JP2017137423A - 物品の製造方法および接着剤 - Google Patents

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【課題】本発明は、良好なポットライフを保ちつつ、硬化剤により反応を開始する硬化温度を200℃以下とすることが可能な接着剤を用いた物品の製造方法を提供することを主目的とする。【解決手段】本発明は、部材上、または2つの上記部材の間に、シート状の接着剤を配置し、200℃以下の温度で上記接着剤を硬化する接着工程を有し、上記接着剤は、1液型のエポキシ樹脂接着剤であり、さらに、上記接着剤は、上記接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する接着剤であることを特徴とする物品の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、物品の製造方法およびそれに用いられる接着剤に関するものである。
従来、物品の製造工程においては、上記物品を構成する各部材を接着するために様々な接着剤が用いられている。このような接着剤としては、例えば、主としてエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂接着剤が知られており、エポキシ樹脂接着剤の中にも、空気中の酸素や湿気により反応が開始する1液型のものもと、エポキシ樹脂に硬化剤を混合することにより反応が開始する2液型のものがある。
ところで、1液型のエポキシ樹脂接着剤は、例えば特許文献1に示すように、主剤となるエポキシ樹脂に硬化剤を混合させた状態で保存される。そのため、1液型のエポキシ樹脂接着剤の場合、ポットライフを良好に保つことが求められる。具体的には、常温の環境下において、エポキシ樹脂および硬化剤の反応の進行を抑えることが可能な1液型のエポキシ樹脂接着剤が求められている。
このような1液型のエポキシ樹脂接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂に、250℃以上の高温条件下にて反応を開始する硬化剤を混合させた接着剤が提案されている。高温条件下にて反応を開始する硬化剤を用いることにより、常温の環境下ではエポキシ樹脂との反応の進行を抑えることができ、ポットライフを良好に保つことができる。
また、従来では、接着剤を用いた物品の製造工程の簡略化を図るという観点から、シート状の接着剤を用いることが求められている。接着剤がシート状であることにより、接着剤にムラが生じるという問題や、意としない領域にまで接着剤が延び広がるという問題等の発生を抑制することが可能となる。
特開2010−195998号公報
常温の環境下において反応の進行を抑制し、良好なポットライフを保つためには、上述のように、高温環境下において反応を開始する硬化剤を用いる必要がある。しかしながら、物品の製造工程において接着剤を用いる場合、作業性の改善やタクト時間の短縮のために、200℃以下の環境下において反応する接着剤が求められている。ところが、200℃以下の環境下において反応を開始する硬化剤を用いた1液型のエポキシ樹脂接着剤の場合、常温の環境下での反応の進行を抑えることが困難となり、常温よりも低い低温の環境下での保存が必要となる。低温の環境下での保存が必要な場合、例えば、作業現場において、接着剤を冷却保存する設備が必要となる等、温度管理に手間がかかってしまうという問題がある。
このように、従来においては、1液型のエポキシ樹脂接着剤に、200℃以下の環境下において反応を開始する硬化剤を用いて、作業性の改善やタクト時間の短縮等を図ろうとしたとき、常温の環境下での反応の進行を抑制して良好なポットライフを保つことは困難である。すなわち、硬化剤により反応を開始する硬化温度を200℃以下へ調整することと、良好なポットライフを保つこととの両立は困難である。なお、このような課題を解決する方法として、例えば特許文献1には、硬化剤を包接材料で覆った潜在性硬化剤を用いる方法が提案されているが、包接材料から硬化剤が染み出してしまい、十分なポットライフが得られないという問題がある。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、良好なポットライフを保ちつつ、硬化剤により反応を開始する硬化温度を200℃以下とすることが可能な接着剤を用いた物品の製造方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、部材上、または2つの上記部材の間に、シート状の接着剤を配置し、200℃以下の温度で上記接着剤を硬化する接着工程を有し、上記接着剤は、1液型のエポキシ樹脂接着剤であり、さらに、上記接着剤は、上記接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する接着剤であることを特徴とする物品の製造方法を提供する。
本発明によれば、上述したような保存試験を行った際に、剪断強度を保存開始から一定の期間維持することが可能な接着剤を用いることにより、常温の環境下において、エポキシ樹脂および硬化剤の反応の進行を抑えて良好なポットライフを保つことができるとともに、接着工程における接着剤の硬化温度を200℃以下とすることができるため、物品の製造における作業性の改善やタクト時間の短縮を図ることが可能となる。
また、本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含み、上記硬化剤が、下記一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする接着剤を提供する。
(上記式(1)において、RおよびRは、−CH−OHまたは−Hである。ただし、RおよびRのうち少なくともいずれか一方が−CH−OHである。)
本発明によれば、所定の構造を有する硬化剤を用いることにより、常温の環境下において、エポキシ樹脂との反応の進行を抑えて良好なポットライフを保つことができるとともに、接着剤の硬化温度を200℃以下とすることができる。
