1.シュリンク包装方法
本発明は、熱収縮フィルムを用いて被包装物を包装するシュリンク包装方法であって、
(I)前記被包装物を前記熱収縮フィルムにより被覆して熱収縮フィルム被覆体を形成する工程I、及び
(II)前記熱収縮フィルム被覆体を加熱して前記熱収縮フィルムを熱収縮させて包装体を得る工程IIを有し、
前記熱収縮フィルムは、
(1)熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な端部と、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部とが接合されて形成されており、
(2)前記熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度と、前記熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度とが異なっており、
(3)前記熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さは、前記熱収縮性フィルムAのMD方向の長さよりも短い、ことを特徴とする。
本発明のシュリンク包装方法(以下、単に「包装方法」とも示す。)に用いられる熱収縮フィルムを構成する熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBを後述するインフレーション法により製造する場合における、上記MD方向及びTD方向について図を用いて説明する。図1は、本発明の包装方法に用いられる熱収縮フィルムを構成する熱収縮性フィルムA又は熱可塑性樹脂フィルムBを後述するインフレーション法により製造する製造方法の模式図である。図1において、上記熱収縮性フィルムA又は熱可塑性樹脂フィルムB1は、円形ダイス2の環状のダイリップから、紙面の下から上方向、すなわち、点線の矢印3の方向に向かって押出され、後工程において巻き取られる。このとき、特定のブロー比で点線の矢印4の方向に延伸される。上記熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBをインフレーション法により製造する場合、MD方向(フィルム巻き取り方向)は点線3の方向であり、TD方向(MD方向に対して垂直な方向)は点線4の方向である。
<工程I>
工程Iは、被包装物を熱収縮フィルムにより被覆して熱収縮フィルム被覆体を形成する工程である。本発明の包装方法の工程Iを図を用いて説明する。図2及び3は、本発明の包装方法の工程Iを示している。図2において、被包装物11は、紙面の右から左に向けて移動する。熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13は、それぞれフィルムロールから引き出されてTD方向と平行な端部同士が、接合部14において接合されている。
また、図3は、工程Iにおいて被包装物11が、クロスシール機15を通過した後の状態及び工程IIを示す模式図である。図3では、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13は、クロスシール機15により挟まれて加熱されて接合される(クロスシール)と同時に、フィルムロール側の熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13と切断される。このため、工程Iにより、被包装物11を熱収縮フィルムにより被覆して熱収縮フィルム被覆体が形成される。次いで、図3において、熱収縮フィルム被覆体は熱風加熱型シュリンクトンネル18に送られ、熱風により熱収縮性フィルムA12の融点以上に加熱されて熱収縮され、包装体が形成される。また、切断された後のフィルムロール側の熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13は、クロスシール機15によりTD方向と平行な端部同士が、接合部14において接合された図2の状態となり、次の被包装物11を包装するために用いることができる。
図4は、本発明の包装方法をスリーブ包装により行う場合の熱収縮フィルム被覆体の一例を示す模式図であり、図4(a)は図2及び3において紙面の右から左に向けて被包装物を移動させて熱収縮フィルム被覆体を形成した際に、移動方向の後方から見た状態を示す図であり、図4(b)は、横から見た状態を示す図である。工程Iにより形成される熱収縮フィルム被覆体は、熱収縮フィルムが筒状になっている。熱収縮フィルム被覆体を形成する熱収縮フィルムは、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13が、2箇所の接合部14において接合されて熱収縮フィルムが形成されている。図4に示す熱収縮フィルム被覆体を後述する工程IIで加熱することにより、図5に示すスリーブ口を有する包装体が形成される。図5は、被包装物である缶をスリーブ包装した包装体を示す模式図である。図5に示す包装体では、缶16が集積包装されており、スリーブ口17が形成されている。
図6は、本発明の包装方法を四方シール包装により行う場合の熱収縮フィルム被覆体の一例を示す模式図である。図6は、図2及び3において紙面の右から左に向けて被包装物を移動させて熱収縮フィルム被覆体を形成した際に、上から見た状態を示す図である。図6においても、工程Iにより形成される熱収縮フィルム被覆体は、熱収縮フィルムが筒状になっている。熱収縮フィルム被覆体を形成する熱収縮フィルムは、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13が、2箇所の接合部14において接合されて熱収縮フィルムが形成されている。
上記工程Iは、四方シール包装を行う場合は、サイドシールを行う工程を含むことが好ましい。例えば、図6で示す点線a−a’に沿ってサイドシールを行うことにより、四方シール包装を容易に行うことができる。
