以下、図面に沿って、本実施の形態に係る車両用駆動装置1について説明する。
図1は、本車両用駆動装置1を示すブロック図である。車両用駆動装置1は、図1に示すように、駆動源としてのエンジン2に駆動連結されるトルクコンバータ3と、トルクコンバータ3を介して伝達されるエンジン2の動力を変速して車輪4に伝達するトランスミッション(変速装置)5と、を備える。トランスミッション5は、内部に多板クラッチ及び多板ブレーキ等の複数の係合要素を有する多段式自動変速装置であり、係合する係合要素を切り換え、動力が伝達される伝達経路を変更することによって、エンジン2の動力を変速する。なお、トランスミッション5は、多段式自動変速装置に限らず、ベルト式自動無段変速装置、トロイダル式自動変速装置などであってもよい。
また、車両用駆動装置1は、エンジン2の動力によって油圧を発生する油圧ポンプ6と、トルクコンバータ3の循環油圧及び係合要素に供給される作動油圧Pc(図7参照)等を油圧制御するバルブボディ(油圧制御装置)7と、を備える。そして、車両用駆動装置1は、車両の走行速度を計測する回転センサ、スロットル開度を検出するスロットルセンサ及び油温を検出する油温センサ8等の各種センサからの情報に応じてバルブボディ7を電子制御する電子制御装置であるECU(制御部)9を備える。ECU9には、各種演算を実行するCPU9a、演算結果や信号等を一時記憶するRAM9b、各種プログラム等が記録されている記憶装置であるROM9c、バルブボディ7の後述する各種ソレノイドバルブやアキュムレータ11のソレノイドバルブSA等に接続されるインターフェース(I/F)9d等が備えられている。
図2は、ECU9によって制御されるバルブボディ7内部の油圧経路及びトランスミッション5内部の油圧経路を示す油圧回路図である。バルブボディ7は、図2に示すように、油圧ポンプ6から油が供給される油路(第1油路)L1に接続されたプライマリレギュレータバルブPBを有する。プライマリレギュレータバルブPBには、スプリングで付勢されている不図示のスプールが設けられており、バルブボディ7に設けられたリニアソレノイドバルブSLTから供給される制御圧によりスプールが移動することによって、油路L1と、油路L1とは別にプライマリレギュレータバルブPBに接続される油路L2と、の連通割合が変化する。ECU9は、例えば、スロットル開度などの情報に基づいてリニアソレノイドバルブSLTを制御して、油路L1と油路L2との連通割合を調整することによって、油路L1から油路L2に送られる油を調整し、油路L1の油圧をライン圧PL(図5参照)に調圧する。ECU9は、油路L1とトランスミッション5の係合要素10に接続される油路L3との間に配設されたリニアソレノイドバルブSLCを制御することによって、係合要素10に供給される作動油圧Pc(図7参照)の油圧制御を行う。
バルブボディ7には、ライン圧PLの油が充填されることで油圧を蓄圧する蓄圧装置であるアキュムレータ11が接続されている。本車両用駆動装置1のアキュムレータ11には、例えば、スプリング式のアキュムレータが用いられているが、油を充填する際に内部に設けられたゴム袋の中に封入されたガスが圧縮され、吐出する際、そのガスの膨張力によって内部の油を吐出するガス封入式などであってもよい。
アキュムレータ11は、筒形状のシリンダ11Aを有しており、シリンダ11Aには、摺動自在にピストン11Cが嵌挿されて、ピストン11Cがシリンダ11Aの底面に支持されたスプリング11Dにより付勢されつつ移動自在に配置されていることにより、油を蓄圧可能な蓄圧部11Bが形成されている。
バルブボディ7のライン圧PLが供給される油路L1とアキュムレータ11の蓄圧部11Bとを繋ぐ油路(第2油路)L4上には、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブ(切換え装置)SAが介在するように設けられている。ソレノイドバルブSAは、ECU9からの制御信号に基づき、油路L4を開閉自在に制御され、バルブボディ7と蓄圧部11Bとの間を開放して蓄圧部11Bに油を充填する充填状態及び蓄圧部11Bの油を吐出する吐出状態にする連通状態(ON状態)と、バルブボディ7と蓄圧部11Bとの間を遮断して蓄圧部11Bの油を保持する保持状態にする遮断状態(OFF状態)と、に切り換え可能に構成されている。アキュムレータ11は、ソレノイドバルブSAが連通状態であり、かつエンジン2が作動している場合、油圧ポンプ6がエンジン2により作動されているので、バルブボディ7から油路L4を介してライン圧PLが供給され、その油圧によってピストン11C及びスプリング11Dが押圧され、蓄圧部11Bに油が充填、蓄圧される。本明細書では、ソレノイドバルブSAが連通状態であり、かつエンジン2が作動し油圧ポンプ6が作動している状態であることで、バルブボディ7からライン圧PLで蓄圧部11Bに油が充填される状態のことを充填状態という。
また、アキュムレータ11は、ソレノイドバルブSAが連通状態であり、かつエンジン2が停止した状態である場合、相対的にバルブボディ7の油路L1の油圧が蓄圧部11Bの油圧よりも低いので、スプリング11Dの付勢力に押されるピストン11Cによって蓄圧部11Bに蓄圧されていた油が油路L4を介してバルブボディ7の油路L1に向かって押し出されて吐出される。本明細書では、ソレノイドバルブSAが連通状態であり、エンジン2が停止している状態であることで、アキュムレータ11内の油が吐出される状態のことを吐出状態という。このように、アキュムレータ11は、バルブボディ7に連通した油路L4を介して蓄圧部11Bに蓄圧した油をバルブボディ7に供給可能に構成されている。
そして、アキュムレータ11は、ソレノイドバルブSAが遮断状態である場合には、スプリング11Dの付勢力が蓄圧部11Bの油をバルブボディ7に向けて吐出する方向に働くが、ソレノイドバルブSAによって蓄圧部11Bの油の吐出が止められ、蓄圧部11Bに油が基本的に保持される。本明細書では、ソレノイドバルブSAが遮断状態であることで、蓄圧部11Bに油が保持される状態のことを保持状態という。なお、ソレノイドバルブSAは、イグニッションがOFFされて通電が遮断された場合に蓄圧部11Bに油を閉じ込める方が消費電力等の観点から好ましいので、ノーマルクローズタイプを用いているが、ノーマルオープンタイプを用いても構わない。
ところで、蓄圧部11Bには、ソレノイドバルブSAが遮断状態で蓄圧部11Bに油を保持している場合にあっても、蓄圧部11Bを密閉するために設けられている不図示のシールリングやガスケットから僅かながら油の漏れが発生する。従って、上記保持状態であっても、蓄圧部11Bの油圧は僅かずつであるが下降する。なお、このように漏れた油は、トルクコンバータ3、トランスミッション5、バルブボディ7及びアキュムレータ11を収容するミッションケースの下部に設けられたオイルパン12(図2参照)によって漏れた油が回収され、ミッションケースの外に油が漏れることが防止されている。
バルブボディ7からアキュムレータ11に油が充填される際においては、油温に応じて単位時間当たりに蓄圧部11Bに充填される油に応じた圧力上昇の勾配に変化が生じる。具体的には、油温が高い場合には、油の粘性が低くなり、単位時間当たりの圧力上昇の勾配が大きくなる。また、油温が低い場合には、油の粘性が高くなり、単位時間当たりの圧力上昇の勾配が小さくなる。なお、蓄圧部11Bから吐出される油に応じた圧力降下の勾配や、ソレノイドバルブSAが遮断状態であり蓄圧部11Bに油が保持されている際に蓄圧部11Bから漏れる油に応じた圧力降下の勾配についても同様に、油温が高い場合には単位時間当たりの圧力降下の勾配が大きく、油温が低い場合には単位時間当たりの圧力降下の勾配が小さくなっている。