本発明においては、さらにアクリル系樹脂を含み、シート状であることが好ましい。接着剤がアクリル系樹脂を含み、シート状であることにより、本発明の接着剤の使用を容易なものとすることができる。
本発明は、常温の環境下において、エポキシ樹脂および硬化剤の反応の進行を抑えて良好なポットライフを保つことができるとともに、硬化剤により反応を開始する硬化温度を200℃以下とすることが可能な接着剤を用いた物品の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明の物品の製造方法の一例を示す概略工程図である。 本発明の物品の製造方法の他の例を示す概略工程図である。 本発明における接着シートの一例を示す概略断面図である。 本発明における接着シートの他の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の物品の製造方法および接着剤について詳細に説明する。
A.物品の製造方法
本発明の物品の製造方法は、部材上、または2つの上記部材の間に、シート状の接着剤を配置し、200℃以下の温度で上記接着剤を硬化する接着工程を有し、上記接着剤は、1液型のエポキシ樹脂接着剤であり、さらに、上記接着剤は、上記接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する接着剤であることを特徴とする方法である。
このような本発明の物品の製造方法について図を参照して説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明の物品の製造方法の一例を示す概略工程図である。本発明の物品の製造方法は、図1(a)に示すように、部材2上にシート状の接着剤1を配置し、図1(b)に示すように、200℃以下の温度でシート状の接着剤1を硬化する接着工程を有する。これにより、シート状の接着剤は、図1(c)に示すように接着層1’となり、物品10を得ることができる。また、このとき用いられる接着剤は、接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する接着剤であることを特徴とする。
また、図2(a)〜(c)は、本発明の物品の製造方法の他の例を示す概略工程図である。本発明の物品の製造方法は、図2(a)に示すように、2つの部材2a、2bの間にシート状の接着剤1を配置し、図2(b)に示すように、200℃以下の温度でシート状の接着剤1を硬化する接着工程を有する。これにより、シート状の接着剤は、図2(c)に示すように接着層1’となり、物品10を得ることができる。また、このとき用いられる接着剤は、接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する接着剤であることを特徴とする。
ここで、「1液型のエポキシ樹脂接着剤」とは、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む液状の接着剤が、加熱により硬化して硬化物となる接着剤である。さらに、「エポキシ樹脂」とは、少なくとも1つ以上のエポキシ基またはグリシジル基を有する樹脂をいう。なお、本発明において用いられる具体的なエポキシ樹脂については後述するため、ここでの記載は省略する。
さらにまた、「接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する」とは、後述する実施例、比較例1〜3で行う剪断試験において、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持することを意味する。ここで、「剪断強度を維持する」とは、剪断強度が、保存開始時と保存開始から28日後とで完全に同じである場合だけでなく、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度の80%以上である場合を包含する。中でも、本発明においては、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度の90%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましい。
また、「物品」とは、部材上、または2つの部材の間に接着剤を配置し、硬化して接着させることにより得られるものであり、例えば、自動車、航空機、船舶等の分野に限らず、電子機器類、電子機器筐体、家電製品、インフラ構造物、ライフライン建材、一般建材等が挙げられる。
本発明によれば、以下のような効果を得ることができる。
まず、常温の環境下において反応の進行を抑制し、良好なポットライフを保つためには、常温環境下では反応を開始せず、高温(250℃以上)環境下において反応を開始する硬化剤を用いる必要がある。しかしながら、物品の製造工程において接着剤を用いる場合、作業性の改善やタクト時間の短縮のためには、高温環境下ではなく、せめて200℃以下の環境下において反応を開始する接着剤を用いることが求められている。一方、200℃以下の環境下において反応を開始する硬化剤を用いた1液型のエポキシ樹脂接着剤の場合、常温の環境下での反応の進行を抑えることが困難となり、常温よりも低い低温の環境下での保存が必要となる。低温の環境下での保存が必要な場合、例えば、作業現場において、接着剤を冷却保存する設備が必要となる等、温度管理に手間がかかってしまうという問題がある。
これに対し本発明においては、上述したような保存試験を行った際に、剪断強度を保存開始から一定の期間維持することが可能な接着剤を用いることにより、常温の環境下において、エポキシ樹脂および硬化剤の反応の進行を抑えて良好なポットライフを保つことができるとともに、接着工程における接着剤の硬化温度を200℃以下とすることができるため、物品の製造における作業性の改善やタクト時間の短縮を図ることが可能となる。
以下、本発明の物品の製造方法について詳細に説明する。
