JP2008298145A - 自動変速機のロックアップクラッチ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の悪路走行に伴って車体に発生する振動をロックアップクラッチの制御によって軽減することが可能な自動変速機のロックアップクラッチ制御装置を提供する。
【解決手段】車輪速センサにより検知される車輪速度の変動量により悪路走行中であるか否か、また、悪路のレベルの大小を判定する。凹凸の比較的小さい悪路を走行していると判定された場合には、ロックアップクラッチを強制的に半係合(フレックスロックアップ状態)に設定する。また、凹凸の大きい悪路を走行していると判定された場合には、ロックアップクラッチを強制的に解放状態(トルコン状態)に設定する。これにより、互いに連結されるパワートレーンの重量が軽量化されることになり、悪路走行に伴って車体に発生する振動を軽減することが可能になる。
【選択図】図7
【解決手段】車輪速センサにより検知される車輪速度の変動量により悪路走行中であるか否か、また、悪路のレベルの大小を判定する。凹凸の比較的小さい悪路を走行していると判定された場合には、ロックアップクラッチを強制的に半係合(フレックスロックアップ状態)に設定する。また、凹凸の大きい悪路を走行していると判定された場合には、ロックアップクラッチを強制的に解放状態(トルコン状態)に設定する。これにより、互いに連結されるパワートレーンの重量が軽量化されることになり、悪路走行に伴って車体に発生する振動を軽減することが可能になる。
【選択図】図7
Description
本発明は、自動車に搭載される自動変速機のロックアップクラッチ制御装置に係る。特に、本発明は、悪路走行時における車両振動を抑制するための対策に関する。
近年、トルクコンバータを備えるタイプの自動変速機(オートマチックトランスミッション)では、このトルクコンバータに、その入力側(ポンプ側)と出力側(タービン側)とを直結させるためのロックアップクラッチが設けられている。
このロックアップクラッチは、係合状態とすることによりトルクコンバータの入力側と出力側とを直結し、また、解放状態とすることによりトルクコンバータの入力側と出力側とを切り離す(所謂流体クラッチとして機能させる)。また、これら係合状態と解放状態との中間である半係合状態にすることによりトルクコンバータを滑らせる所謂スリップ制御が行われるものもある(例えば下記の特許文献1を参照)。
このスリップ制御は、所定のスリップ制御実行条件(例えば車速とアクセル開度とにより定められた条件)が成立したときに開始される。そして、トルクコンバータのポンプ回転数(エンジン回転数に相当)とタービン回転数との回転差に応じて、例えばこの回転差が一定になるように、ロックアップクラッチの係合力をフィードバック制御することによって、トルクコンバータの動力伝達状態を管理するようになっている。
以下、このスリップ制御を実行する場合の一例について簡単に説明する。
一般的に、車両が減速状態にある際、燃費向上を図るためにフューエルカットつまりインジェクタによる燃料供給を停止させるようにしている。このフューエルカットは、エンジン回転数が所定の閾値以下まで低下すると、エンジンストールを防止するために解除される(燃料噴射を復帰させる)。
このような車両減速時において、トルクコンバータのロックアップクラッチを解放状態にしていると、トルクコンバータの出力側から入力側へのトルク(回転動力)伝達ロスがあるためにエンジンブレーキの効きが不十分になる可能性があるので、従来、ロックアップクラッチを係合状態にして、車両減速時のエンジンブレーキの効きを強くするようにしていた。
この場合、車両減速に伴うフューエルカットとロックアップクラッチの係合とにより、エンジンブレーキの効きは強くなるが、その反面、エンジン回転数や車速が急激に低下することになって、比較的短時間でフューエルカット解除用の閾値に到達してしまい燃費改善効果が不十分になってしまう。上記フューエルカット解除用の閾値を低く設定すればフューエルカット時間を延長することは可能であるが、あまり低く設定し過ぎると、エンジンがストールしやすくなり好ましくない。
そこで、フューエルカット中に、ロックアップクラッチをスリップ制御(所謂、減速フレックスロックアップ制御)することにより、エンジン回転数の低下を緩やかにし、エンジン回転数が上記フューエルカット解除用の閾値に低下するまでに要する時間を長くすることが行われている(例えば特許文献2,3参照)。
一方、車両が加速状態にあるときに、従来であればロックアップクラッチを解放状態としていた運転領域においてもロックアップクラッチをスリップ制御することにより、トルクコンバータの入力側から出力側へのトルク(回転動力)伝達ロスを低減することができ、燃費の改善を図ることができる。
特開2005−42800号公報
特開2004−347004号公報
特開平8−109962号公報
ところで、車両が凹凸の多い所謂悪路を走行している場合、駆動輪が路面の突起に乗り上がる際には駆動輪の回転速度が低下し、突起を乗り越えた後には駆動輪の回転速度が上昇するといった現象が繰り返されることになる。つまり、この悪路の影響による駆動輪の回転変動が大きくなる。
そして、この駆動輪の回転変動が、ドライブシャフト、変速機、トルクコンバータ、エンジンといったパワートレーン全体に伝達される状況では、パワートレーンに振動が発生し、このパワートレーンの振動に伴って車体全体が大きく振動してしまう。このような状況では、乗員の乗り心地に悪影響を与えたり、ステアリング等に振動が伝達されてしまってドライバに違和感を与えてしまうことになる。また、駆動輪の回転変動に伴うエンジンの回転変動とパワートレーン全体とが共振するような状況になると、車体全体の振動が更に増幅されてしまう可能性もある。
本発明の発明者は、この悪路走行時の車体振動を抑制することについて考察した。そして、このように車体全体に大きな振動が発生する原因は、悪路の影響により振動する振動体(駆動輪の回転変動により振動するユニット)が、駆動輪からエンジンに亘る非常に重量の大きなパワートレーンとなっているためであることを見出した。
そして、この悪路の影響によって振動が発生するユニット(上記振動体)を軽量化すれば車体に伝達される振動も小さくなって上記の課題が解消されることについて着目した。この軽量化を図るためには、変速機やエンジンそれぞれを軽量化することが考えられるが、これらの軽量化は、構成材料のアルミニウム化等により既に限界に達しており、現状以上の大幅な軽量化を図ることは困難な状況である。そこで、本発明の発明者は、上記車体に伝達される振動を小さくするための手段として上記ロックアップクラッチを利用することに着目した。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の悪路走行に伴って車体に発生する振動をロックアップクラッチの制御によって軽減することが可能な自動変速機のロックアップクラッチ制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、車両が走行している路面が悪路であって、駆動輪の回転変動が大きく、パワートレーンに振動が発生する可能性のある状況では、ロックアップクラッチを非係合状態(半係合状態を含む)とし、パワートレーンのうち駆動輪の回転変動が伝達される構成部分の重量を軽量化するようにしている。
