JP2017138369A - 像加熱装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱体2の圧接ニップ部とは反対側の面に接触する温度検知素子8を備え、温度検知素子8により温度制御された加熱体2により加熱する構成で、加熱体2の筒状回転体1との摺動面に塗布された潤滑剤9の一部が、筒状回転体1の内周面に付着して前記摺動面から流出して前記筒状回転体1の回転と共に前記摺動面に戻る構成の像加熱装置において、筒状回転体1の内周面に付着して前記摺動面の前記温度検知素子8の設置部位と対応する部位に戻る潤滑剤9の量を、筒状回転体1の回転軸方向の他の部位に戻る潤滑剤9の量よりも部分的に少なくなるように規制する潤滑剤規制手段を設けたことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、加熱体の温度は、加熱体の圧接ニップ部とは反対側の面に設置された温度検知素子により検知され、所定温度に制御されている。
一方、特許文献2では、このようなフィルム加熱型の像加熱装置において、フィルムと加熱体との間に潤滑剤を介在させ、フィルムと加熱体との間の摺動性を確保することが提案されている。
潤滑剤は、フィルム内面に均一に塗布されていることが望ましいが、製造上、加熱体の面上に塗布されることが一般的である。
その結果、加熱体のフィルムの摺動面とは異なる面で温度検知し、温度制御を行う構成では、加熱体に投入する電力が抑制されるため、発生する熱量が低下する。これにより記録材に伝わる熱量も減少するため、トナーが十分溶融されない加熱不良が発生する場合がある。潤滑剤の量を減らせば加熱不良が低減できるが、そうすると、フィルムと加熱体との摩擦が大きくなり、フィルムと記録材の間でスリップが生じるおそれがある。
可撓性の筒状回転体と、該筒状回転体の内面に摺動自在に接触する加熱体と、前記加熱体を保持する保持部材と、前記筒状回転体を介して前記加熱体に当接して圧接ニップ部を形成する加圧部材と、前記加熱体の圧接ニップ部とは反対側の面に接触する温度検知素子と、を備え、前記圧接ニップ部にてトナー像が形成された記録材を挟持搬送し、前記温度検知素子により温度制御された前記加熱体により加熱する構成で、
前記加熱体の前記筒状回転体との摺動面に塗布された潤滑剤の一部が、前記筒状回転体の内周面に付着して前記摺動面から流出して前記筒状回転体の回転と共に前記摺動面に戻る構成の像加熱装置において、
前記摺動面の前記温度検知素子の設置位置対応部に戻る潤滑剤の量を規制する潤滑剤規制手段を設けたことを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、記録材に形成されたトナー像を形成する画像形成部と、上記像加熱装置と、を備えたことを特徴とする。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る像加熱装置、図2はこの像加熱装置を備えた画像形成装置を概念的に示している。
この像加熱装置は、図2に示すように、画像形成部200で記録材P上に形成されたト
ナー像を、加熱定着する定着装置として用いるものである。
すなわち、画像形成部200では、帯電ローラ202によって均一に帯電された感光体ドラム201の表面に、露光装置203によって画像が露光されて静電潜像が形成される。この潜像が現像装置205によってトナー像として顕像化され、トナー像が転写ローラ206によって記録材P上に転写される。
そして、トナー像Tを担持した記録材Pが、不図示の搬送手段により像加熱装置に送り込まれ、トナー像Tが加熱定着される。
次に、像加熱装置について、図1を参照して詳細に説明する。
この像加熱装置は、筒状回転体としての可撓性の定着フィルム1と、定着フィルム1の内面に摺動自在に接触する加熱体としてのヒータ2と、定着フィルム1を介してヒータ2に当接して圧接ニップ部Nを形成する加圧ローラ3と、を備えている。
