、フェニル基、アリル基、またはアリール基で置換して成るポリマー、または
(2)直鎖のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーの末端の水酸基の一つ以上を、アルキル基、フェニル基、アリル基、もしくはアリール基で置換して成るポリマー、
から選択される。
流れeから熱相変化型ポリマー流kに溶媒bを移動させるためには、熱相変化型ポリマー流kの粘度が低い方が有利である。従って、この観点からは、熱相変化型ポリマー流kに含まれる熱相変化型ポリマーの分子量は低い方が好ましい。一方、後述のセパレーターBによって、より純度の高い溶媒bを得るためには、流れhに含まれる熱相変化型ポリマーの分子量は高い方が有利である。これら双方の要求を勘案すると、熱相変化型ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算として、300〜10,000であることが好ましく、より好ましくは500〜5,000であり、さらに好ましくは500〜1,500である。
熱相変化型ポリマーは、そのままで熱相変化型ポリマー流kとして用いてもよいし、これを適当な溶媒に溶解した溶液を熱相変化型ポリマー流kとして用いてもよい。熱相変化型ポリマー流kが溶媒を含む場合は、該溶媒は、供給流aから分離すべき溶媒bと同種の溶媒であることが好ましい。
熱相変化型ポリマー流kにおける熱相変化型ポリマーの濃度は、所望の浸透圧の値によって適宜に設定できる。熱相変化型ポリマー流kの浸透圧は、流れdの浸透圧よりも高く、その範囲内であれば変動しても構わない。熱相変化型ポリマー流kは、前記の浸透物質を微量含んでいてもよい。
流れfとは、流れeと熱相変化型ポリマー流kとの混合物である。従って、該流れfは、溶媒b、浸透物質流d、および熱相変化型ポリマー流kを含有する。熱相変化型ポリマー流kが溶媒を含む場合、もしくは、浸透物質流dが溶媒を含む場合、またはこれらの双方である場合には、流れfにそれらの溶媒が含まれる。
流れhとは、流れeから移動した溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kからなる流れである。この流れhは、浸透物質を微量含有していてもよい。この流れhは、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとが、一相に溶解した状態にある。
次に、必要に応じて図を参照しつつ、本発明の溶媒分離システムについて説明する。
本発明の溶媒分離システムは、
溶質および溶媒bを含有する供給流aを、
浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流させ、前記供給流aに含有される溶媒bを前記半透膜oを通過させて浸透物質流dに移動させて流れeを得る第一の工程;
溶媒bおよび浸透物質流dを含有する前記流れeを、混合点αにおいて熱相変化型ポリマー流kと混合して流れfとした後、
溶媒b、浸透物質流d、および熱相変化型ポリマー流kを含有する前記流れfを、
浸透物質流dと、
溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhと
に分離する第二の工程;および
前記流れhを加熱した後、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとに分離する第三の工程;
を有する溶媒分離システムであって、
前記第二の工程が、下記の条件(1)および(2):
(1)混合前の熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および混合後の流れfの温度Tfが、Tk−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にある、
(2)混合後の流れfの温度Tfが、該流れfの曇点以上である
を同時に満足することを特徴とする。上記において、さらに、
混合前の流れeの温度Te、および混合後の流れfの温度Tfが、Te−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にあることが好ましい。
熱相変化型ポリマー流kの温度Tkとは、熱相変化型ポリマー流kが流れeと合流する混合点αの直近の地点における、熱相変化型ポリマー流kの温度である。
流れfの温度Tfとは、熱相変化型ポリマー流kが流れeと合流して形成された流れfの温度である。
図1に、本発明の溶媒分離システムのある実施形態の概要を説明するための概念図を示す。
第一の工程は、溶質および溶媒bを含有する供給流aを、
浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流させ、前記供給流aに含有される溶媒bを前記半透膜oを通過させて浸透物質流dに移動させて流れeを得る工程である。この第一の工程においては、二つの流れが半透膜oを介して向流または並流することが可能なように設計されたユニットAを用いる。
第一の工程において、供給流aは、ユニットA中で、浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流する。このことにより、供給流a中の溶媒bは、半透膜oを透過して浸透物質流dへと移動する。この溶媒bの移動は、半透膜oを正浸透膜として用い、正浸透プロセスによるものとすることが、小さなエネルギーで効率的な溶媒分離が可能となる点で、好ましい。
浸透物質流dは、溶媒bが移動して混合された流れeとなり、ユニットAから排出される。
第二の工程は、溶媒bおよび浸透物質流dを含有する前記流れeを、混合点αにおいて熱相変化型ポリマー流kと混合して流れfとした後、
溶媒b、浸透物質流d、および熱相変化型ポリマー流kを含有する前記流れfを、
浸透物質流dと、
溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhと
に分離する工程である。
本発明のある実施態様では、この第二の工程において、冷却装置q1およびセパレータAを用いる。
流れfにおいては、流れeと熱相変化型ポリマー流kとの混合により、流れeから熱相変化型ポリマー流kへの溶媒bの移動が起こる。ここで、流れfの途中で冷却装置q1を用いることによって、流れeから熱相変化型ポリマー流kへの溶媒bの移動を促進することができる。冷却装置q1としては、例えば、チラー、熱交換器などを用いることができる。
セパレータAは、流れfを、溶媒bを吸収した熱相変化型ポリマー流k(すなわち流h)と、溶媒bを放出した流れe(すなわち浸透物質流d)と、に分離する機能を有するものであれば何でもよい。例えば、遠心分離、重力沈降、コアレッサー、ハイドロサイクロンなどの適宜の手段を有する装置であることができる。
この第二工程においては、温度Tkおよび温度Tfが、Tk−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にあり、そして、
混合後の流れfの温度Tfが、該流れfの曇点以上である。好ましくはさらに、温度Teおよび温度Tfが、Te−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にある。温度Tkは、熱相変化型ポリマー流kが流れeと合流する混合点αの直前の地点における前記熱相変化型ポリマー流kの温度である。温度Tfは、流れfがセパレーターAに入る直前の地点における前記流れfの温度である。温度Teは、流れeが熱相変化型ポリマー流kと合流する混合点αの直前の地点における流れeの温度である。
流れfの温度Tfは、流れfの曇点よりも高い温度である。ここでいう流れfの曇点とは、流れfが均一に溶解する低温から加熱していった時に、濁りが生じ始める温度である。従って、少なくともセパレーターAに入る流れfは、流れeと熱相変化型ポリマー流kとの二相から構成される混合流になる。
温度Tfは、流れeから熱相変化型ポリマー流kへの溶媒bの移動を促進するために、流れfの曇点を下回らない範囲で低い方が好ましい。一方、TkとTfとの温度差が大きいほど、エネルギー的に不利である。従って、Tk−Tf=0.1以上80℃以下とすることが必要である。Tk−Tfの値は、好ましくは0.1℃以上50℃以下、より好ましくは0.1℃以上30℃以下である。ただし、Tfが流れfの曇点以上であるとの要件を、必ず満たさなければならない。
上述のとおり、温度Tfは、流れeから熱相変化型ポリマー流kへの溶媒bの移動を促進するために、流れfの曇点を下回らない範囲で低い方が好ましい。一方、TeとTfとの温度差が大きいほどエネルギー的に不利である。従って、Te−Tf=0.1以上80℃以下とすることが好ましい。Te−Tfは、より好ましくは0.1℃以上50℃以下、さらに好ましくは0.1℃以上30℃以下である。ただし、Tfが流れfの曇点以上であるとの要件を必ず満たさなければならない。
この実施形態におけるTk、Tf、およびTeは、具体的には、図1中の「第二の工程」において「Tk」、「Tf」、および「Te」と表記された矢印によって特定された黒点の位置でそれぞれ測定される。
本発明の別の実施形態では、この第二の工程において、冷却装置q1およびセパレータAに代えて、向流抽出装置Sを用いる。図2に、向流抽出装置Sを用いる場合の本発明の溶媒分離システムの概要を説明するための概念図を示す。
