本発明において、好適には、前記車両用自動変速機は、例えば複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される例えば前進4段、前進5段、前進6段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式自動変速機、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機、或いはエンジン軸や出力軸などに動力伝達可能に電動機が備えられる所謂パラレル式のハイブリッド車両に搭載される自動変速機などにより構成される。
また、好適には、前記エンジンとしては、例えば燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が好適に用いられるが、電動機等の他の原動機をエンジンと組み合わせて採用することもできる。
図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪24までの動力伝達経路の概略構成を説明する図である。図1において、エンジン12により発生させられた動力は、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、車両用自動変速機としての無段変速機(CVT)18、減速歯車装置20、差動歯車装置22等を経て、左右の駆動輪24へ伝達される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸13に連結されたポンプ翼車14p、トルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸30を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14t、及び一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ翼車14sとを備えており、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間で流体を介して動力伝達を行うようになっている。すなわち、本実施例のトルクコンバータ14においては、ポンプ翼車14pが入力回転部材に、タービン翼車14tが出力回転部材にそれぞれ対応し、流体を介してエンジン12の動力が無段変速機18側へ伝達される。また、ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間には、それらの間すなわちトルクコンバータ14の入出力回転部材間を直結可能なロックアップクラッチ26が設けられている。また、ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したり、無段変速機18のベルト挟圧を発生させたり、ロックアップクラッチ26の作動を制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりする為の元圧となる作動油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
ロックアップクラッチ26は、良く知られているように、油圧制御回路100によって係合側油室14on内の油圧PONと解放側油室14off内の油圧POFFとの差圧ΔP(=PON−POFF)が制御されることによりフロントカバー14cに摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである(図4参照)。トルクコンバータ14の運転状態としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26が解放される所謂ロックアップ解放(ロックアップオフ)、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ26が滑りを伴って半係合される所謂ロックアップスリップ状態(スリップ状態)、及び差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ26が完全係合される所謂ロックアップ状態(係合状態、ロックアップオン)の3状態に大別される。例えば、ロックアップクラッチ26が完全係合させられることにより、ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tが一体回転させられてエンジン12の動力が無段変速機18側へ直接的に伝達される。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPが制御されることにより、例えば入出力回転速度差(すなわちスリップ回転速度(スリップ量)=エンジン回転速度NE−タービン回転速度NT)NSがフィードバック制御されることにより、車両10の駆動(パワーオン)時には所定のスリップ量でタービン軸30をクランク軸13に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には所定のスリップ量でクランク軸13をタービン軸30に対して追従回転させられる。尚、ロックアップクラッチ26のスリップ状態においては、差圧ΔPが零とされることによりそのロックアップクラッチ26のトルク分担がなくなって、トルクコンバータ14は、ロックアップオフと同等の運転条件とされる。
また、ロックアップクラッチ26には、例えばトルク衝撃を吸収する為のダンパースプリング27が備えられている。このダンパースプリング27が備えられていることで、ロックアップクラッチ26から見たエンジン12側の回転部材の回転変動と無段変速機18側の回転部材の回転変動とはダンパースプリング27のストローク分は位相がずれる可能性がある。
前後進切換装置16は、発進クラッチとしての前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されている。トルクコンバータ14のタービン軸30はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸32はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sとは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング34に選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は係合によりエンジン12の動力を駆動輪24側へ伝達する所定の摩擦係合装置としての断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
そして、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸30が入力軸32に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸32はタービン軸30に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になる。
エンジン12の吸気配管36には、スロットルアクチュエータ38を用いてエンジン12の吸入空気量QAIRを電気的に制御する為の電子スロットル弁40が備えられている。
無段変速機18は、入力軸32に設けられた入力側部材である有効径が可変の駆動側プーリ(プライマリプーリ、プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の従動側プーリ(セカンダリプーリ、セカンダリシーブ)46と、それ等の両可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、両可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われるベルト式の無段変速機である。
両可変プーリ42及び46は、入力軸32及び出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42a及び46aと、入力軸32及び出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42b及び46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての駆動側油圧シリンダ(プライマリプーリ側油圧シリンダ)42c及び従動側油圧シリンダ(セカンダリプーリ側油圧シリンダ)46cとを備えて構成されている。そして、駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の供給排出流量が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=変速機入力回転速度NIN/変速機出力回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、従動側油圧シリンダ46cの油圧であるセカンダリプーリ圧(以下、ベルト挟圧という)Pdが油圧制御回路100によって調圧制御されることにより、伝動ベルト48が滑りを生じないようにベルト挟圧力が制御される。このような制御の結果として、駆動側油圧シリンダ42cの油圧であるプライマリプーリ圧(以下、変速制御圧という)Pinが生じるのである。