上記サイドシールはクロスシールの後に行うことができる。
本発明の包装方法では、四方シール包装を行う場合は図6のように、熱可塑性樹脂フィルムB13の幅(TD方向と平行方向の長さ)が、熱収縮性フィルムA12の幅(TD方向と平行方向の長さ)よりも短いことが好ましい。当該構成とすることで、四方シール包装を行った際に、サイドシールにより熱可塑性樹脂フィルムB13のTD方向の端部がシールされることが抑制されるため、開封時に熱可塑性樹脂フィルムB13のTD方向の端部がつまみ易くなり、より容易に開封することができる。
図6に示す熱収縮フィルム被覆体を後述する工程IIで加熱することにより、スリーブ口が形成されず、四方向がシールされた包装体が形成される。
工程Iで用いられる熱収縮フィルムは、(1)熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な端部と、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部とが接合されて形成されており、(2)前記熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度と、前記熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度とが異なっており、(3)前記熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さは、前記熱収縮性フィルムAのMD方向の長さよりも短いとの構成を備えている。以下、工程Iで用いられる熱収縮フィルムについて説明する。
上記熱収縮フィルムは、(1)熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な端部と、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部とが接合されて形成されている。例えば、図6において、熱収縮フィルムは熱収縮性フィルムA12と熱可塑性樹脂フィルムB13とが接合されて形成されている。図6において、熱収縮フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向はa−a’方向であり、TD方向はa−a’方向と直交する方向である。図6において、熱収縮性フィルムA12のTD方向と平行な端部は12aで示される辺であり、熱可塑性樹脂フィルムB13のTD方向と平行な端部は13aで示される辺であり、図6において熱収縮フィルムは、熱収縮性フィルムA12のTD方向と平行な端部12aと、熱可塑性樹脂フィルムB13のTD方向と平行な端部13aとが接合されて形成されている。
上記接合方法としては特に限定されず、従来公知の方法により接合することができるが、上述のようにクロスシール機により加熱して接合すること(ヒートシール)が好ましい。クロスシール機により加熱して接合することにより、図3において被包装物側の熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な端部と、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部とを接合すると同時に、図2に示すように、フィルムロール側のTD方向と平行な端部同士が接合部14において接合された状態となり、次の被包装物を包装するために用いることができるので、連続して効率良く被包装物を包装することができる。
クロスシール機によりヒートシールを行う方法としては、クロスシール機の端部に取り付けられたニクロム線を配したシールバーにより熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13を積層した状態で受け軸に押し付けると同時に、ニクロム線にインパルスの電流を流すことにより短時間の昇温を行い、シールバーと受け軸に挟まれた熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13を融着、切断する方法が挙げられ、また、ニクロム線に代えて、ヒートパイプを取り付けたシールバーを適正温度に調整しておき、受け軸に一定時間押し付けることによりヒートシールする方法が挙げられる。またサイドシールも同様の方法によりヒートシールすることができる。
上記熱収縮フィルムは、(2)上記熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度と、上記熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度とが異なっている。なお、本明細書における引裂き強度は、JIS K7128−2に準拠したエルメンドルフ法により測定した値である。
上記熱収縮フィルムは、熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度が熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度よりも低い形態(i)、及び、熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度が熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度よりも高い形態(ii)のどちらであってもよい。
上記形態(i)の場合、熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度は1N以下が好ましく、0.1〜0.8Nがより好ましい。なお、MD方向のエルメンドルフ引裂き強度は限定的ではないが、0.02〜5Nが好ましく、0.05〜5Nがより好ましい。熱収縮性フィルムAのエルメンドルフ引裂き強度を上述の範囲とすることにより、熱収縮性フィルムAが優れた結束力を有するとともに、簡単に引裂いて内容物を取り出すことが可能となる。
