以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
原形質流動性増加作用を呈するフェノール誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
前記の式(1)のようにヒドロキシセサモールの1分子とエリスリトールの1分子とチロシンの1分子からなる。これらの結合はすべて天然型であり、エステル結合及びエーテル結合を介して結合している。
このフェノール誘導体は化学合成によりヒドロキシセサモール、エリスリトール及びチロシンなどを原料として化学合成して得ることができる。しかし、その化学的な合成では原料のロスが著しいため、産業への利用は限定される。このフェノール誘導体の標準品や微量な試供品を得るためには化学的な合成は好ましい。
このフェノール誘導体の構造を解析することは有効成分の特定ができる点から好ましい。また、製品や製剤に利用して販売する際の有効成分の含有量の指標として利用できることから好ましい。
このフェノール誘導体の構造解析の一例として、たとえば、重水素化クロロホルム中の400MHzのH−NMRにより、ピークの位置は3.079、3.432、3.781、3.814、5.727、6.021、6.138、6.302、6.549、6.952、7.137、7.376、7.462、7.484、7.846及び7.901ppmに認められる。
さらに、このフェノール誘導体は高速液体クロマトグラフィーや質量分析装置で解析され、その構造が同定される。
構成成分であるヒドロキシセサモールとはセサモールのヒドロキシ体であり、ゴマなどの植物に含有されるセサミンの構成成分の一つであり、植物や動物に利用されているフェノール類である。その化学式はC7H6O4である。
このヒドロキシセサモールは複合ベンゼン環の1位と3位に水酸基をもち、2つのフェノール性の水酸基により強い抗酸化性、抗菌性及び酵素活性化作用を有する。このフェノール誘導体ではヒドロキシセサモールの2つの水酸基はいずれも結合しているものの原形質流動性に関係するチュブリン、アクチン、ミオシンと結合してそのアクチンミオシン結合やATPの利用率を高める働きを呈して原形質流動性増加作用を有する。
このフェノール誘導体ではヒドロキシセサモールの水酸基の一つはチロシンのカルボキシル基とエステル結合している。もう一つの水酸基はエリスリトールの水酸基とエーテル結合している。
ヒドロキシセサモール自体には毒性が少なく、セサモールに比して水溶性と脂溶性の両方の性質を呈することから、細胞膜の透過と原形質での溶解の両方の性質を呈することは好ましい。
また、ヒドロキシセサモール部分はミトコンドリア膜を通過してATP産生の際に生じる活性酸素を消去できることは細胞の老化や酸化を抑制する点から好ましい。この抗酸化力により原形質流動性の増加とともに細胞の安定化がもたらされる。
また、酵母や発酵に用いる有用な微生物に対してもそれらの原形質流動性を増加して有用物質の産生作用や発酵促進の働きを有する。この発酵促進の働きは反応性が低い発酵工程や発酵による物質産生に活用できる。すなわち、反応性の乏しい発酵を促進することにより、希少物質の製造を促進できることは好ましい。
また、構成成分であるエリスリトールは化学式C4H10O4の糖アルコールの一種である。メロンなどの果実、野菜類や納豆、酒や醤油などの発酵物に含まれる天然の低カロリーの甘味物質である。
このエリスリトールは天然物であり、安全性が高いことは好ましい。さらに、エリスリトールの水酸基は還元作用を呈することから活性酸素の除去や物質の安定性に寄与することは成分の安定性の点から好ましい。
このフェノール誘導体ではヒドロキシセサモールのフェノール性水酸基とエリスリトールの水酸基がエーテル結合している。
構成成分であるチロシンは分子式C9H11NO3であり、L型であり、天然型である。チロシンはフェニルアラニンにフェノール性水酸基が1つ結合した形であり、非必須アミノ酸に分類される。
チロシンは神経伝達物質であるドーパ、ドーパミンとノルアドレナリンとアドレナリンへと誘導されることから、神経細胞に対する働きに関与している。つまり、チロシン部分は末梢神経や脳機能の保護の点から好ましい。
このフェノール誘導体のチロシンはフェノール性水酸基により抗酸化作用を発揮し、原形質流動性を増加させるために必要である。
このフェノール誘導体は脂溶性と水溶性の両方の性質を呈することから細胞膜及び細胞壁を通過し、細胞内に吸収される。このフェノール誘導体は細胞質内でチュブリン、アクチンとミオシン、オクルディンなどのタイトジャンクションたんぱく質や細胞膜裏打ちたんぱく質と結合し、原形質流動性を増加させる。
このフェノール誘導体はアクチンとミオシンの結合を促進させることにより細胞の骨格を収縮と弛緩を促進させることにより原形質流動性を増加させる。すなわち、このフェノール誘導体のチロシンとヒドロキシセサモールの結合部位でアクチンとミオシンのATP反応部位が活性化される。
さらに、このフェノール誘導体のヒドロキシセサモールとエリスリトールの構造によりアクチンとミオシンの滑りと緩みを増加させ、アクチンとミオシンの弛緩と収縮を強くして原形質流動性を増加させる。
さらに、エリスリトールの水酸基とチロシンのアミノ基によりATP産生酵素の活性中心を活性化して解糖系のATP産生を増加させ、原形質流動性の増加の原動力となる局所のATP量を増加させる。