ヒータ2は保持部材としてのヒータホルダ4に保持され、ヒータ2の圧接ニップ部Nとは反対側の面には、サーミスタ等の温度検知素子8が設定されている。この温度検知素子8はヒータホルダ4に接触してヒータ2の温度を検知するようになっている。トナー像が形成された記録材Pは圧接ニップ部Nにて加圧された状態で挟持搬送され、温度検知素子8により温度制御されたヒータ2により加熱されるようになっている。
ヒータホルダ4は、定着フィルム1の内側に配置され、ヒータ2を保持すると共に、定
着フィルム1と摺動接触する案内部を有している。また、定着フィルム1の内側には、ヒータホルダ4を加圧ローラ3に向けて押圧する加圧ステイ7が設けられている。
本実施例の特徴であるグリス規制手段は定着フィルム1の内面に当接するように設置されている。
本実施例の定着フィルム1は、外径φ18、長手長さ230mmである。基層1aは厚み60μmのポリイミドを使用している。表層1bはPFAのコーティング処理を施して12μmの離型層を設けたものを用いた。
サーミスタ等の温度検知素子8は、ヒータ基板の裏面側に当接しており、温度検知素子8の検知温度に応じて通電発熱抵抗層への通電が制御される。
本実施例におけるヒータ2は、基板の材料としてアルミナを採用し、Ag/Pdの通電発熱抵抗層を設け、ガラスコートによる絶縁保護層を設けたものを用いている。通電発熱抵抗層の抵抗値は15Ωである。また、基板サイズは、記録材搬送方向の幅が5.83mm、長手方向の長さが270mm、厚さは1mmである。温度検知素子8には、サーミスタが使用されており、通紙時には、サーミスタの検知温度が220℃になるように通電を制御している。
本実施形態においては、芯金31は、φ11のアルミ芯金を用い、弾性層32には、断熱性を持たせるため、シリコーンゴムを発泡させたスポンジ状のゴムを3.5mmの厚みで形成し、その上に40μmの厚みの導電のPFAチューブを被覆してある。硬度は45度、外径はφ18であり、弾性層の長手長さは225mmである。不図示の定着モーターが回転することで、加圧ローラ3は回転する。
ヒータホルダ4は断面樋形状の長尺部材で、圧接ニップ部N側の面にヒータ2が保持さ
れる嵌合凹部41を備え、そのヒータ2の上流側と下流側において、定着フィルム1の内周に摺動接触して回転を案内する上流側案内部としての上流側ガイド部42と、下流側案内部である下流側ガイド部43とを備えている。上流側ガイド部42と下流側ガイド43は、ヒータ2と隣接し、ヒータ2の面とて同一面上に位置する平坦面42a、43aと、平坦面42a、43aから立ち上がる湾曲面42b、43bとを有している。ヒータホルダ4は、長手両端部が装置フレームに保持された加圧ステイ7と係合している。
加圧ステイ7は、断面コの字形状の長尺部材で、開放側を下に向けてヒータホルダ4の圧接ニップ部Nと反対側の嵌合凹部44に嵌り込んでいる。加圧ステイ7の長手方向両端部は、加圧手段としての不図示の加圧バネによって加圧され、ヒータホルダ4は、ヒータ2及び定着フィルム1を介して加圧ローラ3に加圧される。
加圧ステイ7は、長手両端に受けた加圧力をヒータホルダ4の長手方向に対して均一に伝えるため、鉄、ステンレス、ジンコート鋼板等の剛性のある材料を使用し、断面形状をコの字型にすることで剛性を高めている。これにより、ヒータホルダ4のたわみを抑えた状態で、加圧ローラ3長手方向に均一な所定の幅の圧接ニップ部N(a−b間)が形成される。
本実施形態において、ヒータホルダ4の材質として液晶ポリマーを用い、加圧ステイ7の材質としては、ジンコート鋼板を用いている。加圧ローラ3に印加される加圧力は13.5kgfで、このとき7mmの圧接ニップ部N幅(a−b間の距離)を有している。
