先ず、図1〜図8を用いて本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。
<画像形成装置>
先ず、図1を用いて本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置の構成について説明する。図1に示す画像形成装置100は、給送カセット20内に収容された記録材Pが給送ローラ21により繰り出され、図示しない分離手段との協働により一枚ずつ給送される。その後、一旦停止したレジストローラ23のニップ部に記録材Pの先端部が当接し、該記録材Pの腰の力により斜行が補正される。
その後、記録材Pは、所定のタイミングでレジストローラ23により挟持搬送されて像担持体となる感光ドラム101と、転写手段となる転写ローラ105との転写ニップ部Ntに搬送される。
記録材Pにトナー画像を形成する画像形成手段となる画像形成部24には、図1の反時計回り方向に回転する感光ドラム101が設けられている。該感光ドラム101の周囲には、該感光ドラム101の表面を一様に帯電する帯電手段となる帯電ローラ102が設けられている。更に、帯電ローラ102により一様に帯電された感光ドラム101の表面に画像情報に応じてレーザ光103aを照射する像露光手段となるレーザスキャナ103が設けられている。
レーザスキャナ103から出射されたレーザ光103aにより露光された感光ドラム101の表面には画像情報に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム101の表面に形成された静電潜像に対して現像手段となる現像装置104により現像剤(トナー)が供給されて静電潜像がトナー画像として現像される。
感光ドラム101の表面に形成されたトナー画像が転写ニップ部Ntに到達するタイミングに合わせてレジストローラ23により挟持搬送される記録材Pの先端部が転写ニップ部Ntに到達する。
感光ドラム101の表面に形成されたトナー画像は、転写ローラ105により転写ニップ部Ntを通過する記録材Pに転写される。その後、分離手段となる分離針106に電圧が印加されると、該分離針106から放電電流が流れて記録材Pが感光ドラム101の表面から分離される。
転写後に感光ドラム101の表面に残留した残トナーは、クリーニング手段となるクリーニング装置107に設けられたクリーニングブレードにより掻き取られて回収される。
未定着のトナー画像tが形成された記録材Pは、図2に示す定着装置108に搬送される。そして、該定着装置108に設けられた定着ユニット1の筒状フィルムとなる定着フィルム4と、加圧部材となる加圧ローラ2との圧接部となる定着ニップ部Nに搬送される。
そして、該定着ニップ部Nにおいて記録材P上に形成された未定着のトナー画像tが加熱及び加圧されることにより該未定着のトナー画像tが熱溶融して記録材P上に熱定着される。トナー画像が熱定着された記録材Pは、図示しない排出ローラ等により画像形成装置100の外に排出される。
<定着装置>
図2は、本実施形態の定着装置108の構成を示す断面説明図である。尚、以下の説明において、定着装置108を構成する各部材の長手方向とは、図2の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向に対して直交する方向(図2の紙面手前から奥側に向かう方向)である。
図2に示すように、定着ユニット1は、加熱体となる板状のヒータ3を支持する支持部材となるホルダ5を有する。ヒータ3は、絶縁体からなるセラミック基板3a上に抵抗発熱体3bが印刷して形成され、該抵抗発熱体3bの表面とセラミック基板3aの表面の全体に亘って保護層としてガラスコート層3cが被覆されている。
定着ユニット1は、更に、ホルダ5を補強する加圧ステー6を有する。ホルダ5には、温度ヒューズ7が設けられている。更に、ヒータ3、ホルダ5、加圧ステー6の外周を摺動回転する可撓性を有する筒状フィルムとなる定着フィルム4を有する。定着フィルム4の内周面は、ヒータ3に摺動可能に設けられている。
定着ユニット1に対向して加圧部材となる加圧ローラ2が設けられている。定着ユニット1と、加圧ローラ2とは、ヒータ3が定着フィルム4を介して加圧ローラ2に対向する向きで画像形成装置100の左右の側板間に略並行に設けられている。
<筒状フィルム>
筒状フィルムとなる定着フィルム4は、基層と、該基層の外側に形成された弾性層と、該弾性層の外側に形成された離型層とを有した筒状の可撓性部材により構成される。本実施形態の定着フィルム4は、内径直径が18mmであり、基層として厚さが60μmのポリイミドの基材を使用した。また、弾性層として厚さが約150μmのシリコーンゴムを使用した。また、離型層として厚さが15μmのPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂チューブを用いている。
<支持部材>
支持部材となるホルダ5は、断面が略半円状の樋型形状で、剛性、耐熱性、断熱性を有して構成される。本実施形態のホルダ5は、液晶ポリマーにより形成されている。ホルダ5は、該ホルダ5に外嵌した定着フィルム4の内周面を支持すると共に、ヒータ3及び該ヒータ3に接触して配置された熱伝導部材としての金属板15を支持する。
ホルダ5は、定着ユニット1を長手方向の両端部で加圧した際の撓みにより定着ニップ部Nの形状が長手方向に沿った位置によって不均一になることを防止する。そのためにホルダ5の長手方向の中央部の厚さが端部よりも厚いクラウン形状を有して構成される。本実施形態では、ホルダ5の長手方向の端部に対して中央部の厚さが600μm厚い形状で構成される。
<加熱体>
加熱体となるヒータ3は、アルミナ、窒化アルミニウム等のセラミック基板3a上に銀パラジウム合金等による抵抗発熱体3bをスクリーン印刷等によって形成し、更に、抵抗発熱体3b上に銀等による電気接点部が形成されている。
本実施形態では、二本の抵抗発熱体3bが直列に接続され、該抵抗発熱体3bの電気抵抗値は18Ωである。抵抗発熱体3bの上には保護層としてガラスコート層3cを形成する。これにより抵抗発熱体3bを保護すると共に、定着フィルム4の内周面との摺動性を向上させている。
ヒータ3は、ホルダ5に形成された溝部5c内に嵌入される。そして、溝部5cの底面からなる支持面5dに対向して定着フィルム4の母線方向(軸方向)に沿って設けられている。本実施形態のヒータ3のセラミック基板3aは、直方体形状で構成され、長手方向の長さが270mmである。また、短手方向の長さは6.0mmである。また、厚さは1.0mmである。
本実施形態のヒータ3のセラミック基板3aの材質はアルミナである。また、抵抗発熱体3bの長手方向の長さは220mmである。尚、定着フィルム4の内周面には、耐熱性を有する潤滑剤としてのグリスが塗布されている。これによりヒータ3と、ホルダ5と、定着フィルム4の内周面との摺動性を向上させている。
図2及び図3に示すように、ヒータ3と、ホルダ5に形成された溝部5cの底面からなる支持面5dとの間には、熱伝導部材となる金属板15が設けられている。ヒータ3の表面に面接触して配置された金属板15の高い熱伝導性能により該ヒータ3のセラミック基板3a内での熱分布が均一になる。
本実施形態では、金属板15の材質としてアルミニウムを用いている。金属板15の厚さは、約0.3mmである。また、ヒータ3と接触する金属板15の長手方向(図3(a)の左右方向)の長さは、ヒータ3の抵抗発熱体3bの長手方向(図3(a)の左右方向)の長さと略同じ220mmに設定している。
ヒータ3の抵抗発熱体3bの長手方向の長さよりも金属板15の長手方向の長さが長い場合、該抵抗発熱体3bで発生した熱が該金属板15を介して外側に逃げてしまう。これにより記録材P上の未定着のトナー画像tの端部における熱供給が低下することにより定着不良が発生する。本実施形態では、これを防止する長さに適宜設定されている。
