[目地構造を有する壁の概要]
本実施の形態に係る目地構造を有する壁は、住宅等の建造物等を含む構造物の目地構造を有する壁であって、複数の被着体を有して構成される壁である。複数の被着体間には所定の間隙が設けられており、加熱後のモジュラスの変化率が低い一液常温湿気硬化型シーリング材が間隙にプライマーを介して充填されることにより、水浸漬や熱暴露した場合であってもモジュラスが大きくならずに柔軟性を保ち、数十年以上の長期耐久性を実現できる目地構造を有する壁が構成される。
[目地構造を有する壁の詳細]
図1は、本実施の形態に係る目地構造を有する壁の概念的な断面の概要の一例を示す。
本実施の形態に係る目地構造を有する壁1は、第1の被着体10と、第1の被着体10との間に間隙を挟んで隣り合う位置に配置される第2の被着体12と、間隙に充填され、加熱後のモジュラスの変化率が低い一液常温湿気硬化型シーリング材(以下、「シーリング材20」若しくは単に「シーリング材」という場合がある。)とを備える。また、目地構造を有する壁1は、第1の被着体10とシーリング材20との間、及び第2の被着体とシーリング材20との間に、プライマー層30を備える。更に、目地構造を有する壁1は、構造物(図示しない)とシーリング材20との間にバックアップ材40を設けることもできる。なお、一液常温湿気硬化型シーリング材は、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物(以下、単に「シーリング材組成物」という場合がある。)を硬化させて形成される。
(第1の被着体10及び第2の被着体12)
第1の被着体10及び第2の被着体12は、具体的には、窯業系、金属系、木質系、及び/又は樹脂系サイディング材である。本実施形態においては、第1の被着体10及び第2の被着体12は、例えば、主としてセメント、繊維質原料、及び混和剤を含み、耐火性に優れ、大量生産できるセラミック板(なお、セラミック板には陶板が含まれる)等の窯業系サイディング材を用いることが好ましい。
(シーリング材20)
本実施形態に係るシーリング材20は、一液常温湿気硬化型シーリング材である。一液常温湿気硬化型シーリング材としては、「NPO法人住宅外装テクニカルセンター規格JTC S−0001窯業系サイディング用シーリング材 JTC規格2004年(平成16年9月1日)」(以下、「サイディング用シーリング材規格」という)に準拠して試験した引張接着性試験結果において、初期の50%引張モジュラスが0.2N/mm2未満であるシーリング材を用いる。更に、一液常温湿気硬化型シーリング材は、熱暴露促進試験後(すなわち、加熱後)の50%引張モジュラスが0.2N/mm2未満であるシーリング材であることが好ましい。
より具体的に、一液常温湿気硬化型シーリング材としては、サイディング用シーリング材規格に準拠して試験した引張接着性試験結果において、加熱後の50%伸長時モジュラスが0.2N/mm2未満であり、加熱後の50%伸長時モジュラスの変化率が40%以下であり、加熱後の最大荷重時の伸長率が300%以上であり、加熱後の最大荷重時の伸長率の変化率が40%以下であるシーリング材を用いることが好ましい。また、一液常温湿気硬化型シーリング材としては、サイディング用シーリング材規格に準拠して試験した引張接着性試験結果において、加熱後の50%伸長時モジュラスが0.15N/mm2未満であり、加熱後の50%伸長時モジュラスの変化率が30%以下であり、加熱後の最大荷重時の伸長率が400%以上であり、加熱後の最大荷重時の伸長率の変化率が30%以下であるシーリング材を用いることがより好ましい。
なお、加熱後の50%伸長時モジュラスの変化率は、「加熱後の50%伸長時モジュラス」の値から「初期の50%伸長時モジュラス」の値を差し引いて得られる値の絶対値を「初期の50%伸長時モジュラス」の値で除して100倍して得られる。また、加熱後の最大荷重時の伸長率の変化率は、「加熱後の最大荷重時の伸長率」の値から「初期の最大荷重時の伸長率」の値を差し引いて得られる値の絶対値を「初期の最大荷重時の伸長率」の値で除して100倍して得られる。ここで「初期」とは、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を調製し、調製した組成物を硬化させた時点を指す。
例えば、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物としては、(A)数平均分子量が15,000以上の架橋性ケイ素基含有有機重合体と、組成物の硬化物の柔軟性及び/又は接着性を確保する(B)単官能エポキシ化合物と、(C)水と反応して1個のアルコキシシリル基を有するアミン化合物を生成するアルコキシシラン化合物とを含有するシーリング材組成物を用いる。なお、一液常温湿気硬化型シーリング材は空気中の湿気により架橋性ケイ素基の架橋が常温で進み硬化する。したがって、一液常温湿気硬化型シーリング材は、通常、ユーザが使用するまで(例えば、1年間)性能を保持できるように、水分の浸入を遮断できる容器に充填される。本実施形態に係る一液型湿気硬化型シーリング材組成物は、ケチミン化したアミノシラン化合物を含むことができるので、この場合、一液型であっても貯蔵安定性に優れた特性を示す。
(A成分:架橋性ケイ素基含有有機重合体)
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の架橋性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。架橋性ケイ素基としては、例えば、一般式(1)で示される基が好適である。
式(1)中、R1は、有機基を示す。なお、R1は、炭素数が1〜20の炭化水素基が好ましい。これらの中でR1は、特にメチル基が好ましい。R1は、置換基を有していてもよい。R1が2個以上存在する場合、複数のR1は同一であっても、異なっていてもよい。Xは水酸基、又は加水分解性基を示し、Xが2個以上存在する場合、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3の整数のいずれかである。硬化性を考慮し、十分な硬化速度を有するシーリング材組成物を得るためには、式(1)においてaは2以上が好ましく、3がより好ましい。十分な柔軟性を有するシーリング材組成物を得るためには、aは2が好ましい。
加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができる。加水分解性基や水酸基が架橋性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
Xで示される加水分解性基としては、特に限定されない。例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ない基の方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常、メトキシ基やエトキシ基が用いられる。
架橋性ケイ素基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、−Si(OR)3、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基、−SiR1(OR)2が挙げられる。ここでRはメチル基やエチル基等のアルキル基である。また、架橋性ケイ素基は1種で用いても、2種以上併用してもよい。架橋性ケイ素基は、主鎖又は側鎖、若しくはいずれに結合していてもよい。シーリング材組成物の硬化物の引張特性等の硬化物の物性が優れる観点からは、架橋性ケイ素基が分子鎖末端に存在することが好ましい。(A)成分の有機重合体において、架橋性ケイ素基は、有機重合体1分子中に平均して1.0個以上5個以下存在することが好ましく、1.1〜3個存在することがより好ましい。