向流抽出装置Sについて説明する。
流れeから熱相変化型ポリマー流kへ溶媒bを移動させるためには、流れeと熱相変化型ポリマー流kとを混合し、かつ分離する必要がある。
向流抽出装置Sとは、流れeと熱相変化型ポリマー流kとを向流で接触させる装置である。両者を向流にて接触させることにより、混合および分離を効率的に行って、流れeから熱相変化型ポリマー流kへと、溶媒bを効率よく移動させることができる。ここで、流れeおよび熱相変化型ポリマー流kのうち、比重の大きい液から成る流れを向流抽出装置Sの上部から、比重の小さい液から成る流れを下部から、それぞれ注入して向流接触させる。例えば、浸透物質流dとして濃厚無機塩溶液を用い、熱相変化型ポリマー流kとしてポリマー溶液を用いる場合、浸透物質流dの方が通常は比重が高くなるため、流れdを上部から、熱相変化型ポリマー流kを下部から、それぞれ注入することが好ましい。
向流抽出装置Sとしては、例えば、充填塔、スプレー塔、多孔板塔、回転円板塔などが挙げられる。具体的には、例えば、「改訂七版 化学工学便覧 化学工学会編 丸善出版株式会社発行、ISBN978−4−621−08388−8」に解説・例示されている装置である。向流抽出装置Sは、温度調整機能を持つことが好ましい。
本発明における向流抽出装置Sとしては、必要な塔高を確保できれば、分離のために、静置、遠心分離などが必要ない。そのため、分離し難い液同士の間で抽出を行う場合には特に有利であり、溶媒分離システムの省スペース化を実現することもできる。
本発明において好適に用いられる向流抽出装置Sの一例の概要を図3に示す。
向流抽出装置Sを用いる場合の第二の工程における各部の温度の関係は、上述の場合と同様である。ただし、流れfの温度Tfの代わりに、向流抽出装置S内の温度Tsを用いる。すなわち、第二工程において、
混合前の熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および向流抽出装置S内の温度Tsが、Tk−Ts=0.1℃以上80℃以下の関係にあり、好ましくはさらに、混合前の流れeの温度Te、および向流抽出装置S内の温度Tsが、Te−Ts=0.1℃以上80℃以下の関係にある。Tk−Tsの値は、好ましくは0.1℃以上50℃以下、より好ましくは0.1℃以上30℃以下である。Te−Tsの値は、より好ましくは0.1℃以上50℃以下、さらに好ましくは0.1℃以上30℃以下である。ただし、向流抽出装置S内のTsは、流れeと熱相変化型ポリマー流kを1対1で混合した液の曇点以上であるとの要件を必ず満たさなければならない。
この実施形態におけるTk、Ts、およびTeは、具体的には、図2中の「第二の工程」において「Tk」、「Ts」、および「Te」と表記された矢印によって特定された黒点の位置でそれぞれ測定される。
本発明の溶媒分離システムにおける第三の工程は、流れhを加熱した後、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとに分離する工程である。この第三の工程は、図1のシステムおよび図2のシステムの両者に共通である。
第三の工程は、例えば、熱交換器q2およびセパレーターBを用いて行うことができる。
熱交換器q2は、必要に応じて用いられる熱交換器であり、より高温の熱相変化型ポリマー流kからより低温の流れhへと、熱を移動させる装置である。
セパレータBとは、流れhから溶媒bを分離させる装置であり、流れhの曇点以上の温度において稼働される。流れhの曇点とは、流れhが均一に溶解している低温から、高温に向けて加熱して行った時に、濁りが生じ始める温度である。従って、流れhは、上記セパレーターBにおいて、溶媒bと熱相変化型ポリマーリッチ相とに分離される。このとき、分離後のポリマーリッチ相における熱相変化型ポリマーの濃度が、熱相変化型ポリマー流kの熱相変化型ポリマーの濃度と等しくなるように、セパレーターBの稼働温度を設定することが好ましい。
セパレーターBとしては、例えば、遠心分離、重力沈降、コアレッサー、ハイドロサイクロン、フィルタリングユニット(固液分離、油水分離など)などから選ばれる1種以上の手段を有する装置が挙げられる。
セパレーターBによって分離された溶媒bは、微量の不純物を含む場合もある。従って、場合によってはセパレーターBから排出された溶媒bに対して、さらなる精製手段を加えることができる。さらなる精製手段としては、例えば、ナノフィルトレーション、逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過、イオン交換樹脂、活性炭、各種吸着材などが挙げられる。この生成手段により得られた、例えば、ナノフィルトレーションなどの膜ろ過による濃縮液は、第一の工程、第二の工程、または第三の工程に戻してもよいし、廃棄してもよい。