次に、図3を参照して、ECU9が実行する各種処理について説明する。図3は、ECU9による充填状態、保持状態及び吐出状態の間でアキュムレータ11の状態を移行させる際に実行する状態制御処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、ECU9は、まず、蓄圧部11Bの油の吐出を要求する吐出要求を検出しているか否かを判定する(S1)。この処理において、ECU9は、例えば、車両がアイドリングストップした状態における運転手からの発進要求を検出した場合に検出される吐出要求を検出したか否かを判定する。
ステップS1の処理において、吐出要求が検出されないと判定した場合に(No)、ECU9は、吐出状態に移行する必要がないと判断し、充填状態に移行すべきか否かを判定するための処理を開始する。ECU9は、後述する油圧の推定演算によって推定される蓄圧部11Bの油圧である推定油圧Pa(図5参照)が、蓄圧部11Bへの油の充填が必要であると判断する基準値である閾値Pmin2(図5参照)より低いか否かを判定する(S2)。
ECU9は、蓄圧部11Bの油圧が一定の圧力より低い状態で、蓄圧部11Bの油をバルブボディ7に吐出して係合要素を係合する制御を実行すると、蓄圧部11Bに蓄圧されていた油では足りず、係合要素を係合できない虞があることから、係合要素の係合に必要な油圧であり、トランスミッション5を油圧制御可能と判断する第3設定圧として、閾値Pmin1(図5参照)が設定されている。しかし、蓄圧部11Bの油圧は、蓄圧部11Bへの油の充填がECU9によって決定されてから実際に油の充填が開始されるまでの間のタイムラグにおいても油の漏れによって下降する。例えば、ECU9は、クラッチを開放してエンジン2から車輪4への動力の伝達を遮断して惰性走行が行われている間、蓄圧部11Bへの充填を開始できないために、蓄圧部11Bへの油の充填がECU9によって決定されてから実際に油の充填が開始されるまでの間にタイムラグが発生する。
ECU9は、下り坂等での走行において、クラッチを開放してエンジン2から車輪4への動力の伝達を遮断して惰性走行し、エンジン2の回転速度を低下させることにより、燃費向上を図ることができる。この場合に、ECU9は、前進走行のために係合が必要な複数のクラッチのうち少なくとも1つのクラッチを予め係合させておき、惰性走行を解除すると判定してから残りのクラッチを係合させることにより、速やかにエンジン2と車輪4を連結させて、エンジン2から車輪4への動力の伝達を開始させることができる。しかしながら、惰性走行時は、エンジン2の回転速度が低下することにより油圧ポンプ6の油の吐出量が低下するので、アキュムレータ11への充填が実行されると、油の需要量が増加してライン圧PLが低下する虞がある。このために、ECU9は、惰性走行の間蓄圧部11Bへの油の充填を行うことができず、蓄圧部11Bへの油の充填を決定してから実際に油の充填が開始されるまでの間にタイムラグが発生する。また、後述するように、ECU9は、蓄圧部11Bに油を充填する際に、ライン圧PLを上昇させてからソレノイドバルブSAを連通状態に切り換えるので、ライン圧PLを上昇させる時間及び実際にソレノイドバルブSAが連通状態になるまでの時間によるタイムラグも発生する。ECU9では、これらのタイムラグの合計を30秒と想定し、このタイムラグの間に下降する油圧を考慮し、閾値Pmin1よりも圧力ΔPmin高く設定された閾値Pmin2が充填状態の開始を判断する基準値として設定されている。そして、圧力ΔPminは、30秒の間に低下すると想定される蓄圧部11Bの油圧が設定されている。このように、ECU9は、ECU9がソレノイドバルブSAにより充填状態に切り換えると判定してから蓄圧部11Bへの油の充填が開始されるまでの時間に応じて圧力ΔPminを設定するので、圧力ΔPminを過剰に高い圧力に設定することを防いで蓄圧部11Bへの油の充填回数の増加を防ぎつつ、推定した蓄圧部11Bの油圧が閾値Pmin2以下になったことに基づいて充填状態に切り換えると判定してから蓄圧部11Bへの油の充填が開始されるまでの間に、蓄圧部11Bの油圧が閾値Pmin1を下回ることの防止を図ることができる。これにより、ECU9は、蓄圧部11Bの油圧がトランスミッション5を油圧制御するために必要な圧力を下回ることの防止を図ることができる。
ステップS2の処理において、推定油圧Paが閾値Pmin2以上であると判定した場合に(No)、ECU9は、現在の状態が保持状態であると判定し、この状態を繰り返す。一方、ステップS2の処理において、推定油圧Paが閾値Pmin2より低いと判定した場合に(Yes)、ECU9は、保持状態から充填状態に切り換えると判定し、リニアソレノイドバルブSLTを制御することによって、ライン圧PLを蓄圧部11Bへの油の充填を素早く行うために設定された圧力である目標圧PT(図5参照)まで上昇させる油圧制御であるライン圧変更制御を開始する(S3)。この処理において、ECU9は、ライン圧変更制御において、まずライン圧PLの指令値であるライン圧指令値PLc(図5参照)を所定の昇圧勾配で上昇させる上昇制御を実行する。ECU9は、ライン圧指令値PLcの上昇に応じて、リニアソレノイドバルブSLTから供給される制御圧によってプライマリレギュレータバルブPB内のスプールを移動させ、油路L1と油路L2の連通割合として、油路L1の連通割合が油路L2の連通割合よりも大きくなるようにリニアソレノイドバルブSLTを制御することで、ライン圧PLをアキュムレータ11への油の充填を早めるために上昇させる。ECU9は、充填状態に切り換えると判定した際のライン圧指令値PLc及び目標圧PTの差と、ライン圧指令値PLcの昇圧勾配と、に応じて予め設定したライン圧変動時間Tpが経過するまで上昇制御を実行する。ECU9は、ライン圧変動時間Tpの間上昇制御を実行することにより、ライン圧指令値PLcが目標圧PTに到達する。そして、ステップS3の処理において、ECU9は、ライン圧指令値PLcを目標圧PTに到達させた後に、ライン圧指令値PLcの上昇を停止して上昇制御を終了し、上昇したライン圧指令値PLcを維持することによりライン圧PLを目標圧PTに維持する維持制御を開始する。ECU9は、後述するステップS12の処理を実行するまで維持制御を継続する。
ステップS3の処理を実行した後に、ECU9は、ECU9の内部に設けられた第1タイマ及び第2タイマによる時間測定を開始する(S4)。ここで、第1タイマは、ECU9がソレノイドバルブSAを遮断状態から連通状態に切り換えるためのタイマであり、第2タイマは、充填状態において蓄圧部11Bへの油圧の充填の推定演算を開始するためのタイマである。また、ステップS4の処理において、ECU9は、後述する処理において第2タイマによる測定時間と比較する第2設定時間Tm2(図5参照)を油温センサ8により検出された油温に応じて設定する。