本発明の物品の製造方法は、少なくとも接着工程を有する方法である。
本発明における接着工程は、部材上、または2つの上記部材の間に、シート状の接着剤を配置し、200℃以下の温度で上記接着剤を硬化する工程である。すなわち、本発明においては、接着工程により、シート状の接着剤を硬化して接着層とすることができる。
本発明における接着工程において、部材上、または2つの上記部材の間に配置されたシート状の接着剤を硬化する方法としては、200℃以下の温度で硬化させる方法であれば特に限定されない。200℃以下の温度で硬化させることができることにより、物品を製造する際の作業性の改善やタクト時間の短縮等を図ることが可能となる。本発明においては、中でも、シート状の接着剤を180℃以下の温度で硬化させることが好ましく、特に、150℃以下の温度で硬化させることが好ましい。また、本発明においては、シート状の接着剤を80℃以上の温度で硬化させることができる。
本発明における接着工程において、シート状の接着剤を硬化する硬化時間としては、シート状の接着剤を硬化して接着層とすることができる程度の時間であれば良く、上述した硬化温度や接着剤の種類等に応じて適宜調整することができる。本発明においては、例えば、硬化時間が10min〜60minの範囲内であることが好ましく、中でも15min〜30minの範囲内であることが好ましい。
本発明における接着工程において、部材上、または2つの部材の間で、シート状の接着剤を硬化することにより得られた接着層の厚みは、本発明により得ようとする物品に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、中でも50μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
以下、本発明において用いられるシート状の接着剤および部材について説明する。
1.シート状の接着剤
本発明におけるシート状の接着剤について図を参照しながら説明する。なお、以後、シート状の接着剤を接着シートという場合がある。
図3は、本発明における接着シートの一例を示す概略断面図である。図3に示すように、本発明における接着シート20は、第1離型紙3aおよび第2離型紙3bの間に、接着剤組成物1”を配置して溶媒を除去(以下、乾燥とする場合がある。)することにより得ることができる。
また、図4は、本発明における接着シートの他の例を示す概略断面図である。図4に示すように、本発明における接着シート20は、接着剤組成物1’が芯材4に含浸されていても良い。なお、図4で説明していない符号については、図3と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明における接着シートは、接着剤組成物を配置して乾燥させることにより得られる。すなわち、接着シートは、接着剤組成物を乾燥させることにより、接着剤組成物に含まれる溶剤が除去された状態となる。
以下、本発明における接着シートを構成する接着剤組成物、接着シートの製造方法、および接着シートを用いた接着方法について説明する。
(1)接着剤組成物
本発明において用いられる接着剤組成物は、接着シートを構成する材料である。
以下、接着剤組成物に含まれる材料について説明する。
(a)エポキシ樹脂
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、硬化剤との併用により架橋重合反応を起こして硬化する材料であれば良く、特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられ、またフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂等のフェノール樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。中でも、本発明においては、ビフェニル骨格、ビスフェノール骨格、スチルベン骨格などの剛直構造を主鎖に持つエポキシ樹脂を用いることが好ましく、特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、その中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体の状態、または常温で固体の状態で存在することができる。主鎖が1〜3のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で液体であり、主鎖が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で固体である。このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は結晶性があり、常温で結晶化して固体のものも、融点以上の温度になると、急速に融解して低粘度の液状に変化する。したがって、接着剤を構成するエポキシ樹脂に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合には、接着工程において接着剤が部材上または2つの部材の間に密着して固化され、接着剤と部材とを強固に接着することができ、接着強度を高めることができる。また、このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、架橋密度が高くなるため、機械的強度が高く、耐薬品性が良く、硬化性が高く、自由体積が小さくなるため吸湿性が小さくなるという特徴がある。