原形質流動性が増加することにより細胞内のATP、ビタミン、ミネラル、水、たんぱく質、脂質、糖質などの栄養素、酵素や成長因子、細胞内情報伝達系の成分であるサイクリックAMPやサイクリックGMPなどを移動させる。この栄養素や成長因子の移動により細胞の反応性が増加し、細胞機能が活性化される。
また、原形質流動性の増加は細胞膜の流動性も増加させ、成長因子の受容体の移動と反応性を正常化する。さらに、細胞核孔を移動する転写因子、酵素類やmRNAなどの遺伝子の動きを活性化して遺伝子情報の適切な伝達に寄与することは細胞機能の正常化と維持につながることからこのフェノール誘導体は好ましい。
病的な細胞や癌細胞では原形質流動性が異常であることから、このフェノール誘導体による原形質流動性の増加により細胞が正常化することにより細胞レベルで癌などの疾患が改善することからこのフェノール誘導体は好ましい。
また、腎臓細胞の上皮細胞や肝臓細胞で毒物や老廃物の排泄に関わる機能にも適しており、原形質流動性を増加させることにより老廃物や酸化物質などの排泄物を細胞外に効率よく排泄する。この排泄により細胞が浄化されるデトックス効果があることからこのフェノール誘導体は好ましい。
さらに、マクロファージ、単球、ランゲルハンス細胞、メサンギウム細胞、クッパー細胞などの食作用を有する細胞の原形質流動性を増加させることにより食組織や食された異物、細菌やウイルスの移動と分解を促進することは免疫機能の増加やアレルギー反応の抑制の点からこのフェノール誘導体は好ましい。
神経細胞においては軸索輸送が原形質流動性と関係していることからNGFなどの成長因子が輸送され、また、神経伝達が活発になることは神経細胞の働きを正常化させることから好ましい。末梢神経障害や認知症などの脳神経細胞における神経伝達の活性化と脳に蓄積されたアミロイドの排泄の点からもこのフェノール誘導体は好ましい。
また、このフェノール誘導体は水酸基を豊富に含有することから優れた水素ガスの発生作用及び抗酸化力をもち、メラニンの産生を抑制して肌の美白作用をもたらすことは、化粧料としての利用が高まることから好ましい。すなわち、このフェノール誘導体の粉末は水溶性溶媒と反応して水素ガスを発生する。この水溶液の水素ガス濃度は1.6ppmである。
このフェノール誘導体は心筋梗塞においては冠状動脈の梗塞や虚血状態でも心筋細胞の物質移動の活性化により心筋梗塞の予防と治療に効果を発揮する。特に、梗塞部位の血管平滑筋においてこのフェノール誘導体は弛緩作用を発揮して血流と血圧を改善する。水素ガスは虚血再灌流の際に発生する活性酸素を除去することから、水素ガスを発生させることは好ましい。
また、このフェノール誘導体は無呼吸状態で解糖系を介してATPを産生させることにより運動時の筋肉の活動性を高めることは好ましい。特に、アスリートが筋肉を増強したい場合、筋肉細胞でのグルコース、ビタミンやミネラル、酸素の細胞内移動を高め、ミトコンドリアへの輸送と老廃物と二酸化炭素や活性酸素を排泄することから好ましい。また、ミトコンドリアでは活性酸素が発生することから水素ガスにより消去されることは好ましい。
このフェノール誘導体は生体内では腎臓や肝臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解されて構成成分である安全性の高いヒドロキシセサモール、エリスリトールとチロシンに分解される。したがって、このフェノール誘導体は体内に蓄積されることはなく、分解も生体内酵素で行われ、分解物も天然物であることから安全性が高い。
このフェノール誘導体は脂肪細胞膜に浸透しやすく、脂肪細胞の中性脂肪を移動させ、この分解を高め、糖質も分解させる。糖質が消費されることから糖尿病の予防やダイエット対策にも好ましい。
さらに、このフェノール誘導体は皮膚上皮細胞の炎症も抑制し、シワの形成を抑制する。また、角質細胞を安定化させることにより皮膚角質のバリア機能を維持し、異物や刺激物、細菌の侵入を抑制する。この働きは化粧料として利用できる。
このフェノール誘導体は原形質流動性の増加によりマクロファージやリンパ球などの細胞を活性化することから免疫賦活剤や抗アレルギー剤として利用できる。また、このフェノール誘導体は神経細胞に働き、細胞膜の電位と神経の伝導を高めることにより認知症やアルツハイマー症、パーキンソン症の治療剤に適する。
また、このフェノール誘導体は分解された構成成分がすべて自然界に存在する物質であり、その食経験や化粧品としての利用実績が豊富であることから安全性が確認されている。さらに、このフェノール誘導体は眼の角膜細胞、水晶体細胞、網膜細胞の細胞骨格を活性化することにより結膜炎、白内障、緑内障、網膜剥離による細胞の機能を回復させて促進し、視力の回復に利用される。
このフェノール誘導体は天然にも存在しており、ゴマの種子などに極微量認められる。このフェノール誘導体を精製により上記の植物から抽出することは可能である。ただし、精製には大量の原料を必要とし、有機溶媒などを利用することから産業上への利用は制限される。
このフェノール誘導体はゴマ種子を発酵法などにより増加させることは好ましい。発酵法としては大豆と混合して納豆菌やベニコウジ菌により発酵させて得る。この方法は食経験があり、フェノール誘導体の産生量も多いことから好ましい。
