以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る自動変速機用制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FF(Front engine Front drive)車両である。なお、FF以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、自動変速機2000と、ディファレンシャルギヤ5000と、ドライブシャフト6000と、前輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本実施の形態に係る自動変速機用制御装置は、ECU8000により実現される。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。
自動変速機2000は、エンジン1000に連結される。自動変速機2000は、車両の走行状態に応じてクランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。本実施の形態において、自動変速機2000は、車両の走行状態に応じて変速比を連続的に変更する無段式自動変速機であるとして説明するが、特に無段式自動変速機に限定されるものではなく、たとえば、車両の走行状態に応じて適切な変速段を選択する有段式自動変速機であってもよいものとする。
自動変速機2000は、トルクコンバータ3200と、変速機構3000と、油圧回路4000とを含む。トルクコンバータ3200の内部には、ロックアップクラッチ4500が設けられる。ロックアップクラッチ4500は、係合することによりトルクコンバータ3200の入力軸と出力軸とを直結状態とし、解放することにより直結状態を解消する。ロックアップクラッチ4500は、油圧回路4000から供給される油圧により係合状態になったり、解放状態になったり、あるいは、半係合状態になったりする。油圧回路4000からロックアップクラッチ4500に供給される油圧は、ECU8000によって制御される。
本実施の形態において、変速機構3000は、ベルト式無段変速機構であって、前後進切換機構と、変速機構3000の入力軸側に設けられるプライマリプーリと、変速機構3000の出力軸側に設けられるセカンダリプーリと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられるベルトとを含む。
前後進切換機構は、車両の進行方向を前進と後進とのうちのいずれか一方を選択する機構であって、後述するC1クラッチとB1ブレーキを有する。C1クラッチが係合され、B1ブレーキが解放されることにより車両の進行方向は、前進方向となり、C1クラッチが解放され、B1ブレーキが係合されることにより車両の進行方向は、後進方向となる。本実施の形態においては、C1クラッチが車両発進時に係合される発進クラッチである。
自動変速機2000の出力ギヤは、ディファレンシャルギヤ5000と噛合っている。ディファレンシャルギヤ5000にはドライブシャフト6000がスプライン嵌合などによって連結される。ドライブシャフト6000を介して、左右の前輪7000に動力が伝達される。
ECU8000には、車輪速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセルポジションセンサ8010と、ブレーキペダル8012のストロークセンサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024と、油温センサ8026とがハーネスなどを介在させて接続されている。
車輪速センサ8002は、ドライブシャフト6000の回転数を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。ECU8000は、検出されたドライブシャフト6000の回転数に基づいて車両の速度を算出する。
ポジションスイッチ8006は、シフトレバー8004の位置を検出し、検出結果を表す信号がECU8000に送信する。ECU8000は、自動変速機2000のシフトレンジがシフトレバー8004の位置に対応するように自動変速機2000を制御する。シフトレンジとは、たとえば、ドライブ(D)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、リバース(R)レンジ、パーキング(P)レンジを含む。なお、自動変速機2000は、自動的に変速を行なう自動変速モードに加えて、運転者の操作によって、予め離隔して設定された複数の変速比(変速段)のうちのいずれかを選択可能なマニュアルシフトモードを有していてもよい。