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、車両が走行している路面が悪路であって、駆動輪の回転変動が大きく、パワートレーンに振動が発生する可能性のある状況では、ロックアップクラッチを非係合状態(半係合状態を含む)とし、パワートレーンのうち駆動輪の回転変動が伝達される構成部分の重量を軽量化するようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、車両に搭載され、駆動力入力側と駆動力出力側とを、係合状態と非係合状態との間で切り換え可能なロックアップクラッチを備えた流体継手を有する自動変速機のロックアップクラッチ制御装置を前提とする。このロックアップクラッチ制御装置に対し、車両が走行している路面が悪路であることを判定する悪路判定手段と、この悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際、上記ロックアップクラッチを強制的に非係合状態にする強制非係合手段とを備えさせている。
具体的に、本発明は、車両に搭載され、駆動力入力側と駆動力出力側とを、係合状態と非係合状態との間で切り換え可能なロックアップクラッチを備えた流体継手を有する自動変速機のロックアップクラッチ制御装置を前提とする。このロックアップクラッチ制御装置に対し、車両が走行している路面が悪路であることを判定する悪路判定手段と、この悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際、上記ロックアップクラッチを強制的に非係合状態にする強制非係合手段とを備えさせている。
この特定事項により、車両が平坦路(非悪路)を走行している場合には、微小時間間隔での駆動輪の回転変動は殆ど生じておらず、この駆動輪の回転変動に伴ってパワートレーンに振動が発生するといった状況は招かない。このため、ロックアップクラッチが係合状態であって、連結されているパワートレーン全体としての重量が大きい(この場合、駆動輪からエンジンに亘って連結されている状態にある)状況であっても、この重量が大きいことが原因で振動が増大するといったことはない。
これに対し、車両が凹凸路である悪路を走行している場合には、微小時間間隔での駆動輪の回転変動が生じており、この駆動輪の回転変動に伴ってパワートレーンに振動が生じることになる。この場合、ロックアップクラッチが係合状態であると、連結されているパワートレーン全体としての重量(駆動輪からエンジンに亘る重量)が大きく、この重量物が振動することになって車体の振動が大きくなってしまう可能性があった。
そこで、本解決手段では、上記悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された場合には、上記ロックアップクラッチを強制的に非係合状態(解放状態または半係合状態)にし、互いに連結されるパワートレーンの重量を軽量化する。言い換えると、駆動輪の回転変動が直接的に伝達される伝達経路をロックアップクラッチにより遮断する(振動系からエンジンを切り離す)ことでエンジンにまでは上記駆動輪の回転変動が伝達され難い状態とし、この伝達経路を構成するパワートレーンの重量を軽量化する。このため、悪路走行に伴って車体に発生する振動を軽減することが可能になり、また、駆動輪の回転変動に伴うエンジンの回転変動とパワートレーンとが共振するといった状況を回避することも可能になる。
ロックアップクラッチを強制的に非係合状態にする場合の具体的な手法を実現するための構成としては以下のものが挙げられる。つまり、上記ロックアップクラッチの非係合状態として、半係合状態と解放状態とを設定可能とする。また、車両が走行している路面が悪路である場合の悪路レベルとして、路面の凹凸が比較的小さい第1の悪路レベルと、この第1の悪路レベルよりも路面の凹凸が大きい第2の悪路レベルとを上記悪路判定手段が判別可能な構成とする。そして、ロックアップクラッチが係合状態にあるときに、悪路判定手段によって検知される悪路レベルが上記第1の悪路レベルとなった際には、上記強制非係合手段がロックアップクラッチを半係合状態にし、ロックアップクラッチが係合状態または半係合状態にあるときに、悪路判定手段によって検知される悪路レベルが上記第2の悪路レベルとなった際には、上記強制非係合手段がロックアップクラッチを解放状態にする構成としている。
これによれば、車両が走行している路面の悪路レベルに応じてロックアップクラッチの非係合状態を設定することができる。つまり、凹凸が比較的大きい悪路(上記第2の悪路レベル)である場合にはロックアップクラッチを解放状態とし、駆動輪の回転変動のエンジンへの伝達を略遮断する。即ち、凹凸が比較的大きい悪路の場合には、燃費改善効果よりも車体振動抑制効果を優先させる動作を実行する。一方、凹凸が比較的小さい悪路(上記第1の悪路レベル)である場合にはロックアップクラッチを半係合状態とし、駆動輪の回転変動がエンジンへ伝達されることを僅かに許容しつつも、ロックアップクラッチを半係合状態とすることに伴う燃費の改善を図ることができるようにする。これにより、車体振動の抑制と燃費改善とを両立できる状態になる。例えば、上記駆動輪の回転変動に伴う車体振動を許容範囲内に抑えつつ、ロックアップクラッチの半係合による燃費改善効果を奏することが可能になる。
ロックアップクラッチを強制的に非係合状態にする場合の具体的な手法を実現するための他の構成としては以下のものが挙げられる。つまり、上記ロックアップクラッチの非係合状態として、半係合状態と解放状態とを設定可能とする。また、ロックアップクラッチが係合状態にあるときに、悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際には、上記強制非係合手段がロックアップクラッチを半係合状態にし、また、ロックアップクラッチが半係合状態にあるときに、悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際には、上記強制非係合手段がロックアップクラッチを解放状態にする構成としている。
これによれば、ロックアップクラッチを、係合状態、半係合状態、解放状態の3段階で切り換え可能な構成において、車両が悪路を走行していると判定された場合には、現状のロックアップクラッチの状態から1段階だけ解放側に向けて作動させ、これにより、互いに連結されるパワートレーンの重量の軽量化による車体振動の抑制効果を促進することが可能になる。例えば、ロックアップクラッチが係合状態にあって非悪路を走行している状態から悪路走行に移った際には、先ず、ロックアップクラッチを半係合状態にする。その後、悪路走行が継続すれば、ロックアップクラッチを解放状態にすることになる。このため、ロックアップクラッチが係合状態から解放状態に急激に切り換わるといった状況を抑制し、ロックアップクラッチの切り換わりに伴う車両の挙動発生を抑制することが可能になる。