金属板15のヒータ3側とは反対側(図2の上側)の面には、ホルダ5に設けられた安全素子としての温度ヒューズ7や図示しない温度検知手段となるサーミスタ等が配置されている。
安全素子としては、温度ヒューズ7やサーモスイッチ等が設けられる。これによりヒータ3が所定温度に達した時点で該ヒータ3への通電を停止し、安全性を担保する。本実施形態では、安全素子として、動作温度が230℃の温度ヒューズ7を用いている。
次に、図3を用いてホルダ5に形成された溝部5c内に配置される金属板15及びヒータ3の保持方法について説明する。図3(a)はホルダ5と、金属板15と、ヒータ3とを図2の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向と直交する方向に切断した断面説明図である。
図3(b)は、説明の都合上、ヒータ3を取り外した状態で、図3(a)の下方から見た平面説明図である。図3(c)は、図3(b)に示す金属板15の表面上にヒータ3を取り付けた状態を示す図である。尚、説明の都合上、図3(a)〜(c)には、安全素子となる温度ヒューズ7やサーミスタ等は図示していない。
本実施形態では、金属板15の長手方向(図3(a)の左右方向)の端部に3.0mmの長さの断面L字状に折曲された曲げ部15aが設けられている。該曲げ部15aは、ホルダ5に設けられた取り付け穴5aに差し込まれている。該取り付け穴5aによって金属板15のホルダ5に対する図2の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向における上下流方向の位置を決めている。これにより熱伝導部材となる金属板15は、支持部材となるホルダ5によって記録材Pの搬送方向に対する位置が規制される。
尚、本実施形態では、高熱伝導性を有する金属板15の材質としてアルミニウムを用いた。他に、銅等の金属板15やグラファイトシート等、ヒータ3のセラミック基板3aよりも高い熱伝導率を有する各種の部材を用いることができる。
ヒータ3の表面と面接触する金属板15が摺擦を受けた際に該金属板15の表面が滑らかな方が局所的に圧力が大きい箇所が減る。これにより金属板15から削れ粉が発生し難くなる。そのため金属板15の表面粗さは小さい方が望ましい。本実施形態では、表面粗さのJIS規格であるJIS B 0601(1994)・JIS B 0031(1994)における金属板15の表面の平均粗さRaを2.0μm以下に設定している。
また、熱伝導部材となる金属板15の図3(b)の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向(図3(b)の上下方向)の幅は、加熱体となるヒータ3の図3(c)の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向(図3(c)の上下方向)の幅以下に設定される。
ヒータ3と金属板15とが微小に擦れた場合、ヒータ3の短手方向(図3(c)の上下方向)のエッジ部が金属板15の表面に接触していると、そこに圧力が集中するため金属板15の表面の削れが発生し易くなる。
本実施形態では、ヒータ3の短手方向(図3(c)の上下方向)の幅が6.0mmである。これに対して、ヒータ3が図2の左右方向にそれぞれ0.3mm動いた場合を考慮する。その場合でもヒータ3の短手方向(図3(c)の上下方向)のエッジ部と金属板15の表面とが接触しないよう設定される。例えば、金属板15の短手方向(図3(b)の上下方向)の幅を5.0mmに設定している。
ヒータ3は、長手方向(図3(a)の左右方向)の両端部がそれぞれホルダ5の長手方向(図3(a)の左右方向)の両端部に対して図4(a)に示す給電コネクタ16と、図4(b)に示すクリップ17とにより保持されている。
図3(c)に示すように、支持部材となるホルダ5の長手方向(図3(c)の左右方向)の両端部で、図3(c)の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向下流側には、一対の規制部5bが突出して設けられている。一対の規制部5bは、加熱体となるヒータ3の記録材Pの搬送方向下流への移動を規制する。
これによりヒータ3の長手方向(図3(a)の左右方向)の端部は以下の通り移動が規制される。図3(c)に示すように、ホルダ5の長手方向の両端部で図2の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向下流側に一対の規制部5bが設けられている。この一対の規制部5bによって該記録材Pの搬送方向下流側への移動が規制される。
これによりヒータ3の動きがある程度規制される。これによりヒータ3の不必要な記録材Pの搬送方向への移動を抑制することが出来る。更に、図2の時計回り方向に回転する定着フィルム4の内周面との間の摩擦力によってヒータ3が図2の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向に力を受ける。その場合でも該ヒータ3と金属板15との摺擦を低減させることができる。
ヒータ3の長手方向の中央部においては、図2及び図3(c)に示すように、記録材Pの搬送方向における上下流方向にそれぞれヒータ3の端面と、ホルダ5の溝部5cの壁面との間に0.3mmの隙間22が設けられている。これによりヒータ3の熱膨張や加圧ローラ2との間で記録材Pを加圧したり離間したときにヒータ3に撓みが発生した場合に該ヒータ3に不必要な応力がかかることを防止することができる。
次に、図4を用いて給電コネクタ16及びクリップ17の構成について説明する。本実施形態では、給電コネクタ16及びクリップ17を用いて、ヒータ3の定着フィルム4の母線方向(軸方向)の両端部がそれぞれホルダ5の長手方向の両端部にそれぞれ支持される。
図4(a)に示すように、給電コネクタ16は、断面コ字形状の樹脂で形成されたハウジング部16aと、導電性を有するコンタクト端子16bとを有する。ハウジング部16aは、ヒータ3とホルダ5とを外側から挟持する。これによりヒータ3の定着フィルム4の母線方向(軸方向)の端部がホルダ5に対してヒータ3の厚さ方向(図4(a)の上下方向)に移動しないように規制する。
更に、図4(a)に示すコンタクト端子16bは、弾性的に所定の接触圧でヒータ3に設けられた電気接点部と接触して電気的に接続する。該コンタクト端子16bは、電気ケーブルからなる束線16cに電気的に接続されている。束線16cは、図示しない商用電源及びトライアック(半導体スイッチング素子)に接続されている。本実施形態のコンタクト端子16bはハウジング部16aに一体的に設けられる。尚、ハウジング部16aと、コンタクト端子16bとは別体で構成しても良い。
図4(b)に示すように、クリップ17は、断面コ字形状の金属板で構成される。クリップ17によりヒータ3とホルダ5とを外側から弾性的に挟持する。これによりヒータ3の定着フィルム4の母線方向(軸方向)の端部がホルダ5に対して該ヒータ3の厚さ方向(図4(b)の上下方向)に移動しないように規制する。
図4(a),(b)に示す給電コネクタ16及びクリップ17は、ヒータ3の長手方向両端部(図3(a)の左右端部)がホルダ5に対して定着フィルム4の厚さ方向(図2の上下方向)に移動しないよう規制する。給電コネクタ16及びクリップ17は、ヒータ3の摺動面に平行な方向(図4(a),(b)の左右方向)には移動可能に構成されている。
ただし、ある程度ではあるが、給電コネクタ16及びクリップ17の弾性による加圧力によって、ヒータ3の動きが規制され、これにより、ヒータ3が金属板15に対して相対的に動くことを抑制できる。
<加圧ステー>
加圧ステー6は、図2に示すように、断面U字形状で構成されている。加圧ステー6は、定着フィルム4の母線方向(軸方向)に長尺状に構成されている。加圧ステー6により定着ユニット1の曲げ剛性を高めることができる。本実施形態の加圧ステー6は、板厚が1.6mmのステンレス鋼を曲げ加工して形成されている。