アクセルポジションセンサ8010は、アクセルペダル8008の踏み込み量を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。ストロークセンサ8014は、ブレーキペダル8012のストローク量を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。なお、ストロークセンサ8014に代えて、ブレーキスイッチを用いてもよい。
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度(以下、スロットル開度とも記載する)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016は、ECU8000の制御によって、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)を調整する。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、自動変速機2000の入力軸回転数(以下、タービン回転数ともいう)NTを検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、自動変速機2000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。油温センサ8026は、自動変速機2000内の作動油の温度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
なお、エンジン1000の出力軸は、トルクコンバータ3200の入力軸に接続され、トルクコンバータ3200の出力軸は、自動変速機2000の入力軸に接続されるため、エンジン1000の出力軸の回転数は、トルクコンバータ3200の入力軸の回転数と同じ回転数となる。また、自動変速機2000の入力軸回転数は、トルクコンバータ3200の出力軸の回転数と同じ回転数である。
ECU8000は、車輪速センサ8002、ポジションスイッチ8006、アクセルポジションセンサ8010、ストロークセンサ8014、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024および油温センサ8026などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
たとえば、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)レンジに対応する位置に移動されることにより、自動変速機2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、車両の走行状態に対応した変速比になるように自動変速機2000を制御する。
あるいは、シフトレバー8004がN(ニュートラル)ポジションであることにより、自動変速機2000のシフトレンジにN(ニュートラル)レンジが選択された場合、ニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になるように、自動変速機2000が制御される。
また、本実施の形態における自動変速機2000は、車両の発進時に第1の油圧制御によって係合させる発進クラッチと、車両の発進後の第2の油圧制御によって係合させるロックアップクラッチ4500と、発進クラッチとロックアップクラッチ4500のうちのいずれか一方に供給される油圧を調整するための電磁弁と、この電磁弁による油圧の調整対象を発進クラッチとロックアップクラッチ4500とのうちのいずれか一方から他方に切り換えるための切換部とを含む。
油圧回路4000は、発進クラッチに供給される油圧を電磁弁によって調整するための第1の油圧回路と、ロックアップクラッチ4500に供給される油圧を電磁弁によって調整するための第2の油圧回路とを含む。
上述の「切換部」は、第1の油圧制御の実行時において第1の油圧回路を選択し、第1の油圧制御が完了したと判定された場合、第1の油圧回路の選択を解除した後に、第2の油圧制御の実行時において第2の油圧回路を選択するためのソレノイドバルブである。
より具体的には、図2に示すように、油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ(以下、PRVと記載する)4006と、セカンダリレギュレータバルブ(以下、SRVと記載する)4016と、第1ソレノイドバルブ(以下、第1バルブと記載する)4010と、第2ソレノイドバルブ(以下、第2バルブと記載する)4020と、リニアソレノイド(以下、SLUと記載する)4100と、クラッチアプライコントロールバルブ(以下、CACVと記載する)4200と、ロックアップリレーバルブ(以下、LRVと記載する)4300と、マニュアルバルブ(以下、MVと記載する)4400と、ロックアップコントロールバルブ(以下、LCVと記載する)4600とを含む。
本実施の形態においては、第1バルブ4010および第2バルブ4020が上述の「切換部」に対応し、SLU4100が「電磁弁」に対応する。