本発明においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、上記したような常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、常温で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを併用して使用することが好ましい。常温で固体のものと液体のものとを併用することにより、機械的強度を保ちつつ、柔軟性を得ることができる。その結果、部材との接合強度を向上させることができる。常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、機械的強度および耐熱性の観点から、ガラス転移温度が50℃〜150℃の範囲内にある材料であることが好ましい。具体的には、常温で液体である主鎖が1〜3のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱樹脂社製、JER828が挙げられ、また常温で固体である主鎖が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱樹脂社製、JER1009が挙げられる。
常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、常温で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂との配合割合は、本発明により得られる物品の種類に応じて適宜調整することができるが、例えば、質量基準において、100:300〜300:100の割合で配合されていることが好ましい。両者の配合割合を上記の範囲とすることによって、より接着強度に優れる接着剤とすることができる。
(b)硬化剤
本発明において用いられる硬化剤は、上述したエポキシ樹脂と併用した際に、200℃以下の温度で架橋重合反応を起こして硬化させることができる材料であれば良い。また、接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持することができる材料であれば良い。すなわち、本発明において用いられる硬化剤は、常温の環境下において、エポキシ樹脂との反応の進行を抑えて良好なポットライフを保つことができるとともに、エポキシ樹脂との反応を開始する硬化温度を200℃以下とすることが可能な硬化剤であれば良い。
このような硬化剤としては、イミダゾール環を有するイミダゾール系の硬化剤であって、少なくとも水酸基を有する硬化剤が挙げられる。具体的には、下記一般的(1)で表わされる構造を有する硬化剤が挙げられる。
(上記式(1)において、RおよびRは、−CH−OHまたは−Hである。ただし、RおよびRのうち少なくともいずれか一方が−CH−OHである。)
上記一般式(1)で表わされる硬化剤としては、下記化合物(1−1)〜(1−3)が挙げられる。本発明においては、中でも化合物(1−1)を用いることが好ましい。
本発明において用いられる硬化剤の接着剤組成物中の含有量は、エポキシ樹脂の含有量に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して5重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、中でも10重量部〜15重量部の範囲内であることが好ましい。また、具体的には、エポキシ樹脂の含有量を140質量部〜260質量部、後述するアクリル系樹脂の含有量を10質量部〜50質量部とした場合に、1質量部〜30質量部の範囲内とすることができる。硬化剤の含有量が上記範囲内であることにより、接着工程後の接着強度を十分に維持することができ、また、より良好なポットライフを保つことができる。
(c)アクリル系樹脂
本発明において用いられる接着剤組成物は、上述したエポキシ樹脂および硬化剤の他にも、通常はアクリル系樹脂を含む。アクリル系樹脂を含むことにより、乾燥させた接着剤組成物をシート状とすることができる。
なお、ここでの「アクリル系樹脂」とは、一般的なアクリル樹脂と同様である。
本発明において用いられるアクリル系樹脂は、本発明において所望の接着シートを構成することができる材料であれば良く、一般的な接着剤に用いられるアクリル系樹脂を用いることができる。例えば、アクリル酸エステル共重合体を用いることができる。アクリル酸エステル共重合体のモノマー成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸エステルモノマー;マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、n−ブトキシ−N−メチロールアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ソーダ、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸グリシジル等の官能基含有モノマー;スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテル等のモノマー;等が挙げられる。アクリル酸エステル共重合体は、これらのモノマー成分の共重合体である。
これらのモノマー成分の中でも、官能基としてエポキシ基、水酸基、カルボキシル基又はニトリル基等を持つ化合物をモノマー成分とするアクリル酸エステル共重合体が好ましい。具体的には、エチルアクリレート−ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、エチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。このようなアクリル系樹脂を用いることにより、部材への粘着性を向上させることが可能となる。
なお、ここでのアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の「アクリル酸」には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の「メタクリル酸」も含まれる。
