JP2017141804A - スタータ - Google Patents

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Abstract

【課題】出力軸に設けられるスプラインの捩れ角に左右されることなく、モータの回転を利用してピニオンを軸方向に押し出すことができるスタータを提供する。
【解決手段】スタータ1は、磁力を利用して遊星キャリア17の回転を規制する電磁ブレーキ装置と、遊星キャリア17の回転が規制された状態で内歯車15の回転運動を軸方向の直線運動に変換してピニオン5に伝達するピニオン押出機構とを有する。ピニオン押出機構は、内歯車15に連結されて周方向にカム溝を有する円筒状のカムシリンダ42と、カム溝41と軸方向に交差するストレート溝43を有するスタータハウジング26と、ピニオン5に相対回転可能に組み付けられ押出カラー44と、この押出カラー44に保持されてカム溝41とストレート溝43とに係合する係合ピン45等を備え、カムシリンダ42の回転に応じて係合ピン45が軸方向に移動する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジン始動用のスタータに関する。
従来、特許文献1に開示されたスタータがある。
同スタータは、出力軸に設けられる捩れスプラインに嵌合するピニオンクラッチと、外部から制御される界磁コイルに付勢されてピニオンクラッチの外周に押し当てられる回転抑制部材とを有する。回転抑制部材によりピニオンクラッチの回転が抑制された状態で出力軸を回転させると、捩れスプラインの作用でピニオンクラッチが出力軸上を反モータ方向へ移動して、ピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合う。
特開平8−177691号公報
特許文献1のスタータは、出力軸の回転による捩れスプラインの作用(以下、送りねじ作用と呼ぶ)を利用してピニオンクラッチを反モータ方向へ移動させる構成である。このため、捩れスプラインが必須であり、捩れスプラインに替えて直スプラインを用いることはできない。また、捩れスプラインの捩れ角が小さい場合は、送りねじ作用が正常に働かなかったり、ピニオンクラッチを押し出すために大きな回転トルクが必要になる。言い換えると、回転抑制部材によりピニオンクラッチの外周を押圧して、ピニオンクラッチの回転を抑制するために必要なトルクが大きくなる。
さらに、ピニオンクラッチの回転を抑制するために回転抑制部材をピニオンクラッチの外周に押し当てているため、ピニオンクラッチが出力軸上を移動する際に摺動ロスが発生してモータの消費電力が増大する問題もある。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、出力軸に設けられるスプラインの捩れ角に左右されることなく、モータの回転を利用してピニオンを軸方向に押し出すことができるスタータを提供することにある。
請求項1に係る本発明のスタータは、電力の供給を受けてトルクを発生するモータと、このモータのトルクを入力して一方と他方の二系統に分割できる機能を有すると共に、前記一方の系統に分割されたトルクを取り出す第1出力部と前記他方の系統に分割されたトルクを取り出す第2出力部を有する動力分割機構と、前記第1出力部に取り出されたトルクが伝達されて回転する出力軸と、この出力軸の外周にスプライン嵌合して前記出力軸の軸上を移動可能に設けられるピニオンと、前記第2出力部に取り出されたトルクが伝達されて回転するカムシリンダを有し、このカムシリンダの回転運動を軸方向の直線運動に変換して前記ピニオンに伝達するピニオン押出機構と、前記第1出力部に連結される強磁性体のブレーキ板を有し、磁力を利用して前記ブレーキ板の回転を規制できる電磁ブレーキ装置とを備える。
本発明のスタータは、ピニオン押出機構によりカムシリンダの回転運動を軸方向の直線運動に変換してピニオンに伝達することでピニオンを軸方向へ移動させることができる。この構成によれば、捩れスプラインによる送りねじ作用を利用することなくピニオンを軸方向へ移動できるので、必ずしも出力軸に捩れスプラインを設ける必要はない。例えば、出力軸に直スプラインを設けて、その直スプラインに嵌合するピニオンをピニオン押出機構の働きで軸方向に移動させることができる。これにより、捩れスプラインの捩れ角に左右されることなくピニオンを軸方向へ移動させることができる。なお、本発明では、捩れ角=0度のスプラインを直スプラインと定義する。
また、ピニオンが出力軸の軸上を移動する際に、ピニオンの外周を押圧して回転を規制する必要がないので、特許文献1に開示されるスタータと比較して摺動ロスを小さくでき、結果的にモータの消費電力を抑制できる。
実施例1に係るスタータの断面図である。 実施例1に係るスタータの遊星歯車装置とクラッチを含む分解斜視図である。 実施例1に係るスタータの磁力発生部と周辺部品の分解斜視図である。 実施例1に係るスタータのピニオン押出機構と周辺部品の分解斜視図である。 実施例1に係るスタータの作動説明図(ピニオン静止時)である。 実施例1に係るスタータの作動説明図(ピニオン移動途中)である。 実施例1に係るスタータの作動説明図(ピニオン最大移動時)である。 実施例2に係るスタータのモータ部を除く断面図である。 実施例2に係るスタータの主要構成部を示す斜視図である。 実施例3に係るスタータのモータ部を除く断面図である。 実施例3に係るスタータの主要構成部を示す斜視図である。 実施例4に係るスタータの断面図である。 実施例4に係るスタータの主要構成部を示す斜視図である。 実施例5に係るスタータの断面図である。 実施例5に係る電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置の分解斜視図である。 実施例5に係る電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置の断面図である。 実施例5に係る遊星歯車装置の作動状態を説明する共線図である。 実施例5に係る遊星歯車装置の作動状態を説明する共線図である。 実施例5に係る遊星歯車装置の作動状態を説明する共線図である。 実施例6に係るスタータの断面図である。 実施例6に係る電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置の分解斜視図である。 実施例7に係るスタータの断面図である。 実施例7に係る差動歯車装置と周辺の構成を示す断面図である。 実施例7に係る電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置および差動歯車装置の分解斜視図である。 実施例7に係る電磁ブレーキ装置の作動状態を示す断面図である。 実施例7に係る電磁クラッチ装置の作動状態を示す断面図である。 実施例8に係るスタータのモータ部を除く断面図である。 実施例8に係るブレーキ板の斜視図である。 実施例8に係る磁極形成部の斜視図である。 実施例8に係る電磁ブレーキ装置の磁束の流れを示す断面図(図27のA部拡大図)である。 実施例8に係る回転規制装置の磁束の流れを示す断面図(図27のA部拡大図)である。
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
〔実施例1〕
実施例1のスタータ1は、以下に説明するモータ2、遊星歯車装置、出力軸3、クラッチ4、ピニオン5、電磁ブレーキ装置、およびピニオン押出機構などを含んで構成される。
モータ2は、図1に示すように、固定子6と回転子7とを有し、正逆両方向に回転可能に構成される交流モータである。固定子6は、外殻を形成するヨーク8の内周に固定される固定子鉄心6aと、この固定子鉄心6aに巻装される三相の電機子巻線6bとを備え、インバータ(図示せず)より電機子巻線6bに三相交流が印加されて回転磁界を発生する。回転子7は、例えば、モータ2の回転軸(以下、モータ軸9と言う)の外周に嵌合する鉄心の内部に永久磁石を埋め込む埋込磁石型、あるいは鉄心の表面に永久磁石を貼り付ける表面磁石型として構成され、回転磁界に同期して回転する。なお、永久磁石を使わない突極形状の回転子7を採用することもできる。
ヨーク8の一端側内周には、固定子6及び回転子7が配置される空間(以下、モータ室と呼ぶ)と遊星歯車装置との間を仕切るモータ隔壁10が設けられる。モータ隔壁10は、モータ軸9と径方向に直交して配置され、その径方向の中央部に円筒状のボス部10aが設けられる。ボス部10aの内周には、モータ軸9の外周をシールするオイルシール11が組み付けられる。モータ軸9は、一端側がオイルシール11の内周を挿通してモータ隔壁10より反モータ室側(図1の左側)へ突き出ている。モータ軸9の他端側は、軸受12を介してエンドフレーム13に回転自在に支持される。
以下、モータ隔壁10より反モータ室側に配置される各構成部品に対して、軸方向の一端側(図1の左側)を反モータ側と呼び、軸方向の他端側をモータ側と呼ぶ。
遊星歯車装置は、図1及び図2に示すように、モータ軸9に設けられる太陽歯車14と、太陽歯車14の回転中心と同心に配置されて回転可能に設けられる内歯車15と、太陽歯車14と内歯車15とに噛み合って自転運動と公転運動が可能な遊星歯車16と、遊星歯車16の公転運動を出力する遊星キャリア17とを含んで構成される。
太陽歯車14は、モータ隔壁10より反モータ室側へ突き出るモータ軸9の一端側に設けられてモータ軸9と一体に回転する。なお、太陽歯車14は、モータ軸9と別体に設けてモータ軸9の外周に圧入嵌合あるいはセレーション嵌合等によってモータ軸9に固定する構成でも良い。
内歯車15には、図4に示すように、軸方向の反モータ側に円筒壁部20が一体に設けられる。円筒壁部20は、軸方向の略中央部に段差を有し、この段差より反モータ側の方がモータ側より肉厚が薄く形成され、且つ、軸方向の端部に位置決め突起20aが周方向の複数個所(例えば4カ所)に設けられる。
