JP2011241963A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】発進時ロックアップスリップ制御から定常時ロックアップスリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を図る。
【解決手段】発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFと実スリップ量NSとに基づいて、その移行時のLUクラッチ圧指令値SSLUの設定方法が変更されるので、例えばその移行時にロックアップクラッチ33の係合ショックが発生し難いように、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFや実スリップ量NSに合ったLUクラッチ圧指令値SSLUを設定することができる。具体的には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さく且つ実スリップ量NSが比較的小さいときに発生し易くなるロックアップクラッチ33の急係合ショックの発生を抑制するように、LUクラッチ圧指令値SSLUを設定することができる。
【選択図】図12
【解決手段】発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFと実スリップ量NSとに基づいて、その移行時のLUクラッチ圧指令値SSLUの設定方法が変更されるので、例えばその移行時にロックアップクラッチ33の係合ショックが発生し難いように、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFや実スリップ量NSに合ったLUクラッチ圧指令値SSLUを設定することができる。具体的には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さく且つ実スリップ量NSが比較的小さいときに発生し易くなるロックアップクラッチ33の急係合ショックの発生を抑制するように、LUクラッチ圧指令値SSLUを設定することができる。
【選択図】図12
Description
本発明は、車両走行時にロックアップスリップ制御を行う車両用動力伝達装置の制御装置に関するものである。
例えば、エンジンの動力を無段変速機や多段変速機等の変速機へ伝達する流体伝動装置(例えばトルクコンバータやフルードカップリング等)の入出力間を直結可能なロックアップクラッチを備える車両が良く知られている。例えば、特許文献1−5に記載された車両がそれである。一般に、このようなロックアップクラッチは、燃費の向上等を目的として予め設定された関係から車両状態に基づいてその係合・解放が判断され、例えば車両の走行状態がロックアップ領域内に入るとロックアップ制御が開始される。更に、上記予め設定された関係から車両状態に基づいてロックアップクラッチに所定の滑りを与えることにより広い走行範囲でロックアップ作動を可能とするスリップ制御(ロックアップスリップ制御、フレックスロックアップ制御)を実施することで、ロックアップ制御領域を拡大させて燃費を向上させることを可能としている。このようなスリップ制御では、例えばロックアップクラッチの入出力回転速度差(入出力間の差回転速度、スリップ回転速度、スリップ量)を目標値とするようにフィードバック制御によりロックアップクラッチのトルク容量(ロックアップクラッチ圧指令値)を制御している。
ここで、車両発進に際して、ロックアップクラッチのスリップ制御を実施することで、例えばエンジン回転速度の上昇を抑制して燃費を向上させる発進時スリップ制御が提案されている。この発進時スリップ制御は、ロックアップクラッチのスリップ量(例えばエンジン回転速度と車速に拘束されるタービン回転速度との回転速度差)が比較的大きな発進時からの制御となることから、例えばオープン制御(フィードフォワード制御)のみにてロックアップクラッチのトルク容量が制御される。そして、上記予め設定された関係から車両状態に基づいて通常のスリップ制御(以下、定常時スリップ制御)を実行する為のスリップ制御作動領域に入ったと判断されると、ロックアップクラッチのトルク容量の制御がフィードフォワード制御からフィードバック制御を主体とした制御に切り換えられる。従って、この発進時スリップ制御は、定常時スリップ制御に移行する為に、車両発進時からスリップ制御を実行する制御とみることもできる。
ところで、上記発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時には、例えば定常時スリップ制御における目標値に向かってロックアップクラッチ圧指令値を漸増して、滑らかにクラッチ圧を上昇させることが考えられる。このとき、スリップ量がある程度大きいと、クラッチ圧の上昇によりスリップ量を滑らかに小さくしていくことが可能である為、クラッチの係合ショックは発生し難い。一方で、スリップ量が比較的小さい場合には、実クラッチ圧の上昇による結果(要因[1])、ロックアップクラッチは解放しているが、例えば降坂路走行中の為に車速が上昇して、タービン回転速度がエンジン回転速度に近づいた結果(要因[2])などの要因が考えられる。このような場合、発進時スリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値がある程度大きければ上記要因[1]であると推定できるので、定常時スリップ制御への移行時にクラッチの係合ショックは発生し難いと考えられる。しかしながら、ロックアップクラッチ圧指令値が比較的小さければ、上記要因[1]、要因[2]の何れの要因によるものなのか特定できない。そうすると、上記要因[2]の車両状態であるときに一律の時間で定常時スリップ制御における目標値に向かってロックアップクラッチ圧指令値を漸増すると、クラッチの急係合ショックが発生し易くなる可能性がある。つまり、一律の時間で定常時スリップ制御における目標値に向かってロックアップクラッチ圧指令値を漸増させる場合を考えると、発進時スリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が比較的小さいときの方がある程度大きいときと比べて、ロックアップクラッチ圧指令値の上昇勾配が急となる。このとき、スリップ量が比較的小さいと、クラッチの急係合ショックが発生し易くなる可能性がある。尚、このような課題は未公知である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、発進時ロックアップスリップ制御から定常時ロックアップスリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を図ることができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) エンジンの動力を自動変速機へ伝達する流体伝動装置の入出力回転部材間を直結可能なロックアップクラッチを備え、車両走行時に前記ロックアップクラッチをスリップ係合させるロックアップスリップ制御を行う車両用動力伝達装置の制御装置であって、(b) 前記ロックアップスリップ制御は、車両発進に際して、エンジン回転速度が目標値となるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させる発進時ロックアップスリップ制御と、車両走行に際して、スリップ回転速度が目標値となるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させる定常時ロックアップスリップ制御とを含み、(c) 前記発進時ロックアップスリップ制御から前記定常時ロックアップスリップ制御への移行時には、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値と実スリップ回転速度とに基づいて、その移行時のロックアップクラッチ圧指令値の設定方法を変更することにある。
このようにすれば、前記発進時ロックアップスリップ制御から前記定常時ロックアップスリップ制御への移行時には、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値と実スリップ回転速度とに基づいて、その移行時のロックアップクラッチ圧指令値の設定方法が変更されるので、例えばその移行時にクラッチの係合ショックが発生し難いように、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値や実スリップ回転速度に合ったロックアップクラッチ圧指令値を設定することができる。具体的には、発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が比較的小さく且つ実スリップ回転速度が比較的小さいときに発生し易くなるクラッチの急係合ショックの発生を抑制するように、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値や実スリップ回転速度に合わせてロックアップクラッチ圧指令値を設定することができる。よって、発進時ロックアップスリップ制御から定常時ロックアップスリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を図ることができる。
ここで、好適には、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値から前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて漸増させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することにある。このようにすれば、例えば発進時ロックアップスリップ制御から定常時ロックアップスリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を適切に図ることができる。
また、好適には、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さい場合には、前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて漸増させることに先立ってその漸増させるよりも速やかに上昇させた一定圧にて定圧待機させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することにある。このようにすれば、例えば前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さい為に前記移行時の実クラッチ圧の初期応答性(見方を換えればロックアップクラッチの係合側への初期作動)が低下する可能性があることに対して、速やかに上昇させた一定圧にて定圧待機させることでその実クラッチ圧の初期応答性が向上(確保)される。
また、好適には、前記実スリップ回転速度が所定スリップ回転速度より小さい場合には、その実スリップ回転速度がその所定スリップ回転速度以上である場合と比較して、前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて緩やかに漸増させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することにある。このようにすれば、例えば発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さく且つ実スリップ回転速度が所定スリップ回転速度より小さいときに発生し易くなるクラッチの急係合ショックの発生を適切に抑制できる。