ステップS4の処理を実行した後に、ECU9は、ステップS4の処理において時間測定を開始した第1タイマが、第1設定時間Tm1(図5参照)に達しているか否かを判定する(S5)。ここで、第1設定時間Tm1は、第1タイマによる時間測定を開始した時点を起点として設定された時間であり、油温による圧力の上昇速度の変化などによって、実際のライン圧PLが目標圧PTに達するまでの時間が変化することから、ライン圧指令値PLcを目標圧PTに到達させてから実際のライン圧PLが目標圧PTに到達して安定するまでにかかる想定時間(第1待機時間Td1、図5参照)である。ECU9は、ステップS5の処理において、第1タイマが第1設定時間Tm1に達したか否かを判定し、第1タイマが第1設定時間Tm1に達していないと判定した場合に(No)、第1タイマが第1設定時間Tm1に達するまでステップS5の処理を繰り返す。
ステップS5の処理において、第1タイマが第1設定時間Tm1に達していると判定した場合に(Yes)、ECU9は、実際のライン圧PLが目標圧PTに達して安定していると判断し、ソレノイドバルブSAを連通状態(ON状態)にする連通指令を出力する連通制御を実行する(S6)。これにより、アキュムレータ11は、バルブボディ7からライン圧PLに応じて油圧が充填される充填状態となる。
ステップS6の処理を実行した後に、ECU9は、ステップS4の処理において時間測定を開始した第2タイマが、第2設定時間Tm2(図5参照)に達しているか否かを判定する(S7)。ここで、第2設定時間Tm2は、第2タイマによる時間測定を開始した時点を起点として設定された時間であり、第1設定時間Tm1に加えて連通指令を出力してからソレノイドバルブSAが連通状態になり蓄圧部11Bまでの油路を通過して供給される油圧が安定するまでにかかる想定時間(第2待機時間Td2、図5参照)を加算して設定された第1マージン時間である。ECU9は、ステップS7の処理において、第2タイマが第2設定時間Tm2に達したか否かを判定し、第2タイマが第2設定時間Tm2に達していないと判定した場合に(No)、第2タイマが第2設定時間Tm2に達するまでステップS7の処理を繰り返す。
ステップS7の処理において、第2タイマが第2設定時間Tm2に達したと判定した場合に(Yes)、ECU9は、まず、詳しくは後述するように推定演算している推定油圧Paが蓄圧部11Bに充填可能な最大油圧である圧力Pmax(図5参照)に達しているか否かを判定する(S8)。この処理において、ECU9は、推定演算の算出結果である推定油圧Paと圧力Pmaxとを比較し、推定油圧Paが圧力Pmaxに達していないと判定した場合に(No)、推定演算によって算出される推定油圧Paが圧力Pmaxに達するまでステップS8の処理を繰り返す。
一方、ステップS8の処理において、推定油圧Paが圧力Pmaxに達していると判定した場合に(Yes)、ECU9は、蓄圧部11Bへの油圧の供給が終了した(不要である)と判定し、ソレノイドバルブSAを遮断状態(OFF状態)にする遮断指令を出力する(S9)。つまりアキュムレータ11は、これによって充填状態から保持状態に移行されることになる。このように、ECU9では、アキュムレータ11の状態を充填状態から保持状態に切り換えると判断する第1設定圧として圧力Pmaxが設定されている。
ステップS9の処理を実行した後に、ECU9は、ECU9の内部に設けられた第3タイマによる時間測定を開始する(S10)。ここで、第3タイマは、ステップS3の処理により上昇したライン圧PLの低下を開始するためのタイマである。また、ステップS10の処理において、ECU9は、後述する処理において第3タイマによる測定時間と比較する第3設定時間Tm3(図5参照)を油温センサ8により検出された油温に応じて設定する。
次に、ステップS10の処理を実行した後に、ECU9は、第3タイマが第3設定時間Tm3(図5参照)に達しているか否かを判定する(S11)。ここで、第3設定時間Tm3は、第3タイマによる時間測定を開始した時点を起点として設定された時間であり、遮断指令を出力してからソレノイドバルブSAが実際に遮断状態に切り換わるまでの時間が長くかかったとしても先に上昇したライン圧PLの維持を終了してしまうことがないように設定された第2マージン時間である。ECU9は、ステップS11の処理において、第3タイマが第3設定時間Tm3に達したか否かを判定し、第3タイマが第3設定時間Tm3に達していないと判定した場合に(No)、第3タイマが第3設定時間Tm3に達するまでステップS11の処理を繰り返すことで、ソレノイドバルブSAが実際に遮断状態に切り換わる前にライン圧PLを低下させてしまうことで実際の蓄圧部11Bの油圧が低下して蓄圧部11Bの油の充填不足になってしまうことを防いでいる。
ステップS11の処理において、第3タイマが第3設定時間Tm3に達していると判定した場合に(Yes)、ECU9は、ソレノイドバルブSAが遮断状態であり、蓄圧部11Bへの充填が終了しているので、ライン圧変更制御において、維持制御を終了し、ライン圧PLを目標圧PTからエンジントルクに応じて調圧される通常状態に復帰させる復帰制御を実行する(S12)。ECU9は、復帰制御において、ライン圧指令値PLcを上昇時よりも緩やかな所定の降圧勾配で下降させて通常状態まで下降させると、復帰制御と共にライン圧変更制御を終了する。これにより、再びステップS1のNo、ステップS2のNoを繰り返す保持状態となる。
次に、吐出状態における制御について説明する。ステップS1の処理において、例えばエンジン2が停止中にあってブレーキペダルのオフを検出し、つまり運転者による発進要求を検出して係合要素10をアキュムレータ11で係合することを検出すると、アキュムレータ11の吐出要求があることを検出し(Yes)、ECU9は、アキュムレータ11を吐出状態にする制御処理を開始し、ソレノイドバルブSAを連通状態(ON状態)にする吐出開始指令を出力する(S13)。次に、ECU9は、ECU9の内部に設けられたタイマである第4タイマによる時間測定を開始する(S14)。ここで、第4タイマは、ECU9がソレノイドバルブSAを連通状態から遮断状態に切り換えるために用いられるタイマである。ステップS14の処理を実行した後に、ECU9は、油圧ポンプ6を作動させるためにエンジン2を始動させるように不図示のエンジン制御部に指令を出力する(S15)。
次に、ECU9は、ステップS14の処理において時間測定を開始した第4タイマが第4設定時間Tm4(図7参照)に達しているか否かを判定する(S16)。ここで、第4設定時間Tm4は、第4タイマによる時間測定を開始した時点を起点として設定された時間であり、油圧ポンプ6から供給される油圧で係合要素の係合状態を維持可能となる油圧に達するまでに十分な時間として設定された時間である。仮に、油圧ポンプ6から供給される油圧が係合要素の係合状態を維持可能な圧力に達する前にアキュムレータ11からの油圧の供給が停止されてしまうと、作動油圧Pcが下降し、係合要素の係合状態が維持できずに意図しないスリップ状態となる虞がある。ECU9は、ステップS16の処理において、第4タイマが第4設定時間Tm4に達したか否かを判定し、第4タイマが第4設定時間Tm4に達していないと判定した場合に(No)、第4タイマが第4設定時間Tm4に達するまでステップS16の処理を繰り返すことで、作動油圧Pcが意図せず下降してしまうことを防いでいる。
ステップS16の処理において、第4タイマが第4設定時間Tm4に達していると判定した場合に(Yes)、ECU9は、油圧ポンプ6から供給される油圧が、係合要素の係合状態を維持可能となる油圧になったと判断し、ソレノイドバルブSAを遮断状態(OFF状態)にする吐出終了指令を出力することで、蓄圧部11Bに油が保持される保持状態に移行する(S17)。
