以下の実施形態は、インターホンシステムに関し、より詳細には、インターホン子機及びインターホン親機を備えたインターホンシステムに関する。
(実施形態1)
本実施形態に係るインターホンシステム100は、図1に示すように、インターホン子機1と、第1伝送路61を介してインターホン子機1に接続されるインターホン親機2とを備えている。また、インターホンシステム100は、第2伝送路62を介してインターホン親機2に接続される通信装置3を備えている。インターホン子機1とインターホン親機2とは、第1伝送路61を介して伝送される第1通信信号S1を用いて互いに通信する。インターホン親機2と通信装置3とは、第2伝送路62を介して伝送される第2通信信号S2を用いて互いに通信する。第1通信信号S1の周波数帯域と第2通信信号S2の周波数帯域とは、図2に示すように、互いに重ならない。
ここでいう「周波数帯域」は、ある信号の周波数スペクトルの範囲を意味し、搬送波の変調によって変化する信号の周波数の範囲に相当する。「周波数帯域」は、例えば下限の周波数と上限の周波数との組み合わせ、又は中心周波数と帯域幅との組み合わせで表される。
インターホンシステム100では、第1伝送路61を伝送される第1通信信号S1と、第2伝送路62を伝送される第2通信信号S2とでは、周波数帯域が互いに重ならないように、周波数帯域が振り分けられている。したがって、たとえ第1伝送路61と第2伝送路62とが近接して配線されていても、第1伝送路61と第2伝送路62との間のクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能である。
以下、インターホンシステム100について詳細に説明する。
インターホンシステム100は、集合住宅に用いられる。インターホンシステム100は、図1に示すように、複数のインターホン子機1と、複数のインターホン親機2と、通信装置3と、ロビーインターホン4とを備えている。なお、以下では、説明の便宜上、インターホン子機1を「子機1」と略称し、インターホン親機2を「親機2」と略称することがある。
複数の子機1は、それぞれ複数の住戸10の外玄関に設置されている。複数の親機2は、それぞれ複数の住戸10内に設置されている。通信装置3は、集合住宅の管理室に設置されている。ロビーインターホン4は、集合住宅の共用玄関(ロビー)に設置されている。
複数の子機1は、それぞれ複数の第1伝送路61を介して、複数の親機2に接続されている。複数の親機2は、第2伝送路62を介して、通信装置3に接続されている。第2伝送路62は、幹線8と、複数の分岐器5と、複数の分岐線7とで構成されている。幹線8は、通信装置3に接続されている。複数の分岐線7は、複数の親機2に接続されている。複数の分岐線7は、幹線8から分岐している。複数の分岐器5は、それぞれ複数の分岐線7と幹線8との分岐点に設けられている。つまり、複数の親機2は、それぞれ複数の分岐線7と複数の分岐器5と幹線8とを介して、通信装置3に接続されている。ロビーインターホン4は、共用伝送路9(第3伝送路)を介して、通信装置3に接続されている。第1伝送路61、第2伝送路62(分岐線7及び幹線8)、及び共用伝送路9の各々は、ツイストペア線である。つまり、実際には各伝送路は二線式であるが、以下では、各伝送路を構成する二線(ツイストペア線)を1本と数える(図面上も、1本の線として表す)。
以下、複数の子機1について、図3Aに基づいて説明する。なお、複数の子機1の構成及び機能は同様であるから、以下では、複数の子機1のうち1つの子機1について構成及び機能を説明する。
子機1は、図3Aに示すように、第1制御部11と、第1伝送処理部12と、第1マイクロホン13と、第1スピーカ14と、第1A/D変換器15と、第1D/A変換器16と、第1撮像部17と、第1操作部18とを備えている。
第1制御部11は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)とで構成されている。また、第1制御部11は、第1伝送処理部12及び第1撮像部17を制御するように構成されている。
第1伝送処理部12は、親機2の第3伝送処理部22(図3B参照)との間で、第1伝送路61を介して通信を行うように構成されている。