上述した強制非係合手段による強制的な非係合状態から通常のロックアップクラッチ制御に復帰させるための構成として以下のものが挙げられる。つまり、上記強制非係合手段によってロックアップクラッチが強制的に非係合状態とされている状態で、悪路判定手段によって路面が悪路でなくなったと判定された場合には、ロックアップクラッチを、車両の速度及び運転者の操作によるアクセル開度に応じて係合状態または非係合状態にするロックアップクラッチ制御に復帰させる構成としている。
これにより、車両が悪路から脱した場合には、通常のロックアップクラッチ制御に移ることになる。つまり、車両の速度及び運転者の操作によるアクセル開度に応じて予め設定された(例えばロックアップクラッチ制御用のマップにより設定された)係合状態または非係合状態となる。これにより、本来のロックアップクラッチ制御の効果を奏するための制御動作を、悪路を脱するのと同時に開始することができる。つまり、係合状態とした場合の動力伝達ロスの削減や、非係合状態とした場合の燃費の改善などを図ることができる。
また、上記悪路判定手段による悪路判定の手法としては、単位時間当たりの駆動輪回転数の変動量が所定の悪路判定量よりも大きい場合に、車両が走行している路面が悪路であると判定するようにしている。
つまり、上記車体振動の発生原因である駆動輪回転数の変動量を直接的に検知し、それに応じてロックアップクラッチを制御するようにしている。このため、ロックアップクラッチを強制的に非係合状態にすることによる車体振動抑制効果を確実に発揮できるタイミングで、この強制的非係合状態を得ることができ、上記効果を確実に奏することが可能になる。
本発明では、車両が走行している路面が悪路であって、駆動輪の回転変動が大きく、パワートレーンに振動が発生する可能性のある状況では、ロックアップクラッチを非係合状態とすることで、駆動輪の回転変動が直接的に伝達される振動系からエンジンを切り離して、この振動系を軽量化している。これにより、上記駆動輪の回転変動が原因で車体全体が大きく振動してしまうといった状況を回避し、乗員の乗り心地の改善や運転者の違和感の解消を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に搭載された自動変速機のロックアップクラッチに対して本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態において特徴とする制御であるロックアップクラッチ制御動作について説明する前に、車両のパワートレーン(車両用駆動装置)及び自動変速機の基本動作等について説明する。
図1は、本実施形態に係る車両のパワートレーンを示す概略構成図、図2は、図1の自動変速機における変速機構部の一例を示すスケルトン図、図3は、図2の変速機構部における変速段毎の各クラッチおよび各ブレーキの係合表である。
図中、1はエンジン、2は自動変速機、3はエンジン制御装置(エンジンECU)、4はトランスミッション制御装置(変速機ECU)である。
−エンジン1−
エンジン1は、外部から吸入する空気とインジェクタ(燃料噴射弁)5から噴射される燃料とを適宜の比率で混合した混合気を燃焼させることにより、回転動力を発生する内燃機関である。吸入空気量は、スロットルバルブ6で調節される。このスロットルバルブ6は、電動式のアクチュエータ(スロットルモータ等)7により駆動されるもので、アクセルペダル11の踏み込み量や制御上の必要条件に基づきアクチュエータ7を駆動することにより開度調節される。インジェクタ5およびアクチュエータ7は、エンジン制御装置3により制御される。
エンジン1は、外部から吸入する空気とインジェクタ(燃料噴射弁)5から噴射される燃料とを適宜の比率で混合した混合気を燃焼させることにより、回転動力を発生する内燃機関である。吸入空気量は、スロットルバルブ6で調節される。このスロットルバルブ6は、電動式のアクチュエータ(スロットルモータ等)7により駆動されるもので、アクセルペダル11の踏み込み量や制御上の必要条件に基づきアクチュエータ7を駆動することにより開度調節される。インジェクタ5およびアクチュエータ7は、エンジン制御装置3により制御される。
−自動変速機2−
自動変速機2は、エンジン1から入力軸9に入力される回転動力を変速し、出力軸10を介して駆動輪に出力するもので、主として、トルクコンバータ(流体継手)20、変速機構部30、油圧制御装置40等を含んで構成されている。
自動変速機2は、エンジン1から入力軸9に入力される回転動力を変速し、出力軸10を介して駆動輪に出力するもので、主として、トルクコンバータ(流体継手)20、変速機構部30、油圧制御装置40等を含んで構成されている。
トルクコンバータ20は、エンジン1に回転連結されるもので、ポンプインペラ21、タービンランナ22、ステータ23、ワンウェイクラッチ24、ステータシャフト25、ロックアップクラッチ26を含んで構成されている。
上記ロックアップクラッチ26は、トルクコンバータ20のポンプインペラ21(入力側)とタービンランナ22(出力側)とを直結可能とするものであり、必要に応じて、ポンプインペラ21とタービンランナ22とを直結する係合状態と、ポンプインペラ21とタービンランナ22とを切り離す解放状態と、これら係合状態と解放状態との中間の半係合状態(スリップ状態)との間で切り換えられる。この切り換えのための条件については後述する。
このロックアップクラッチ26の係合力制御は、ロックアップコントロールバルブ27でポンプインペラ21(入力側)とタービンランナ22(出力側)とに対する作動油圧をコントロールすることによって行われる。
変速機構部30は、図2に示すように、主として、第1プラネタリ31、第2プラネタリ32、第3プラネタリ33、クラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4、ワンウェイクラッチF0〜F3等を含んで構成されており、前進6段、後進1段の変速が可能になっている。
第1プラネタリ31は、ダブルピニオンタイプと呼ばれる歯車式遊星機構とされており、サンギアS1と、リングギアR1と、複数個のインナーピニオンギアP1Aと、複数個のアウターピニオンギアP1Bと、キャリアCA1とを含む構成である。
サンギアS1は、クラッチC3を介して入力軸9に選択的に連結される。このサンギアS1は、ワンウェイクラッチF2およびブレーキB3を介してハウジングに選択的に連結され、逆方向(入力軸9の回転と反対方向)の回転が阻止される。キャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジングに選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられたワンウェイクラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止される。リングギアR1は、第2プラネタリ32のリングギアR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジングに選択的に連結される。