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。エンジン1000のクランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動して、自動変速機2000のオイルパン内の作動油を吸引して、油圧回路4000に圧送することにより油圧を発生する。
PRV4006は、オイルポンプ4004で発生した油圧を調圧して、ライン圧を生成する。SRV4016はPRV4006に接続され、PRV4006から流入された作動油をスロットル圧に基づいて調圧することによりセカンダリレギュレータ圧(以下、SEC油圧と記載する)を発生させる。SRV4016により調圧されたSEC油圧は、LRV4300の第1入力ポート4306およびLCV4600の第1入力ポート4602に供給される。
ロックアップクラッチ4500は、係合側油室4506と、解放側油室4508とを含む。
解放側油室4508にオフ圧が供給された場合、解放側油室4508内の油圧が係合側油室4506内の油圧よりも高められて、ロックアップクラッチ4500が解放されていくと同時に係合側油室4506内の作動油が排出ポートあるいは逆止弁等を経由して排出される。
係合側油室4506にオン圧が供給された場合、係合側油室4506内の油圧が解放側油室4508内の油圧よりも高められて、ロックアップクラッチ4500が係合されていくと同時に解放側油室4508内の作動油が排出ポートあるいは逆止弁等を経由して排出される。
LRV4300は、第1入力ポート4306に入力されたSEC油圧をロックアップクラッチ4500の係合側油室4506にオン圧として供給する状態と、解放側油室4508にオフ圧として供給する状態とのうちのいずれか一方の状態となる。このようなLRV4300の動作によって、係合状態と解放状態との間でロックアップクラッチ4500の係合力が連続的に変化する。
本実施の形態において、LRV4300は、ロックアップクラッチ4500の係合側油室4506と連通する第1出力ポート4304と、解放側油室4508と連通する第2出力ポート4308と、SEC油圧が供給される第1入力ポート4306と、LRV4300の上部に設けられ、第1バルブ4010から油圧(以下、S1油圧と記載する)が供給される第2入力ポート4302と、LRV4300の下部に設けられ、第2バルブ4020から油圧(以下、S2油圧と記載する)が供給される第3入力ポート4310と、解放側油室4508から受け入れた作動油をLCV4600に出力するための第3出力ポート4312とを含む。
さらに、LRV4300は、バルブ本体内部に摺動可能に設けられるスプール弁4320と、スプール弁4320を図2の紙面下方向(図2の矢印A方向)に付勢力を作用させるスプリング4330とを含む。
第1バルブ4010がオンされ、第2バルブ4020がオフされる場合、第2入力ポート4302に供給されたS1油圧によって、図2の紙面下方向の力がスプール弁4320の上部に作用する。
S1油圧によって作用する力によりスプール弁4320が図2の紙面下方向に移動した場合、スプール弁4320は、図2の左側の状態になる。この場合、図3の太線に示すように第1入力ポート4306に供給されたSEC油圧が第2出力ポート4308を経由して解放側油室4508に供給される。
第2バルブ4020がオンされ、第1バルブ4010がオフされる場合、第3入力ポート4310に供給されたS2油圧によって、図2の紙面上方向の力がスプール弁4320の下部に作用する。
S2油圧によって作用する力がスプリング4330の弾性力を上回ることによりスプール弁4320が図2の紙面上方向に移動した場合に、スプール弁4320は、図2の右側の状態になる。この場合、図4の太線に示すように第1入力ポート4306に供給されたSEC油圧が第1出力ポート4304を経由して係合側油室4506に供給される。
なお、第1バルブ4010および第2バルブ4020のいずれもがオフされる場合、スプリング4330の付勢力により、スプール弁4320は、図2の左側の状態になる。
LCV4600には、SRV4016により調圧されたSEC油圧が供給される第1入力ポート4602と、LRV4300の第3出力ポート4312から排出されるロックアップクラッチ4500の解放側油室4508内の作動油を受け入れる第2入力ポート4604と、SLU4100からのスリップ制御用信号圧を受け入れる第3入力ポート4606と、第2入力ポート4604に受け入れられた作動油を排出するためのドレンポート4608とを備える。
LCV4600は、SLU4100からのスリップ制御用信号圧によって、バルブ本体内部に摺動可能に設けられたスプール弁を移動させることにより、第2入力ポート4604とドレンポート4608との間を連通させたり、第2入力ポート4604と第1入力ポート4602との間を連通させたりする。