第1伝送処理部12は、音声信号、映像信号や呼出信号を含む第1通信信号S1を生成するように構成されている。第1伝送処理部12は、生成した第1通信信号S1を、上りの第1通信信号S1として、第1伝送路61を介して第3伝送処理部22へ送信するように構成されている。また、第1伝送処理部12は、第3伝送処理部22から送信された第1通信信号S1を、下りの第1通信信号S1として、第1伝送路61を介して受信するように構成されている。第1伝送処理部12は、受信した下りの第1通信信号S1を復調して音声信号を復元するように構成されている。本実施形態では、変調方式は、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)である。
なお、子機1と親機2との間で伝送される第1通信信号S1については、子機1から親機2に送信される信号が「上り」であり、親機2から子機1に送信される信号が「下り」である。
第1マイクロホン13で集音された音声は、第1マイクロホン13によりアナログの音声信号(電気信号)に変換される。このアナログの音声信号は、第1A/D変換器15によりデジタルの音声信号に変換される。第1A/D変換器15で変換されたデジタルの音声信号は、第1伝送処理部12に入力される。
第1D/A変換器16は、第1伝送処理部12で復元された音声信号(デジタルの音声信号)をアナログの音声信号に変換する。第1D/A変換器16で変換されたアナログの音声信号は第1スピーカ14に入力され、これにより、第1スピーカ14から音声が出力される。
第1撮像部17は、来訪者を撮像するように構成されている。第1撮像部17は、固体撮像素子と、レンズと、信号処理回路とを備えている。固体撮像素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。信号処理回路は、固体撮像素子の出力信号からYUVフォーマットのデジタルの映像信号を生成し、デジタルの映像信号を第1伝送処理部12へ出力するように構成されている。
第1操作部18は、来訪者の操作を受け付ける。第1操作部18は、押ボタンを備えている。第1操作部18は、押ボタンが押されたときに、住戸10内の居住者を呼び出すための呼出信号を第1制御部11へ出力するように構成されている。第1制御部11は、第1操作部18からの呼出信号を、第1伝送処理部12へ出力するように構成されている。
以下、複数の親機2について、図3Bに基づいて説明する。なお、複数の親機2の構成及び機能は同様であるから、以下では、複数の親機2のうち1つの親機2について構成及び機能を説明する。
親機2は、図3Bに示すように、第2制御部20と、第2伝送処理部21と、第3伝送処理部22と、通話処理部23と、第2マイクロホン24と、第2スピーカ25とを備えている。また、親機2は、第2A/D変換器26と、第2D/A変換器27と、映像処理部28と、表示部29と、第2操作部30とを備えている。
第2制御部20は、CPU及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)とで構成されている。また、第2制御部20は、第2伝送処理部21、第3伝送処理部22、通話処理部23及び映像処理部28を制御するように構成されている。
第2伝送処理部21は、通信装置3の第5伝送処理部33(図3C参照)との間で、第2伝送路62を介して通信を行うように構成されている。
第2伝送処理部21は、通話処理部23からの音声信号を含む第2通信信号S2を生成するように構成されている。第2伝送処理部21は、生成した第2通信信号S2を、上りの第2通信信号S2として、第2伝送路62を介して第5伝送処理部33へ送信するように構成されている。また、第2伝送処理部21は、第5伝送処理部33から送信された第2通信信号S2を、下りの第2通信信号S2として、第2伝送路62を介して受信するように構成されている。第2伝送処理部21は、受信した下りの第2通信信号S2を復調して音声信号及び映像信号を復元するように構成されている。
第2伝送処理部21で復元された音声信号(デジタルの音声信号)は、通話処理部23に入力される。第2伝送処理部21で復元された映像信号(デジタルの映像信号)は、映像処理部28に入力される。
なお、本実施形態では、第2伝送処理部21から第5伝送処理部33へ伝送される第2通信信号S2が、親機2から通信装置3へ伝送される上り信号に該当する。また、第5伝送処理部33から第2伝送処理部21へ伝送される第2通信信号S2が、通信装置3から親機2へ伝送される下り信号に該当する。つまり、親機2と通信装置3との間で伝送される第2通信信号S2については、親機2から通信装置3に送信される信号が「上り」であり、通信装置3から親機2に送信される信号が「下り」である。
