JP2017138142A - 疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】穿孔法による残留応力測定のための止まり穴に起因する疲労寿命の低下を抑制できる構造物の疲労寿命の改善方法を提供することである。【解決手段】穿孔法による残留応力測定のために止まり穴11が開けられた鋼部材10を備える構造物の疲労寿命を改善する方法であって、ピンで打撃するピーニング処理を止まり穴の底面11aに施すステップを含む。ピーニング処理を止まり穴の底面11aに施すステップでは、止まり穴の底面11aに位置する部位を深さ方向とともに止まり穴11の中心側から外側に押し込む形態を採用できる。ピーニング処理を止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界に施すステップを含むのが好ましい。ピーニング処理では、直径が止まり穴11の直径の98%以下であり、かつ、先端の曲率半径がピンの直径の300%以下であるピンを用いるのが好ましい。【選択図】図1C

Description

本発明は、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられた構造物の疲労寿命を改善する方法に関する。また、その疲労寿命の改善方法を用いる構造物の製造方法に関する。
橋梁、船舶または建設機械等といった構造物は、鋼部材を備える。その鋼部材の溶接部に、残留応力に起因した疲労損傷(例えば疲労き裂)が発生しやすい。疲労損傷を防止するには、疲労損傷のメカニズムを解明することや、構造物の耐用年数(疲労寿命)を正確に把握して残存期間を算出することが重要である。このため、鋼部材の深さ方向の残留応力を測定して評価することの必要性が増加している。深さ方向の残留応力の測定方法として、中性子回折法、完全破壊法および穿孔法等がある。
中性子回折法では、被測定材が放射化されるので、中性子回折法を実用される構造物に適用するのは困難である。また、完全破壊法は、例えば切断法が該当し、被測定材が切断等によって破壊される。このため、完全破壊法も、実用される構造物に適用するのは困難である。
穿孔法は、ASTM E837に規定され、例えば、以下の手順によって行うことができる。
(1)直径が2〜11mm程度であるひずみゲージを鋼部材の表面に配置する。そのひずみゲージは、3方向のひずみを測定できる。
(2)直径が0.5〜6mm程度である止まり穴をひずみゲージの中心に開け、それに伴って開放されたひずみをひずみゲージで測定する。止まり穴の深さは、ひずみゲージの直径の30〜50%程度である。
(3)上記(2)で測定されたひずみを用い、残留応力を算出する。
ASTM E837によれば、穴開けにより、すなわち、測定後も残存する止まり穴により、被測定材に損傷が与えられるとしている。このため、被測定材のうちで消耗する部位、または、実用性に影響を及ぼさない部位に限って穿孔法による残留応力測定を適用すべきとしている。
構造物の疲労寿命を改善する方法は、例えば特許第4441641号(以下、「特許文献1」という)および特許第5441114号(以下、「特許文献2」という)に記載される。特許文献1には、構造物が備える鋼材の平板部または曲板部に発生した非貫通の疲労き裂を補修する方法が記載される。その方法では、疲労き裂の少なくとも片側にピーニング処理を施すことにより、疲労き裂の開口部を閉じてき裂接触面を形成する。その後、疲労き裂の直上にピーニング処理を施すことにより、き裂接触面の接触面積および接触圧力のいずれか一方または両方を増加させる。これにより、疲労き裂が開口しにくくなる、あるいはき裂開口幅が広がりにくくなり、その結果、鋼構造物の疲労寿命の延命化が可能としている。
特許文献2には、構造物が備える鋼板の表面から裏面まで貫通した疲労き裂を補修する方法が記載される。その方法では、鋼板の表面側からピーニング処理を疲労き裂の少なくとも片側に施すことにより、疲労き裂の表面側の開口部を閉じる。その後、鋼板の裏面側からピーニング処理を疲労き裂の少なくとも片側に施すことにより、疲労き裂の裏面側の開口部を閉じる。これにより、鋼板の表面および裏面で、疲労き裂が開口しにくくなる、あるいはき裂開口幅が広がりにくくなり、その結果、鋼構造物の疲労寿命の延命化が可能としている。
特許第4441641号 特許第5441114号
前述の通り、構造物が備える鋼部材の残留応力を測定して評価することの必要性が増加している。また、穿孔法による残留応力測定は、穴開け(止まり穴)によって被測定材に損傷が与えられるので、被測定材のうちで消耗する部位、および、実用性に影響を及ぼさない部位に限られていた。このため、例えば、大型の構造物が備える鋼部材の応力集中部または小型の構造物が備える鋼部材について、穿孔法による残留応力測定を行うことは、現実的でなかった。