図2は、エンジン12や前後進切換装置16や無段変速機18などを制御する為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図2において、車両10には、例えば無段変速機18の変速制御及びベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26の解放乃至係合状態を制御するロックアップクラッチ制御などに関連する油圧制御の為の車両用自動変速機の制御装置を含む電子制御装置50が備えられている。この電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御及びベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用のエンジン制御装置や無段変速機18の変速制御用の油圧制御装置やロックアップクラッチ26の油圧制御用の油圧制御装置等に分けて構成される。
電子制御装置50には、例えばクランク軸回転速度センサ52により検出されたクランク軸13の回転角度(位置)ACR及びクランク軸13の回転速度(すなわちエンジン12の回転速度)であるエンジン回転速度NEを表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸30の回転速度であるタービン回転速度NTを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された入力軸32の回転速度(すなわち無段変速機18の入力回転速度)である変速機入力回転速度NINを表す信号、出力軸回転速度センサ58により検出された車速Vに対応する出力軸44の回転速度(すなわち無段変速機18の出力回転速度)である変速機出力回転速度NOUTを表す信号、スロットルセンサ60により検出された電子スロットル弁40の開度であるスロットル弁開度θTHを表す信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温THWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された油圧制御回路100内の作動油の温度である作動油温THCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出された運転者による車両10に対する加速要求量(ドライバ要求量)としてのアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、吸入空気量センサ70により検出されたエンジン12の吸入空気量QAIRを表す信号、フットブレーキスイッチ72により検出された常用ブレーキであるフットブレーキの作動中(踏込操作中)を示すフットブレーキペダルが操作されたブレーキオンBONを表す信号、レバーポジションセンサ74により検出されたシフトレバー76のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)PSHを表す信号、加速度センサ77により検出された車両10の加速度Gを表す信号などがそれぞれ供給されている。
また、電子制御装置50からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SEとして、電子スロットル弁40の開閉を制御する為のスロットルアクチュエータ38への駆動信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御する為の噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST例えば駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御するソレノイド弁DS1及びソレノイド弁DS2を駆動する為の油圧指令信号、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号SB例えばベルト挟圧Pdを調圧するリニアソレノイド弁SLSを駆動する為の油圧指令信号、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量NSを制御する為のロックアップ制御指令信号SL例えば油圧制御回路100内のロックアップリレーバルブ124の弁位置を切り換える切換用ソレノイド弁SLを駆動する為の油圧指令信号やロックアップクラッチ26のトルク容量TCを調節するスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUを駆動する為の油圧指令信号、ライン油圧PLを調圧するリニアソレノイド弁を駆動する為の油圧指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
シフトレバー76は、例えば運転席の近傍に配設され、順次位置させられている5つのレバーポジション「P」、「R」、「N」、「D」、及び「L」のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは車両10の動力伝達経路を解放しすなわち車両10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力軸44の回転方向を逆回転とする為の後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは車両10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とする為の中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる為の前進走行ポジション(位置)であり、「L」ポジションは強いエンジンブレーキが作用させる為のエンジンブレーキポジション(位置)である。このように、「P」ポジション及び「N」ポジションは動力伝達経路をニュートラル状態とし車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジション、及び「L」ポジションは動力伝達経路を動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態とし車両10を走行させるときに選択される走行ポジションである。
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18のベルト挟圧力制御及び変速比制御等に関する要部を示す油圧回路図である。また、図4は、油圧制御回路100のうちロックアップクラッチ26の作動制御等に関する要部を示す油圧回路図である。
図3において、油圧制御回路100は、変速比γが連続的に変化させられるように駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御する変速制御弁として機能する変速比コントロールバルブUP116及び変速比コントロールバルブDN118、伝動ベルト48が滑りを生じないように従動側油圧シリンダ46cの油圧であるベルト挟圧Pdを調圧する挟圧力コントロールバルブ120、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が係合或いは解放されるようにシフトレバー76の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ122等を備えている。
ここで、油圧制御回路100内の第1ライン油圧PL1は、例えばエンジン12により回転駆動される機械式のオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1ライン油圧調圧弁)110によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいて無段変速機18への入力トルクTIN等に応じた値に調圧されるようになっている。また、第2ライン油圧PL2は、例えばプライマリレギュレータバルブ110による第1ライン油圧PL1の調圧の為にプライマリレギュレータバルブ110から排出される油圧を元圧として、例えばリリーフ型のセカンダリレギュレータバルブ(第2ライン油圧調圧弁)112によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいて調圧されるようになっている。また、モジュレータ油圧PMは、例えば第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータバルブ114によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいて一定油圧に調圧されるようになっている。