次に、本車両用駆動装置1のECU9が蓄圧部11Bの油圧を把握するために実行する推定演算の詳細について説明する。
本車両用駆動装置1のECU9は、充填状態において単位時間当たりに蓄圧部11Bに充填する油に応じた圧力上昇(充填圧)を算出するために用いる値である充填レート(充填時昇圧勾配の値)ΔRaと、保持状態において単位時間当たりに蓄圧部11Bから漏れる油に応じた圧力降下(漏洩圧)を算出するために用いる値である漏洩レート(保持時降圧勾配の値)ΔRbと、吐出状態において単位時間当たりに蓄圧部11Bから吐出される油に応じた圧力降下(吐出圧)を算出するために用いる値である吐出レート(吐出時降圧勾配の値)ΔRcと、を用いて、各状態におけるアキュムレータ11の蓄圧部11Bの油圧を演算している。
ここで、充填レートΔRaは、ECU9の内部に設けられたROM9c等の記憶装置に記憶された値であり、油温センサ8の検出値とバルブボディ7でライン圧変更制御によって調圧されたライン圧PLとに充填レートΔRaが対応付けられた充填レートマップから算出される。つまり、ECU9は、充填状態おける推定演算において、油温センサ8が検出した油温に加えてライン圧PLを加味した充填レートΔRaを用いて推定演算をするように構成されている。このため、本車両用駆動装置1は、油温の変化による油の粘性の変化に加えて、蓄圧部11Bに油を充填する方向の油圧の変化も考慮して推定演算を行うことができるため、充填状態における推定演算の精度を向上させることができる。また、充填レートマップは、アキュムレータ11に用いられるスプリング11Dのばね定数や蓄圧部11Bの大きさを考慮したマップデータであり、本車両用駆動装置1は、ばね定数や蓄圧部11Bの大きさも考慮した充填レートΔRaを用いて推定演算を行う。
漏洩レートΔRbは、ECU9の内部に設けられた記憶装置に記憶された値であり、油温センサ8の検出値に漏洩レートΔRbが対応付けられた漏洩レートマップから算出される。また、吐出レートΔRcは、ECU9の内部に設けられた記憶装置に記憶された値であり、油温センサ8の検出値に吐出レートΔRcが対応付けられた吐出レートマップから算出される。つまり、ECU9は、保持状態及び吐出状態での推定演算において、油温センサ8が検出した油温を加味した漏洩レートΔRb及び吐出レートΔRcを用いて推定演算をするように構成されている。このため、本車両用駆動装置1は、油温の変化による油の粘性の変化を考慮して推定演算を行うことができるため、保持状態及び吐出状態における推定演算の精度を向上させることができる。また、漏洩レートマップ及び吐出レートマップは、スプリング11Dのばね定数やアキュムレータ11の大きさを考慮したマップデータであり、ECU9は、ばね定数やアキュムレータ11の大きさも考慮した保持レートΔRb及び吐出レートΔRcを用いて推定演算を行う。
ECU9は、現在の状態に対応するレートマップを用いて各レートを算出し、算出したレートを用いて推定演算を実行することで、蓄圧部11Bの油圧を把握することができるようになっている。
次に、ECU9が蓄圧部11Bの油圧の推定演算を行う際の処理の流れについて説明する。図4は、ECU9による蓄圧部11Bの油圧の推定演算処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、ECU9は、充填状態、保持状態及び吐出状態のいずれの状態であるかを判定する状態判定処理を実行する(S21)。この処理において、ECU9は、図3に示した油圧制御処理において設定された状態が充填状態、保持状態及び吐出状態のいずれの状態であるかを判定している。次に、ECU9は、油温センサ8が検出した油温の情報を取得する(S22)。この処理において、ECU9は、推定演算を実行する際に用いるパラメータである油温の情報を油温センサ8が検出した値から取得する。
次に、ECU9は、状態判定処理において判定された状態が充填状態であるか否かを判定する(S23)。この処理において、状態判定処理において判定された状態が充填状態であると判定した場合に(Yes)、ECU9は、充填状態における推定演算に係る処理を開始する。充填状態における推定演算を実行するために、ECU9は、まず、油温センサ8が検出した油温と、バルブボディ7において調圧したライン圧PLと、記憶装置に記憶されている充填レートマップと、から充填レートΔRaを算出する(S24)。そして、ECU9は、充填レートΔRaを算出した後、算出した充填レートΔRaを用いて推定演算を行い(S25)、充填状態でなくなるまで(S23のNo)推定演算処理を繰り返し実行する。なお、このように充填状態の推定演算処理を繰り返している間に、ライン圧PLが変化したり、油温が変化したりした場合には、充填レートΔRaを、変化したライン圧PLや油温に応じて随時新たな値に更新する形で算出する。
ここで、充填状態においてECU9が実行する推定演算の詳細について、図5を用いて説明する。図5は、充填状態を開始するまでにECU9が実行する油圧制御処理及び充填状態を開始してから終了するまでにECU9が実行する油圧制御処理と、推定油圧Paと、の関係を示すタイムチャートである。図5において、Paは蓄圧部11Bの推定油圧、Neはエンジン2の回転速度を示し、PLcはライン圧PLの指令値であるライン圧指令値を示している。なお、図中の回転速度Neは、実回転速度を示すものではなく、ECU9(或いは不図示のエンジン制御部)からの指令値を示したものである。
上述した図3のステップS3〜S6に示すように、ECU9は、充填状態を開始するまでに実行する状態制御処理において、時点T1で推定油圧Paが閾値Pmin2を下回っていると判定し、リニアソレノイドバルブSLTを介してライン圧PLを目標圧PTまで上昇させて油の充填をはじめる制御を実行する。ECU9は、時点T1において、ライン圧指令値PLcと目標圧PTとの差に応じてライン圧変動時間Tpを設定し、ライン圧変更制御の上昇制御をライン圧変動時間Tp実行して、時点T1からライン圧変動時間Tp後の時点T2において、ライン圧指令値PLcを目標圧PTに到達させる。ECU9は、充填状態に切り換えると判定した際のライン圧指令値PLcと目標圧PTとの差に応じてライン圧変動時間Tpを設定するので、ライン圧変動時間Tpが過剰に長くなることを防ぐことができ、充填状態に切り換えると判定してから、蓄圧部11Bへの油の充填が完了するまでの時間が長くなることの防止を図ることができる。
そして、ECU9は、時点T2において、上昇制御を終了して維持制御を開始し、さらに第1タイマ及び第2タイマによる時間測定を開始して第1タイマが第1設定時間Tm1に達するまで待機する。図5に示すように、第1設定時間Tm1は、ライン圧指令値PLcが目標圧PTに達してから実際のライン圧PLが目標圧PTに安定させるために経過させる時間である第1待機時間Td1から構成されている。ECU9は、第1タイマが第1設定時間Tm1に達した時点T3、すなわち時点T2から第1待機時間Td1経過した時点T3において、ソレノイドバルブSAを連通状態にする連通指令を出力する連通制御を実行する。