また、好適には、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さく、且つ前記実スリップ回転速度が所定スリップ回転速度より小さい場合には、その実スリップ回転速度がその所定スリップ回転速度以上である場合と比較して、前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて緩やかに漸増させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することにある。このようにすれば、例えば発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さく且つ実スリップ回転速度が所定スリップ回転速度より小さいときに発生し易くなるクラッチの急係合ショックの発生を適切に抑制できる。
また、好適には、前記発進時ロックアップスリップ制御は、車両に対する加速要求量に応じて設定される目標値以上に前記エンジン回転速度が吹け上がるのを抑制するように、その加速要求量に基づいて一定のロックアップクラッチ圧指令値を設定するフィードフォワード制御であり、前記定常時ロックアップスリップ制御は、前記スリップ回転速度の実際値と目標値との偏差に基づいてロックアップクラッチ圧指令値を逐次設定するフィードバック制御である。このようにすれば、例えば発進時ロックアップスリップ制御から定常時ロックアップスリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を図ることができる。
また、好適には、前記自動変速機は、例えば複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される例えば前進4段、前進5段、前進6段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式自動変速機、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機、或いはエンジン軸や出力軸などに動力伝達可能に電動機が備えられる所謂パラレル式のハイブリッド車両に搭載される自動変速機などにより構成される。また、前記自動変速機の車両に対する搭載姿勢は、その自動変速機の軸線が車両の幅方向となるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型でも、その自動変速機の軸線が車両の前後方向となるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両などの縦置き型でも良い。
また、好適には、上記係合装置としては、油圧アクチュエータによって係合させられる多板式、単板式のクラッチやブレーキ等の摩擦係合装置が広く用いられる。この油圧式摩擦係合装置を係合させるための作動油を供給するオイルポンプは、走行用の駆動力源により駆動されて作動油を吐出するものでも良いが、例えば駆動力源とは別に配設された専用の電動モータなどで駆動されるものでも良い。この油圧式摩擦係合装置を含む油圧制御回路は、例えば電磁弁装置としてのリニアソレノイドバルブの出力油圧を直接的に油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)にそれぞれ供給することが応答性の点で望ましいが、そのリニアソレノイドバルブの出力油圧をパイロット油圧として用いることによりシフトコントロールバルブ(変速制御弁)を制御して、そのコントロールバルブから油圧アクチュエータに作動油を供給するように構成することもできる。また、上記リニアソレノイドバルブは、例えば複数の油圧式摩擦係合装置の各々に対応して1つずつ設けられるが、同時に係合したり係合、解放制御したりすることがない複数の油圧式摩擦係合装置が存在する場合には、それ等に共通のリニアソレノイドバルブを設けることもできるなど、種々の態様が可能である。また、必ずしも全ての油圧式摩擦係合装置の油圧制御をリニアソレノイドバルブで行う必要はなく、一部乃至全ての油圧制御をON−OFFソレノイドバルブのデューティ制御など、リニアソレノイドバルブ以外の調圧手段で行っても良い。
また、好適には、前記エンジンとしては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関が広く用いられる。さらに、補助的な走行用の駆動力源として、電動機等がこのエンジンに加えて用いられても良い。
尚、この明細書で「油圧を供給する」という場合は、「油圧を作用させ」或いは「その油圧に制御された作動油を供給する」ことを意味する。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両10に備えられた自動変速機12の構成を説明する骨子図である。図2は自動変速機12の複数のギヤ段GS(変速段GS)を成立させる際の摩擦係合装置の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機12は、車両10の左右方向(横置き)に搭載するFF車両に好適に用いられるものであって、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース14(以下、ケース14)内において、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置16を主体として構成されている第1変速部18と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置20及びシングルピニオン型の第3遊星歯車装置22を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部24とを共通の軸心C上に有し、入力軸26の回転を変速して出力歯車28から出力する。入力軸26は、自動変速機12の入力回転部材に相当するものであり、本実施例では走行用の駆動力源であるエンジン30によって回転駆動される流体伝動装置としてのトルクコンバータ32のタービン軸と一体的に構成されている。また、出力歯車28は、自動変速機12の出力回転部材に相当するものであり、本実施例では例えば図3に示す差動歯車装置34に動力を伝達する為に、デフリングギヤ35と噛み合うことでファイナルギヤ対を構成するデフドライブピニオンと同軸上に配置されたカウンタドリブンギヤと噛み合ってカウンタギヤ対を構成するカウンタドライブギヤとして機能している。そして、このように構成された自動変速機12等において、エンジン30の出力は、トルクコンバータ32、自動変速機12、差動歯車装置34、及び一対の車軸36等を含む車両用動力伝達装置11を順次介して左右の駆動輪38へ伝達されるようになっている(図3参照)。尚、自動変速機12やトルクコンバータ32は中心線(軸心)Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
トルクコンバータ32は、エンジン30のクランク軸31に連結されたポンプ翼車32p、トルクコンバータ32のタービン軸(入力軸26に相当)を介して自動変速機12に連結されたタービン翼車32t、及び一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ翼車32sとを備えており、ポンプ翼車32pとタービン翼車32tとの間で流体を介して動力伝達を行うようになっている。すなわち、本実施例のトルクコンバータ32においては、ポンプ翼車32pが入力回転部材に、タービン翼車32tが出力回転部材にそれぞれ対応し、流体を介してエンジン30の動力が自動変速機12側へ伝達される。また、ポンプ翼車32p及びタービン翼車32tの間には、それらの間すなわちトルクコンバータ32の入出力回転部材間を直結可能なロックアップクラッチ33が設けられている。また、ポンプ翼車32pには、自動変速機12を変速制御したり、ロックアップクラッチ33の作動を制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりする為の元圧となる作動油圧をエンジン30によって回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ40が連結されている。
ロックアップクラッチ33は、良く知られているように、油圧制御回路110によって係合側油室32on内の油圧PONと解放側油室32off内の油圧POFFとの差圧ΔP(=PON−POFF)が制御されることによりフロントカバー32cに摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである(図5参照)。トルクコンバータ32の運転状態としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ33が解放される所謂ロックアップ解放(ロックアップオフ)、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ33が滑りを伴って半係合される所謂ロックアップスリップ状態(スリップ状態)、及び差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ33が完全係合される所謂ロックアップ状態(係合状態、ロックアップオン)の3状態に大別される。例えば、ロックアップクラッチ33が完全係合(ロックアップオン)させられることにより、ポンプ翼車32p及びタービン翼車32tが一体回転させられてエンジン30の動力が自動変速機12側へ直接的に伝達される。また、所定のスリップ状態でスリップ係合するように差圧ΔPが制御されることにより、例えば入出力回転速度差(すなわちスリップ回転速度(スリップ量)=エンジン回転速度NE−タービン回転速度NT)NSがフィードバック制御されることにより、車両10の駆動(パワーオン)時には所定のスリップ量でタービン軸をクランク軸31に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には所定のスリップ量でクランク軸31をタービン軸に対して追従回転させるロックアップスリップ制御が行われる。尚、ロックアップクラッチ33のスリップ状態においては、例えば差圧ΔPが零とされることによりそのロックアップクラッチ33のトルク分担がなくなって、トルクコンバータ32は、ロックアップオフと同等の運転条件とされる。
自動変速機12は、第1変速部18及び第2変速部24の各回転要素(サンギヤS1−S3、キャリアCA1−CA3、リングギヤR1−R3)のうちの何れかの連結状態の組み合わせに応じて第1ギヤ段「1st」−第6ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段(前進変速段)が成立させられると共に、後進ギヤ段「R」の後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。図2に示すように、例えば前進ギヤ段では、クラッチC1とブレーキB2との係合により第1速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB1との係合により第2速ギヤ段が、クラッチC1とブレーキB3との係合により第3速ギヤ段が、クラッチC1とクラッチC2との係合により第4速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB3との係合により第5速ギヤ段が、クラッチC2とブレーキB1との係合により第6速ギヤ段が、それぞれ成立させられる。また、ブレーキB2とブレーキB3との係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、及びブレーキB1−B3の何れもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。
