JP2019015840A - 定着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱伝導部材の膨張によってヒータがヒータを突き当てた方向とは逆の方向へずれてしまうことを抑制できる定着装置を提供する。【解決手段】エンドレスベルトと、ベルト内面に接触し給電コネクタと接続して通電可能なヒータと、ヒータのベルトと接触する面と反対側の面に接触する熱伝導部材と、熱伝導部材を介してヒータを支持する支持部材と、ベルトを介して、ヒータに対向しヒータと共にトナー像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する対向部材と、を有し、長手方向において、ヒータの中央位置に対し給電コネクタが接続される側と反対側をヒータにおける第1の領域、ヒータの中央位置に対し給電コネクタが接続される側をヒータにおける第2の領域とするとき、第2の領域におけるヒータと熱伝導部材との間の静止摩擦力が、第1の領域におけるヒータと熱伝導部材との間の静止摩擦力よりも大きい。【選択図】 図8

Description

本発明は、複写機やレーザービームプリンタ(LBP)等、電子写真方式・静電記録方式等の作像プロセスを採用した画像形成装置に使用される定着装置に関するものである。
電子写真方式の画像形成装置に具備される定着装置として、フィルム加熱方式の定着装置がある。この定着装置は、フィルム(エンドレスベルト)と、フィルムに接触するヒータと、ヒータと共にフィルムを介してニップ部を形成する加圧部材と、を有し、ニップ部でトナー像を担持した記録材を挟持搬送してトナー像を加熱するものが一般的である。そして、ヒータとしては、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックスで形成された基板上に発熱体を形成したセラミックヒータが一般的に用いられる。
このようなニップ部を集中的に加熱するフィルム加熱方式の定着装置においては、記録材が通過するヒータの通紙領域に対して記録材が通過しないヒータの非通紙領域の温度が高くなる、いわゆる非通紙部昇温が生じ易い。そのため、非通紙部昇温による通紙領域と非通紙領域の温度差による熱応力で、ヒータの基板が割れる場合があるという課題がある。
そこで、ヒータ面内の熱の移動を容易にし、ヒータの長手方向(記録材の搬送方向に直交する方向)の温度分布を均一化するために、ヒータとヒータの支持部材の間に熱伝導部材を設ける構成が特許文献1に開示されている。
特開平11−84919号公報
しかしながら、熱伝導部材をヒータとヒータホルダの間に配置する場合、ヒータを通電し発熱させると、熱伝導部材が長手方向において両端部側(左右)にそれぞれ膨張する結果、ヒータが長手方向に動いてしまう可能性がある。
すなわち、特許文献1のように熱伝導部材を設ける場合、ヒータが組み込まれた後、ヒータに通電し発熱させると、例えば熱伝導部材にアルミを使用した場合、ヒータに比べて熱伝導部材の方が線膨張係数は大きいため、熱伝導部材が左右に膨張することになる。膨張によって左右に生じる力の大きさは、熱伝導部材とヒータの表面性の左右差、及び加圧部材による加圧力の左右差等によって同じ力とはならない場合があり、力の強い方向へ動いてしまう可能性がある。
一般的に、ヒータは長手方向の一端側に突き当てて配置しているため、ヒータを突き当てた方向とは逆の方向への力が大きい場合、ヒータを突き当てた方向とは逆の方向へヒータは動くことになる。そして、本来のトナー溶融定着させるために加熱したい範囲に対して、ヒータの発熱範囲がヒータを突き当てた方向とは逆の方向へずれてしまうと、所望の定着性能を満足できず画像へ影響してしまうという課題がある。
また、この場合、ヒータへの通電が繰り返されると、ヒータが突き当て方向とは逆に動き続けることとなるが、ヒータへ通電可能とするための電源供給用の給電コネクタはヒータホルダにより固定されている。そのため、ヒータへの通電が繰り返されると、最終的にはヒータの電源供給部に対して電源供給用のコネクタ接点が、本来の状態から外れて接触不良になり、ヒータへの本来の電力供給ができなくなるという課題がある。