遊星歯車16は、遊星キャリア17に設けられる自転軸18に軸受19を介して回転自在に支持され、図2に示すように、周方向に等間隔に3個配置される。
遊星キャリア17は、以下に説明するクラッチ4のアウタ21と一体に設けられ、遊星歯車16の公転運動によって回転する。
クラッチ4は、カム室に配置されるローラ22を介してアウタ21からインナ23へトルクを伝達する一方、インナ23からアウタ21へのトルク伝達を遮断するローラ式の一方向クラッチである。但し、ローラ式に限定する必要はなく、例えば、スプラグ式の一方向クラッチでも良い。
アウタ21は、例えば、冷間鍛造によって遊星キャリア17と一体に製造される。遊星キャリア17と自転軸18を冷間鍛造によってアウタ21と一体に製造する場合、遊星キャリア17に比べて自転軸18の断面積が小さいため、素材を押圧するパンチの押圧力が高くなる。その結果、型に生じる応力が増大して型寿命が低下する恐れがある。そこで、実施例1では、図2に示すように、自転軸18の他にダミーピン24を設けている。ダミーピン24は、自転軸18と同じく3本であり、遊星歯車16と干渉しない位置に設けられる。自転軸18の他にダミーピン24を設けることにより、パンチで押圧する際に材料が流れる断面積が増大するため、型に生じる応力が低減されて型寿命が向上する。
出力軸3は、図1に示すように、モータ軸9と同一軸線上に配置されて、反モータ側の端部が軸受25を介してスタータハウジング26に回転自在に支持され、モータ側の端部にクラッチ4のインナ23を形成する径大部が設けられる。径大部の内周には、モータ側の端面から軸方向に穿設された円筒孔を有し、この円筒孔の内周に軸受27を介してモータ軸9の一端側端部が相対回転可能に挿入される。出力軸3の略中央部には、雄側の捩れスプライン28が形成されている。
ピニオン5は、図4に示すように、内周に雌側の捩れスプライン5aが形成され、この捩れスプライン5aが出力軸3の捩れスプライン28に噛み合って出力軸3の軸上を移動可能に配置される。
電磁ブレーキ装置は、図3に示すように、強磁性体(例えば鉄製)のブレーキ板29と、このブレーキ板29の反モータ側に対向して配置される摩擦板30と、この摩擦板30を介してブレーキ板29を吸引する磁力発生部(下述する)と、この磁力発生部の磁力を打ち消すブレーキ解除コイル31等を有する。
ブレーキ板29は、図2に示すように、周方向の3カ所に小径孔29aを有する円形プレートであり、モータ軸9と径方向に直交して配置される。このブレーキ板29は、小径孔29aに挿通されるボルト32をダミーピン24に形成される螺子孔に結合して遊星キャリア17に支持され、遊星キャリア17に対し相対回転が規制される。
なお、ブレーキ板29は、ボルト32によってダミーピン24に固定される訳ではなく、軸方向に僅かな距離(例えば、コンマ数ミリ程度)だけ移動可能に配置される。具体的には、ブレーキ板29の反モータ側の表面が摩擦板30に当接する軸方向位置と、ブレーキ板29のモータ側(反摩擦板側)の表面がボルト頭部32aの裏面に当接する軸方向位置との間で移動可能に配置され、ダミーピン24の外周に装着されるコイルスプリング33により反摩擦板側へ付勢されている。
摩擦板30は、ブレーキ板29と略同一の外径を有するリング状に設けられ、以下に説明する磁力発生部の軸方向端面に当接して配置されると共に、磁力発生部に対し周方向に回転規制される。
磁力発生部は、図3に示すように、摩擦板30に対しブレーキ板29と反対側に配置されるブレーキ磁極片34と、このブレーキ磁極片34を磁化する永久磁石35とを有する。
永久磁石35は、例えば、樹脂等の非磁性材料で形成される位置決め部材36を介して周方向の4カ所に位置決めされ、それぞれ径方向に着磁されている。
位置決め部材36の外周には、摩擦板30を周方向に回転規制するための係合溝36aが形成される。摩擦板30は、径方向の外周に複数の腕部30aが設けられ、この腕部30aを軸方向に折り曲げて係合溝36aに係合させることにより周方向に回転規制される。
ブレーキ磁極片34は、永久磁石35の外側磁極(例えばN極)に吸着されて永久磁石35の径方向外側に配置される外側磁極片34aと、永久磁石35の内側磁極(例えばS極)に吸着されて永久磁石35の径方向内側に配置される内側磁極片34bとを有する。このブレーキ磁極片34は、永久磁石35より軸方向の反モータ側へ長く設けられており、その反モータ側の端部が径方向に近接するように屈曲されて、互いの端面同士が径方向に隙間を有して対向している。以下、径方向に屈曲されるブレーキ磁極片34の反モータ側の端部を磁極ティースと呼ぶ。
ブレーキ解除コイル31は、図3に示すように、樹脂製のボビン37と磁極ティースの周囲に巻回される。ブレーキ磁極片34とブレーキ解除コイル31との間は、絶縁紙等によって絶縁される。このブレーキ解除コイル31は、通電により発生する磁界がブレーキ磁極片34に対して永久磁石35が形成する磁界を打ち消す方向に働く。
ボビン37は、円環状のコイル保持体38と一体に設けられ、磁極ティースの周囲を三方(軸方向の反モータ側と周方向の両側)から囲むように配置される。
位置決め部材36は、永久磁石35の周方向位置をブレーキ磁極片34と合わせた状態で接着等によりコイル保持体38に固定される。
コイル保持体38は、内歯車15の外径より数ミリ程度大きい内径を有するリング状の内枠体38aと、この内枠体38aの外側を囲む多角形状(図3は八角形)の外枠体38bと、内枠体38aと外枠体38bとの間を補強するリブ38cとで構成される。ボビン37は、外枠体38bの平面上に設けられる。このコイル保持体38は、円弧状に湾曲するボビン37の外周面をセンタケース39の内周に圧入して回転規制される。
センタケース39は、図1に示すように、スタータハウジング26とヨーク8との間に配置されて、反モータ側の外周がスタータハウジング26の内周にインロー嵌合し、モータ側の外周がヨーク8の内周にインロー嵌合して固定される。また、センタケース39の反モータ側内周には、図3に示すように、軸方向と直交するプレート壁39aが一体に設けられ、このプレート壁39aの内周に軸受40が配置される。
ピニオン押出機構は、図4に示すように、カム溝41を有するカムシリンダ42と、カム溝41と軸方向に交差するストレート溝43を有する固定部材(後述する)と、ピニオン5に組み付けられる押出カラー44と、この押出カラー44に保持されてカム溝41とストレート溝43とに係合する係合ピン45等を備える。
カムシリンダ42は、ピニオン5の外周を軸方向に延びて配置されるシリンダ円筒部42aを有し、このシリンダ円筒部42aがスタータハウジング26に形成される円筒内周面に回転可能に保持される。カム溝41は、シリンダ円筒部42aの径方向に対向する2カ所(点対称の位置)に形成され、それぞれ、モータ側の始端と反モータ側の終端とがシリンダ円筒部42aの周方向で異なる位置に有し、始端から終端に向かってシリンダ円筒部42aの周方向に捩れて形成される。
カムシリンダ42のモータ側の端部には、出力軸3と径方向に直交して配置されるシリンダ底部42bを有し、このシリンダ底部42bがシリンダ円筒部42aと一体に設けられる。シリンダ底部42bには、径方向の中央部に丸孔が開口し、この丸孔の内周全周に複数の凸部42cが等間隔に設けられる。このカムシリンダ42は、以下に説明する係合プレート46を介して内歯車15に連結され、係合プレート46と共に内歯車15と一体に回転可能に設けられる。
係合プレート46は、内歯車15に設けられた円筒壁部20の外周に嵌合する大径筒部46aと、シリンダ底部42bに開口する丸孔に挿入されて凹凸嵌合する小径筒部46bとを有し、この小径筒部46bの外周が軸受40を介してセンタケース39に回転可能に支持される。
大径筒部46aには、図4に示すように、周方向の複数個所に位置決め溝46cが形成され、円筒壁部20に設けられる位置決め突起20aが位置決め溝46cに嵌合して内歯車15と係合プレート46との相対回転が規制される。
小径筒部46bは、軸受40(図3参照)に支持される外周面より反モータ側の全周に複数の凹部46dが等間隔に設けられ、この凹部46dとシリンダ底部42bに設けられる凸部42cとが凹凸嵌合して係合プレート46とカムシリンダ42との相対回転が規制される。また、小径筒部46bの反モータ側端部の全周に周溝46eが凹設され、この周溝46eに装着される止め輪(図1参照)によってカムシリンダ42の抜けが防止される。小径筒部46bの内周には、出力軸3の径大部(インナ23)と捩れスプライン28との間の外周を回転自在に支持する軸受47が配置される。
実施例1の固定部材はスタータハウジング26であり、図4に示すように、円筒内周面の径方向に対向する2カ所(点対称の位置)にストレート溝43が形成される。ストレート溝43は、軸方向のモータ側が開放され、反モータ側に終端を有する。
押出カラー44は、図1に示すように、ピニオン5の歯部5bよりモータ側の端部に配置されて、ピニオン5に対し相対回転可能、且つ、軸方向へ移動不能に組み付けられる。この押出カラー44は、シリンダ円筒部42aの内周に挿入されてシリンダ円筒部42aに対し相対回転可能かつ軸方向へ摺動可能に設けられ、径方向に対向する2カ所(点対称の位置)にピン挿入孔44aが形成される。
係合ピン45は、軸心方向の一端側がピン挿入孔44aに挿入され、他端側がピン挿入孔44aより径方向の外側へ突出してカム溝41及びストレート溝43に係合している(図5参照)。
続いて、スタータ1の作動を説明する。