本実施例においては、製品寿命は通紙5万枚とし、基油がPFPE、増ちょう剤がPTFEからなるフッ素グリスを使用している。ヒータ2面上に、長さ210mm、幅5mmの領域に350mg塗布している。
本実施形態1では、定着フィルム1の内周面に付着して摺動部の温度検知素子8の設置部位と対応する部位に戻る潤滑グリス9の量を部分的に規制する潤滑剤規制手段であるグリス規制シート101が設けられている。このグリス規制シート101は、温度検知素子8の設置部位と対応する部位に戻り量を、定着フィルム1の回転軸方向(長手方向)の他の部位に戻る潤滑剤の量よりも部分的に少なくなるように規制するものである。
グリス規制シート101は、ヒータホルダ4とは別部材の規制部材であり、一端がヒータホルダ4に固定され、他端が定着フィルム1の内面に当接している。図示例では、グリス規制シート101の固定端は、ヒータホルダ4の上流側ガイド部42と加圧ステイ7の一方の脚部71との間に挟持固定され、自由端が定着フィルム1の内周面に対して回転方向上流側に向けて延び、先端が回転方向と対向する方向に接触している。接触圧は、グリス規制シート101の撓み変形に応じて弾性復元力によって保持される。
このグリス規制シート101により、定着フィルム1内面に付着した潤滑グリス9は掻き取られる。グリス規制シート101は、ヒータホルダ4の長手方向に対して、温度検知素子8の位置を覆うように設置されている。ヒータホルダ4の長手方向において、グリス規制シート101の中央部が温度検知素子8の位置になるように設置されている。
グリス規制シート101の材質は、ポリイミド等の所定厚みの樹脂製のシート材によって構成される。グリス規制シート101の厚みとしては、0.5mm程度、長手方向の規制幅としては、5〜80mm程度が好適である。5mmより小さいと、潤滑性はよいが、定着性が悪くなる。また、80mmより大きくなると、定着性はよいが、潤滑グリス量が少なくなるのでスリップが生じやすくなる。
ヒータ2面上の潤滑グリス9は、定着フィルム1の回転に伴い、定着フィルム1の内面に付着される。しかし、回転により定着フィルム1内面に付着できる潤滑グリス9の量は少量なため、大部分は、ヒータ2面上に残った状態となる。一方、温度検知素子8設置位置では、定着フィルム1内面に付着した潤滑グリス9がグリス規制シート101によりかき取られるため、定着フィルム1が一周すると、ヒータ2面上の潤滑グリス9が再び付着することができる。
定着フィルム1が回転する度に定着フィルム1に付着するため、温度検知素子8設置位置の潤滑グリス9は他の部分と比べ減少する。ヒータ2面上の潤滑グリス9が少ないと、ヒータ2の熱は定着フィルムに伝わるため、ヒータ2に電力は投入されやすくなる。これにより、定着不良の抑制をすることができる。
以上、摺動部への潤滑剤の戻り量が規制されるので、加熱体との摺動部に滞留する潤滑剤の量を少なくでき、加熱体は高温になりにくくなる。これにより、電力が抑制されることなく、定着不良を抑制することが可能となる。
特に、温度検知素子の設置部位における潤滑剤の戻りを他の部位よりも部分的に減らせば、温度検知素子の設置部位に対応する部分の潤滑剤量が部分的に少なくでき、摺動性を維持しつつ定着不良を抑制することができる。
以上より、組み立て直後などの潤滑グリス9がヒータ2面にある場合において、温度検知素子8設置位置の潤滑グリス9を規制することにより、弊害を発生させることなく、定着不良を抑制することが可能となる。
また、本実施例では、潤滑剤規制手段として、シート状の樹脂を用いたが、これに限定されるものではなく、スポンジや不織布等、耐熱性があり、定着フィルム1内面の潤滑グリス9を掻き取ることができる部材であれば、同様の効果が得られる。
次に、本実施形態1について、グリス規制シート101の規制幅Wを変えて、組み立て直後の定着性及び通紙耐久後のスリップ評価試験を行った。