変速比コントロールバルブUP116は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート116t及び入出力ポート116iを開閉するスプール弁子116aと、そのスプール弁子116aを入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング116bと、そのスプリング116bを収容し且つスプール弁子116aに入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向の推力を付与する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PS2を受け入れる油室116cと、スプール弁子116aに入出力ポート116iを閉弁する方向の推力を付与する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PS1を受け入れる油室116dとを備えている。また、変速比コントロールバルブDN118は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート118tを開閉するスプール弁子118aと、そのスプール弁子118aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング118bと、そのスプリング118bを収容し且つスプール弁子118aに閉弁方向の推力を付与する為に制御油圧PS1を受け入れる油室118cと、スプール弁子118aに開弁方向の推力を付与する為に制御油圧PS2を受け入れる油室118dとを備えている。
ソレノイド弁DS1は、駆動側油圧シリンダ42cへ作動油を供給してその油圧を高め駆動側プーリ42のV溝幅を小さくして変速比γを小さくする側すなわちアップシフト側へ制御する為に制御油圧PS1を出力する。また、ソレノイド弁DS2は、駆動側油圧シリンダ42cの作動油を排出してその油圧を低め駆動側プーリ42のV溝幅を大きくして変速比γを大きくする側すなわちダウンシフト側へ制御するために制御油圧PS2を出力する。具体的には、制御油圧PS1が出力されると変速比コントロールバルブUP116の供給ポート116sに入力された第1ライン油圧PL1が入出力ポート116tを経て駆動側油圧シリンダ42cへ供給されて結果的に変速制御圧Pinが連続的に制御される。また、制御油圧PS2が出力されると駆動側油圧シリンダ42cの作動油が入出力ポート116t、入出力ポート116iさらに入出力ポート118tを経て排出ポート118xから排出されて結果的に変速制御圧Pinが連続的に制御される。例えば、図5に示すような運転者の加速要求量に対応するアクセル操作量Accをパラメータとして予め実験的に求められて記憶された車速Vと目標変速機入力回転速度NIN *との関係(変速マップ)に従って算出された目標変速機入力回転速度NIN *に実際の変速機入力回転速度NINが一致するように、それ等の回転偏差ΔNIN(=NIN *−NIN)に応じて無段変速機18が変速制御され、すなわち駆動側油圧シリンダ42cに対する作動油の供給、排出によって変速制御圧Pinが制御され、変速比γが連続的に変化させられる。図5の変速マップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル開度Accが大きい程大きな変速比γになる目標変速機入力回転速度NIN *が設定されるようになっている。また、車速Vは変速機出力回転速度NOUTに対応するため、変速機入力回転速度NINの目標値である目標変速機入力回転速度NIN *は目標変速比に対応し、無段変速機18の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で定められている。
挟圧力コントロールバルブ120は、例えば軸方向へ移動可能に設けられることにより出力ポート120tを開閉するスプール弁子120aと、そのスプール弁子120aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング120bと、そのスプリング120bを収容し、スプール弁子120aに開弁方向の推力を付与する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧PSLSを受け入れる油室120cと、スプール弁子120aに閉弁方向の推力を付与する為に出力したベルト挟圧Pdを受け入れるフィードバック油室120dとを備えている。そして、挟圧力コントロールバルブ120は、リニアソレノイド弁SLSからの制御油圧PSLSをパイロット圧として第1ライン油圧PL1を連続的に調圧制御して伝達トルクに対応する無段変速機18への入力トルクTIN等に応じたベルト挟圧Pdを出力するようになっている。例えば、図6に示すような無段変速機18の入力トルクTINをパラメータとしてベルト滑りが生じないように予め実験的に求められて記憶された変速比γと必要油圧(目標ベルト挟圧に相当)Pd*との関係(ベルト挟圧マップ)に従って従動側油圧シリンダ46cへのベルト挟圧Pdが調圧され、このベルト挟圧Pdに応じてベルト挟圧力すなわち両可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力が増減させられる。また、この挟圧力コントロールバルブ120の出力油圧である従動側油圧シリンダ46c内のベルト挟圧Pdは、例えば油圧センサ120sにより検出されるようになっている。
また、ベルト挟圧Pdを調圧する際に用いる無段変速機18の入力トルクTINは、例えばエンジントルクTEにトルクコンバータ14のトルク比t(=トルクコンバータ14の出力トルク(以下タービントルクTTという)/トルクコンバータ14の入力トルク(以下ポンプトルクTPという))を乗じたトルク(=TE×t)として電子制御装置50により算出される。このエンジントルクTEは、例えばエンジン12に対する要求負荷としての吸入空気量QAIR(或いはそれに相当するスロットル弁開度θTH等)をパラメータとしてエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとの予め実験的に求められて記憶された図7に示すような関係(マップ、エンジントルク特性図)から吸入空気量QAIR及びエンジン回転速度NEに基づいて推定エンジントルクTEesとして電子制御装置50により算出される。或いは、エンジントルクTEは、例えばトルクセンサなどにより検出されるエンジン12の実出力トルク(実エンジントルク)TEなどが用いられても良い。また、トルクコンバータ14のトルク比tは、トルクコンバータ14の速度比e(=トルクコンバータ14の出力回転速度(以下タービン回転速度NTという)/トルクコンバータ14の入力回転速度(以下ポンプ回転速度NP(エンジン回転速度NE)という))の関数であり、例えば速度比eとトルク比t、効率η、及び容量係数Cとのそれぞれの予め実験的に求められて記憶された図8に示すような関係(マップ、トルクコンバータ14の所定の作動特性図)から実際の速度比eに基づいて電子制御装置50により算出される。尚、推定エンジントルクTEesは、実エンジントルクTEそのものを表すように算出されるものであり、特に実エンジントルクTEと区別する場合を除き、推定エンジントルクTEesを実エンジントルクTEとしての取り扱うものとする。従って、推定エンジントルクTEesには実エンジントルクTEも含むものとする。
マニュアルバルブ122において、入力ポート122aには例えばモジュレータバルブ114により一定油圧に調圧されたモジュレータ油圧PMが供給される。そして、シフトレバー76が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、モジュレータ油圧PMが前進走行用出力圧として前進用出力ポート122fを経て前進用クラッチC1に供給され且つ後進用ブレーキB1内の作動油が後進用出力ポート122rから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ122の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放させられる。