流れhの曇点は、室温と比較して十分に高いことが好ましいが、高すぎるとエネルギー的に不利になる。従って、熱相変化型ポリマー流hの曇点としては、40℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上180℃以下がより好ましく、50℃以上150℃以下がさらに好ましい。
以下、さらなる図を参照しつつ、本発明のシステムの別の実施態様例を説明する。
本発明の別の実施形態のシステムの例を図4および5に示した。
図4のシステムは、第三の工程におけるセパレータBとして、
凝集層、および半透膜pを有するフィルタリングユニットから構成される複合ユニットを使用した他は、前記図1のシステムと同じである。
この凝集槽は、重力沈降、遠心分離などの原理により、流れhを熱相変化型ポリマーリッチ流jと溶媒リッチ流lとに分離する機能を有する。溶媒リッチ流lは精製ユニットに導入される。この精製ユニットにより、溶媒リッチ流l中の溶媒bが精製される。
図4における精製ユニットは、溶質を透過させず、溶媒を透過させる機能を有する半透膜pを具備する。精製ユニットによる溶媒精製は、例えば逆浸透膜法、精密ろ過法、限外ろ過法、ナノフィルトレーション、浸透気化法、浸透蒸留法、膜蒸留法などによることができ、これらを単独でまたは組み合わせて採用することができる。
溶媒が移動除去され、熱相変化型ポリマーが濃縮された流れmは、流れjとともに、熱相変化型ポリマー流kとして再利用される。
第三の工程におけるセパレータBを、このような複合ユニットとして構成することにより、最終的に得られる精製溶媒の純度を、さらに向上することが可能となる。
図5のシステムは、
第二の工程における流れeと熱相変化型ポリマー流kとの混合のために混合器を、
第三の工程における流れhの分離の前に撹拌機を、
それぞれ設置した以外は、前記図4のシステムと同じである。
前記第二の工程における混合器の設置により、流れeと流れkとの混合が促進される。
前記第三の工程における撹拌機の設置により、流れhを熱相変化型ポリマーリッチ流jと溶媒リッチ流lとに二相分離させる工程がスムースに進行する利点が得られる。
図4および5のシステムにおいて、第二の工程の分離手段として向流抽出装置を使用した態様も、本発明の具体的な実施態様として、好適に採用することができる。
上記説明に際して参照した図1〜図5におけるp1、p2、およびp3は、それぞれ、送液のためにポンプである。
以上のように、本発明における第一の工程、第二の工程、および第三の工程を経ることにより、供給流aから溶媒bを高純度で回収することが可能となる。
本発明について、実施例に基づいて説明する。
以下の実施例および比較例における数平均分子量は、下記の装置を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)によって測定したポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)製、HLC−8220GPC
カラム:東ソー(株)製、TSKgel G1000HXL×1本、TSKgel G2000HXL×1本、およびTSKgel G3000HXL×1本
キャリアー:和光純薬工業(株)製、特級テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折率計
キャリアー流速:1.0mL/分
検量線:東ソー(株)製、TSK標準ポリスチレン
カラム室内温度:40℃
試料濃度:0.05質量%以上0.1質量%以下
試料吸入量:50μL
各温度は、該当箇所に熱電対(kタイプ)を設置し、該熱電対を接続したチノ製LT370の温度を読み取った。
本発明の主たる効果は、第二の工程における温度制御により、流れeから流れhに移動する溶媒量を増大させることである。従って、以下の実施例1〜16および比較例1〜4においては、該第二の工程における溶媒(水)の移動に着目して調べた。
[実施例1〜4および比較例1]
実施例1〜4および比較例1は、図1に示したシステムを使用して実施した。
溶媒bとしては水を、
浸透物質として硫酸アンモニウムを、
熱相変化型ポリマーとしてはエパン(登録商標)450(ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとのコポリマー、数平均分子量2,400、第一工業製薬(株)製)を、
それぞれ使用した。浸透物質流d中の硫酸アンモニウム濃度としては10質量%、熱相変化型ポリマー流k中のエパン450濃度としては75質量%をそれぞれ採用した。