ところで、第2伝送路62には、親機2と通信装置3との間において、ある特定の周波数帯域の信号を通過させ、この周波数帯域以外の信号を通過させないフィルタが設けられている。本実施形態ではフィルタは、第2伝送路62における複数の分岐器5の各々に設けられている。フィルタは、後述する第1周波数帯域の信号(上り信号)を通過させる第1フィルタ5a(図1参照)と、後述する第2周波数帯域の信号(下り信号)を通過させる第2フィルタ5b(図1参照)とを有している。
第3伝送処理部22は、通話処理部23からの音声信号を含む第1通信信号S1を生成するように構成されている。また、第3伝送処理部22は、生成した第1通信信号S1を、下りの第1通信信号S1として、第1伝送路61を介して、子機1の第1伝送処理部12へ送信するように構成されている。また、第3伝送処理部22は、第1伝送処理部12から送信された第1通信信号S1を、上りの第1通信信号S1として、第1伝送路61を介して受信するように構成されている。第3伝送処理部22は、受信した上りの第1通信信号S1を復調して音声信号及び映像信号を復元するように構成されている。
第3伝送処理部22で復元された音声信号(デジタルの音声信号)は、通話処理部23に入力される。第3伝送処理部22で復元された映像信号(デジタルの映像信号)は、映像処理部28に入力される。
第2マイクロホン24で集音された音声は、第2マイクロホン24により電気信号(アナログの音声信号)に変換される。このアナログの音声信号は、第2A/D変換器26によりデジタルの音声信号に変換される。第2A/D変換器26で変換されたデジタルの音声信号は、通話処理部23に入力される。
第2D/A変換器27は、通話処理部23から入力される音声信号(デジタルの音声信号)をアナログの音声信号に変換する。第2D/A変換器27で変換されたアナログの音声信号は第2スピーカ25に入力され、これにより、第2スピーカ25から音声が出力される。
通話処理部23は、音声スイッチ及びエコーキャンセラを備え、第2伝送処理部21又は第3伝送処理部22からの音声信号と、第2A/D変換器26からの音声信号とを処理(信号処理)するように構成されている。第2A/D変換器26からの音声信号は、通話処理部23で処理された後、通話処理部23から、第2伝送処理部21又は第3伝送処理部22へ出力される。ここで、音声信号は、送信先がロビーインターホン4である場合、第2伝送処理部21へ出力され、送信先が子機1である場合、第3伝送処理部22へ出力される。これにより、親機2では、ハウリング及びエコーを抑制することが可能となり、良好なハンズフリー通話を実現できる。
映像処理部28は、第2伝送処理部21と第3伝送処理部22との少なくとも一方からの映像信号に基づいて、映像を表示部29に表示させるように構成されている。表示部29は、例えば、液晶ディスプレイである。
第2操作部30は、居住者の操作を受け付ける。第2操作部30は、タッチパネル又は複数の押ボタンを有する入力装置を備えている。第2操作部30は、入力装置が操作されたときに、操作に応じた操作信号を、第2制御部20へ出力するように構成されている。
通信装置3は、図3Cに示すように、第3制御部31と、第4伝送処理部32と、第5伝送処理部33とを備えている。
第3制御部31は、CPU及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)とで構成されている。第3制御部31は、第4伝送処理部32及び第5伝送処理部33を制御するように構成されている。第3制御部31のメモリには、データテーブルが記憶されている。データテーブルは、各住戸10の親機2に割り当てられたアドレスと当該住戸10の住戸番号とを対応付けたテーブルである。
第4伝送処理部32は、共用伝送路9を介して、ロビーインターホン4の後述する第6伝送処理部に接続されている。第4伝送処理部32は、第6伝送処理部との間で通信を行うように構成されている。第5伝送処理部33は、第2伝送路62を介して、親機2の第2伝送処理部21に接続されている。
第4伝送処理部32は、ロビーインターホン4から送信された第3通信信号S3を、上りの第3通信信号S3として、共用伝送路9を介して受信するように構成されている。第4伝送処理部32は、受信した上りの第3通信信号S3に含まれた住戸番号、音声信号や映像信号を、第3制御部31へ出力するように構成されている。また、第4伝送処理部32は、第3制御部31からの音声信号を変調して第3通信信号S3を生成するように構成されている。第4伝送処理部32は、生成した第3通信信号S3を、下りの第3通信信号S3として、ロビーインターホン4の第6伝送処理部へ送信するように構成されている。