また、アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、ブロック共重合体が挙げられる。中でも、メタクリレート−アクリレート−メタクリレートを含むトリブロック共重合体が好ましい。トリブロック共重合体を構成するメタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジジル等が挙げられる。また、トリブロック共重合体を構成するアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジジル等が挙げられる。メタクリレート−アクリレート−メタクリレートからなるトリブロック共重合体の具体例としては、例えば、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートトリブロック共重合体が挙げられる。このようなブロック共重合体は、被着体となる部材に対して十分な粘着性を示し、また耐熱性の向上の観点からも好ましい。
中でも、本発明においては、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートの3元共重合体またはその変性物を使用する。このようなメタアクリル酸エステル重合体ブロック(以下、MMAと略す場合がある)と、アクリル酸ブチル重合体ブロック(以下、BAと略す場合がある)とからなる3元ブロック共重合体を、上述したエポキシ樹脂に添加することにより、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持できる接着剤を実現できる。その理由は定かではないが、以下のようなことが推測される。
MMA−BA−MMAの3元共重合体は、MMA部分が「硬い」セグメントとなり、BA部分が「柔らかい」セグメントとなる。従来の接着剤では、エポキシ樹脂に靱性(柔軟性)を付与するためにアクリル系樹脂を添加することが行われていたが、アクリル系樹脂を添加することにより、接着剤自体の耐熱性が低下していた。上述のような「硬い」セグメントと「柔らかい」セグメントとを併せ持つアクリル系樹脂であれば、「硬い」セグメント部分が耐熱性に寄与し、「柔らかい」セグメント部分が、靱性ないし柔軟性に寄与するため、靱性を有し、かつ、高温環境下においても優れた接着強度を保持できる接着剤を実現できると推測される。
MMA−BA−MMAの3元共重合体は、一般的なリビングラジカル重合を用いて製造することができる。このうち、重合反応の制御の容易さの点などから、原始移動ラジカル重合によって好適に製造することができる。原子移動ラジカル重合法は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、金属錯体を触媒とする重合法である。リビングラジカル重合法によりMMA−BA−MMAの3元共重合体を製造する場合、モノマー単位を逐次添加する方法、予め合成した重合体を高分子開始剤として次の重合体ブロックを重合する方法、別々に重合した重合体ブロックを反応により結合する方法等が挙げられるが、モノマー単位の逐次添加による方法によってMMA−BA−MMAの3元共重合体を製造することが好ましい。
MMA−BA−MMAの3元共重合体は、BAブロックの一部にカルボン酸や水酸基等の官能基を導入した変性物であっても良い。このような変性物を使用することにより、より耐熱性が向上するとともに、上述したエポキシ樹脂との相溶性も向上するため、より接着強度が向上する。
エポキ樹脂にMMA−BA−MMA3元共重合体を添加すると、MMAブロック部分がエポキシ樹脂と相溶し、BAブロック部分がエポキシ樹脂と相溶しないため、エポキシ樹脂をマトリックスとした自己組織化が起こる。その結果、エポキシ樹脂が海、アクリル系樹脂が島である海島構造が発現する。このような海島構造が発現されることにより、界面破壊を避けることができ、優れた接着強度を維持できる。
上述のような海島構造を発現させるには、エポキシ樹脂とアクリル系樹脂(MMA−BA−MMA3元共重合体)とを、質量基準において、100:4〜100:20の割合で配合することが好ましい。このような割合で両者を配合すると、エポキシ樹脂(海)中に、ナノオーダーレベルの微粒子状にアクリル系樹脂(島)が分散する。
(d)溶剤
本発明において用いられる接着剤組成物は、製造時には通常、溶剤を含むが、当該溶剤は、接着剤組成物を乾燥させて接着シートとする際に揮発して除去される。本発明において用いられる溶剤としては、一般的な接着剤組成物に用いられる材料であれば良く、特に限定されないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。また、接着剤組成物に含まれる溶剤の含有量は、接着剤組成物の塗布方法に応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、残留溶媒量の観点から、接着剤組成物中に10質量%〜70質量%の範囲内で配合されていることが好ましい。
(e)その他の材料
本発明において用いられる接着剤組成物は、上述したエポキシ樹脂、硬化剤、アクリル系樹脂等の他にも、必要に応じてその他の材料を含んでいても良い。例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、フィラー、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤等を含んでいても良い。その他にも、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などのカップリング剤を含んでいても良い。これにより接着シートと被着体である部材との密着性を向上させることができる。
(f)調製方法
本発明において用いられる接着剤組成物を調製する方法としては、例えば、各成分を混練、分散する方法が挙げられる。混練または分散方法としては、例えば、通常の混練分散機、具体的には、二本ロールミル、三本ロールミル、ペブルミル、トロンミル、ツェグバリ(Szegvari)アトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、デスパー、高速ミキサー、リボンブレンダー、コニーダー、インテンシブミキサー、タンブラー、ブレンダー、デスパーザー、ホモジナイザー、および超音波分散機等を用いる方法が挙げられる。硬いエポキシ樹脂として複数種を用いる場合は、先にこれらを混合撹拌し、次に硬化剤を混合撹拌し、溶媒で希釈した後に、軟かいエポキシ樹脂を混合撹拌し、次いで、アクリル系樹脂を混合撹拌することが好ましい。
