JP2017147217A - レドックスフロー電池用電解液およびそれを用いたレドックスフロー電池 - Google Patents

レドックスフロー電池用電解液およびそれを用いたレドックスフロー電池 Download PDF

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Abstract

【課題】バナジウムイオンの化学安定性が高く、レドックスフロー電池の高エネルギー密度化に寄与することができる電解液およびそれを用いたレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】バナジウムイオンを含む水溶液に、下記式Iで表されるジスルホン酸化合物または下記式IIで表されるジホスホン酸化合物、あるいはそれらの水和物もしくは塩から選択される添加剤が少なくとも1種添加されていることを特徴とする、レドックスフロー電池用電解液。
Figure 2017147217

(上記式I中のR1および式II中のR2はそれぞれ、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を示す)
【選択図】なし

Description

本発明は、レドックスフロー電池用電解液およびそれを用いたレドックスフロー電池に関する。
レドックスフロー電池は、活物質であるレドックス対を含む電解液を電池の外部から供給し、正負極上で酸化還元することにより充放電を行う二次電池である。特にレドックス対としてバナジウムイオンを用い、正極でV5+/V4+、負極でV2+/V3+の酸化還元反応を利用するバナジウム系レドックスフロー電池は、長寿命、高い安全性、大容量化が容易という利点によりすでに実用化されているが、電力系統への本格的な導入に向けてエネルギー密度の向上が課題となっている。エネルギー密度の向上には、バナジウムイオンの高濃度化が有効であるが、既存の硫酸バナジウム系電解液(約1.5M)では、バナジウムイオンを高濃度化すると高温(約50℃)でV5+が析出しやすいという問題がある。
バナジウム化合物の析出を防ぐための電解液として、特許文献1には、バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンを含有する硫酸水溶液に、保護コロイド剤、オキソ酸、錯化剤などの添加剤を添加してなる電解液が開示されている。
しかしながら、今なお、高温下でもV5+が析出しにくく、レドックスフロー電池の高エネルギー密度化を実現できる電解液が求められている。
特開平8−64223号公報
したがって、本発明は、バナジウムイオン濃度が高くてもV5+の化学安定性が高く、レドックスフロー電池の高エネルギー密度化に寄与することができるレドックスフロー電池用の電解液およびそれを用いたレドックスフロー電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、バナジウム電解液に、特定のジスルホン酸化合物またはジホスホン酸化合物を添加することにより、高温でもV5+を安定化することができることを見い出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、レドックスフロー電池用電解液であって、
バナジウムイオンを含む水溶液に、下記式Iで表されるジスルホン酸化合物または下記式IIで表されるジホスホン酸化合物、あるいはそれらの水和物もしくは塩から選択される添加剤が少なくとも1種添加されていることを特徴とする。
Figure 2017147217
(上記式I中のR1および式II中のR2はそれぞれ、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を示す)
なお、本発明においてバナジウムイオンとは、V2+、V3+、V4+、V5+の他、VO2+、VO2 +等を含む意味で用いられる。
前記R1およびR2は、炭素原子数1〜6のアルキレン基であることがより好ましい。
好ましい式Iの化合物として、R1がエチレン基(−CH2CH2−)である1,2-エタンジスルホン酸およびR1がプロピレン基(−CH2CH2CH2−)である1,3-プロパンジスルホン酸が挙げられ、好ましい式IIの化合物として、R2がメチレン基(−CH2−)であるメチレンジホスホン酸が挙げられる。
また本発明は、前記電解液を含むことを特徴とするレドックスフロー電池に関する。