前述の特許文献1および2では、構造物に発生する疲労き裂について、ピーニング処理を施して開口部を閉じる。これにより、疲労寿命を延命化する。しかしながら、穿孔法による残留応力測定に用いられた止まり穴の形状は、疲労き裂と異なるので、特許文献1および2に記載の方法を適用できない。
本発明の目的は、穿孔法による残留応力測定のための止まり穴に起因する疲労寿命の低下を抑制できる構造物の疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態による疲労寿命の改善方法は、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられた鋼部材を備える構造物の疲労寿命を改善する方法であって、当該改善方法は、ピンで打撃するピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップを含む。
前記改善方法は、前記ピーニング処理を前記止まり穴の側面と前記鋼部材の表面との境界に施すステップを含むのが好ましい。
本発明の一実施形態による構造物の製造方法は、鋼部材を備える構造物を対象とし、その前記鋼部材には、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられる。当該製造方法は、ピンで打撃するピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップを含む。
当該製造方法は、前記ピーニング処理を前記止まり穴の側面と前記鋼部材の表面との境界に施すステップを含むのが好ましい。
本実施形態の疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法において、前記ピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップでは、前記止まり穴の底面に位置する部位を深さ方向とともに前記止まり穴の中心側から外側に押し込む形態を採用できる。
本実施形態の疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法における前記ピーニング処理では、直径が前記止まり穴の直径の98%以下であり、かつ、先端の曲率半径が前記ピンの直径の300%以下であるピンを用いるのが好ましい。
本発明の疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法は、ピンで打撃するピーニング処理を止まり穴の底面に施す。これにより、止まり穴の底面の周辺に圧縮の残留応力が付与され、疲労寿命の低下を抑制できる。また、止まり穴の側面と底面の境界の形状が丸くなり、応力集中が低減される。これによっても、疲労寿命の低下を抑制できる。
図1Aは、本実施形態の疲労寿命の改善方法によるフロー例におけるピーニング処理前を模式的に示す断面図である。 図1Bは、本実施形態の疲労寿命の改善方法によるフロー例における止まり穴の底面へのピーニング処理後を模式的に示す断面図である。 図1Cは、本実施形態の疲労寿命の改善方法によるフロー例における止まり穴の側面と鋼部材の表面との境界へのピーニング処理後を模式的に示す断面図である。 図2は、ピンの形状例を示す模式図である。 図3は、試験片の形状を模式的に示す正面図である。 図4Aは、比較例1の止まり穴を撮像した写真である。 図4Bは、比較例1における止まり穴の中心からの距離と高さの関係を示すグラフである。 図5Aは、本発明例1の止まり穴を撮像した写真である。 図5Bは、本発明例1における止まり穴の中心からの距離と高さの関係を示すグラフである。 図6Aは、本発明例2の止まり穴を撮像した写真である。 図6Bは、本発明例2における止まり穴の中心からの距離と高さの関係を示すグラフである。 図7は、穴の中心からの距離と残留応力の関係を示す図である。 図8は、疲労寿命を示す図である。 図9Aは、試験片の破断の起点を模式的に示す正面図である。 図9Bは、図9AのIXB−IXB断面図である。
本発明の疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法の一実施形態ついて、図面を参照しながら、以下に説明する。
[疲労寿命の改善方法]
図1A〜図1Cは、本実施形態の疲労寿命の改善方法によるフロー例を模式的に示す断面図である。これらの図のうち、図1Aはピーニング処理前、図1Bは止まり穴の底面へのピーニング処理後、図1Cは止まり穴の側面と鋼部材の表面との境界へのピーニング処理後をそれぞれ示す。図1A〜図1Cには、構造物が備える鋼部材10の一部を示す。
鋼部材10には、図1Aに示すように、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴11が開けられる。止まり穴11は、円筒状の側面11bと、平面状の底面11aとを有する。止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11d、および、止まり穴の側面11bと底面11aとの境界11cは、いずれも角状である。本実施形態の疲労寿命の改善方法は、止まり穴11が開けられた鋼部材10を備える構造物を対象とする。その構造物は、例えば、実用される構造物とすることができ、より具体的には、橋梁、船舶または建設機械等とすることができる。
