JP2017140231A - 止血材およびそれを含有する創傷被覆材 - Google Patents

止血材およびそれを含有する創傷被覆材 Download PDF

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Abstract

【課題】従来用いられてきたキトサンに由来する製品がもつ、甲殻類アレルギーの発症やエンドトキシン混入のリスクをなくし、より多くの人に対して安全に使用でき、かつ、汎用されているハイドロゲルが有していない抗菌性、止血機能を有する止血材およびそれを含有する創傷被覆材を提供することを目的とする。【解決手段】カチオン化セルロースを含有する止血剤およびそれを含有する創傷被覆材を提供する。前記カチオン化セルロースの水酸基のうち少なくとも1つが、−R2−N+(R3)(R4)(R5)・X−で修飾され、前記カチオン化セルロースの他の水酸基が、−H、または−(CH2CH2O)m−Hを有し、R2が、C1−6アルキレン、C2−6ヒドロキシアルキレン、−(CH2CH2O)l−、またはこれらの組み合わせであり、lが、1または2であり、mが、1または2であり、X−が、アニオン性基であってもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、止血材、および、その止血剤を含有する創傷被覆材に関するものである。
皮膚の傷が治るためのメカニズムとして、(1)皮膚が損傷すると、傷口に血小板が集まり、血液を固めて止血をする、(2)好中球やマクロファージが傷口周辺に集まり、壊死組織や細菌を貪食し、除去する、(3)繊維芽細胞が集まり傷口を縮小させる、(4)表皮細胞が遊走して集まり傷口を上皮化する、というものが知られている。
傷が治るためには、このように様々な生体細胞が傷口に集まって働く必要がある。傷を治すために、増殖因子を始めとした多くのサイトカインが必要な細胞を傷口に呼び寄せる。傷を早く治すためには、サイトカインにより傷口に集められた細胞が活発に活動できる環境を維持することが肝要となる。
かつては、傷を治すためには傷口を乾燥させるべきという考えが主流であったが、創傷が乾燥すると、生体細胞が死滅し、再上皮化が起こりにくい。この問題を解決するため、近年、moist wound healing(湿潤療法)が急速に広まり、創傷修復の手法の一つとして広く臨床応用されるようになっている。この湿潤療法では、創傷部位から生じる浸出液によって当該部位を濡れた状態に保ち、傷口を乾燥させないことで、傷口で活発な細胞分裂が行われるため、傷が早く治る事が知られている(非特許文献1)。創傷被覆材とは、創傷した部位を被覆することで湿潤環境を提供し、創傷の治癒を促進させる部材である。
創傷被覆材の成分として汎用されているハイドロゲルは、抗菌性や止血性などの効果がない上に、土の中に埋めても微生物によって分解されない。このため、焼却または埋設で処分することになるが、焼却するときに燃焼炉の温度が下がるとダイオキシンを発生させる可能性がある。また、埋設処分する場合には埋設場所の確保が困難になってきており、焼却によるダイオキシン発生が起こらず、かつ、環境負担が少ない製品が求められている。
また、キトサンを原料とした縫合糸や人工骨などの傷の修復材料について、多くの試験や検査が実際の医療現場で実施されている。その結果、キトサンを原料とした止血材や創傷被覆材が開発されつつある(特許文献1、2)。キトサンはアミノ基を有しており、条件によってプラスに荷電することで、血球を凝集して止血効果を示す。キトサンは抗菌効果ももたらすことから(非特許文献2、3)、キトサンは止血材、創傷被覆材の理想的な成分であると考えられてきた。
特表2011−518592号公報 特開2013−133287号公報
GEORGIA A.KANNON,ALGIN B.GARRETT,Moist Wound Healingwith Occlusive Dressings,DermatologicSurgery,Volume 21,Issue 7,p.583−590,July,1995 Rejane C.Goy,Douglas de Britto,Odilio B.G.Assis,A review of the antimicrobial activity of chitosan Polimeros,vol.19,no.3,SaoCarlos,2009 Tsuimin Tsai,Hsiung−FeiChien,Chitosan Augments Photodynamic Inactivation of Gram−Positive and Gram−Negative Bacteria,Antimicrob Agents Chemother,2011May,55(5),p.1883−1890