ブレーキ解除コイル31がOFFの状態では、永久磁石35によって磁化されているブレーキ磁極片34にブレーキ板29が吸引されて摩擦板30に当接するため、ブレーキ板29と摩擦板30との間に生じる摩擦力によってブレーキ板29の回転が規制される。ブレーキ板29は、遊星キャリア17に対し相対回転が規制されているので、ブレーキ板29の回転が規制されることで遊星キャリア17の回転も規制される。遊星キャリア17の回転が規制された状態でインバータによりモータ2に通電されると、モータ軸9の回転が太陽歯車14から遊星歯車16に伝達されて、遊星歯車16が自転軸18を中心に回転(自転)する。その結果、内歯車15が太陽歯車14の回転方向と逆向きに回転し、その内歯車15の回転が係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達される。
カムシリンダ42がモータ2の回転方向と逆向きに回転すると、ストレート溝43とカム溝41とが交差する位置に配置される係合ピン45に反モータ方向のスラスト力が働く。その結果、係合ピン45は、図5〜図7に示すように、カムシリンダ42の回転に伴ってカム溝41内を移動しながらストレート溝43内を反モータ方向へ移動する。係合ピン45に働くスラスト力は、押出カラー44を介してピニオン5を軸方向に押し出す力(以下、押出力と言う)として作用するため、ピニオン5が出力軸3上を捩れスプライン28に沿って回転しながら反モータ方向へ移動する。
ピニオン5がエンジンのリングギヤ(図示せず)に当接して反モータ方向への移動が一旦停止すると、その時点でカムシリンダ42の回転が規制されて内歯車15の回転が停止する。この後、モータ2の軸トルクがブレーキ板29と摩擦板30との間に生じる摩擦トルクより大きくなると、ブレーキ板29と摩擦板30との間に滑りが生じて遊星キャリア17が回転する。
遊星キャリア17の回転は、クラッチ4を介して出力軸3に伝達されることにより、ピニオン5がリングギヤに当接した状態で出力軸3と一体に回転する。ピニオン5の歯筋がリングギヤの歯溝と合致する位置までピニオン5が回転する、言い換えると、ピニオン5がリングギヤと噛み合い可能な位置まで回転すると、カムシリンダ42が再び回転できるようになるため、ピニオン8に軸方向の押出力が付与される。これにより、ピニオン5が出力軸3の軸上を更に移動してリングギヤに噛み合うことができる。リングギヤに噛み合ったピニオン5は、出力軸3に取り付けられるストッパ48(図1参照)に当接して反モータ方向への移動が規制される。
ピニオン5がストッパ48に当接して軸方向の移動が停止すると、必然的にカムシリンダ42の回転が規制される。つまり、ピニオン5がリングギヤに噛み合ってストッパ48に当接した状態では、それ以上、カムシリンダ42が回転することはない。また、カムシリンダ42の回転が規制された状態では、係合ピン45がカム溝41の終端に突き当たることはなく、係合ピン45とカム溝41の終端との間に僅かな隙間を生じている。
ピニオン5がリングギヤに噛み合った後、ブレーキ解除コイル31をONする。
ブレーキ解除コイル31が発生する磁界は、ブレーキ磁極片34に対して永久磁石35が形成する磁界を打ち消す方向に働く。すなわち、永久磁石35によるブレーキ板29を吸引する磁力がブレーキ解除コイル31への通電によって打ち消されるため、ブレーキ板29はコイルスプリング33に付勢されて摩擦板30から切り離される。これにより、遊星キャリア17の回転規制が解除されるので、モータ2のトルクが遊星歯車装置で増幅された後、クラッチ4を介して出力軸3に伝達される。その結果、出力軸3と一体にピニオン5が回転してリングギヤを回転駆動することでエンジンをクランキングする。
クランキングを経てエンジンが始動した後、ブレーキ解除コイル31をOFFすると共に、インバータによってモータ2をクランキング時と逆方向に回転させる。ブレーキ解除コイル31をOFFすることでブレーキ板29と共に遊星キャリア17の回転が規制されるため、モータ2の逆回転を受けてカムシリンダ42がクランキング時と逆方向に回転する。このカムシリンダ42の逆回転により、係合ピン45にモータ方向へのスラスト力が働き、そのスラスト力が押出カラー44を介してピニオン5に戻し力として加わることにより、ピニオン5がリングギヤから離脱して出力軸3の軸上を後退する。なお、戻し力とは、ピニオン5を軸方向に押し戻す力、つまり、押出力と反対方向の力である。
ピニオン5が出力軸3上の静止位置(図1に示す位置)まで後退した後、インバータによるモータ2への通電が停止される。
〔実施例1の作用および効果〕
実施例1のスタータ1は、本発明の動力分割機構を構成する遊星歯車装置により、モータ2のトルクを遊星キャリア17に伝達する一方の系統と、内歯車15に伝達する他方の系統とに振り分けることができる。また、電磁ブレーキ装置によって遊星キャリア17の回転を規制することにより、モータ2のトルクを内歯車15より取り出すことができる。内歯車15の回転が係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達されると、ピニオン押出機構によりカムシリンダ42の回転運動が軸方向の直線運動に変換されてピニオン5に伝達されることでピニオン5を軸方向に移動させることができる。
1)上記の構成によれば、ピニオン5をエンジンのリングギヤに向けて移動させる際に、出力軸3を回転させる必要がない。つまり、出力軸3に設けられる捩れスプライン28の作用でピニオン5を軸方向に押し出す必要がない。言い換えると、捩れスプライン28の送りねじ作用を利用することなくピニオン5をリングギヤに向けて移動できるので、必ずしも出力軸3に捩れスプライン28を設ける必要はなく、例えば、捩れスプライン28に替えて直スプラインを採用することも可能である。
2)実施例1のスタータ1は、ピニオン5が出力軸3上を移動する際に、ピニオン5の外周を押圧してピニオン5の回転を規制する必要がないので、特許文献1に開示されるスタータと比較して摺動ロスを小さくでき、結果的にモータ2の消費電力を抑制できる。
3)カムシリンダ42は、ピニオン5がリングギヤに噛み合ってストッパ48に当接した時点で回転規制されるため、それ以上、カムシリンダ42が回転することはない。また、カム溝41内を移動する係合ピン45は、係合プレート46の回転が規制された時点でカム溝41の終端に突き当たることはなく、カム溝41の終端との間に僅かな隙間を保って停止する。よって、カム溝41が形成されるカムシリンダ42に係合ピン45を通じて荷重が加わることはないので、カムシリンダ42の肉厚を薄くして軽量化を図ることもできる。
以下、本発明に係る他の実施例について説明する。
なお、実施例1と共通する部品および構成を示すものは、実施例1と同一の符号を付与し、詳細な説明は省略(実施例1を参照)する。
〔実施例2〕
実施例2は、図9に示すように、カムシリンダ42のシリンダ円筒部42aにストレート溝43を形成し、スタータハウジング26の円筒内周面にカム溝41を形成する事例である。
押出カラー44には、実施例1と同じく、ピン挿入孔44a(図8参照)に係合ピン45が挿入され、この係合ピン45の他端側がストレート溝43及びカム溝41に係合している。
内歯車15と共にカムシリンダ42が回転すると、ストレート溝43とカム溝41とに係合する係合ピン45が回転方向に力を受けながらカム溝41に沿って反モータ方向へ移動する。この係合ピン45の軸方向の動きが押出カラー44を介してピニオン5に伝達されるため、ピニオン5が出力軸3上を反モータ方向へ移動してリングギヤに噛み合うことができる。
この実施例2のスタータ1は、シリンダ円筒部42aにストレート溝43を形成し、スタータハウジング26の円筒内周面にカム溝41を形成すること以外は、実施例1と同じ構成を有するので実施例1と同様の効果を得ることができる。
〔実施例3〕
実施例3は、図10に示すように、カムシリンダ42のシリンダ円筒部42aの内周に円筒部材49を配置し、この円筒部材49にストレート溝43を形成する事例である。
円筒部材49は、スタータハウジング26の内周に圧入等により固定されて軸方向及び周方向に移動不能である。
カムシリンダ42には、実施例1と同様に、シリンダ円筒部42aにカム溝41が形成されている(図11参照)。押出カラー44のピン挿入孔44aに挿入される係合ピン45は、ピン挿入孔44aより突き出る他端側が円筒部材49の板厚方向にストレート溝43を貫通してカム溝41に係合している。
この実施例3のスタータ1は、ストレート溝43をスタータハウジング26ではなく円筒部材49に形成し、その円筒部材49をカム溝41が形成されるシリンダ円筒部42aの内周側に配置したこと以外は、実施例1と同じ構成を有するので実施例1と同様の効果を得ることができる。
〔実施例4〕
実施例4のスタータ1は、本発明に係る電磁ブレーキ装置の構成が実施例1とは異なり、電磁石の磁力を利用してブレーキ板29の回転を抑制する事例である。
電磁ブレーキ装置は、図12に示すように、通電により磁界を形成するブレーキコイル50と、このブレーキコイル50を軸方向の両側から挟み込むように配置される一対の磁極コア51、52とを有する。
一対の磁極コア51、52は、ブレーキコイル50への通電によりS極に磁化される一方の磁極コア51と、N極に磁化される他方の磁極コア52であり、図13に示すように、互いの磁極爪51a、52aがブレーキコイル50の内周で周方向に交互に噛み合うように配置される。つまり、S極に磁化される磁極爪51aとN極に磁化される磁極爪52aとが周方向に交互に配置される。
ブレーキ板29は、図13に示すように、凹凸形状が周方向に連続して設けられる波型リング部29bを有し、この波型リング部29bがブレーキコイル50の内周に配置されて、磁化される磁極爪51a、52aと波型リング部29bとの間に生じる静止トルクによって回転規制される。すなわち、実施例4の電磁ブレーキ装置は、ブレーキコイル50への通電によってブレーキ板29の回転を規制できる。