LCV4600は、第2入力ポート4604とドレンポート4608を連通させることによって、解放側油室4508内の作動油を排出して、係合側油室4506内の油圧と解放側油室4508内の油圧との圧力差を増加させる。
一方、LCV4600は、第2入力ポート4604と第1入力ポート4602とを連通させることによって、解放側油室4508内にSEC油圧を供給して、係合側油室4506内の油圧と解放側油室4508内の油圧との圧力差を減少させる。
このようにして、LCV4600は、SLU4100から出力されるスリップ制御用信号圧に基づいて、係合側油室4506と解放側油室4508との圧力差を調節して、ロックアップクラッチ4500のスリップ量を制御する。
第1バルブ4010および第2バルブ4020の各々は、ノーマリクローズの電磁弁である。
第1バルブ4010は、ECU8000からのオン信号を受信した場合に図示しないソレノイドモジュレータバルブから第1バルブ4010に供給される油圧(以下、PSM油圧と記載する)をS1油圧としてCACV4200の第1入力ポート4202に供給する。第1バルブ4010は、ECU8000からオン信号を受信しなくなった場合に、CACV4300の第1入力ポート4202へのS1油圧の供給を停止する。
第2バルブ4020は、ECU8000からオン信号を受信した場合に当該ソレノイドモジュレータバルブから第2バルブ4020に供給されるPSM油圧をS2油圧としてCACV4200の第2入力ポート4208と、LRV4300の第3入力ポート4310に供給する。第2バルブ4020は、ECU8000からオン信号を受信しなくなった場合に、CACV4300の第2入力ポート4208およびLRV4300の第3入力ポート4310へのS2油圧の供給を停止する。なお、ソレノイドモジュレータバルブは、ライン圧を元圧として調整したPSM油圧を第1バルブ4010および第2バルブ4020に供給する。
SLU4100は、ECU8000からの入力される指令電流値に比例したスリップ制御用信号圧(以下、SLU油圧とも記載する)を発生させ、SLU油圧をLCV4600の第3入力ポート4606と、CACV4200の第1入力ポート4202とに供給する。SLU4100は、ライン圧を元圧として調整したSLU油圧をCACV4200およびLCV4600に供給する。
CACV4200は、CACV4200の上部に設けられ、第1バルブ4010からS1油圧が供給される第1入力ポート4202と、ライン圧が供給される第2入力ポート4204と、SLU4100からSLU油圧が供給される第3入力ポート4206と、CACV4200の下部に設けられ、第2バルブ4020からS2油圧が供給される第3入力ポート4208と、MV4400の入力ポート4402に接続される出力ポート4212とを含む。
CACV4200は、バルブ本体内部に摺動可能に設けられるスプール弁4210と、スプール弁4210を図2の紙面上方向に付勢力を作用させるスプリング4220とを含む。
第1バルブ4010がオンされ、第2バルブ4020がオフされる場合、第1入力ポート4202に供給されたS1油圧によって、図2の紙面下方向の力がスプール弁4210の上部に作用する。
S1油圧によって作用する力がスプリング4220の弾性力を上回ることによりスプール弁4210が図2の紙面下方向に移動した場合に、スプール弁4210は、図2の右側の状態になる。この場合、図3の太線に示すように、第3入力ポート4206と出力ポート4212とが連通するため、第3入力ポート4206に入力されるSLU油圧は、出力ポート4212を経由してMV4400の入力ポート4402に供給される。
第1バルブ4010がオフされ、第2バルブ4020がオンされる場合、第3入力ポート4208に供給されたS2油圧によって、図2の紙面上方向の力がスプール弁4210の下部に作用する。
S2油圧によって作用する力によりスプール弁4210が図2の紙面上方向に移動した場合に、スプール弁4210は、図2の左側の状態になる。この場合、図4の太線に示すように第3入力ポート4206と出力ポート4212とは遮断される。このとき、第2入力ポート4204と出力ポート4212とが連通するため、出力ポート4212を経由してライン圧がMV4400の入力ポート4402に供給される。
なお、第1バルブ4010および第2バルブ4020のいずれもがオフされる場合、スプリング4220の付勢力により、スプール弁4210は、図2の左側の状態となる。
ここで、第1バルブ4010がオンされ、第2バルブ4020がオフされる場合の図3の太線に示す油圧の経路を有する油圧回路4006が「第1の油圧回路」に対応し、第1バルブ4010がオフされ、第2バルブ4020がオンされる場合の図4の太線に示す油圧の経路を有する油圧回路4008が「第2の油圧回路」に対応する。