しかしながら、キトサンは、甲殻類アレルギーのアレルゲンであるため、甲殻類アレルギーを有する人には、キトサンを原料とした止血材や創傷被覆材を用いる事で重篤なアレルギー反応を来たす可能性がある。創傷にキトサンを原料とした製剤を使用する際、甲殻類アレルギーを有する人に処方する場合には注意を要し、可能であれば別の製剤を使用するべきである。しかしながら、処方される人が事前に甲殻類アレルギーを有していると気づいていない場合もあるため、アレルギー発症の危険性は潜在する。また、キトサンを大量に生産するためには、元々無菌ではないカニの甲殻を原料とすることから、キトサンを単離する際、細菌が分泌する人体に有害なエンドトキシンを完全に除去することが困難である。エンドトキシンが引き起こす病態として、致死性ショック、発熱、補体の活性化、白血球の活性化や血管内皮細胞の障害などが知られている。
一方、ハイドロゲルなど、キトサン以外で汎用されている創傷被覆材の成分には、抗菌性、止血性などがない。このため、被覆した内部での細菌増殖が創傷治癒の妨げとなり、重大な合併症を起こす可能性がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より多くの人に対して安全に使用でき、かつ、傷口の治癒を妨げる出血や感染を抑制し、合併症を起こしにくい止血剤およびそれを含有する創傷被覆材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、カチオン化セルロースを含有する止血材を提供する。本発明の別の態様は、カチオン化セルロースを含有する止血剤を成分として含む創傷被覆材を提供する。また、本発明のさらに別の態様は、カチオン化セルロースを含有する創傷被覆材を提供する。
セルロースは、植物がその体内で、光合成によって作り出す天然化合物である。近年、セルロースが水分を吸収、放出することにより適切な創傷治癒環境を提供できることから、Dermafillや、XCell Cellulose Wound Dressingなど、セルロースを主原料にした創傷被覆材が市販されている。このほかに、セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースを含有する創傷被覆材が実用化されている。これらは、甲殻類アレルギーを引き起こすキトサンとは異なり、日常摂取している植物などに含まれているセルロースを使用しており、アレルギー発症の可能性の観点からは、キトサンよりも安全である。しかしこれらの製品には保水性はあるものの、抗菌性、止血性を持たない。したがって、セルロースやカルボキシメチルセルロースを主成分として含有する創傷被覆材では、創傷被覆する際に、内部での細菌増殖、出血の合併症を抑制することができない。
これに対し、カチオン化セルロースは、セルロースやカルボキシメチルセルロースとは異なり、プラスに荷電している官能基を有することにより、止血性、抗菌性を併せ持っている。止血性については、活性化凝固時間を用いて検討・確認を行った。また、抗菌性については、医療者の皮膚に常在している細菌を寒天培地で培養し、カチオン化セルロースをゲル化したものを含浸した濾紙の周囲に、細菌培養時に阻止円を形成することで、カチオン化セルロースが抗菌性を有していることを確認した。
本発明においては、傷に直接触れる止血材や創傷被覆材に、カチオン化セルロースを含有させる。これにより、創傷部位において、止血材や創傷被覆材が直接細菌と接触することで、カチオン化セルロースのプラス電荷による抗菌活性を示すことができる。
本発明においては、前記カチオン化セルロースが、式(1):
(式(1)中、
のうち少なくとも1つが、−R−N(R)(R)(R)・Xであり、
他のRが、−H、または−(CHCHO)−Hであり、
が、C1−6アルキレン、C2−6ヒドロキシアルキレン、−(CHCHO)−、またはこれらの組み合わせであり、
lが、1または2であり、
mが、1または2であり、
が、アニオン性基であり、
、R、Rが、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、O−C1−6アルキル、Cのヘテロアルキルまたはヘテロアルケニルであって、Yがヘテロ原子であって、a+bが4から6であって、窒素原子で結合する場合には該窒素原子を含む飽和または不飽和の5員環または6員環を形成する)