ブレーキ板29の回転が規制された状態、すなわち遊星キャリア17(図12参照)の回転が規制された状態でモータ2に通電すると、実施例1と同じく、ピニオン押出機構の働きによりピニオン5が出力軸3の軸上を反モータ方向へ移動してリングギヤに噛み合うことができる。
ピニオン5がリングギヤに噛み合った後、ブレーキコイル50への通電が停止されると、ブレーキ板29の回転規制が解除されて遊星キャリア17が回転可能となる。その結果、モータ2のトルクがピニオン5に伝達されてリングギヤを回転駆動することができる。
この実施例4においても、電磁ブレーキ装置により遊星キャリア17の回転が規制されることで内歯車15が太陽歯車14の回転方向と逆向きに回転し、その内歯車15の回転が係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達される。カムシリンダ42の回転運動は、ピニオン押出機構により軸方向の直線運動に変換されてピニオン5に伝達される。よって、出力軸3に設けられる捩れスプライン28の送りねじ作用を利用することなくピニオン5をリングギヤに向けて移動できるので、実施例1と同様の効果を得ることができる。
〔実施例5〕
実施例5のスタータ1は、直流整流子モータ2を使用すると共に、電磁石のON/OFF動作に応じて作動する電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置とを備える。
モータ2は、図14に示すように、界磁子を構成する固定子6と、電機子を構成する回転子7と、モータ軸9の端部に設けられる整流子(図示せず)と、この整流子の外周上に配置されるブラシ(図示せず)とを含んで構成される周知の直流整流子モータである。
界磁子は、ヨーク8の内周に複数の永久磁石を配置して構成される。但し、永久磁石に替えて界磁コイルを用いた電磁石界磁を採用することもできる。電機子は、強磁性体の薄板を複数枚積層してモータ軸9の外周に嵌合する電機子コアと、この電機子コアに形成されるスロットを介して電機子コアに巻装される電機子コイルとを有し、この電機子コイルが整流子を構成する各整流子セグメントに接続される。
電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置は、両者が共有する強磁性体(例えば鉄製)のブレーキ&クラッチ板53を有する。
ブレーキ&クラッチ板53は、図15に示すように、円環状の板ばね54を介して非磁性体のベース板55に結合され、そのベース板55に対し板ばね54が撓むことにより軸方向のモータ側へ移動可能に設けられる。このブレーキ&クラッチ板53には、磁気の流れを遮るための磁気遮断溝53aが形成される。磁気遮断溝53aは、ブレーキ&クラッチ板53の板厚方向に貫通して形成され、且つ、ブレーキ&クラッチ板53の略全周にわたって周方向に非連続となる円弧状に形成される。
板ばね54は、径方向の外周部でリベット等によりブレーキ&クラッチ板53に固定され、径方向の内周部でリベット等によりベース板55に固定される。
ベース板55は、板厚方向に貫通する丸孔55aが周方向に間隔を空けて3ヵ所形成され、各丸孔55aにそれぞれダミーピン24が嵌合すると共に、そのダミーピン24に形成される螺子孔にボルト32を結合して遊星キャリア17に支持される(図16参照)。このベース板55は、軸方向に僅かな距離だけ移動可能に配置され、ダミーピン24の外周に装着されるコイルスプリング33によりモータ方向へ付勢されている。ベース板55の軸方向位置は、図16に示すように、モータ側の表面がボルト頭部32aの裏面に当接することでモータ側の位置が規制され、ブレーキ&クラッチ板53が摩擦板30に当接することで反モータ側の位置が規制される。
電磁ブレーキ装置は、図14に示すように、ブレーキ&クラッチ板53より反モータ側に配置されてセンタケース39に固定されるブレーキ磁極片34と、通電により磁界を形成してブレーキ磁極片34を磁化させるブレーキコイル50と、ブレーキ磁極片34のモータ側に配置される摩擦板30等を備える。
ブレーキ磁極片34は、図16に示すように、軸方向のモータ側が開口して径方向の内周側と外周側および軸方向の反モータ側の三方を閉じた円環状の磁路断面を形成する。
ブレーキコイル50は、ボビン56に巻回されてブレーキ磁極片34の内部空間に収容される。
摩擦板30は、例えば、ブレーキ磁極片34に固定されてブレーキ&クラッチ板53との間に僅かな隙間を有して配置される。なお、上記のベース板55が軸方向に移動可能な距離は、摩擦板30とブレーキ&クラッチ板53との間の距離より若干大きい。
電磁クラッチ装置は、図14に示すように、ブレーキ&クラッチ板53よりモータ側に配置されてモータ隔壁10に固定されるクラッチ磁極片57と、通電により磁界を形成してクラッチ磁極片57を磁化させるクラッチコイル58と、モータ軸9と一体に回転する強磁性体(例えば鉄製)のモータ回転板59等を備える。
クラッチ磁極片57は、図16に示すように、軸方向の反モータ側が開口して径方向の内周側と外周側および軸方向のモータ側の三方を閉じた円環状の磁路断面を形成する。
クラッチコイル58は、ボビン60に巻回されてクラッチ磁極片57の内部空間に収容される。
モータ回転板59は、図14、図15に示すように、モータ隔壁10に設けられるボス部10aの外周に嵌合するボールベアリング61を介して回転可能に支持され、径方向の中心部に空けられる非円形孔59aにモータ軸9の非円形断面部9aが挿入されてモータ軸9に対し相対回転が規制される。
モータ回転板59に形成される非円形孔59aと、モータ軸9に設けられる非円形断面部9aは、モータ軸9とモータ回転板59との相対回転を規制できる形状であれば良く、例えば、非円形孔59aと非円形断面部9aを多角形あるいは楕円形に形成しても良い。
モータ回転板59には、ブレーキ&クラッチ板53とクラッチ磁極片57との間にそれぞれ僅かな隙間を有して配置されるプレート状のクラッチ回転磁極62が一体に設けられる。クラッチ回転磁極62には、ブレーキ&クラッチ板53に形成される磁気遮断溝53aの径方向位置より内径側と外径側とにそれぞれ磁気の流れを遮るための磁気遮断溝62aが形成される。この磁気遮断溝62aは、図15に示すように、クラッチ回転磁極62の板厚方向に貫通して形成され、且つ、クラッチ回転磁極62の略全周にわたって周方向に非連続となる円弧状に形成される。
次に、実施例5に係るスタータ1の作動を説明する。
エンジンの始動要求に応答してブレーキコイル50及びモータ2に通電される。
ブレーキコイル50への通電によりブレーキ磁極片34が磁化されると、ブレーキ&クラッチ板53が吸引されて摩擦板30に当接するため、両者間に発生する摩擦力によってブレーキ&クラッチ板53の回転が規制される。これにより、ブレーキ&クラッチ板53に板ばね54を介して連結されるベース板55の回転が規制され、そのベース板55を支持する遊星キャリア17の回転が規制される。遊星キャリア17の回転が規制された状態でモータ軸9の回転が太陽歯車14から遊星歯車16に伝達されると、遊星歯車16が自転軸18を中心に自転することによって内歯車15が太陽歯車14の回転方向と逆向きに回転する。
ここで、遊星歯車装置の作動を共線図に基づいて説明する。
図17に示す共線図は、左側の縦軸、中央の縦軸、右側の縦軸がそれぞれ太陽歯車14、遊星キャリア17、および内歯車15の回転方向と回転速度を表し、横軸と交差する点が回転速度0(停止)であり、横軸より上側が正回転方向、下側が逆回転方向を表している。左側の縦軸と中央の縦軸との間隔をX1、中央の縦軸と右側の縦軸との間隔をX2、内歯車15の歯数をZi、太陽歯車14の歯数をZsで表すと、X1:X2=Zi:Zsとなっている。
減速装置に遊星歯車機構を用いる従来のスタータでは、図中の実線で示されるように、内歯車15が固定された状態で、太陽歯車14の回転を入力として遊星キャリア17の回転速度まで減速して出力する。太陽歯車14の回転速度をNs、遊星キャリア17の回転速度をNcとすると、減速比は以下の(1)式によって表すことができる。
Nc:Ns=Zs:(Zi+Zs) ………………………………………(1)
∴ Nc=Ns×Zs/(Zi+Zs)
図18に示す共線図は、遊星キャリア17の回転を規制して太陽歯車14を回転させた時に、内歯車15が太陽歯車14と反対方向に回転することを表している。遊星キャリア17を完全に固定すると、図中の実線で示されるように、内歯車15は回転速度Niで回転するが、遊星キャリア17に滑りが生じると、図中の破線で示されるように、遊星キャリア17の滑りに応じて内歯車15が回転速度Nii(Ni>Nii)で回転する。この場合、遊星キャリア17が完全に固定される時と比較して内歯車15の回転速度は遅くなるが、ピニオン5をリングギヤに向けて移動させるためには、内歯車15が逆方向(太陽歯車14の回転方向と反対方向)に回れば良いので、遊星キャリア17が完全に固定されずに滑りが生じても問題はない。
内歯車15の回転は、係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達され、カムシリンダ42が回転することで係合ピン45にスラスト力が働き、そのスラスト力がピニオン5に押出力として作用することでピニオン5が反モータ方向へ移動する。
ピニオン5がリングギヤに当接した後、ブレーキ&クラッチ板53と摩擦板30との間に滑りが発生して遊星キャリア17が回転すると、ピニオン5の歯筋がリングギヤの歯溝と合致する位置までピニオン5が回転してリングギヤに噛み合う。内歯車15の回転が係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達された後、ピニオン押出機構の働きによりピニオン5が反モータ方向へ移動してリングギヤに噛み合うまでの動作は実施例1と同じである。