本実施形態の疲労寿命の改善方法は、ピンで打撃するピーニング処理を止まり穴の底面11aに施す。ピーニング処理を止まり穴の底面11aに施すことにより、止まり穴の底面11aに位置する部位(底面11aから深さ方向に沿って広がる部分、図1Aの底面11aと二点鎖線で囲む領域参照)が、深さ方向(図1Bの破線矢印参照)とともに止まり穴の中心側から外側(図1Bの実線矢印参照)に押し込まれる。その結果、止まり穴の底面11aの周辺(底面11aから深さ方向および径方向に沿って広がる部分、図1Bの二点鎖線で囲む領域参照)に圧縮の残留応力が付与される。また、止まり穴の底面11aの形状が、図1Bに示すように、平面状から凹状の曲面に変形する。これに伴い、止まり穴の側面11bと底面11aとの境界11cは、角がなくなって丸くなる。
このようにピーニング処理を止まり穴の底面11aに施せば、止まり穴の底面11aの周辺に圧縮の残留応力が付与されることから、疲労寿命が改善される。ここで、止まり穴の側面11bと底面11aとの境界11cが角状であれば、荷重が鋼部材10に付与された際に応力集中が境界11cの周辺に発生する。ピーニング処理によって止まり穴の側面11bと底面11aとの境界11cで角がなくなるので、境界11cの周辺の応力集中が低減される。これによっても、疲労寿命が改善される。
このため、本実施形態の疲労寿命の改善方法は、穿孔法による残留応力測定のための止まり穴に起因する疲労寿命の低下を抑制できる。したがって、穿孔法による残留応力測定の適用範囲を広げることができる。例えば、消耗することなく、実用性に影響を及ぼす部位であっても、穿孔法による残留応力測定を行うことが可能となる。より具体的には、大型の構造物が備える鋼部材の応力集中部および小型の構造物が備える鋼部材について、穿孔法による残留応力測定を行うことが可能となる。
ピンで打撃するピーニング処理を止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dにも施すのが好ましい。ピーニング処理を止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dに施すことにより、境界11dの周辺に圧縮の残留応力が付与される。これに伴い、境界11dで角がなくなり、面取りを施したような形状、すなわち、テーパー状になる(図1C参照)。あるいは、境界11dが、ラウンド面となる。加えて、止まり穴の側面11bが傾斜してテーパー状となる。
このようにピーニング処理を止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dに施せば、境界11dの周辺に圧縮の残留応力が付与されることから、疲労寿命がさらに改善される。ここで、止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dが角状であれば、荷重が鋼部材10に付与された際に境界11dの周辺で応力集中が発生する。ピーニング処理によって止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dで角がなくなるので、その応力集中が低減する。これによっても、疲労寿命がさらに改善される。
ピンで打撃するピーニング処理は、単一のピンで打撃する方式に限定されず、複数のピンで打撃する方式を採用してもよい。複数のピンで打撃する方式では、例えば、複数のピンをそれぞれ独立して振動させ、それらのピンを止まり穴に押し当てる。これにより、止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dがピンで打撃され、境界11dで角がなくなる。それに伴い、一部のピンの先端が止まり穴の底面11aに到達し、ピーニング処理が止まり穴の底面11aにも施される。
ピンの振動は、60Hz以上であるのが好ましく、20kHz以上であるのがより好ましい。周波数が高くなるほど、処理時間当たりのピーニング回数が増え、処理時間を短縮でき、効率的にピーニング処理を施すことができるためである。なお、20kHz以上で振動するピンで打撃するピーニング処理は、UIT(超音波衝撃処理)とも呼ばれる。UITの処理装置では、周波数の上限は特に制限はなく、機器の仕様に応じて適宜決めればよく、上限の一例として50kHzとしてもよい。
ピーニング処理を施せる限り、ピンの駆動方式に特に制限はない。例えば、磁歪振動子またはピエゾ圧電素子を用いてピンを振動させてもよい。また、空気圧や電動で振動を発生させる各種ハンマー機構を用いてもよい。
ピーニング処理では、一般的な形状のピンを用いることができ、例えば、後述の図2に示す形状のピンを用いることができる。