(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の主鎖骨格としては、具体的には、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、又は、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ポリアミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。これらの骨格は、(A)架橋性ケイ素基含有有機重合体の中に単独で含まれていても、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。本実施形態では、硬化して得られるシーリング材の伸び特性を良好にする観点からテレケリックポリマー(すなわち、両末端に官能基としてのシリル基を実質的に有する重合体)を含むことが好ましい。ここで「実質的に」とは、主鎖骨格の50%以上が両末端にシリル基を有する重合体であることを示す。よって、本実施形態に係るテレケリックポリマーは、その全体の50%以上の主鎖骨格が、両端にシリル基を有する重合体を含むことになる。なお、テレケリックポリマーは、伸び特性を良好にする観点から、両端にシリル基を有する重合体を、その全体の60%以上含むことが好ましく、70%以上含むことがより好ましく、80%以上含むことが最も好ましい。また、硬化して得られるシーリング材が優れた接着性を発揮し、柔軟性を維持する観点から、主鎖骨格がブチル(メタ)アクリレートであり末端に官能基を有するポリマーを所定量、含むことが好ましい。更に、シーリング材組成物の相溶性を向上させる観点から、主鎖骨格がブチル(メタ)アクリレート単量体単位、及びステアリル(メタ)アクリレート単量体単位で構成され、末端に官能基を有するポリマーを所定量、含むことも好ましい。
更に、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体や、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。また、ポリオキシアルキレン系重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、透湿性が高く一液型組成物にした場合に深部硬化性に優れることから特に好ましい。
シーリング材に求められる大きい伸び特性や小さい引張モジュラス(引張応力)を有する観点から、これらの中では、オキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、若しくはこれらの混合物が主鎖骨格として好ましい。特に、シーリング材組成物の硬化物の引張モジュラスとしては、サイディング用シーリング材規格に準拠して測定される試験温度23℃における初期の50%引張モジュラスが0.2N/mm2未満であることが好ましい。なお、JASS8防水工事(日本建築学会)において規定される50%引張モジュラスも低い値であることが好ましい。また、シーリング材、特に建築用に用いられるシーリング材は屋外で長期間暴露されることから、悪条件での暴露後においても引張モジュラスが保持されることが好ましい。例えば、熱暴露促進試験後の引張モジュラスが0.2N/mm2を超えないことが好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(2)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
−R2−O−・・・(2)
一般式(2)中、R2は炭素数が1〜14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基であり、炭素数が1〜14の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が好ましく、炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐アルキレン基が更に好ましい。
一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例としては、
−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C2H5)O−、−CH2C(CH3)2O−、−CH2CH2CH2CH2O−等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特にオキシプロピレンを主成分とする重合体からなる主鎖骨格が好ましい。
架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の分子量は、硬化物の初期の引張特性である引張モジュラスを小さくし、破断時伸びを大きくするため高い分子量が好ましい。本実施形態においては、オキシアルキレン系重合体の数平均分子量の下限としては15,000が好ましく、18,000以上が更に好ましく、20,000以上がより好ましい。分子量が高くなると重合体の粘度が上昇してシーリング材組成物の粘度も上昇するので、数平均分子量が20,000以上の重合体を一部に含む重合体も好ましい。また、数平均分子量の上限は50,000、更には40,000が好ましい。なお、本実施形態に係る数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量である。数平均分子量が15,000未満の場合、引張モジュラスや破断時伸びが十分でない場合があり、50,000を超えると組成物の粘度が大きくなり作業性が低下することがある。
また、架橋性ケイ素基を有する数平均分子量15,000以上の(メタ)アクリル系重合体(以下、A1成分という場合がある。)と、架橋性ケイ素基を有する数平均分子量15,000以上のオキシアルキレン系重合体(以下、A2成分という場合がある。)とを併用できる。本実施形態に係る一液常温湿気硬化型シーリング材組成物を硬化して得られるシーリング材が、加熱後のモジュラスの変化率を低くし、加熱後の伸長率を大きくする観点から、A1成分は、A1成分とA2成分との合計量に対して10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体において架橋性ケイ素基の含有量を適度に低下させると、硬化物における架橋密度が低下するので、初期においてより柔軟な硬化物になり、モジュラス特性が小さくなると共に破断時伸び特性が大きくなる。ポリオキシアルキレン系重合体において架橋性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.2個以上2.8個以下存在することが好ましく、1.3個以上2.6個以下存在することがより好ましく、1.4個以上2.4個以下存在することが更に好ましい。分子中に含まれる架橋性ケイ素基の数が1個未満になると硬化性が不十分になり、また多すぎると網目構造があまりに密になるため良好な機械特性を示さなくなる。そして、主鎖骨格が直鎖である2官能の重合体の場合、当該重合体の架橋性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.2個以上1.9個未満存在することが好ましく、1.25個以上1.8個以下存在することがより好ましく、1.3個以上1.7個未満存在することが更に好ましい。また、特に、フタル酸エステル系可塑剤のような分子量800以下、更には分子量1000以下の低分子量の可塑剤を含有しない、いわゆる無可塑配合のシーリング材組成物を製造する場合には、架橋性ケイ素基は重合体1分子中に平均して1.2個以上1.8個以下、更に好ましくは1.3個以上1.7個以下存在することが好ましい。
架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体は直鎖状でも分岐を有してもよい。引張モジュラスを小さくする観点からは、架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体は直鎖状の重合体が好ましい。特に、無可塑配合のシーリング材組成物を製造する場合、直鎖状であることが好ましい。また、架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2以下、特には1.6以下が好ましい。