図2の作動表は、上記各ギヤ段GSとクラッチC1、C2、及びブレーキB1−B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。尚、第1ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられている為、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。つまり、発進時にはクラッチC1のみを係合させれば良く、例えば公知のニュートラル制御からの復帰時にはこのクラッチC1が係合させられる。このように、このクラッチC1は発進クラッチとして機能する。また、各ギヤ段GSの変速比γGS(=入力軸26の回転速度NIN/出力歯車28の回転速度NOUT)は、第1遊星歯車装置16、第2遊星歯車装置20、及び第3遊星歯車装置22の各ギヤ(歯車)比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
上記クラッチC1、C2、及びブレーキB1−B3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、例えば多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御され、係合によりエンジン30の動力を駆動輪38側へ伝達する油圧式摩擦係合装置である。そして、油圧制御回路110内のリニアソレノイドバルブSL1−SL5(図3,4参照)の励磁、非励磁や電流制御により、各クラッチC及びブレーキBの係合、解放状態が切り換えられると共に、係合、解放時の過渡係合油圧などが制御される。
図3は、エンジン30や自動変速機12などを制御する為に車両10に設けられた電気的な制御系統の要部を説明するブロック線図である。図3において、車両10には、例えば車両走行時にロックアップクラッチ33をスリップ係合させるロックアップスリップ制御(スリップ制御)を行う制御装置を含む電子制御装置50が備えられている。この電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン30の出力制御や自動変速機12の変速制御やロックアップクラッチ33のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用のエンジン制御装置や自動変速機12の変速制御用の油圧制御装置やロックアップクラッチ33の油圧制御用の油圧制御装置等に分けて構成される。
電子制御装置50には、例えば作動油温センサ52により検出された油圧制御回路110内の作動油(例えば公知のATF)の温度である作動油温THOILを表す信号、アクセル開度センサ54により検出された運転者による車両10に対する加速要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダル56の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、エンジン回転速度センサ58により検出されたエンジン30の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、冷却水温センサ60により検出されたエンジン30の冷却水温THWを表す信号、吸入空気量センサ62により検出されたエンジン30の吸入空気量QAIRを表す信号、スロットル弁開度センサ64により検出された電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θTHを表す信号、車速センサ66により検出された車速Vに対応する出力歯車28の回転速度である出力回転速度NOUTを表す信号、ブレーキスイッチ68により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダル70の操作(ブレーキオン)BONを表す信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバー74のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)PSHを表す信号、タービン回転速度センサ76により検出されたトルクコンバータ32のタービン軸の回転速度であるタービン回転速度NT(すなわち入力軸26の回転速度である入力回転速度NIN)を表す信号などがそれぞれ供給される。
また、電子制御装置50からは、例えばエンジン30の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SEとして、アクセル開度Accに応じて電子スロットル弁の開閉を制御する為のスロットルアクチュエータへの駆動信号や燃料噴射装置から噴射される燃料噴射量を制御する為の噴射信号やイグナイタによるエンジン30の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、例えば自動変速機12の変速制御の為の油圧制御指令信号SPとして、自動変速機12のギヤ段GSを切り換える為に油圧制御回路110内のリニアソレノイドバルブSL1−SL5の励磁、非励磁などを制御する為のバルブ指令信号(油圧指令信号、油圧指令値、駆動信号)や第1ライン油圧PL1などを調圧制御する為のリニアソレノイドバルブSLTへの油圧指令信号などが出力される。また、例えばロックアップクラッチ33の係合、解放、及びスリップ量NS(=NE−NT)を制御する為のロックアップ制御指令信号SLとして、油圧制御回路110内に備えられたソレノイド弁SL及びリニアソレノイド弁SLU(図5参照)を駆動する為の油圧指令信号などが油圧制御回路110へ出力される。
また、シフトレバー74は、例えば運転席の近傍に配設され、図3に示すように、5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、または「S」へ手動操作されるようになっている。「P」ポジション(レンジ)は自動変速機12内の動力伝達経路を解放しすなわち自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力歯車28の回転を阻止(ロック)する為の駐車ポジション(位置)である。また、「R」ポジションは自動変速機12の出力歯車28の回転方向を逆回転とする為の後進走行ポジション(位置)である。また、「N」ポジションは自動変速機12内の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とする為の中立ポジション(位置)である。また、「D」ポジションは自動変速機12の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で第1ギヤ段「1st」−第6ギヤ段「6th」の総ての前進ギヤ段を用いて自動変速制御を実行させる前進走行ポジション(位置)である。また、「S」ポジションはギヤ段の変化範囲を制限する複数種類の変速レンジすなわち高車速側のギヤ段が異なる複数種類の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行ポジション(位置)である。
上記「D」ポジションは自動変速機12の変速可能な例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速制御が実行される制御様式である自動変速モードを選択するレバーポジションでもあり、「S」ポジションは自動変速機12の各変速レンジの最高速側ギヤ段を超えない範囲で自動変速制御が実行されると共にシフトレバー74の手動操作により変更された変速レンジ(すなわち最高速側ギヤ段)に基づいて手動変速制御が実行される制御様式である手動変速モードを選択するレバーポジションでもある。尚、この実施例では、シフトレバー74が「S」ポジションに操作されることにより、最高速側の変速レンジが設定される(シフトレンジ固定)ものであったが、シフトレバー74の操作に基づいて変速段(ギヤ段)が指定される(ギヤ段固定)ものであっても構わない。この場合、自動変速機12ではマニュアルシフト操作される度にその操作に対応する所望のギヤ段となるように変速制御が実行される。
図4は、油圧制御回路110のうちクラッチC1、C2、及びブレーキB1−B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)ACT1−ACT5の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1−SL5に関する油圧制御回路の要部を示す図である。また、図5は、油圧制御回路110のうちロックアップクラッチ33の作動制御等に関する油圧制御回路の要部を示す図である。
図4において、油圧供給装置112は、エンジン30によって回転駆動される機械式のオイルポンプ40(図1参照)から発生する油圧を元圧として第1ライン油圧PL1を調圧する例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1調圧弁)114と、そのプライマリレギュレータバルブ114から排出される油圧を元圧として第2ライン油圧PL2を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(第2調圧弁)116と、スロットル弁開度θTHや吸入空気量QAIR等で表されるエンジン負荷等に応じた第1ライン油圧PL1及び第2ライン油圧PL2が調圧される為にプライマリレギュレータバルブ114及びセカンダリレギュレータバルブ116へ信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLTと、第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータ油圧PMを一定値に調圧するモジュレータバルブ118とを備えている。また、油圧供給装置112は、シフトレバー74の操作に基づいて機械的或いは電気的に油路が切り換えられるマニュアルバルブ120を備えている。このマニュアルバルブ120は、例えばシフトレバー74が「D」ポジション或いは「S」ポジションへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をドライブ油圧PDとして出力し、シフトレバー74が「R」ポジションへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をリバース油圧PRとして出力し、シフトレバー74が「P」ポジション或いは「N」ポジションへ操作されたときには、油圧の出力を遮断する(ドライブ油圧PD及びリバース油圧PRを排出側へ導く)。このように、油圧供給装置112は、第1ライン油圧PL1、第2ライン油圧PL2、モジュレータ油圧PM、ドライブ油圧PD、及びリバース油圧PRを出力するようになっている。
また、油圧制御回路110には、各油圧アクチュエータACT1−ACT5に対応して、リニアソレノイドバルブSL1−SL5(以下特に区別しない場合はリニアソレノイドバルブSLと記載する)がそれぞれ設けられている。油圧アクチュエータACT1、ACT2、ACT3、ACT5には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL3、SL5により、油圧供給装置112からそれぞれ供給されたドライブ油圧PDが電子制御装置50からの各指令信号に応じた各係合油圧PC1、PC2、PB1、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給される。また、各油圧アクチュエータACT4には、対応するリニアソレノイドバルブSL4により、油圧供給装置112から供給された第1ライン油圧PL1が電子制御装置50からの指令信号に応じた係合油圧PB2に調圧されて直接的に供給される。尚、ブレーキB3の油圧アクチュエータACT5には、リニアソレノイドバルブSL5により調圧された係合油圧PB3またはリバース油圧PRのどちらかがシャトル弁122を介して供給されるようになっている。