図2は、ピンの形状例を示す模式図である。図2に示すピン20では、側面20aが円筒面であり、先端が所定の曲率半径を有する凸状の曲面である。このように先端20bに丸みを有するピン20をピーニング処理で用いることができる。
止まり穴の底面を打撃するので、ピンの直径D2(mm、図2参照)は止まり穴の直径D1(mm、図1A参照)より小さくする。止まり穴の直径D1(mm)とピンの直径D2(mm)の差が小さいと、ピーニング処理の際に止まり穴の側面とピンが接触し、ピンの振動を阻害するおそれがある。このため、ピンの直径D2(mm)が、止まり穴の直径D1(mm)の98%以下であるのが好ましい。すなわち、D2/D1が98%以下であるのが好ましい。一方、ピーニング処理に要する時間を削減する観点から、ピンの直径D2(mm)が、止まり穴の直径D1(mm)の50%以上であるのが好ましい。
ピンの先端20bの曲率半径Rpが大きすぎると、ピーニング処理によって止まり穴の底面が、凹状の曲面となるが、その曲面の曲率半径も大きくなることから、平面に近い形状となる。ピンの先端20bの曲率半径Rpが小さいほど、止まり穴の側面11bと底面11aとの境界11cにおける残留応力の集中が改善されるため、ピンの先端20bの曲率半径Rpは、ピンの直径D2(mm)の300%以下であるのが好ましい。一方、ピンの先端20bの曲率半径Rpの下限は、ピンの直径D2(mm)から自ずと定まり、ピンの直径D2の50%である。
ピンの先端20bの曲率半径Rpがピンの直径D2の50%を超える場合(Rp/D2>0.5である場合)、図2に示すように、ピンの側面20aと先端20bの境界20cが不連続となる。この場合、ピーニング処理によって止まり穴の底面に微小な凹凸が形成されやすくなる。これを防止してピーニング処理後の止まり穴の底面形状をなだらかにするため、ピンの側面20aと先端20bの境界20cをラウンド形状とするのが好ましい。
ピンの側面20aと先端20bの境界20cをラウンド形状とする場合、その境界20cのラウンド形状の曲率半径は、0.1mm以上とするのが好ましい。これは、境界20cのラウンド形状の曲率半径を0.1mm未満とするのが、技術的に困難なことによる。一方、その曲率半径の上限は、ピンの直径D2(mm)から自ずと定まり、ピンの直径D2の50%である。
止まり穴の底面11a、および、止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dの両方にピーニング処理を施す場合、順序に特に制限はない。すなわち、図1A〜図1Cに示すように、止まり穴の底面11aにピーニング処理を施した後、止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dにピーニング処理を施してもよい。あるいは、止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dにピーニング処理を施した後、止まり穴の底面11aにピーニング処理を施してもよい。あるいは、前述の複数のピンで打撃する方式のように、止まり穴の側面11bと鋼部材の表面10aとの境界11dに処理を施しながら、止まり穴の底面11aに処理を施してもよい。
ピーニング処理の条件(例えば、振動の周波数、振幅および処理時間等)は、鋼部材の機械的性質および鋼部材(構造物)に繰り返し付与される荷重等に基づいて適宜設定できる。
止まり穴11の直径D1が1.5mm以上であれば、止まり穴11によって構造物に付与される損傷の度合が大きくなり、構造物の疲労寿命の低下が発生しやすい。この場合、本実施形態の疲労強度の改善方法を適用すれば、疲労寿命の低下を抑制する効果も増大する。したがって、止まり穴11の直径D1は、1.5mm以上とするのが好ましい。一方、穿孔法による残留応力測定で開けられる止まり穴の直径は、最大で6mm程度である。このため、止まり穴11の直径D1は、6mm以下とするのが好ましい。
[構造物の製造方法]
本実施形態の構造物の製造方法は、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられた鋼部材を備える構造物を対象とする。その構造物は、例えば、実用される構造物とすることができ、より具体的には、橋梁、船舶または建設機械等とすることができる。
本実施形態の構造物の製造方法は、上述の疲労寿命の改善方法を鋼部材の止まり穴に適用することにより、構造物を得る。具体的には、上述の疲労寿命の改善方法と同様のピーニング処理を止まり穴の底面に施す。これにより、止まり穴の底面に位置する部位を深さ方向とともに止まり穴の中心側から外側に押し込む。このため、穿孔法による残留応力測定に用いた止まり穴に起因する疲労寿命の低下を抑制できることから、得られる構造物の疲労寿命の低下を抑制できる。