上記形態(i)の場合、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度は0.8〜5Nが好ましく、1〜5Nがより好ましい。なお、MD方向のエルメンドルフ引裂き強度は限定的ではないが、0.1〜5Nが好ましく、0.2〜5Nがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムBのエルメンドルフ引裂き強度を上述の範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBが優れた結束力を有するとともに、熱可塑性樹脂フィルムBをつまんで引裂くことにより熱収縮性フィルムAが引裂かれて、内容物を容易に取り出すことが可能となる。
上記形態(i)の場合、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度が、熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度の1.5倍以上であることが好ましく、2〜5倍であることがより好ましい。上記構成とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBをつまんで引裂くことにより熱収縮性フィルムAが引裂かれて、内容物を容易に取り出すことが可能となる。
上記形態(ii)の場合、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度は1N以下が好ましく、0.1〜0.8Nがより好ましい。なお、MD方向のエルメンドルフ引裂き強度は限定的ではないが、0.02〜5Nが好ましく、0.05〜5Nがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムBのエルメンドルフ引裂き強度を上述の範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBを引裂いて内容物を容易に取り出すことができる。
上記形態(ii)の場合、熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度は0.8〜5Nが好ましく、1〜5Nがより好ましい。なお、MD方向のエルメンドルフ引裂き強度は限定的ではないが、0.1〜5Nが好ましく、0.2〜5Nがより好ましい。熱収縮性フィルムAのエルメンドルフ引裂き強度を上述の範囲とすることにより、熱収縮性フィルムAが優れた結束力を有するとともに、熱可塑性樹脂フィルムBを引裂くことにより内容物を容易に取り出すことが可能となる。
上記形態(ii)の場合、熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度が、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度の1.5倍以上であることが好ましく、2〜5倍であることがより好ましい。上記構成とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBを引裂くことにより内容物を容易に取り出すことが可能となる。
上記熱収縮フィルムは、(3)上記熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さが、上記熱収縮性フィルムAのMD方向の長さよりも短い。上記熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さは5〜150mmが好ましく、5〜100mmがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さを上記範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBを引裂くことにより内容物を容易に取り出すことが可能となる。なお、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向の長さは、被包装物の大きさ、形状に合わせて適宜設定すればよい。また、上記熱収縮性フィルムAのMD方向及びTD方向の長さも、被包装物の大きさ、形状に合わせて適宜設定すればよい。
(熱収縮性フィルムA)
上記熱収縮性フィルムAとしては上記(1)〜(3)の要件を満たす限り限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂を主成分とするポリエチレン系樹脂フィルムを用いることが好ましい。なお、本明細書において、「ポリエチレン系樹脂を主成分とする」とは、熱収縮性フィルムA、又は、後述する熱可塑性樹脂フィルムBの全体(熱収縮性フィルムA、熱可塑性樹脂フィルムBが多層の場合も含む)に含まれる「環状オレフィン及びアイオノマー」以外の樹脂成分100質量%に対してポリエチレン系樹脂を60質量%以上含むことを意味しており、その中でも80質量%以上がより好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、高い熱収縮率を得るために、低密度ポリエチレン(LDPE)を30質量%以上含むものが好ましい。より具体的には、LDPEは35質量%以上であればより好ましく、LDPE100質量%の場合であってもよい。ポリエチレン系樹脂として、LDPEと他のポリエチレン系樹脂とを併用する場合には、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を用いることができる。LDPEと、その他のポリエチレン系樹脂とを併用することにより、熱収縮フィルムの強度を向上させることができる。これらのLDPE以外のポリエチレン系樹脂は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