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、例えば、複金属シアン化物錯体触媒による重合法等が挙げられるが、特に限定されない。複金属シアン化物錯体触媒による重合法によれば数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。ウレタン結合成分としては、例えば、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートと水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体との反応から得られる成分を挙げることができる。
分子中に不飽和基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基等の官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を有する官能基、並びに架橋性ケイ素基を反応させることで、ポリオキシアルキレン系重合体へ架橋性ケイ素基を導入できる(以下、高分子反応法という)
高分子反応法の例として、不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体に架橋性ケイ素基を有するヒドロシランや、架橋性ケイ素基を有するメルカプト化合物を作用させてヒドロシリル化やメルカプト化し、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を得る方法を挙げることができる。不飽和基含有ポリオキシアルキレン系重合体は水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有するポリオキシアルキレン系重合体を得ることができる。
また、高分子反応法の他の例として、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体とイソシアネート基、並びに架橋性ケイ素基とを反応させる方法や、末端にイソシアネート基を有するポリオキシアルキレン系重合体と水酸基やアミノ基等の活性水素基、並びに架橋性ケイ素基とを反応させる方法を挙げることができる。イソシアネート化合物を用いると、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を容易に得ることができる。
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、各種のモノマーを用いることができる。例えば、アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー;脂環式(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;芳香族(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸の誘導体;フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共に、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、無水マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。また、単量体単位(以下、他の単量体単位とも称する)として、これら以外にアクリル酸、グリシジルアクリレートを含有してもよい。
これらは、単独で用いても、複数を共重合させてもよい。生成物の物性等の観点からは、(メタ)アクリル酸系モノマーからなる重合体が好ましい。また、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを用い、必要に応じて他の(メタ)アクリル酸モノマーを併用した(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましい。更に、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを併用することで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体中のケイ素基の数を制御できる。接着性が良いことからメタクリル酸エステルモノマーからなるメタクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。また、低粘度化、柔軟性の付与、粘着性の付与をする場合、アクリル酸エステルモノマーを適宜用いることが好ましい。なお、本実施形態において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、例えば、ラジカル重合反応を用いたラジカル重合法を用いることができる。ラジカル重合法としては、重合開始剤を用いて所定の単量体単位を共重合させるラジカル重合法(フリーラジカル重合法)や、末端等の制御された位置に反応性シリル基を導入できる制御ラジカル重合法が挙げられる。ただし、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いるフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなる。したがって、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得る場合には、制御ラジカル重合法を用いることが好ましい。
制御ラジカル重合法としては、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法やリビングラジカル重合法が挙げられる。付加−開裂移動反応(ReversibleAddition-FragmentationchainTransfer;RAFT)重合法、遷移金属錯体を用いたラジカル重合法(Transition-Metal-MediatedLivingRadicalPolymerization)、原子移動ラジカル重合法(Atom-Transfer-Radical-Polymerization;ATRP)等の等のリビングラジカル重合法を採用することが好ましい。また、反応性シリル基を有するチオール化合物を用いた反応や、反応性シリル基を有するチオール化合物、及びメタロセン化合物を用いた反応も好ましい。
これらの架橋性ケイ素基を有する有機重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。具体的には、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体、並びに架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体からなる群から選択される2種以上をブレンドした有機重合体も用いることができる。特に、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体が優れた特性を有する。本実施の形態に係るシーリング材組成物に適用すると、最大荷重時の伸長率、及び接着力を高めることができる。
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体の製造方法としては、様々な方法が挙げられる。例えば、架橋性ケイ素基を有し、分子鎖が実質的に、一般式(3):
−CH2−C(R3)(COOR4)− ・・・(3)
(式中、R3は水素原子又はメチル基、R4は炭素数が1〜5のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、一般式(4):
−CH2−C(R3)(COOR5)− ・・・(4)
(式中、R3は前記に同じ、R5は炭素数が6以上のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位からなる共重合体に、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体をブレンドして製造する方法が挙げられる。