リニアソレノイドバルブSL1−SL5は、基本的には何れも同じ構成であり、電子制御装置50によりそれぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御がなされて各油圧アクチュエータACT1−ACT5へ供給される油圧を独立に調圧制御し、クラッチC1、C2、及びブレーキB1−B3の係合油圧(クラッチ圧)PC1、PC2、及び係合油圧(ブレーキ圧)PB1、PB2、PB3をそれぞれ制御するものである。例えば、クラッチC1を例にすれば、電子制御装置50から供給されるC1クラッチ圧指令値に対応する駆動電流ISL1に応じたC1クラッチ圧PC1がリニアソレノイドバルブSL1から出力される。そして、自動変速機12は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各ギヤ段GSが成立させられる。また、自動変速機12の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放側摩擦係合装置と係合側摩擦係合装置との掴み替えによる所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。このクラッチツゥクラッチ変速の際には、変速ショックを抑制しつつ可及的に速やかに変速が実行されるように解放側摩擦係合装置の解放過渡係合油圧と係合側摩擦係合装置の係合過渡係合油圧とが適切に制御される。例えば、図2の係合作動表に示すように3速→4速のアップシフトでは、ブレーキB3が解放されると共にクラッチC2が係合され、変速ショックを抑制するようにブレーキB3の解放過渡油圧とクラッチC2の係合過渡油圧とが適切に制御される。
図5において、油圧制御回路110は、電子制御装置50から供給されるSL指示(SL指令)信号SSLに対応するオンオフ信号によってオンオフ作動させられて切換用信号圧PSLを発生させる切換用ソレノイド弁SLと、ロックアップクラッチ33の解放状態と係合或いはスリップ状態とを切り換える為のロックアップリレーバルブ124と、電子制御装置50から供給されるロックアップクラッチ圧指令値(LUクラッチ圧指令値、SLU指示圧)SSLUに対応する駆動電流ISLUに応じた信号圧PSLUを出力するスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUと、ロックアップリレーバルブ124によりロックアップクラッチ33が係合或いはスリップ状態とされているときに信号圧PSLUに従ってロックアップクラッチ33のスリップ量NSを制御したりロックアップクラッチ33を係合させる為の(すなわちロックアップクラッチ33の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換える為の)ロックアップコントロールバルブ126と、作動油を冷却する為のオイルクーラ128とを、備えている。
ロックアップリレーバルブ124は、接続状態を切り換える為のスプール弁子130を備え、切換用信号圧PSLに応じてロックアップクラッチ33を解放状態とする解放側位置(オフ側位置)とロックアップクラッチ33を係合或いはスリップ状態とする係合側位置(オン側位置)とに切り換えられる。図5においては、中心線より左側がロックアップクラッチ33の解放状態であるオフ側位置(OFF)にスプール弁子130が位置された状態を示しており、中心線より右側が係合或いはスリップ状態であるオン側位置(ON)にスプール弁子130が位置された状態を示している。具体的には、ロックアップリレーバルブ124は、解放側油室32offと連通する解放側ポート132と、係合側油室32onと連通する係合側ポート134と、第2ライン油圧PL2が供給される入力ポート136と、ロックアップクラッチ33の解放時に係合側油室32on内の作動油が排出されると共にそのロックアップクラッチ33の係合時にセカンダリレギュレータバルブ116から流出させられた作動油(PREL)が排出される排出ポート138と、ロックアップクラッチ33の係合時に解放側油室32off内の作動油が排出される迂回ポート140と、セカンダリレギュレータバルブ116から流出させられた作動油(PREL)が供給されるリリーフポート142と、スプール弁子130をオフ側位置に向かって付勢する為のスプリング144と、及びスプール弁子130の端面に切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSLを受け入れる油室146とを備えている。
ロックアップコントロールバルブ126は、スプール弁子148と、そのスプール弁子148をスリップ(SLIP)側位置に向かって付勢する為のスプリング150と、スプール弁子148をスリップ側に位置向かって付勢する為にトルクコンバータ32の係合側油室32on内の油圧PONを受け入れる油室152と、スプール弁子148を完全係合(ON)側位置に向かって付勢する為にトルクコンバータ32の解放側油室32off内の油圧POFFを受け入れる油室154と、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUから出力される信号圧PSLUが供給される油室156と、第2ライン油圧PL2が供給される入力ポート158と、ロックアップリレーバルブ124の迂回ポート140から出力される油圧が供給される制御ポート160とを備えている。尚、図5においては、中心線より左側がスリップ(SLIP)側位置にスプール弁子148が位置された状態を示しており、中心線より右側が完全係合(ON)側位置にスプール弁子148が位置された状態を示している。
スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUは、電子制御装置50からの指令に従って、ロックアップクラッチ33の係合乃至スリップ係合時におけるその係合圧を制御する信号圧PSLUを出力するものである。例えば、モジュレータ油圧PMを元圧とし、そのモジュレータ油圧PMを減圧して信号圧PSLUを出力する電磁制御弁であって、電子制御装置50から供給されるLUクラッチ圧指令値SSLUに対応する駆動電流(励磁電流)ISLUに比例した信号圧PSLUを発生させる。また、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUのドレーンポート162は、チェックボール164に連通されている為、そのチェックボール164によって常時塞がれており、そのチェックボール164に所定以上の圧力がかかると開弁させられて作動油が排出されるように構成されている。
切換用ソレノイド弁SLは、電子制御装置50からのSL指令信号(オンオフ信号)SSLに従って所定の切換用信号圧PSLを出力するものである。例えば、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧PSLをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では切換用信号圧PSLをモジュレータ油圧PMとして油室146に作用させることで、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130を係合状態であるオン側位置(ON)に移動させるように構成されている。
以上のように構成された油圧制御回路110により係合側油室32on及び解放側油室32offへの作動油圧の供給状態が切り換えられ、ロックアップクラッチ33の作動状態が切り換えらる。先ず、ロックアップクラッチ33がスリップ状態乃至ロックアップオンとされる場合を説明する。ロックアップリレーバルブ124において、切換用ソレノイド弁SLによって切換用信号圧PSLが油室146へ供給されてスプール弁子130がオン側位置へ付勢されると、入力ポート136に供給された第2ライン油圧PL2が係合側ポート134から係合側油室32onへ供給される。この係合側油室32onへ供給される第2ライン油圧PL2が油圧PONとなる。同時に解放側油室32offは、解放側ポート132から迂回ポート140を経てロックアップコントロールバルブ126の制御ポート160に連通させられる。そして、解放側油室32off内の油圧POFFがロックアップコントロールバルブ126により調整されて(すなわちロックアップコントロールバルブ126により差圧ΔP(=PON−POFF)すなわち係合圧が調整されて)、そのロックアップクラッチ33の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
具体的には、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130が係合(ON)側位置へ付勢されているときにすなわちロックアップクラッチ33が係合乃至スリップ状態に切り換えられているときに、ロックアップコントロールバルブ126においてスプール弁子148が完全係合(ON)側位置へ付勢される為の信号圧PSLUが油室156へ供給されず、スプリング150の推力によってスプール弁子148がスリップ(SLIP)側位置とされると、入力ポート158に供給された第2ライン油圧PL2が制御ポート160から迂回ポート140を経て解放側ポート132から解放側油室32offへ供給される。この制御ポート160から出力される作動油の流量は、油室156へ供給される信号圧PSLUによって制御される。すなわち、スプール弁子148がスリップ(SLIP)側位置とされた状態においては、差圧ΔPがスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUによって制御されてロックアップクラッチ33のスリップ状態が制御される。
また、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130がON側位置へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ126においてスプール弁子148が完全係合(ON)側位置へ付勢される為の信号圧PSLUが油室156に供給されると、入力ポート158から解放側油室32offへは第2ライン油圧PL2が供給されず、その解放側油室32offからの作動油がドレーンポートEXから排出される。これにより、差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ33が完全係合状態となる。また、ロックアップクラッチ33がスリップ状態もしくは完全係合状態において、ロックアップリレーバルブ124はオン側位置に位置させられる為、リリーフポート142と排出ポート138とが連通させられる。これにより、セカンダリレギュレータバルブ116から流出させられた作動油(PREL)が排出ポート138からオイルクーラ128に供給される。
一方、ロックアップリレーバルブ124において、切換用信号圧PSLが油室146に供給されず、スプリング144の付勢力によってスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられると、入力ポート136に供給された第2ライン油圧PL2が解放側ポート132から解放側油室32offへ供給される。そして、係合側油室32onを経て係合側ポート134に排出された作動油が排出ポート138からオイルクーラ128に供給されて冷却される。すなわち、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられている状態においては、ロックアップクラッチ33は解放状態とされ、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLU乃至ロックアップコントロールバルブ126を介してのスリップ乃至係合制御は行われない。換言すれば、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUから出力される信号圧PSLUが変化させられた場合であっても、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられている限りにおいてその変化はロックアップクラッチ33の係合状態(差圧ΔP)に反映されない。