LDPEは、密度が0.910〜0.930g/cm3の範囲のポリエチレン系樹脂(ホモポリエチレン)であり、例えば、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により製造されるものが挙げられる。なお、本明細書における密度は、JIS K7112:1999 水中置換法(A法),25℃の条件で測定した値である。
本発明では、熱収縮フィルムの優れた結束性(収縮性)及び製膜安定性を得るためには、LDPEのメルトフローレート(MFR)は、0.05〜2.0g/10分が好ましく、0.1〜2.0g/10分がより好ましく、0.2〜2.0g/10分が更に好ましい。なお、本明細書におけるMFRは、別途測定条件を規定しない限り、JIS K7210:1999,A法,190℃,荷重21.18Nの条件で測定した値である。
LLDPE及びMDPEには明確な区別はないが、密度によって便宜上区別することがある。LLDPE及びMDPEは、Ziegler触媒、メタロセン触媒等のシングルサイト系触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することにより得ることができ、α−オレフィンの種類や量を調整することによって密度範囲を制御することができる。
上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独又は2種以上を併用することができる。
LLDPEの密度は、0.870〜0.945g/cm3という広範囲の製品が市販されており、本発明では特に限定されないが、集積包装での高い結束性を得る点では0.900〜0.940g/cm3が好ましく、0.910〜0.940/cm3がより好ましい。また、LLDPEのMFRは、製膜性に優れ、且つ結束性に優れる点で、0.1〜4.0g/10分が好ましく、0.5〜2.0g/10分がより好ましい。
また、MDPEは、LLDPEの中で特に密度が0.930〜0.945/cm3程度のものを指し、MFRとしては0.05〜2.0g/10分程度が好ましい。
HDPEとしては特に限定されないが、密度は0.940〜0.960g/cm3が好ましく、0.945〜0.960g/cm3がより好ましい。また、熱収縮性フィルムAの優れた結束性及び製膜安定性を得るためには、HDPEのメルトフローレート(MFR)は、0.1〜4.0g/10分が好ましく、0.5〜2.0g/10分がより好ましい。
熱収縮性フィルムAは、環状オレフィン系重合体を含有してもよい。熱収縮性フィルムAは、本発明の熱収縮フィルムが上記形態(i)の構成である場合、熱収縮性フィルムAは環状オレフィン系重合体を含有することが好ましい。
上記環状オレフィン系重合体としては、重合体中に環状オレフィンを含有していれば特に限定されず、シクロオレフィン単独重合体(以下、「COP」とも示す)、エチレン−シクロオレフィン共重合体等(以下、「COC」とも示す)を用いることができる。熱収縮フィルムのTD方向の熱収縮性を向上させることができる点ではCOCが好ましい。
エチレン−環状オレフィン共重合体としては限定的ではないが、モノマー成分としてのエチレン含有量が25質量%以上でガラス転移点(Tg)が120℃以下であれば、LDPE、LLDPE等のポリエチレン系樹脂への分散性が良くなり、TD方向の熱収縮性が向上するため好ましい。また、エチレン−環状オレフィン共重合体の密度は0.95〜1.05g/cm3程度が好ましく、190℃,21.18Nで測定したMFRは0.05〜4.0g/10分程度が好ましい。
モノマー成分としての環状オレフィンは、例えば、炭素原子数が3〜20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3〜20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン及びその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン及びその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン及びその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]−5−ペンタコセン及びその誘導体等があげられる。なお、環状オレフィンは、特開2007−291364号公報に開示されているように、水素添加処理されているものであってもよい。
エチレン−環状オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン共重合体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン−エチレン共重合体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン−エチレン共重合体等が挙げられる。また、エチレン−環状オレフィン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学(株)製のアペル(商品名)、Topas Advanced Polymers GmbH社製のTOPAS(商品名)等が挙げられる。
シクロオレフィン単独重合体としては特に限定されず、ガラス転移点(Tg)が120℃以下であれば、LDPE、LLDPE等のポリエチレン系樹脂への分散性が良くなり、TD方向の熱収縮性が向上するため好ましい。シクロオレフィン系単独重合体の密度は0.95〜1.05g/cm3程度が好ましく、190℃,21.18Nで測定したMFRは0.05〜4.0g/10分程度が好ましい。
シクロオレフィン単独重合体の市販品としては、例えば、日本ゼオン(株)製のゼオノア(商品名)、JSR(株)製のアートン(商品名)等が挙げられる。
上記環状オレフィン系重合体は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