また、シフトレバー76が「R」ポジションに操作されると、モジュレータ油圧PMが後進走行用出力圧として後進用出力ポート122rを経て後進用ブレーキB1に供給され且つ前進用クラッチC1内の作動油が前進用出力ポート122fから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ122の油路が切り換えられ、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放させられる。
また、シフトレバー76が「P」ポジション或いは「N」ポジションに操作されると、入力ポート122aから前進用出力ポート122fへの油路及び入力ポート122aから後進用出力ポート122rへの油路がいずれも遮断され且つ前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1内の作動油が何れもマニュアルバルブ122からドレーンされるようにマニュアルバルブ122の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放させられる。
図4において、油圧制御回路100は、例えば電子制御装置50から供給されるSL指示(SL指令)信号SSLに対応するオンオフ信号によってオンオフ作動させられて切換用信号圧PSLを発生させる切換用ソレノイド弁SLと、ロックアップクラッチ26の解放状態と係合或いはスリップ状態とを切り換える為のロックアップリレーバルブ124と、電子制御装置50から供給されるロックアップクラッチ圧指令値(LUクラッチ圧指令値、SLU指示圧)SSLUに対応する駆動電流ISLUに応じた信号圧PSLUを出力するスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUと、ロックアップリレーバルブ124によりロックアップクラッチ26が係合或いはスリップ状態とされているときに信号圧PSLUに従ってロックアップクラッチ26のスリップ量NSを制御したりロックアップクラッチ26を係合させる為の(すなわちロックアップクラッチ26の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換える為の)ロックアップコントロールバルブ126と、作動油を冷却する為のオイルクーラ128とを、備えている。
ロックアップリレーバルブ124は、接続状態を切り換える為のスプール弁子130を備え、切換用信号圧PSLに応じてロックアップクラッチ26を解放状態とする解放側位置(オフ側位置)とロックアップクラッチ26を係合或いはスリップ状態とする係合側位置(オン側位置)とに切り換えられる。図4においては、中心線より左側がロックアップクラッチ26の解放状態であるオフ側位置(OFF)にスプール弁子130が位置された状態を示しており、中心線より右側が係合或いはスリップ状態であるオン側位置(ON)にスプール弁子130が位置された状態を示している。具体的には、ロックアップリレーバルブ124は、解放側油室14offと連通する解放側ポート132と、係合側油室14onと連通する係合側ポート134と、第2ライン油圧PL2が供給される入力ポート136と、ロックアップクラッチ26の解放時に係合側油室14on内の作動油が排出されると共にそのロックアップクラッチ26の係合時にセカンダリレギュレータバルブ112から流出させられた作動油(PREL)が排出される排出ポート138と、ロックアップクラッチ26の係合時に解放側油室14off内の作動油が排出される迂回ポート140と、セカンダリレギュレータバルブ112から流出させられた作動油(PREL)が供給されるリリーフポート142と、スプール弁子130をオフ側位置に向かって付勢する為のスプリング144と、及びスプール弁子130の端面に切換用ソレノイド弁SLからの切換用信号圧PSLを受け入れる油室146とを備えている。
ロックアップコントロールバルブ126は、スプール弁子148と、そのスプール弁子148をスリップ(SLIP)側位置に向かって付勢する為のスプリング150と、スプール弁子148をスリップ側に位置向かって付勢する為にトルクコンバータ14の係合側油室14on内の油圧PONを受け入れる油室152と、スプール弁子148を完全係合(ON)側位置に向かって付勢する為にトルクコンバータ14の解放側油室14off内の油圧POFFを受け入れる油室154と、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUから出力される信号圧PSLUが供給される油室156と、第2ライン油圧PL2が供給される入力ポート158と、ロックアップリレーバルブ124の迂回ポート140から出力される油圧が供給される制御ポート160とを備えている。尚、図4においては、中心線より左側がスリップ(SLIP)側位置にスプール弁子148が位置された状態を示しており、中心線より右側が完全係合(ON)側位置にスプール弁子148が位置された状態を示している。
スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUは、電子制御装置50からの指令に従って、ロックアップクラッチ26の係合乃至スリップ係合時におけるその係合圧を制御する信号圧PSLUを出力するものである。例えば、モジュレータ油圧PMを元圧とし、そのモジュレータ油圧PMを減圧して信号圧PSLUを出力する電磁制御弁であって、電子制御装置50から供給されるLUクラッチ圧指令値SSLUに対応する駆動電流(励磁電流)ISLUに比例した信号圧PSLUを発生させる。また、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUのドレーンポート162は、チェックボール164に連通されているため、そのチェックボール164によって常時塞がれており、そのチェックボール164に所定以上の圧力がかかると開弁させられて作動油が排出されるように構成されている。
切換用ソレノイド弁SLは、電子制御装置50からのSL指令信号(オンオフ信号)SSLに従って所定の切換用信号圧PSLを出力するものである。例えば、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧PSLをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では切換用信号圧PSLをモジュレータ油圧PMとして油室146に作用させることで、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130を係合状態であるオン側位置(ON)に移動させるように構成されている。
以上のように構成された油圧制御回路100により係合側油室14on及び解放側油室14offへの作動油圧の供給状態が切り換えられ、ロックアップクラッチ26の作動状態が切り換えらる。先ず、ロックアップクラッチ26がスリップ状態乃至ロックアップオンとされた場合を説明する。ロックアップリレーバルブ124において、切換用ソレノイド弁SLによって切換用信号圧PSLが油室146へ供給されてスプール弁子130がオン側位置へ付勢されると、入力ポート136に供給された第2ライン油圧PL2が係合側ポート134から係合側油室14onへ供給される。この係合側油室14onへ供給される第2ライン油圧PL2が油圧PONとなる。同時に解放側油室14offは、解放側ポート132から迂回ポート140を経てロックアップコントロールバルブ126の制御ポート160に連通させられる。そして、解放側油室14off内の油圧POFFがロックアップコントロールバルブ126により調整されて(すなわちロックアップコントロールバルブ126により差圧ΔP(=PON−POFF)すなわち係合圧が調整されて)、そのロックアップクラッチ26の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
具体的には、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130が係合(ON)側位置へ付勢されているときにすなわちロックアップクラッチ26が係合乃至スリップ状態に切り換えられているときに、ロックアップコントロールバルブ126においてスプール弁子148が完全係合(ON)側位置へ付勢される為の信号圧PSLUが油室156へ供給されず、スプリング150の推力によってスプール弁子148がスリップ(SLIP)側位置とされると、入力ポート158に供給された第2ライン油圧PL2が制御ポート160から迂回ポート140を経て解放側ポート132から解放側油室14offへ供給される。この制御ポート160から出力される作動油の流量は、油室156へ供給される信号圧PSLUによって制御される。すなわち、スプール弁子148がスリップ(SLIP)側位置とされた状態においては、差圧ΔPがスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUによって制御されてロックアップクラッチ26のスリップ状態が制御される。