なお、ロビーインターホン4と通信装置3との間で伝送される第3通信信号S3については、ロビーインターホン4から通信装置3に送信される信号が「上り」であり、通信装置3からロビーインターホン4に送信される信号が「下り」である。
第3制御部31は、第4伝送処理部32から取得した住戸番号に対応付けられたアドレスの親機2を呼び出すように構成されている。例えば、第3制御部31は、該当するアドレスの親機2を呼び出すための呼出信号を、第5伝送処理部33へ出力するように構成されている。また、第3制御部31は、第4伝送処理部32から取得した音声信号や映像信号を、第5伝送処理部33へ出力するように構成されている。
第5伝送処理部33は、第3制御部31からの呼出信号、音声信号や映像信号を含む第2通信信号S2を生成するように構成されている。また、第5伝送処理部33は、生成した下りの第2通信信号S2を、第2伝送路62を介して親機2の第2伝送処理部21へ送信するように構成されている。また、第5伝送処理部33は、第2伝送処理部21から送信された上りの第2通信信号S2を、第2伝送路62を介して受信するように構成されている。第5伝送処理部33は、受信した上りの第2通信信号S2に含まれた音声信号を、第3制御部31へ出力するように構成されている。第3制御部31は、第5伝送処理部33からの音声信号を、第4伝送処理部32へ出力するように構成されている。
ロビーインターホン4は、第4制御部と、第6伝送処理部と、第3マイクロホンと、第3スピーカと、第3A/D変換器と、第3D/A変換器と、第2撮像部と、第3操作部とを備えている。ロビーインターホン4の基本構成は、子機1と同じ構成であるため、ロビーインターホン4についての説明を適宜省略する。
第3操作部は、来訪者の操作を受け付ける。第3操作部は、タッチパネル又は複数の押ボタンを有する入力装置を備えている。第3操作部は、入力装置が操作されたときに、操作に応じた呼出信号を、第4制御部へ出力するように構成されている。この呼出信号は、訪問先の住戸10の番号(住戸番号)を含んでいる。第4制御部は、第3操作部からの呼出信号を、第6伝送処理部へ出力するように構成されている。
第6伝送処理部は、呼出信号を受けた場合、呼出信号に含まれる住戸番号の住戸10の親機2を呼び出すための上りの第3通信信号S3を、共用伝送路9を介して、通信装置3の第4伝送処理部32へ送信するように構成されている。この第3通信信号S3を受信した通信装置3は、呼び出された住戸10の親機2とロビーインターホン4とを接続し、両者間での通信(通話)を中継する。
次に、上述した構成のインターホンシステム100で使用される信号の周波数帯域について説明する。
インターホンシステム100では、第1通信信号S1の周波数帯域と第2通信信号S2の周波数帯域とは、互いに重ならない。第1通信信号S1の周波数帯域は、例えば、図2に示すように、10MHz以上、かつ、17MHz未満の周波数帯域である。第2通信信号S2の周波数帯域は、例えば、2MHz以上、かつ、10MHz未満の周波数帯域である。この例では、第2通信信号S2の周波数帯域は、第1通信信号S1の周波数帯域に比べて、中心周波数の低い周波数帯域である。そのため、第2通信信号S2の周波数帯域の上限の周波数は、第1通信信号S1の周波数帯域の下限の周波数よりも低くなる。
すなわち、インターホンシステム100では、第1伝送路61を伝送される第1通信信号S1と、第2伝送路62を伝送される第2通信信号S2とでは、周波数帯域が互いに重ならないように、周波数帯域が振り分けられている。したがって、たとえ第1伝送路61と第2伝送路62とが近接して配線されていても、第1伝送路61と第2伝送路62との間のクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能である。つまり、インターホンシステム100では、2つの伝送路間でのクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能になる。その結果、インターホンシステム100では、2つの伝送路間で生じるクロストークに起因して、映像や音声が乱れたり、途切れたりすることを抑制可能となる。
なお、第2通信信号S2の周波数帯域は、第1通信信号S1の周波数帯域に比べて、中心周波数の高い周波数帯域であってもよい。この場合、第1通信信号S1の周波数帯域(10MHz以上、かつ、17MHz未満)に対し、第2通信信号S2の周波数帯域は、例えば、17MHz以上、かつ、28MHz未満の周波数帯域であってもよい。