熱収縮性フィルムAが単層である場合には、樹脂成分100質量%中、環状オレフィン系重合体の含有量は5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。また、熱収縮性フィルムAが後述するように多層である場合には、いずれかの層が環状オレフィン系重合体を含有し、環状オレフィン系重合体を含有する層の樹脂成分100質量%中、環状オレフィン系重合体の含有量は5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。熱収縮性フィルムA全体中の環状オレフィン系重合体の含有量を上述の範囲とすることにより、熱収縮性フィルムAが優れた熱収縮性と引裂き性を発揮し易くなる。
熱収縮性フィルムAは、アイオノマーを含有してもよい。なお、本明細書において、「ポリエチレン系樹脂」と「アイオノマー」とは異なる成分であり、区別される。熱収縮性フィルムAは、本発明の熱収縮フィルムが上記形態(i)の構成である場合、熱収縮性フィルムAはアイオノマーを含有することが好ましい。
アイオノマーは、オレフィン系重合体の一部又は全部が金属イオンにより中和された樹脂状重合体である。上記オレフィン系重合体としては、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体、オレフィン重合体の変性物等が挙げられる。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を形成するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。すなわち、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体としては、具体的には、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、プロピレン−不飽和カルボン酸共重合体等が挙げられる。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができる。中でも、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。また、上記不飽和カルボン酸としては、不飽和カルボン酸エステルを用いてもよく、当該不飽和カルボン酸エステルのケン化物を用いてもよい。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、不飽和カルボン酸の含有量が好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜23質量%、更に好ましくは4〜20質量%の共重合体であり、オレフィンと不飽和カルボン酸との二元共重合体のみならず、任意に他の単量体が共重合された多元共重合体であってもよい。不飽和カルボン酸の含有量が上記範囲であることにより、熱収縮フィルムAがより十分な引裂き性を示すことができ、且つ、吸湿性の増加が抑制されて優れた成形性を示すことができる。
上記任意に共重合されていてもよい他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素、二酸化硫黄等を例示することができる。これらの他の単量体は、例えば0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%の範囲で共重合されていてもよいが、得られるアイオノマーの引裂性の低下を抑制できる点で、上述のような他の単量体は含まれていないことが好ましく、含んでいる場合であっても、15質量%以下程度の量で共重合されていることが好ましい。
上記オレフィン重合体の変性物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体をカルボン酸、無水カルボン酸等と反応させて後変性し、カルボキシル基、無水カルボン酸基を付加した変性物等が挙げられる。
アイオノマーとしては、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体及びオレフィン重合体の変性物の、カルボキシル基、カルボン酸エステル基及び無水カルボン酸基の10〜100モル%、好ましくは10〜80モル%が金属イオンで中和されたものを好適に用いることができる。上記カルボキシル基、カルボン酸エステル基及び無水カルボン酸基の中和度が上記範囲であることにより、熱収縮フィルムAの引裂き性の低下を抑制することができる。ここで、上記金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛等のイオンが挙げられ、中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましく、特に、ナトリウムをイオン源とするアイオノマーを用いると、熱収縮フィルムAが引裂き性に優れる点で、より好ましい。
上記アイオノマーとしては、例えば、国際公開第2010/024286号、特開平6−192512号公報に記載のものを用いることができる。
アイオノマーのMFRは、製造工程での成形性やフィルム物性等に優れる点で、0.1〜4.0g/10分であることが好ましく、0.5〜2.0g/10分であることがより好ましい。
熱収縮性フィルムAが単層である場合には、樹脂成分100質量%中、アイオノマーの含有量は10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。また、熱収縮性フィルムAが後述するように多層である場合には、いずれかの層がアイオノマーを含有し、アイオノマーを含有する層の樹脂成分100質量%中、アイオノマーの含有量は10〜100質量%が好ましく、15〜100質量%がより好ましい。熱収縮性フィルムA全体中のアイオノマーの含有量を上述の範囲とすることにより、熱収縮性フィルムAが優れた熱収縮性と引裂き性とを発揮し易くなる。