また、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130がON側位置へ付勢されているときに、ロックアップコントロールバルブ126においてスプール弁子148が完全係合(ON)側位置へ付勢される為の信号圧PSLUが油室156に供給されると、入力ポート158から解放側油室14offへは第2ライン油圧PL2が供給されず、その解放側油室14offからの作動油がドレーンポートEXから排出される。これにより、差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ26が完全係合状態となる。また、ロックアップクラッチ26がスリップ状態もしくは完全係合状態において、ロックアップリレーバルブ124はオン側位置に位置させられるため、リリーフポート142と排出ポート138とが連通させられる。これにより、セカンダリレギュレータバルブ112から流出させられた作動油(PREL)が排出ポート138からオイルクーラ128に供給される。
一方、ロックアップリレーバルブ124において、切換用信号圧PSLが油室146に供給されず、スプリング144の付勢力によってスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられると、入力ポート136に供給された第2ライン油圧PL2が解放側ポート132から解放側油室14offへ供給される。そして、係合側油室14onを経て係合側ポート134に排出された作動油が排出ポート138からオイルクーラ128に供給されて冷却される。すなわち、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられている状態においては、ロックアップクラッチ26は解放状態とされ、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLU乃至ロックアップコントロールバルブ126を介してのスリップ乃至係合制御は行われない。換言すれば、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUから出力される信号圧PSLUが変化させられた場合であっても、ロックアップリレーバルブ124のスプール弁子130がオフ側位置へ位置させられている限りにおいてその変化はロックアップクラッチ26の係合状態(差圧ΔP)に反映されない。尚、スリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUによって制御される差圧ΔPは、ロックアップクラッチ26の係合乃至解放状態を表す油圧値としてのロックアップクラッチ圧PLUでもある。また、このロックアップクラッチ圧PLUは、スリップ量NSやロックアップクラッチ26のトルク容量TCに対応する油圧値でもある。また、LUクラッチ圧指令値SSLUやスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUの信号圧PSLUは、ロックアップクラッチ圧PLUの油圧指令値である。
具体的には、図9は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図9において、エンジン出力制御部すなわちエンジン出力制御手段82は、エンジン12の出力制御の為にエンジン出力制御指令信号SE、例えばスロットル信号や噴射信号や点火時期信号などをそれぞれスロットルアクチュエータ38や燃料噴射装置78や点火装置80へ出力する。例えば、エンジン出力制御手段82は、目標スロットル弁開度θTH *をアクセル開度Accに応じた目標エンジントルクTE *が得られる為のスロットル開度θTHとし、目標エンジントルクTE *が得られるようにスロットルアクチュエータ38により電子スロットル弁40を開閉制御する他、燃料噴射装置78により燃料噴射量を制御したり、点火装置80により点火時期を制御する。
変速制御部すなわち変速制御手段84は、例えば図5に示すような変速マップから実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて変速機入力回転速度NINの目標変速機入力回転速度NIN *を設定する。そして、変速制御手段84は、実変速機入力回転速度NINがその目標変速機入力回転速度NIN *と一致するように、例えば実変速機入力回転速度NINと目標変速機入力回転速度NIN *との回転偏差ΔNIN(=NIN *−NIN)に基づいて無段変速機18の変速を例えばフィードバック制御により実行する。つまり、変速制御手段84は、回転偏差ΔNINに基づいて駆動側油圧シリンダ42cに対する作動油の流量を制御することにより両可変プーリ42、46のV溝幅を変化させる為の変速制御指令信号(油圧指令)STを決定し、その変速制御指令信号STを油圧制御回路100へ出力して変速比γを連続的に変化させる。油圧制御回路100は、変速制御手段84からの変速制御指令信号STに従って無段変速機18の変速が実行されるようにソレノイド弁DS1及びソレノイド弁DS2を作動させて駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の供給・排出により変速制御圧Pinを調圧する。
ベルト挟圧力制御部すなわちベルト挟圧力制御手段86は、例えば図6に示すようなベルト挟圧マップから無段変速機18の入力トルクTIN(=エンジントルクTE×トルク比t:TEは例えば推定エンジントルクTEes)及び実変速比γ(=NIN/NOUT)で示される車両状態に基づいて目標ベルト挟圧Pd*を設定する。そして、ベルト挟圧力制御手段86は、その目標ベルト挟圧Pd*が得られるように従動側油圧シリンダ46cのベルト挟圧Pdを調圧する為の挟圧力制御指令信号SBを油圧制御回路100へ出力する。油圧制御回路100は、ベルト挟圧力制御手段86からの挟圧力制御指令信号SBに従ってベルト挟圧Pdが増減されるようにリニアソレノイド弁SLSを作動させてベルト挟圧Pdを調圧する。このように、ベルト挟圧力制御手段86は、無段変速機18の入力トルクTINに応じてリニアソレノイド弁SLSを作動させてベルト挟圧Pdを制御することにより、ベルト滑りが発生しない範囲で燃費向上の為出来るだけ低い値になるようにベルト挟圧力を制御する。
ロックアップクラッチ制御部すなわちロックアップクラッチ制御手段88は、例えばスロットル弁開度θTH及び車速Vを変数としてロックアップ解放(ロックアップオフ)領域、スリップ制御領域(ロックアップスリップ制御作動領域)、ロックアップ制御作動領域(ロックアップオン)領域を有する予め記憶された不図示の関係(マップ、ロックアップ領域線図)から実際のスロットル弁開度θTH及び車速Vで示される車両状態に基づいてロックアップクラッチ26の作動状態の切換えを制御する。例えば、ロックアップクラッチ制御手段88は、上記ロックアップ領域線図から実際の車両状態に基づいてロックアップクラッチ26のロックアップ解放領域、ロックアップスリップ制御作動領域、ロックアップ制御作動領域の何れかであるかを判断し、ロックアップクラッチ26のロックアップ解放への切換え或いはロックアップスリップ制御作動乃至ロックアップ制御作動への切換えの為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路100へ出力する。また、ロックアップクラッチ制御手段88は、ロックアップスリップ制御作動領域であると判断すると、ロックアップクラッチ26の実際のスリップ量NSを逐次算出し、その実際のスリップ量NSが目標スリップ量NS *となるように差圧ΔPを制御する為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路100へ出力する。
油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ制御手段88からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ26の解放とスリップ状態乃至係合とが切り換えられるように切換用ソレノイド弁SLを作動させてロックアップリレーバルブ124の弁位置を解放側(OFF)位置と係合側(ON)位置とで切り換える。また、油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ制御手段88からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ26のスリップ状態乃至係合におけるトルク容量TCがロックアップコントロールバルブ126を介して増減されるようにスリップ制御用リニアソレノイド弁SLUを作動させてロックアップクラッチ26を係合したりロックアップクラッチ26のスリップ量NSを制御する。例えば、比較的高車速領域においては、ロックアップクラッチ26をロックアップ(完全係合)してポンプ翼車14pとタービン翼車14tとを直結することで、トルクコンバータ14の滑り損失(内部損失)を無くして燃費を向上させている。また、比較的低中速領域においては、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間に所定の微少な滑りを与えて係合させるスリップ制御(ロックアップスリップ制御)を実施することで、ロックアップ作動領域を拡大し、トルクコンバータ14の伝達効率を向上して燃費を向上させている。