したがって、第1の油圧回路が選択された場合、SLU4100によってC1クラッチ3010に供給される油圧が調整可能となる。また、第2の油圧回路が選択された場合、SLU4100によってロックアップクラッチ4500に供給される油圧が調整可能となる。
MV4400は、ユーザーのシフトレバーの移動に応じて図2の紙面左右方向に摺動可能なスプール弁と、CACV4200の出力ポート4212から油圧(クラッチ圧)の供給を受ける入力ポート4402と、C1クラッチ3010と接続する第1出力ポート4404と、B1ブレーキ3020と接続する第2出力ポート4406とを含む。
たとえば、ユーザーによってDレンジが選択されている場合には、図2の状態となり、入力ポート4402と第1出力ポート4404とが連通する。そのため、CACV4200の出力ポート4212から供給される油圧がMV4400を経由してC1クラッチ3010に供給される。
また、ユーザーによってRレンジが選択されている場合には、入力ポート4402と第2出力ポートとが連通する。そのため、CACV4200の出力ポート4212から供給される油圧がMV4400を経由してB1ブレーキ3020に供給される。
以上のような構成を有する自動変速機2000においては、ECU8000は、車両の発進時に、C1クラッチ3010が解放状態あるいは半係合状態等の非係合状態である場合、C1クラッチ3010を係合させるための第1の油圧制御を実行する。第1の油圧制御は、非係合状態のC1クラッチ3010が係合状態になるようにC1クラッチ3010に供給される油圧を増加させる制御であって、たとえば、ニュートラル制御からの復帰制御である。
ECU8000は、第1の油圧制御の完了後に車両の走行状態に応じてロックアップクラッチ4500を係合させるための第2の油圧制御を実行する。第2の油圧制御は、車両の走行状態に基づいてロックアップクラッチのスリップ量が目標値に近づくようにロックアップクラッチ4500の係合状態の制御である。具体的には、第2の油圧制御は、ロックアップクラッチ4500のスリップ量が目標値になるようにロックアップクラッチ4500の係合側油室4506と解放側油室4508との圧力差を増減するスリップ制御である。
ECU8000は、第1の油圧制御の実行時に、第1バルブ4010をオンし、第2バルブ4020をオフすることによって第1の油圧回路を選択する。そして、ECU8000は、第2の油圧制御を実行するまでに第1バルブ4010をオフし、第2バルブ4020をオンすることによって第2の油圧回路を選択する。
しかしながら、このように、第1の油圧制御と第2の油圧制御とを連続して実行する場合には、第1の油圧制御が完了後、第2の油圧制御の実行時にロックアップクラッチ4500が急係合し、ショックが発生する場合がある。
SLU4100、第1の油圧制御の完了時におけるC1クラッチ3010に対する指示圧よりも小さい指示圧によって、第2の油圧制御の開始時にロックアップクラッチ4500に供給される油圧を調整する。そのため、第1の油圧制御の完了後にSLU4100の残圧が解消される前に第2の油圧回路が選択される場合があるため、第2の油圧制御の実行時にロックアップクラッチ4500が急係合する可能性がある。このような残圧は、SLU4100によって供給される油圧の応答遅れにより生じる。
そこで、本実施の形態においては、ECU8000が、車両の状態に基づいて第1の油圧制御が完了したか否かを判定し、第1の油圧制御が完了したと判定された場合に、SLU4100の残圧に応じた切換タイミングで、SLU4100による調整対象をC1クラッチ3010からロックアップクラッチ4500に切り換えるように第1バルブ4010および第2バルブ4020を制御する点に特徴を有する。
ECU8000は、第1の油圧制御が完了したと判定された場合に、SLU4100の指示圧の残圧が第2の油圧制御の開始時におけるロックアップクラッチ4500に対する指示圧以下に低下するタイミングで、調整対象がロックアップクラッチ4500になるように第1バルブ4010および第2バルブ4020を制御する。
また、本実施の形態において、ECU8000は、第1の油圧制御の完了時に、車両の走行状態(たとえば、アクセルペダルの踏み込み量あるいは油温等)に基づいてロックアップクラッチ4500のスリップ量の目標値を設定する。ECU8000は、スリップ量の目標値に基づいてロックアップクラッチ4500に対するSLU4100の指示圧を設定する。たとえば、ECU8000は、メモリ8050に予め記憶された指示圧と目標値との関係を示すマップを読み出して、スリップ量の目標値から指示圧を算出する。指示圧の設定の態様としては、上記したマップを用いたものに限定されるものではない。
図5に、本実施の形態に係る自動変速機用制御装置であるECU8000の機能ブロック図を示す。ECU8000は、完了判定部8102と、SLU・第1バルブ制御部8104と、経過時間判定部8106と、第2バルブ制御部8108とを含む。