本発明の目的は、熱伝導部材の膨張によってヒータがヒータを突き当てた方向とは逆の方向へずれてしまうことを抑制できる定着装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る定着装置は、回転可能なエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面に接触し、給電コネクタと接続して通電可能なヒータと、前記ヒータの前記エンドレスベルトと接触する面と反対側の面に接触する熱伝導部材と、前記熱伝導部材を介して前記ヒータを支持する支持部材と、前記エンドレスベルトを介して、前記ヒータに対向し前記ヒータと共にトナー像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する対向部材と、を有し、前記記録材の搬送方向に直交する長手方向において、前記ヒータの中央位置に対し前記給電コネクタが接続される側と反対側を前記ヒータにおける第1の領域、前記ヒータの中央位置に対し前記給電コネクタが接続される側を前記ヒータにおける第2の領域とするとき、前記第2の領域における前記ヒータと前記熱伝導部材との間の静止摩擦力が、前記第1の領域における前記ヒータと前記熱伝導部材との間の静止摩擦力よりも大きいことを特徴とする。
本発明によれば、熱伝導部材の膨張によってヒータがヒータを突き当てた方向とは逆の方向へずれてしまうことを抑制できる。
本発明の実施形態に係る定着装置の構成を説明する断面模式図 (a)は第1の実施形態に係る定着装置の構成を説明する正面模式図(加圧時)、 (b)は第1の実施形態に係る定着装置の構成を説明する正面模式図(圧解除時) 第1の実施形態に係るセラミックヒータの説明図 第1の実施形態に係るサーミスタおよび温度ヒューズの説明図 (a)はヒータ及び熱伝導部材の支持方法を説明する長手方向断面図、 (b)はヒータの長手方向で左端側に設けられるヒータクリップの説明図 (c)はヒータの長手方向で右端側に設けられる給電コネクタの説明図 (a)は熱伝導部材の支持方法を説明する図、 (b)は熱伝導部材の長手方向の位置を規制する規制部を説明する斜視図 (a)は熱の流れを説明するヒータ及び熱伝導部材の一部拡大図、 (b)は熱伝導部材の方が発熱体より長い状態での熱の流れを説明する図、 (c)は発熱体の方が熱伝導部材より長い状態での熱の流れを説明する図 (a)は第1の実施形態のヒータ常温時の熱伝導部材の状態図、 (b)はヒータ発熱時の熱伝導部材の状態図、 (c)はヒータ発熱時の熱伝導部材の規制部の拡大図(変形前)、 (d)はヒータ発熱時の熱伝導部材の規制部の拡大図(変形後) (a)は第2の実施形態のヒータ常温時の熱伝導部材の状態図、 (b)は第2の実施形態のヒータ発熱時の熱伝導部材の状態図、 (c)は第2の実施形態のヒータ発熱時の熱伝導部材の規制部の拡大図(変形前)、 (d)は第2の実施形態のヒータ発熱時の熱伝導部材の規制部の拡大図(変形後)
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
《第1の実施形態》
(定着装置)
以下の装置構成の説明において、長手方向とは、記録材の搬送方向および厚さ方向に直交する方向である。また、短手方向とは、記録材の搬送方向に平行な方向である。図1は、本実施形態に係る定着装置(像加熱装置)18を長手方向から見た断面の模式図、図2は定着装置18の端部を短手方向から見た模式図で、図2(a)は加圧時、図2(b)は圧解除時を示す。ある。なお、図1で、30は定着入口ガイド、33は装置フレーム、34は縦溝部34aを有するフレーム側板である。
31は可撓性を有する回転可能なエンドレスベルトとしての筒状のフィルム36を含むフィルムユニット、32はフィルム36を介してヒータ37と対向する対向部材として、また加圧部材としての加圧ローラである。このフィルムユニット31と加圧ローラ32は、ヒータ37がフィルム36を介して加圧ローラ32に対向する向きで、装置フレーム33の左右の側板34間に略平行に配設してある。そして、フィルム36を介してヒータ37と加圧ローラ32は、トナー像tを担持した記録材(記録紙)Pを挟持搬送するニップ部Nを形成する。
加圧ローラ32は、芯金32aと、芯金32aの外側に形成した弾性層32bと、弾性層32bの外側に形成した離型層32cと、を有する。弾性層32bの材質としては、シリコーンゴムやフッ素ゴム等が用いられる。また、離型層32cの材質としては、PFA、PTFE、又はFEP等が用いられる。