(g)物性
本発明において用いられる接着剤組成物は、所定の粘度を有することが好ましい。具体的には、硬化前の接着シートを所望の大きさや形状に切断することが可能な程度の粘度を有することが好ましい。接着剤組成物の粘度は、例えば、1センチストークス〜20000センチストークス(25℃)の範囲内であることが好ましく、中でも1センチストークス〜2000センチストークスの範囲内であることが好ましい。また、接着剤組成物を芯材に含浸する場合には、粘度が低い方が好ましく、例えば、1センチストークス〜1000センチストークスの範囲内であることが好ましい。
(2)接着シートの製造方法
本発明における接着シートは、接着剤組成物を、第1離型紙の離型面に配置し、乾燥させた後、接着剤組成物を介して第1離型紙と対向するように第2離型紙を貼り合せることにより、接着シートを得ることができる。
第1離型紙に接着剤組成物を配置する方法としては、例えば塗布方法が挙げられる。具体的な塗布方法としては、接着剤組成物を塗布することができる方法であれば良く、特に限定されないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ロッドコ−ト、ブレードコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ダイコート、リップコート、ディップコート等が挙げられる。
本発明において用いられる第1離型紙および第2離型紙は、接着剤組成物を表面に配置することができるものであれば良く、第1離型紙および第2離型紙が同一であっても良く、異なっていても良い。具体的な第1離型紙および第2離型紙としては、例えば、離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等が挙げられる。
また、本発明において用いられる第1離型紙および第2離型紙としては、例えば、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルム等の離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成したものであっても良い。離型層としては、離型性を有する材料であることが好ましく、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等から構成された層が挙げられる。なお、これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれもが使用することができる。
離形層は、離形層成分を分散または溶解した塗液を、離型紙用基材フィルムの片面に塗布し、加熱乾燥等により硬化させることで得ることができる。塗液の塗布方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、スプレーコート等が挙げられる。また、離形層は、必要に応じて、基材フィルムの少なくとも片面の、全面または一部に形成していても良い。
本発明においては、第1離型紙および第2離型紙が、接着剤組成物に対して所定の剥離力を有することが好ましい。具体的な剥離力としては、例えば、1mN/cm〜2000mN/cmの範囲内であることが好ましく、1中でも100mN/cm〜1000mN/cmの範囲内であることが好ましい。第1離型紙および第2離型紙の剥離力が上記範囲内であることにより、第1離型紙および第2離型紙を接着剤組成物に十分に接着させることができるとともに、剥離も良好に行うことが可能となる。
また、本発明においては、接着剤組成物を芯材に含浸させた接着シートであっても良い。この場合の接着シートは、例えば、次のような方法により得ることができる。具体的には、コーティング機を用いて第1離型紙と芯材とを重ねて走行させ、芯材を有する面に接着剤組成物を塗布することにより、当該接着剤組成物を芯材に含浸させ、次に、芯材に含浸させた接着剤組成物を乾燥させて、接着剤組成物を介して第1離型紙と対向するように第2離型紙を貼り合せることにより、接着剤組成物を芯材に含浸させた接着シートを得る方法が挙げられる。また、第1離型紙に接着剤組成物を塗布して乾燥させ、接着剤組成物を介して第1離型紙を芯材シートでラミネート(ドラムの温度70℃〜90℃)し、第2離型紙に接着剤組成物を塗布して乾燥させ、芯材シートを介して上記第1離型紙と対向するように第2離型紙をラミネート(ドラムの温度70℃〜90℃)して、接着剤組成物を芯材に含浸させた接着シートを得る方法が挙げられる。
本発明において用いられる芯材としては、例えば、織布や不織布が挙げられる。織布および不織布としては、一般的に公知の織布または不織布を用いることができ、具体的には、液晶ポリマー等の耐熱性のあるプラスチックの繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等が挙げられ、これらの材料を用いて構成した織布、不織布を使用することができる。
(3)接着シートを用いた接着方法
本発明における接着シートを用いた接着方法は、被着体となる部材の種類等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、接着シートから第1離型紙および第2離型紙のいずれか一方を剥離し、その面を被着体となる部材に貼合して、その後、残りの離型紙を剥離し、最後に200℃以下の温度で接着シートを硬化させる方法が挙げられる。
2.部材