第一の工程におけるユニットAとしては正浸透ユニットを、
第二の工程におけるセパレータAとしては遠心分離ユニットを、
第三の工程におけるセパレータBとしては、重力沈降のための凝集槽と、逆浸透膜と、から成る精製ユニットを、
それぞれ採用した。供給流aとしては海水を用い、その供給速度は120L/分とした。
浸透物質流dの流速は120L/分、熱相変化型ポリマー流kの流速は120L/分とした。
流れeの温度Te、熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および流れfの温度Tfを、それぞれ表1に記載のとおりに調整した時の、流れeの組成、熱相変化型ポリマー流kの組成、およびセパレーターAで分離した後の流れhの組成を調べ、流れeから流れhへの水の移動量(流れh中の水量と熱相変化型ポリマー流k中の水量との差)を確認した。ここで、Te、Tk、およびTfは、それぞれ、図1中の「第二の工程」において「Te」、「Tk」、および「Tf」と表記された矢印によって特定された黒点の位置で測定した。
実施例1〜4および比較例1における流れeの組成は、いずれも、全量30.0gに対して、
水:28.0g、
硫酸アンモニウム:2.0g
であった。その他の値は表1に示した。
Figure 0006211707
[実施例5〜8および比較例2]
実施例5〜8および比較例2は、浸透物質としてチオ硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムを使用し、浸透物資流d中のチオ硫酸ナトリウムの濃度として10質量%、亜硫酸ナトリウムの濃度として0.5質量%をそれぞれ採用したほかは、実施例1〜4および比較例1と同様の方法で実施し、
流れeの温度Te、熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および流れfの温度Tfを、それぞれ表2に記載のとおりに調整した時の、流れeから流れhへの水の移動量を確認した。
実施例5〜8および比較例2における流れeの組成は、いずれも、全量30.0gに対して、
水:28.0g、
チオ硫酸アンモニウムおよび亜硫酸アンモニウムの合計:2.0g
であった。その他の値は表2に示した。
Figure 0006211707
[実施例9〜12および比較例3]
実施例9〜12および比較例3は、図2に示したシステムを利用して実施した。
溶媒bとしては水を、
浸透物質として硫酸アンモニウムを、
熱相変化型ポリマーとしてはペポール(登録商標)AH−0673A(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーの片末端水酸基をアリル基で置換、数平均分子量2,000、東邦化学工業(株)製)を、それぞれ使用した。浸透物質流d中の硫酸アンモニウム濃度としては30質量%、熱相変化型ポリマー流k中のペポールAH−0673Aの濃度としては80質量%をそれぞれ採用した。
第一の工程におけるユニットAとしては正浸透ユニットを、
第二の工程における向流抽出装置は、塔径を5cm、充填材の充填塔高を3.5mとし、充填材として外径10mm、内径8mm、および長さ10mmのポリ塩化ビニル製の円筒形の充填材を用いた。第三の工程におけるセパレータBとしては、重力沈降のための凝集槽、および逆浸透膜から成る精製ユニットを採用した。供給流aとしては海水を用い、その供給速度は20mL/分とした。
浸透物質流dの流速は20mL/分、熱相変化型ポリマー流kの流速は20mL/分とした。
流れeの温度Te、熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および向流抽出装置S内の温度Tsを、それぞれ表3に記載のとおりに調整した時の、流れeの組成、熱相変化型ポリマー流kの組成、および向流抽出装置で分離した後の流れhの組成を調べ、流れeから流れhへの水の移動量(流れh中の水量と熱相変化型ポリマー流k中の水量との差)を確認した。ここで、Te、Tk、およびTsは、それぞれ、図2中の「第二の工程」において「Te」、「Tk」、および「Ts」と表記された矢印によって特定された黒点の位置で測定した。
実施例9〜12および比較例3における流れeの組成は、いずれも、全量30.0gに対して
水:22.8g、
硫酸アンモニウム:7.2g
であった。その他の値は表3に示した。
Figure 0006211707
[実施例13〜16および比較例4]
実施例13〜16および比較例4は、浸透物質としてチオ硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムを、熱相変化型ポリマーとしてはユニオックス(登録商標)AA−800(ポリエチレンオキサイドの両末端水酸基をアリル基で置換、数平均分子量800、日油(株)製)をそれぞれ使用し、浸透物資流d中のチオ硫酸ナトリウムの濃度として38質量%、および亜硫酸ナトリウムの濃度として0.5質量%を、