<加圧部材>
定着フィルム4の外周面と圧接部となる定着ニップ部Nを形成する加圧部材となる加圧ローラ2は、図2に示すように、回転軸となる芯金2aと、該芯金2aの外側に形成した弾性層2bと、該弾性層2bの外側に形成した離型層2cとを有する。弾性層2bの材質としては、所定の弾性力を発揮するシリコーンゴムやフッ素ゴム等が用いられる。
離型層2cの材質としては、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が適用出来る。更に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Polytetrafluoroethylene)、またはFEP(テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体)等が用いられる。
本実施形態の加圧ローラ2は、外径直径が11mmのステンレス(SUS)の芯金2aの外周上にシリコーンゴムからなる厚さが3.5mmの弾性層2bを形成した。更に、該弾性層2bの外周上に厚さが40μmのPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブ層を設けた。
尚、本実施形態の加圧ローラ2の製品硬度は、ASKER−C硬度計で9.8Nの加重において52°に設定している。これにより定着フィルム4の外周面との間で定着ニップ部Nが確保でき、耐久性が向上する。また、加圧ローラ2の軸方向の中央の外径に比べて端部の外径を150μm大きく設定している。これにより定着ニップ部Nを通過する記録材Pにシワが発生するのを防止することができる。
定着装置108の定着動作時には、加圧ローラ2の芯金2aに設けられた図示しない駆動ギアに対して図示しない駆動源から回転力が伝達される。これにより加圧ローラ2が図2の反時計回り方向に所定の周速度で回転駆動される。
加圧ローラ2が図2の反時計回り方向に回転する。これに伴って、該加圧ローラ2と、定着ユニット1の定着フィルム4との間に形成された定着ニップ部Nにおいて以下の通りである。加圧ローラ2の表面と、定着フィルム4の外周面との間で働く摩擦力により該定着フィルム4に回転力が作用する。
これにより定着フィルム4の内周面がヒータ3の表面に接触摺動しながら該定着フィルム4が加圧ローラ2の回転に従動してホルダ5及び加圧ステー6の外周を図2の時計回り方向に回転する。
定着フィルム4が図2の時計回り方向に回転する際に、ヒータ3に設けられた抵抗発熱体3bに対して通電がなされ、該ヒータ3が所定の定着温度に到達した状態で定着ニップ部Nに未定着のトナー画像tを担持した記録材Pが導入される。
未定着のトナー画像tを担持した記録材Pは、定着ニップ部Nにおいて、定着フィルム4と加圧ローラ2とにより狭持搬送される過程で加熱及び加圧されて未定着のトナー画像tが熱溶融して記録材Pに熱定着される。
定着装置108の定着ニップ部Nを通過した記録材Pは、定着フィルム4の外周面から曲率分離して排出され、図示しない排出ローラにより画像形成装置100の外に排出される。
<加圧装置>
次に、図5及び図6を用いて定着装置108に設けられる加圧装置26の構成について説明する。図5(a)は、本実施形態の加圧装置26を定着ユニット1の上向から見た平面説明図である。図5(b)は、本実施形態の加圧装置26を定着ユニット1の長手方向側から見た断面説明図である。尚、図5及び図6には図示していないが定着ユニット1の長手方向の反対側にも図5(a),(b)と対称的に同様に構成される加圧装置26が配置されている。
本実施形態の加圧装置26は、図5(a),(b)に示すように、側板8と、フランジ9と、第一の加圧手段となる第一加圧バネ10と、第一加圧板11とを有する。更に、第二の加圧手段となる第二加圧バネ12と、第二加圧板13と、圧力緩和手段となるカム14とを有して構成される。
第一の加圧手段となる第一加圧バネ10と、第二の加圧手段となる第二加圧バネ12とは以下の通りである。それぞれ第一、第二加圧板11,13を介して定着ユニット1の長手方向の両端部に設けられた一対のフランジ9を図5(b)の下方に押し下げる。これにより定着フィルム4の外周面と加圧ローラ2の表面とをそれぞれ所定の加圧力で圧接する。
側板8は、フランジ9を介して定着ユニット1を固定する。更に、側板8は、加圧ローラ2を回転可能に軸支する図示しない軸受部を保持して加圧ローラ2を支持する。
更に、側板8は固定部8aを有する。固定部8aには貫通穴が設けられている。図5(a)に示す第一加圧板11と、第二加圧板13のそれぞれの回動中心となる一端部に設けられた係止部11b,13bが固定部8aの貫通穴内に回動可能に挿通されて係止される。
更に、側板8は、断面L字形状に折曲された曲げ部8bが設けられている。曲げ部8bは、第一加圧板11と、第二加圧板13のそれぞれの他端部に設けられたバネ受け部11a,13aにそれぞれの一端部が当接して係合する圧縮コイルバネからなる第一加圧バネ10と、第二加圧バネ12のそれぞれの他端部が係止される。
本実施形態の側板8は、新日鐵住金株式会社製の板厚が1.0mmの電気亜鉛メッキ鋼板「ジンクライト(登録商標)」をプレス加工により所望の形状に加工したものを用いた。
定着ユニット1の長手方向の両端部に設けられた一対のフランジ9は、図2に示す加圧ステー6の長手方向の両端部を保持する。図5(a)に示すフランジ9の両側面には、図5(b)の上下方向に一対の溝部9aが設けられている。該一対の溝部9a内に側板8に設けたコ字形状の溝部8cの縁部を嵌合して図5(b)の上下方向に摺動自在に係合している。
図5(a)に示す第一加圧板11と、第二加圧板13のそれぞれの他端部に設けられたバネ受け部11a,13aに当接して第一加圧バネ10と、第二加圧バネ12が係合する。該第一加圧バネ10と、第二加圧バネ12のそれぞれの伸長力により作用する第一、第二加圧力F1,F2を係止部11b,13bをそれぞれ回動中心とする第一加圧板11と、第二加圧板13に作用させる。本実施形態のフランジ9の材料としては、液晶ポリマーを用いている。
第一加圧板11と、第二加圧板13のそれぞれの下面に一対のフランジ9の当接部9bが当接する。一対のフランジ9を介して該フランジ9が固定された加圧ステー6、該加圧ステー6に固定されたホルダ5、該ホルダ5の溝部5c内に支持されたヒータ3を介して定着フィルム4の外周面を加圧ローラ2の表面に圧接する。第一加圧バネ10と、第二加圧バネ12のそれぞれの伸長力により作用する第一、第二加圧力F1,F2を作用させる。これにより定着フィルム4と加圧ローラ2との間に定着ニップ部Nが形成される。
図5(a)に示すように、第一加圧板11は、長手方向(図5(a)の左右方向)の一端部に設けられた係止部11bが側板8の固定部8aに形成さた貫通穴に揺動可能に挿通して係止される。第一加圧板11の長手方向(図5(a)の左右方向)の他端部にバネ受け部11aが設けられる。
本実施形態の第一加圧板11は、側板8と同様に新日鐵住金株式会社製の板厚が1.0mmの電気亜鉛メッキ鋼板「ジンクライト(登録商標)」をプレス加工することによって製造される。
図5(a)に示すように、第二加圧板13は、第一加圧板11と平行に該第一加圧板11よりも外側に設置される。第二加圧板13は、第一加圧板11と同様に長手方向(図5(a)の左右方向)の一端部に設けられた係止部13bが側板8の固定部8aに形成さた貫通穴に揺動可能に挿通して係止される。第二加圧板13の長手方向(図5(a)の左右方向)の他端部にバネ受け部13aが設けられる。
側板8の固定部8aには、第一、第二加圧板11,13のそれぞれの係止部11b,13bに対応して貫通穴が設けられている。この貫通穴内に係止部11b,13bが揺動可能に挿通されて係止される。