次に、ECU9は、充填状態を開始するための処理を開始する。充填状態において推定油圧Paを算出する際に、ECU9は、バルブボディ7から蓄圧部11Bへの油の充填を開始するために連通指令を出力してから、実際にソレノイドバルブSAが作動するために必要な電流が供給されるまでの、電気的な応答遅れと、ソレノイドバルブSAに電流が供給されてから、ソレノイドバルブSAが実際に連通状態に切り換わるまでの、機械的な応答遅れと、ソレノイドバルブSAが実際に連通状態に切り換わってから、バルブボディ7からアキュムレータ11への油の充填量が安定するまでの、いわゆる油圧応答遅れとの発生を考慮し、第2待機時間Td2がこれらの応答遅れにかかり得る時間として設定されている。ECU9は、時点T3から第2待機時間Td2が経過した後の時点T4、即ち、時点T2から第2設定時間Tm2が経過した後の時点T4において、充填状態の推定演算処理を開始する(図3のステップS7)。
即ち、時点T4になると、ECU9は、図4に示すステップS21の処理で充填状態が実行されていると判定し、ステップS22の処理で油温センサ8が検出した油温の情報を取得する。そして、ECU9は、ステップS24の処理で充填状態における推定油圧Paの推定演算に用いられる充填レートΔRaを算出する。図5に示すように、充填レートΔRaは、推定油圧Paが上昇していく際の単位時間当たりの変化量(勾配)を示す値となっている。ECU9は、ステップS25の処理で充填レートΔRaで上昇する油圧を経過時間に応じて積算(時間積分)することにより、推定油圧Paを算出する。
ここで、充填レートΔRaは、実際の充填状態における単位時間当たりの油圧の変化量よりも小さく設定されている。すなわち、充填状態における推定油圧Paは、実際に充填されている油圧よりも上昇しにくい。これによって、ECU9は、アキュムレータ11内に実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも低くなることを防いでいる。
また、ECU9は、ライン圧変更制御によりライン圧指令値PLcを目標圧PTに到達させてから、第1待機時間Td1及び第2待機時間Td2を含む第2設定時間Tm2後に、充填状態の推定演算処理を開始するので、ライン圧PLの変動が安定してから、充填状態の推定演算処理を開始することができ、蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定演算することができる。特に、ECU9は、上述したように、時点T2から第1設定時間Tm1が経過し、実際のライン圧PLが目標圧PTに十分に達する時点T3、つまりライン圧指令値PLcが目標圧PTに達してから第1待機時間Td1が経過した時点において連通指令を出力するため、ライン圧PLの変動が安定してから充填状態を開始して、単位時間当たりに蓄圧部11Bに充填される油に応じた圧力上昇の勾配の変動を小さくすることができ、蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定演算することができる。
また、ECU9は、第2待機時間Td2を考慮した推定演算を実行することにより、蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも後に上昇を開始することを防いで推定油圧Paよりも低くなることを防ぐことができ、つまり実際に充填されている油圧が推定演算している油圧よりも下回って係合要素10を係合する際に油圧不足になってしまうことを防止できる。また、機械的な応答遅れや油圧応答遅れは、油温が低下すると、油の粘性が高くなって応答遅れ時間が長くなり、電気的な応答遅れ時間は、油温が上昇すると、インダクタンスの上昇により応答遅れ時間が長くなる。このように、連通指令を出力してから蓄圧部11Bにおける油圧の上昇の勾配が安定するまでの応答遅れ時間は、油温によって変化するが、第2設定時間Tm2の長さも、上述したように油温センサ8により検出された油温に応じて設定される。特に、ECU9は、油温センサ8により検出された油温に応じて第2待機時間Td2を変更して、第1設定時間Tm1を変更せずに第2設定時間Tm2を変更する。これにより、ECU9は、実際の蓄圧部11Bの油圧と推定油圧Paとの差が油温の変化によって大きくなることを抑制して、蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定演算することができる。
また、ECU9は、図3のステップS3に示すように、ライン圧PLを目標圧PTまで上昇させてから、蓄圧部11Bへの油の充填を実行するので、充填状態において単位時間当たりに蓄圧部11Bに充填する油に応じた圧力上昇の勾配を大きくすることができ、充填状態に切り換えると判定してから、蓄圧部11Bへの油の充填が完了するまでの時間を短縮することができる。
そして、ECU9は、図3のステップS9〜S12に示すように、推定油圧Paが蓄圧部11Bに充填可能な油圧の上限値である圧力Pmaxとなった際に、ソレノイドバルブSAを遮断状態にする遮断指令を出力する。このとき、ECU9は、遮断指令を出力してから実際にソレノイドバルブSAが遮断状態になるまでの期間において、バルブボディ7から蓄圧部11Bへライン圧PLでの油の供給を継続するために、遮断指令を出力した時点T5から、実際にソレノイドバルブSAを遮断状態にする時間よりも長くかつ制御時間がなるべく短くなるような適宜な第3設定時間Tm3が経過するまで維持制御を継続してライン圧PLを減圧せずに維持し、第3設定時間Tm3が経過した後の時点T6において、維持制御を終了してから復帰制御を実行してライン圧指令値PLcを下降させ、ライン圧PLを通常状態に復帰させる。これにより、ECU9は、蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも先に下降を開始することを防いで推定油圧Paよりも低くなることを防いでいる。また、連通指令を出力した場合と略同様に、遮断指令を出力してから実際にソレノイドバルブSAを遮断状態になるまでの応答遅れ時間が油温によって変化するが、第3設定時間Tm3の長さも、上述したように油温センサ8により検出された油温に応じて設定される。これにより、油温の変化により応答遅れ時間が長くなったとしても、実際にソレノイドバルブSAが遮断状態になる前にライン圧PLが低下して蓄圧部11Bの油圧が低下することの防止を図り、ECU9は、実際の蓄圧部11Bの油圧と推定した蓄圧部11Bの油圧との差が油温の変化によって大きくなることを抑制して、蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定演算することができる。
一方、ステップS23の処理において、状態判定処理において判定された状態が充填状態でないと判定した場合に(No)、ECU9は、状態判定処理において判定された状態が保持状態であるか否かを判定する(S26)。この処理において、状態判定処理において判定された状態が保持状態であると判定した場合に(Yes)、ECU9は、保持状態における推定演算を実行するために、まず、油温センサ8が検出した油温と、記憶装置に記憶されている漏洩レートマップと、から漏洩レートΔRbを算出する(S27)。そして、ECU9は、漏洩レートΔRbを算出した後、算出した漏洩レートΔRbを用いて推定演算を行い(S28)、保持状態でなくなるまで(S23のYes、又はS26のNo)推定演算処理を繰り返し実行する。なお、このように保持状態の推定演算処理を繰り返している間に、油温が変化した場合には、漏洩レートΔRbを、変化した油温に応じて随時新たな値に更新する形で算出する。
ここで、保持状態においてECU9が実行する推定演算の詳細について、図6を用いて説明する。図6は、保持状態における各種の動作及び推定油圧Paの関係を示すタイムチャートである。