本発明における部材は、本発明により得られる物品を構成する部材であり、物品の種類に応じて適宜選択されるものである。本発明における部材は、例えば、金属材料、無機材料、有機材料、またはこれらを組み合わせた複合材料、積層材料から構成されていても良い。また、本発明の部材の形態としては、例えば、層状であっても良く、フィルム状であっても良く、表面に凹凸形状を有していても良い。さらに、本発明の部材は、表面に接着シートが配置された単体であっても良く、間に接着シートが挟持された複数体であっても良い。部材が単体である場合には、接着シートにより部材の表面を覆い、接着シートを保護層や平坦化層として用いることができる。なお、本発明における部材が、表面に凹凸形状を有する場合には、接着シートにより当該凹凸形状を平坦化することができるという効果を奏する。
B.接着剤
本発明の接着剤は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含み、上記硬化剤が、下記一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする材料である。
(上記式(1)において、RおよびRは、−CH−OHまたは−Hである。ただし、RおよびRのうち少なくともいずれか一方が−CH−OHである。)
本発明によれば、所定の構造を有する硬化剤を用いることにより、常温の環境下において、エポキシ樹脂との反応の進行を抑えて良好なポットライフを保つことができるとともに、接着剤の硬化温度を200℃以下とすることができる。
この理由については、次のようなことが推測される。
まず、常温の環境下において反応の進行を抑制し、良好なポットライフを保つためには、常温環境下では反応を開始せず、高温(250℃以上)環境下において反応を開始する硬化剤を用いる必要がある。しかしながら、接着剤を用いて物品を製造する場合、作業性の改善やタクト時間の短縮のためには、高温環境下ではなく、せめて200℃以下の環境下において反応を開始する接着剤を用いることが求められている。一方、200℃以下の環境下において反応を開始する硬化剤を用いた1液型のエポキシ樹脂接着剤の場合、常温の環境下での反応の進行を抑えることが困難となり、常温よりも低い低温の環境下での保存が必要となる。低温の環境下での保存が必要な場合、例えば、作業現場において、接着剤を冷却保存する設備が必要となる等、温度管理に手間がかかってしまうという問題がある。
そこで、本発明の発明者等は、種々検討を行ったところ、次のような知見を得た。すなわち、本発明の発明者等は、1液型のエポキシ樹脂接着剤に用いられ、反応を開始する温度が200℃以下の硬化剤、具体的にはイミダゾール環を有するイミダゾール系の硬化剤について着目し、その中でも良好なポットライフを得ることが可能な硬化剤についての検討を行った。まず、良好なポットライフを得ようとしたとき、硬化剤としては、エポキシ樹脂に対する硬化剤の反応を抑制することが可能な化合物を用いることが好ましい。そのため、従来では、敢えて立体障害を有する構造の硬化剤を用いて、エポキシ樹脂に対する硬化剤の反応を抑制させるという手法が多く採られている。しかしながら、本発明の発明者等が検討を重ねた結果、立体障害の有無に関わらず、水酸基を有する所定の構造のイミダゾール系の硬化剤を用いた場合に、良好なポットライフが得られることを発見した。この具体的な理由については明らかではないが、水酸基がイミダゾール環の電子を引っ張り、吸核性を低下させていることにより、硬化剤のエポキシ樹脂に対する反応を抑制させていることに起因すると推測される。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明の接着剤は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む。
以下、本発明の接着剤について詳細に説明する。
1.硬化剤
本発明における硬化剤は、上記一般式(1)で表わされる構造を有する。
上記一般式(1)で表わされる硬化剤としては、下記化合物(1−1)〜(1−3)が挙げられる。本発明においては、中でも化合物(1−1)を用いることが好ましい。
なお、硬化剤の具体的な説明については、上述した「A.物品の製造方法 1.シート状の接着剤 (1)接着組成物 (b)硬化剤」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.エポキシ樹脂
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、上述した硬化剤との併用により架橋重合反応を起こして硬化する材料であれば良く、特に限定されない。
なお、エポキシ樹脂の具体的な説明については、上述した「A.物品の製造方法 1.シート状の接着剤 (1)接着剤組成物 (a)エポキシ樹脂」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
3.アクリル系樹脂
本発明の接着剤は、アクリル系樹脂を含んでいても良い。本発明の接着剤がアクリル系樹脂を含む場合、シート状の接着剤とすることができる。
本発明において用いられるアクリル系樹脂は、一般的な接着剤に用いられる材料であれば良く、特に限定されないが、上述したエポキシ樹脂との相溶性の観点から選択することが好ましい。本発明の接着剤を、より接着強度の高いものとすることができる。
なお、アクリル系樹脂およびシート状の接着剤の具体的な説明については、上述した「A.物品の製造方法 1.シート状の接着剤」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
4.その他の材料
本発明の接着剤は、少なくとも上述した硬化剤およびエポキシ樹脂を含んでいれば良いが、必要に応じてその他の材料を含んでいても良い。
なお、本発明の接着剤に含まれるその他の材料については、上述した「A.物品の製造方法 1.シート状の接着剤 (1)接着剤組成物 (e)その他の材料」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