完了判定部8102は、第1の油圧制御が完了したか否かを判定する。上述した通り、第1の油圧制御は、ニュートラル制御からの復帰制御である。
ニュートラル制御は、車両が予め定められた条件が成立する停止状態である場合に、C1クラッチ3010の係合力を弱めて、あるいはC1クラッチ3010を解放して、車両の停止中の燃費の悪化を抑制する制御である。ニュートラル制御を実行する予め定められた条件は、たとえば、アクセルオフかつブレーキオンかつブレーキマスタシリンダ圧が所定値以上かつ車速が所定値以下であるという条件である。
ECU8000は、予め定められた復帰条件が成立する場合に、ニュートラル制御から復帰する。ニュートラル制御からの復帰は、解放状態あるいは係合力が弱められた非係合状態のC1クラッチ3010を係合状態にすることにより行なわれる。予め定められた復帰条件は、上述の予め定められた条件が成立しないという条件であってもよいし、上述の予め定められた条件の各しきい値に対して制御ハンチングの生じない、ヒステリシスをもたせた新たなしきい値を条件としてもよい。
ニュートラル制御からの復帰制御は、C1クラッチ3010が係合状態となった時点で完了する。ECU8000は、たとえば、タービン回転数NTの実測値と、出力軸回転数NOの実測値とに基づいてC1クラッチ3010が係合状態となったか否かを判定する。具体的には、ECU8000は、タービン回転数NTの実測値に基づくC1クラッチ3010の入力軸側の第1の回転数と、変速比と出力軸回転数NOの実測値に基づくC1クラッチ3010の出力軸側の第2の回転数とが同期した場合(すなわち、第1の回転数と第2の回転数との差の絶対値が予め定められた値以下である場合)、C1クラッチ3010が係合状態となったと判定する。
なお、トルクコンバータ3200とプライマリプーリとの間に前後進切換機構が設けられる場合には、タービン回転数NTの実測値と、プライマリプーリ回転数の実測値とが同期したか否かによりC1クラッチ3010が係合状態となったか否かを判定するようにしてもよい。
なお、完了判定部8102は、たとえば、第1の油圧制御が完了したと判定した場合に、完了判定フラグをオンするようにしてもよい。
SLU・第1バルブ制御部8104は、完了判定部8102において第1の油圧制御が完了したと判定された場合に、第1バルブ4010をオフするように第1バルブ制御信号(すなわち、オン信号)の送信を停止する。なお、SLU・第1バルブ制御部8104は、たとえば、完了判定フラグがオンされた場合に、第1バルブ4010をオフするようにオフ信号を送信するようにしてもよい。
SLU・第1バルブ制御部8104は、完了判定部8102において第1の油圧制御が完了したと判定された場合に、SLU4100に対して待機圧を指示する。すなわち、SLU・第1バルブ制御部8104は、待機圧を指示するためのSLU制御信号をSLU4100に対して送信する。
このとき、本実施の形態においては、待機圧は、第2の油圧制御の開始時にショックが発生しない程度の油圧以下であれば、特に限定されるものではないが、たとえば、0KPaである。このようにすると、SLU4100の残圧を速やかに解消することができる。あるいは、待機圧は、第2の油圧制御を開始した場合におけるロックアップクラッチ4500のスリップ量の目標値に基づく指示圧に対応する油圧(スリップ制御用信号圧)であってもよいし、エンジン回転数の目標値に基づく油圧(スリップ制御用信号圧)であってもよい。このようにすると、第2の油圧制御の開始後に応答性よくロックアップクラッチ4500のスリップ制御を実行することができる。
また、本実施の形態においては、待機圧は、第1の油圧制御が完了してから第2の油圧制御が開始されるまでの間、維持するとして説明するが、特にこれに限定されるものではない。
SLU・第1バルブ制御部8104は、たとえば、第1の油圧制御が完了した直後においては、0Kpaを待機圧としてSLU4100に対して指示するとともに、第1の油圧制御が完了してから予め定められた待機時間経過後に待機圧を上述のスリップ量の目標値に基づく指示圧まで急激に上昇させてもよいし、予め定められた待機時間経過後にスリップ量の目標値に基づく指示圧になるまで予め定められた変化率で待機圧を線形に上昇させるようにしてもよいし、予め定められた待機時間経過後にスリップ量の目標値に基づく指示圧になるまで待機圧を非線形に上昇させるようにしてもよい。
なお、予め定められた待機時間は、第1の油圧制御が完了してから第2の油圧制御が開始されるまでの時間よりも短い時間である。このようにすると、第1の油圧制御の完了後にSLU4100の残圧を速やかに解消するとともに、第2の油圧制御開始時に応答性よくスリップ制御を実行することができる。
経過時間判定部8106は、第1バルブ4010がオフされての経過時間を計測し、計測された経過時間が切換時間を経過したか否かを判定する。なお、経過時間判定部8106は、たとえば、経過時間が切換時間を経過した場合に、経過判定フラグをオンするようにしてもよい。