第一加圧バネ10は、圧縮コイルバネであり、図5(a),(b)に示すように、第一加圧板11のバネ受け部11aと、側板8の曲げ部8bとの間に圧縮した状態で挿入される。これにより第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に図5(b)の下向きに第一加圧力F1を作用させる。
本実施形態の第一加圧バネ10は、力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に図6(a)の下向きに第一加圧力F1が作用している状態の長さは30mmである。また、第一加圧バネ10のバネ定数k1は4.45N/mmである。
また、第二加圧バネ12も第一加圧バネ10と同様の圧縮コイルバネである。図5(a),(b)に示すように、第二加圧板13のバネ受け部13aと、側板8の曲げ部8bとの間に圧縮した状態で挿入される。これにより第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に図6(a)の下向きに第二加圧力F2を作用させる。
本実施形態の第二加圧バネ12は、力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、第二加圧バネ12のバネ定数k2は0.45N/mmである。第二加圧バネ12の使用高さについては、図5(b)に示すカム14の回転位置によって異なる。第二加圧バネ12の使用高さは、概ね29.0mm〜30mm程度である。
図5(b)に示すカム14は、図示しない駆動源により回転駆動される。これにより図6(a),(b)に示すように、第一加圧板11の下面に対してカム14のカム面14aが当接及び離間を繰り返す。
これにより図6(a)に示すように、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1が第一加圧板11を介して定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9に作用する第一の加圧状態になる。
また、図6(b)に示すように、第一加圧板11がカム14のカム面14aによって押し上げられる。すると、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1は第一加圧板11を介して定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9に対して作用しない。そして、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F2のみが第二加圧板13を介して定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9に作用する第二の加圧状態になる。
このとき、図6(b)に示すように、第一加圧板11がカム14のカム面14aによって押し上げられて第一の加圧手段となる第一加圧バネ10による定着フィルム4の外周面と加圧ローラ2の表面との圧接力を解除する。その状態において、第二の加圧手段となる第二加圧バネ12により加熱体となるヒータ3と熱伝導部材となる金属板15との間に第一加圧バネ10による加圧力よりも小さな加圧力を発生させる。
第二の加圧手段となる第二加圧バネ12は、定着フィルム4の外周面と加圧ローラ2の表面との間に形成される定着ニップ部Nの記録材Pの搬送方向と直交する方向における幅全域において以下の通りである。加熱体となるヒータ3と熱伝導部材となる金属板15との間に圧接力を発生させる。
そして、図6(a)に示す第一加圧バネ10と第二加圧バネ12のそれぞれの伸長力が作用する第一の加圧状態と、図6(b)に示す第一加圧バネ10の伸長力が作用せず、第二加圧バネ12の伸長力だけが作用する第二の加圧状態とが交互に繰り返される。
図6(b)に示す第一加圧バネ10の伸長力が作用しない第二の加圧状態では以下の通りである。第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に作用する第二加圧力F2のみが該第二加圧板13を介して定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9に作用する。
図6(a),(b)に示すカム14のカム面14aの形状としては、該カム14の回転時に徐々に第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に作用する第一加圧力F1を増減させるような形状が望ましい。該第一加圧板11に作用する第一加圧力F1が急激に変化する。すると、加圧したときの振動が第一加圧バネ10、第一加圧板11、フランジ9を介して定着ユニット1に伝達され、該定着ユニット1に設けられた図2に示すヒータ3と、金属板15とが摺擦する可能性がある。
これを防止するために第一加圧板11に作用する第一加圧力F1が急激に変化しないようにカム14のカム面14aの形状は、該カム14の回転時に第一加圧バネ10の伸長力からなる第一加圧力F1が第一加圧板11に徐々に作用する形状に設定される。
本実施形態では、第一加圧板11を付勢する第一加圧バネ10の他に第二加圧板13を付勢する第二加圧バネ12を設ける。これにより第一加圧バネ10により第一加圧板11を介してフランジ9を図6(b)の下方に付勢する第一加圧力F1よりも小さな第二加圧力F2で第二加圧バネ12により第二加圧板13を介してフランジ9を図6(b)の下方に付勢することができる。
また、第二加圧バネ12のバネ定数k2を適宜変更する。これにより所望の第二加圧力F2を安定して得ることができる。
本実施形態では、フランジ9を図6(b)の下方に軽圧状態で安定して付勢するために第二加圧バネ12を用いた。他に、圧力緩和手段となるカム14のカム面14aの形状を適宜調整する。これにより第一加圧板11を付勢する第一加圧バネ10だけでも加圧ローラ2の弾性層2bの弾性による復元力との協働によりフランジ9を図6(b)の下方に軽圧状態で安定して付勢することもできる。
その場合、構成部品の寸法公差や組立寸法の公差(組立公差)等のばらつきによってフランジ9を図6(b)の下方に付勢する加圧力が大きく変動する。このため構成部品の寸法公差や組立公差を厳しく設定する必要がある。
<加圧動作>
次に、図6を用いて加圧装置26による加圧動作について説明する。図6(a)に示す第一の加圧状態において、第一加圧板11の係止部11bは、側板8の固定部8aに形成された貫通穴内に回動可能に挿通して係止される。該第一加圧板11のバネ受け部11aと、側板8の曲げ部8bとの間に挿入された第一加圧バネ10の伸長力からなる第一加圧力F1は図6(a)の下方向に作用する。
これにより第一加圧板11は側板8の固定部8aに設けられた貫通穴を中心に図6(a)の反時計回り方向に付勢される。これにより定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bに第一加圧板11の下面が当接して該一対のフランジ9を図6(a)の下方向に押圧する。
第一加圧バネ10に力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に図6(a)の下向きに第一加圧力F1が作用している状態の長さ(使用高さ)は30mmである。また、第一加圧バネ10のバネ定数k1は4.45N/mmである。これにより第一加圧バネ10の伸長力が第一加圧板11のバネ受け部11aに作用する第一加圧力F1は、44.5N(=(40mm−30mm)×4.45N/mm)となる。
また、第二加圧バネ12に力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に図6(a)の下向きに第二加圧力F2が作用している状態の長さ(使用高さ)は30mmである。また、第二加圧バネ12のバネ定数k2は0.45N/mmである。これにより第二加圧バネ12の伸長力が第二加圧板13のバネ受け部13aに作用する第二加圧力F2は、4.5N(=(40mm−30mm)×0.45N/mm)となる。