また、本発明の接着剤は、接着剤を構成する接着剤組成物を乾燥させることにより得ることができる。ここで、接着剤組成物とは、通常、溶剤を含んでおり、接着剤組成物を乾燥させて溶剤を除去することにより接着剤を得ることができる。なお、本発明における接着剤組成物に用いられる溶剤については、上述した「A.物品の製造方法 1.シート状の接着剤 (1)接着剤組成物 (d)溶剤」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明における接着剤組成物を調製する方法としては、例えば、各成分を混練、分散する方法が挙げられる。なお、具体的な調製方法については、上述した「A.物品の製造方法 1.シート状の接着剤 (1)接着剤組成物 (f)調製方法」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例]
(接着剤組成物の調製)
表1に示す成分を混合して接着剤組成物を調製した。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるJER1009(三菱樹脂社製 固形分100%品を酢酸エチルで固形分43%に希釈したもの)185g、およびJER828(三菱樹脂社製 固形分100%)120gに対して、アクリル系樹脂である変性メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−メチルメタクリレートの3元共重合体(変性PMMA−BA−PMMA、アルケマ社製 M22N、固形分100%品を酢酸エチルで固形分40%に希釈したもの)75g、および硬化剤である2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW、四国化成社製 固形分100%)7gを混合し、接着剤組成物を調製した。
(接着シートの作成)
得られた接着剤組成物を、第1離型紙としてシリコーン剥離処理を施したPETキャリアフィルム(ニッパ社製 厚み:50μm)に、コーターを用いて塗布した。次いで、50℃×1.5min、70℃×1.5min、110℃×1.5minの条件下で接着剤組成物を乾燥させた。その後、第2離型紙としてシリコーン剥離処理を施した他のPETキャリアフィルム(ニッパ社製 厚み:50μm)を用いて、接着剤の表面をラミネートし、接着シートを作成した。
[比較例1]
表1に示すように、硬化剤として2,4−ジアミノー6−[2’−メチルイミダゾリルー(1’)]−エチルーs−トリアジン イソシアヌル酸付加物(2MAOK−PW、四国化成社製 固形分100%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成した。
[比較例2]
表1に示すように、硬化剤として2−エチルー4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成社製 固形分100%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成した。
[比較例3]
表1に示すように、硬化剤として2−メチルイミダゾール(2MZ−H、四国化成社製 固形分100%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接着シートを作成した。
[評価]
1.保存試験
得られた接着シートを、温度23℃、湿度50%の恒温室、および温度40℃の恒温室に所定日数保存した。その後、恒温室から接着シートを取り出し、第1離型紙を剥離して、接着剤の表面を指で押圧して、下記のように評価した。
「○」:保存前と同様に、接着剤の表面に指跡が残る場合
「△」:接着剤の表面に指跡が残るものの、保存前に比べて指跡が減少した場合
「×」:接着剤の表面に指跡が残らない場合
2.剪断試験
得られた接着シートを25mm×12.5mmに切断し、第1離型紙を剥離して、SUSに圧着した。その後、第2離型紙を剥離して、もう1つの試験片と圧着し、N=3の荷重を加えたまま温度180℃、硬化時間30minの条件下で硬化させ、常温(23℃)にて放冷することにより、測定用試料を作成した。そして、引張試験機(製品名:RTA−1T,A&D社製を用いて、室温での剪断試験(JIS K6850に準拠、引張り速度10mm/min)を行った。
[結果]
1.保存試験
表2に示すように、実施例では、恒温室1、2のいずれにおいても良好な保存性を得ることができた。一方、比較例1では、日数の経過とともに保存性が低下し、比較例2、3では、保存性を得ることができなかった。したがって、実施例では、良好なポットライフを保てることが分かった。
2.剪断試験
表3に示すように、実施例では、恒温室(温度40℃条件下)で保存したとき、保存開始時と保存開始から4weeks(28日)経過後とで、剪断強度が同じであることが確認された。したがって、実施例では、良好なポットライフを保てるとともに、200℃以下の温度での硬化が可能であることが分かった。一方、比較例1〜3では、保存開始時と保存開始から4weeks(28日)経過後とで、所定の剪断強度を保つことができなかった。
1 … シート状の接着剤
1’ … 接着層
1” … 接着剤組成物
2 … 部材
3a … 第1離型紙
3b … 第2離型紙
4 … 芯材
10 … 物品
20 … 接着シート

Claims (3)

  1. 部材上、または2つの前記部材の間に、シート状の接着剤を配置し、200℃以下の温度で前記接着剤を硬化する接着工程を有し、
    前記接着剤は、1液型のエポキシ樹脂接着剤であり、
    さらに、前記接着剤は、前記接着剤を40℃の温度条件下で保存試験を行った際に、保存開始から28日後の剪断強度が、保存開始時の剪断強度を維持する接着剤であることを特徴とする物品の製造方法。
  2. エポキシ樹脂と、硬化剤とを含み、
    前記硬化剤が、下記一般式(1)で表わされる構造を有することを特徴とする接着剤。
    (上記式(1)において、RおよびRは、−CH−OHまたは−Hである。ただし、RおよびRのうち少なくともいずれか一方が−CH−OHである。)
  3. さらにアクリル系樹脂を含み、シート状であることを特徴とする請求項2に記載の接着剤。
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