一般式(3)のR4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数が1〜5、好ましくは炭素数が1〜4、更に好ましくは炭素数が1〜2のアルキル基が挙げられる。なお、R4のアルキル基は単独でもよく、2種以上混合していてもよい。
一般式(4)のR5としては、例えば、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数が6以上、通常は炭素数が7〜30、好ましくは炭素数が8〜20の長鎖のアルキル基が挙げられる。なお、R5のアルキル基はR4の場合と同様、単独でも2種以上混合してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子鎖は実質的に式(3)及び式(4)の単量体単位からなる。ここで、「実質的に」とは、共重合体中に存在する式(3)及び式(4)の単量体単位の合計が50質量%を越えることを意味する。式(3)及び式(4)の単量体単位の合計は好ましくは70質量%以上である。また式(3)の単量体単位と式(4)の単量体単位との存在比は、質量比で95:5〜40:60が好ましく、90:10〜60:40が更に好ましい。
架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とをブレンドした有機重合体の製造方法に用いられる架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体として、例えば、架橋性ケイ素基を有し、分子鎖が実質的に(1)炭素数が1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(2)炭素数が10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とを含有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体も用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃未満の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がアクリル酸ブチル単量体単位から主として構成される場合、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましく、35,000以上が更に好ましく、40,000以上が特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以上の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がメタクリル酸メチル単量体単位から主として構成される場合、数平均分子量は、600以上10,000以下が好ましく、600以上5,000以下がより好ましく、1,000以上4,500以下が更に好ましい。数平均分子量をこの範囲とすることにより、架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体との相溶性が向上する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体との配合比には特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃未満の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がアクリル酸ブチル単量体単位から主として構成される場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との合計100質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が30質量部以上90質量部以下の範囲内であることが好ましく、40質量部以上80質量部以下の範囲内であることがより好ましく、50質量部以上70質量部以下の範囲内であることが更に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が90質量部より多いと粘度が高くなり、作業性が悪化するため好ましくない。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以上の場合、例えば(メタ)アクリル酸エステル系重合体がメタクリル酸メチル単量体単位から主として構成される場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との合計100質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が10質量部以上60質量部以下の範囲内であることが好ましく、20質量部以上50質量部以下の範囲内がより好ましく、25質量部以上45質量部以下の範囲内が更に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体が60質量部より多いと粘度が高くなり、作業性が悪化するため好ましくない。
更に、本実施形態においては架橋性ケイ素基を有する飽和炭化水素系重合体と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とをブレンドした有機重合体も用いることができる。架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をブレンドして得られる有機重合体の製造方法としては、他にも、架橋性ケイ素基を有する有機重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合する方法を利用できる。
(B成分:単官能エポキシ化合物)
本実施形態に係る(B)成分である分子中に1個のエポキシ基を有し、架橋性ケイ素基を有しない化合物(以下、単官能エポキシ化合物ともいう)としては、アルキルモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、直鎖アルコールモノグリシジルエーテル、ポリグリコールグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のグリシジルエーテル、グリシジルエステル若しくはこれらの混合物、1,2エポキシドデカン、スチレンオキシド等のエポキシ炭化水素若しくはこれらの混合物、シクロヘキサンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、下記式(a)〜(g)等で表される脂環式エポキシ化合物が挙げられる。これらの中では、脂環式エポキシ化合物が好ましい。
(B)単官能エポキシ化合物の使用量は、(A)成分の架橋性ケイ素基を有する有機重合体100質量部に対し、1〜100質量部の範囲である。
ここで、分子中に1個のエポキシ基を有し、架橋性ケイ素基を有しない化合物を添加すると、硬化物の柔軟性を改善できると共に、水中に浸漬後や熱暴露後に伸び特性の低下を防止できる。本実施形態に係るシーリング材組成物は、サイディング用シーリング材規格に準拠して測定される試験温度23℃における初期の50%引張モジュラスを0.2N/mm2未満にすることができる。(B)成分としては、架橋性ケイ素基を有しないことが要求される。架橋性ケイ素基を有する場合、架橋性ケイ素基が(A)成分の重合体と架橋反応を起こすので、柔軟性を改善することが困難になり得る。
(C成分:ケチミン化したアミノシラン化合物)
本実施形態に係るシーリング材組成物は(C)成分として、水と反応して、1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するアミン化合物を生成するアルコキシシラン化合物(ケチミン化したアミノシラン化合物)を含有してもよい。アルコキシシリル基は、ケイ素原子にアルコキシ基が結合したケイ素原子含有基である。かかる化合物としては、アルコキシシリル基を有するアミン化合物(以下、アミノシラン化合物ともいう)のアミノ基をカルボニル化合物でケチミン化等した化合物を挙げることができる。ケチミン化するアミノシラン化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