評価試験は、本実施形態1のグリス規制シート101の規制幅を異ならせた試験例5種類、比較例として2種類用意した。試験例は、規制幅が、3mm(試験例1)、5mm(試験例2)、10mm(試験例3)、80mmの規制幅(試験例4)、150mmの規制幅(試験例5)の5種類である。比較例は、グリス規制シート101が無いものを比較例1、グリス規制シート101が無く、潤滑グリス9の塗布量を50mgにしたものを比較例2とした。
定着性評価方法は、L/L環境(温度15℃、湿度10%)において、ヒータ2への投入電圧120Vとし、レターサイズの普通紙(坪量75g/m2)を170mm/secで100枚搬送させることによって行った。
定着性はトナー画像に剥がれがない場合は○、一枚でもある場合は×とした。また、100枚通紙時のヒータ2に投入した積算電力も合わせて測定した。スリップ評価は、グリス規制シート101による定着フィルム1の摺動性悪化を確認するために行った。
評価方法は、5万枚通紙後の定着装置において、H/H環境(温度30℃、湿度80%)において、レターサイズの普通紙(坪量75g/m2)を170mm/secで10枚搬送させることによって行った。スリップは10枚通紙できた場合は○、ジャムが発生した場合は、×とした。評価結果を表1に示す。
比較例2では、潤滑グリス9の量を減らしているので、定着性の評価はOK(〇)となったが、スリップの評価がNG(×)になった。スリップの評価がNGとなったのは、潤滑グリス9の塗布量が少ないため、通紙耐久によって、定着フィルム1内面から潤滑グリス9が枯渇してしまい、定着フィルム1の摺動性が低下したためである。
これに対して、本発明の試験例では、温度検知素子8の設置位置の潤滑グリス9を規制できているために、すべて、規制しない比較例1に対して、積算電力量が多くなっていることが認められる。
ただ、シート幅が3mmの試験例1では、スリップはOKとなったものの、定着性がNGとなった。これは、グリス規制シート101の幅が狭いため、潤滑グリス9がグリス規制シート101の周囲から回りこんでしまい、十分に潤滑グリス9を規制できなかったためである。
シート幅が150mmの試験例5では、定着性評価はOKとなったものの、スリップ評価はNGとなった。これは、グリス規制シート101の幅が広いために、定着フィルム1内面の潤滑グリス9の掻き取り領域が広く、定着フィルム1の摺動性が低下したためである。
以上の評価試験によれば、グリス規制シート101の幅が、5〜80mmのときに定着性とスリップを満たすことができた。しかし、グリス規制シート101の幅の最適範囲は、定着構成により異なり、トナー像の定着性、定着フィルム1の摺動性を確保できることが必要になる。
以下の各実施形態については、主として実施形態1と異なる点について説明するものとし、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
[実施形態2]
図2には、本発明の実施形態2に係る定着装置の主要部を示している。
この実施形態2は、定着フィルム1の内周面に付着する潤滑剤の摺動部への戻りを規制する潤滑剤規制手段として、グリス規制突起102をヒータホルダ4の案内部としての上流
側ガイド部42に設けたものである。すなわち、グリス規制突起102によって、形状的に、摺動部の温度検知素子8の設置部位と対応する部位に戻る潤滑剤を、定着フィルム1の回転軸方向の他の部位に戻る潤滑剤の量よりも部分的に少なくなるように規制するものである。このグリス規制突起102が、本発明の規制形状部を構成する。
グリス規制突起102は、上流側ガイド部42の温度検知素子8の設置部位に対応する部位を中心に、長手方向に所定幅だけ延びており、定着フィルム1の内面と強く擦れるように設けられている。グリス規制突起102の長手方向の長さが、潤滑グリス9を規制する規制幅Wであり、潤滑グリスの潤滑部への戻りを規制するようになっている。図示例では、上流側ガイド部42の湾曲面42b平坦面42aに移行する下端部に設けられている。