熱相変化型ポリマー流k中のユニオックスAA−800の濃度として70質量%を、
それぞれ採用したほかは、実施例9〜12及び比較例3と同様の方法で実施し、
流れeの温度Te、熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および向流抽出装置S内の温度Tsを、それぞれ表2に記載のとおりに調整した時の、流れeから流れhへの水の移動量を確認した。
実施例13〜16および比較例4における流れeの組成は、いずれも、全量30.0gに対して、
水:22.8g、
硫酸アンモニウム:7.2g
であった。その他の値は表4に示した。
Figure 0006211707
以上の実施例により、流れfの温度Tfまたは向流抽出装置S内の温度Tsを、熱相変化型ポリマー流kの温度Tkおよび流れeの温度Teよりも低く設定することにより、水の移動量において有利になることが示された。
しかしながら本発明のシステムを実際に稼働する時には、冷却のエネルギー、加熱のエネルギー、および動力のエネルギーが必要である。そこで、以下の実施例では、システム全体の消費エネルギーと、精製された水の量との関係性を調べた。
[実施例17および18]
本発明のシステムを使用して水を精製した時の、精製水単位量あたりのシステムの全消費エネルギーをシミュレーションした結果を示す。
表5が図1のシステムを使用して行った実施例17の結果であり、表6が図2のシステムを使用して行った実施例18の結果である。
Figure 0006211707
Figure 0006211707
本発明のシステムおよび方法は、無機・有機溶液から溶媒を回収することを目的とする分野において、好適に利用することができる。具体的には、例えば、海水の淡水化、生活排水の再生、工場排水の再生、油田・ガス田における随伴水からの水の回収などの分野で好適に利用できる。

Claims (15)

  1. 溶質および溶媒bを含有する供給流aを、
    浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流させ、前記供給流aに含有される溶媒bを前記半透膜oを通過させて浸透物質流dに移動させて流れeを得る第一の工程;
    溶媒bおよび浸透物質流dを含有する前記流れeを熱相変化型ポリマー流kと混合して流れfとした後、
    溶媒b、浸透物質流d、および熱相変化型ポリマー流kを含有する前記流れfを、
    浸透物質流dと、
    溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhと
    に分離する第二の工程;および
    前記流れhを加熱した後、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとに分離する第三の工程;
    を有する溶媒分離システムであって、
    前記溶媒bが水であり、
    前記第二の工程が、下記の条件(1)および(2):
    (1)混合前の熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および混合後の流れfの温度Tfが、Tk−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にある、
    (2)混合後の流れfの温度Tfが、該流れfの曇点以上である
    を同時に満足することを特徴とする、前記システム。
  2. 上記第二の工程において、さらに、
    混合前の流れeの温度Te、および混合後の流れfの温度Tfが、Te−Tf=0.1℃以上80℃以下の関係にある、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記熱相変化型ポリマー流kに含有される熱相変化型ポリマーが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーであって、
    その末端が水酸基であるか、または
    末端の水酸基のひとつ以上が、アルキル基、フェニル基、アリル基、およびアリール基から成る群より選択される一種以上の基で置換されている、請求項1または2に記載のシステム。
  4. 溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する前記流れhが、50℃以上200℃以下の間に曇点を有するものである、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