本実施形態では、芯金32a(ステンレス鋼製で外径11mm)の上に射出成形により厚み約3.5mmのシリコーンゴム層の弾性層32bを形成し、その外側に厚み約40μmのPFA樹脂チューブの離型層32cを被覆した加圧ローラ32を用いた。加圧ローラ32の外径は、18mmである。この加圧ローラ32の硬度は、ASKER−C硬度計で9.8Nの荷重において、ニップ部Nの確保や耐久性などの観点から、40°〜70°の範囲が望ましい。本実施形態においては、54°に調整している。
加圧ローラ32の長手方向の弾性層の長さは、226mmである。この加圧ローラ32は、図2に示すように、芯金32aの長手方向の両端で、それぞれ軸受部材35を介して装置フレーム側板34間に回転自由に支持させている。Gは、加圧ローラ32の芯金32aの一端部に固定された駆動ギアである。この駆動ギアGに駆動源(不図示)から回転力が伝達されて、加圧ローラ32が回転駆動される。なお、図2で、41aは定着フランジ41の縦溝部、41bは加圧部、44は加圧アーム、45は加圧バネ、46はヒータに通電可能とするための給電コネクタ、47はヒータクリップである。
図1に示すフィルムユニット31は、フィルム36、フィルム36の内面に接触する板状のヒータ37、ヒータ37を支持する支持部材38、ヒータ37と支持部材38の間に設けられる熱伝導部材39と、を有する。フィルムユニット31は、さらに、支持部材38を補強する加圧ステイ40、フィルム36の長手方向の移動を規制するフランジ41等を有する。
フィルム36は、基層と、基層の外側に形成された弾性層と、弾性層の外側に形成された離型層と、を有した筒状の可撓性部材である。本実施形態のフィルム36は内径18mmであり、基層として厚み60μmのポリイミドの基材を、また弾性層として厚み約150μmのシリコーンゴムを、また離型層として厚み15μmのPFA樹脂チューブを用いている。
支持部材38は図1に示すように、横断面が略半円状樋型の形状のもので、剛性・耐熱性・断熱性を有する部材であり、本実施形態では液晶ポリマーにより形成されている。この支持部材38は、支持部材38に外嵌したフィルム36の内面を支持する役割と、ヒータ37の一方の面を支持する役割と、を有している。
ヒータ37は、図3のように、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックよりなる基板37a上に、銀・パラジウム合金等による発熱体37bをスクリーン印刷等によって形成し、さらに発熱体37bに銀等による電気接点部37cを接続してなる。本実施形態においては、二本の発熱体37bが直列に接続され、抵抗値は18Ωである。発熱体37bの上に保護層としてのガラスコート37dを形成することにより、発熱体37bを保護し、フィルム36との摺動性を向上させている。
このヒータ37は、支持部材38の支持面に対向しつつ、フィルム36の長手方向に沿って配設されている。本実施形態のヒータ37の基板37aは、長手方向の長さが270mm、短手方向の長さが5.8mm、厚みが1.0mmの直方体の形状であり、材質はアルミナである。また、発熱体37bの長手方向長さは222mmである。なお、フィルム36の内面には耐熱性を有するグリスが塗布されており、ヒータ37および支持部材38と、フィルム36の内面との摺動性が向上している。
図4は、支持部材38と、感温素子であるサーミスタ42及び通電遮断素子としての温度ヒューズ43と、を上方から見た図である。支持部材38には貫通孔が設けられ、その貫通孔からサーミスタ42および温度ヒューズ43がそれぞれ熱伝導部材39に接触するように配置されている。つまり、熱伝導部材39を介してヒータ37の熱を感熱するように、熱伝導部材39の上にサーミスタ42及び温度ヒューズ43が設けられている。
サーミスタ42は、筐体にヒータ37への接触状態を安定させるためのセラミックペーパー等を介して、サーミスタ素子を配し、さらにポリイミドテープ等の絶縁物が被覆されている。温度ヒューズ43は、ヒータ37が異常昇温した際に、ヒータの異常発熱を感知し、ヒータ37への通電を遮断する部品である。温度ヒューズ43は、円筒状の金属筐体内に所定温度で溶融するヒューズエレメントが搭載されており、ヒータ37の異常昇温によりヒューズエレメントが溶断した時にヒータ37へ通電する回路を遮断する。
なお、温度ヒューズ43は、熱伝導部材39に、熱伝導グリスを介して設置され、温度ヒューズ43がヒータ37に対して浮くことによる動作不良を防止している。