ここで、車両走行中には、例えば凹凸等の路面上の段差を通過する場合がある。このような段差に駆動輪24が当たると、駆動輪24の回転が一時的に止められることで、無段変速機18を構成する回転部材の回転も一時的に止められる。つまり、駆動輪24側から無段変速機18側への逆入力として、例えば駆動輪24側から衝撃トルクが一時的に入力されることになる。このとき、車両10には進行方向の慣性力が掛かっているので、例えば無段変速機18から駆動輪24までのドライブライン(動力伝達経路)が捩れ、段差の通過後にその捩れが解放される。このような捩れからの解放は、その後、例えば無段変速機18に関わる回転速度例えば変速機入力回転速度NINの振動(回転変動)となって表れる。その為、衝撃トルクの一時的な入力時には、そのような回転部材の回転変動に伴って無段変速機18に関わる変速機イナーシャトルク例えば変速機入力回転速度NINの変化に伴う変速機イナーシャトルクTCVTi(=Icvt×d(NIN)/dt;Icvtは所定の変速機イナーシャ)が発生する。
ところで、ロックアップクラッチ26の係合中における衝撃トルクの入力に対して、車両ショックを緩和することなどを目的として、衝撃トルクの入力時にロックアップクラッチ26を解放することが考えられる。ロックアップクラッチ26を解放すると、エンジン12に関わる回転速度例えばエンジン回転速度NEが上昇する為、このエンジン回転速度NEの上昇に伴ってエンジン12に関わるエンジンイナーシャトルク例えばエンジン回転速度NEの変化に伴うエンジンイナーシャトルクTEi(=Ie×d(NE)/dt;Ieは所定のエンジンイナーシャ)が発生する。つまり、衝撃トルクの入力時にロックアップクラッチ26を解放すると、エンジンイナーシャトルクTEiと変速機イナーシャトルクTCVTiとを合わせた合成イナーシャトルクTina(=TEi+TCVTi)が伝動ベルト48に掛かることになる。前述したように、伝動ベルト48におけるベルト挟圧力制御では、無段変速機18の入力トルクTINすなわちベルト上の入力トルク(ベルト入力トルク)TINBに応じてベルト滑りが発生しない範囲で燃費向上の為可及的に低い値になるようにベルト挟圧Pdを制御することが望まれる。その為、駆動輪24側からの逆入力に備える為にすなわち衝撃トルクを補償する為に、例えばエンジントルクTEに基づく入力トルクに駆動輪24側からの逆入力の際に想定される最大の合成イナーシャトルクTina分を常に加えたベルト入力トルクTINBに対して、ベルト滑りが発生しない範囲で燃費向上の為可及的に低いベルト挟圧Pdが必要となる。つまり、一時的に入力される衝撃トルクを補償する為に、常時高めにベルト挟圧Pdを設定する必要がある。見方を換えれば、駆動輪24側からの逆入力の際に想定される最大の合成イナーシャトルクTina分を低下させられれば、ベルト挟圧Pdを低下させることができる。尚、ベルト挟圧力制御に限らず、前進用クラッチC1や後進用ブレーキB1などの係合装置の係合力制御や、ベルト挟圧Pdや係合装置の係合圧Pcの元圧となるライン油圧PLでも同様の見方をすることができる。
図10は、上記合成イナーシャトルクTinaを低下させる方法の概念を説明する図である。図10において、(a)はエンジン回転速度NEの回転変動(回転変化)と変速機入力回転速度NINの回転変動とが同位相の場合である。この図10(a)の場合には、各々のイナーシャトルクも同位相となり、合成イナーシャトルクTinaはエンジンイナーシャトルクTEiの絶対値と変速機イナーシャトルクTCVTiの絶対値との加算となる。一方、図10(b)はエンジン回転速度NEの回転変動を変速機入力回転速度NINの回転変動と逆位相とした場合である。この図10(b)の場合には、各々のイナーシャトルクも逆位相となり、合成イナーシャトルクTinaはエンジンイナーシャトルクTEiの絶対値と変速機イナーシャトルクTCVTiの絶対値との減算となる。従って、エンジン回転速度NEの回転変動と変速機入力回転速度NINの回転変動とを逆位相とすれば合成イナーシャトルクTinaを低下させられる。この逆位相とすることに加えて、エンジン回転速度NEの回転変動における変化勾配の絶対値を変速機入力回転速度NINの回転変動における変化勾配の絶対値に近づけるように、電子スロットル弁40の開閉制御などのエンジン出力制御によりエンジン回転速度NEを制御することで(図10(b)の二点鎖線)、破線に比較して、合成イナーシャトルクTinaをより低下させられる(図10(b)の実線)。
そこで、本実施例では、電子制御装置50は、例えば駆動輪24側からの逆入力に際して、合成イナーシャトルクTinaを抑制する為に、ロックアップクラッチ26の解放に伴って生じるエンジンイナーシャトルクTEiが、駆動輪24側からの逆入力に伴って生じる変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるように、ロックアップクラッチ26を解放する。すなわち、エンジンイナーシャトルクTEiの変化と変速機イナーシャトルクTCVTiの変化とが逆方向となるタイミングで、係合状態にあるロックアップクラッチ26を解放することである。つまり、イナーシャトルクと回転速度の変化との関係に着目すれば、実質的に、ロックアップクラッチ26の解放によって上昇するエンジン回転速度NEの回転変化が、駆動輪24側からの一時的な逆入力によって振動する変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングで、係合状態にあるロックアップクラッチ26を解放することである。すなわち、変速機入力回転速度NINの下降区間にてエンジン回転速度NEが上昇するタイミングで(変速機入力回転速度NINの下降区間にてエンジン回転速度NEが上昇するように)、係合状態にあるロックアップクラッチ26を解放することである。尚、前述したように、ロックアップクラッチ26にはダンパースプリング27が備えられていることから、ロックアップクラッチ26が係合されてエンジン12側の回転部材と無段変速機18側の回転部材とが実質的に直結されていても、ロックアップクラッチ26から見たエンジン12側の回転部材の回転変動と無段変速機18側の回転部材の回転変動との位相をずらすことが可能である。
加えて、駆動輪24側からの逆入力に伴う合成イナーシャトルクTinaを一層抑制する為に、上記ロックアップクラッチ26の解放に際して、合成イナーシャトルクTinaが可及的に小さくなるように、エンジン出力制御によってエンジン回転速度NEの上昇勾配を制御しても良い。つまり、ロックアップクラッチ26の解放に際して、エンジン回転速度NEの上昇勾配を変速機入力回転速度NINの下降勾配の絶対値に近づけるように、エンジン出力を一時的に制御しても良い。
また、ロックアップクラッチ26を応答性良く解放する為に、駆動輪24側からの逆入力の際に上記ロックアップクラッチ26を解放するまでは、ロックアップクラッチ26に滑りが生じない為の可及的に低いトルク容量TCで係合しても良い。これによって、ロックアップクラッチ26を解放するまでは、変速機イナーシャトルクTCVTiの増大を適切に抑制することができる。つまり、駆動輪24側からの逆入力時に、ロックアップクラッチ26を解放した場合、ロックアップクラッチ26からみたエンジン12側のイナーシャ分が減少することになる為、ロックアップクラッチ26を解放しない場合と比較して、速やかに解放する程、無段変速機18の回転部材の回転変動速度が増大し、結果的に変速機イナーシャトルクTCVTiが増大してしまう可能性があることに対して、変速機イナーシャトルクTCVTiの増大を適切に抑制することができる。
より具体的には、図9に戻り、車両状態取得部すなわち車両状態取得手段90は、例えば各種センサやスイッチ等から電子制御装置50に供給される各種信号などに基づいて、車速V、アクセル開度Acc、エンジン回転速度NE、変速機入力回転速度NIN、変速機出力回転速度NOUT、スロットル弁開度θTH、吸入空気量QAIR、加速度Gなどの実際値を取得する。