第一加圧板11及び第二加圧板13は、定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bに該第一加圧板11及び第二加圧板13のそれぞれの下面が当接する。そして、該一対のフランジ9を図6(a)の下方向に加圧する第一加圧力F1及び第二加圧力F2を作用させる。
このとき、フランジ9が第一加圧板11及び第二加圧板13の下面に接触する点は以下の通りである。側板8の固定部8aに設けられた貫通穴に挿通して回動可能に係止されるそれぞれの係止部11b,13bと、それぞれのバネ受け部11a,13aとのそれぞれの中点になるように構成している。
これにより各第一加圧板11及び第二加圧板13のそれぞれのバネ受け部11a,13aを力点とする。各第一加圧板11及び第二加圧板13のそれぞれの下面が当接するフランジ9の当接部9bを作用点とする。各第一加圧板11及び第二加圧板13のそれぞれの回動中心となる係止部11b,13bを支点とする。
すると、支点(係止部11b,13b)から力点(バネ受け部11a,13a)までのレバー長と、支点(係止部11b,13b)から作用点(当接部9b)までのレバー長との比であるレバー比は2:1となる。
これによりフランジ9の当接部9b(作用点)には、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1の2倍の力が作用する。更に、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F2の2倍の力が作用する。これらの力を合計した図6(a)の矢印で示す98N(=(44.5N+4.5N)×2)の加圧力F3が作用する。
定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bにそれぞれ図6(a)の矢印で示す98Nの加圧力F3が作用する。このため定着ユニット1には、合計で、196N(=98N×2)の加圧力が作用する。
本実施形態では、図6(a)に示す第一の加圧状態では、第一加圧バネ10による第一加圧力F1と、第二加圧バネ12による第二加圧力F2とが作用する。このような第一の加圧状態における定着ニップ部Nの記録材Pの搬送方向(図6(a)の左右方向)の幅は、該定着ニップ部Nの長手方向の中央で約7mm、長手方向の端部で約7.5mm程度に設定される。
定着ニップ部Nの長手方向の中央は、加圧ローラ2の弾性層2bの弾性力により図6(a)の上方向に約0.5mm(=7.5mm−7mm)程度浮き上がる。
次に、図6(b)に示すように、カム14が回転軸14bを中心に図6(a)に示す回転位置から所定方向に180°回転する。すると、該カム14のカム面14aが第一加圧板11の下面に当接摺動して該第一加圧板11を押し上げて側板8の固定部8aに設けられた貫通穴に挿通して回動可能に係止される係止部11bを中心に該第一加圧板11を図6(b)の時計回り方向に回動する。
これにより第一加圧バネ10が第一加圧板11を図6(b)の下方向に押圧しても該第一加圧板11の下面がカム14の長径部のカム面14aに突き当たる。これにより第一加圧板11の下面が一対のフランジ9の当接部9bから離間する。これにより第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1がフランジ9に作用しない第二の加圧状態となる。
図6(b)に示す第二の加圧状態では、カム14のカム面14aは、第二加圧板13の下面には接触しない位置に配置されている。このため第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F4が第二加圧板13に作用し、該第二加圧板13の下面が一対のフランジ9の当接部9bに当接して該フランジ9を図6(b)の下方向に押圧する。
図6(b)に示す第二の加圧状態では、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1がフランジ9に作用しない。一方、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F4は第二加圧板13を介してフランジ9に作用する。これにより一対のフランジ9を図6(b)の下方向に押圧する加圧力は、図6(a)に示す第一の加圧状態よりも減少する。
これにより加圧ローラ2の弾性層2bの弾性力によって一対のフランジ9が図6(b)の上方向に押し戻される。本実施形態では、第二加圧板13がフランジ9の当接部9bの位置において0.5mm程度、バネ受け部13aの位置において1.0mm程度だけ図6(a)に示す第一の加圧状態よりも図6(b)の上方向に押し上げられる。これにより第二加圧バネ12の使用高さは、図6(a)に示す第一の加圧状態の使用高さ(30mm)から29.0mmに変化する。
本実施形態では、第二加圧バネ12に力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、図6(b)に示す第二の加圧状態では、第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に図6(b)の下向きに第二加圧力F4が作用している状態の長さ(使用高さ)は29.0mmである。
また、第二加圧バネ12のバネ定数k2は0.45N/mmである。これにより図6(b)に示す第二の加圧状態では、第二加圧バネ12の伸長力が第二加圧板13のバネ受け部13aに作用する第二加圧力F4は、4.95N(=(40mm−29mm)×0.45N/mm)となる。
これにより第二加圧板13のバネ受け部13aを力点、第二加圧板13の下面が当接するフランジ9の当接部9bを作用点、第二加圧板13の回動中心となる係止部13bを支点とする。すると、支点(係止部13b)から力点(バネ受け部13a)までのレバー長と、支点(係止部13b)から作用点(当接部9b)までのレバー長との比であるレバー比は2:1となる。
これによりフランジ9の当接部9b(作用点)には、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F4の2倍の力となる図6(b)の矢印で示す9.9N(=4.95N×2)の加圧力F5が作用する。
定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bにそれぞれ図6(b)の矢印で示す9.9Nの加圧力F5が作用する。このため定着ユニット1には、合計で、19.8N(=9.9N×2)の加圧力が作用する。
尚、図6(b)に示す第二の加圧状態では、定着ユニット1を図6(b)の下向きに押圧する加圧力は、9.8N〜49Nの範囲が望ましい。定着ユニット1を図6(b)の下向きに押圧する加圧力が大きすぎると、定着ニップ部Nに記録材Pが挟持された状態でジャムした場合のジャム処理時に該記録材Pを引き抜くときの引き抜き力が大きくなってしまう。これによりジャム処理した記録材Pに破れが発生する場合がある。
また、図6(b)に示す第二の加圧状態で、定着ユニット1を図6(b)の下向きに押圧する加圧力が小さすぎると、定着ニップ部Nの長手方向の全域に亘って安定した軽圧状態が得られない場合がある。特に、ホルダ5がクラウン形状をしている場合は、定着ユニット1の長手方向の端部で加圧ローラ2からの加圧力が掛からない領域が発生する。ここで、クラウン形状とは、該ホルダ5の長手方向に沿って端部の外径よりも中央部の外径が大きくなる形状である。
本実施形態では、図6(a)に示す第一の加圧状態において、定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bを図6(a)の下方向に付勢する加圧力F3は以下の通りである。第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に作用する第一加圧力F1と、第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に作用する第二加圧力F2との合力となる。