尚、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUによって制御される差圧ΔPは、ロックアップクラッチ33の係合乃至解放状態を表す油圧値であり、本実施例ではロックアップクラッチ圧PLUとする。また、このロックアップクラッチ圧PLUは、スリップ量NSやロックアップクラッチ33のトルク容量TCに対応する油圧値でもある。また、LUクラッチ圧指令値SSLUやスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUは、ロックアップクラッチ圧PLUの油圧指令値である。
図6は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、エンジン出力制御部すなわちエンジン出力制御手段80は、例えばスロットル制御の為にスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射量制御の為に燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、点火時期制御の為にイグナイタ等の点火装置を制御するエンジン出力制御指令信号SEを出力する。例えば、エンジン出力制御手段80は、図7に示すようなスロットル弁開度θTHをパラメータとしてエンジン回転速度NEとエンジントルクTEの推定値(以下推定エンジントルク)TE’との予め実験的に求められて記憶された関係(エンジントルクマップ)から実際のエンジン回転速度NEに基づいて目標エンジントルクTE *が得られるスロットル弁開度θTHとなるように電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、イグナイタ等の点火装置を制御する。上記目標エンジントルクTE *は、例えば加速要求量に対応するアクセル開度Accに基づいてそのアクセル開度Accが大きい程大きくされるように電子制御装置50により求められるものであり、ドライバー要求エンジントルクに相当する。尚、図7に示すようなエンジントルクマップでは、スロットル弁開度θTHに替えて、吸入空気量QAIR等の他のエンジン負荷に相当するパラメータが用いられても良い。
変速制御部すなわち変速制御手段82は、例えば図8に示すような車速V及びアクセル開度Accを変数として予め記憶された関係(変速マップ、変速線図)から実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて変速判断を行い、自動変速機12の変速を実行すべきか否かを判断する。そして、変速制御手段82は、自動変速機12の変速すべきギヤ段を判断し、その判断したギヤ段が得られるように自動変速機12の自動変速制御を実行する変速指令を出力する。例えば、変速制御手段82は、図2に示す係合表に従ってギヤ段が達成されるように、自動変速機12の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合及び/又は解放させる油圧制御指令信号(変速出力指令値)SPを油圧制御回路110へ出力する。
図8の変速マップにおいて、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。この図8の変速マップにおける変速線は、例えば実際のアクセル開度Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、この値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されていることにもなる。
前記油圧制御指令信号SPは、クラッチCやブレーキBのクラッチ圧に対応するトルク伝達容量(クラッチトルク)を制御する為のトルク指令値、すなわち必要なトルク伝達容量が得られる係合油圧を発生する為の油圧指令値であって、例えば解放側摩擦係合装置のトルク指令値として解放側摩擦係合装置を解放する為の必要なトルク伝達容量が得られるように作動油が排出される油圧指令値が出力されると共に、係合側摩擦係合装置のトルク指令値として係合側摩擦係合装置を係合する為の必要なトルク伝達容量が得られるように作動油が供給される油圧指令値が出力される。また、自動変速機12の何れかのギヤ段GSを維持する非変速時には、変速機入力トルクTINに耐えうる摩擦力を保持できる(すなわちトルク伝達容量を確保できる)係合油圧を発生する為の油圧指令値が出力される。油圧制御回路110は、変速制御手段82による油圧制御指令信号SPに従って、自動変速機12の変速が実行されるように、或いは自動変速機12の現在のギヤ段GSが維持されるように、油圧制御回路110内のリニアソレノイドバルブSL1−SL5を作動させて、そのギヤ段GS成立(形成)に関与する油圧式摩擦係合装置の各油圧アクチュエータACT1−ACT5を作動させる。
尚、上記変速機入力トルクTINは、例えばトルクコンバータ32を介して自動変速機12へ入力されるトルクすなわちクラッチC1の入力側へ伝達される伝達トルクTINT/Cである。この変速機入力トルクTINは、例えば図7に示すようなエンジントルクマップから実際のエンジン回転速度NE及びスロットル弁開度θTHに基づいて算出される推定エンジントルクTE’にトルクコンバータ32のトルク比t(=タービントルクTT/ポンプトルクTP)を乗じたトルク(=TE’×t)として算出される。また、上記トルクコンバータ32のトルク比tは、例えば速度比e(=タービン回転速度NT/ポンプ回転速度NP(エンジン回転速度NE))とトルク比t、効率η、及び容量係数Cとのそれぞれの予め実験的に求められて記憶された不図示の公知の関係(マップ、トルクコンバータ32の所定の作動特性図)から実際の速度比eに基づいて算出される。
ロックアップクラッチ制御部すなわちロックアップクラッチ制御手段84は、例えば図9に示すような車速V及びスロットル弁開度θTHを変数としてロックアップ解放(ロックアップオフ)領域、スリップ制御作動領域(ロックアップスリップ制御作動領域)、ロックアップ制御作動領域(ロックアップオン)領域を有する予め記憶された関係(マップ、ロックアップ領域線図)から、実際の車速V及びスロットル弁開度θTHで示される車両状態に基づいてロックアップクラッチ33の作動状態の切換えを制御する。例えば、ロックアップクラッチ制御手段84は、上記ロックアップ領域線図から実際の車両状態に基づいてロックアップクラッチ33のロックアップ解放領域、ロックアップスリップ制御作動領域、ロックアップ制御作動領域の何れかであるかを判断し、ロックアップクラッチ33のロックアップ解放への切換え或いはロックアップスリップ制御作動乃至ロックアップ制御作動への切換えの為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路110へ出力する。また、ロックアップクラッチ制御手段84は、スリップ制御作動領域であると判断すると、ロックアップクラッチ33の実際のスリップ量NS(=NE−NT)を逐次算出し、その実際のスリップ量NSが目標スリップ量NS *となるように差圧ΔPを制御する為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路110へ出力する。例えば、あるギヤ段GSにおいて、比較的高車速領域では、ロックアップクラッチ33をロックアップ(完全係合)してポンプ翼車32pとタービン翼車32tとを直結することで、トルクコンバータ32の滑り損失(内部損失)を無くして燃費を向上させている。また、あるギヤ段GSにおいて、比較的低中速領域では、ポンプ翼車32pとタービン翼車32tとの間に例えば50rpm〜100rpm程度の目標スリップ量NS *に相当する所定の微少な滑りを与えてスリップ係合させるスリップ制御(ロックアップスリップ制御)を実施することで、ロックアップ作動領域を拡大し、トルクコンバータ32の伝達効率を向上して燃費を向上させている。
油圧制御回路110は、ロックアップクラッチ制御手段84からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ33の解放とスリップ状態乃至係合とが切り換えられるように切換用ソレノイド弁SLを作動させてロックアップリレーバルブ124の弁位置を解放側(OFF)位置と係合側(ON)位置とで切り換える。また、油圧制御回路110は、ロックアップクラッチ制御手段84からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ33のスリップ状態乃至係合におけるトルク容量TCがロックアップコントロールバルブ126を介して増減されるようにスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUを作動させてロックアップクラッチ33を係合したりロックアップクラッチ33のスリップ量NSを制御する。
ここで、本実施例の車両10では、例えばアクセルオン(アクセルペダル56の踏込み操作)に伴う車両発進に際して、エンジン回転速度NEが目標値となるようにロックアップクラッチ33をスリップ係合させる発進時ロックアップスリップ制御(発進時スリップ制御)を実行する。この発進時スリップ制御では、例えば予め設定された所定の発進時スリップ制御開始条件が満たされた場合に、車両10に対する加速要求量としてのアクセル開度Accに応じて燃費や動力性能を両立させる為の予め設定された目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制して燃料消費を抑制する。このような発進時スリップ制御を実行する車両状態において、ロックアップクラッチ33が解放されている状態でのアクセルオン直後(例えば車両発進直後)では、エンジン回転速度NEが立ち上がる過渡期である為にスリップ量NS(=NE−NT)を制御し難い。その為、この発進時スリップ制御では、例えば目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制するように、アクセル開度Accに基づいて一定のLUクラッチ圧指令値SSLUを設定するオープンループ制御(オープン制御、フィードフォワード制御)を実行する。そして、車両状態がスリップ制御作動領域にあると判断されると、前述した通り、スリップ量NSが目標値となるようにロックアップクラッチ33をスリップ係合させるスリップ制御を実行する(このフィードバック制御によるスリップ制御を定常時ロックアップスリップ制御(定常時スリップ制御)と称する)。この定常時スリップ制御では、例えばスリップ量NSの実際値(実スリップ量NS)と目標値(目標スリップ量NS *)との偏差ΔNS(=NS *−NS)に基づいてLUクラッチ圧指令値SSLUを逐次設定するクローズドループによるフィードバック制御を実行する。
尚、上記発進時スリップ制御は、アクセルオンの車両発進に際して、アクセルオンに伴ってエンジン回転速度NEが目標エンジン回転速度NE *以上に一旦(一時的に)上昇してしまうことを抑制するように、ロックアップクラッチ33を係合に向けてスリップ係合させる制御である。その為、発進時スリップ制御は、アクセルペダル56の踏み込み具合に対する車両加速感等において運転者が違和感等を感じ難くする為に、例えばアクセル開度Accが比較的低開度となるアクセルオンの車両発進時に実行されることが望ましい。その為、上記所定の発進時スリップ制御開始条件の1つとしての発進時スリップ制御作動領域にあるか否かの判断に用いられるロックアップ領域線図においては、例えば図9に示すようにスロットル弁開度θTHが比較的低開度の領域に上記発進時スリップ制御作動領域が設定される。図9において、定常時スリップ制御の実行を判断する為の前記スリップ制御作動領域を、この発進時スリップ制御作動領域と区別する為に、定常時スリップ制御作動領域と称する。また、上記発進時スリップ制御作動領域は、例えばエンジン回転速度NEの吹き上がりを抑制することによる燃費向上を考慮して設定されている領域であり、上記定常時スリップ制御作動領域は、例えばドライバビリティやこもり音(例えばNVH(騒音・振動・乗り心地)性能)を考慮して設定されている領域である。