段差乗越え判定部すなわち段差乗越え判定手段92は、例えば車両状態取得手段90により取得された変速機入力回転速度NINの実際値に基づいて変速機入力回転速度NINの変化量ΔNINを算出する。また、段差乗越え判定手段92は、所定時間T’中における変化量ΔNINが所定値ΔNIN’以上であるか否か、すなわち変速機入力回転速度NINの変化率ΔNIN/T’が所定値ΔNIN’以上であるか否かを判定する。そして、段差乗越え判定手段92は、変速機入力回転速度NINの変化率ΔNIN/T’が所定値ΔNIN’以上であると判定した場合には、車両10が段差を乗り越えた、すなわち車両10が段差に当たったと判定する。上記所定時間T’や所定値ΔNIN’は、例えば車両10が段差に当たって駆動輪24側からの逆入力があったことを判定する為の予め実験的に求められて設定された段差判定閾値である。すなわち、段差乗越え判定手段92は、車両10が段差に当たったか否かを判定することにより、駆動輪24側からの逆入力を判定する逆入力判定手段として機能する。
クラッチ解放時期判定部すなわちクラッチ解放時期判定手段94は、例えば段差乗越え判定手段92により車両10が段差に当たったと判定されてからすなわち駆動輪24側からの逆入力が判定されてから、所定時間TOFFが経過したか否かを判定する。この所定時間TOFFは、例えばロックアップクラッチ26の解放に伴って生じるエンジンイナーシャトルクTEiの位相を変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相にする為の(見方を換えれば、エンジン回転速度NEの回転変化を変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングにする為の)予め実験的(或いは計算的)に求められて設定されたクラッチ解放時期判定閾値である。つまり、車両10が段差に当たった際の変速機イナーシャトルクTCVTiの位相は、車両10毎(車種毎)におよそ予め実験的(計算的に)に求められることから、車両10が段差に当たってからの経過時間に基づいて、エンジンイナーシャトルクTEiの位相が変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるようにロックアップクラッチ26の解放のタイミングを設定するのである。
又は、クラッチ解放時期判定手段94は、例えば段差乗越え判定手段92により車両10が段差に当たったと判定された後に、車両状態取得手段90により取得された変速機入力回転速度NINの回転変化d(NIN)/dtが所定変化α以上となったか否かを判定しても良い。或いは、クラッチ解放時期判定手段94は、例えば段差乗越え判定手段92により車両10が段差に当たったと判定された後に、駆動輪24側からの逆入力に関わる車両状態の変化例えば車両状態取得手段90により取得された加速度Gの変化d(G)/dtが所定変化β以上となったか否かを判定しても良い。上記所定変化α或いは所定変化βは、例えばロックアップクラッチ26の解放に伴って生じるエンジンイナーシャトルクTEiの位相を変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相にする為の(見方を換えれば、エンジン回転速度NEの回転変化を変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングにする為の)予め実験的(或いは計算的)に求められて設定されたクラッチ解放時期判定閾値である。つまり、車両10が段差に当たった後の変速機入力回転速度NINの回転変化d(NIN)/dtや加速度Gの変化d(G)/dtは、車両10毎(車種毎)におよそ予め実験的(計算的に)に求められることから、回転変化d(NIN)/dtや変化d(G)/dtに基づいて、エンジンイナーシャトルクTEiの位相が変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるようにロックアップクラッチ26の解放のタイミングを設定するのである。
ロックアップクラッチ制御手段88は、例えばクラッチ解放時期判定手段94により所定時間TOFFが経過したと判定された場合には、又はクラッチ解放時期判定手段94により変速機入力回転速度NINの回転変化d(NIN)/dt或いは加速度Gの変化d(G)/dtが所定変化α或いはβ以上となったと判定された場合には、ロックアップクラッチ26を解放する為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路100へ出力する。油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ制御手段88からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ26が解放されるように切換用ソレノイド弁SLを作動させて、ロックアップリレーバルブ124の弁位置を解放側(OFF)位置へ切り換える。このとき、ロックアップクラッチ制御手段88は、例えばロックアップクラッチ26を応答性良く解放する為に、ロックアップクラッチ26を解放するまでは、ロックアップクラッチ26に滑りが生じない為の可及的に低いトルク容量TCで係合するように、予め実験的に求められて設定されたクラッチ圧指令値SSLUを設定しても良い。
エンジン出力制御手段82は、例えば段差乗越え判定手段92により車両10が段差に当たったと判定された場合のロックアップクラッチ制御手段88によるロックアップクラッチ26の解放に際して、合成イナーシャトルクTinaが可及的に小さくなるように、エンジン12の出力制御によってエンジン回転速度NEの上昇勾配を制御する為のエンジン出力制御指令信号SEを出力する。具体的には、エンジン出力制御手段82は、エンジン回転速度NEの回転変動における変化勾配d(NE)/dtの絶対値を変速機入力回転速度NINの回転変動における変化勾配d(NIN)/dtの絶対値に近づけるように、電子スロットル弁40の開閉制御、燃料噴射装置78による燃料噴射量の制御、点火装置80による点火時期の制御などのうちの少なくとも1つのエンジン出力制御によりエンジン回転速度NEを制御する為のエンジン出力制御指令信号SEを出力する。
図11は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわち駆動輪24側からの逆入力に伴う合成イナーシャトルクTinaを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図12は、図11のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の一例を示すタイムチャートである。
図11において、先ず、車両状態取得手段90に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば入力軸回転速度センサ56から電子制御装置50に供給される信号に基づいて変速機入力回転速度NINの実際値が取得される。次いで、段差乗越え判定手段92に対応するS20において、例えば上記S10にて取得された変速機入力回転速度NINの実際値に基づいて変速機入力回転速度NINの変化量ΔNINが算出され、所定時間T’中における変化量ΔNINが所定値ΔNIN’以上であるか否が判定される。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は同じく段差乗越え判定手段92に対応するS30において、例えば車両10が段差を乗り越えたと判定される、すなわち車両10が段差に当たったと判定される(図12のt1時点)。次いで、クラッチ解放時期判定手段94に対応するS40において、例えば上記S30の判定から所定時間TOFFが経過したか否かが判定される。又は、上記S30の判定後の変速機入力回転速度NINの回転変化d(NIN)/dt或いは加速度Gの変化d(G)/dtが所定変化α或いはβ以上となったか否かが判定される。このS40の判断が否定される場合は繰り返しこのS40が実行されるが肯定される場合はロックアップクラッチ制御手段88に対応するS50において、ロックアップクラッチ26を解放する為のロックアップ制御指令信号SLが油圧制御回路100へ出力される(図12のt2時点)。次いで、エンジン出力制御手段82に対応するS60において、例えばエンジン回転速度NEの変化勾配d(NE)/dtの絶対値を変速機入力回転速度NINの変化勾配d(NIN)/dtの絶対値に近づけるように、すなわちエンジン回転速度NEの上昇勾配を変速機入力回転速度NINの下降勾配の絶対値に近づけるように、電子スロットル弁40の開閉制御、燃料噴射装置78による燃料噴射量の制御、点火装置80による点火時期の制御などのうちの少なくとも1つのエンジン出力制御によりエンジン回転速度NEを制御する為のエンジン出力制御指令信号SEが出力される(図12のt2時点以降)。ここでのエンジン出力制御では、例えば指令値の変化によって変化させられるエンジントルクTEの応答遅れを加味して、エンジン出力制御指令信号SEが出力されることが望ましい。