次に、図1に戻って、加圧ステイ40は、その横断面がU字型の形状であり、フィルム36の長手方向に長い部材である。加圧ステイ40の役割は、フィルムユニット31の曲げ剛性を高めることである。本実施形態の加圧ステイ40は、板厚1.6mmのステンレス鋼を曲げ加工して形成されている。
図2に示す左右のフランジ41は、加圧ステイ40の両端部を保持し、それぞれが有する縦溝部41aを装置フレーム33の左右の側板34がそれぞれ有する縦溝部34a(図1)に係合している。本実施形態では、フランジ41の材料として、液晶ポリマー樹脂を用いている。
また、図2に示す加圧バネ45は、左右のフランジ41の加圧部41bと加圧アーム44との間に配され、左右のフランジ41、加圧ステイ40、支持部材38を介してヒータ37がフィルム36を挟んで加圧ローラ32に対して押圧される。これによって、ヒータ37がフィルム36を介して加圧ローラ32の弾性に抗して加圧ローラ32と共に6.2mm程度のニップ部Nを形成する。本実施形態では、フィルム36と加圧ローラ32との圧接力が総圧で180Nである。
定着動作時には、加圧ローラ32の駆動ギアGに不図示の駆動源から回転力が伝達されて、加圧ローラ32が図1において時計方向に所定の速度で回転駆動される。この加圧ローラ32の回転駆動に伴って、ニップ部Nにおいて加圧ローラ32とフィルム36との間で働く摩擦力でフィルム36に回転力が作用する。これにより、図1に示すように、フィルム36はヒータ37の一面に接触しながら摺動し、支持部材38の外回りを反時計方向に加圧ローラ32の回転に従動して回転する。
フィルム36が回転して、ヒータ37に対する通電がなされ、ヒータ37のサーミスタ42の検知温度が目標温度に到達した状態で、記録材Pが導入される。定着入り口ガイド30は、未定着状態であるトナー像tを担持した記録材Pがニップ部Nに向かうようにガイドする役割を果たしている。このように、定着入り口ガイド30を介して、ニップ部Nに未定着トナー画像tを担持した記録材Pが導入されて、ニップ部Nにおいて記録材Pのトナー画像を担持する面がフィルム36に密着してフィルム36と共にニップ部Nを挟持搬送されていく。
この搬送過程において、ヒータ37で加熱されたフィルム36の熱により記録材P上の未定着トナー画像tが記録材P上に加熱・加圧されて溶融定着される。ニップ部Nを通過した記録材Pは、フィルム36の面から曲率分離して排出され、不図示の排紙ローラ対により機外に排出される。なお、本実施形態における定着装置の最大通紙可能幅は216mmである。
また、本実施形態では、不図示の圧解除カムを回転させることで、定着フランジ41を加圧ローラ32から遠ざける方向に移動させ、図2(a)から図2(b)のように、フィルムユニット31を加圧ローラ32から離間させる圧解除機構を備える。
この離間動作は、定着装置18において記録材のジャムが発生した際、記録材Pのジャム処理を容易にするために行われる。また、スリープ時など定着フィルム36が長時間回転しない休止時などの状況において、定着フィルム36に加圧ニップによる圧縮変形の跡がつくことによる画像品位の低下を防止するためにも行われる。本実施形態においては、不図示の圧解除モータによって自動で圧解除が行われるが、手動で圧解除カムを回転させる機構にしてもよい。
次に、図5を用いて、本実施形態のヒータ37の発熱体37bと熱伝導部材39の長手方向の位置関係、およびヒータ37の設置方法について説明する。図5(a)に示すように、ヒータ37のヒータ基板に当接する熱伝導部材39は、長手方向においてヒータ37の発熱体37bと同じ長さL(図5(a))を備え、熱伝導部材39と発熱体37bの左右の端部が同じ位置になるように設置している。
また、ヒータ37の設置方法に関しては、図5(a)の長手方向断面図に示すように、本実施形態においては、製造時に支持部材38に高熱伝導性部材としての熱伝導部材39を取り付けた上から、さらにヒータ37を取り付けている。そして、ヒータ37は、製造時において,図5(a)の右側に示す給電コネクタ46側の支持部材38のヒータ突き当て位置に突き当てて設置される。その後、給電コネクタ46に挟まれるようにしてヒータ37は支持部材38に対して固定される(図5(c)に関して後述する)。
給電コネクタ46と反対側(図5(a)の左側)では、図5(b)に示すように、ヒータ37と支持部材38は、ヒータクリップ47によって保持されている。ヒータクリップ47はコの字型に曲げられた金属板から形成され、そのバネ性によってヒータ37の端部を支持部材38に接触させて保持している。また、ヒータクリップ47に押えられているヒータ37端部は長手方向には移動が可能である。これにより、ヒータ37の熱膨張や、加圧・離間時の撓み発生時に、ヒータ37に不必要な応力がかかることを防止している。