グリス規制突起102は、ヒータホルダ4の外周面に対して所定高さtだけ突出している。この突出高さtは、0.2mm程度が好適である。また、グリス規制突起102の長手方向の規制幅W2としては、5〜100mm程度が好適である。5mmより小さいと、潤滑性はよいが、定着性が悪くなる。また、100mmより大きくなると、定着性はよいが、潤滑グリス量が少なくなるのでスリップが生じやすくなる。
ヒータ2面上の潤滑グリス9は、定着フィルム1の回転に伴い、定着フィルム1の内面に付着し、ヒータ2の摺動面の下流側端部から流出し、定着フィルム1の回転に従ってヒータ2の上流側端部からヒータ2の摺動面に戻る。
本実施形態2では、定着フィルム1が回転すると、ヒータホルダ4の上流側ガイド部42に設けたグリス規制突起102と定着フィルム1の内面は強く擦れるため、定着フィルム1内面の潤滑グリス9は掻きとられる。これにより、ヒータ2への潤滑グリスの戻りが規制され、温度検知素子8の設置位置対応部の潤滑グリス9は他の部分と比べて減少する。ヒータ2の摺動面上の潤滑グリス9が少ないと、ヒータ2の熱は定着フィルム1に伝わるため、ヒータ2に電力は投入されやすくなる。これにより、定着不良の抑制をすることができる。
次に、本実施形態2について、グリス規制突起102の規制幅Wを変えて、実施形態1と同様に、組み立て直後の定着性及び通紙耐久後のスリップ評価試験を行った。
評価試験は、実施形態2のグリス規制突起102の試験例として、5種類、比較例として、上記実施形態1と同じく規制手段の無いものを用意した。試験例は、3mm(試験例6)、5mm(試験例7)、10mm(試験例8、80mm(試験例4)、150mm(試験例5)の5種類である。
評価試験は、実施形態1と同様に、グリス規制突起102の無いものを比較例1、グリス規制突起102の試験例として、グリス規制幅が3mm(試験例6)、5mm(試験例7)、10mm(試験例8)、100mm(試験例9)、150mm(試験例10)とした。
定着性及び通紙耐久後のスリップ評価の評価方法は、実施形態1と同様である。その結果を、表2に示す。
試験例6では、スリップはOKとなったものの、定着性がNGとなった。これは、グリス規制突起102の幅が狭いため、潤滑グリス9がグリス規制突起102の周囲から回りこんでしまい、十分にグリスを規制できなかったためである。
試験例7乃至9では、定着性、スリップともOKとなった。
比較例1と比べ、本実施形態2では、グリス規制突起102によって、温度検知素子8設置位置の潤滑グリス9を規制できているため、積算電力量が多く、定着性がOKとなった。潤滑グリス9を規制することによる弊害であるスリップも本実施例ではOKとなった。これは、潤滑グリス9を規制しているのが、温度検知素子8設置位置周辺に限定しているため、定着フィルム1の摺動性への影響が小さかったためである。
一方、試験例10では、定着性はOKとなったものの、スリップはNGとなった。
これは、グリス規制突起102の幅が広いために定着フィルム1内面の潤滑グリス9の掻き取り領域が広く、定着フィルム1の摺動性が低下したためである。
本実施形態2の構成では、グリス規制突起102の幅は、5mm〜100mmにおいて、定着性とスリップを満たすことができた。
しかし、グリス規制突起102の幅の最適値は、定着構成により異なるため、必ずしも5mm〜100mmにすれば良いわけではなく、温度検知素子8設置位置の潤滑グリス9を規制し、定着フィルム1の摺動性を確保できることが必要になる。
以上より、組み立て直後等の、潤滑グリス9がヒータ2面に多くある場合においても、ヒータホルダ4の上流側にグリス規制突起102を設け、温度検知素子8部の潤滑グリス9を規制することにより、定着不良を抑制することが可能となる。