ピニオン5がリングギヤに噛み合った後、ブレーキコイル50への通電が停止されると、ブレーキ&クラッチ板53が摩擦板30から切り離されて摩擦制動力が消滅するため、遊星キャリア17の回転規制が解除される。その結果、モータ2のトルクが摩擦による損失を生じることなくクラッチ4を介して出力軸3に伝達され、出力軸3と一体にピニオン5が回転してリングギヤを回転駆動することでエンジンをクランキングする。
クランキングを経てエンジンが始動した後、クラッチコイル58に通電される。
クラッチコイル58への通電によって発生した磁界は、クラッチ磁極片57を磁化させ、さらにクラッチ回転磁極62及びブレーキ&クラッチ板53を磁化させる。これにより、クラッチ回転磁極62とブレーキ&クラッチ板53との間に吸引力が働き、その吸引力によってブレーキ&クラッチ板53が板ばね54を撓ませながらクラッチ回転磁極62に吸着される。
クラッチ回転磁極62を有するモータ回転板59は、モータ軸9に嵌合してモータ軸9と一体に回転するので、ブレーキ&クラッチ板53は、モータ軸9と同一方向に回転、或いは追従して回転しようとする。ブレーキ&クラッチ板53は、板ばね54を介してベース板55に連結され、そのベース板55が遊星キャリア17に対し相対回転が規制されるので、遊星キャリア17もモータ軸9と同一回転しようと追従する。モータ軸9と遊星キャリア17とが同一回転することで内歯車15も回転追従しようとする。この内歯車15の回転方向は、図19に示す共線図で表されるように、太陽歯車14及び遊星キャリア17と同一方向、つまり、モータ軸9の回転方向と同一である。
ここで、遊星キャリア17を完全に太陽歯車14の回転に同期させると、図中の実線で表されるように、内歯車15は回転速度Niで正方向に回転する。しかし、ピニオン5を引き戻すためには内歯車15が正方向に回れば良いので、図中の破線で表されるように、遊星キャリア17が完全に太陽歯車14に同期しないで引きずられて追従し、回転速度Nii(Ni>Nii)で正方向に回転しても良い。
内歯車15の回転方向は、ピニオン5をリングギヤに向けて移動させる時と反対方向になるため、内歯車15の回転がピニオン5を反リングギヤ方向(モータ方向)へ移動させる戻し力に変換されて、ピニオン5がリングギヤから離脱して後退する。
この実施例5で説明したスタータ1は、エンジンが始動した後、電磁クラッチ装置によりブレーキ&クラッチ板53をクラッチ回転磁極62に吸着させることで、遊星キャリア17をモータ軸9と同方向に回転させることができる。これにより、エンジンのクランキング時とは逆向きに内歯車15が回転するため、ピニオン5をリングギヤから離脱させる際に、モータ2をクランキング時と逆方向に回転させる必要はない。言い換えると、ピニオン5をリングギヤに向けて移動させる時と、リングギヤから離脱させて後退させる時とで、モータ2の回転方向は同一である。この場合、モータ2の回転方向を切り換える必要はないため、直流整流子モータ2を使用できる。また、出力軸3に設けられる捩れスプライン28の送りねじ作用を利用することなく、ピニオン5を軸方向に移動できるので、実施例1と同様の効果を得ることができる。
〔実施例6〕
実施例6のスタータ1は、実施例5と同じく直流整流子モータ2を使用し、且つ、実施例5で説明した電磁ブレーキ装置および電磁クラッチ装置をそれぞれヒステリシス式として構成した事例である。
以下、ヒステリシス式の電磁ブレーキ装置および電磁クラッチ装置の構成を図20、図21を参照して説明する。
電磁ブレーキ装置は、非磁性体であるプレート支持盤63にビス64で固定されるブレーキ板29と、センタケース39に固定されるブレーキ磁極片34と、通電により磁界を形成してブレーキ磁極片34を磁化させるブレーキコイル50とを含んで構成される。
プレート支持盤63は、例えば、ボルト32によりダミーピン24に固定されて、遊星キャリア17に対し相対回転が規制されている。
ブレーキ板29は、例えば、永久磁石の材料として使用されるフェライト製であり、磁気ヒステリシス特性を有する。このブレーキ板29には、径方向の外周に軸方向の反モータ側へ屈曲するブレーキ円筒部29cが設けられる。
ブレーキ磁極片34は、ブレーキ円筒部29cを径方向の内周側と外周側から非接触に挟み込むように配置され、その内周側と外周側とにそれぞれ磁極を形成する複数の凸状部が周方向に一定の間隔を有して設けられる。
ブレーキコイル50は、ボビンに巻回されてブレーキ磁極片34に形成される内部空間に収容される。
電磁クラッチ装置は、ブレーキ板29と共に共通のビス64でプレート支持盤63に固定されるクラッチ板65と、モータ回転板59と一体に設けられるクラッチ回転磁極62と、このクラッチ回転磁極62のモータ側に配置されてモータ隔壁10に固定されるクラッチ磁極片57と、通電により磁界を形成してクラッチ磁極片57を磁化させるクラッチコイル58とを含んで構成される。
クラッチ板65は、ブレーキ板29と同じくフェライト製であり、磁気ヒステリシス特性を有する。このクラッチ板65には、径方向の外周に軸方向のモータ側へ屈曲するクラッチ円筒部65aが設けられる。
クラッチ回転磁極62は、クラッチ円筒部65aを径方向の内周側と外周側から非接触に挟み込むように配置され、その内周側と外周側とにそれぞれ磁極を形成する複数の凸状部が周方向に一定の間隔を有して設けられる。
クラッチ磁極片57は、軸方向の反モータ側が開口して径方向の内周側と外周側および軸方向のモータ側の三方を閉じた円環状の磁路断面を形成する。
クラッチコイル58は、ボビンに巻回されてクラッチ磁極片57の内部空間に収容される。このクラッチコイル58に通電されてクラッチ磁極片57が磁化されると、クラッチ磁極片57を介してクラッチ回転磁極62が磁化される。
次に、実施例6に係るスタータ1の作動を説明する。
エンジンの始動要求に応答してブレーキコイル50及びモータ2に通電される。
ブレーキコイル50への通電によりブレーキ磁極片34が磁化されると、内外の磁極に流れる磁束がブレーキ円筒部29cを板厚方向に貫くため、内外の磁極とブレーキ円筒部29cとの間に磁気的な制動力が働くことでブレーキ板29の回転が抑制される。これにより、ブレーキ板29が連結されるプレート支持盤63の回転が規制され、そのプレート支持盤63を支持する遊星キャリア17の回転が規制される。遊星キャリア17の回転が規制された状態でモータ軸9の回転が太陽歯車14から遊星歯車16に伝達されると、遊星歯車16が自転軸18を中心に回転(自転)することにより、内歯車15が太陽歯車14の回転方向と逆向きに回転する。内歯車15の回転が係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達された後、ピニオン押出機構の働きによりピニオン5が反モータ方向へ移動してリングギヤに噛み合うまでの動作は実施例1と同じである。
ピニオン5がリングギヤに噛み合った後、ブレーキコイル50への通電が停止されると、ブレーキ板29に対する磁気的な制動力が消滅するため、ブレーキ板29と共に遊星キャリア17の回転が許容される。その結果、モータ2のトルクがクラッチ4を介して出力軸3に伝達され、出力軸3と一体にピニオン5が回転してリングギヤを回転駆動することでエンジンをクランキングする。
クランキングを経てエンジンが始動した後、クラッチコイル58に通電される。
クラッチコイル58への通電によりクラッチ磁極片57を介してクラッチ回転磁極62が磁化されると、内外の磁極に流れる磁束がクラッチ円筒部65aを板厚方向に貫くことで、クラッチ円筒部65aとクラッチ回転磁極62とが磁気的に結合される。
クラッチ回転磁極62を有するモータ回転板59は、モータ軸9と一体に回転するので、クラッチ円筒部65aを有するクラッチ板65がモータ軸9と同一方向に回転、或いは追従して回転しようとする。また、クラッチ板65は、プレート支持盤63を介して遊星キャリア17に対し相対回転が規制されるので、遊星キャリア17もモータ軸9と同一回転しようと追従する。モータ軸9と遊星キャリア17とが同一回転することで内歯車15も回転追従しようとする。内歯車15の回転方向は、ピニオン5がリングギヤに向けて移動する時と反対方向になる。その結果、内歯車15と一体に回転するカムシリンダ42の回転運動がピニオン押出機構によりピニオン5を反リングギヤ方向へ移動させる戻し力に変換されて、ピニオン5がリングギヤから離脱して後退する。
この実施例6で説明したスタータ1は、エンジンが始動した後、電磁クラッチ装置によりクラッチ板65とモータ回転板59とを磁気的に結合することで、遊星キャリア17をモータ軸9と同方向に回転させることができる。これにより、エンジンのクランキング時とは逆向きに内歯車15が回転するため、ピニオン5をリングギヤから離脱させる際に、モータ2をクランキング時と逆方向に回転させる必要はない。その結果、実施例5と同様に、ピニオン5をリングギヤに向けて移動させる時と、リングギヤから離脱させて後退させる時とでモータ2の回転方向は同一であり、モータ2の回転方向を切り換える必要はないため、直流整流子モータ2を使用できる。また、出力軸3に設けられる捩れスプライン28の送りねじ作用を利用することなく、ピニオン5を軸方向に移動できるので、実施例1と同様の効果を得ることができる。
〔実施例7〕
実施例7のスタータ1は、実施例5、6と同じく直流整流子モータ2を使用し、且つ、本発明の動力分割機構に差動歯車装置を採用した事例である。
差動歯車装置は、図22、図23に示すように、モータ軸9と同心に配置されて軸方向に対向する二つの大傘歯車66、67と、この二つの大傘歯車66、67に噛み合う複数の小傘歯車68と、シャフト69を介して小傘歯車68を回転自在に支持する円環状の傘歯車ホルダ70(図24参照)とを含んで構成される。