給電コネクタ46側(図5(a)の右側)では、図5(c)に示すように、給電コネクタ46が、コの字型の樹脂からなるハウジング部46aとコンタクト端子46bによって形成されている。そして、給電コネクタ46は、ヒータ37と支持部材38を挟んで保持すると共に、コンタクト端子46bがヒータ37の電極37cと接触し、電気的に接続される。図5(c)で、コンタクト端子46bは束線48に接続されており、束線48は不図示のAC電源・トライアックに接続されている。
なお、本実施形態では給電コネクタ46をヒータ保持部材として用いたが、ヒータに給電する役割と、ヒータ保持部材としての役割を分け、別体で構成してもよい。
次に、図6を用いて、本実施形態の熱伝導部材39について説明する。図6(a)は、ヒータ37を取り外した状態で熱伝導部材39が支持部材38に設置された状態の図である。図6(b)は、熱伝導部材39の支持部材38に対する長手方向の位置を規制する規制部39aを説明する斜視図である。
図6(b)で、支持部材38と熱伝導部材39の規制部39aについて説明する。本実施形態では、熱伝導部材39として、厚みが0.3mmで一定であるアルミニウム板を用いており、ヒータ37と接触する部分の長手方向長さLは222mm、搬送方向幅Mは5mmである。
図6(b)において、熱伝導部材39は、支持部材38との間の長手方向における位置を規制するための規制部39aを備え、支持部材38は熱伝導部材39の規制部39aを保持するための開口部としての取り付け穴38aを備える。具体的には、図6(b)に示すように、熱伝導部材39の長手方向の中央位置より給電コネクタ側と反対側へ長手方向でN=80mmの箇所に長手方向長さa=8mm、深さb=3mmの長さにて、記録材搬送方向の上流側で折り曲げた規制部39aを備える。そして、熱伝導部材39の規制部39aは、支持部材38の取り付け穴38aに差し込まれる。
なお、この取り付け穴38aは、規制部39aに対して若干大きめに設けている。本実施形態では、c=8.5mm、d=0.4mmであり、熱伝導部材39の長手方向に生じるガタはc―a=0.5mmの長さ分となっている。
ここで、熱伝導部材39に関し、図7の長手方向断面の拡大図を用いて小サイズ記録材を連続的に定着処理して非通紙部昇温が生じる状況において、ヒータ37の熱が定着部材の長手方向で均一化するメカニズムについて説明する。図7では、ヒータ37の基板37aを介したヒータ37の発熱体37bと熱伝導部材39との長手方向の右端部の位置関係を示している。
本実施形態では、図7(a)のように、長手方向において、発熱体37bの幅(長さ)と熱伝導部材39の幅(長さ)をほぼ同じにする。更に、図7(a)に示すように、発熱体37bの長手方向における一方の端部の位置と、熱伝導部材39の長手方向における一方の端部の位置を一致させる(破線X)。これによって、本実施形態の定着装置36は、大サイズ記録材の定着処理時に端部における定着不良の発生させることなく、小サイズ記録材の定着処理時の非通紙部昇温を抑制できるという効果を有する。
この理由を、以下に説明する。図7(a)において、ヒータ37の基板37aの長手方向のある部分Hが、他の部分に比べて高温になった場合を考える。基板37aの内部における長手方向の熱の流れAに加えて、基板37aのうち熱伝導部材39と接触している部分で基板37aから熱伝導部材39への熱の流れが生じる。さらに、熱伝導部材39内で長手方向に流れて再び基板37aに戻る熱の流れBが発生する。このような熱の流れによって、ヒータ37の熱が長手方向に均一化される。
よって、図7(a)に示すような本実施形態の定着装置36は、大サイズ記録材の定着処理時に端部における定着不良の発生させることなく、小サイズ記録材の定着処理時の非通紙部昇温を抑制できる。
ここで、図7(b)のように、発熱体37bの端部に対して、熱伝導部材39の端部が長手方向の外側に長い状態における一方の端部の拡大図を示す。図7(b)の場合には、熱の流れA、Bに加えて、熱伝導部材39の端部からの放熱による熱の逃げCが発生する。その結果、ヒータ37のH1の箇所で温度が必要以上に低下して、大サイズ記録材を定着処理した時にH1に対応する箇所で定着不良が発生する場合がある。