図3のステップS9に示すように、ECU9は、例えば、充填状態を実行している際、時点T7において、推定油圧Paが圧力Pmaxに達したと判断し、遮断指令を出力し、蓄圧部11Bに油を保持する保持状態を開始する。
時点T7における図4に示す推定演算処理において、ECU9は、ステップS21の処理で、保持状態が実行されていると判定し、ステップS22の処理で油温センサ8が検出した油温の情報を取得する。そして、ECU9は、ステップS27の処理で保持状態における推定油圧Paの推定演算に用いられる漏洩レートΔRbを算出する。図6に示すように、漏洩レートΔRbは、蓄圧部11Bから油が漏れることにより推定油圧Paが低下していく際の単位時間当たりの変化量(勾配)を示す値となっている。ECU9は、ステップS28の処理で、漏洩レートΔRbで低下する油圧を経過時間に応じて積算(時間積分)することにより、推定油圧Paを算出する。なお、図6に示すように、ECU9は、保持状態における推定演算の実行時において、時点T8でエンジン2がON状態からOFF状態に切り換えられるが、エンジン2のON/OFFの状態によらず漏洩レートΔRbで蓄圧部11Bの油が漏れていると推定演算する。すなわち、ECU9は、保持状態において、エンジン2のON/OFFの状態によらず推定演算を実行可能に構成されている。
漏洩レートΔRbは、実際の保持状態における単位時間当たりの油圧の変化量よりも大きく設定されている。すなわち、保持状態における推定油圧Paは、実際に充填されている油圧よりも低下しやすい。これによって、ECU9は、蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも低くなることを防いでいる。
また、ECU9は、保持状態において、推定油圧Paが閾値Pmin2を下回ったと判定して、ソレノイドバルブSAによって保持状態から充填状態に切り換えて蓄圧部11Bに再充填する際に、上述したように、ライン圧変更制御によりライン圧指令値PLcを目標圧PTに到達させてから第2設定時間Tm2経過して、ライン圧PLの変動が安定してから充填状態における推定演算を開始することができるので、再充填による充填状態においても、蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定演算することができる。
なお、ECU9は、上述した惰性走行時に推定油圧Paが閾値Pmin2を下回ったと判定した場合に、油圧ポンプ6の油の吐出量が低下してライン圧PLを上昇させるための吐出量を確保することができず、ライン圧PLを上昇させることができないため、惰性走行が終了してからステップS3以降の処理を実行する。また、惰性走行の実行時間が想定していた時間よりも長くなり、推定油圧Paが閾値Pmin1を下回った場合には、ECU9は、エンジン2の停止を禁止する制御を実行する。これにより、惰性走行から停車したとしても、エンジン2が停止しない。そして、ECU9は、惰性走行が終了してからアキュムレータ11に油を再充填し、再充填を終えることにより、エンジン2の停止の禁止を解除する。また、エンジン2が停止している際に推定油圧Paが閾値Pmin2を下回ったと判定した場合には、ECU9は、エンジン2を駆動させ、アキュムレータ11への油の充填を開始する。
ステップS26の処理において、状態判定処理において判定された状態が保持状態でないと判定した場合に(No)、ECU9は、吐出状態における推定演算に係る処理を開始する。吐出状態における推定演算を実行するために、ECU9は、油温センサ8が検出した油温と、記憶装置に記憶されている吐出レートマップと、から吐出レートΔRcを算出する(S29)。そして、ECU9は、吐出レートΔRcを算出した後、算出した吐出レートΔRcを用いて推定演算を行い(S30)、吐出状態でなくなるまで(S23のYes、又はS26のYes)推定演算処理を繰り返し実行する。なお、このように吐出状態の推定演算処理を繰り返している間に、油温が変化した場合には、吐出レートΔRcを、油温に応じて随時新たな値に更新する形で算出する。
ここで、吐出状態においてECU9が実行する推定演算の詳細について、図7を用いて説明する。図7は、吐出状態における各種の動作及び推定油圧Paの関係を示すタイムチャートである。
図3のステップS1,S13〜S17に示すように、ECU9は、時点T9において、吐出要求を検出し、ソレノイドバルブSAを連通状態にする吐出開始指令を出力して蓄圧部11Bの油を吐出する吐出状態を開始する。また、ECU9は、吐出状態を開始した後に、第4タイマによる時間測定を開始し、一方でエンジン2を始動させる制御を実行する。
時点T9における図4に示す推定演算処理において、ECU9は、ステップS21の処理で吐出状態が実行されていると判定し、ステップS22の処理で油温センサ8が検出した油温の情報を取得する。そして、ECU9は、ステップS29の処理で吐出状態における推定油圧Paの推定演算に用いられる吐出レートΔRcを算出する。図7に示すように、吐出レートΔRcは、蓄圧部11Bから油が吐出されることにより推定油圧Paが低下していく際の単位時間当たりの変化量(勾配)を示す値となっている。ECU9は、ステップS30の処理で吐出レートΔRcで低下する油圧を経過時間に応じて積算(時間積分)することにより、推定油圧Paを算出する。
吐出レートΔRcは、実際の吐出状態における単位時間当たりの油圧の変化量よりも大きく設定されている。すなわち、吐出状態における推定油圧Paは、実際に充填されている油圧よりも低下しやすい。これによって、ECU9は、蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも低くなることを防いでいる。
車両用駆動装置1においては、ソレノイドバルブSAが連通状態になり蓄圧部11Bから油が吐出されることにより、係合要素10に供給される作動油圧Pcがアキュムレータ11から供給される。時点T9から第4設定時間Tm4が経過するまでの間に、エンジン2が駆動してアイドリング状態と判定されるON状態となり、それに伴うエンジン2の回転速度Neの上昇によって油圧ポンプ6から供給される油圧が、係合要素の係合状態を維持可能となる油圧に達する。ECU9は、時点T9から第4設定時間Tm4が経過した後の時点T10において、ソレノイドバルブSAを遮断状態にする吐出終了指令を出力し、蓄圧部11Bの油の吐出を終了するように制御する。このように制御することにより、ECU9は、吐出状態終了後に係合要素10の係合が意図しないスリップ状態にされることを防止すると共に、再度充填状態に移行した際に蓄圧部11Bに油が残留した状態で蓄圧部11Bに油を充填することができ、蓄圧部11Bの再充填の時間短縮を図ることができる。
このように、本実施の形態のECU9は、蓄圧部11Bの油圧を推定する推定演算を充填状態と、保持状態と、吐出状態と、のいずれの状態においても実行することで、蓄圧部11Bの油圧を把握可能なため、蓄圧部11Bの油圧を検出するためのセンサ類を別途設ける必要がなくなる。このため、本車両用駆動装置1は、コストを削減可能であり、かつ蓄圧部11Bの油圧を把握可能となる。
また、本実施の形態のECU9は、各状態における推定演算において、充填レートΔRa、漏洩レートΔRb及び吐出レ−トΔRcを用いて経過時間に応じた推定油圧Paを算出するように構成されており、蓄圧部11Bの油圧の変化をリアルタイムに推定することができる。