第2プラネタリ32は、シングルピニオンタイプと呼ばれる歯車式遊星機構とされており、サンギアS2と、リングギアR2と、複数個のピニオンギアP2と、キャリアCA2とを含む構成である。
サンギアS2は、第3プラネタリ33のサンギアS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸9に選択的に連結される。このサンギアS2は、ワンウェイクラッチF0及びクラッチC1を介して入力軸9に選択的に連結され、その入力軸9に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止される。キャリアCA2は、第3プラネタリ33のリングギアR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸9に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジングに選択的に連結される。このキャリアCA2は、ブレーキB4と並列に設けられたワンウェイクラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止される。
第3プラネタリ33は、シングルピニオンタイプと呼ばれる歯車式遊星機構とされており、サンギアS3と、リングギアR3と、複数個のピニオンギアP3と、キャリアCA3とを含む構成である。キャリアCA3は、出力軸10に一体的に連結されている。
クラッチC1〜C4およびブレーキB1〜B4は、オイルの粘性を利用した湿式多板摩擦係合装置により構成されている。
油圧制御装置40は、変速機構部30におけるクラッチC1〜C4ならびにブレーキB1〜B4を個別に係合、解放させることにより適宜の変速段(1〜6速段)を成立させるものである。この油圧制御装置40の基本構成は公知であるので、ここでは詳細な図示や説明を割愛する。
ここで、上述した変速機構部30における各変速段を成立させる条件について、図3を用いて説明する。
図3は、変速機構部30の変速段毎でのクラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B4およびワンウェイクラッチF0〜F3の係合または解放状態を示す係合表である。この係合表において、○印は「係合」、×印は「解放」、◎印は「エンジンブレーキ時に係合」、△印は「駆動時のみ係合」を示す。
なお、クラッチC1は、前進クラッチ(入力クラッチ)と呼ばれ、図3の係合表に示すように、パーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)以外の、車両が前進するための変速段を構成する際に必ず係合状態で使用される。
−エンジン制御装置3、トランスミッション制御装置4−
エンジン制御装置3は、走行状況に応じてエンジン1へ供給する混合気や燃焼タイミングを制御することによりエンジン1を駆動するものである。
エンジン制御装置3は、走行状況に応じてエンジン1へ供給する混合気や燃焼タイミングを制御することによりエンジン1を駆動するものである。
トランスミッション制御装置4は、油圧制御装置40を制御することにより変速機構部30における適宜の変速段つまり動力伝達経路を成立させるものである。
また、これらエンジン制御装置3とトランスミッション制御装置4とは、エンジン制御やトランスミッション制御に必要な情報を互いに送受可能に接続されている。
エンジン制御装置3およびトランスミッション制御装置4は、図示していないが、共に一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされており、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びバックアップRAMなどを備えている。
ROMは、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAMは、CPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
エンジン制御装置3には、図4に示すように、エンジン回転数センサ101、及び、スロットル開度センサ102などのエンジン1の運転状態を検出する各種センサが接続されており、その各センサの信号が入力される。また、このエンジン制御装置3は、スロットルバルブ6のアクチュエータ7、及び、インジェクタ5などのエンジン1の各部を制御する。
トランスミッション制御装置4には、上記入力軸9の回転数を検出する入力軸回転数センサ110、出力軸10の回転数を検出する出力軸回転数センサ111、ドライバにより操作されるアクセルペダル11の開度を検出するアクセル開度センサ112、自動変速機2のシフトレバー位置を検出するシフトポジションセンサ113、駆動輪の速度(車輪速度)を検出する車輪速センサ114などが接続されている。尚、この車輪速センサ114は、各車輪に備えられており、ABS(Antilock Brake System)制御において路面状況を検知するためのものとして使用されている。
また、このトランスミッション制御装置4は、上記ロックアップコントロールバルブ27にロックアップクラッチ制御信号を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいてロックアップコントロールバルブ27がロックアップクラッチ26の係合圧を制御し、上述したロックアップクラッチ26の係合状態(トルコン状態)、解放状態(完全スリップ状態)、半係合状態(スリップ状態:フレックスロックアップ状態とも呼ばれる)が切り換えられるようになっている。
さらに、トランスミッション制御装置4は、自動変速機2の油圧制御装置40にソレノイド制御信号(油圧指令信号)を出力する。このソレノイド制御信号に基づいて油圧制御装置40の油圧制御回路に備えられているリニアソレノイドバルブやオンオフソレノイドバルブなどが制御され、所定の変速段(第1変速段〜第6変速段、後退変速段など)を達成するように、自動変速機2の各クラッチC1〜C4、各ブレーキB1〜B4などが所定の状態に係合または解放される。
−変速マップ−
上記自動変速機2の変速制御は、例えば図5に示すような変速マップ(変速条件)に従って行われる。この変速マップは、車速V及びアクセル開度θTHをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度θTHに応じて、適正な変速段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、上記トランスミッション制御装置4のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(変速段の切り換えライン)によって区画されている。尚、図5に示す変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップ及びシフトダウンの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