ところで、第2通信信号S2は、「上り」と「下り」とで周波数帯域が異なっていてもよい。この場合、上り信号(上りの第2通信信号S2)の周波数帯域と下り信号(下りの第2通信信号S2)の周波数帯域とは、図4Aに示すように、互いに重ならないことが好ましい。以下、上り信号と下り信号との一方の周波数帯域を「第1周波数帯域」と呼び、他方の周波数帯域を「第2周波数帯域」と呼ぶ。本実施形態では、「第1周波数帯域」は上り信号の周波数帯域であり、「第2周波数帯域」は下り信号の周波数帯域である。
図4A中の「H1」は、第1周波数帯域(つまり、上りの第2通信信号S2の周波数帯域)を表している。図4A中の「H2」は、第2周波数帯域(つまり、下りの第2通信信号S2の周波数帯域)を表している。第1周波数帯域は、第2周波数帯域よりも中心周波数の低い周波数帯域である。第1周波数帯域は、例えば、2MHz以上、かつ、10MHz未満の周波数帯域である。第2周波数帯域は、例えば、17MHz以上、かつ、28MHz未満の周波数帯域である。また、第1通信信号S1の周波数帯域は、第1周波数帯域の上限の周波数(図4Aでは、10MHz)と、第2周波数帯域の下限の周波数(図4Aでは、17MHz)との間の周波数帯域であることが好ましい。これにより、インターホンシステム100では、未使用の周波数帯域(空きの周波数帯域)を減らすことが可能となり、周波数帯域の利用効率を高めることが可能になる。
また、インターホンシステム100では、下り信号の周波数帯域(第2周波数帯域)が、上り信号の周波数帯域(第1周波数帯域)よりも中心周波数の高い周波数帯域である。そのため、親機2と通信装置3との間で伝送される第2通信信号S2については、親機2から通信装置3に送信される上り信号よりも、通信装置3から親機2に送信される下り信号において、高速化を図ることができる。したがって、ロビーインターホン4から通信装置3を通して親機2に送信される映像信号のように比較的データ量の多い信号についても、下り信号に含まれることで、高速に伝送可能となる。
また、第2伝送路62には、親機2と通信装置3との間において、第1周波数帯域及び第2周波数帯域の信号を通過させるフィルタ(第1フィルタ5a及び第2フィルタ5b)が設けられている(図1参照)。第1フィルタ5aは第1周波数帯域の信号(上り信号)を通過させる。第2フィルタ5bは第2周波数帯域の信号(下り信号)を通過させる。これにより、インターホンシステム100では、第2伝送路62を伝送される第2通信信号S2の耐ノイズ性が向上可能である。
ここでは、一例として第1フィルタ5aは、第1周波数帯域の上限の周波数と第2周波数帯域の下限の周波数との間に、カットオフ周波数を有するローパスフィルタである。第2フィルタ5bは、第1周波数帯域の上限の周波数と第2周波数帯域の下限の周波数との間に、カットオフ周波数を有するハイパスフィルタである。この場合に、第1フィルタ5aのカットオフ周波数は、第1周波数帯域の上限の周波数よりも高く設定される。第2フィルタ5bのカットオフ周波数は、第2周波数帯域の下限の周波数よりも低く設定される。さらに、第1フィルタ5aのカットオフ周波数は、第2フィルタ5bのカットオフ周波数よりも低く設定される。そのため、第1周波数帯域の上限の周波数と、第2周波数帯域の下限の周波数との間には、ある程度の帯域幅を持つ未使用の周波数帯域が生じる。本実施形態では、このように生じる未使用の周波数帯域が、第1通信信号S1の周波数帯域に使用されている。
また、ロビーインターホン4と通信装置3との間で共用伝送路9(第3伝送路)を介して伝送される第3通信信号S3は、「上り」と「下り」とで周波数帯域が異なっていてもよい。この場合、上りの第3通信信号S3の周波数帯域と下りの第3通信信号S3の周波数帯域とは、図4Bに示すように、互いに重ならないことが好ましい。以下、上りの第3通信信号S3の周波数帯域を「第3周波数帯域」と呼び、下りの第3通信信号S3の周波数帯域を「第4周波数帯域」と呼ぶ。
図4B中の「H3」は、第3周波数帯域(つまり、上りの第3通信信号S3の周波数帯域)を表している。図4B中の「H4」は、第4周波数帯域(つまり、下りの第3通信信号S3の周波数帯域)を表している。第3周波数帯域は、第4周波数帯域よりも中心周波数の低い周波数帯域である。第3周波数帯域は、例えば、2MHz以上、かつ、14.3MHz未満の周波数帯域である。第4周波数帯域は、例えば、14.3MHz以上、かつ、28MHz未満の周波数帯域である。