得られたフェノール誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするフェノール誘導体を精製することは、目的とするフェノール誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
医薬品としては注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤はシェラックまたは砂糖などで被覆することもできる。
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤として原形質流動性を増加させることによる細胞機能性の活性化や免疫改善をもたらすサプリメント、デトックスと滋養強壮系の食品、美白と皮膚の健康を維持する美容サプリメント、神経、肝臓や腎臓の機能を向上させる健康食品、筋肉を増強し、脂肪を分解するダイエットなどを目的とした健康食品や美容食品などに利用される。また、保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、デトックス、全身の上皮組織や筋肉、骨細胞の強化を目的とした飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
得られた化粧料は低酸素状態でも原形質流動性を活増加することにより皮膚細胞の増殖を促し、ケラチンやコラーゲンの産生を促進することにより、シワを防止し、たるみを防ぐことは好ましい。さらに、抗酸化作用によりメラニンの産生を抑制することによる美白作用が発揮される。
また、このフェノール誘導体はフェノール性の水酸基により抗菌作用と抗酸化作用を発揮し、炎症の抑制、歯肉細胞の増殖を目的とした歯磨き剤、洗口液や歯磨きペーストなどに利用できる。
さらに、有用な微生物や酵母の原形質流動性を増加させることにより発酵を活性化する発酵活性剤として利用することができる。この発酵活性剤により反応性の低い発酵段階を活性化して有用な成分や食品を製造することが可能となる。たとえば、医薬品原料の発酵工程において発酵工程を効率的にすることにより低コストで生産効率を上げることができる。
また、植物細胞の原形質流動性を増加させることにより植物の生育を活発にする植物活性剤として利用することができる。この植物活性剤は希少な蘭や花の生育に利用でき、果実や野菜、穀類の栽培を活性化させる。植物工場における野菜や果実の栽培にも利用でき、栽培効率を上げることができる。
次に、ゴマの種子、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる原形質流動性増加作用を呈するフェノール誘導体の製造方法について説明する。
ここでいうフェノール誘導体とはヒドロキシセサモールの1分子とエリスリトールの1分子とチロシンの1分子からなる物質であり、これらの結合はすべて天然型であり、結合様式はエステル結合とエーテル結合である。このフェノール誘導体は細胞内の細胞質に浸透し、原形質流動性を増加させることにより、デトックス、免疫、虚血、脳梗塞、心筋梗塞、炎症や癌の増殖を抑制する。
このフェノール誘導体のヒドロキシセサモールとエリスリトールとチロシンは天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
この誘導体は皮膚、神経、骨、筋肉、肝臓や腎臓などにも働き、細胞内に浸透して原形質流動性を増加させることにより、細胞を増殖させ、血流を改善する。
この製造方法とはゴマの種子、大豆粉末と納豆本舗製の納豆菌を添加して発酵させた発酵液を紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵する工程からなる。
原料となる物質はゴマの種子、大豆粉末、納豆本舗製の納豆菌及び紅麹本舗製のベニコウジ菌である。
ここでいうゴマ、つまり、胡麻とは学名Sesamum indicum、ゴマ科ゴマ属の一年草であり、その種子は食用として用いられ、食経験も豊富である。白ゴマ、黒ゴマ、黄ゴマなど、種子の外皮の色によって分類されるが、タンニンを多く含むことから黒ゴマの種子が好ましい。
また、ゴマの種子を利用した漢方薬として胡麻仁があり、虚弱の熱をおぎなう目的で利用されている。ゴマの種子にはタンニンやポリフェノール、有機酸、ミネラル、色素、ポリフェノールが含有されていることからこのフェノール誘導体を製造する原料として好ましい。
ゴマの種子は日本、中国、台湾、アメリカなどいずれの国の由来でも良い。特に、日本産で低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。たとえば、香川県にあるみつばち一番亭が無農薬栽培した黒ゴマの種子は品質が良いことから好ましい。
ゴマの種子は乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
さらに、ゴマの種子と大豆は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
用いる納豆本舗製の納豆菌は学名バチルス サブチリスで日本では納豆の製造に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。用いる納豆菌は納豆本舗製であり、高い発酵性を呈する。