一方、図6(b)に示す第二の加圧状態において、定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bを図6(b)の下方向に付勢する加圧力F5は以下の通りである。第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に作用する第二加圧力F4のみとなる。これにより図6(b)に示す第二の加圧状態では安定した軽圧状態が実現できる。
<作用効果>
ここで、図6(b)に示す第二の加圧状態において、第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に第二加圧力F4が作用している状態における該第二加圧力F4の最大値と最小値とについて考慮する。
第二加圧板13のバネ受け部13aが第二加圧バネ12に接触する位置のばらつきは、図2に示すヒータ3の厚さ(図2の上下方向の寸法)のばらつきにより発生する。更に、ホルダ5の溝部5cの底面からなる支持面5dが設けられた部位の厚さ(図2の上下方向の寸法)のばらつきにより発生する。更に、加圧ステー6の形状のばらつきにより発生する。更に、図6(b)に示すフランジ9の形状のばらつき、第二加圧板13の加工精度による構成部品のばらつき等によって発生する。
これらの要因により第二加圧板13のバネ受け部13aが第二加圧バネ12に接触する位置のばらつきは、±0.5mm程度の公差(最大値と最小値との差)となる。これにより第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に作用する第二加圧力F4に±5%程度のばらつきが存在する。また、第二加圧バネ12自体の公差である±5%を加えると、最大で±10%程度のばらつきが生じる可能性がある。
第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に作用する第二加圧力F4が最低となる組み合わせで、定着ユニット1と、加圧ローラ2との間に隙間ができていないか観察した。そのとき、定着ユニット1と加圧ローラ2とは、該加圧ローラ2の長手方向の全域に亘って接触を保っており、隙間は見られなかった。
これは、加圧ローラ2の長手方向の全域に亘って該加圧ローラ2が定着フィルム4を介してヒータ3及び金属板15に加圧力を付与していることを示している。これにより加圧ローラ2の長手方向の全域に亘ってヒータ3と金属板15との間の摺擦を抑制する効果が期待できる。
尚、定着ユニット1と加圧ローラ2との定着ニップ部Nの記録材Pの搬送方向における接触幅は、加圧ローラ2の長手方向の中央で約4mm、長手方向の端部で約3mmであった。
図2に示すように、ヒータ3の記録材Pの搬送方向上下流には、該ヒータ3の取り付け性、及び各部材の熱膨張時や変形時の逃げ代としてヒータ3の長手方向の中央においては、記録材Pの搬送方向上下流に各0.3mmの隙間22が設けてある。
これによりヒータ3の熱膨張や加圧及び離間時の撓み発生時に該ヒータ3に不必要な応力がかかることを防止している。この隙間22によりヒータ3が記録材Pの搬送方向に最大で±0.3mmの範囲で移動可能である。その場合、ヒータ3は金属板15と摺擦し、これが繰り返されることによって、不具合が生じる可能性がある。
特に、加圧ローラ2の回転駆動時には、図7(a)に示すように、定着ニップ部Nにおいて、加圧ローラ2と定着フィルム4の外周面との間で働く摩擦力により定着フィルム4に回転力が作用する。このとき、ヒータ3もまた定着フィルム4の内周面との間で働く摩擦力によって記録材Pの搬送方向下流側(図7(a)の左側)に力を受ける。
図3(c)に示すように、ヒータ3の長手方向の端部は、ホルダ5の長手方向の端部に設けられた規制部5bに突き当たる。このためヒータ3の長手方向の端部は、図3(c)の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向下流には移動しない。しかし、ヒータ3の長手方向の中央は、ホルダ5の長手方向の中央に規制部5bが設けられていない。このためヒータ3の長手方向の中央は、図3(c)の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向下流側に撓む。そして、ヒータ3の剛性と、定着フィルム4の内周面との間で働く摩擦力とが釣り合った位置で安定する。
また、図7(a)に示すように、定着フィルム4の回転軌道も僅かながら記録材Pの搬送方向下流側(図7(a)の左側)にシフトするような挙動を示す。このとき、ヒータ3と金属板15とが僅かながら摺擦する。
この状態で加圧ローラ2の回転が停止しても、図7(a)に示す状態はある程度保持される。ここで、図7(b)に示すように、定着ユニット1と加圧ローラ2との離間動作を行なう。すると、ヒータ3及び定着フィルム4が完全に自由になる。これによりヒータ3が図2に示す元の位置に戻ろうとする。ヒータ3の位置が元に戻った状態で、再び加圧ローラ2を定着ユニット1に対して加圧して回転駆動する動作を繰り返す。これによりヒータ3と金属板15との摺擦が繰り返される。
本実施形態では、図6(b)に示すように、定着ユニット1と加圧ローラ2とを完全に離間させずに第二の加圧状態に保つ。これにより図2に示す定着フィルム4と、ヒータ3と、金属板15と、ホルダ5との間にそれぞれ第二加圧バネ12の伸長力により第二加圧板13に作用する第二加圧力F4が付与された状態で保たれる。
これにより図7(c)に示すように、ヒータ3と定着フィルム4とが完全に自由にならず、図2に示すような元の状態に戻り難くなる。この場合、再び、図6(a)に示す第一の加圧状態にして加圧ローラ2の回転駆動を行なうときに、ヒータ3の移動距離が減少することで、ヒータ3と金属板15との摺擦が軽減される。
<耐久試験>
本実施形態の定着装置108を用いて、図6(a)に示す第一の加圧状態と、図6(b)に示す第二の加圧状態とを交互に繰り返しながら記録材Pが定着ニップ部Nを通過する耐久試験を行なった。
1分間に20枚のレターサイズの記録材Pが定着装置108の定着ニップ部Nを通過可能な画像形成装置100を用いて耐久試験を行なった。記録材Pとしては、レターサイズで秤量が75g/m2の「Xerox Business 4200紙」を用いて定着装置108の定着ニップ部Nを通過させた。
半日に100枚、一日に200枚程度の記録材Pが定着装置108の定着ニップ部Nを通過することを想定した。そして、記録材Pが定着装置108の定着ニップ部Nを100枚通過する毎に図6(a)に示す第一の加圧状態から図6(b)に示す第二の加圧状態に移行する。その後、図6(b)に示す第二の加圧状態から図6(a)に示す第一の加圧状態に戻す。この動作を交互に繰り返した。
このとき、記録材Pが定着装置108の定着ニップ部Nを通過する前の初期の加圧ローラ2の芯金2a上の回転負荷トルクを測定したところ、32.34N・cm(3.3kgf・cm)であった。そして、5万枚の記録材Pが定着装置108の定着ニップ部Nを通過した時点において、同様に加圧ローラ2の芯金2a上の回転負荷トルクを測定したところ、36.26N・cm(3.7kgf・cm)であった。
このとき、特に異常は見られなかった。また、大きな画像不良も発生しなかった。定着装置108を分解してみたところ、ヒータ3の表面やホルダ5の表面や定着フィルム4の内周面等にも特に異常は見られなかった。
[比較例]
図8は、比較例の定着装置108の加圧装置26の構成を示す断面説明図である。図8に示す比較例の加圧装置26では、図5(a)及び図6(b)に示した第二加圧バネ12と第二加圧板13は存在せず、第一加圧バネ10と第一加圧板11のみを有する構成とした。