二つの大傘歯車66、67は、それぞれ回転中心に対して歯筋が放射状に延びて形成される傘歯形成部を有する駆動側大傘歯車66と従動側大傘歯車67であり、互いの傘歯形成部が軸方向に対向して配置される。
駆動側大傘歯車66は、図24に示すように、傘歯形成部の外周より軸方向のモータ側へ延びる円筒形状部に複数の突起部66aが設けられ、この突起部66aがモータ回転板59に形成される嵌合溝59bに嵌合してモータ回転板59との相対回転が規制される。
従動側大傘歯車67は、図24に示すように、傘歯形成部の外周より軸方向の反モータ側へ延びる円筒形状部に複数の突起部67aが設けられ、この突起部67aが係合プレート46に形成される位置決め溝46cに係合して係合プレート46との相対回転が規制される。
小傘歯車68は、シャフト69を中心に回転する自転運動と、モータ軸9を中心として傘歯車ホルダ70と一体に回転する公転運動とが可能である。
傘歯車ホルダ70には、図24に示すように、シャフト69を通すための挿通孔を半径方向に形成する径方向円筒部70aと、後述する連結ピン71を通すための貫通孔を軸方向に形成する軸方向円筒部70bとがそれぞれ4箇所ずつ、周方向に交互に、且つ、等間隔に設けられる。
シャフト69は、一方の端部に設けられるシャフト頭部69aが挿通孔の内周に圧入等により嵌合して固定され、小傘歯車68より径方向の内側へ突き出る他方の端部がクラッチバレル72に形成される嵌合孔72aに嵌合して取り付けられる。
クラッチバレル72は、図23に示すように、遊星キャリア17のモータ側へ円筒状に延びて設けられ、嵌合孔72aが4箇所に穿設されている。
連結ピン71は、電磁ブレーキ装置のブレーキ板29と電磁クラッチ装置のクラッチ板65とを連結する部品であり、軸方向円筒部70bの内周に挿通されるピン本体71aと、このピン本体71aの両端部に設けられる一組のピン端部71bとを有する。
ピン本体71aは、図23に示すように、軸方向の長さが軸方向円筒部70bより若干長く形成され、貫通孔の内周を軸方向に摺動可能に設けられる。ピン端部71bは、径方向の寸法がピン本体71aの外径より若干小さく形成されて筒状に設けられる。
一方のピン端部71bは、ブレーキ板29に形成される小径孔29d(図24参照)に挿入された後、軸方向から加圧して外径側へ塑性変形させることによりブレーキ板29に固定される。他方のピン端部71bは、クラッチ板65に形成される小径孔65b(図24参照)に挿入された後、軸方向から加圧して外径側へ塑性変形させることによりクラッチ板65に固定される。なお、ブレーキ板29およびクラッチ板65には、塑性変形されたピン端部71bが端面から突出しないように、小径孔29dの端部および小径孔65bの端部にそれぞれ座ぐりが形成されている。
連結ピン71によって連結されたブレーキ板29とクラッチ板65は、図25に示すブレーキ板29が摩擦板30に当接する軸方向位置と、図26に示すクラッチ板65がクラッチ回転磁極62に当接する軸方向位置との間で軸方向に移動可能である。言い換えると、ブレーキ板29が摩擦板30に当接する軸方向位置では、クラッチ板65がクラッチ回転磁極62から離れており、クラッチ板65がクラッチ回転磁極62に当接する軸方向位置では、ブレーキ板29が摩擦板30から離れている。
電磁ブレーキ装置と電磁クラッチ装置は、実施例5で説明したブレーキ&クラッチ板53をブレーキ板29とクラッチ板65とに分離して形成する以外、基本的な構成および作動は実施例5と同じである。
次に、実施例7に係るスタータ1の作動を説明する。
エンジンの始動要求に応答してブレーキコイル50及びモータ2に通電される。
ブレーキコイル50への通電によりブレーキ板29がブレーキ磁極片34に吸引されて摩擦板30に当接すると、摩擦板30との間に働く摩擦力によってブレーキ板29の回転が規制される。これにより、ブレーキ板29とクラッチ板65とを連結する連結ピン71を保持する傘歯車ホルダ70の回転が規制されるため、この傘歯車ホルダ70にシャフト69を介して支持される小傘歯車68の公転運動が規制される。
一方、モータ軸9の回転がモータ回転板59を介して駆動側大傘歯車66に伝達され、さらに駆動側大傘歯車66に噛み合う小傘歯車68に伝達されると、小傘歯車68がシャフト69を中心に回転(自転)することで従動側大傘歯車67が駆動側大傘歯車66の回転方向と逆向きに回転する。
従動側大傘歯車67の回転が係合プレート46を介してカムシリンダ42に伝達された後、ピニオン押出機構の働きによりピニオン5が反モータ方向へ移動してリングギヤに噛み合うまでの動作は実施例1と同じである。
ピニオン5がリングギヤに噛み合った後、ブレーキコイル50への通電が停止されると、ブレーキ板29に対する摩擦制動力が消滅してブレーキ板29の回転が許容されるため、傘歯車ホルダ70の回転規制が解除される。これにより、係合プレート46を介して回転が規制されている従動側大傘歯車67と、モータ軸9の回転が伝達されて回転する駆動側大傘歯車66との回転数差に応じて小傘歯車68が自転運動と公転運動を行い、その公転運動が傘歯車ホルダ70を介してクラッチバレル72に伝達される。その結果、モータ2のトルクがクラッチ4を介して出力軸3に伝達され、出力軸3と一体にピニオン5が回転してリングギヤを回転駆動することでエンジンをクランキングする。
クランキングを経てエンジンが始動した後、クラッチコイル58に通電される。
クラッチコイル58への通電により、磁化されたクラッチ回転磁極62にクラッチ板65が吸着されることで、クラッチ板65および傘歯車ホルダ70がモータ軸9と同一方向に回転、或いは追従して回転しようとする。これにより、モータ回転板59を介してモータ軸9に連結される駆動側大傘歯車66と傘歯車ホルダ70とが同一回転することで従動側大傘歯車67も回転追従しようとする。この従動側大傘歯車67の回転方向は、駆動側大傘歯車66及び傘歯車ホルダ70と同一方向である。つまり、駆動側大傘歯車66、傘歯車ホルダ70、および従動側大傘歯車67が一体となって、モータ軸9と同一方向に回転する。
この従動側大傘歯車67の回転方向は、ピニオン5をリングギヤに向けて移動させる時と反対方向になるため、従動側大傘歯車67の回転がピニオン5を反リングギヤ方向へ移動させる戻し力に変換されて、ピニオン5がリングギヤから離脱して後退する。
この実施例7の構成においても、ピニオン5をリングギヤから離脱させる際に、モータ2をクランキング時と逆方向に回転させる必要はない。すなわち、ピニオン5をリングギヤに向けて移動させる時と、リングギヤから離脱させて後退させる時とでモータ2の回転方向は同一であるため、実施例5、6と同様に、直流整流子モータ2を使用できる。また、出力軸3に設けられる捩れスプライン28の送りねじ作用を利用することなく、ピニオン5を軸方向に移動できるので、実施例1と同様の効果を得ることができる。
なお、電磁ブレーキおよび電磁クラッチは、実施例6に記載したヒステリシス式を採用することもできる。
〔実施例8〕
実施例8のスタータ1は、非接触式の電磁ブレーキ装置と、エンジンのクランキング時に内歯車15の回転を規制する回転規制装置とを備える事例である。
電磁ブレーキ装置は、図27に示すように、遊星歯車装置のダミーピン24にボルト32で固定されるリング状のブレーキ板29と、このブレーキ板29に対向して非接触に配置されるブレーキ磁極片34と、通電により磁界を形成してブレーキ磁極片34を磁化させるブレーキコイル50とを含んで構成される。
ブレーキ板29は、図28に示すように、ブレーキ磁極片34との対向面に凹凸形状が周方向に連続して設けられている。
ブレーキ磁極片34は、ブレーキ板29に対向する反モータ側(図27の左側)が開口して径方向の内周側と外周側および軸方向モータ側の三方を閉じた円環状の磁路断面を形成し、ブレーキ板29との対向面に凹凸形状が周方向に連続して設けられている。このブレーキ磁極片34は、例えば、モータ隔壁10に固定される。
ブレーキコイル50は、図示しないボビンに巻回されてブレーキ磁極片34の内部空間に収容される。
回転規制装置は、内歯車15のモータ側端面にボルト等で固定される磁極形成部73と、この磁極形成部73に対向して非接触に配置される固定磁極片74と、通電により磁界を形成して固定磁極片74を磁化する回転規制コイル75とを含んで構成される。
磁極形成部73は、図29に示すように、強磁性体(例えば鉄製)によってリング形状に設けられ、固定磁極片74との対向面に凹凸形状が周方向に連続して設けられている。
固定磁極片74は、磁極形成部73に対向する反モータ側が開口して径方向の内周側と外周側および軸方向モータ側の三方を閉じた磁路断面を形成し、磁極形成部73との対向面に凹凸形状が周方向に連続して設けられている。この固定磁極片74は、例えば、ブレーキ磁極片34と一体に構成されてモータ隔壁10に固定される。
回転規制コイル75は、図示しないボビンに巻回されて固定磁極片74の内部空間に収容される。
次に、実施例8に係るスタータ1の作動を説明する。
エンジンの始動要求に応答してブレーキコイル50及びモータ2に通電される。
ブレーキコイル50への通電によりブレーキ磁極片34が磁化されると、図30に示すように、ブレーキ磁極片34とブレーキ板29との間を流れる磁束ΦAが発生する。この磁束ΦAは、ブレーキ磁極片34とブレーキ板29との間で磁気抵抗が最も小さくなる互いの凸部同士の間を流れようとするため、両者の凸部間に磁気吸引力が働き、その磁気吸引力によってブレーキ板29の回転が規制される。
電磁ブレーキ装置によりブレーキ板29の回転が規制され、そのブレーキ板29が固定される遊星キャリア17の回転が規制されることで、モータ2のトルクが内歯車15に伝達されて、内歯車15がモータ2の回転方向と逆向きに回転する。