この納豆菌はゴマの種子と大豆からなるヒドロキシセサモールとエリスリトールとチロシンの結合反応を促進する。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量はゴマの種子の乾燥粉末1重量に対し、大豆粉末は0.04〜4重量及び納豆本舗製の納豆菌は0.002〜0.05重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は41〜44℃に加温され、発酵は1日間から7日間行われる。目的とするフェノール誘導体をHPLCやTLCにより定量することならびに、菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施することは好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
この発酵の工程によってヒドロキシセサモールとエリスリトールとチロシンとが結合するものの、その結合が不安定であることから次の紅麹本舗製のベニコウジ菌による発酵を行い、結合を安定化させる。
用いる紅麹本舗製のベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵効率に優れている。
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は前記の発酵物1重量に対してベニコウジ菌は0.0003〜0.01重量が好ましい。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
また、この発酵は39〜42℃に加温され、発酵は1日間から7日間行われる。この発酵の工程によってベニコウジ菌の還元作用によりこのフェノール誘導体の構造が安定化される。
前記の発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収し、菌を滅菌でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
前記の還元反応物から、目的とするフェノール誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするフェノール誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して2〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10〜39℃が好ましく、12〜37℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
フェノール誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするフェノール誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるフェノール誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
また、このフェノール誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
香川県で無農薬栽培された黒ゴマの種子をみちばち一番亭より購入して用いた。この種子を水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、ゴマの種子の乾燥粉末粉砕物を1.1kg得た。
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート製)に供し、大豆の粉砕物1.1kgを得た。前記のゴマの種子と大豆の粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水5kgを添加し、攪拌した。
これとは別に、納豆本舗製の粉末納豆菌の11gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた発酵準備液を用意した。
前記の前培養した納豆菌の発酵準備液とゴマの種子の乾燥粉末と大豆とを入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、40〜42℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、3日間発酵させた。発酵終了後、発酵タンクより発酵物を取り出し、煮沸滅菌した。この発酵物を濾過布により濾過して、納豆菌による発酵液1.1kgを得た。この発酵液1kgに対して紅麹本舗製のベニコウジ菌の10gを添加して41℃で6日間発酵させた。
この発酵物にエタノールを添加して煮沸滅菌した。これを濾過し、濾過液を凍結乾燥させて目的とするフェノール誘導体0.56kgとした。これを検体1とした。また、この検体1の0.1gを精製水10mLに溶解した場合、1.6ppmの水素ガスが発生することをガスクロマトグラフィー(島津製作所)により測定した。
さらに、構造解析及び実験の目的で精製物を得た。つまり、前述の検体1のフェノール誘導体の200gに5%エタノール含有精製水の1Lを添加し、ダイアイオン(三菱化学製)500gを5%エタノール液に懸濁して充填したガラス製カラムに供した。