ここで、上りの第3通信信号S3の周波数帯域(第3周波数帯域)は、上りの第2通信信号S2(上り信号)の周波数帯域(第1周波数帯域)を含むことが好ましい。また、上りの第3通信信号S3の周波数帯域(第3周波数帯域)は、下りの第2通信信号S2(下り信号)の周波数帯域(第2周波数帯域)を含まないことが好ましい。
一方、下りの第3通信信号S3の周波数帯域(第4周波数帯域)は、下りの第2通信信号S2(下り信号)の周波数帯域(第2周波数帯域)を含むことが好ましい。また、下りの第3通信信号S3の周波数帯域(第4周波数帯域)は、上りの第2通信信号S2(上り信号)の周波数帯域を含まないことが好ましい。
これにより、親機2とロビーインターホン4との間で通信が行われるとき、幹線8を伝送される第2通信信号S2の周波数帯域と、共用伝送路9を伝送される第3通信信号S3の周波数帯域とが、互いに重ならない。すなわち、ロビーインターホン4から親機2に信号が伝送される場合には、第2伝送路62には下りの第2通信信号S2が伝送され、共用伝送路9(第3伝送路)には上りの第3通信信号S3が伝送される。また、親機2からロビーインターホン4に信号が伝送される場合には、第2伝送路62には上りの第2通信信号S2が伝送され、共用伝送路9(第3伝送路)には下りの第3通信信号S3が伝送される。そのため、いずれの場合でも、第2通信信号S2と第3通信信号S3とで周波数帯域は互いに重ならない。その結果、インターホンシステム100では、たとえ幹線8と共用伝送路9とが近接して配線されることがあっても、幹線8と共用伝送路9との間でのクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能である。
また、第3周波数帯域と第4周波数帯域との少なくとも一方は、第1通信信号S1の周波数帯域を含むことが好ましい。これにより、インターホンシステム100では、第1通信信号S1の周波数帯域と重ならないように第3周波数帯域及び第4周波数帯域が設定される場合に比べて、未使用の周波数帯域(空きの周波数帯域)が低減される。その結果、インターホンシステム100では、周波数帯域の利用効率を高めることが可能になる。
以上説明したように、本実施形態のインターホンシステム100は、インターホン子機1と、第1伝送路61を介してインターホン子機1に接続されるインターホン親機2とを備えている。また、インターホンシステム100は、第2伝送路62を介してインターホン親機2に接続される通信装置3を備えている。インターホン子機1とインターホン親機2とは、第1伝送路61を介して伝送される第1通信信号S1を用いて互いに通信する。インターホン親機2と通信装置3とは、第2伝送路62を介して伝送される第2通信信号S2を用いて互いに通信する。第1通信信号S1の周波数帯域と第2通信信号S2の周波数帯域とは、互いに重ならない。
この構成によれば、インターホンシステム100では、第1伝送路61を伝送される第1通信信号S1と、第2伝送路62を伝送される第2通信信号S2とでは、周波数帯域が互いに重ならないように、周波数帯域が振り分けられている。したがって、たとえ第1伝送路61と第2伝送路62とが近接して配線されていても、第1伝送路61と第2伝送路62との間のクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能である。すなわち、インターホンシステム100では、2つの伝送路間でのクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能になる。その結果、インターホンシステム100では、2つの伝送路間のクロストークに起因して、映像や音声が乱れたり、途切れたりすることを抑制可能となる。しかも、インターホンシステム100では、周波数帯域の振り分けによって伝送品質の低下を抑制しているので、2つの伝送路で同時に通信することも可能である。例えば、第2伝送路62を介してロビーインターホン4と親機2とが通信中に、第1伝送路61を介して、親機2が子機1からの呼出信号を含む第1通信信号S1を受けること等が可能になる。