図3には、本発明の実施形態3に係る定着装置の主要部を示している。
本実施形態3では、製品寿命を通紙10万枚としている。そのため、図4で示すように、ヒータホルダ4の上下流の上流側ガイド部42及び下流側ガイド部43に、定着フィルム1の回転方向に延びる潤滑リブとして、上流側リブ11a及び下流側リブ11bが回転軸方向に所定間隔で複数形成されている。上流側リブ11a及び下流側リブ11bの回転方向の長さは短く、ヒータ2の厚み程度の長さである。上流側リブ11a、下流側リブ1
1bを設置することにより、定着フィルム1とヒータホルダ4の接触面積が減り、かつ、上流側リブ11a、下流側リブ11b間を潤滑グリス9が循環しやすくなるため、摺動性が向上する。これにより製品寿命を通しての摺動性を確保している。
上流側リブ11aは、上流側ガイド部42の平坦面42に移行する湾曲面42の下端部に設けられ、下流側リブ11bは、下流側ガイド部43の湾曲面に移行する平坦面43の下流端部に設けられている。
上流側リブ11a及び下流側リブ11bのヒータホルダ4からのガイド面からの突出高さtは0.2mm、ヒータホルダ4の長手方向の幅が1mmで、長手方向に1mm間隔に設置されている。また、上流側リブ11a及び下流側リブ11bの、定着フィルム1の回転方向の長さは1mm程度である。
このグリス規制リブ103の突出高さtは、上流側リブ11aと同じ高さで、0.2mm程度が好適である。また、グリス規制リブ103の長手方向の規制幅W2は、5mmから100mm程度の範囲とすることが好適である。
次に、本実施形態3の作用について説明する。
ヒータ2の摺動面上の潤滑グリス9は、定着フィルム1の回転に伴い、定着フィルム1の内面に付着し、ヒータ2の摺動面の下流側端部から流出し、定着フィルム1の回転に従ってヒータ2の上流側端部からヒータ2の摺動面に戻る。
本実施形態3では、定着フィルム1が回転すると、ヒータホルダ4の上流側リブ11aを所定数つなげた形状のグリス規制リブ103と、定着フィルム1の内面は強く擦れるため、定着フィルム内面の潤滑グリス9は掻きとられる。これにより、ヒータ2への潤滑グリス9の戻りが規制され、温度検知素子8の設置位置対応部の潤滑グリス9は他の部分と比べ減少する。ヒータ面上の潤滑グリス9が少ないと、ヒータ2の熱は定着フィルム1に伝わるため、ヒータ2に電力は投入されやすくなる。これにより、定着不良の抑制をすることができる。
一方、ヒータ2の上流側リブ11a及び下流側リブ11bが設けられているので、その分だけ、実施形態1,2よりは潤滑性がよい。
次に、本実施形態3について、グリス規制リブ103の規制幅Wを変えて、実施形態1と同様に、組み立て直後の定着性及び通紙耐久後のスリップ評価試験を行った。
評価試験は、実施形態3のグリス規制リブ103の試験例として、規制幅が5種類、比較例3として、本実施形態3のグリス規制リブ103の無い上流側リブ11a及び下流側リブ11bのみの構成について比較した。試験例は、規制幅が3mm(試験例11)、5mm(試験例12)、10mm(試験例13)、100mm(試験例14)、150mm(試験例15)の5種類である。
定着性及び通紙耐久後のスリップ評価の評価方法は、実施形態1と同様である。その結果を、表3に示す。
一方、本実施形態3の試験例では、グリス規制リブ103によって、温度検知素子8の設置位置の潤滑グリス9を規制できているために、規制しない比較例3に対して、積算電力量が多くなっていることが認められる。
試験例11では、スリップはOKとなったものの、定着性がNGとなった。これは、グリス規制リブ103の幅が狭いため、潤滑グリス9がグリス規制リブ103の周囲から回りこんでしまい、十分にグリスを規制できなかったためである。
試験例12乃至14では、定着性、スリップともOKとなった。