また、図7(c)のように、熱伝導部材39の端部よりも、発熱体37bが長手方向の外側に長い場合には、発熱体37bの熱伝導部材39への熱の流れが形成できないH2の箇所で非通紙部昇温の抑制効果が得られない。
本実施形態で、ヒータ37の基板37aとして用いたアルミナの熱伝導率はおよそ26W/mKであり、熱伝導部材39として用いたアルミニウムの熱伝導率は約230W/mKである。このように、熱伝導部材39の熱伝導率がヒータ37の基板37aの熱伝導率よりも大きい場合は、ヒータ37の熱を均一化し易くなる。熱伝導部材39の材質としてアルミニウムの他に、銅やグラファイトシートも使用することができる。
(熱伝導部材の膨張によりヒータが受ける力の長手方向の分布)
図8の長手方向断面図を用いて、熱伝導部材39の膨張によりヒータ37が受ける力の関係について説明する。図8(a)はヒータ常温時の断面図、図8(b)はヒータ発熱時の断面図、図8(c)は熱伝導部材変形前のD部の拡大図、図8(d)は熱伝導部材変形後のD部の拡大図を示している。
熱伝導部材39の長手方向の中央部(中央位置)Yよりもヒータクリップ47側の領域をX1、給電コネクタ側をX2とする。熱伝導部材39に加わる加圧力は、支持部材38のクラウン形状により長手方向の中央部が最も大きくなっているため、熱伝導部材39は長手方向中央部から図の左右方向へ向かって膨張する。つまり、領域X1では矢印Z1方向に、領域X2では矢印Z2方向に膨張する。ここで、ヒータ37が発熱した際の熱伝導部材39の長手方向の変形量ΔL(mm)は、熱伝導部材39の長手方向の長さをL、線膨張率をα、温度差をΔTとするとき、以下の式で計算することができる。
ΔL=L×α×ΔT
熱伝導部材39の長手方向の長さLは222mm、アルミニウムの線膨張係数α=2.3×10^−5/℃、定着装置使用時のヒータ基板の温度はおよそ200℃であるから、常温を20℃として温度差ΔT=180℃である。上式に代入して計算すると、ΔL=(222×2.3×10^−5)×180=0.92mmとなる。すなわち、熱伝導部材39としてのアルミニウム板は、定着装置としての使用時に長手方向に0.92mm伸びる。
一方、支持部材38に使用している液晶ポリマー樹脂は、住友化学製スミカスーパーLCP E5204Lであり、線膨張係数は、1.3×10^−5/℃であるため、長手方向には、222×1.3×10^−5×180=0.52mmしか伸びない。
また、ヒータ37の基板37aに使用しているアルミナは、線膨張係数は、0.75×10^−5/℃であるため、長手方向には、222×0.75×10^−5×180=0.3mmしか伸びない。
よって、図8(a)のヒータ常温時に対して、熱伝導部材39は、図8(b)のようにヒータ37の発熱体37bの中心から左右に向かって伸びる。なお、図8(b)では、ヒータ37と支持部材38の伸びは省略しているけれども、厳密にはこの2つの部材も伸びている。
このとき、前述した通り、支持部材38に比べて熱伝導部材39のほうが伸びるため、図8(b)で示すD部の箇所で熱伝導部材39の規制部39aが支持部材38の取り付け穴38aに突きあたり、熱伝導部材39の伸びが規制される。熱伝導部材39は規制されながらもさらに伸びようとするため、図8(d)に示す様に変形する。図8(c)は熱伝導部材変形前の様子、図8(d)は熱伝導部材変形後の様子を表している。
なお、図8(d)は、熱伝導部材39の変形の様子を分かり易くするために、変形量を極端に大きくした図である。熱伝導部材39は、取り付け穴38aに突きあたり変形することで、矢印で示す方向の力Fnを生じる。
ここで、図8の100は、潤滑剤を塗布する領域を表している。すなわち、潤滑剤は、ヒータ37と熱伝導部材39の間であって、規制部39aの部分に対応した領域に塗布される。熱伝導部材39の膨張によりヒータ37が受ける力に関し、まず、潤滑剤100がない場合について説明する。熱伝導部材39は、領域X1ではZ1方向に、また領域X2ではZ2方向に膨張している。熱伝導部材39とヒータ37の静止摩擦力を領域X1と領域X2で分けて考えると、静止摩擦力の大きい方の領域でかかっている力の方向に、ヒータ37は力を受けることになる。
熱伝導部材39とヒータ37の静止摩擦係数をμ、垂直抗力をN(N)、加圧部材38から受ける加圧力をFp、熱伝導部材39の変形により発生する力をFn、領域X1における静止摩擦力をFx1、領域X2における静止摩擦力をFx2とする。すると、静止摩擦力Fx1、Fx2は、以下の式で表わされる。