これに3Lの5%エタノール液を添加して清浄し、さらに、70%エタノール液を2L添加して目的とするフェノール誘導体を溶出させ、濃縮して精製した。精製されたフェノール誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これをフェノール誘導体の精製物22gを得てこれを検体2とした。また、この検体1の0.1gを精製水5mLに溶解した場合、水溶液中に1.6ppmの水素ガスが発生することをガスクロマトグラフィー(島津製作所)により確認した。
以下に、フェノール誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
これを核磁気共鳴装置(400MHz、H−NMR、ブルカー製)で解析した結果、検体2からヒドロキシセサモールとエリスリトールとチロシンの各1分子からなるフェノール誘導体が検出された。
すなわち、H−NMRの重水素化クロロホルム中、3.079、3.432、3.781、3.814、5.727、6.021、6.138、6.302、6.549、6.952、7.137、7.376、7.462、7.484、7.846及び7.901ppmにシグナルが認められた。
上記の解析結果は、化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明した。すなわち、検体2からヒドロキシセサモール1分子とエリスリトール1分子とチロシン1分子がエステル結合した目的とするフェノール誘導体であると確認できた。
以下にヒト皮膚上皮細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例2)
クラボウ株式会社より購入したヒト由来皮膚上皮細胞を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これを紫外線照射装置(アイグラフィクス株式会社製)により紫外線照射した。さらに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてEGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
原形質流動性の観察は高感度微分干渉顕微鏡とビデオシステムにより動画を解析することにより行った。すなわち、検体を処理された細胞を培養シャーレに入れたまま、浜松ホトニクス社製(ORCA−Flash 4.0V2)とニコン社顕微鏡を用い、倍率100倍で細胞像を高感度カメラで撮影した。
この細胞の細胞内原形質流動性を1分間観察してビデオに編集し、その画像を低速度で解析して細胞内物質の移動距離と移動頻度から原形質流動性を計数した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚上皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として143%に増加した。また、検体2では211%に増加した。一方、EGFでは140%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
原形質流動性については検体1により溶媒対照群に比して166%に増加した。また、検体2の添加によって溶媒対照の334%と、いずれも増加が認められた。EGFでは105%となり、検体1及び検体2による原形質流動性増加作用が著しかった。
原形質流動性増加作用は細胞活性の指標でもあることから、検体1と検体2の処理で解糖系の活性が増加したことは検体1と検体2により細胞活性化作用が確認された。
細胞内ケラチン量については検体1により溶媒対照群に比して155%に増加した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の199%となった。EGFでは151%となり、検体1及び検体2の方がケラチン産生の増加に優れていた。なお、培養液中でも1.6ppmの水素ガスが発生したことを確認した。
以下にヒト神経細胞の障害モデルを用いた確認試験について述べる。
(試験例3)
コスモバイオから購入したヒト神経細胞(Human Neurons(HN))を用いた。培養液としては、専用の培養液(神経細胞増殖培地)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%のアクリルアミド水溶液を添加して神経細胞を弱らせた。
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてNGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
培養後、神経細胞を培養シャーレに入れた状態で原形質流動性を前記のとおり顕微鏡観察して計測した。また、細胞数を顕微鏡的に計数した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により神経細胞数が溶媒対照群に比して平均値として133%に増加した。また、検体2では193%に増加した。一方、NGFでは130%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
神経細胞の原形質流動性については検体1により溶媒対照群に比して169%に増加した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の266%と増加した。NGFでは153%となり、検体1及び検体2の方がNGFに比べて原形質流動性増加作用に優れていた。さらに、この培養液で1.6ppmの水素ガスが発生したことを確認した。