であってもよい。
本発明においては、前記少なくとも1つのRが、−CHCHO−CHCH(OH)CH−N(R)(R)(R)・Xであり、R、R、Rがメチル基またはエチル基であってもよい。本発明においては、前記少なくとも1つのRが、−CHCH(OH)CH(R)(R)(R)・Xであり、R、R、Rがメチル基またはエチル基であってもよい。本発明においては、前記アニオン性基が、ハロゲン化物イオン、リン酸エステル基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基等であってもよい。前記ハロゲン化物イオンが、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンであってもよい。
上記構成とすることで、より簡易にカチオン化セルロースを得ることができる。
上記構成においては、前記他のRのうち少なくとも1つが−(CHCHO)Hであってもよい。
上記構成とすることで、カチオン化セルロースの保水性をより高くすることができる。これにより、適用できる条件範囲が広がり、湿潤治療により適した創傷被覆材とすることができる。
本発明に係る止血材および創傷被覆材によれば、より多くの人に対して安全に使用でき、かつ、傷口の治癒を促進することができる。また、汎用されているハイドロゲルに比べて、出血、感染などに対して抑制的に働く事で、安全性が高く、蜂窩織炎、敗血症などの危険も減らすことができる。さらに、キトサンと比べ、甲殻類アレルギーの懸念がない止血剤および創傷被覆材を提供することができる。
本発明の一実施形態におけるカチオン化セルロースの抗菌性を示す培地の画像を示す図である。 本発明の一実施形態におけるカチオン化セルロースの抗菌性を示す別の培地の画像を示す図である。 本発明の一実施形態におけるカチオン化セルロースの抗菌性を示すさらに別の培地の画像を示す図である。
以下に、本発明に係る止血材および創傷被覆材の一実施形態について説明する。本実施形態に係る止血材および創傷被覆材に含有されるカチオン化セルロースの一般式を以下に示す。セルロースを形成するグルコースの2位、4位および6位の水酸基のいずれかが、カチオン化された官能基で修飾されている。
本実施形態において用いるカチオン化セルロースは、市販品として購入可能であり、またグルカンの化学修飾に用いられる一般的な合成法を適用して合成することができる。
(合成例1)
2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニオプロピルセルロースクロリドの合成
セルロース(1.0g)を1N水酸化ナトリウム水溶液20mLに溶解させた溶液に、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(2.3g)を加え、30〜50℃で攪拌する。得られた溶液を4N酢酸で中和した後に、蒸留水を用いて透析膜により分離する。得られた溶液を凍結乾燥することで、目的物を得ることができる。
(合成例2)
6−ヒドロキシエチル−(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニオプロピル)セルロースクロリドの合成
セルロース(2.0g)と酸化エチレンとを公知の条件下で反応させて、ヒドロキシエチルセルロースを合成する。得られたヒドロキシエチルセルロースを1N水酸化ナトリウム水溶液20mLに溶解させた溶液に、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(4.5g)を加え、30〜50℃で攪拌する。得られた溶液を4N酢酸で中和した後に、蒸留水を用いて透析膜により分離する。得られた溶液を凍結乾燥することで、目的物を得ることができる。
上述の合成例と同様の方法で、異なる種類の置換基を有するカチオン化セルロースを合成することができる。用いる溶媒等は、基質の溶解度に応じて、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル等を添加してもよい。反応させるカチオン化剤の当量は、目的とするカチオン化セルロースのカチオン化の度合に応じて適宜調整することができる。
(カチオン化セルロースの抗菌活性確認実験)