図12に示すように、例えばロックアップクラッチ26の解放後に立ち上がるエンジン回転速度NEの位相は、変速機入力回転速度NINの回転変動の逆位相となる。これにより、ロックアップクラッチ26の解放後には、変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるエンジンイナーシャトルクTEiにより、合成イナーシャトルクTinaのピーク値が抑制される(図12の破線)。加えて、この際、エンジン回転速度NEの上昇勾配が例えばスロットル制御で最適化されると、合成イナーシャトルクTinaのピーク値が一層抑制される(図12の実線)。
上述のように、本実施例によれば、ロックアップクラッチ26の解放に伴って生じるエンジンイナーシャトルクTEiが、駆動輪24側からの逆入力に伴って生じる変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるように、ロックアップクラッチ26が解放されるので、(見方を換えれば、ロックアップクラッチ26の解放によって上昇するエンジン回転速度NEの回転変化が、駆動輪24側からの一時的な逆入力によって振動する変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングで、係合状態にあるロックアップクラッチ26が解放されるので、)例えば変速機イナーシャトルクTCVTiの少なくとも一部をエンジンイナーシャトルクTEiにより相殺することができる。つまり、駆動輪24側からの逆入力に伴う、エンジンイナーシャトルクTEiと変速機イナーシャトルクTCVTiとの合成イナーシャトルクTinaのピーク値を抑制することができる。よって、例えば駆動輪24側からの逆入力を想定したベルト挟圧Pd、前進用クラッチC1や後進用ブレーキB1などの係合装置の係合圧Pc、又はベルト挟圧Pdや係合圧Pcの元圧となるライン油圧PLを下げることが可能となり、例えば燃費を向上することが可能となる。
また、本実施例によれば、ロックアップクラッチ26の解放に際して、合成イナーシャトルクTinaが可及的に小さくなるように、エンジン出力制御によってエンジン回転速度NEの上昇勾配を制御するので、(見方を換えれば、ロックアップクラッチ26の解放に際して、エンジン回転速度NEの上昇勾配を変速機入力回転速度NINの下降勾配の絶対値に近づけるように、エンジン出力を一時的に制御するので、)例えば変速機イナーシャトルクTCVTiの少なくとも一部をエンジンイナーシャトルクTEiにより一層適切に相殺することができ、駆動輪24側からの逆入力に伴う合成イナーシャトルクTinaのピーク値を一層抑制することができる。
また、本実施例によれば、エンジンイナーシャトルクTEiはロックアップクラッチ26の解放によって上昇するエンジン回転速度NEの変化に伴って生じるイナーシャトルクであり、変速機イナーシャトルクTCVTiは駆動輪24側からの一時的な逆入力によって振動する変速機入力回転速度NINの変化に伴って生じるイナーシャトルクであり、エンジン回転速度NEの回転変化が変速機入力回転速度NINの回転変化と逆位相となるように、ロックアップクラッチ26を解放するので、例えばエンジンイナーシャトルクTEiが変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるようにロックアップクラッチ26が適切に解放されて、駆動輪24側からの逆入力に伴う合成イナーシャトルクTinaのピーク値を適切に抑制することができる。
また、本実施例によれば、駆動輪24側からの逆入力を判定してから、エンジンイナーシャトルクTEiの位相を変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相にする為の(見方を換えれば、エンジン回転速度NEの回転変化を変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングにする為の)予め求められた所定時間TOFF経過後に、ロックアップクラッチ26を解放するので、例えばエンジンイナーシャトルクTEiが変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるようにロックアップクラッチ26が適切に解放されて、(エンジン回転速度NEの回転変化が変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングで係合状態にあるロックアップクラッチ26が適切に解放されて、)駆動輪24側からの逆入力に伴う合成イナーシャトルクTinaのピーク値を適切に抑制することができる。
また、本実施例によれば、駆動輪24側からの逆入力を判定後に、変速機入力回転速度NINの回転変化d(NIN)/dt或いは駆動輪24側からの逆入力に関わる車両状態の変化(例えば加速度Gの変化d(G)/dt)がエンジンイナーシャトルクTEiの位相を変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相にする為の(見方を換えれば、エンジン回転速度NEの回転変化を変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングにする為の)予め求められた所定変化α或いはβとなったときに、ロックアップクラッチ26を解放するので、例えばエンジンイナーシャトルクTEiが変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相となるようにロックアップクラッチ26が適切に解放されて、(エンジン回転速度NEの回転変化が変速機入力回転速度NINの回転変化と逆方向となるタイミングで係合状態にあるロックアップクラッチ26が適切に解放されて、)駆動輪24側からの逆入力に伴う合成イナーシャトルクTinaのピーク値を適切に抑制することができる。
また、本実施例によれば、ロックアップクラッチ26を解放するまでは、ロックアップクラッチ26に滑りが生じない為の可及的に低いトルク容量TCで係合するので、例えばロックアップクラッチ26を応答性良く解放することができる。また、ロックアップクラッチ26を解放するまでは、変速機イナーシャトルクTCVTiの増大を適切に抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、車両10が段差に当たったと判定された場合のロックアップクラッチ26の解放に際して、合成イナーシャトルクTinaが可及的に小さくなるように、エンジン12の出力制御によってエンジン回転速度NEの上昇勾配を制御したが、必ずしもこのエンジン回転速度NEの制御を実行する必要はない。このエンジン回転速度NEの制御を実行しなくとも、エンジンイナーシャトルクTEiを変速機イナーシャトルクTCVTiと逆位相とするようにロックアップクラッチ26を解放することにより合成イナーシャトルクTinaを抑制するという本発明の一定の効果は得られる。
また、前述の実施例では、エンジン12に関わる回転速度としてエンジン回転速度NEを例示したが、例えばクランク軸13の回転に関連するエンジン12からロックアップクラッチ26の入力側までの動力伝達経路における回転部材の回転速度であれば良い。また、無段変速機18に関わる回転速度として変速機入力回転速度NINを例示したが、例えば無段変速機18を構成する回転部材の回転速度やそれに関連するロックアップクラッチ26の出力側から駆動輪24までの動力伝達経路における回転部材の回転速度であれば良い。従って、エンジンイナーシャトルクTEiは、例えばエンジン12に関わる回転速度の変化に伴って生じるイナーシャトルクであっても良い。また、変速機イナーシャトルクTCVTiは、例えば無段変速機18に関わる回転速度の変化に伴って生じるイナーシャトルクであっても良い。
また、前述の実施例では、車両用自動変速機として無段変速機18を例示したが、他の種類の自動変速機例えば両可変プーリ42、46に巻き掛けられる動力伝達部材が伝動ベルト48ではなくチェーンである無段変速機、良く知られたトラクション型無段変速機、良く知られた多段(有段)の自動変速機等であっても本実施例は適用され得る。要は、ロックアップクラッチ26を有する流体伝動装置を介して入力されたエンジン12の動力を駆動輪24側へ伝達する車両用自動変速機であれば本実施例は適用され得る。具体的には、無段変速機18に替えて公知の遊星歯車式自動変速機が採用される場合には、ベルト挟圧Pdでなく、例えば複数組の遊星歯車装置の回転要素を選択的に連結する為の係合装置の係合圧、その係合圧の元圧となるライン油圧を下げることが可能となり、燃費を向上することが可能となる。
また、前述の実施例では、流体伝動装置としてロックアップクラッチ26が備えられているトルクコンバータ14が用いられていたが、トルク増幅作用のないフルードカップリングが用いられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。