Fx1=μ×N=μ×(Fp+Fn) (N)
Fx2=μ×N=μ×Fp (N)
上記式から分かる様に、Fnが発生する分、領域X1の静止摩擦力の方が大きく、Fx1>Fx2である為、潤滑剤100がない場合、ヒータ37は矢印Z1方向の力を受けることになる。
次に、潤滑剤100がある場合(図8(b))について考える。潤滑剤100により、領域X1の静止摩擦係数が小さくなり、それをμ´とすると静止摩擦力Fx1は以下の式となる。
Fx1=μ´×(Fp+N) (N)
領域X1の静止摩擦係数μ´を小さくし、Fx1<Fx2の力関係に設定できることで、ヒータはZ2方向の力を受けることになる。Z2方向はヒータ突き当て側であるので、Fx1<Fx2の力関係とすることで、ヒータ37のヒータ突き当て側と反対側へのずれを防止(抑制)することができる。
以上、本実施形態の構成によれば、熱伝導部材39の膨張によるヒータ37のヒータ突き当て側と反対側へのずれを防止することができ、ヒータの発熱位置がずれることによる定着性能の低下や、給電コネクタの接点外れの問題を防止(抑制)することができる。
《第2の実施形態》
以下、本発明の第2の実施形態における定着装置について説明する。第1の実施形態と同様の箇所には、同じ符号を付して説明を省略し、本実施形態の特徴部についてのみ説明する。本実施形態においては、ヒータ37と熱伝導部材39の静止摩擦力を長手方向において変えるために、ヒータ37と熱伝導部材39の接触面をヒータ突き当て側で荒らし処理を施している。ここで、荒らし処理とは、例えば表面に凹凸形状を設けること、すなわち粗面を設けることである。
図9は、本実施形態の長手方向断面図である。図9(a)はヒータ常温時の断面図、図9(b)はヒータ発熱時の断面図、図9(c)は熱伝導部材変形前のD部の拡大図、図9(d)は熱伝導部材変形後のD部の拡大図を示している。図9の101はヒータ37と熱伝導材39の接触面に荒らし処理(表面荒らし処理)を行う領域を示している。
本実施形態において荒らし処理を行う目的は、ヒータ37と熱伝導材39の間の静止摩擦係数を大きくするためである。荒らし処理を行う対象物は、ヒータ37のみでも、熱伝導材39のみでも、ヒータ37と熱伝導材39の両方であっても良い。また、荒らし処理を行う領域について、図9ではX2の領域全体としているが、X2の領域内の一部でも良い。
ここで、熱伝導部材39の膨張によりヒータ37が受ける力について説明する。領域X1の静止摩擦係数をμx1、領域X2の静止摩擦係数をμx2、垂直抗力をN(N)、加圧部材38から受ける加圧力をFp、熱伝導部材39の変形により発生する力をFnとする。また、領域X1における静止摩擦力をFx1、領域X2における静止摩擦力をFx2とする。すると、領域X1、領域X2におけるそれぞれの静止摩擦力Fx1、Fx2は、以下の式で表わされる。
Fx1=μx1×N=μx1×(Fp+Fn) (N)
Fx2=μx2×N=μx2×Fp (N)
ここで、本実施形態では、101の領域(ヒータ突き当て側の領域)で荒らし処理を行っているので、静止摩擦係数はμx1<μx2の関係となる。ヒータ37と熱伝導材39の接触面の荒らし処理を行い、静止摩擦力をFx1<Fx2の力関係と設定できることで、熱伝導部材39の膨張時にヒータ37が受ける力の方向はZ2方向となる。Z2方向はヒータ突き当て側であるので、ヒータ37のヒータ突き当て側と反対側へのずれを防止(抑制)することができる。
以上、本実施形態の構成によれば、熱伝導部材39の膨張によるヒータ37のヒータ突き当て側と反対側へのずれを防止することができ、ヒータの発熱位置がずれることによる定着性能の低下や、給電コネクタの接点外れの問題を防止(抑制)することができる。
(変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
(変形例1)
上述した第2の実施形態では、ヒータ37と熱伝導部材39の接触面をヒータ突き当て側で荒らし処理を施したが、ヒータ37と熱伝導部材39の接触面をヒータ突き当て側と反対側、およびヒータ突き当て側とで荒らし処理の荒らし度合いを変えても良い。すなわち、ヒータ37と熱伝導部材39の接触面を、ヒータ突き当て側において、ヒータ突き当て側と反対側よりも静止摩擦係数が大きくなるように荒らし処理を施しても良い。