また、本実施の形態のECU9は、保持レートΔRbと保持状態の経過時間とに応じて、保持状態における推定演算を実行するので、推定演算により推定した蓄圧部11Bの油圧が圧力Pmax以上になった場合にアキュムレータ11の状態を保持状態に切り換えたとしても蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定することができ、エンジン2の状態に関わらずに蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定することができる。
また、本実施の形態のECU9は、ライン圧変更制御によりライン圧指令値PLcを目標圧PTに到達させてから、第2設定時間Tm2後に、充填状態の推定演算処理を開始するので、ライン圧PLの変動が安定してから、充填状態の推定演算処理を開始することができ、充填状態において、蓄圧部11Bの油圧を精度良く推定演算することができる。
<本実施の形態のまとめ>
本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)は、駆動源(2)の動力を変速して車輪(4)に伝達する変速装置(5)と、
前記駆動源(2)の動力によって油圧を発生させる油圧ポンプ(6)と、
前記油圧ポンプ(6)が発生する油圧をライン圧(PL)に調圧し、前記駆動源(2)の駆動時に前記ライン圧(PL)により前記変速装置(5)を油圧制御する油圧制御装置(7)と、
前記ライン圧(PL)が供給される第1油路(L1)に接続され、油を蓄圧可能な蓄圧装置(11)と、
前記第1油路(L1)と前記蓄圧装置(11)とを接続する第2油路(L4)を開閉可能な切換え装置(SA)と、
前記蓄圧装置(11)の油圧を推定する推定演算を実行し、前記推定演算により推定した前記蓄圧装置(11)の油圧が第1設定圧(Pmax)以上になった場合に、前記蓄圧装置(11)の状態を、前記切換え装置(11B)により前記第2油路(L4)を閉じて前記蓄圧装置(11)に蓄圧した油を保持する保持状態に切り換える制御部(9)と、を備え、
前記制御部(9)は、
前記保持状態において単位時間当たりに前記蓄圧装置(11)から漏れる油に応じた圧力降下の勾配である保持時降圧勾配の値(ΔRb)を有し、
前記保持時降圧勾配の値(ΔRb)と前記保持状態の経過時間とに応じて、前記保持状態における前記推定演算を実行する。
このため、制御部(9)は、保持時降圧勾配の値(ΔRb)と保持状態の経過時間とに応じて、保持状態における推定演算を実行するので、推定演算により推定した蓄圧装置(11)の油圧が第1設定圧(Pmax)以上になった場合に蓄圧装置(11)の状態を保持状態に切り換えたとしても蓄圧装置(11)の油圧を精度良く推定することができ、駆動源(2)の状態に関わらずに蓄圧装置(11)の油圧を精度良く推定することができる。また、制御部(9)は、保持状態における推定演算において、経過時間に応じた蓄圧装置(11)の油圧を把握可能となっており、保持状態における蓄圧装置(11)の油圧の変化をリアルタイムに推定することができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)は、油温を検出する油温センサ(8)を備え、
前記制御部(9)は、前記油温センサ(8)が検出した油温に応じて前記保持時降圧勾配の値(ΔRb)を設定する、
このため、制御部(9)は、保持状態において単位時間当たりに前記蓄圧装置(11)から漏れる油に応じた圧力降下が油温に応じて変化することに合わせて、保持時降圧勾配の値(ΔRb)を設定することができる。これにより、制御部(9)は、実際の蓄圧装置(11)の油圧と推定した蓄圧装置(11)の油圧との差が油温の変化によって大きくなることを抑制して、蓄圧装置(11)の油圧を精度良く推定演算することができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記制御部(9)は、前記保持状態において、前記推定演算により推定した前記蓄圧装置(11)の油圧が第2設定圧(Pmin2)以下になった場合に、前記蓄圧装置(11)の状態を、前記駆動源(2)の駆動時に前記切換え装置(SA)により前記第2油路(L4)を開いて前記蓄圧装置(11)に油を充填する充填状態に切り換えると判定する。
このため、制御部(9)は、保持状態における圧力降下により蓄圧装置(11)の油圧が低下したとしても、推定した蓄圧装置(11)の油圧が第2設定圧(Pmin2)以下になったことに基づいて、蓄圧装置(11)の状態を保持状態から充填状態に切り換えるので、保持状態において、蓄圧装置(11)の油圧を一定の圧力以上に保つことができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記第2設定圧(Pmin2)は、前記変速装置(5)を油圧制御可能と判断する第3設定圧(Pmin1)より所定の圧力(ΔPmin)高く設定されている。
このため、制御部(9)は、保持状態において、推定した蓄圧装置(11)の油圧が、第3設定圧(Pmin1)より高く設定された第2設定圧(Pmin2)以下になった場合に、蓄圧装置(11)の状態を充填状態に切り換えると判定するので、蓄圧装置(11)の油圧が第3設定圧(Pmin1)を下回ることの防止を図り、変速装置(5)を油圧制御する際に、蓄圧装置(11)の油圧が油圧制御するために必要な圧力を下回ることの防止を図ることができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記所定の圧力(ΔPmin)は、前記制御部(9)が前記切換え装置(SA)により前記充填状態に切り換えると判定してから前記蓄圧装置(11)への油の充填が開始されるまでの時間に応じて設定されている。
このため、制御部(9)は、所定の圧力(ΔPmin)を過剰に高い圧力に設定することを防いで蓄圧装置(11)への油の充填回数の増加を防ぎつつ、推定した蓄圧装置(11)の油圧が第2設定圧(Pmin2)以下になったことに基づいて前記充填状態に切り換えると判定してから前記蓄圧装置(11)への油の充填が開始されるまでの間に、前記蓄圧装置(11)の油圧が第3設定圧(Pmin1)を下回ることの防止を図ることができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記制御部(9)は、前記充填状態において、前記ライン圧(PL)に応じて前記推定演算を実行する。
このため、制御部(9)は、充填状態において単位時間当たりに蓄圧装置(11)に充填する油に応じた圧力上昇がライン圧(PL)に応じて変化することに合わせて、充填状態における推定演算を実行することができる。これにより、制御部(9)は、実際の蓄圧装置(11)の油圧と推定した蓄圧装置(11)の油圧との差がライン圧(PL)の変化によって大きくなることを抑制して、蓄圧装置(11)の油圧を精度良く推定演算することができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記制御部(9)は、
前記充填状態において単位時間当たりに前記蓄圧装置(11)に充填する油に応じた圧力上昇の勾配である充填時昇圧勾配の値(ΔRa)を有し、
前記充填時昇圧勾配の値(ΔRa)と、前記充填状態の経過時間と、に応じて前記充填状態における前記推定演算を実行する。