本発明に係るカチオン化セルロースに対する細菌の感受性の程度を、ディスク法にて確認した。アズワン サニーフーズ ぺたんチェック25 PT4025の標準寒天培地を用い、3名の医療者の素手に付いている細菌を培養した。その中で活発にコロニーを形成している細菌を滅菌綿棒で採取し、3枚の培地(培地1、培地2、培地3)に均等に塗布した。カチオン化セルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル(花王ポイズ C−60H、C−150L)1gを用い、注射用水4mLを加えて3分攪拌した。得られたゲル化した検体を濾紙に含浸させ、上記培地上においた。37℃で48時間培養を行った後、阻止円の生成を確認した。
抗菌活性の確認実験の結果を図1Aから図1Cに示す。培地1(図1A)、培地2(図1B)、培地3(図1C)のすべてにおいて、カチオン化セルロースゲルを含浸したディスク周囲に阻止円を認めた。各図において、左がポイズ C−60H、右にポイズ C−150Lを含浸した濾紙を使用した結果を示しており、ポイズ C−60H、ポイズ C−150Lの両群は、同等の抗菌性を示している。培地に生えていた細菌は、同定の結果、培地1ではぶどう球菌、バチルス属の混合、培地2ではバチルス属、培地3ではぶどう球菌であった。これにより、カチオン化セルロースが抗菌活性を有することを確認できた。
(カチオン化セルロースの止血性確認実験)
本発明に係るカチオン化セルロースの止血性について、血液凝固測定装置専用カートリッジ(株式会社ジェイ・エム・エス社)を用い、凝固時間を対照物質と比べることで確認した。凝固時間測定用経過時間タイマ「アクテスター」(クエストメディカル社製)専用の血液凝固測定装置専用カートリッジ内に、元々封入されている珪藻土を10本測定して平均重量を求めた。珪藻土の平均重量は、今回使用したロットでは0.015gであったため、同重量のカチオン化セルロース(花王ポイズ C−60H、C−150L)に置換したものを準備した。針管外径0.7〜1.2mm(22〜18G)の注射用針および1ccシリンジを使用して、被験者(今回は発明者)から全血0.7mLを採血した。採血後、ただちに、血液凝固測定装置専用カートリッジに、0.7mL以下の血液を注入した。カートリッジから針を抜く前に、カートリッジの中のエアを0.7mL抜き取った。血液と血液凝固促進剤とを完全に混合した後、カートリッジを装置本体のアクテストチューブホルダにセットして、活性化凝固時間を測定した。
測定結果を表1に示す。有意差検定にはStudent’s t−testを用いた。
上記結果から、カチオン化セルロースは凝固を促進し、止血する作用を有することを確認することができた。また、カチオン化セルロースが、創傷被覆材に汎用されているキトサンと比べて、高い止血性を有していることを確認することができた。
本願発明者は、カチオン化された官能基でセルロースを化学修飾することで、止血剤、および、抗菌機能と止血機能とを有する新たな創傷被覆材を提供できることを見出した。止血機能および抗菌機能が創傷治癒にもたらす利点を以下に述べる。
(止血機能)
受傷直後、創傷部位を止血しなくてはならないことは論を待たない。現在、創傷部位に出血がある場合に用いる創傷被覆材としては、アルギン酸塩を含有するカルトスタット(登録商標)や、キトサンを含有する被覆材等が第一の選択肢とされている。しかしながら、アルギン酸は止血機能がキトサンに比較して弱く(Syota Suzuki,Kazuhiko Shibata,Randomized Trial comparing New Chitosan−Based Bandage with Kaltostat Hemostatic Dressing to Control Bleeding from Hemodialysis Puncture Site,Nephrol.Dial.Transplant.,2013,28(suppl 1),i226−i239.)、キトサンは水分保持能力が低いため、いずれも湿潤治療を行う基剤としては十分でない。米国のヘムコン社が提供しているキトサンを用いた被覆材は、出血箇所に適用すると、キトサンが血液中の赤血球と血小板を引きつけることで、速やかに出血箇所を塞ぎ止血することが知られている。このような機能は、キトサンが条件によってはプラスに荷電することに起因していると考えられる。したがって、受傷早期に用いる被覆材の含有成分として、周りの環境のpHに左右されることなく常にプラスに荷電しているカチオン化セルロースを用いることで、キトサンと比べて止血機能の高い被覆材を提供することができる。