上記自動変速機2の変速制御は、例えば図5に示すような変速マップ(変速条件)に従って行われる。この変速マップは、車速V及びアクセル開度θTHをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度θTHに応じて、適正な変速段を求めるための複数の領域が設定されたマップであって、上記トランスミッション制御装置4のROM内に記憶されている。変速マップの各領域は複数の変速線(変速段の切り換えライン)によって区画されている。尚、図5に示す変速マップにおいて、シフトアップ線(変速線)を実線で示し、シフトダウン線(変速線)を破線で示している。また、シフトアップ及びシフトダウンの各切り換え方向を図中に数字と矢印とを用いて示している。
−変速制御の基本動作−
次に、上述の如く構成された自動変速機2に対する変速制御の基本動作について説明する。
次に、上述の如く構成された自動変速機2に対する変速制御の基本動作について説明する。
トランスミッション制御装置4は、上記出力軸回転数センサ111の出力信号から車速Vを算出するとともに、アクセル開度センサ112の出力信号からアクセル開度θTHを算出し、それら車速V及びアクセル開度θTHに基づいて図5の変速マップを参照して目標変速段を算出する。さらに、上記入力軸回転数センサ110及び出力軸回転数センサ111の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)を求めて現在変速段を判定し、その現在変速段と目標変速段とを比較して変速操作が必要であるか否かを判定する。
その判定結果により、変速の必要がない場合(現在変速段と目標変速段とが同じで、変速段が適切に設定されている場合)には、現在変速段を維持するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機2の油圧制御装置40に出力する。
一方、現在変速段と目標変速段とが異なる場合には変速制御を行う。例えば、自動変速機2の変速段が「4速」の状態で走行している状況から、車両の走行状態が変化して、例えば図5に示す点Aから点Bに変化した場合、シフトアップ変速線[4→5]を跨ぐ変化となるので、変速マップから算出される目標変速段が「5速」となり、その5速の変速段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を自動変速機2の油圧制御装置40に出力して、4速の変速段から5速の変速段への変速(4→5アップ変速)を行う。
−ロックアップクラッチ作動マップ−
上述したロックアップクラッチ26の係合状態、解放状態、半係合状態の切り換え動作は、例えば図6に示すようなロックアップクラッチ作動マップに従って行われる。このロックアップクラッチ作動マップは、車速V及びアクセル開度θTHをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度θTHに応じて、ロックアップクラッチ26を、係合状態(ロックアップ状態)、解放状態(トルコン状態)、半係合状態(フレックスロックアップ状態:スリップ状態)の間で切り換えるためのマップであって、上記トランスミッション制御装置4のROM内に記憶されている。
上述したロックアップクラッチ26の係合状態、解放状態、半係合状態の切り換え動作は、例えば図6に示すようなロックアップクラッチ作動マップに従って行われる。このロックアップクラッチ作動マップは、車速V及びアクセル開度θTHをパラメータとし、それら車速V及びアクセル開度θTHに応じて、ロックアップクラッチ26を、係合状態(ロックアップ状態)、解放状態(トルコン状態)、半係合状態(フレックスロックアップ状態:スリップ状態)の間で切り換えるためのマップであって、上記トランスミッション制御装置4のROM内に記憶されている。
つまり、車速V及びアクセル開度θTHに基づいて、係合領域(ロックアップ作動領域)、解放領域(トルコン作動領域)、スリップ領域(フレックスロックアップ作動領域)のいずれの領域に属するかを判定し、その判定された領域の作動となるように上記ロックアップコントロールバルブ27を制御してロックアップクラッチ26を係合、解放、或いは半係合のいずれかの状態とする制御を実行する。尚、上記アクセル開度θTHに代えてスロットル開度に応じたロックアップクラッチ作動マップ(車速とスロットル開度とに応じてロックアップクラッチ26を制御するためのマップ)によりロックアップクラッチ26の状態を切り換えるようにしてもよい。
上記フレックスロックアップ作動領域では、運転性を損なうことなく燃費を可及的に良くすることを目的としてエンジン1の回転変動を吸収しつつトルクコンバータ20の動力伝達損失を可及的に抑制するために、ロックアップクラッチ26のスリップ制御を実行する。ロックアップクラッチ26のスリップ制御については、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの回転速度差(スリップ量)NSLP(=NE−NT)を目標回転速度差(目標スリップ量:例えば50rpm)に制御するためにロックアップクラッチ26を制御するソレノイド弁に対して駆動信号を出力する。このスリップ制御のうちの減速走行時スリップ制御は、たとえば、アクセル開度θTHが略零で惰性走行(減速走行)する前進走行時において生じる駆動輪側からの逆入力をエンジン1側へ伝達する変速段、すなわちエンジンブレーキ作用が得られる変速段で行われ、タービン回転速度NTおよびエンジン回転速度NEは、車両の減速にしたがって緩やかに減少させられる。このようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NT付近まで引き上げられるため、エンジン1に対する燃料供給量を抑制する制御状態(フューエルカット状態)がさらに長い期間維持されて燃費が向上する。
−悪路走行時のロックアップクラッチ制御動作−
次に、本実施形態の特徴とするところの悪路走行時におけるロックアップクラッチ制御動作についての複数の実施形態について説明する。
次に、本実施形態の特徴とするところの悪路走行時におけるロックアップクラッチ制御動作についての複数の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。図7は、本実施形態におけるロックアップクラッチ26の制御動作の手順を示すフローチャートである。本ルーチンは、上記ABS制御動作(車輪に対する間欠的なブレーキング動作)が行われていないことを条件として実行されるものであって、エンジン始動後の所定時間毎、例えば、数十msec毎に実行される。