また、本実施形態のように、第2通信信号S2は、インターホン親機2から通信装置3へ伝送される上り信号と、通信装置3からインターホン親機2へ伝送される下り信号とを含むことが好ましい。この場合、上り信号と下り信号との一方の周波数帯域である第1周波数帯域と、上り信号と下り信号との他方の周波数帯域である第2周波数帯域とは、互いに重ならないことが好ましい。この場合、第1周波数帯域は、第2周波数帯域よりも中心周波数の低い周波数帯域であることが好ましい。第1通信信号S1の周波数帯域は、第1周波数帯域の上限の周波数と、第2周波数帯域の下限の周波数との間の周波数帯域であることが好ましい。この構成によれば、インターホンシステム100では、未使用の周波数帯域(空きの周波数帯域)を減らすことが可能となり、周波数帯域の利用効率を高めることが可能になる。すなわち、インターホンシステム100は、上り信号と下り信号との間の周波数帯域を、第1通信信号S1の周波数帯域として利用することで、未使用の周波数帯域を低減できる。ただし、この構成はインターホンシステム100に必須の構成ではなく、上り信号と下り信号とで周波数帯域が重なっていてもよい。
また、この場合、本実施形態のように、第1周波数帯域は上り信号の周波数帯域であり、第2周波数帯域は下り信号の周波数帯域であることが好ましい。この構成によれば、親機2と通信装置3との間で伝送される第2通信信号S2については、親機2から通信装置3に送信される上り信号よりも、通信装置3から親機2に送信される下り信号の方が周波数帯域の中心周波数が高くなる。したがって、上り信号よりも下り信号において、高速化を図ることができる。ただし、この構成はインターホンシステム100に必須の構成ではなく、下り信号よりも上り信号の方において周波数帯域の中心周波数が高くてもよい。
また、この場合、本実施形態のように、第2伝送路62には、インターホン親機2と通信装置3との間において、第1周波数帯域及び第2周波数帯域の信号を通過させるフィルタ(第1フィルタ5a及び第2フィルタ5b)が設けられていることが好ましい。この構成によれば、インターホンシステム100では、第2伝送路62を伝送される第2通信信号S2の耐ノイズ性が向上する。さらに、インターホンシステム100では、第1フィルタ5a及び第2フィルタ5bによって生じる未使用の周波数帯域を、第1通信信号S1の周波数帯域として利用することで、未使用の周波数帯域を有効に利用できる。ただし、この構成はインターホンシステム100に必須の構成ではなく、フィルタは省略されていてもよい。
(変形例)
以下、実施形態1の変形例を列挙する。
実施形態1に係るインターホンシステム100はロビーインターホン4を備えているが、ロビーインターホン4はインターホンシステム100に必須の構成ではなく、インターホンシステム100はロビーインターホン4を備えていなくてもよい。
また、実施形態1では、変調方式として、直交周波数分割多重方式を用いているが、これに限らず、例えば、直接拡散方式(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)等を用いてもよい。
また、インターホンシステム100は、集合住宅に用いられているが、これに限らず、例えば、オフィスビルや病院等、住宅以外の施設に用いられてもよい。
また、第1通信信号S1の周波数帯域は、実施形態1で例示した値(10MHz以上、かつ、17MHz未満)に限らず、第2通信信号S2の周波数帯域と重ならない範囲で、適宜変更可能である。同様に、上りの第2通信信号S2の周波数帯域(第1周波数帯域)、及び下りの第2通信信号S2の周波数帯域(第2周波数帯域)についても、実施形態1で例示した値に限らず、適宜変更可能である。同様に、上りの第3通信信号S3の周波数帯域(第3周波数帯域)、及び下りの第3通信信号S3の周波数帯域(第4周波数帯域)についても、実施形態1で例示した値に限らず、適宜変更可能である。
さらに、第1通信信号S1の周波数帯域と、第1周波数帯域又は第2周波数帯域との間に、空きの周波数帯域、つまりガードバンドが設けられていてもよい。ここでいうガードバンドとは、隣接する周波数帯域を使用する他の通信信号との干渉を防ぐために設けられる未使用の周波数帯域を意味する。同様に、第3周波数帯域と第4周波数帯域との間に、空きの周波数帯域(ガードバンド)が設けられていてもよい。この場合に、第3周波数帯域と第4周波数帯域との間のガードバンドが、第1通信信号S1の周波数帯域であってもよい。
(実施形態2)
以下、本実施形態のインターホンシステム100Aについて、図5を参照して説明する。インターホンシステム100Aの基本構成は、実施形態1のインターホンシステム100と同じである。ただし、インターホンシステム100Aでは、複数の親機2が複数の第2伝送路62a,62bを介して通信装置3に接続されている点等が、インターホンシステム100と相違する。なお、本実施形態では、実施形態1のインターホンシステム100と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を適宜省略する。