また、湿潤治療に移行した後にも出血するリスクは残っている。従来使用されてきたハイドロゲル、ディオアクティブ(登録商標)などで創傷を被覆すると、睡眠時、意識障害時などに出血した場合、出血に気がつかず、結果として、大量の血液を失う可能性がある。また、密閉された湿潤環境に血腫ができると、血腫内では、免疫による抗菌活動がないため、温かく湿潤し、かつ栄養豊富な血腫の中で黄色ブドウ球菌などが爆発的に増加する。一つのブドウ球菌が26分ごとに分裂し、わずか10時間後には200万個の黄色ブドウ球菌に増加する可能性がある。この莫大な量の黄色ブドウ球菌を代表とする細菌群が、創傷治癒のために集まっているヒトの細胞群を傷害し、創傷治癒に悪影響をもたらす。このため、創傷面に血腫などの異物をなくすことが早期治療への重要な要素である。さらに、出血後に異物や細菌の培地となる血腫をできにくくするためにも、止血機能は創傷治癒における有効な付加機能となる。
(抗菌機能)
細胞分裂時間が短い細菌群は、増殖スピードで生体細胞を圧倒し、創傷治癒を遅延させる。近年、創傷部位に貼った被覆材を頻繁に取り替え、その度に創傷部位の洗浄を行う方法が普及している。これは、創傷部位に被覆材を貼りっぱなしにして被覆材が創傷部位を密封することで、創傷部位に存在する細菌が増殖するのに適度な環境が形成され、かえって創傷部位の治癒を遅らせてしまう、という問題が明らかになってきたためである。
本願発明に係る止血材および創傷被覆材は、上述のような問題を、プラスの荷電を持つカチオン化セルロースを含有させることで解決できる。中性付近での細菌の細胞表面では、リン酸基やカルボキシル基が解離することによってマイナスの電荷を帯びている。この細菌の細胞表面に対して、止血剤が創傷に接触する表面や、創傷被覆材の表面付近に存在する、プラスの電荷を持つカチオン化セルロースが静電気的に吸着することで、効率的に細菌を捉えることができる。さらに、止血剤が創傷に接触する表面や創傷被覆材の表面付近で捉えた細菌を止血材、創傷被覆材の内部に取り込むことで、細菌を創傷部位から除去し、創傷治癒を早めることができる。
したがって、受傷早期に出血を伴う場合、止血するように使用できるほか、止血後、創傷部位を洗浄した後に密封療法を行う際には、本実施形態に係る、抗菌作用を有するカチオン化セルロースを含有する創傷被覆材を用いる方が、抗菌作用を持たない創傷治療薬を貼り続ける従来法よりも、細菌による悪影響を軽減することができる。また、キトサン製剤の使用にあたっては、甲殻類アレルギーを持つ場合には注意が必要となるが、カチオン化セルロースはその懸念が少なく、より多くの人が安全に使用することができる。
また、カチオン化セルロースは水分保持能力が高いことから、創傷部位における余分な水分を取り込むことでゲル化する。これにより、創傷部位における細菌増殖を抑制しつつ、創傷の治癒に重要な各種物質を含む浸出液を創傷の表面に残せる理想的環境を長期にわたって維持することができる。
次に、カチオン化セルロースを含有する止血剤および創傷被覆材の態様について説明する。
本実施形態における止血剤としては、カチオン化セルロースをゲル状にすることができる。これにより、創傷部位に直接、カチオン化セルロースを含有する止血剤を塗布することができる。不整形な創傷であっても、この方法で使用すれば創傷面に確実に接触させることができる。また、塗布したゲルの上をガーゼ、フィルムなどで覆い圧迫することで止血することができる。止血を確認した後、圧迫を解除しそのまま創傷被覆材として使用することも可能である。
本実施形態における創傷被覆材としては、カチオン化セルロースをシート状のフィルムとすることができる。具体的には、いったんカチオン化セルロースを水やアルコールなどの溶媒に溶解してゲル化し、そのゲルから溶媒を強制的に排出させ、フィルム状に成形することができる。このフィルムは、使用目的に応じて厚みや密度等を調整することができる。
創傷被覆材の創傷への接触面には、カチオン化セルロースの単体を、またはカチオン化セルロースと基剤とを混合したものを、フィルム状に成形してもよい。創傷被覆材を皮膚へ接着させる面の接着剤に水溶性のものを使用すれば、乾燥している皮膚にはフィルム中のカチオン化セルロースが接触しない一方で、創傷面では、創傷から出る滲出液のために水溶性の接着剤が溶解することで、カチオン化セルロースを創傷面のみに接触させることができる。接触面の反対面には、水分の蒸散を妨げるフィルム、または、滲出液が多量の場合に適度にその水分を蒸散させる布や不織布などを使用して、補強や性能の付加をすることができる。このようにすることで、乾燥した状態では防水フィルム付きの製剤を、滲出液が多く防水することで剥離する可能性が高い場合には透水性のシート付きの製剤を、それぞれ使い分け、様々な創傷に適した被覆剤を作製することができる。