上記アイオノマーを含有する層は、上記ポリエチレン系樹脂の他に、アイオノマー以外に金属イオンで中和されていない他のイオン性コポリマーを含有していてもよい。上記金属イオンで中和されていない他のイオン性コポリマーとしては、上記アイオノマーの調製に用いられる、金属イオンにより中和していないエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を用いることができ、当該エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、上記アイオノマーを含有する層に用いられるアイオノマーを調製するためのエチレン−不飽和カルボン酸共重合体と同一であっても異なっていてもよい。
熱収縮性フィルムAの層構成は、単層又は多層のいずれであってもよい。熱収縮性フィルムAが多層の場合、積層数としては2〜5層程度の任意の積層数を採用することができる。積層数は例えば、アイオノマーが特定の層に含まれる構成とすることでより高い引裂き性や収縮率を達成させたり、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料等の公知の添加剤をそれぞれ別の層に配合したりするなど、必要性に応じて調整することができる。そして、隣接層どうしは組成が区別できるように設定することが好ましい。
熱収縮性フィルムAの厚みは、熱収縮性フィルムAが単層の場合には、15〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。多層の場合には、総厚みは15〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
熱収縮性フィルムAが多層構成の多層熱収縮フィルムAである場合には、例えば、多層熱収縮フィルムA中の上記で説明した単層構成の熱収縮性フィルムA(以下、「基本層とも示す。」)を多層中の少なくとも1層として有し、当該基本層の厚みが、多層熱収縮性フィルムAの総厚みの10%以上であることが好ましい。
多層熱収縮性フィルムAは、上記基本層を有していればその層構成は特に限定されず、例えば、中間層としての上記基本層の両面に、内層及び外層として他の層を備える層構成、上記基本層の一方面に、他の層を備える構成、中間層としての他の樹脂層の両面に、内層及び外層として上記基本層を備える構成であってもよい。
上記基本層と積層される他の層としては特に限定されず、例えば、LDPEを主成分とする層、LLDPEを主成分とする層等が挙げられ、LDPEからなる層、LLDPEからなる層等が好適に用いられる。
多層熱収縮性フィルムAにおいて、上記基本層の厚みは、多層熱収縮性フィルムAの総厚みの10%以上が好ましい。基本層の厚みを上記範囲とすることにより、多層熱収縮性フィルムAがTD方向の熱収縮性を十分に発揮することができる。上記基本層の厚みは、多層熱収縮性フィルムAの総厚みの15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
熱収縮性フィルムAは、JIS Z1709に準拠して130℃,20秒の条件で熱収縮率を測定したときに、MD方向の熱収縮率が60%以上であることが好ましく、60〜80%であることがより好ましい。また、TD方向の熱収縮率は0%以上であることが好ましい。MD方向及びTD方向の熱収縮率を上記の通りに設定することにより、熱収縮性フィルムAがより優れた収縮性を示し、被包装物をより容易にシュリンク包装することができる。なお、本明細書における130℃収縮率は、熱媒液としてシリコーンオイルを用いてJIS Z1709に準拠した測定方法により(但し、温度条件を120℃から130℃に変更した)測定した値である。
熱収縮性フィルムAは、密度は特に限定されず、MFRは0.1〜2.0g/10分が好ましい。上記特定の組成並びに特定のMFRを有することにより、被包装物のシュリンク包装により適しており、優れた結束力を有するとともに、簡単に引裂いて内容物を取り出すことができる。
(熱可塑性樹脂フィルムB)
上記熱可塑性樹脂フィルムBとしては上記(1)〜(3)の要件を満たす限り限定されず、樹脂成分として上記熱収縮性フィルムAで詳述したフィルムを用いてもよい。このような熱可塑性樹脂フィルムBとしては、例えば、上記熱収縮性フィルムAで詳述したポリエチレン系樹脂フィルムを用いることができる。
上記熱可塑性樹脂フィルムBは、上記形態(i)の場合、ポリプロピレン系樹脂を含有していてもよい。このような構成としては、例えば、上記熱収縮性フィルムAがポリエチレン系樹脂フィルムである場合、上記熱可塑性樹脂フィルムBがポリプロピレン系樹脂を含有する構成が挙げられる。上記構成とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBをつまんで引っ張ることで熱収縮性フィルムAが引裂かれ、容易に開封することができる。
ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記プロピレンとα−オレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、強度、収縮性の観点からホモポリプロピレンまたはプロピレン・エチレンランダム共重合体等が好ましい。
これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.1〜4g/10分が好ましく、0.2〜2g/10分がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRを上記範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBがより優れた結束性(収縮性)及び製膜安定性を示すことができる。なお、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999に準拠して、230℃、荷重21.18Nの条件で測定した値である。