また、カルボニル化合物としては、後述する架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物の欄で説明するカルボニル化合物を用いることができる。ケチミン中にイミノ基が存在する場合には、イミノ基をスチレンオキサイド;ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルエステル等と反応させてもよい。
アミノ基をケチミン化した化合物等の(C)成分を用いると、組成物の保存中にエポキシ樹脂と反応しないので、一成分型組成物にすることができる。(C)成分は接着性付与剤として作用し、エポキシ樹脂の硬化剤や硬化触媒としても作用する。(C)成分は、2種以上併用して用いることもできる。
(C)成分の使用量は、(A)成分の重合体100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲で添加でき、1〜10質量部の範囲で添加することが好ましい。
(その他の配合物質)
本実施形態に係るシーリング材組成物に、多官能エポキシ樹脂、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物、(C)成分以外のエポキシ樹脂硬化剤、可塑剤、充填剤、シラノール縮合触媒、シランカップリング剤、希釈剤、脱水剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、発泡剤等を更に添加してもよい。
本実施形態に係るシーリング材組成物は、本実施形態に係るシーリング材の効果を阻害しない範囲で、多官能エポキシ樹脂を含有してもよい。多官能エポキシ樹脂としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である様々なエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、pオキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、mアミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,Nジグリシジルアニリン、N,Nジグリシジル−oトルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリン等の多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂等の不飽和重合体のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中では特に下記式(5)で示されるエポキシ基を少なくとも分子中に2個含有する化合物が、硬化時の反応性が高く、また、硬化物が3次元的網目を形成しやすい等の観点から好ましい。
また、多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂類、又はビスフェノールF型エポキシ樹脂類、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂類、ノボラック型エポキシ樹脂等の芳香環を有するエポキシ樹脂類が更に好ましい。このような芳香環を有するエポキシ樹脂類の中でも、基材への密着性の観点からは、芳香環を有するエポキシ樹脂類であって、柔軟性を付与するセグメントであるオキシアルキレン鎖を有しない化合物が特に好ましい。更に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂類が最も好ましく、特にオキシアルキレン鎖を有しないビスフェノールA型エポキシ樹脂類が好ましい。分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物は、架橋性ケイ素基を有する有機重合体、特に架橋性ケイ素基を有するオキシアルキレン系重合体の接着性を向上させる機能を有する。エポキシ樹脂は常温で液状であることが好ましい。また、エポキシ樹脂の分子量は500以下であることが好ましい。
多官能エポキシ樹脂の使用量は、(A)架橋性ケイ素基を有する有機重合体100質量部に対し、1〜50質量部の範囲である。1質量部未満になると、シーリング材組成物の硬化物の接着性が不十分になり、50質量部を超えると、シーリング材組成物の硬化物の可撓性が不十分になる。好ましい範囲は1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上20質量部以下、更に好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
本実施形態に係るシーリング材組成物は、本実施形態に係るシーリング材の効果を阻害しない範囲で、分子中にケチミン基を有し、架橋性ケイ素基を有しない化合物(以下、ケチミンともいう)、すなわち、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物を含有してもよい。架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物をシーリング材組成物に添加することで、シーリング材組成物の硬化物のモジュラスの変化率を低くできる。すなわち、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物をシーリング材組成物に添加することで、シーリング材組成物の硬化物を熱暴露した後であってもモジュラスが所定値以上になることを抑制し、柔軟性を保つことができると共に、水浸漬や熱暴露後における破断時伸びの低下を抑制できる。
ケチミンは、水分のない状態では安定に存在し、水分によって一級アミンとケトンに分解され、生じた一級アミンがシラノール縮合触媒として作用する。その後、エポキシ樹脂と反応することにより、シラノール縮合触媒作用が失効し、硬化物を熱暴露した後も低モジュラスのままで保持できる。また、ケチミンを用いると組成物の保存中にエポキシ樹脂と反応しないので一成分型組成物にすることができる。このようなケチミンは、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得ることができる。
ケチミンの合成には様々なアミン化合物、及びカルボニル化合物を用いることができる。アミン化合物としては、例えば、2ーエチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、i‐ステアリルアミン等のモノアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン;1,2,3−トリアミノプロパン、テトラ(アミノメチル)メタン等の多価アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシアルキレン系ポリアミン等を用いることができる。
また、カルボニル化合物としては、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;シクロヘキサノン等の環状ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のβジカルボニル化合物等を用いることができる。ケチミン中にイミノ基が存在する場合には、イミノ基をスチレンオキサイド;ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルエステル等と反応させてもよい。