内歯車15の回転がピニオン移動機構を介してピニオン5に伝達され、ピニオン5がリングギヤに噛み合うまでの動作は、実施例1と同じである。
ピニオン5がリングギヤに噛み合った後、ブレーキコイル50への通電が停止され、且つ、回転規制コイル75に通電される。
ブレーキコイル50への通電が停止されると、遊星キャリア17の回転規制が解除されるため、モータ2のトルクが遊星キャリア17に取り出されて、遊星キャリア17がモータ2の回転方向と同方向に回転する。遊星キャリア17の回転は、クラッチ4を介して出力軸3に伝達され、出力軸3と一体にピニオン5が回転してリングギヤを回転駆動することでエンジンをクランキングする。
クランキング時には、エンジンのトルク変動によってリングギヤの相対回転速度がピニオン5より速くなる、言い換えると、ピニオン5がリングギヤによって回されることがある。この時、カムシリンダ42の回転が規制されていないと、カムシリンダ42がモータ2の回転方向と同方向に回転してピニオン5に戻し力(図27の右方向へ押し戻す力)が加わるため、ピニオン5がリングギヤから離脱する恐れがある。
これに対し、実施例8のスタータ1は、回転規制装置により内歯車15の回転を規制することでカムシリンダ42の回転を規制できる。すなわち、回転規制コイル75への通電により固定磁極片74が磁化されると、図31に示すように、固定磁極片74と磁極形成部73との間を流れる磁束ΦBが発生する。この磁束ΦBは、固定磁極片74と磁極形成部73との間で磁気抵抗が最も小さくなる互いの凸部同士の間を流れようとするため、両者の凸部間に磁気吸引力が働き、その磁気吸引力によって磁極形成部73の回転が規制され、磁極形成部73が固定される内歯車15の回転が規制される。内歯車15は、係合プレート46を介してカムシリンダ42に連結されているので、内歯車15の回転が規制されることでカムシリンダ42の回転も規制される。
この実施例8のスタータ1においても、出力軸3に設けられる捩れスプライン28の送りねじ作用を利用することなくピニオン5をリングギヤに向けて移動できるので、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、クランキング時に内歯車15の回転を規制できる回転規制装置を備えているので、エンジンのトルク変動によってリングギヤの相対回転速度がピニオン5より速くなった場合に、カムシリンダ42の回転を規制することでピニオン5がリングギヤから離脱することを防止できる。
なお、実施例8に記載した回転規制装置は、実施例1〜7に記載したスタータ1にも適用できる。
〔変形例〕
実施例1では、交流モータ2を使用する事例を記載したが、回転方向を切り替えるための正逆転回路を備えた直流モータを採用することも可能である。
実施例1、5、7に記載した電磁ブレーキ装置は、ブレーキ磁極片34とブレーキ板29(実施例5はブレーキ&クラッチ板53)との間に摩擦板30を配置しているが、摩擦板30を廃止することもできる。つまり、摩擦板30は、ブレーキ板29との間で安定した摩擦係合を得るために使用するので、ブレーキ板29とブレーキ磁極片34との摩擦係合によってブレーキ板29の回転を確実に規制できるだけの制動力を得ることができれば、必ずしも摩擦板30を使用する必要はない。
実施例1では、ダミーピン24に形成される螺子孔にボルト32を結合してブレーキ板29を支持する構成を記載したが、ダミーピン24ではなく、自転軸18を使用してブレーキ板29を支持する構成でも良い。また、ダミーピン24は本発明の必須な構成要件ではないので廃止することもできる。
実施例3では、円筒部材49にストレート溝43が形成され、カムシリンダ42にカム溝41が形成されるが、円筒部材49にカム溝41を形成して、カムシリンダ42にストレート溝43を形成することもできる。
実施例1では、エンジンを始動する時のスタータ1の作動を説明したが、例えば、アイドリングストップシステムを搭載する車両で、エンジンが自動停止した後にピニオン5をリングギヤに噛み合わせた状態を維持しておくことも可能である。この場合、エンジンの再始動要求に応答してモータ2に通電することで即座にエンジンを再始動できるので、エンジンの再始動時間を短縮できる。
1 スタータ 2 モータ
3 出力軸 5 ピニオン
9 モータ軸(モータの回転軸) 14 太陽歯車
15 内歯車(第2出力部) 16 遊星歯車
17 遊星キャリア(第1出力部) 18 自転軸
26 スタータハウジング(固定部材) 28 出力軸の捩れスプライン
29 ブレーキ板 29b 波型リング部
29c ブレーキ円筒部 30 摩擦板(吸着部材)
31 ブレーキ解除コイル 34 ブレーキ磁極片
35 永久磁石 41 カム溝
42 カムシリンダ 42a シリンダ円筒部
43 ストレート溝 44 押出カラー(伝達部材)
45 係合ピン 49 円筒部材(固定部材)
50 ブレーキコイル 51、52 磁極コア
53 ブレーキ&クラッチ板(ブレーキ板、クラッチ板)
57 クラッチ磁極片 58 クラッチコイル
59 モータ回転板 62 クラッチ回転磁極
65 クラッチ板 65a クラッチ円筒部
66 駆動側大傘歯車 67 従動側大傘歯車(第2出力部)
68 小傘歯車 69 シャフト(自転軸)
70 傘歯車ホルダ(第1出力部) 73 磁極形成部
74 固定磁極片 75 回転規制コイル

Claims (25)

  1. 電力の供給を受けてトルクを発生するモータ(2)と、
    このモータのトルクを入力して一方と他方の二系統に分割できる機能を有すると共に、前記一方の系統に分割されたトルクを取り出す第1出力部(17、70)と前記他方の系統に分割されたトルクを取り出す第2出力部(15、67)を有する動力分割機構と、
    前記第1出力部に取り出されたトルクが伝達されて回転する出力軸(3)と、
    この出力軸の外周にスプライン嵌合して前記出力軸の軸上を移動可能に設けられるピニオン(5)と、
    前記第2出力部に取り出されたトルクが伝達されて回転するカムシリンダ(42)を有し、このカムシリンダの回転運動を軸方向の直線運動に変換して前記ピニオンに伝達するピニオン押出機構と、
    前記第1出力部に連結される強磁性体のブレーキ板(29、53)を有し、磁力を利用して前記ブレーキ板の回転を規制できる電磁ブレーキ装置とを備えるスタータ(1)。
  2. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記動力分割機構は、前記電磁ブレーキ装置により前記ブレーキ板の回転が規制されることにより、前記モータのトルクが前記第2出力部に取り出されて、前記第2出力部が前記モータの回転方向と反対方向に回転し、
    前記ピニオン押出機構は、前記第2出力部が前記モータの回転方向と反対方向に回転するときに、前記ピニオンに軸方向の押出力を付与して前記ピニオンをエンジンのリングギヤに向けて移動させることを特徴とするスタータ。
  3. 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
    前記動力分割機構は、
    前記モータの回転軸(9)に設けられる太陽歯車(14)と、
    この太陽歯車の回転中心と同心に配置されて回転可能に設けられる内歯車(15)と、
    前記太陽歯車と前記内歯車とに噛み合って自転運動と公転運動が可能な遊星歯車(16と、
    自転軸(18)を介して前記遊星歯車を回転自在に支持する遊星キャリア(17)とを有する遊星歯車装置によって構成され、
    前記遊星キャリアが前記第1出力部として設けられ、前記内歯車が前記第2出力部として設けられることを特徴とするスタータ。
  4. 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
    前記動力分割機構は、
    前記モータに駆動されて回転する駆動側大傘歯車(66)と、
    この駆動側傘歯車と軸方向に対向して回転可能に配置される従動側大傘歯車(67)と、
    前記駆動側大傘歯車と前記従動側大傘歯車とに噛み合って自転運動と公転運動が可能な小傘歯車(68)と、
    自転軸を介して前記小傘歯車を回転自在に支持する傘歯車ホルダ(70)とを有する差動歯車装置によって構成され、
    前記傘歯車ホルダが前記第1出力部として設けられ、前記従動側大傘歯車が前記第2出力部として設けられることを特徴とするスタータ。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記第2出力部に取り出される前記モータのトルクが伝達されて前記カムシリンダと一体に回転する強磁性体の磁極形成部(73)を有し、磁力を利用して前記磁極形成部の回転を規制することで前記カムシリンダの回転を規制できる回転規制装置を備え、
    前記ピニオン押出機構は、前記ピニオンがエンジンのリングギヤに噛み合ってエンジンをクランキングする際に、前記回転規制装置により前記カムシリンダの回転が規制されることを特徴とするスタータ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記モータの回転軸(9)に連結されて前記回転軸と一体に回転する強磁性体のモータ回転板(59)と、前記ブレーキ板と一体に設けられる、または、前記ブレーキ板と別体に設けられて前記遊星キャリアに連結される強磁性体のクラッチ板(53、65)とを有し、前記モータ回転板と前記クラッチ板との間を磁気的に結合できる電磁クラッチ装置を備え、
    前記動力分割機構は、前記電磁ブレーキ装置が前記ブレーキ板の回転を許容している状態で、前記電磁クラッチ装置により前記モータ回転板と前記クラッチ板との間が磁気的に結合されると、前記モータのトルクが前記第1出力部と前記第2出力部とに分割されて、前記第2出力部が前記モータの回転方向と同方向に回転することを特徴とするスタータ。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記電磁ブレーキ装置は、