本発明によれば、高温下でも、高濃度のV5+を安定に保つことができる電解液を提供することができるため、高エネルギー密度のレドックスフロー電池の実現が可能となる。
図1は、バナジウムレドックスフロー電池を模式的に示す図である。 図2は、1,3-プロパンジスルホン酸(PDSA)を添加した電解液を用いたレドックスフロー電池の初回充放電曲線を示す図である。 図3は、PDSAを添加した電解液を用いたレドックスフロー電池の充放電サイクル特性を示す図である。 図4は、硫酸を添加した電解液を用いたレドックスフロー電池の初回充放電曲線を示す図である。 図5は、硫酸を添加した電解液を用いたレドックスフロー電池の充放電サイクル特性を示す図である。
本発明は、活物質にバナジウムを用いたバナジウム系レドックスフロー電池に関する。レドックスフロー電池は、隔膜により分離された正極セル室と負極セル室を有する電解セルと、V5+/V4+(VO2 +/VO2+)のバナジウムイオンを含む電解液(正極液)を貯液するタンク(正極液タンク)と、V3+/V2+のバナジウムイオンを含む電解液(負極液)を貯液するタンク(負極液タンク)を有し、正極液を正極液タンクから正極セル室に循環させるため、および、負極液を負極液タンクから負極セル室に循環させるための送液装置(送液管とポンプ等)を有する(図1参照)。
レドックスフロー電池に電流を流すと、正極セル室内の正極と、負極セル室内の負極において、バナジウムの価数変化を伴う電池反応が起こり、隔膜を介してプロトンが移動する。
つまり、充電時には、負極液タンクのV3+含有水溶液が、負極セル室に送られ、負極で電子を受け取り、V2+に還元されて、負極液タンクに回収され、他方、正極液タンクのV4+(VO2+)含有水溶液が正極セル室に送られ、正極において外部回路に電子を放出して、V5+(VO2 +)に酸化され、正極液タンクに回収される。この反応により、正極セル室ではプロトン(H+)が過剰になるが、正極セル室の過剰なプロトンが隔膜を経て選択的に負極セル室に移動することで、電気的中性が保たれる。
放電時には、負極液タンクのV2+含有水溶液が、負極セル室に送られ、負極において外部回路に電子を放出して、V3+に酸化され、負極液タンクに回収され、他方、正極液タンクのV5+(VO2 +)含有水溶液が、正極セル室に送られ、正極において外部回路から電子を受け取り、V4+(VO2+)に還元され、正極液タンクに回収される。
まとめると、以下のような、正極、負極におけるイオン価数の変化によって充放電が行われる。
Figure 2017147217
従来の正極液および負極液(バナジウムイオンを含有する硫酸水溶液)を調製する方法としては、酸化硫酸バナジウム(VOSO4)とH2SO4を水に溶解して4価のバナジウムイオン溶液(正極液)を調製した後、それを電解することにより、3価のバナジウムイオンを含む負極液を調製する方法が一般的である。すなわち、正極液と負極液は、バナジウムイオンの価数を除いて同じ組成となる。このように正極液と負極液の組成を統一することにより、浸透圧による隔膜のイオン透過量を最小限にすることができ、さらに、充放電の繰り返しにより、電解液の組成が変化したとしても、正極液と負極液を混合することにより液の組成を容易に初期化することができる。
しかしながら、バナジウムイオンは、価数により安定性が異なることが知られているため、同じ組成の電解液で2〜5価のバナジウムイオンを全て安定化するのは困難である。具体的には、2価、3価、4価のバナジウムイオンは、低温(約−5℃)で析出が顕著になり、且つ硫酸の添加により安定性が低下する(バナジウム化合物として析出しやすくなる)。他方、5価のバナジウムイオンは高温(約50℃)で析出が顕著になり、且つ硫酸の添加により安定性が向上する。バナジウムイオンがバナジウム化合物として析出すると、電池容量の低下あるいは電池がうまく動作しないという問題があるため、バナジウムレドックスフロー電池にとってバナジウムイオンを安定に保つことは重要であるが、上述のようにバナジウムイオンを安定に保つ条件はバナジウムイオンの価数によって異なるため、硫酸濃度の調節だけで2〜5価のバナジウムイオン全てを安定に保つことは困難である。特に、バナジウムイオン濃度を上げると、5価のバナジウムイオンが、五酸化バナジウム(V25)として析出しやすい。そのため、従来の電解液(硫酸水溶液)では、バナジウム化合物の析出を防ぐために、バナジウムイオンの濃度を低く(1.5mol/L程度)せざるを得なかった。