  5. 前記浸透物質流dに含有される浸透物質が、無機塩基、有機塩基、塩、イオン性ポリマー、イオン液体、非イオン性ポリマー、および有機化合物から成る群より選択される一種以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
  6. 前記第一の工程が正浸透プロセスによるものである、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載のシステムを使用して、無機化合物および有機化合物から選択される溶質と溶媒bとを含有する供給流aから溶媒bを分離することを特徴とする、溶媒の分離方法。
  8. 溶質および溶媒bを含有する供給流aを、
    浸透物質流dと半透膜oを介して向流または並流させ、前記供給流aに含有される溶媒bを前記半透膜oを通過させて浸透物質流dに移動させて流れeを得る第一の工程;
    溶媒bおよび浸透物質流dを含有する前記流れeと熱相変化型ポリマー流kを向流抽出装置Sに導入し、溶媒bを流れeから熱相変化型ポリマー流kに移動させて、
    浸透物質流dと、
    溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhと
    に分離する第二の工程;ならびに
    前記流れhを加熱した後、溶媒bと熱相変化型ポリマー流kとに分離する第三の工程
    を有する溶媒分離システムであって、
    前記溶媒bが水であり、
    前記第二の工程において、混合前の熱相変化型ポリマー流kの温度Tk、および向流抽出装置S内の温度Tsが、Tk−Ts=0.1℃以上80℃以下の関係にあることを特徴とする、前記システム
  9. 前記第二の工程において、混合前の流れeの温度Te、および向流抽出装置内の温度Tsが、Te−Ts=0.1℃以上80℃以下の関係にある、請求項に記載のシステム。
  10. 前記熱相変化型ポリマー流kに含有される熱相変化型ポリマーが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマーであって、
    その末端が水酸基であるか、または
    末端の水酸基のひとつ以上が、アルキル基、フェニル基、アリル基、およびアリール基から成る群より選択される一種以上の基で置換されている、請求項8または9に記載のシステム。
  11. 溶媒bおよび熱相変化型ポリマー流kを含有する流れhが、50℃以上200℃以下の間に曇点を有するものである、請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
  12. 前記浸透物質流dに含有される浸透物質が、無機塩基、有機塩基、塩、イオン性ポリマー、イオン液体、非イオン性ポリマー、および有機化合物から成る群より選択される一種以上である、請求項11のいずれか一項に記載のシステム。
  13. 前記第一の工程が正浸透プロセスによるものである、請求項12のいずれか一項に記載のシステム。
  14. 請求項13のいずれか一項に記載のシステムを使用して、無機化合物および有機化合物から選択される溶質と溶媒bとを含有する供給流aから溶媒bを分離することを特徴とする、溶媒の分離方法。
  15. 供給流aと浸透物質流dとが半透膜oを介して向流または並流する構造を有し、
    前記供給流aの注入口、および供給流aが浸透物質流dと前記半透膜oを介して向流または並流した後の流れcの排出口、ならびに前記浸透物質流dの注入口、および浸透物質流dが供給流a前記半透膜oを介して向流または並流した後の流れeの排出口を有するユニットA;
    流れeと熱相変化型ポリマー流kとを向流させ、前記流れe中の溶媒bを前記熱相変化型ポリマー流kへと抽出して流れhとする構造を有し、
    前記流れeの注入口および抽出後の流れeの排出口、ならびに熱相変化型ポリマー流kの注入口、および流れhの排出口を有し、かつ、温度調節機能を有する向流抽出装置S;ならびに
    前記流れhを加熱するための熱交換器q2、およびセパレーターBを有し、
    前記セパレーターBは、前記流れhを、熱相変化型ポリマー流kと、溶媒bとに分離する機能を有し、そして該セパレーターは、前記流れhの注入口と、前記熱相変化型ポリマー流kの排出口と、前記溶媒bの排出口と、を有するユニットB;を有し、そして、
    請求項8〜13のいずれか一項に記載のシステムに使用されることを特徴とする、溶媒分離装置。
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