図8に示す比較例の第一加圧バネ10は、該第一加圧バネ10に力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に図8の下向きに第一加圧力F1が作用している状態の長さ(使用高さ)は30mmである。また、第一加圧バネ10のバネ定数k1は4.9N/mmである。
これにより第一加圧バネ10の伸長力が第一加圧板11のバネ受け部11aに作用する第一加圧力F1は、49N(=(40mm−30mm)×4.9N/mm)となる。
フランジ9の当接部9b(作用点)には、前述した第1実施形態と同様に、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1の2倍の力(98N)が作用する。定着ユニット1の軸方向の両端部に設けられた一対のフランジ9の当接部9bにそれぞれ98Nの力が作用する。このため定着ユニット1には、合計で、196N(=98N×2)の加圧力が作用する。
回転するカム14のカム面14aによって第一加圧板11が図8の上方に押し上げられる。その際には、フランジ9の公差上、定着ユニット1が加圧ローラ2に最も近づく構成を取った場合を考慮する。その場合においてもフランジ9の当接部9bに対する第一加圧板11からの力は全く作用しないようにカム14のカム面14aの形状を調整した。
このとき、フランジ9を図8の下方に押圧するものは無い状態、即ち、定着ユニット1と加圧ローラ2とが離間した状態となる。
このとき、定着ユニット1と加圧ローラ2との間に隙間ができるか否かを観察したところ、加圧ローラ2の長手方向の端部において、定着ユニット1と加圧ローラ2との間に隙間が見られた。これは、定着ユニット1の内部に設けられるホルダ5がクラウン形状で構成されている。このため定着ユニット1の長手方向の中央部が端部よりも加圧ローラ2側に突出している。これにより定着ユニット1の長手方向の端部が加圧ローラ2に対して浮いた状態であった。
次に、図8に示す比較例の定着装置108を用いて、前記第1実施形態と同様に記録材Pが定着ニップ部Nを通過する耐久試験を行なった。記録材Pが定着ニップ部Nを通過する前の初期の加圧ローラ2の芯金2a上の回転負荷トルクは32.34N・cm(3.3kgf・cm)で前記第1実施形態と略同じであった。
約1万枚程度の記録材Pが定着ニップ部Nを通過すると、記録材P上に定着されたトナー画像上に縦スジ状の光沢ムラが2本〜3本発生していた。更に、記録材Pが定着ニップ部Nを通過する耐久試験を継続した。そのとき、記録材Pが定着ニップ部Nを通過する前の初期から5万枚の記録材Pが定着ニップ部Nを通過した時点で加圧ローラ2の芯金2a上の回転負荷トルクを測定すると、約46.06N・cm(約4.7kgf・cm)であった。
また、定着装置108を分解してみたところ、ヒータ3の表面と、ホルダ5が定着フィルム4の内周面と接触する部分に黒色の固着物が見られた。これは、金属板15とヒータ3とが摺擦することによって発生した金属の削れ粉がヒータ3の熱によって酸化し、潤滑剤となるグリスと混ざることによって、固形物状となって、ヒータ3の表面と、ホルダ5の表面に付着したものと考えられる。これにより定着フィルム4の摺動抵抗が増加し、加圧ローラ2の回転負荷トルクが上昇したと考えられる。
本実施形態の定着装置108においては、図6(a)に示す第一の加圧状態よりも加圧力の低い図6(b)に示す第二の加圧状態を有する。これにより金属板15とヒータ3との間の摺擦を最低限に抑える。これにより金属板15とヒータ3とが摺擦することによって発生した金属の削れ粉の発生を低減し、画像不良や加圧ローラ2の回転負荷トルクの上昇を抑制することが可能となった。
本実施形態によれば、加熱体となるヒータ3に接触して設置された熱伝導部材となる金属板15を備えた定着装置108における定着動作時の加圧やジャム処理時の離間動作の繰り返しによるヒータ3と金属板15との間の摺擦を抑制することができる。これにより金属板15の削れの発生を低減し、画像不良や加圧ローラ2の回転負荷トルクの上昇を抑制することができる。
次に、図9及び図10を用いて本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置の第2実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号、或いは符号が異なっても同一の部材名を付して説明を省略する。
前記第1実施形態の加圧装置26では、図5(a)及び図6(b)に示すように、第一加圧バネ10と第一加圧板11と、第二加圧バネ12と第二加圧板13とを設けて構成した。本実施形態では、図9に示すように、第一加圧板11のバネ受け部11aと、側板8の曲げ部8bとの間に第一加圧バネ10が係止される。更に、フランジ9の当接部9bに設けられた溝部9cの底面9c1に一端部が係止された第二加圧バネ12の他端部が第一加圧板11の下面に当接している。
<加圧装置>
図9を用いて、本実施形態の定着装置108に設けられる加圧装置26の構成について説明する。図9は、本実施形態の加圧装置26を定着ユニット1の長手方向の端部側から見た断面説明図である。本実施形態の加圧装置26は、側板8、第一加圧板11、フランジ9、第一の加圧手段となる第一加圧バネ10、第二の加圧手段となる第二加圧バネ12、カム14等を有して構成される。
側板8は、定着ユニット1の長手方向の両端部に設けられた一対のフランジ9を介して定着ユニット1を固定する。更に、側板8は、加圧ローラ2の回転軸となる芯金2aを回転可能に軸支する図示しない軸受部を保持して該加圧ローラ2の固定も行なう。
更に、側板8は、第一加圧板11の長手方向の一端部からなる係止部11bを回動可能に挿通して係止する貫通穴を形成した固定部8aを有する。更に、第一加圧板11の長手方向の他端部に設けられたバネ受け部11aと、一端部がバネ受け部11aに係止された第一加圧バネ10の他端部が当接する曲げ部8bとを有する。
第一加圧板11は、長手方向(図9の左右方向)の一端部に設けられた係止部11bが固定部8aに形成された貫通穴内に回動可能に挿通されて係止されている。第一加圧板11の長手方向の他端部に設けられたバネ受け部11aに第一加圧バネ10の一端部が係止される。
前記第1実施形態では、図5(a)及び図6(b)に示すように、複数の第一、第二加圧板11,13を用いていたのに対し、本実施形態では、単一の第一加圧板11のみを用いて構成される。
一対のフランジ9は、図2に示す加圧ステー6の長手方向の両端部を保持し、該一対のフランジ9の両端部にそれぞれ設けられた一対の溝部9aに対して側板8に設けられた溝部8cの縁部が摺動可能に嵌入される。
本実施形態のフランジ9の当接部9bの位置には、溝部9cが設けられている。該溝部9c内には第二加圧バネ12が嵌入されている。圧縮コイルバネからなる第一加圧バネ10の伸長力からなる第一加圧力F1が第一加圧板11に作用する。第一加圧板11の下面がフランジ9の当接部9bに当接して該フランジ9を図10(a)の下方向に付勢する。
そして、図2に示すように、フランジ9が固定された加圧ステー6、該加圧ステー6が固定されたホルダ5、該ホルダ5の溝部5c内に支持されたヒータ3を介して定着フィルム4を加圧ローラ2に対して加圧する。これにより定着フィルム4の外周面と加圧ローラ2の表面との間に定着ニップ部Nが形成される。
第一加圧力F1は第一加圧板11の下面に一端部が当接した第二加圧バネ12にも作用する。第二の加圧手段となる第二加圧バネ12の加圧力は、第一の加圧手段となる第一加圧バネ10の加圧力の内力として構成される。ここで、内力とは、物体の内部で働いている力のことで物体の移動には関係しない力である。
圧縮コイルバネからなる第一加圧バネ10は、第一加圧板11のバネ受け部11aと、側板8の曲げ部8bとの間に圧縮挿入される。これにより第一加圧板11に第一加圧力F1を作用させる。