これらの試験例では、グリス規制リブ103によって、温度検知素子8の設置位置対応部の潤滑グリス9を規制できているため、積算電力量が多く、定着性がOKとなった。潤滑グリス9を規制することによる弊害であるスリップも本実施例ではOKとなった。
これは、潤滑グリス9を規制しているのが、温度検知素子8設置位置周辺に限定しているため、定着フィルム1の摺動性への影響が小さかったためである。
一方、試験例15では、定着性はOKとなったものの、スリップはNGとなった。これは、グリス規制突起102の幅が広いために、定着フィルム1内面の潤滑グリス9の掻き取り領域が広く、定着フィルム1の摺動性が低下したためである。
本実施形態2の構成では、グリス規制突起102の幅は、5mm〜100mmにおいて、定着性とスリップを満たすことができた。
しかし、グリス規制突起102の幅の最適値は、定着構成により異なるため、必ずしも5mm〜100mmにすれば良いわけではない。定着構成に応じて、温度検知素子8設置位置の潤滑グリス9を規制し、定着フィルム1の摺動性を確保できるように、規制幅が設定される。
以上より、組み立て直後等の、潤滑グリス9がヒータ2面に多くある場合においても、ヒータホルダ4に多数の潤滑リブ11を有する場合でも、上流側にグリス規制リブ103を設け、温度検知素子8部の潤滑グリス9を規制することにより、定着不良を抑制することが可能となる。
図4(A)は、本発明の他の実施形態に係る定着装置の主要部を示している。
この実施形態は、実施形態3のリブに代えて、潤滑溝としての複数の潤滑スリット12を設け、潤滑グリス9の潤滑を図る構成である。すなわち、ヒータホルダ4の上流側ガイド部42及び下流側ガイド部43には、定着フィルム1の回転方向に延びる潤滑溝として、上流側スリット12a及び下流側スリット12bが、回転軸方向に所定間隔で複数形成されている。図示例では、上流側スリット12a及び下流側スリット12bは、上流側ガイド部42及び下流側ガイド部43の平坦面42a,43aに設けられている。
本実施形態では、この上流側スリット12aと下流側スリット12bに対して、図4(B)では、温度検知素子8の設置部に対応する部位に、スリットの無い溝無し部としてグリス規制部104を設けたものである。
また、図4(C)に示す例は、上流側スリット12a及び下流側スリット12bに、回転軸方向の温度検知素子8の設置部と対応する部位を避ける方向に、潤滑グリス9を案内する、傾斜溝としての傾斜スリット105a、105bを設けたものである。上流側の傾斜スリット105aは温度検知素子8を軸方向から挟むように一対設けられ、回転方向下流側に向かうにしたがって、温度検知素子8を中心に、間隔が広がるように傾斜している。この傾斜スリット105aによって、潤滑グリス9は温度検知素子8に向かって広がる方向に案内され、温度検知素子8の設置部と対応する部位のグリス量が少なくなる。
また、下流側スリット105bも温度検知素子8と対応部位を軸方向から挟むように一対設けられ、回転方向下流側に向かうにしたがって、温度検知素子8を中心に、間隔が広がるように傾斜している。この傾斜スリット105bによって、潤滑グリス9は温度検知素子8に向かって広がる方向に案内されるので、やはり、定着フィルム1に付着して流出する量が、温度検知素子8の対応部が少なくなり、一周して摺動面に戻る量も少なくなる。
このように、潤滑溝としての複数の潤滑スリット12を有する場合でも、温度検知素子8の設置部と対応する部位への潤滑グリスの戻りを規制することができ、実施形態3と同様の効果を得ることができる。
尚、グリス規制部104a、104b、傾斜スリット105a、105bについては、ヒータ2に対して上流側と下流側の両方に設けているが、上流側と下流側のいずれか一方だけに設けてもよい。要するに、上流側及び下流側の少なくともいずれか一方に設ければよい。
2 ヒータ(加熱体)