この場合にも、静止摩擦力をFx1<Fx2の力関係と設定できることで、熱伝導部材39の膨張時にヒータ37が受ける力の方向はZ2方向となる。Z2方向はヒータ突き当て側であるので、ヒータ37のヒータ突き当て側と反対側へのずれを防止(抑制)することができる。
(変形例2)
上述した実施形態では、ニップ部を形成するエンドレスベルトで構成される第1の回転体及びエンドレスベルトを介して第1の回転体に対向する対向部材としての第2の回転体として加圧ローラを示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、第1の回転体と共に第2の回転体をエンドレスベルトで構成しても良い。
(変形例3)
上述した実施形態では、記録材として記録紙を説明したが、本発明における記録材は紙に限定されるものではない。一般に、記録材とは、画像形成装置によってトナー像が形成されるシート状の部材であり、例えば、定型或いは不定型の普通紙、厚紙、薄紙、封筒、葉書、シール、樹脂シート、OHPシート、光沢紙等が含まれる。なお、上述した実施形態では、便宜上、記録材(シート)Pの扱いを、排紙、非通紙部などの用語を用いて説明したが、これによって本発明における記録材が紙に限定されるものではない。
(変形例4)
上述した実施形態では、未定着トナー像をシートに定着する定着装置を例に説明したが、本発明は、これに限られない。画像の光沢を向上させるべく、シートに仮定着されたトナー像を加熱加圧する装置(この場合も定着装置と呼ぶ)にも同様に適用可能である。
32・・加圧ローラ、36・・定着フィルム、37・・ヒータ、38・・支持部材、39・・熱伝導性部材、N・・ニップ部

Claims (6)

  1. 回転可能なエンドレスベルトと、
    前記エンドレスベルトの内面に接触し、給電コネクタと接続して通電可能なヒータと、
    前記ヒータの前記エンドレスベルトと接触する面と反対側の面に接触する熱伝導部材と、
    前記熱伝導部材を介して前記ヒータを支持する支持部材と、
    前記エンドレスベルトを介して、前記ヒータに対向し前記ヒータと共にトナー像を担持した記録材を挟持搬送するニップ部を形成する対向部材と、
    を有し、
    前記記録材の搬送方向に直交する長手方向において、前記ヒータの中央位置に対し前記給電コネクタが接続される側と反対側を前記ヒータにおける第1の領域、前記ヒータの中央位置に対し前記給電コネクタが接続される側を前記ヒータにおける第2の領域とするとき、
    前記第2の領域における前記ヒータと前記熱伝導部材との間の静止摩擦力が、前記第1の領域における前記ヒータと前記熱伝導部材との間の静止摩擦力よりも大きいことを特徴とする定着装置。
  2. 前記ヒータと前記熱伝導部材との間には、前記第1の領域の少なくとも一部において前記静止摩擦力を抑える潤滑剤が設けられている一方、前記第2の領域において前記潤滑剤が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  3. 前記第2の領域の少なくとも一部において、前記ヒータと前記熱伝導部材のうち少なくとも一方の接触面が、前記静止摩擦力を強める粗面として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
  4. 前記支持部材は、前記ヒータにおける前記第1の領域に対応する前記長手方向の領域の一部に開口部を有し、
    前記熱伝導部材は、前記開口部で前記長手方向の位置が規制される規制部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置。
  5. 前記ヒータと前記熱伝導部材との間には、前記第1の領域の一部においてのみ潤滑剤が塗布されており、
    前記潤滑剤が塗布されている領域は、前記長手方向において前記支持部材の前記開口部の位置に対応する領域であることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
  6. 前記ヒータは、基板と、前記基板の上に設けられる発熱体と、を有し、
    前記熱伝導部材は、前記基板を挟んで前記発熱体と反対側に設けられ、
    前記発熱体の長手方向の端部の位置は、前記熱伝導部材の長手方向の端部の位置と一致することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着装置。
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