本実施形態の第一加圧バネ10は、該第一加圧バネ10に力が作用しない状態での自然長は40mmである。また、第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に図10(a)の矢印A方向で示す下向きに第一加圧力F1が作用している状態の長さ(使用高さ)は30mmである。また、第一加圧バネ10のバネ定数k1は4.9N/mmである。これにより第一加圧バネ10の伸長力が第一加圧板11のバネ受け部11aに作用する第一加圧力F1は、49N(=(40mm−30mm)×4.9N/mm)となる。
第二加圧バネ12も第一加圧バネ10と同様に圧縮コイルバネである。該第二加圧バネ12が第一加圧板11の下面とフランジ9に形成される溝部9cの底面9c1との間に挿入される。これにより図10(a)の下方向に第二加圧力F2を作用させる。
カム14は、図示しない駆動源により回転駆動される。これによりカム14のカム面14aが第一加圧板11の下面に対して当接と離間とを繰り返す。これにより図10(a)に示すように、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1が第一加圧板11を介してフランジ9に作用する第一の加圧状態がある。
更に、図10(b)に示すように、第一加圧板11の下面がカム14のカム面14aによって押し上げられる。これにより第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1がフランジ9に対して作用しない。更に、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F2だけが作用する第二の加圧状態がある。このような図10(a)に示す第一の加圧状態と、図10(b)に示す第二の加圧状態とが交互に得られるように構成されている。
尚、図示はしていないものの定着ユニット1の長手方向の反対側にも図9に示す加圧装置26と同様に構成された加圧装置26が設けられている。
<加圧動作>
次に、図10を用いて本実施形態の加圧装置26による加圧動作について説明する。図10(a)において、第一加圧板11の長手方向の一端部に設けられた係止部11bは、側板8の固定部8aに形成された貫通穴内に回動可能に挿通されて係止される。
第一加圧板11の長手方向の他端部に設けられたバネ受け部11aと、側板8の曲げ部8bとの間に挿入された第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1が図10(a)の矢印A方向に作用する。
側板8の固定部8aを回動中心として図10(a)の反時計回り方向に回動する第一加圧板11は、該第一加圧板11の下面に一端部が当接された第二加圧バネ12と、フランジ9の当接部9bに加圧力を作用させる。
このとき、フランジ9の当接部9b及び第二加圧バネ12の一端部が第一加圧板11の下面に接触する点(作用点)は以下の通りである。該第一加圧板11の長手方向に沿って支点となる側板8の固定部8aから力点となるバネ受け部11aまでの中点になるように設定されている。
したがって、第一加圧板11の長手方向に沿って支点となる側板8の固定部8aから力点となるバネ受け部11aまでの長さを考慮する。更に、支点となる側板8の固定部8aから作用点となるフランジ9の当接部9b及び第二加圧バネ12までの長さを考慮する。これらの長さの比であるレバー比は2:1となる。
これにより作用点に位置するフランジ9には、図10の矢印で示すように、第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1(49N)の2倍の加圧力F6(98N=49N×2)が作用する。
定着ユニット1の長手方向の両端部で図10の矢印で示す加圧力F6が発生する。このため定着ユニット1には、合計で、196N(=98N×2)の加圧力が作用する。
尚、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F2は、第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に作用する第一加圧力F1の内力となる。このため定着ユニット1に対する加圧力は、純粋に第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1のみで決定される。
次に、図10(b)に示すように、カム14が回転軸14bを中心に180°回転し、該カム14のカム面14aが第一加圧板11の下面に当接摺動して該第一加圧板11を押し上げる。これにより該第一加圧板11は側板8の固定部8aを中心に図10(b)の時計回り方向に回動する。
これにより第一加圧バネ10の伸長力が第一加圧板11に作用しても該第一加圧板11の下面がカム14のカム面14aに突き当たる。これにより第一加圧バネ10の伸長力による第一加圧力F1がフランジ9に作用しない状態となる。
このとき、カム14のカム面14aに当接して固定された第一加圧板11の下面と、フランジ9の溝部9cの底面9c1との間で第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F7が作用する。
本実施形態の第二加圧バネ12は、該第二加圧バネ12に力が作用しない状態での自然長は25mmである。また、第二加圧バネ12の伸長力によりフランジ9に図10(b)の下方向に矢印で示す第二加圧力F7が作用している状態の長さ(使用高さ)は15mmである。また、第二加圧バネ12のバネ定数k2は0.98N/mmである。
これにより第二加圧バネ12の伸長力がフランジ9に作用する図10(b)の矢印で示す第二加圧力F7は、9.8N(=(25mm−15mm)×0.98N/mm)となる。これにより定着ユニット1には、合計で、19.6N(=9.8N×2)の加圧力が作用する。
ここで、図10(b)に示す第二の加圧状態で、第二加圧バネ12の伸長力による第二加圧力F7がフランジ9に作用している状態における第二加圧力F7の最大値と最小値とを求める。
前記第1実施形態において、図5(a)及び図6(b)に示す第二加圧板13のバネ受け部13aが第二加圧バネ12に接触する位置のばらつきは以下の通りである。図2に示すヒータ3の厚さ、ホルダ5の溝部5cの底面からなる支持面5dの部位の厚さ、加圧ステー6の外径、フランジ9の固定位置のばらつきと、カム14のカム面14aの形状及び位置のばらつき等によって決まる。
公差は±0.4mm程度となり、第二加圧バネ12による加圧力として±4%のばらつきとなる。これに第二加圧バネ12自体の公差として±5%を加えると、第二加圧バネ12による加圧力は最大で±9%程度のばらつきが生じる可能性がある。
第二加圧バネ12による加圧力が最低となる組み合わせで、定着ユニット1と加圧ローラ2との間に隙間ができていないか観察した。そのとき、本実施形態においても定着ユニット1と加圧ローラ2とは、長手方向の全域に亘って接触を保っており隙間は見られなかった。
これにより本実施形態の図10(b)に示す第二の加圧状態においても前記第1実施形態と同様にヒータ3の移動を制限する加圧力が発揮できていることが判明した。
このように、本実施形態では、第二加圧バネ12をフランジ9の当接部9bに形成した溝部9cの底面9c1と、第一加圧板11の下面との間に挿入する。これにより第二加圧バネ12による加圧力は、第一加圧バネ10が作用している状態では、第一加圧バネ10の伸長力により第一加圧板11に作用する第一加圧力F1の内力となっている。
本実施形態の第二加圧バネ12は、第一加圧板11とフランジ9との間で直接作用するよう組み込まれている。これにより図5(a)に示す前記第1実施形態のように第一加圧板11と第二加圧板13とをフランジ9の軸方向(図5(a)の上下方向)に並設する必要が無い。このため定着ユニット1の長手方向の長さを短くでき、安定した軽圧状態を実現することが出来る。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。