先ず、第1実施形態について説明する。図7は、本実施形態におけるロックアップクラッチ26の制御動作の手順を示すフローチャートである。本ルーチンは、上記ABS制御動作(車輪に対する間欠的なブレーキング動作)が行われていないことを条件として実行されるものであって、エンジン始動後の所定時間毎、例えば、数十msec毎に実行される。
先ず、ステップST1において、上記車輪速センサ114によって検知される車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD:変動量の絶対値)が所定の閾値α以上であるか否かを判定する(悪路判定手段による悪路判定動作)。ここで使用される車輪速度は駆動輪(本実施形態では後輪)の速度である。より具体的には、左右の駆動輪のうちの一方の駆動輪の車輪速度を検知対象としてもよいし、左右の駆動輪両方の変動量を検知しておきそのうち変動量が大きい側の駆動輪の車輪速度を検知対象としてもよい。更には、左右の駆動輪の変動量の平均値をこのステップST1での車輪速度の変動量としてもよい。
また、ここでいう車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD)とは、例えば、上記車輪速センサ114によって検知される駆動輪の回転速度の10msec毎の変化量(つまり、10msec毎の車速変化量)であって、ステップST1では、この変化量が所定値α(例えば5km/h)以上であるか否かを判定する。つまり、車両が悪路(凹凸路)を走行している状況では、駆動輪が突起に乗り上がる際には駆動輪の回転速度が低下し、突起を乗り越えた後には駆動輪の回転速度が上昇するといった現象が繰り返されることになり、この悪路の影響によって駆動輪の回転変動が大きくなるので、上記車輪速度の単位時間当たりの変動量を検知することで、現在、車両が走行している路面が悪路であるか否かを判定することが可能である。
この変動量(ΔSPD)が閾値α未満である場合(ステップST1でNo判定された場合)には、現在、車両が走行している路面は悪路でないとして、ステップST2に移って、上記ロックアップクラッチ作動マップ(図6)に従って、ロックアップクラッチ26が、係合状態、解放状態、半係合状態の何れかに設定される。つまり、車速V及びアクセル開度θTHに応じて、ロックアップクラッチ26を、係合状態、解放状態、半係合状態の何れかに設定することになる(通常のロックアップクラッチ制御)。
一方、上記変動量(ΔSPD)が閾値α以上である場合には、現在、車両が走行している路面は悪路であると判定され、ステップST3において、その悪路のレベル(悪路の程度)が判断される。具体的に、このステップST3では、上記車輪速センサ114によって検知される車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD:変動量の絶対値)が所定の閾値β以上であるか否かを判定する。この閾値βは、上記閾値αよりも大きな値(より悪路(凹凸が大きい状態)である場合の値)に設定されており、具体的には、変動量10km/hに相当する値に設定されている。
従って、このステップST3でNo判定された場合には、車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD)は、「α≦ΔSPD<β」の範囲にあり、比較的凹凸の小さな悪路(第1の悪路レベル)であると判断される。これに対し、ステップST3の判定でYes判定された場合には、車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD)は、「β≦ΔSPD」であり、凹凸の大きな悪路(第2の悪路レベル)であると判断されることになる。尚、上記α及びβの値は上述したものに限定されず、実験的または経験的に設定される。
そして、このステップST3でYes判定された場合、つまり、凹凸の大きな悪路であると判断された場合には、ステップST4に移り、ロックアップクラッチ26を強制的に解放状態(トルコン状態)にする(強制非係合手段によって強制的に非係合状態(解放状態)とされる動作)。これにより、エンジン1は自動変速機2から切り離された状態となり、駆動輪の回転変動がエンジン1にまで直接的に伝達されることが抑制されることになる。つまり、互いに連結されるパワートレーンの重量が軽量化されることになる。言い換えると、駆動輪の回転変動が直接的に伝達される伝達経路をロックアップクラッチ26により遮断して、この振動系からエンジン1を切り離す。これにより、エンジン1にまでは上記駆動輪の回転変動が伝達され難い状態とし、この伝達経路を構成するパワートレーンの重量を軽量化する。このため、悪路走行に伴って車体に発生する振動を軽減することが可能になり、また、駆動輪の回転変動に伴うエンジン1の回転変動とパワートレーンとが共振するといった状況を回避することも可能になる。
このようにしてロックアップクラッチ26を強制的に解放状態(トルコン状態)にした後には、自動車が悪路から脱することに伴って上記ステップST1でNo判定されるまで、上記ロックアップクラッチ26の強制的な解放状態が継続されることになる。
一方、上記ステップST3でNo判定された場合、つまり、比較的凹凸の小さな悪路であると判断された場合には、ステップST5に移り、現在のロックアップクラッチ26の状態は係合状態(ロックアップ状態)であるか否かを判定する。
今回のルーチンで初めて悪路判定がなされた場合(非悪路を走行している状態から「α≦ΔSPD<β」となる悪路を走行する状態となった場合)には、それまで、上記ロックアップクラッチ作動マップ(図6)に従ったロックアップクラッチ制御が行われている状態となっているが、この通常のロックアップクラッチ制御において、ロックアップクラッチ26が係合状態(ロックアップ状態)となっている場合には、このステップST5でYes判定されることになり、ステップST6に移って、ロックアップクラッチ26を強制的に半係合状態(フレックスロックアップ状態)にする(強制非係合手段によって強制的に非係合状態(半係合状態)とされる動作)。つまり、現在の路面状態が比較的凹凸の小さな悪路である場合には、ロックアップクラッチ26を強制的に半係合状態とすることにより、互いに連結されるパワートレーンの重量の軽量化による車体振動の抑制効果と燃費改善効果とを両立できる状態にする。これにより、駆動輪の回転変動に伴う車体振動を許容範囲内に抑えつつ、ロックアップクラッチ26の半係合による燃費改善効果を奏することが可能になる。
また、今回のルーチンで初めて悪路判定がなされた場合であって、上記ロックアップクラッチ作動マップ(図6)に従った通常のロックアップクラッチ制御においてロックアップクラッチ26が半係合状態(フレックスロックアップ状態)または解放状態(トルコン状態)となっている場合には、上記ステップST5でNo判定されることになり、現在のロックアップクラッチ制御状態を維持したままリターンする。つまり、通常のロックアップクラッチ制御によって既に半係合状態(フレックスロックアップ状態)や解放状態(トルコン状態)となっており、車体振動の抑制効果が得られる状況となっているので、ロックアップクラッチ26の作動を強制的に切り換えることなくリターンする。