これに対し、本発明の電解液では、下記構造式で表されるジスルホン酸化合物またはジホスホン酸化合物(これらは水和物もしくは塩の形態であってもよい)から選択される添加剤を添加することによって、2〜4価のバナジウムイオンの低温安定性および5価のバナジウムイオンの高温安定性の両方を良好に保つことができる。
Figure 2017147217
上記式I中のR1および式II中のR2はそれぞれ、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基である。2つの−SO3H基または2つの−PO32基がアルキレン基でつながれていることにより、本発明の添加剤は加水分解を受けにくいため、酸による副反応が生じにくい。水への溶解度を考慮すると、R1およびR2はそれぞれ、炭素原子数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキレン基であることがより好ましい。
特に好ましい式Iの化合物として、R1がエチレン基(−CH2CH2−)である1,2-エタンジスルホン酸およびR1がプロピレン基(−CH2CH2CH2−)である1,3-プロパンジスルホン酸が挙げられ、特に好ましい式IIの化合物として、R2がメチレン基(−CH2−)であるメチレンジホスホン酸が挙げられる。
前記ジスルホン酸化合物またはジホスホン酸化合物の形態は特に限定されないが、酸の形で添加することもできるし、塩として添加することもできる。またはこれらの水和物を添加してもよい。ジスルホン酸化合物またはジホスホン酸化合物の塩としては、特に限定されるものではないが、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩などを例示することができる。塩として添加する場合、電解液の酸性を保つために別途硫酸などの酸が加えられる。
上述した従来の電解液(硫酸水溶液)において、硫酸の濃度を上げると4価のバナジウムイオンが不安定になるのは、下記のように、酸化硫酸バナジウム(VOSO4)と硫酸(H2SO4)が共に硫酸イオン(SO4 2-)を生じるため、硫酸の濃度を上げると、共通イオン効果によって、上段の平衡反応が左にシフトするためと考えられる。また、2価、3価のバナジウムイオンも、硫酸濃度を上げると硫酸バナジウム化合物(V2(SO4)3等)が析出しやすくなることが報告されている。
Figure 2017147217
これに対し、本発明の添加剤は、硫酸イオンを生じないため、共通イオン効果は生じず、且つスルホン酸またはホスホン酸の−OH基がプロトン解離を起こして負に帯電し、バナジウムイオンに配位するため、バナジウムイオンの安定性向上に寄与すると考えられる。
また、上述した従来の電解液(硫酸水溶液)中で、5価のバナジウムイオン化合物(V25)が析出するメカニズムは、以下に示す脱プロトン化とそれに続く脱水縮合が原因と考えられる。
Figure 2017147217
これに対して、本発明では、ジスルホン酸またはジホスホン酸化合物の−OH基がプロトン解離を起こして酸強度が増加するため、上記脱プロトン化の平衡反応が左にシフトし(脱プロトン化が抑制される)、且つ、上記と同様に、スルホン酸またはホスホン酸の−OH基がプロトン解離を起こして負に帯電し、バナジウムイオンに配位するため、バナジウムイオンの安定性向上に寄与すると考えられる。
レドックスフロー電池において、電解液中のバナジウムイオンの高濃度化がエネルギー密度の向上に有効であることが知られているが、上述の通り、従来の硫酸水溶液からなる電解液では、バナジウムイオンを高濃度(約2M以上)にすると、5価のバナジウムイオン化合物である五酸化バナジウム(V25)が高温下で析出しやすくなるため、電池容量の低下あるいは電池の動作不良が生じやすかった。
これに対し、本発明の電解液は、バナジウムイオンの濃度を高めても、2〜4価のバナジウムイオンだけでなく、5価のバナジウムイオンも安定に保つことができるため、エネルギー密度の高いバナジウムレドックスフロー電池を実現することができる。
本発明の電解液は、水(超純水、蒸留水、イオン交換水等)に、バナジウムイオンを生じるバナジウム原料と、本発明に係る添加剤を添加することによって調製することができる。バナジウム原料としては、従来と同様、水への溶解度が高い酸化硫酸バナジウム(VOSO4・nH2O)を用いることができる。したがって、本発明の添加剤自体は硫酸イオンを生じないが、本発明の電解液は、硫酸イオンを含んでいてもよい。また、本発明の電解液は、本発明に係る添加剤に加えて、硫酸等の酸が添加されていてもよい。