通信装置3の第5伝送処理部33には、2系統(2本)の幹線8a,8bが接続されている。2系統のうち一方の幹線8aは、複数の分岐線7及び複数の分岐器5と共に第2伝送路62aを構成する。2系統のうち他方の幹線8bは、複数の分岐線7及び複数の分岐器5と共に第2伝送路62bを構成する。すなわち、インターホンシステム100Aは、複数(ここでは2つ)の第2伝送路62a,62bを備えている。
複数の親機2は、第1の親機2aと、第2の親機2bとを含む。第1の親機2aは、2つの第2伝送路62a,62bのうち一方の第2伝送路62aを介して、通信装置3に接続されている。第2の親機2bは、2つの第2伝送路62a,62bのうち他方の第2伝送路62bを介して、通信装置3に接続されている。図5の例では、インターホンシステム100Aは、第1の親機2aを複数備え、第2の親機2bを複数備えている。つまり、通信装置3には、第2伝送路62aを介して第1の親機2aが複数接続され、第2伝送路62bを介して第2の親機2bが複数接続されている。
ここで、複数の親機2a,2bのうちの一の(第1の)親機2aで使用される第2通信信号S2の周波数帯域と、複数の親機2a,2bのうちの他の(第2の)親機2bで使用される第2通信信号S2の周波数帯域とは、互いに重ならないことが好ましい。つまり、複数の親機2a,2bは、接続されている第2伝送路62a,62bごとに、第2通信信号S2の周波数帯域が異なることが好ましい。以下、第2伝送路62aを伝送される第2通信信号S2の周波数帯域を「第5周波数帯域」と呼び、第2伝送路62bを伝送される第2通信信号S2の周波数帯域を「第6周波数帯域」と呼ぶ。
本実施形態では、第5周波数帯域は、第6周波数帯域よりも中心周波数の低い周波数帯域である。第5周波数帯域(つまり、第2伝送路62aを伝送される第2通信信号S2の周波数帯域)は、例えば、2MHz以上、かつ、6MHz未満の周波数帯域である。第6周波数帯域(つまり、第2伝送路62bを伝送される第2通信信号S2の周波数帯域)は、例えば、6MHz以上、かつ、10MHz未満の周波数帯域である。
これにより、インターホンシステム100Aでは、第5周波数帯域と第6周波数帯域とが重複しないので、異なる第2伝送路62a,62b間でのクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能である。つまり、たとえ複数の幹線8a,8bが互いに近接して配線されることがあっても、複数の第2伝送路62a,62b間でのクロストークに起因した伝送品質の低下が抑制可能である。
ただし、第5周波数帯域及び第6周波数帯域の各々は、上述した値に限らず、適宜変更可能である。また、第5周波数帯域と第6周波数帯域との間に、空きの周波数帯域(ガードバンド)が設けられていてもよい。この場合、インターホンシステム100Aでは、複数の第2伝送路62a,62b間でのクロストークに起因した伝送品質の低下を、より抑制可能になるという利点がある。
以上説明したように、本実施形態のインターホンシステム100Aは、インターホン親機2a,2bを複数備え、複数のインターホン親機2a,2bは、複数の第2伝送路62a,62bを介して通信装置3に接続されている。複数のインターホン親機2a,2bのうちの一のインターホン親機2aで使用される第2通信信号S2の周波数帯域と、複数のインターホン親機2a,2bのうちの他のインターホン親機2bで使用される第2通信信号S2の周波数帯域とは、互いに重ならない。
この構成によれば、インターホンシステム100Aでは、一の第2伝送路62aを伝送される第2通信信号S2の周波数帯域と、他の第2伝送路62bを伝送される第2通信信号S2の周波数帯域とが重複しない。したがって、異なる第2伝送路62a,62b間でのクロストークに起因した伝送品質の低下を抑制可能である。
なお、インターホンシステム100Aは、2系統(2本)の幹線8a,8bを含んでいるが、3系統以上(3本以上)の幹線を含んでいてもよい。すなわち、インターホンシステム100Aは、3つ以上の第2伝送路を備えていてもよい。
以上説明した実施形態(変形例を含む)は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。