このため、制御部(9)は、充填状態における推定演算において、経過時間に応じた蓄圧装置(11)の油圧を把握可能となっており、充填状態における蓄圧装置(11)の油圧の変化をリアルタイムに推定することができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)は、油温を検出する油温センサ(8)を備え、
前記制御部(9)は、前記油温センサ(8)が検出した油温に応じて前記充填時昇圧勾配の値(ΔRa)を設定する。
このため、制御部(9)は、充填状態において単位時間当たりに前記蓄圧装置(11)に充填する油に応じた圧力上昇が油温に応じて変化することに合わせて、充填時昇圧勾配の値(ΔRa)を設定することができる。これにより、制御部(9)は、実際の蓄圧装置(11)の油圧と推定した蓄圧装置(11)の油圧との差が油温の変化によって大きくなることを抑制して、蓄圧装置(11)の油圧を精度良く推定演算することができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記切換え装置(SA)は、前記蓄圧装置(11)の状態を、前記駆動源(2)の停止時に前記第2油路(L4)を開いて前記蓄圧装置(11)から油を吐出する吐出状態に切換え可能であり、
前記制御部(9)は、前記充填状態、前記保持状態、前記吐出状態のいずれかの状態であるかに応じて前記推定演算を実行する。
このため、制御部(9)は、状態に応じて推定演算を切り換えることで、充填状態、保持状態、吐出状態のどの状態においても推定演算を実行し、蓄圧装置(11)の油圧を把握可能となる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)において、前記制御部(9)は、
前記吐出状態において単位時間当たりに前記蓄圧装置(11)から前記油圧制御装置(7)に吐出する油に応じた圧力降下の勾配である吐出時降圧勾配の値(ΔRc)を有し、
前記吐出時降圧勾配の値(ΔRc)と、前記吐出状態の経過時間と、に応じて前記吐出状態における前記推定演算を実行する。
このため、制御部(9)は、吐出状態における推定演算において、経過時間に応じた蓄圧装置(11)の油圧を把握可能となっており、吐出状態における蓄圧装置(11)の油圧の変化をリアルタイムに推定することができる。
また、本実施の形態に係る本車両用駆動装置(1)は、油温を検出する油温センサ(8)を備え、
前記制御部(9)は、前記油温センサ(8)が検出した油温に応じて前記吐出時降圧勾配の値(ΔRc)を設定する。
このため、制御部(9)は、吐出状態において単位時間当たりに前記蓄圧装置(11)から前記油圧制御装置(7)に吐出する油に応じた圧力降下が油温に応じて変化することに合わせて、吐出時降圧勾配の値(ΔRc)を設定することができる。これにより、制御部(9)は、実際の蓄圧装置(11)の油圧と推定した蓄圧装置(11)の油圧との差が油温の変化によって大きくなることを抑制して、蓄圧装置(11)の油圧を精度良く推定演算することができる。
なお、本実施の形態において、ECU9は、吐出状態において、推定演算を行い蓄圧部11Bの推定油圧Paを算出するように構成されているが、これに限らない。ECU9は、蓄圧部11Bの油を吐出する際に、全ての油を吐出すると仮定し、吐出状態終了時の推定油圧Paを0にリセットする構成にされていてもよい。このように構成した場合、ECU9は、吐出状態の終了後に再度充填状態に移行した際に、蓄圧部11Bに油が残留した状態で蓄圧部11Bに油を再充填したとしても、充填状態の開始時の推定油圧Paが蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧を下回ることはなくなるため、蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも低くなることの防止を図ることができる。
また、本車両用駆動装置1において、漏洩レートΔRb及び吐出レートΔRcは、油温に応じて変更され、充填レートΔRaは、油温及びライン圧PLに応じて変更されるように構成されているが、これに限らない。充填レートΔRa、漏洩レートΔRb及び吐出レートΔRcは、経年劣化によるアキュムレータ11の部品の変化に応じて変更されるように構成にされていてもよい。
また、本実施の形態において、アキュムレータ11は、ライン圧PLが供給される油路から油が充填されるように構成されているが、これに限らず、ライン圧PLより減圧されたセカンダリ圧やモジュレータ圧等が供給される油路から油が充填される構成にされていてもよく、特にエンジン2が駆動して油圧ポンプ6が駆動している間に常時発生されているような油圧がアキュムレータ11に供給可能で、エンジン2が停止した際に係合要素10に油圧を供給可能な油路にアキュムレータ11が接続されていればよい。
また、本車両用駆動装置1においては、アキュムレータ11に油を充填する際に、蓄圧部11Bの油圧が蓄圧部11Bに充填可能な油圧の上限値となるのに十分な時間充填状態が継続した場合に、推定油圧Paをアキュムレータ11内に充填可能な油圧の上限値に補正するような制御を実行してもよい。また、本車両用駆動装置1においては、前回イグニッションがOFFされてから、再度イグニッションをONした際に、推定油圧Paを0に補正するような制御を実行してもよい。このような制御を実行することで、ECU9は、前回イグニッションがOFFされてから再度イグニッションがONされるまでの時間が短い場合、蓄圧部11Bに実際に充填されている油圧が、推定油圧Paよりも低くなることの防止を図ることができ、前回イグニッションがOFFされてから再度イグニッションがONされるまでの時間が、蓄圧部11Bに充填可能な油圧の上限値の油がオイルパン12に漏れて蓄圧部11Bに油がなくなるほど長い場合、蓄圧部11Bの実際の油圧と推定油圧Paの一致を図ることができ、推定演算における精度をより向上させることができる。
また、本車両用駆動装置1において、ECU9は、油圧を推定する推定演算を実行するように構成されているが、これに限らず、油量を推定する推定演算を実行するように構成されていてもよい。蓄圧部11Bの油量が増加すると、スプリング11Dが圧縮される。そして、蓄圧部11Bの油に対するスプリング11Dの圧力が上昇し、蓄圧部11Bの油圧が上昇する。すなわち、蓄圧部11Bの油圧は、蓄圧部11Bの油量に応じて変化する。このため、油量の推定は、油圧の推定と略同等である。
また、本車両用駆動装置1において、アキュムレータ11への油の充填がECU9によって決定されてから実際に油の充填が開始されるまでの間のタイムラグを30秒と想定したが、これに限らず、更に長く又は短く想定してもよく、これに伴って閾値Pmin2を設定する。
また、本車両用駆動装置1において、ECU9は、保持状態において、エンジン2の回転速度が変化しても漏洩レートΔRbを変更させずに蓄圧部11Bの油圧を推定するが、これに限らず、エンジン2の回転速度に応じて漏洩レートΔRbを変更させて蓄圧部11Bの油圧を推定するように構成されていてもよい。エンジン2の回転速度により、油圧ポンプ6からの油の吐出量が変化してライン圧PLが変化するので、蓄圧部11Bから油路L1に単位時間当たりに漏れ出る油量が変化し、アキュムレータ11から漏れる油に応じた実際の圧力降下の勾配が変化する。ECU9は、エンジン2の回転速度に応じて漏洩レートΔRbを変更することにより、実際の蓄圧部11Bの油圧と推定した蓄圧部11Bの油圧との差がエンジン2の回転速度の変化によって大きくなることを抑制することができる。