本発明の電解液において、バナジウムイオンの濃度は、1.5mol/L以上10mol/L以下、好ましくは2mol/L以上5mol/L以下である。1.5mol/L未満ではエネルギー密度の点で不十分であり、10mol/Lを超える濃度の場合、電解液の流動性が低下するなどの不具合が生じる可能性がある。
本発明の電解液において、ジスルホン酸化合物またはジホスホン酸化合物の添加量はバナジウムイオンに対して、モル比で0.01倍以上、5倍以下、好ましくは0.25倍以上、2倍以下である。0.01倍未満の場合、添加効果は実用的でないほど低く、5倍を超えて添加しても、過剰に添加した分の効果は小さい。
本発明の電解液は、正極液としても負極液としても使用できる。正極液を調製する方法として、水に、酸化硫酸バナジウムと本発明の添加剤を添加して混合し、四価のバナジウムイオンを含む電解液(正極液)を調製する方法が挙げられ、負極液を調製する方法として、前述のように四価のバナジウムイオンを含む電解液を調製した後、電解を行うことによって、三価のバナジウムイオンを含む電解液(負極液)を得る方法が挙げられる。電解を行うための装置や電解の条件は当該分野において周知である。
本発明のレドックスフロー電池の構成は、電解液(正極液および負極液)以外は、一般的なレドックスフロー電池と同じ構成とすることができる。例えば、正極および負極としては、炭素繊維等から成る炭素電極を使用することができ、正極および負極はそれぞれ導線と接続され、導線の先には、電気負荷が接続される。正極セル室と負極セル室とを隔離する隔膜としては、水素イオンは透過させるがバナジウムイオンは透過させない(あるいは透過させにくい)イオン交換膜が使用できる。正極の電解液(正極液)を貯蔵する正極液タンクと、負極の電解液(負極液)を貯蔵する負極液タンクのうち、正極液タンクは、正極液の送液管および回収管(正極液の流路)を介して正極セル室と連通され、負極液タンクは負極液の送液管および回収管(負極液の流路)を介して負極セル室と連通される。それぞれの流路には、各電解液を循環させるためのポンプが設けられる。なお、図1では、説明の便宜のため、電解セルが1つの例を示しているが、通常は複数の電解セルを直列接続することにより構成したセルスタックが用いられる。また、レドックスフロー電池によって生じた電流は、交直変換装置を介して、直流から交流に変換されてもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1]バナジウム4価イオン含有電解液の調製および低温安定性評価試験
「電解液の調製]
酸化硫酸バナジウム水和物、および、添加剤として、式IIの化合物であるメチレンジホスホン酸(MDP)、または、式Iの化合物であるエタンジスルホン酸二水和物(EDSA)あるいは1,3−プロパンジスルホン酸(PDSA)を所定量秤量し、超純水に溶解させて、表1に示す組成の電解液(バナジウム4価イオン含有)を調製した。
また、添加剤として、二リン酸あるいは硫酸を使用した以外は、上記と同じ手順にて、表1に示す組成の電解液を調製した。
使用した試薬の詳細は、以下の通りである。
・酸化硫酸バナジウム水和物:VOSO4・nH2O、99.9%、和光純薬工業株式会社製
・メチレンジホスホン酸:CH2(PO32)2、97%、和光純薬工業株式会社製
・エタンジスルホン酸二水和物:C24(SO3H)2・2H2O、95%、東京化成工業株式会社製
・1,3−プロパンジスルホン酸:C36(SO3H)2、東ソー有機化学株式会社製
・二リン酸:H427、78〜79%、和光純薬工業株式会社製
[安定性評価]
調製した各電解液10mLをポリプロピレン製容器(50mL)に入れた。その容器をマイナス5℃に設定した小型環境試験器(エスペック株式会社製、SU221型)内で静置させた。試験開始後、1時間、6時間、12時間、24時間、以降24時間おきに最長168時間まで、析出物の有無の確認を目視で行った。調製した電解液中で析出物が生成するまでの時間を表1に示す。なお、V4+濃度が2mol/L・硫酸濃度が5mol/Lの電解液も調製したが、電解液中に酸化硫酸バナジウムが完全に溶解せず、最初から析出物が存在する状態となったため、その後の試験は行わなかった。
Figure 2017147217