3 加圧ローラ(加圧部材)
4 ヒータホルダ(保持部材)
41 ホルダ本体部、42 上流側ガイド部、43 下流側ガイド部
8 温度検知素子
9 潤滑グリス
11a 潤滑リブ(上流側)、11b 潤滑リブ(下流側)
12a スリット(上流側)、12b スリット(下流側)
101 グリス規制シート(規制部材)
102 グリス規制突起(規制形状部)
103 グリス規制リブ(規制形状部)
104 グリス規制部
N 圧接ニップ部、P 記録材、T トナー像
W 規制幅(グリス規制シート)
W2 規制幅(グリス規制突起)
W3 規制幅(グリス規制リブ)
Claims (9)
- 可撓性の筒状回転体と、該筒状回転体の内面に摺動自在に接触する加熱体と、前記加熱体を保持する保持部材と、前記筒状回転体を介して前記加熱体に当接して圧接ニップ部を形成する加圧部材と、前記加熱体の圧接ニップ部とは反対側の面に接触する温度検知素子と、を備え、前記圧接ニップ部にてトナー像が形成された記録材を挟持搬送し、前記温度検知素子により温度制御された前記加熱体により加熱する構成で、
前記加熱体の前記筒状回転体との摺動面に塗布された潤滑剤の一部が、前記筒状回転体の内周面に付着して前記摺動面から流出して前記筒状回転体の回転と共に前記摺動面に戻る構成の像加熱装置において、
前記摺動面の前記温度検知素子の設置位置対応部に戻る潤滑剤の量を部分的に規制する潤滑剤規制手段を設けたことを特徴とする像加熱装置。 - 前記潤滑剤規制手段は、一端が前記保持部材に固定され、他端が前記筒状回転体の内周面に当接する規制部材によって構成される請求項1に記載の像加熱装置。
- 前記保持部材は、前記加熱体の上流側と下流側において、前記筒状回転体の内周に摺動接触して回転を案内する案内部を有し、
前記潤滑剤規制手段は、前記保持部材の案内部に設けられ、形状的に、前記摺動部の前記温度検知素子の設置部位と対応する部位に戻る潤滑剤の量を、前記筒状回転体の回転軸方向の他の部位に戻る潤滑剤の量よりも部分的に少なくなるように規制する規制形状部によって構成される請求項1に記載の像加熱装置。 - 前記規制形状部は、前記上流側と下流側の少なくともいずれか一方の案内部に設けられる請求項3に記載の像加熱装置。
- 前記規制形状部は、前記案内部から部分的に突出する突起によって構成される請求項3又は4に記載の像加熱装置。
- 前記保持部材の案内部には、前記筒状回転体の回転方向に延びるリブが回転軸方向に所定間隔で複数形成されており、
前記規制形状部は、前記筒状回転体の回転軸方向の前記温度検知素子の設置部と対応する部位において、隣接するリブがつながった形状の幅広の規制リブによって構成されている請求項3又は4に記載の像加熱装置。 - 前記保持部材の案内部には、前記筒状回転体の回転方向に延びる潤滑溝が回転軸方向に所定間隔で複数形成されており、
前記規制形状部は、前記筒状回転体の回転軸方向の前記温度検知素子の設置部と対応する部位において、潤滑溝の無い溝無し部によって構成されている請求項3又は4に記載の像加熱装置。 - 前記保持部材の上流側案内部には、前記筒状回転体の回転方向に延びる潤滑溝が回転軸方向に所定間隔で複数形成されており、
前記規制形状部は、前記筒状回転体の回転軸方向の前記温度検知素子の設置部と対応する部位を避ける方向に潤滑剤を案内する、回転方向に対して斜めに傾けた傾斜溝である請求項3又は4に記載の像加熱装置。 - 記録材に形成されたトナー像を形成する画像形成部と、記録材のトナー像を加熱する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の像加熱装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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