シーリング材組成物の硬化物を柔軟に保つことを目的として、モノアミンとカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミン化モノアミン、又はジアミンとカルボニル化合物との縮合反応により得られるケチミン化ジアミンを用いることが好ましく、ケチミン化モノアミンを用いることがより好ましい。これらのケチミンは、単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。また、架橋性ケイ素基を有しないケチミン化合物の使用量は、(A)成分の重合体100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲で用いることができ、1〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
(C)成分以外のエポキシ樹脂硬化剤としては、様々なエポキシ樹脂硬化剤を一種、又は複数種選択して用いることができる。かかるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン類、酸無水物類、イミダゾール類やその他の硬化剤を挙げることができる。ただし、活性が強い硬化剤は室温でエポキシ樹脂を硬化させ、一成分型組成物にすることが困難な場合があるので、本実施形態に係るシーリング材の目的が達成される範囲で用いることが好ましい。
可塑剤としては、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;グリコールエステル類;脂肪族エステル類;リン酸エステル類;ポリエステル系可塑剤類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;炭化水素系可塑剤類;塩素化パラフィン類;低分子量のアクリル酸エステル重合体等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
可塑剤を用いる場合、(A)成分100質量部に対し、10〜300質量部を用いることができ、20〜250質量部の範囲で用いることが好ましい。可塑剤の使用量が10質量部未満の場合には組成物の粘度が高くなりすぎる場合があり、また、使用量が300質量部を越える場合は硬化物からの可塑剤の染み出し等が生じる場合があるため好ましくない。本実施形態に係るシーリング材組成物は、フタル酸エステル系可塑剤のような分子量800以下、更には分子量1000以下の低分子量の可塑剤を含有しない、無可塑配合のシーリング材組成物を製造する場合に特に有用である。
充填剤としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、及びカーボンブラック等の補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、硬化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン等の充填剤;石綿、ガラス繊維、及びフィラメント等の繊維状充填剤等を用いることができる。
これらの充填剤の添加により強度の高い硬化物を製造する場合は、主としてフュームドシリカ、及びカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム等から選択される充填剤を用いることが好ましい。また、低強度で高伸びの硬化物を製造する場合は、主として酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びシラスバルーン等から選択される充填剤を用いることが好ましい。これらの充填剤は単独で用いても、2種類以上を混合してもよい。
充填剤を用いる場合、(A)成分100質量部に対し、1〜300質量部の範囲で用いることができ、5〜300質量部の範囲で用いることが好ましく、5〜250質量部の範囲で用いることが更に好ましい。
シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の有機錫化合物:カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉄等のカルボン酸金属塩:脂肪族アミン類、芳香族アミン類、DBU等のアミジン類、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、ビグアニド類等のアミン化合物:バーサチック酸等のカルボン酸:ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)等のチタン化合物、アルミニウム化合物類等のアルコキシ金属:無機酸:三フッ化ホウ素エチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素錯体:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等の金属キレート化合物等が挙げられる。これらの中では有機錫化合物が好ましい。シラノール縮合触媒は、(A)成分の架橋性ケイ素基を有する重合体の硬化触媒として作用する。シラノール縮合触媒を用いる場合、(A)成分100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲で用いることができ、0.2〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
本実施形態に係るシーリング材組成物は、更にシランカップリング剤を含有することもできる。本実施形態に係るシーリング材組成物は、シランカップリング剤を配合することにより、金属、プラスチック、ガラス等、全般的な被着体に対する接着性を向上させることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基含有シラン類;ビニル型不飽和基含有シラン類;塩素原子含有シラン類;イソシアネート含有シラン類;アルキルシラン類;フェニル基含有シラン類;イソシアヌレート基含有シラン類等が挙げられるが、これらに限定されない。また、アミノ基含有シラン類と上記のシラン類を含むエポキシ基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物とを反応させて、アミノ基を変性した変性アミノ基含有シラン類を用いてもよい。
シランカップリング剤の配合割合は、例えば、(A)架橋性ケイ素基含有重合体100質量部に対して、0.2〜20質量部が好ましく、0.3〜15質量部がより好ましく、0.5〜10質量部が更に好ましい。これらシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係るシーリング材組成物は、希釈剤を更に含有することが好ましい。希釈剤を含有することにより、粘度等の物性を調整できる。希釈剤としては、様々な希釈剤を用いることができる。希釈剤としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和炭化水素系溶剤、リニアレンダイマー(出光興産株式会社商品名)等のα−オレフィン誘導体、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、クエン酸アセチルトリエチル等のクエン酸エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の各種溶剤が挙げられる。
得られるシーリング材組成物の安全性を考慮する場合、シーリング材組成物の引火点が高い方が望ましく、シーリング材組成物からの揮発物質が少ない方が好ましい。したがって、希釈剤の引火点は60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。2種類以上の希釈剤を混合する場合、混合した希釈剤の引火点が70℃以上であることが好ましい。しかし、一般的に引火点が高い希釈剤はシーリング材組成物に対する希釈効果が低くなる傾向があるので、引火点が250℃以下である希釈剤を用いることが好ましい。
本実施形態に係るシーリング材組成物の安全性、希釈効果の双方を考慮する場合、希釈剤としては、飽和炭化水素系溶剤が好ましく、ノルマルパラフィン、イソパラフィンがより好ましい。ノルマルパラフィン、イソパラフィンの炭素数は10〜16であることが好ましい。