表1に示す通り、バナジウム4価イオン濃度が2mol/Lまでは、MDP(No.1)、EDSA(No.2)、PDSA(No.6〜10)とも従来例の硫酸(No.12〜14)と同程度の低温安定性を示した。また、EDSAではバナジウム4価イオン濃度を3mol/Lまで増加させても(No.3およびNo.4)、安定性が168時間以上であり、高い低温安定性が得られることが分かった。
また、二リン酸を添加した電解液(No.11)も、2mol/Lのバナジウム4価イオンを、168時間以上安定に保つことができた。
[実施例2]バナジウム5価イオン含有電解液の調製および高温安定性評価試験
「電解液の調製]
実施例1と同様に、バナジウム4価イオン電解液を調製した後、電気分解を行い、表2に示す組成を有するバナジウム5価イオン電解液を得た。電気分解時に用いるセルは、集電体にカーボンプレート(SGLカーボンジャパン株式会社製、BMA5)、電極にはカーボンフェルト(SGLカーボンジャパン株式会社製、GFA10型)、イオン交換膜(隔膜)にはNafion(登録商標)117(デュポン株式会社製)を用いた。ともに同組成の正極用電解液、負極用電解液を正極側および負極側ポリ塩化ビニル製電解液タンクに入れ、送液ポンプを用いて、それぞれの電解液タンクからセルへ電解液を循環させ、充放電装置(北斗電工、HJ1001SD8型)にて電気分解を行った。正極用電解液および負極用電解液の液量はそれぞれ20mL、25mLとし、0.2Aの一定電流で、上限電位1.9Vまで電解することにより、正極用電解液に含まれるバナジウム4価イオンを、バナジウム5価イオンに酸化した。
[安定性評価]
電気分解で得られたバナジウム5価イオン電解液(正極液)20mLを50mLポリプロピレン製容器に入れ、液温が50℃となるようウォーターバス中で静置させ、高温安定性評価試験を行った。試験開始後、5分、10分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、以降12時間おきに最長168時間まで析出物有無の確認を目視で行った。表2に、調製した電解液中で析出物が生成するまでの時間を示す。
Figure 2017147217
バナジウム5価イオンの析出物生成が見られる時間は、二リン酸を除くいずれの添加物でも、濃度が高くなるほど長くなる傾向が見られるが、硫酸4mol/L添加(No.24)の時の36時間に比べて、MDPでは0.5mol/L添加(No.15)で96時間、EDSAでは2mol/L添加(No.17)で84時間、2.5mol/L添加(No.18)で168時間以上、PDSAでは2.5mol/L添加(No.19)で48時間、3mol/L添加(No.20)で168時間以上の安定性を示し、硫酸を超える高温安定性が得られた。
なお二リン酸を添加した電解液(No.21)では、バナジウム4価イオンをバナジウム5価イオンに酸化するための電気分解中に、正極側に緑色析出物が発生した。これは、二リン酸(H427)のP−O−P結合が加水分解されてリン酸(H3PO4)を生じ、その結果、酸化リン酸バナジウム(VOPO4・2H2O)が生成されたためと考えられる。
これに対し、MDPでは、2つの−PO32基が酸素原子ではなく、アルキレン基で結合されているため加水分解が生じにくい(すなわち、リン酸が生じにくい)ため、このような不都合が生じないと考えられる。
上記実施例1および2の結果から、式Iまたは式IIの化合物が、バナジウムイオン含有電解液中で、価数の異なるバナジウムイオンを安定に保つのに役立ち、低温でも高温でも析出物の発生を抑制できることが分かった。したがって、式Iおよび式IIの化合物を添加すれば、バナジウムイオンを高濃度化しても析出物が発生しにくくなるため、本発明の電解液を使用することにより、バナジウムレドックスフロー電池の高エネルギー密度化が可能となる。
[実施例3]レドックスフロー電池の充放電試験
[バナジウム3価イオン電解液の調製]
実施例1で調製したバナジウム4価イオンを含む電解液(No.10、VOSO:2mol/L、PDSA:3mol/L)を実施例2で用いたセルを用いて電気分解し、バナジウム3価イオンを含む電解液を調製した。正極用電解液および負極用電解液の液量はそれぞれは35mL、30mLとし、0.2Aの一定電流で、上限電圧1.9Vまで電解することにより、負極用電解液中に含まれるバナジウム4価イオンを、バナジウム3価イオン(V3+:2mol/L、PDSA:3mol/L)に還元した。
[充放電試験]