本実施形態の構造物の製造方法では、上述の疲労寿命の改善方法と同様に、ピーニング処理を止まり穴の側面と鋼部材の表面との境界に施すのが好ましい。本実施形態の構造物の製造方法では、ピーニング処理の方式、ピンの形状、ピーニング処理の順序およびピーニング処理の条件等について、上述の疲労寿命の改善方法と同様の形態を採用できる。
本実施形態の構造物の製造方法は、ピーニング処理を施すステップの前に、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられた鋼部材を備える構造物を準備するステップを追加してもよい。すなわち、構造物が備える鋼部材に、穿孔法による残留応力測定のための止まり穴を開けるステップを追加してもよい。
本発明の効果を確認するため、穿孔法による残留応力測定のための止まり穴を試験片に開けた後、止まり穴にピーニング処理を施し、その後、試験片を疲労試験に供した。
[試験方法]
図3は、試験片の形状を模式的に示す正面図である。図3に示す試験片30は、板状であり、長手方向の中央に幅W2が一定である平行部33と、長手方向の両端に幅W1が一定である保持部34と、平行部33と保持部34とを繋ぐ肩部35と、を有する。平行部33の長手方向の中央に穿孔法による残留応力測定のために止まり穴31を開けた。保持部34には、試験機に固定するために複数の貫通穴32を設けた。また、肩部35の側面は、所定の半径R1のラウンド面とした。
試験片30の寸法は、以下の通りとした。
試験片の長さL1:310mm
平行部の長さL2:60mm
保持部の幅W1:90mm
平行部の幅W2:60mm
試験片の板厚:12mm
肩部の半径R1:150mm
貫通穴の直径:16mm
試験片30の材質は、以下の通りとした。
鋼種:高張力鋼
グレード:日本海事協会のNK規格のKA32
降伏応力YS:354MPa
引張強さTS:487MPa
穿孔法による残留応力測定のための止まり穴31の寸法は、以下の通りとした。
直径D1:3.2mm
深さ:2.0mm
本発明例1では、試験片の止まり穴31の底面にピーニング処理を施した後、試験片30を疲労試験に供した。本発明例2では、試験片の止まり穴31の底面にピーニング処理を施した後、止まり穴の側面と試験片の表面との境界にピーニング処理を施し、その後、試験片30を疲労試験に供した。比較例1では、試験片の止まり穴31にピーニング処理を施すことなく、試験片30を疲労試験に供した。
ピーニング処理では、前記図2に示す形状のピンを用いた。ピーニングの条件は、以下の通りとした。
処理方法:UIT
ピンの直径D2:3mm
ピンの先端の曲率半径Rp:3mm
振動周波数:27kHz
ピーニング処理後、止まり穴31の形状を、シリコン系歯科用印象材を用いて計測した。また、止まり穴31の周辺の残留応力を、X線回折法によって測定した。残留応力の測定は、試験片の長手方向に沿って行った。その際、X線源はCr−Kα線、コリメータ径は1mmとした。
疲労試験では、以下の条件で繰り返し応力を試験片に付与した。
最大応力σmax:330MPa
応力比R:0.1
周波数:3Hz
[止まり穴の形状]
図4Aおよび図4Bは、比較例1の止まり穴の形状を示す図である。これらの図のうち、図4Aは止まり穴を撮像した写真、図4Bは、止まり穴の中心からの距離と高さの関係を示すグラフである。比較例1の止まり穴31には、ピーニング処理が施されていないので、図4Aおよび図4Bに示す止まり穴31の形状は、穿孔法による残留応力測定の際の穴開けによって形成された形状である。
図5Aおよび図5Bは、本発明例1の止まり穴の形状を示す図である。これらの図のうち、図5Aは止まり穴を撮像した写真、図5Bは、止まり穴の中心からの距離と高さの関係を示すグラフである。本発明例1では、止まり穴31の底面のみにピーニング処理を施した。その結果、ピンの先端の形状が止まり穴31の底面に転写され、止まり穴31の底面の形状が平面状から凹状の曲面に変形した。これに伴い、止まり穴の側面と底面との境界は、角がなくなって丸くなった。また、止まり穴の側面と試験片の表面の境界周辺において、試験片の表面が盛り上がり、バリが形成された。
図6Aおよび図6Bは、本発明例2の止まり穴の形状を示す図である。これらの図のうち、図6Aは止まり穴を撮像した写真、図6Bは、止まり穴の中心からの距離と高さの関係を示すグラフである。本発明例2では、止まり穴31の底面にピーニング処理を施した後、止まり穴の側面と試験片の表面との境界にピーニング処理を施した。その結果、ピンの先端の形状が止まり穴31の底面に転写され、止まり穴31の底面の形状が平面状から凹状の曲面に変形した。止まり穴の側面と試験片の表面との境界で角がなくなり、テーパー状に変形した。加えて、止まり穴の側面が傾斜してテーパー状となった。
[残留応力の測定結果]
図7は、穴の中心からの距離と残留応力の関係を示す図である。図7は、ピーニング処理の前後の残留応力の測定結果を示す図である。図7より、比較例1の試験片の表面には、引張の残留応力が発生していた。本発明例1では、試験片のうちの止まり穴の周辺で残留応力が減少した。本発明例2では、ピーニング処理を施した範囲内(ピーニング処理の際にピンによって直接打撃された範囲内)で圧縮の残留応力が発生した。