切換時間は、少なくともSLU4100に対して待機圧が指示されてから、SLU4100の残圧が解消するまでの時間、すなわち、少なくとも第2の油圧制御の開始時にショックが発生しない程度の油圧以下まで低下する時間である。切換時間は、一定の時間であってもよいし、経過時間判定部8106に含まれる設定部8110によって車両の状態(たとえば、アクセルペダルの踏み込み量または油温等)に応じて設定される時間であってもよい。
設定部8110は、たとえば、上述の車両の状態に加えてまたは代えて、第1の油圧制御の完了直後のSLU4100の残圧に基づいて切換時間を設定するようにしてもよいし、第1の油圧制御の完了直後のSLU4100の残圧と第2の油圧制御の開始時のSLU4100の指示圧との差圧に基づいて切換時間を設定するようにしてもよい。
アクセルペダルの踏み込み量あるいはエンジン1000において発生するトルク等に応じて第1の油圧制御の完了直後のSLU4100の指示圧の残圧が変化するためである。
設定部8110によって、たとえば、SLU4100の第1の残圧(あるいは、第1の差圧)に対応する第1の切換時間を、第1の残圧よりも低い第2の残圧(あるいは、第2の差圧)に対応する第2の切換時間よりも長くなるように設定することにより、SLU4100の残圧(あるいは、差圧)が小さい場合には応答性よくSLU4100の調整対象を切換つつ、残圧が大きい場合には、第2の油圧制御を開始するまでにSLU4100の残圧を確実に解消することができる。
このように切換時間を最適化することにより第1の油圧制御から第2の油圧制御への切換時の応答だけでなく、エンジン回転数の吹き上がりを防止することができる。第1の油圧制御の完了直後のSLU4100の残圧は、油圧センサを用いて直接検出してもよいし、アクセルペダル8008の踏み込み量、エンジン1000の回転数、スロットル開度あるいは自動変速機2000の油温のうちの少なくともいずれか一つの物理量と、当該物理量と残圧との関係を示すマップとによって推定するようにしてもよい。
第2バルブ制御部8108は、経過時間判定部8106によって第1バルブ4010がオフされてからの経過時間が切換時間以上であると判定された場合に、第2バルブ4020がオンするように第2バルブ制御信号(すなわち、オン信号)を送信する。なお、第2バルブ制御部8108は、たとえば、経過判定フラグがオンされた場合に、第2バルブ4020をオンするようにオン信号を送信するようにしてもよい。
本実施の形態において、完了判定部8102と、SLU・第1バルブ制御部8104と、経過時間判定部8106と、第2バルブ制御部8108と、設定部8110とは、いずれもECU8000のCPUがメモリ8050に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
図6を参照して、本実施の形態に係る自動変速機用制御装置であるECU8000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU8000は、ニュートラル制御からの復帰が完了したか否かを判定する。ECU8000は、ニュートラル制御からの復帰が完了したと判定された場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS100に戻され、ニュートラル制御からの復帰が完了するまで待機する。
S102にて、ECU8000は、SLU4100に対して待機圧を指示する。待機圧について上述したとおりであり、その詳細な説明は繰返さない。S104にて、ECU8000は、第1バルブ4010をオフする。なお、待機圧の指示と第1バルブ4020のオフとは順序を入れ替えてもよいし、同時に行なうようにしてもよい。
また、S102にて、待機圧の指示とともに切換時間の設定を行なうようにしてもよいし、S104にて、第1バルブ4020のオフとともに切換時間の設定を行なうようにしてもよい。
S106にて、ECU8000は、第1バルブ4010がオフされてから切換時間が経過したか否かかを判定する。第1バルブ4010がオフされてから切換時間が経過した場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S106にてNO)、処理はS106に戻され、切換時間が経過するまで待機する。
S108にて、ECU800は、第2バルブ4020をオンして、第2の油圧制御すなわちロックアップクラッチ4500に対する油圧制御(L/U制御)を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る自動変速機用制御装置であるECU8000の動作について図7を参照して説明する。
たとえば、自動変速機2000に対してニュートラル制御が実行されている場合を想定する。