実施例2で用いたセルを用いて、バナジウムレドックスフロー電池を作成し、充放電試験を行った。負極用電解液として調製したバナジウム3価イオンを含む電解液(V3+:2mol/L、PDSA:3mol/L)を負極用電解液タンクに20mL充填し、また正極用電解液としてバナジウム4価イオンを含む電解液(表1のNo.10)を正極用電解液タンクに20mL充填し、0.2Aの一定電流で、上限電圧1.9V、下限電圧0.8Vの条件で充放電試験を行った。初回サイクルの充放電曲線および充放電特性データをそれぞれ図2、表3にまとめる。また、5サイクルまでのサイクル特性および充放電特性データをそれぞれ図3、表4にまとめる。
Figure 2017147217
Figure 2017147217
初回充放電では図2に示すようにバナジウムレドックスフロー電池に特有の充放電曲線が得られた。また初回クーロン効率は約94%と高い値が得られた。2サイクル目以降でも良好なサイクル特性が得られ、平均クーロン効率は97.0%、容量維持率は99.2%と優れたサイクル特性が得られることがわかった。
[比較例1]従来の電解液(硫酸添加)を用いたレドックスフロー電池の充放電試験
[バナジウム3価イオン電解液の調製]
実施例1で調製したバナジウム4価イオンを含む電解液(No.13、VOSO4:2mol/L、H2SO4:3mol/L)を実施例2で用いたセルを用いて電気分解を行い、バナジウム3価イオンを含む電解液を調製した。正極用電解液及び負極用電解液の液量はそれぞれ35mL、30mLとし、0.2Aの一定電流で、上限電圧1.9Vまで電解することにより、負極用電解液中に含まれるバナジウム4価イオンを、バナジウム3価イオン(V3+:2mol/L、H2SO4:3mol/L)に還元した。
[充放電試験]
実施例2で用いたセルを用いて、バナジウムレドックスフロー電池を作成し、充放電試験を行った。負極用電解液として調製したバナジウム3価イオンを含む電解液(V3+:2mol/L、H2SO4:3mol/L)を負極用電解液タンクに20mL充填し、また正極用電解液としてバナジウム4価イオンを含む電解液(表1のNo.13)を正極用電解液タンクに20mL充填し、0.2Aの一定電流で、上限電圧1.9V、下限電圧0.8Vの条件で充放電試験を行った。初回サイクルの充放電曲線および充放電特性データをそれぞれ図4、表5にまとめる。また、5サイクルまでのサイクル特性および充放電特性データをそれぞれ図5、表6にまとめる。
Figure 2017147217
Figure 2017147217
比較例1の結果から分かるように、硫酸を添加した電解液を用いた場合には、過電圧は若干低くなり、初回放電容量も若干向上するものの、初回クーロン効率は88.9%とPDSAを添加した場合に比べて低かった。また、2サイクル目以降ではサイクルとともに放電容量が低下し、5サイクル目の容量維持率は91.6%と低かった。これは実施例2の硫酸を添加したバナジウム5価イオンを含む電解液の安定性(No.23)からも示されるように、高濃度のバナジウム5価イオンの安定性が低く、充電時に正極で析出物が生成するためと考えられる。
実施例3および比較例1の結果から、本発明の電解液が、従来の電解液(硫酸添加)と比べて、電解液中のバナジウムイオンを安定に保つことができ、充放電サイクル特性を改善できることが分かった。

Claims (4)

  1. バナジウムイオンを含む水溶液に、下記式Iで表されるジスルホン酸化合物または下記式IIで表されるジホスホン酸化合物、あるいはそれらの水和物もしくは塩から選択される添加剤が少なくとも1種添加されていることを特徴とする、レドックスフロー電池用電解液。
    Figure 2017147217
    (上記式I中のR1および式II中のR2はそれぞれ、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を示す)
  2. 前記R1およびR2が、炭素原子数1〜6のアルキレン基である、請求項1に記載のレドックスフロー電池用電解液。
  3. 式Iの化合物が1,2-エタンジスルホン酸及び/又は1,3-プロパンジスルホン酸であり、式IIの化合物がメチレンジホスホン酸である、請求項1に記載のレドックスフロー電池用電解液。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液を含むことを特徴とする、レドックスフロー電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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