[疲労試験の結果]
図8は、疲労寿命を示す図である。図8より、比較例1では、疲労寿命が3×105回程度であった。これに対し、本発明例1では、疲労寿命が60%程度改善した。また、本発明例2では、疲労寿命が100%程度改善した。
図9Aおよび図9Bは、試験片の破断の起点を示す模式図である。これらの図のうち、図9Aは、正面図、図9Bは、IXB−IXB断面図である。比較例1では、試験片30が、A1矢印で指し示す位置を起点に破断した。すなわち、試験片30が、止まり穴31の底面と側面の境界を起点に破断した。
これに対し、本発明例1では、試験片30が、A2矢印で指し示す位置を起点に破断した。すなわち、試験片30が、止まり穴31の側面と試験片30の表面の境界を起点に破断した。このため、止まり穴31の底面にピーニング処理を施せば、止まり穴31の底面と側面の境界(A1矢印参照)での応力集中を抑制できることが明らかになった。
また、本発明例2では、試験片30が、A3矢印で指し示す位置を起点に破断した。すなわち、試験片30が、止まり穴31およびその周辺を起点とすることなく、平行部33と肩部35の境界を起点に破断した。このため、止まり穴31の底面とともに、止まり穴31の側面と試験片30の表面との境界にピーニング処理を施せば、止まり穴31に起因する疲労寿命の低下を抑制できることが明らかになった。
本発明の疲労寿命の改善方法および構造物の製造方法は、疲労寿命の低下を抑制できる。このような本発明を用いれば、穿孔法による残留応力測定の適用範囲を拡大でき、疲労損傷の防止に大きく寄与できる。
10:鋼部材、 10a:鋼部材の表面、
11:穿孔法による残留応力測定のための止まり穴、 11a:底面、
11b:側面、 11c:側面と底面の境界、
11d:側面と鋼部材の表面との境界、
20:ピン、 20a:側面、 20b:先端、
30:試験片、 31:穿孔法による残留応力測定のための止まり穴、
32:貫通穴、 33:平行部、 34:保持部、 35:肩部

Claims (8)

  1. 穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられた鋼部材を備える構造物の疲労寿命を改善する方法であって、
    当該改善方法は、ピンで打撃するピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップを含む、疲労寿命の改善方法。
  2. 請求項1に記載の疲労寿命の改善方法であって、
    前記ピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップでは、前記止まり穴の底面に位置する部位を深さ方向とともに前記止まり穴の中心側から外側に押し込む、疲労寿命の改善方法。
  3. 請求項1または2に記載の疲労寿命の改善方法であって、
    当該改善方法は、前記ピーニング処理を前記止まり穴の側面と前記鋼部材の表面との境界に施すステップを含む、疲労寿命の改善方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の疲労寿命の改善方法であって、
    前記ピーニング処理では、直径が前記止まり穴の直径の98%以下であり、かつ、先端の曲率半径が前記ピンの直径の300%以下であるピンを用いる、疲労寿命の改善方法。
  5. 鋼部材を備える構造物の製造方法であって、
    前記鋼部材には、穿孔法による残留応力測定のために止まり穴が開けられ、
    当該製造方法は、ピンで打撃するピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップを含む、構造物の製造方法。
  6. 請求項5に記載の構造物の製造方法であって、
    前記ピーニング処理を前記止まり穴の底面に施すステップでは、前記止まり穴の底面に位置する部位を深さ方向とともに前記止まり穴の中心側から外側に押し込む、構造物の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の構造物の製造方法であって、
    当該製造方法は、前記ピーニング処理を前記止まり穴の側面と前記鋼部材の表面との境界に施すステップを含む、構造物の製造方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の構造物の製造方法であって、
    前記ピーニング処理では、直径が前記止まり穴の直径の98%以下であり、かつ、先端の曲率半径が前記ピンの直径の300%以下であるピンを用いる、構造物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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