以上説明したように、本実施形態では、車両が走行している路面が悪路であって、駆動輪の回転変動が大きく、パワートレーンに振動が発生する可能性のある状況では、ロックアップクラッチ26を半係合状態(フレックスロックアップ状態)または解放状態(トルコン状態)といった非係合状態にする。これにより、駆動輪の回転変動が直接的に伝達される振動系からエンジン1を切り離して、この振動系を軽量化し、上記駆動輪の回転変動が原因で車体全体が大きく振動してしまうといった状況を回避して、乗員の乗り心地の改善や運転者の違和感の解消を図ることができる。
尚、本実施形態では、ロックアップクラッチ26を強制的に解放状態(トルコン状態)にした後には(ステップST4で解放状態にした後には)、自動車が悪路から脱するまで、上記ロックアップクラッチ26の強制的な解放状態が継続されるようにしていた。これに限らず、ロックアップクラッチ26が解放状態にある場合に、それが、ロックアップクラッチ作動マップに従った通常のロックアップクラッチ制御によって解放状態とされたものであるのか、上記ステップST4において強制的に解放状態とされたものであるのかが判別できるようにしておき、通常のロックアップクラッチ制御によって解放状態とされたものである場合には、ステップST3でNo判定された際に解放状態を維持する一方、強制的に解放状態とされたものである場合には、ステップST3でNo判定された際に強制的に半係合状態(フレックスロックアップ状態)に切り換えるようにしてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図8は、本実施形態におけるロックアップクラッチ26の制御動作の手順を示すフローチャートである。本ルーチンも、上記ABS制御動作が行われていないことを条件として実行されるものであって、エンジン始動後の所定時間毎、例えば、数十msec毎に実行される。
次に、第2実施形態について説明する。図8は、本実施形態におけるロックアップクラッチ26の制御動作の手順を示すフローチャートである。本ルーチンも、上記ABS制御動作が行われていないことを条件として実行されるものであって、エンジン始動後の所定時間毎、例えば、数十msec毎に実行される。
先ず、ステップST11において、上記車輪速センサ114によって検知される車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD:変動量の絶対値)が所定の閾値γ以上であるか否かを判定する。ここでいう車輪速度の単位時間当たりの変動量(ΔSPD)の検知動作は上述した第1実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。尚、上記閾値γの値としては、例えば3km/hが挙げられるが、これに限定されるものではなく、実験的または経験的に設定される。
この変動量(ΔSPD)が閾値γ未満である場合(ステップST11でNo判定された場合)には、現在、車両が走行している路面は悪路でないとして、ステップST12に移って、上記ロックアップクラッチ作動マップ(図6)に従って、ロックアップクラッチ26が、係合状態、解放状態、半係合状態の何れかに設定される。つまり、車速V及びアクセル開度θTHに応じた通常のロックアップクラッチ制御が実行される。
一方、上記変動量(ΔSPD)が閾値γ以上である場合には、現在、車両が走行している路面は悪路であると判定され、ステップST13において、現在のロックアップクラッチ26の状態は係合状態(ロックアップ状態)であるか否かを判定する。
今回のルーチンで初めて悪路判定がなされた場合(非悪路を走行している状態から悪路を走行する状態となった場合)には、それまで、上記ロックアップクラッチ作動マップ(図6)に従ったロックアップクラッチ制御が行われている状態となっているが、この通常のロックアップクラッチ制御において、ロックアップクラッチ26が係合状態(ロックアップ状態)となっている場合には、このステップST13でYes判定されることになり、ステップST14に移り、ロックアップクラッチ26を強制的に半係合状態(フレックスロックアップ状態)にする。つまり、ロックアップクラッチ26の状態を係合状態(ロックアップ状態)から一段階だけ解放側に進めた半係合状態(フレックスロックアップ状態)に強制的に変更する。
このようにして、ロックアップクラッチ26を強制的に半係合状態とすることにより、上記第1実施形態の場合と同様に、互いに連結されるパワートレーンの重量の軽量化による車体振動の抑制効果と燃費改善効果とを両立できる状態にする。これにより、駆動輪の回転変動に伴う車体振動を許容範囲内に抑えつつ、ロックアップクラッチ26の半係合による燃費改善効果を奏することが可能になる。
このようにしてロックアップクラッチ26が強制的に半係合状態とされた後、ステップST15に移り、上記トランスミッション制御装置4に備えられているタイマのカウントを開始する。このタイマは例えば5secでタイムアップするものなどが適用される。この値はこれに限られるものではなく、上記強制的な半係合状態を継続させるのに適した値のものが採用可能である。
上記ステップST15でタイマのカウントを開始した後、ステップST16に移ってタイマのタイムアップを待ち、タイムアップ後(ステップST16でYes判定後)、リターンされる。
一方、上記ステップST13において、現在のロックアップクラッチ26の状態は係合状態(ロックアップ状態)でないNo判定された場合にはステップST17に移り、現在のロックアップクラッチ26の状態は半係合状態(フレックスロックアップ状態)であるか否かを判定する。ロックアップクラッチ26が半係合状態(フレックスロックアップ状態)となっている場合には、このステップST17でYes判定され、ステップST18に移り、ロックアップクラッチ26を強制的に解放状態(トルコン状態)にする。つまり、ロックアップクラッチ26の状態を半係合状態(フレックスロックアップ状態)から一段階だけ解放側に進めた解放状態(トルコン状態)に強制的に変更する。
このようにして、ロックアップクラッチ26を強制的に解放状態とすることにより、上記第1実施形態の場合と同様に、互いに連結されるパワートレーンの重量が軽量化されることになる。言い換えると、駆動輪の回転変動が直接的に伝達される伝達経路をロックアップクラッチ26により遮断して、この振動系からエンジン1を切り離す。これにより、エンジン1にまでは上記駆動輪の回転変動が伝達され難い状態とし、この伝達経路を構成するパワートレーンの重量を軽量化する。このため、悪路走行に伴って車体に発生する振動を軽減することが可能になり、また、駆動輪の回転変動に伴うエンジン1の回転変動とパワートレーンとが共振するといった状況を回避することも可能になる。