希釈剤の配合割合は、(A)有機重合体100質量部に対して、0〜50質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜30質量部の範囲で配合することがより好ましく、0.1〜15質量部の範囲で配合することが更に好ましい。希釈剤は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のシラン化合物;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のエステル化合物等を挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。なお、脱水剤としては、ビニルトリメトキシシランが特に好ましい。
脱水剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜20重量部の範囲で配合することが好ましく、1〜15重量部の範囲で配合することがより好ましい。シーリング材組成物中における脱水剤の含有量が低過ぎると、脱水剤により得られる効果が十分ではない場合がある。また、シーリング材組成物中における脱水剤の含有量が高過ぎると、シーリング材組成物の硬化性が低下する場合がある。
(プライマー層30)
プライマー層30は、第1の被着体10の側面、及び第2の被着体20の側面に設けることができる。具体的に、プライマー層30は、合成ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、及びシラン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの反応性樹脂と、シランカップリング剤と、有機溶剤とを含有するプライマーを、第1の被着体10の側面、及び第2の被着体20の側面に塗布して形成される。
(バックアップ材40)
バックアップ材40は、弾力性を有する材料で形成され、天然ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)等の合成樹脂、及び/又はこれらの発泡体を用いて形成できる。バックアップ材40は、第1の被着体10と第2の被着体12との間の間隙に沿って、この間隙の底部に貼り付けることができる粘着剤層、若しくは接着剤層を有して構成される。
本実施の形態に係るシーリング材組成物の硬化物は、加熱後の柔軟性(低モジュラス)に優れることから、シーリング材、特に建築物等のサイディングボード用シーリング材として用いることができる。また、本実施の形態に係るシーリング材組成物の硬化物は、窓枠、ドア枠等の枠部材や、軒天等と壁材との境界部のシール等に用いることもできる。
[目地施工方法について]
本実施形態に係る目地構造を有する壁は以下の工程に沿って作製される。まず、第1の被着体10と、第1の被着体10との間に間隙を挟んで隣り合う位置に配置される第2の被着体12との間の間隙、及び各被着体のシーリング材が接触する領域を清掃する(清掃工程)。次に、第1の被着体10と、第1の被着体10との間に間隙を挟んで隣り合う位置に配置される第2の被着体12との間の間隙にバックアップ材40を装填する(バックアップ材装填工程)。そして、目地の縁、すなわち、第1の被着体10の間隙側の縁と第2の被着体12の間隙側の縁にマスキングテープを貼りつける(マスク工程)。
続いて、必要に応じて第1の被着体10の間隙に面する表面、及び第2の被着体12の間隙に面する表面にプライマーを塗布する(プライマー塗布工程)。そして、バックアップ材40上の間隙を、加熱後のモジュラスの変化率が低い一液常温湿気硬化型シーリング材組成物で充填する(充填工程)。次に、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の表面を平滑に仕上げる(ヘラ仕上げ工程)。ヘラ仕上げ工程後、マスキングテープを取り外す(マスク除去工程)。そして、所定の時間、養生する(養生工程)。これにより、本実施形態に係る目地構造を有する壁が作製される。
(実施の形態の効果)
本実施形態に係る目地構造を有する壁は、第1の被着体10と第2の被着体12との間隙に、加熱後の50%伸長時のモジュラス、加熱後の50%伸長時のモジュラスの変化率、加熱後の最大荷重時の伸長率、及び加熱後の最大荷重時の伸長率の変化率が所定の範囲のシーリング材20を充填して構成されるので、柔軟性、伸び特性、及び接着性が自然環境下における経時によっても低下しにくいので、住宅等の建築物の長寿命化を図ることができる。
また、本実施形態に係るシーリング材20は、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物から形成され、一液常温湿気硬化型シーリング材組成物の硬化物である一液常温湿気硬化型シーリング材は、熱暴露による伸び特性の低下が小さい。したがって、本実施形態に係るシーリング材20は、経時による伸び特性の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係るシーリング材は、加熱後のモジュラスの変化率が低く、高い柔軟性を長期間、維持できる。したがって、本実施形態に係るシーリング材は、屋外に長期間曝される用途に用いることや、屋内であっても浴室や台所等の水回りにおいて用いることができる。特に屋外で用いられ、耐熱性や雨水等に対する耐水性が要求されるサイディングボード用シーリング材に好適に適用できる。また、本実施形態に係るシーリング材は、窯業系サイディングボードに侵入する水分による接着性の低下が小さいため、水分を吸収しやすい多孔質材料である窯業系サイディングボード用シーリング材として好適に用いることができる。
以下、本実施の形態に係る目地構造を有する壁について、実施例を用いて詳細に説明する。
(合成例1:数平均分子量15,000以上の架橋性ケイ素基含有有機重合体(A1成分))
アクリル酸ブチル62.7重量%、アクリル酸エチル18.3重量%、アクリル酸ステアリル19.0重量%、開始剤としてジエチル2,5−ジブロモアジペート及びα―ブロモ酪酸エチル、重合触媒として臭化第一銅及びペンタメチルジエチレントリアミン、ジエン化剤として1,7−オクタジエン、シリル剤としてメチルジメトキシシランを用い、特開2010−11644号公報の製造例1の方法に準じた原子移動ラジカル重合法(ATRP)で反応させ、両末端にメチルジメトキシシリル基を有し、平均して1分子中に1.8個の架橋性ケイ素基を有するポリスチレン換算の数平均分子量45,000のポリアクリル骨格の有機重合体(A1成分)を得た。
(合成例2:数平均分子量15,000以上の架橋性ケイ素基含有有機重合体(A2成分))
プロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下プロピレンオキサイドを反応させ数平均分子量29,000の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。この水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体にNaOCH3のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。脱塩精製処理後、ヒドロシリル化合物であるメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下反応させ、末端にメチルジメトキシシリル基を有し、平均して1分子中に1.8個の架橋性ケイ素基を有する数平均分子量29,000のポリオキシプロピレン骨格の有機重合体(A2成分)を得た。なお、数平均分子量は送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GELHタイプを用い、溶媒はTHFを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算分子量である。
(合成例3:数平均分子量15,000以上の架橋性ケイ素基含有有機重合体A’1)