このとき、油圧の調整対象がC1クラッチ3010であるため、第1バルブ4010がオンされ、第2バルブ4020がオフされた状態である。また、ニュートラル制御の実行中においては、C1クラッチ3010は、解放状態が維持されるか、予め定められた油圧を維持するかいずれかの油圧制御が実行される。
時間T(0)にて、予め定められた復帰条件が成立した場合に、ニュートラル制御からの復帰制御が開始される。そのため、ECU8000は、SLU4100に対する指示圧Psluを上昇させて、C1クラッチ3010を係合させるための第1の油圧制御を実行する。
時間T(1)にて、タービン回転数NTの実測値(図7の実線)、すなわち、C1クラッチ3010の入力軸側の第1の回転数が出力軸回転数NOと変速比とに基づくC1クラッチ3010の出力軸側の第2の回転数(図7の細実線)と同期したときにニュートラル制御からの復帰制御が完了したと判定される(S100にてYES)。そのため、ECU8000は、第1バルブ4010をオフして(S102)、SLU4100に対して待機圧を指示圧Psluとして指示する(S104)。
第1バルブ4010および第2バルブ4020がいずれもオフされた場合、CACV4200およびLRV4300はいずれも図2の左側の状態となる。このとき、LRV4300の第1入力ポート4306と第1出力ポート4304とが遮断された状態となる。そのため、SLU4100の残圧によってロックアップクラッチ4500が係合されることはない。また、SLU4100に対して待機圧が指示圧Psluとして指示されることにより時間T(1)以降、SLU4100の残圧は低下していく。
時間T(2)において、第1バルブ4010がオフされてから切換時間が経過したため(S106にてYES)、ECU8000は、第2バルブ4020をオンして、第2の油圧制御を実行する(S108)。すなわち、SLU4100は、スリップ量が目標値になるようにロックアップクラッチ4500に対する指示圧を出力する。時間T(2)以降、指示圧Psluが増加していくことにより、ロックアップクラッチ4500が係合していく。
以上のようにして、本実施の形態に係る自動変速機用制御装置によると、第1の油圧制御が完了したと判定された場合に、SLU4100の残圧に応じた切換タイミングで、C1クラッチ3010からロックアップクラッチ4500に調整対象を切り換えるように第1バルブ4010および第2バルブ4020を制御することにより、第2の油圧制御を実行するまでにSLU4100の残圧を解消できるため、第2の油圧制御を実行した場合にロックアップクラッチの急係合によるショックの発生を抑制することができる。
また、第1の油圧制御が完了したと判定された場合に、SLU4100の指示圧の残圧が第2の油圧制御の開始時におけるロックアップクラッチ4500の指示圧以下に低下するタイミングを、切換タイミングとすることにより、第2の油圧制御を実行した場合にロックアップクラッチの急係合によるショックの発生を抑制することができる。
さらに、ロックアップクラッチのスリップ量の目標値に応じて第2の油圧制御の開始時におけるロックアップクラッチの指示圧を設定することにより、第2の油圧制御の開始時の油圧の応答性の向上が図れる。
本実施の形態においては、ニュートラル制御からの復帰制御を第1の油圧制御として説明したが、C1クラッチ3010を係合させる制御は、ニュートラル制御からの復帰制御に限定されるものではない。
たとえば、アイドリングストップ車両(いわゆる、エコラン車)においても、エンジンを一時停止した後、予め定められた復帰条件が成立してエンジンを再始動させる場合に、C1クラッチ3010を係合させる制御が行なわれる。そのため、エンジンの最始動時のC1クラッチ3010を係合させる制御を上述の第1の油圧制御として本発明を適用してもよい。
あるいは、運転者がシフトレバーを操作して、NレンジからDレンジにシフトレンジが切り換えられる場合に、C1クラッチ3010を係合させる制御が行なわれる。そのため、NレンジからDレンジからの切換時のC1クラッチ3010を係合させる制御を上述の第1の油圧制御として本発明を適用してもよい。
さらに、本実施の形態においては、第1バルブ4010をオフしてから切換時間経過後に第2バルブ4020をオンするとして説明したが、特にこれに限定されるものではなく、たとえば、SLU4100の残圧を検出する油圧センサを設け、油圧センサの検出結果に基づくSLU4100の残圧が予め定められた圧力以下である場合に第2バルブ4020をオンするようにしてもよい。なお、予め定められた圧力は、たとえば、第2の油圧制御の実行時における指示圧である。
このように切換タイミングをSLU4100の残圧の実測値に基づいて変更するようにしても、本実施の形態において説明した構成と同様の作用効果を奏する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。