ところで、例えば発進時スリップ制御の実行中に、予め設定された所定の定常時スリップ制御開始条件が満たされると、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御へ移行することになる。発進時スリップ制御と定常時スリップ制御とは、何れもスリップ制御ではあるが、LUクラッチ圧指令値SSLUの設定の仕方が全く異なることからそれぞれ独立した制御と見ることもできる。そこで、本実施例では、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時におけるLUクラッチ圧指令値SSLUの設定方法について考える。
図10は、発進時スリップ制御及び定常時スリップ制御を実行する際に設定されるLUクラッチ圧指令値SSLUの一例を示す従来図である。図10において、発進時スリップ制御におけるLUクラッチ圧指令値SSLUとしては、先ず、ファーストフィル(急速充填)の為のクラッチ圧指令値が出力開始され(t1時点)、次いで、目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制すると共に目標エンジン回転速度NE *にエンジン回転速度NEを維持(収束)する為のフィードフォワード制御における一定のクラッチ圧指令値SLUFFに維持される(t2時点乃至t3時点)。そして、所定の定常時スリップ制御開始条件が成立すると(t3時点)、クラッチ圧指令値SLUFFからフィードバック制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増するクラッチ圧指令値SLUSWが出力され(t3時点乃至t4時点)、実スリップ量NSを目標スリップ量NS *と一致させる為のフィードバック制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBが逐次設定される(t4時点以降)。
上記フィードフォワード制御における一定のクラッチ圧指令値SLUFFは、例えば目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制するように、アクセル開度Accやスロットル弁開度θTH等に応じて設定される。つまり、アクセル開度Accが大きい程すなわちスロットル弁開度θTHが大きい程、エンジントルクTEが大きく、又エンジン30の吹け上がりも急となる。その為、アクセル開度Accが大きい程より早くトルク容量TCを増大させてエンジン回転速度NEを抑制し易くするという観点から、例えばアクセル開度Accが大きい程、クラッチ圧指令値SLUFFを大きくするように、発進時スリップ制御におけるLUクラッチ圧指令値SSLUを設定する。尚、アクセル開度Accに替えて、スロットル弁開度θTH、吸入空気量QAIR、燃料噴射量、スロットル弁開度θTH或いは吸入空気量QAIRなどから算出した推定エンジントルクTE’などを用いるなど種々の態様が可能であることは言うまでもない。
図10において、実線に示すフィードフォワード制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFは比較的小さな値に設定された場合の一例であり、破線に示すフィードフォワード制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFは比較的大きな値に設定された場合の一例である。図10から明らかなように、クラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さな値に設定された場合の方が比較的大きな値に設定された場合と比べて、クラッチ圧指令値SLUFFからフィードバック制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増させるクラッチ圧指令値SLUSWの上昇勾配が急となる。その為、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時に、スリップ量NSがある程度大きければ、ロックアップクラッチ圧PLUの上昇によりスリップ量NSを滑らかに小さくしていくことが可能であることから、クラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さな値に設定されている場合であっても、ロックアップクラッチ33の係合ショックは発生し難いと思われる。しかしながら、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時に、スリップ量NSが比較的小さいと、クラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さな値に設定されている場合には、ロックアップクラッチ33の急係合ショックが発生し易くなる可能性がある。
そこで、本実施例では、ロックアップクラッチ33の急係合ショックの発生を抑制する為に、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFと実スリップ量NSとに基づいて、その移行時のLUクラッチ圧指令値SSLUの設定方法を変更する。つまり、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFと実スリップ量NSとに基づいて、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFから定常時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増する移行時のクラッチ圧指令値SLUSWの設定方法を変更する。
図11は、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時におけるクラッチ圧指令値SLUSWの設定方法の概念を説明する図表である。図11において、クラッチ圧指令値SLUFFが比較的大きな値に設定されている場合には、上記移行時におけるクラッチ圧指令値SLUSWの上昇勾配が緩やかであり、実スリップ量NSの大小に拘わらず元々ロックアップクラッチ33の係合ショックは発生し難いので、例えば図10の破線と同様に、発進時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFFから定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けてスイープで油圧を加算するすなわち漸増するように、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。
また、クラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さな値に設定されている場合には、差圧ΔPが負とされており、ロックアップクラッチ33がフロントカバー32cへ摩擦係合させられていない可能性があるので、例えば定常時ロックアップスリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増させることに先立ってその漸増させるよりも速やかに上昇させた一定圧PLUCにて定圧待機させるように、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。この定圧待機させる一定圧PLUCは、例えばロックアップクラッチ33に正の差圧ΔPが生じ始める為の予め求められたクラッチ圧指令値SLUSWである。これによって、ロックアップクラッチ33をフロントカバー32cへ摩擦係合させる為の実ロックアップクラッチ圧PLUの初期応答性が確保される。そして、実スリップ量NSが比較的大きい場合には、ロックアップクラッチ33の係合ショックは発生し難いので、上記一定圧PLUCでの定圧待機に続いて、例えば図10に示すt3時点からt4時点までの期間と同程度の一律の時間で定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けてスイープで油圧を加算するように、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。一方、実スリップ量NSが比較的小さい場合には、ロックアップクラッチ33の係合ショックが発生し易いので、その係合ショックを緩和する為、上記一定圧PLUCでの定圧待機に続いて、例えば上記実スリップ量NSが比較的大きい場合と比較して、緩やかに定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けてスイープで油圧を加算するように、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。
具体的には、図6に戻り、発進時スリップ制御開始条件判定部すなわち発進時スリップ制御開始条件判定手段86は、例えば予め設定された所定の発進時スリップ制御開始条件が成立するか否かを判定する。すなわち、発進時スリップ制御開始条件判定手段86は、所定の発進時スリップ制御開始条件が成立するか否かを判定することにより、発進時スリップ制御の実行を開始するか否かを逐次判定する発進時スリップ制御実行判定手段である。この所定の発進時スリップ制御開始条件としては、例えば図9に示すようなロックアップ領域線図における発進時スリップ制御作動領域に車両状態があるか否か、レバーポジションPSHが「D」ポジションであるか否か、ブレーキオフとされているか否かすなわちブレーキオンBONを表す信号が入力されていない状態であるか否か、現在のギヤ段GSが第1速ギヤ段であるか否か、所定のフェールセーフによる禁止時でないか否か、アクセル開度Accが所定値以上すなわちアクセルオンとされているか否か、作動油温THOILが所定温度範囲例えば暖機完了後の温度から高油温と判断されない油温までの温度範囲に入っているか否か、クラッチCやブレーキBの係合・解放作動時でないか否か、及び車両停止履歴があるか否かすなわち車速Vが車両停止と判断する為の所定の車速零判定値からその車速零判定値を超えたか否かの全てが成立しているかである。従って、発進時スリップ制御開始条件判定手段86は、例えばレバーポジションPSHが「D」ポジションであるときに、現在のギヤ段GSが第1速ギヤ段であり、ブレーキオフとされ、アクセルペダル56の踏込操作が為されてアクセルオンとされすなわちアクセル開度Accがアクセルオフを判定する為の所定の開度零判定値を超え、車速Vが車速零判定値を超え、発進時スリップ制御作動領域に実際の車両状態があり、所定のフェールセーフによる禁止時でなく、作動油温THOILが所定温度範囲に入っており、且つクラッチCやブレーキBの係合・解放作動時でない場合に、発進時スリップ制御開始条件が成立したと判定する。
発進時スリップ制御部すなわち発進時スリップ制御手段88は、例えば発進時スリップ制御開始条件判定手段86により所定の発進時スリップ制御開始条件が成立したと判定された場合には、発進時スリップ制御を実行する為の発進時スリップ制御指令をロックアップクラッチ制御手段84に出力して、アクセルオンに伴う車両発進に際してエンジン回転速度NEを抑制する発進時スリップ制御を実行する。ロックアップクラッチ制御手段84は、その発進時スリップ制御指令に従って、例えばアクセル開度Accに応じて燃費や動力性能を両立させる為の目標エンジン回転速度NE *を設定する。そして、ロックアップクラッチ制御手段84は、その目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制するようにアクセル開度Accに基づいて一定のクラッチ圧指令値SLUFFを設定し、そのクラッチ圧指令値SLUFFに従ってロックアップクラッチ33のロックアップクラッチ圧PLUを制御するスリップ係合指令を油圧制御回路110に出力するフィードフォワード制御を実行して、ロックアップクラッチ33をスリップ係合させる。