アクリル酸ブチル68重量%、メタクリル酸メチル10重量%、メタクリル酸ステアリル20重量%、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン2重量%、重合用溶剤としてイソブタノール、重合開始剤としてV−59(和光純薬(株)製)を用い、特開2010−95704号公報の合成例3の方法に準じた方法で反応させ、固形分濃度60%のイソブタノール溶液で、メチルジメトキシシリル基をランダムな位置に有し、平均して1分子中に2個の架橋性ケイ素基を有するポリスチレン換算で数平均分子量が20,000のポリアクリル骨格の有機重合体(A’1成分)を得た。次に、合成例2で得られたポリオキシプロピレン骨格の有機重合体(A2成分)に上記で得られたポリアクリル骨格の重合体(1)のイソブタノール溶液を、固形分比(重量比)が70/30となる割合で混合し、加熱減圧下でイソブタノールを除去した。これにより、合成例3に係る有機重合体A’1を得た。なお、表1の実施例5においては、重合体(1)と有機重合体(A2成分)とのそれぞれの固形分重量に分けて表示している(すなわち、有機重合体A’1は、70質量部の有機重合体(A2成分)と30質量部の重合体(1)とから構成される。)。
(実施例1〜5、比較例1)
表1に示す組成で一成分型シーリング材組成物を作製し、このシーリング材組成物を用いた試験サンプルを作成した。この試験サンプルを用いて、初期、及び熱暴露(加熱)後の引張特性(50%伸長時モジュラス、最大荷重時の伸長率)を測定した。結果を表1に示す。また、組成物や試験サンプルの調製及び試験方法は次の通りである。
表1に示した(A)成分の架橋性ケイ素基を有する数平均分子量15,000以上のオキシアルキレン重合体として合成例1及び合成例2で得られた有機重合体(A1成分)、及び有機重合体(A2成分)、若しくは有機重合体A’1、充填剤、可塑剤、脱水剤、シラノール縮合触媒、及び希釈剤を表1に示した質量部で配合し、加熱減圧混合撹拌を110℃にて2時間し、配合物質の脱水を実施した。更に、(B)成分の単官能エポキシ化合物(ただし、比較例1は除く)、(C)成分のアルコキシシラン化合物を所定量添加し、撹拌配合してシーリング材組成物を調製した。
表1において各配合物質の配合量は質量部で示される。各配合物質の詳細は下記の通りである。
*1 エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザー E−PS)
*2 γ−アミノプロピルトリメトキシシランをMIBKでケチミン化した化合物
*3 脂肪酸処理重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、MCコ−トS−1)
*4 脂肪酸処理コロイド炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、カルファイン500)
*5 無官能基アクリルポリマー、重量平均分子量2500(東亞合成(株)製、ARUFON UP−1110)
*6 ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM1003)
*7 ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成(株)製、ネネオスタンU−220H)
*8 ノルマルパラフィン〔主成分、n−ウンデカン〕(ジャパンエナジー(株)製、カクタスノルマルパラフィンN−11)
(試験サンプルの作成)
サイディング用シーリング材規格に準拠して同規格の5.1.6に記載のI形試験体を作製した。すなわち、陶板を縦50mm、横50mmの大きさに切断し、切断した陶板2枚を間隔10mmで縦方向が相対するように固定した。隙間の下面に縦50mm、横10mm、厚さ6mmの発泡ポリエチレン製バックアップ材を置き、陶板の表面をマスキングテープで覆った。そして、シーリング材と接触する領域にプライマー(セメダイン株式会社製のMP−1000)を塗布し、間隔10mmの隙間(目地)にシーリング材を8mmの厚さに充填した後、マスキングテープを除去し、23℃50%RH環境下で28日間、養生し、シーリング材を硬化させた後、バックアップ材を取り外し、試験サンプルを作成した。
(熱暴露(加熱)試験)
試験サンプルを80℃のオーブン中で14日加熱後、室温に冷却後引張特性を測定した。
(引張接着性測定法)
サイディング用シーリング材規格に準拠して引張接着性試験を実施した(試験温度23℃)。養生終了後、23℃環境下において引張速度50mm/minで引張接着性試験を実施した。そして、伸び率が50%時の荷重並びに最大荷重及び最大荷重時の伸び量を測定した。更に、以下の基準に基づいて測定結果を評価した。
(加熱後)
モジュラスについては、50%伸長時のモジュラスと変化率[|(加熱後の50%伸長時のモジュラス)−(初期の50%伸長時のモジュラス)|/(初期の50%伸長時のモジュラス)×100]とにおいて、モジュラスが0.13N/mm2以下で変化率が20%以下の場合「◎」、モジュラスが0.15N/mm2以下で変化率が30%以下(ただし、モジュラスが0.13N/mm2以下で変化率が20%以下を除く)の場合「○」、モジュラスが0.2N/mm2以下で変化率が40%以下(ただし、モジュラスが0.15N/mm2以下で変化率が30%以下を除く)の場合「△」、モジュラスが0.2N/mm2を超え変化率が40%を超える場合「×」と評価した。
最大荷重時の伸長率については、最大荷重時の伸長率とその変化率[|(加熱後の最大荷重時の伸長率)−(初期の最大荷重時の伸長率)|/(初期の最大荷重時の伸長率)×100]とにおいて、伸長率が500%以上で変化率が20%以下の場合「◎」、伸長率が400%以上で変化率が30%以下の場合(ただし、伸長率が500%以上で変化率が20%以下を除く)「○」、伸長率が300%以上で変化率が40%以下の場合(ただし、伸長率が400%以上で変化率が30%以下を除く)「△」、伸長率が300%未満で変化率が40%を超える場合「×」と評価した。
表1に示すように、実施例1〜5においては、加熱後のモジュラスがいずれも0.15N/mm2以下と小さく、変化率も25%以下であり、最大荷重時の伸長率が約560%以上でその変化率が5%以下と優れた特性を有することが示された。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せのすべてが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点、及び本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である点に留意すべきである。
本発明は、上記目的を達成するため、構造物の目地構造を有する壁であって、第1の被着体と、第1の被着体との間に間隙を挟んで隣り合う位置に配置される第2の被着体と、間隙にプライマーを介して充填され、JTC S−0001 窯業系サイディング用シーリング材 JTC規格に準拠して試験した引張接着性試験結果において、80℃14日の加熱後の50%伸長時モジュラスが0.15N/mm 2 未満であり、80℃14日の加熱後の50%伸長時モジュラスの変化率が40%以下であり、80℃14日の加熱後の最大荷重時の伸長率が300%以上であり、80℃14日の加熱後の最大荷重時の伸長率の変化率が40%以下である一液常温湿気硬化型シーリング材とを備える目地構造を有する壁が提供される。
また、本発明は、上記目的を達成するため、第1の被着体と、第1の被着体との間に間隙を挟んで隣り合う位置に配置される第2の被着体との間の間隙にバックアップ材を装填するバックアップ材装填工程と、第1の被着体の間隙に面する表面、及び第2の被着体の間隙に面する表面にプライマーを塗布するプライマー塗布工程と、バックアップ材上の間隙を、硬化後において、JTC S−0001 窯業系サイディング用シーリング材 JTC規格に準拠して試験した引張接着性試験結果において、80℃14日の加熱後の50%伸長時モジュラスが0.15N/mm 2 未満であり、80℃14日の加熱後の50%伸長時モジュラスの変化率が40%以下であり、80℃14日の加熱後の最大荷重時の伸長率が300%以上であり、80℃14日の加熱後の最大荷重時の伸長率の変化率が40%以下である一液常温湿気硬化型シーリング材組成物で充填する充填工程とを備える目地施工方法が提供される。