また、上記ステップST17でNo判定された場合には、ロックアップクラッチ26は、既に解放状態(トルコン状態)となっているので、その解放状態を維持したままリターンする。つまり、車体振動の抑制効果が得られる状況となっているので、ロックアップクラッチ26の作動を強制的に切り換えることなくリターンする。
本実施形態によっても、上述した第1実施形態の場合と同様に、悪路走行時には、上記振動系の軽量化を図ることにより、上記駆動輪の回転変動が原因で車体全体が大きく振動してしまうといった状況を回避して、乗員の乗り心地の改善や運転者の違和感の解消を図ることができる。
また、本実施形態にあっては、車両が悪路を走行していると判定された場合には、現状のロックアップクラッチ26の状態から1段階だけ解放側に向けて作動させるようにしている。つまり、悪路判定がなされた際に、ロックアップクラッチ26が係合状態にある場合には強制的に半係合状態にし、また、悪路判定がなされた際に、ロックアップクラッチ26が半係合状態にある場合には強制的に解放状態にしている。このため、ロックアップクラッチ26が係合状態から解放状態に急激に切り換わるといった状況を抑制し、ロックアップクラッチ26の切り換わりに伴う車両の挙動発生を抑制することが可能になる。特に、上記ステップST15及びステップST16においてタイマがタイムアップするまでの間、半係合状態を維持するようにしたことで、この効果を確実に発揮させることができる。
−他の実施形態−
以上説明した各実施形態では、三つのプラネタリ31〜33を備える変速機構部30を有する自動変速機2を例に挙げたが、本発明はこれに限るものではなく種々の変速機構部を有する自動変速機に対して適用することが可能である。また、変速機構部30における変速可能な段数についても特に限定されるものではない。
以上説明した各実施形態では、三つのプラネタリ31〜33を備える変速機構部30を有する自動変速機2を例に挙げたが、本発明はこれに限るものではなく種々の変速機構部を有する自動変速機に対して適用することが可能である。また、変速機構部30における変速可能な段数についても特に限定されるものではない。
また、上述した各実施形態では、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両に搭載された自動変速機2のロックアップクラッチ26に対して本発明を適用した場合について説明したが、FF車両に搭載されたものや4輪駆動車に搭載されたものに対しても本発明は適用可能である。
また、上述した各実施形態では、車輪速センサ114によって検知される車輪速度の単位時間当たりの変動量によって悪路走行中であるか否かを判定するようにしていた。本発明はこれに限らず、出力軸回転数センサ111の出力信号から車速を検知し、この車速の単位時間当たりの変動量によって悪路走行中であるか否かを判定するようにしてもよい。また、悪路走行中であるか否かの判定動作としてはこれらに限らず他の手法を用いてもよい。
2 自動変速機
20 トルクコンバータ(流体継手)
26 ロックアップクラッチ
114 車輪速センサ
20 トルクコンバータ(流体継手)
26 ロックアップクラッチ
114 車輪速センサ
Claims (5)
- 車両に搭載され、駆動力入力側と駆動力出力側とを、係合状態と非係合状態との間で切り換え可能なロックアップクラッチを備えた流体継手を有する自動変速機のロックアップクラッチ制御装置において、
車両が走行している路面が悪路であることを判定する悪路判定手段と、
上記悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際、上記ロックアップクラッチを強制的に非係合状態にする強制非係合手段とを備えていることを特徴とする自動変速機のロックアップクラッチ制御装置。 - 上記請求項1記載の自動変速機のロックアップクラッチ制御装置において、
上記ロックアップクラッチは、非係合状態として、半係合状態と解放状態とが設定可能とされており、
上記悪路判定手段は、車両が走行している路面が悪路である場合の悪路レベルとして、路面の凹凸が比較的小さい第1の悪路レベルと、この第1の悪路レベルよりも路面の凹凸が大きい第2の悪路レベルとが判別可能となっていて、
上記強制非係合手段は、ロックアップクラッチが係合状態にあるときに、悪路判定手段によって検知される悪路レベルが上記第1の悪路レベルとなった際には、ロックアップクラッチを半係合状態とし、ロックアップクラッチが係合状態または半係合状態にあるときに、悪路判定手段によって検知される悪路レベルが上記第2の悪路レベルとなった際には、ロックアップクラッチを解放状態とするよう構成されていることを特徴とする自動変速機のロックアップクラッチ制御装置。 - 上記請求項1記載の自動変速機のロックアップクラッチ制御装置において、
上記ロックアップクラッチは、非係合状態として、半係合状態と解放状態とが設定可能とされており、
上記強制非係合手段は、ロックアップクラッチが係合状態にあるときに、悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際には、ロックアップクラッチを半係合状態とし、また、ロックアップクラッチが半係合状態にあるときに、悪路判定手段によって路面が悪路であると判定された際には、ロックアップクラッチを解放状態とするよう構成されていることを特徴とする自動変速機のロックアップクラッチ制御装置。 - 上記請求項1、2または3記載の自動変速機のロックアップクラッチ制御装置において、
上記強制非係合手段によってロックアップクラッチが強制的に非係合状態とされている状態で、悪路判定手段によって路面が悪路でなくなったと判定された場合には、ロックアップクラッチを、車両の速度及び運転者の操作によるアクセル開度に応じて係合状態または非係合状態にするロックアップクラッチ制御に復帰させるよう構成されていることを特徴とする自動変速機のロックアップクラッチ制御装置。 - 上記請求項1〜4のうち何れか一つに記載の自動変速機のロックアップクラッチ制御装置において、
上記悪路判定手段は、単位時間当たりの駆動輪回転数の変動量が所定の悪路判定量よりも大きい場合に、車両が走行している路面が悪路であると判定するよう構成されていることを特徴とする自動変速機のロックアップクラッチ制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007143817A JP2008298145A (ja) | 2007-05-30 | 2007-05-30 | 自動変速機のロックアップクラッチ制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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2007
- 2007-05-30 JP JP2007143817A patent/JP2008298145A/ja active Pending
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