定常時スリップ制御開始条件判定部すなわち定常時スリップ制御開始条件判定手段90は、例えば予め設定された所定の定常時スリップ制御開始条件が成立するか否かを判定する。すなわち、定常時スリップ制御開始条件判定手段90は、所定の定常時スリップ制御開始条件が成立するか否かを判定することにより、定常時スリップ制御の実行を開始するか否かを逐次判定する定常時スリップ制御実行判定手段である。この所定の定常時スリップ制御開始条件としては、例えば図9に示すようなロックアップ領域線図における定常時スリップ制御作動領域に車両状態があるか否か、ブレーキオフとされているか否か、スロットル弁開度θTHが所定値以上すなわちアクセルオンに対応してスロットル弁開度θTHが所定の開度零判定値を超えているか否か、作動油温THOILが所定温度範囲例えば暖機完了後の温度から高油温と判断されない油温までの温度範囲に入っているか否か、所定のフェールセーフによる禁止時でないか否か、レバーポジションPSHが定常時スリップ制御の所定の許可ポジション例えば「D」ポジションであるか否か、発進時スリップ制御からの移行時であるか否か、及びクラッチCやブレーキBの係合・解放作動時でないか否かの全てが成立しているかである。従って、定常時スリップ制御開始条件判定手段90は、例えばレバーポジションPSHが「D」ポジションであり、ブレーキオフとされ、スロットル弁開度θTHが所定の開度零判定値を超え、定常時スリップ制御作動領域に実際の車両状態があり、所定のフェールセーフによる禁止時でなく、作動油温THOILが所定温度範囲に入っており、発進時スリップ制御からの移行時であり、且つクラッチCやブレーキBの係合・解放作動時でない場合に、発進時スリップ制御開始条件が成立したと判定する。
ロックアップクラッチ制御手段84は、例えば定常時スリップ制御開始条件判定手段90により所定の定常時スリップ制御開始条件が成立したと判定された場合には、発進時スリップ制御に引き続いて、車両走行に際して定常時スリップ制御を実行する。ロックアップクラッチ制御手段84は、定常時スリップ制御を実行する際には、例えば後述する油圧設定手段96により設定された発進時スリップ制御からの移行時のクラッチ圧指令値SLUSWに従ってロックアップクラッチ33のロックアップクラッチ圧PLUを上昇させるスリップ係合指令を油圧制御回路110に出力して、ロックアップクラッチ33を係合側に向けてスリップ係合させ、それに引き続いて、実スリップ量NSを目標スリップ量NS *と一致させるように逐次設定したクラッチ圧指令値SLUFBに従ってロックアップクラッチ33のロックアップクラッチ圧PLUを制御させるスリップ係合指令を油圧制御回路110に出力するフィードバック制御を実行して、ロックアップクラッチ33をスリップ係合させる。
クラッチ圧指令値判定部すなわちクラッチ圧指令値判定手段92は、例えば定常時スリップ制御開始条件判定手段90により所定の定常時スリップ制御開始条件が成立したと判定された場合には、ロックアップクラッチ制御手段84により設定されている発進時ロックアップスリップ制御中のクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さいか否かを判定する。この所定圧PSLU’は、例えばロックアップクラッチ33に差圧ΔPが生じていないロックアップクラッチ圧PLU=0[kPa]に対応する予め求められたLUクラッチ圧指令値SSLUである。また、前記定圧待機させる一定圧PLUCを、この所定圧PSLU’に設定しても良い。
スリップ量判定部すなわちスリップ量判定手段94は、例えば定常時スリップ制御開始条件判定手段90により所定の定常時スリップ制御開始条件が成立したと判定された場合には、実スリップ量NSが所定スリップ量NS’以上であるか否かを判定する。この所定スリップ量NS’は、例えば発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時にロックアップクラッチ33の係合ショックが発生し易いような比較的小さな実スリップ量NSであることを判定する為の予め求められた閾値である。
油圧設定部すなわち油圧設定手段96は、例えば定常時スリップ制御開始条件判定手段90により所定の定常時スリップ制御開始条件が成立したと判定されたときに、クラッチ圧指令値判定手段92により発進時ロックアップスリップ制御中のクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さいと判定され、且つスリップ量判定手段94により実スリップ量NSが所定スリップ量NS’より小さいと判定された場合には、例えば一定圧PLUCにて定圧待機させ、それに続いて、定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて比較的緩やかな一定勾配Aにて漸増するような、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。一方、クラッチ圧指令値判定手段92により発進時ロックアップスリップ制御中のクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さいと判定され、且つスリップ量判定手段94により実スリップ量NSが所定スリップ量NS’以上であると判定された場合には、例えば一定圧PLUCにて定圧待機させ、それに続いて、定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて一定勾配Bにて漸増するような、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。他方、クラッチ圧指令値判定手段92により発進時ロックアップスリップ制御中のクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’以上であると判定された場合には、例えば定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて一定勾配Cにて漸増するような、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定する。上記一定勾配Aは、例えばロックアップクラッチ33の係合ショックの発生を抑制する為の予め実験的に求められて設定された一定の勾配であって、一定勾配Bよりも小さな値(勾配)とされている。また、一定勾配B及び一定勾配Cは、例えば予め実験的に求められて設定された値であって、各々一定の勾配であっても良いし、漸増する時間(スイープ時間)だけが各々一律に定められたものであっても良い。また、一定勾配B及び一定勾配Cは、例えば同じ値でも良いが、異なる値を採用しても良い。
図12は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわち発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行を滑らかにしてドライバビリティの向上を図る為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図13−図15は、図12の制御作動に対応するタイムチャートである。
図12において、先ず、発進時スリップ制御開始条件判定手段86に対応するS10において、例えば前記所定の発進時スリップ制御開始条件が成立するか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は発進時スリップ制御手段88及びロックアップクラッチ制御手段84に対応するS20において、例えば車両発進に際してエンジン回転速度NEを抑制する発進時スリップ制御が実行される。この発進時スリップ制御では、例えばアクセル開度Accに応じて燃費や動力性能を両立させる為の目標エンジン回転速度NE *が設定され、その目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制するようにアクセル開度Accに基づいて一定のクラッチ圧指令値SLUFFが設定され、そのクラッチ圧指令値SLUFFに従ってロックアップクラッチ33をスリップ係合させるフィードフォワード制御が実行される(図13−図15のt1時点以降)。次いで、定常時スリップ制御開始条件判定手段90に対応するS30において、例えば前記所定の定常時スリップ制御開始条件が成立するか否かが判定される。このS30の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合はクラッチ圧指令値判定手段92に対応するS40において、例えば上記S20にて設定されている発進時ロックアップスリップ制御中のクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さいか否かが判定される(図13−図15のt2時点)。このS40の判断が肯定される場合はスリップ量判定手段94に対応するS50において、例えば実スリップ量NSが所定スリップ量NS’以上であるか否かが判定される(図13−図15のt2時点)。このS50の判断が否定される場合は油圧設定手段96及びロックアップクラッチ制御手段84に対応するS60において、例えば一定圧PLUCにて定圧待機させ、それに続いて、定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて比較的緩やかな一定勾配Aにて漸増するような、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWが設定される。そして、この設定された移行時のクラッチ圧指令値SLUSWに従ってロックアップクラッチ33を係合側に向けてスリップ係合させる移行時の引継ぎ制御Aが実行される(図13のt2時点乃至t4時点)。一方、上記S50の判断が肯定される場合は油圧設定手段96及びロックアップクラッチ制御手段84に対応するS70において、例えば一定圧PLUCにて定圧待機させ、それに続いて、定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて一定勾配Bにて漸増するような、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWが設定される。そして、この設定された移行時のクラッチ圧指令値SLUSWに従ってロックアップクラッチ33を係合側に向けてスリップ係合させる移行時の引継ぎ制御Bが実行される(図14のt2時点乃至t4’時点)。他方、上記S40の判断が否定される場合は油圧設定手段96及びロックアップクラッチ制御手段84に対応するS80において、例えば定常時スリップ制御のクラッチ圧指令値SLUFBに向けて一定勾配Cにて漸増するような、移行時のクラッチ圧指令値SLUSWが設定される。そして、この設定された移行時のクラッチ圧指令値SLUSWに従ってロックアップクラッチ33を係合側に向けてスリップ係合させる移行時の引継ぎ制御Cが実行される(図15のt2時点乃至t3時点)。上記S60、S70、及びS80の何れかに続き、ロックアップクラッチ制御手段84に対応するS90において、例えば実スリップ量NSを目標スリップ量NS *と一致させるように逐次設定したクラッチ圧指令値SLUFBに従ってロックアップクラッチ33をスリップ係合させるフィードバック制御が実行される(図13のt4時点以降、図14のt4’時点以降、図15のt3時点以降)。