    前記ブレーキ板に対向して配置されるブレーキ磁極片(34)と、
    このブレーキ磁極片を磁化する永久磁石(35)と、
    通電により磁界を形成し、この磁界が前記ブレーキ磁極片に対して前記永久磁石が形成する磁界を打ち消す方向に働くブレーキ解除コイル(31)とを有し、
    前記ブレーキ板は、前記ブレーキ解除コイルが非通電の時に前記ブレーキ磁極片に吸引されて摩擦により回転が抑制されることを特徴とするスタータ。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記電磁ブレーキ装置は、
    前記ブレーキ板に対向して配置されるブレーキ磁極片(34)と、
    通電により磁界を形成して前記ブレーキ磁極片を磁化するブレーキコイル(50)とを有し、
    前記ブレーキ板は、前記ブレーキコイルが通電された時に、前記ブレーキ磁極片に吸引されて摩擦により回転が抑制されることを特徴とするスタータ。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記電磁ブレーキ装置は、
    前記ブレーキ板が磁気ヒステリシス特性を有し、そのブレーキ板の一部を軸方向に折り曲げて形成されるブレーキ円筒部(29c)と、
    前記ブレーキ円筒部を径方向の内周側と外周側から非接触に挟み込んで配置されるブレーキ磁極片(34)と、
    通電により磁界を形成して前記ブレーキ磁極片を磁化するブレーキコイル(50)とを有し、
    前記ブレーキ板は、前記ブレーキコイルが通電された時に、前記ブレーキ磁極片と前記ブレーキ円筒部との間に働く磁気的な制動力によって回転が抑制されることを特徴とするスタータ。
  10. 請求項1〜6のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記電磁ブレーキ装置は、
    通電により磁界を形成するブレーキコイル(50)と、
    周方向に等間隔に配置される複数の磁極爪(51a、52a)を有し、前記ブレーキコイルへの通電により前記磁極爪が磁化されて周方向にS極とN極とが交互に形成される環状の磁極コア(51、52)とを備え、
    前記ブレーキ板は、前記磁極爪の内周に対向して配置され、且つ、周方向に凹凸形状が連続して形成される波型リング部(29b)を有し、前記ブレーキコイルが通電された時に、磁化された前記磁極爪と前記波型リング部との間に生じる静止トルクによって回転が抑制されることを特徴とするスタータ。
  11. 請求項1〜6のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記電磁ブレーキ装置は、
    前記ブレーキ板に対向して非接触に配置されるブレーキ磁極片(34)と、
    通電により磁界を形成して前記ブレーキ磁極片を磁化するブレーキコイル(50)とを有し、
    前記ブレーキ板と前記ブレーキ磁極片は、互いの対向面にそれぞれ周方向に凹凸形状が連続して設けられ、前記ブレーキコイルへの通電により、互いの前記凹凸形状の凸部同士の間に磁気吸引力が働くことで前記ブレーキ板の回転が抑制されることを特徴とするスタータ。
  12. 請求項5に記載したスタータにおいて、
    前記回転規制装置は、
    前記磁極形成部に対向して非接触に配置される固定磁極片(74)と、
    通電により磁界を形成して前記固定磁極片を磁化する回転規制コイル(75)とを有し、
    前記磁極形成部と前記固定磁極片は、互いの対向面にそれぞれ周方向に凹凸形状が連続して設けられ、前記回転規制コイルへの通電により、互いの前記凹凸形状の凸部同士の間に磁気吸引力が働くことで前記磁極形成部の回転が抑制されることを特徴とするスタータ。
  13. 請求項6に記載したスタータにおいて、
    前記電磁クラッチ装置は、
    前記モータ回転板と一体に設けられて、前記クラッチ板に対向して配置されるクラッチ回転磁極(62)と、
    このクラッチ回転磁極に対向して軸方向の反クラッチ板側に配置されるクラッチ磁極片(57)と、
    通電により磁界を形成して前記クラッチ磁極片を磁化するクラッチコイル(58)とを有し、
    前記クラッチ板は、前記クラッチコイルへの通電により前記クラッチ磁極片に吸引されて前記クラッチ回転磁極に吸着されることで前記モータ回転板と磁気的に連結されることを特徴とするスタータ。
  14. 請求項6に記載したスタータにおいて、
    前記電磁クラッチ装置は、
    磁気ヒステリシス特性を有する前記クラッチ板の一部を軸方向に折り曲げて形成されるクラッチ円筒部(65a)と、
    前記モータ回転板と一体に設けられて、前記クラッチ円筒部を径方向の内周側と外周側から非接触に挟み込んで配置されるクラッチ回転磁極(62)と、
    このクラッチ回転磁極に対向して配置されるクラッチ磁極片(57)と、
    通電により磁界を形成して前記クラッチ磁極片を磁化するクラッチコイル(58)とを有し、
    前記クラッチ板は、前記クラッチコイルへの通電により、前記クラッチ磁極片を介して磁化される前記クラッチ回転磁極と前記クラッチ円筒部との間に働く磁気的な結合力により前記モータ回転板と磁気的に連結されることを特徴とするスタータ。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオン押出機構は、
    前記ピニオンの外周を軸方向に延びて配置されるシリンダ円筒部(42a)を有し、このシリンダ円筒部に軸方向の始端から終端に向かって周方向に捩れたカム溝(41)が形成される前記カムシリンダと、
    前記シリンダ円筒部の径方向外側または内側に配置されて軸方向及び周方向に固定され、且つ、前記カム溝と軸方向に交差するストレート溝(43)が形成される固定部材(26、49)と
    前記カム溝と前記ストレート溝とが交差する部位に配置されて前記カム溝と前記ストレート溝とに係合する係合ピン(45)と、
    前記カムシリンダの回転に伴い前記ストレート溝内を軸方向へ移動する前記係合ピンの移動を前記ピニオンに伝達する伝達部材(44)とを有することを特徴とするスタータ。
  16. 請求項1〜14のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオン押出機構は、
    前記ピニオンの外周を軸方向に延びて配置されるシリンダ円筒部(42a)を有し、このシリンダ円筒部に軸方向に沿って延びるストレート溝(43)が形成された前記カムシリンダと、
    前記シリンダ円筒部の径方向外側または内側に配置されて軸方向及び周方向に固定され、且つ、前記ストレート溝と斜めに交差するカム溝(41)が形成される固定部材(26、49)と、
    前記ストレート溝と前記カム溝とが交差する部位に配置されて前記ストレート溝と前記カム溝とに係合する係合ピン(45)と、
    前記カムシリンダの回転に伴い前記ストレート溝内を軸方向へ移動する前記係合ピンの移動を前記ピニオンに伝達する伝達部材(44)とを有することを特徴とするスタータ。
  17. 請求項15に記載したスタータにおいて、
    前記固定部材は、スタータハウジング(26)であり、このスタータハウジングは、前記シリンダ円筒部の外周面に対向する円筒内周面を有し、この円筒内周面に前記ストレート溝が形成されることを特徴とするスタータ。
  18. 請求項16に記載したスタータにおいて、
    前記固定部材は、スタータハウジング(26)であり、このスタータハウジングは、前記シリンダ円筒部の外周面に対向する円筒内周面を有し、この円筒内周面に前記カム溝が形成されることを特徴とするスタータ。
  19. 請求項15に記載したスタータにおいて、
    前記固定部材は、スタータハウジング(26)に固定されて軸方向及び周方向に移動不能に配置される円筒部材(49)であり、この円筒部材に前記ストレート溝が形成されることを特徴とするスタータ。
  20. 請求項16に記載したスタータにおいて、
    前記固定部材は、スタータハウジング(26)に固定されて軸方向及び周方向に移動不能に配置される円筒部材(49)であり、この円筒部材に前記カム溝が形成されることを特徴とするスタータ。
  21. 請求項15〜20のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記伝達部材は、前記係合ピンを保持して前記ピニオンに対し相対回転可能かつ軸方向へ移動不能に組み付けられることを特徴とするスタータ。
  22. 請求項1〜21のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオンは、前記出力軸に設けられる捩れスプライン(28)に嵌合することを特徴とするスタータ。
  23. 請求項1〜21のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオンは、前記出力軸に設けられる直スプラインに嵌合することを特徴とするスタータ。
  24. 請求項1〜23のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記モータは、正逆両方向に回転可能に構成される直流モータまたは交流モータであることを特徴とするスタータ。
  25. 請求項1〜23のいずれか一項に記載したスタータにおいて、
    前記モータは、直流整流子モータであることを特徴とするスタータ。
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