また、本実施形態における創傷被覆材としては、得られたカチオン化セルロースをゲル状にして、創傷被覆材中に含有させることができる。カチオン化セルロースは、キトサンよりも水分保持能力が高い。したがって、カチオン化セルロースをシート状やゲル状に成形して創傷部位に適用し、吸水性を有するパッドをその上に当てることで、創傷部位から浸出液が多く生じる場合にも、過剰な水分をパッドが吸収し、創傷部位の湿潤環境を治癒に必要な環境として適切に維持することができる。
また、上述したように、カチオン化セルロースは抗菌性を有している。したがって、フィルムやゲルとして創傷部位に直接触れる状況下でも、創傷治癒までの間、より治癒に適した、抗菌環境を維持することができる。浸出液がさらに多い場合に備えて、防水性のフィルムに代えて、通気性を有するフィルムとしてもよい。
上述のような形状とすることで、本実施形態に係る創傷被覆材を使用者が簡便に創傷部位に適用することができる。また、カチオン化セルロースを布や不織布に混合、もしくは吸着させることで、止血用ガーゼとしても使用することができる。
また、本実施形態における創傷被覆材としては、カチオン化セルロースをゲル状にして、創傷部位に塗布した後に、必要に応じて、塗布した部分を透水性、もしくは防水性のシートで覆うことができるものであってもよい。そのような形状とすることで、創傷部位が切り傷、深い褥瘡など複雑な形状である場合にも、当該部位に容易に適用することができる。
さらに、創傷には膨大な滲出液を伴う、または、なかなか止血できないケースも存在する。こうした創傷に対応するために、本実施形態における創傷被覆材としては、カチオン化セルロースに適切な基剤を加える、またはスプレードライ、凍結乾燥などの処理を行うことで、粉末状にすることができる。創傷部位からの出血、浸出液が多い場合には、創傷部位にその粉末を振りかけて覆った後に、ガーゼや防水フィルム、吸水性シート等でその上から覆う。そのような形状とすることで、受傷早期に止血剤として使用しやすく、種々の形状の創傷部位に対して、本実施形態に係る創傷被覆材を高い自由度で適用することができる。
本実施形態によれば、セルロースをカチオン化された官能基で化学修飾し、プラスの電荷を持たせることにより、創傷治癒の妨げになる細菌増殖を抑制し、従来用いられてきたものよりも抗菌性に優れた止血材および創傷被覆材を提供することができる。
また、本実施形態によれば、プラスの電荷を有するカチオン化セルロースを用いることでで、止血作用がより高い創傷被覆材を提供することができる。

Claims (7)

  1. カチオン化セルロースを含有する止血材。
  2. 前記カチオン化セルロースが、式(1):
    (式(1)中、
    のうち少なくとも1つが、−R−N(R)(R)(R)・Xであり、
    他のRが、−H、または−(CHCHO)−Hであり、
    が、C1−6アルキレン、C2−6ヒドロキシアルキレン、−(CHCHO)−、またはこれらの組み合わせであり、
    lが、1または2であり、
    mが、1または2であり、
    が、アニオン性基であり、
    、R、Rが、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、O−C1−6アルキル、Cのヘテロアルキルまたはヘテロアルケニルであって、Yがヘテロ原子であって、a+bが4から6であって、窒素原子で結合する場合には該窒素原子を含む飽和または不飽和の5員環または6員環を形成する)
    である請求項1に記載の止血材。
  3. 前記式(1)における前記少なくとも1つのRが、−CHCHO−CHCH(OH)CH−N(R)(R)(R)・Xであり、R、R、Rがメチル基またはエチル基である請求項2に記載の止血材。
  4. 前記式(1)における前記少なくとも1つのRが、−CHCH(OH)CH(R)(R)(R)・Xであり、R、R、Rがメチル基またはエチル基である請求項2に記載の止血材。
  5. 前記他のRのうち少なくとも1つが−(CHCHO)Hである請求項3または4に記載の止血材。
  6. 請求項1に記載の止血材を成分とする創傷被覆材。
  7. カチオン化セルロースを含有する創傷被覆材。
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