上述のように、本実施例によれば、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFと実スリップ量NSとに基づいて、その移行時のLUクラッチ圧指令値SSLUの設定方法が変更されるので、例えばその移行時にロックアップクラッチ33の係合ショックが発生し難いように、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFや実スリップ量NSに合ったLUクラッチ圧指令値SSLUを設定することができる。具体的には、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが比較的小さく且つ実スリップ量NSが比較的小さいときに発生し易くなるロックアップクラッチ33の急係合ショックの発生を抑制するように、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFや実スリップ量NSに合わせてLUクラッチ圧指令値SSLUを設定することができる。よって、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を図ることができる。
また、本実施例によれば、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFから定常時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増させるように、前記移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定するので、例えば発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を適切に図ることができる。
また、本実施例によれば、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さい場合には、定常時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増させることに先立ってその漸増させるよりも速やかに上昇させた一定圧PLUCにて定圧待機させるように、前記移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定するので、例えば発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さい為に前記移行時の実ロックアップクラッチ圧PLUの初期応答性(見方を換えればロックアップクラッチ33の係合側への初期作動)が低下する可能性があることに対して、速やかに上昇させた一定圧PLUCにて定圧待機させることで実ロックアップクラッチ圧PLUの初期応答性が向上(確保)される。
また、本実施例によれば、実スリップ量NSが所定スリップ量NS’より小さい場合には、実スリップ量NSが所定スリップ量NS’以上である場合と比較して、定常時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて緩やかに漸増させるように、前記移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定するので、例えば発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さく且つ実スリップ量NSが所定スリップ量NS’より小さいときに発生し易くなるロックアップクラッチ33の急係合ショックの発生を適切に抑制できる。
また、本実施例によれば、発進時スリップ制御は、車両10に対する加速要求量に応じて設定される目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制するように、その加速要求量に基づいて一定のクラッチ圧指令値SLUFFを設定するフィードフォワード制御であり、定常時スリップ制御は、実スリップ量NSと目標スリップ量NS *との偏差ΔNSに基づいてクラッチ圧指令値SLUFBを逐次設定するフィードバック制御であるので、例えば発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行を滑らかにし、ドライバビリティの向上を図ることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さい場合には、クラッチ圧指令値SLUFBに向けて漸増させることに先立って一定圧PLUCにて定圧待機させるように移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定したが、必ずしも一定圧PLUCにて定圧待機させる必要はない。例えば、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さく、且つ実スリップ量NSが所定スリップ量NS’より小さい場合に、実スリップ量NSが所定スリップ量NS’以上である場合と比較して、少なくとも、定常時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFBに向けて緩やかに漸増させるように、前記移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを設定すれば良い。このようにすれば、発進時スリップ制御におけるクラッチ圧指令値SLUFFが所定圧PSLU’より小さく且つ実スリップ量NSが所定スリップ量NS’より小さいときに発生し易くなるロックアップクラッチ33の急係合ショックの発生を適切に抑制できる、という一定の効果は得られる。
また、前述の実施例では、発進時ロックアップスリップ制御中のクラッチ圧指令値SLUFFの大小を判定する為の所定圧PSLU’は、ロックアップクラッチ圧PLU=0[kPa]に対応するLUクラッチ圧指令値SSLUであったが、必ずしもそれに限らない。例えば、その所定圧PSLU’は、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時にロックアップクラッチ33の係合ショックが発生し易いような比較的小さなクラッチ圧指令値SLUFFであることを判定する為の予め求められた閾値であっても良い。
また、前述の実施例では、フィードフォワード制御を主体とする発進時スリップ制御とフィードバック制御を主体とする定常時スリップ制御とを明確に区別して、発進時スリップ制御から定常時スリップ制御への移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを適切に設定するものであったが、それに限らず、例えば車両発進に際して、フィードフォワード制御とフィードバック制御とが連続して実行される一連のスリップ制御(例えば発進時スリップ制御)におけるフィードフォワード制御からフィードバック制御への移行時のクラッチ圧指令値SLUSWを適切に設定するものとして取り扱っても良い。
また、前述の実施例では、自動変速機12が前進6速、後進1速の変速が可能な自動変速機であったが、自動変速機の変速段数や内部構造は特に前述した自動変速機12に限定されるものではない。すなわち、ロックアップクラッチ33を有するトルクコンバータ32を備え、発進時スリップ制御と定常時スリップ制御とが実施可能な構成であれば、本発明を適用することができる。また、ベルト式無段変速機などの無段変速機であっても本発明を適用することができる。
また、前述の実施例では、流体伝動装置としてロックアップクラッチ33が備えられているトルクコンバータ32が用いられていたが、トルク増幅作用のないフルードカップリングが用いられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
11:車両用動力伝達装置
12:自動変速機
30:エンジン
32:トルクコンバータ(流体伝動装置)
32p:ポンプ翼車(入力回転部材)
32t:タービン翼車(出力回転部材)
33:ロックアップクラッチ
50:電子制御装置(制御装置)
11:車両用動力伝達装置
12:自動変速機
30:エンジン
32:トルクコンバータ(流体伝動装置)
32p:ポンプ翼車(入力回転部材)
32t:タービン翼車(出力回転部材)
33:ロックアップクラッチ
50:電子制御装置(制御装置)
Claims (6)
- エンジンの動力を自動変速機へ伝達する流体伝動装置の入出力回転部材間を直結可能なロックアップクラッチを備え、車両走行時に前記ロックアップクラッチをスリップ係合させるロックアップスリップ制御を行う車両用動力伝達装置の制御装置であって、
前記ロックアップスリップ制御は、
車両発進に際して、エンジン回転速度が目標値となるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させる発進時ロックアップスリップ制御と、
車両走行に際して、スリップ回転速度が目標値となるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させる定常時ロックアップスリップ制御とを含み、
前記発進時ロックアップスリップ制御から前記定常時ロックアップスリップ制御への移行時には、前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値と実スリップ回転速度とに基づいて、該移行時のロックアップクラッチ圧指令値の設定方法を変更することを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値から前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて漸増させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さい場合には、前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて漸増させることに先立って該漸増させるよりも速やかに上昇させた一定圧にて定圧待機させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記実スリップ回転速度が所定スリップ回転速度より小さい場合には、該実スリップ回転速度が該所定スリップ回転速度以上である場合と比較して、前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて緩やかに漸増させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することを特徴とする請求項3に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記発進時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値が所定圧より小さく、且つ前記実スリップ回転速度が所定スリップ回転速度より小さい場合には、該実スリップ回転速度が該所定スリップ回転速度以上である場合と比較して、前記定常時ロックアップスリップ制御におけるロックアップクラッチ圧指令値に向けて緩やかに漸増させるように、前記移行時のロックアップクラッチ圧指令値を設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記発進時ロックアップスリップ制御は、車両に対する加速要求量に応じて設定される目標値以上に前記エンジン回転速度が吹け上がるのを抑制するように、該加速要求量に基づいて一定のロックアップクラッチ圧指令値を設定するフィードフォワード制御であり、
前記定常時ロックアップスリップ制御は、前記スリップ回転速度の実際値と目標値との偏差に基づいてロックアップクラッチ圧指令値を逐次設定するフィードバック制御であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
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