上記熱可塑性樹脂フィルムBは、上記形態(i)の場合、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含有することが好ましい。上記構成とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBをつまんで引っ張ることで熱収縮性フィルムAが引裂かれ、容易に開封することができる。この場合、熱可塑性樹脂フィルムB中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂フィルムBを100質量%として、1〜99質量%が好ましく、5〜95質量%がより好ましい。
上記形態(i)の場合、上記ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を含んでいてもよい。ポリプロピレン系樹脂と、これらのポリエチレン系樹脂とを併用することにより、熱可塑性樹脂フィルムBの強度を向上させることができる。上記LLDPE、MDPE、HDPE等は、上記熱収縮性フィルムAの樹脂成分に用いられるものと同一のものを用いることができる。
上記LLDPE、MDPE、HDPE等は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
上記形態(i)の場合、上記熱可塑性樹脂フィルムBは、樹脂成分がポリプロピレン系樹脂のみからなるフィルムであってもよい。上記構成のフィルムとすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBをつまんで引っ張ることで熱収縮性フィルムAが引裂かれ、容易に開封することができる。
上記形態(ii)の場合、熱可塑性樹脂フィルムBを形成する樹脂成分は、環状オレフィン系重合体を含有してもよい。熱可塑性樹脂フィルムBを形成する樹脂成分が含有する環状オレフィン系重合体は、上記熱収縮性フィルムAの樹脂成分に用いられるものと同一のものを用いることができる。
熱可塑性樹脂フィルムBが単層である場合には、樹脂成分100質量%中、環状オレフィン系重合体の含有量は5〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムBが後述するように多層である場合には、いずれかの層が環状オレフィン系重合体を含有し、環状オレフィン系重合体を含有する層の樹脂成分100質量%中、環状オレフィン系重合体の含有量は10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムB全体中の環状オレフィン系重合体の含有量を上述の範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBが優れた熱収縮性と引裂き性を発揮し易くなる。
上記形態(ii)の場合、熱可塑性樹脂フィルムBを形成する樹脂成分は、アイオノマーを含有してもよい。熱可塑性樹脂フィルムBを形成する樹脂成分が含有するアイオノマーは、上記熱収縮性フィルムAの樹脂成分に用いられるものと同一のものを用いることができる。
上記形態(ii)の場合であり、且つ、熱可塑性樹脂フィルムBが単層である場合には、樹脂成分100質量%中、アイオノマーの含有量は10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムBが後述するように多層である場合には、いずれかの層がアイオノマーを含有し、アイオノマーを含有する層の樹脂成分100質量%中、アイオノマーの含有量は20〜100質量%が好ましく、25〜100質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムB全体中のアイオノマーの含有量を上述の範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBが優れた熱収縮性と引裂き性とを発揮し易くなる。
熱可塑性樹脂フィルムBは、多層であってもよい。熱可塑性樹脂フィルムBが多層の場合、積層数としては2〜5層程度の任意の積層数を採用することができる。積層数は例えば、アイオノマーが特定の層に含まれる構成とすることでより高い引裂き性や収縮率を達成させたり、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料等の公知の添加剤をそれぞれ別の層に配合したりするなど、必要性に応じて調整することができる。そして、隣接層どうしは組成が区別できるように設定することが好ましい。
上記形態(i)の場合、熱可塑性樹脂フィルムBは、ポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムを少なくとも一層有する多層フィルムであることが好ましい。このような多層フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂を含有するフィルム及びポリプロピレン系樹脂を含有するフィルムが積層されている多層フィルムが挙げられ、中でも、ポリエチレン系樹脂フィルム及びポリプロピレン系樹脂フィルムが積層されている多層フィルムを好適に用いることができる。この場合、積層の順序は特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂フィルムおよびポリプロピレン系樹脂フィルムが交互に積層されている構成が挙げられる。なお、本明細書において、「ポリプロピレン系樹脂フィルム」とは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とするフィルムであり、熱可塑性樹脂フィルムB全体(熱可塑性樹脂フィルムBが多層の場合も含む)に含まれる「環状オレフィン及びアイオノマー」以外の樹脂成分100質量%に対してポリプロピレン系樹脂を60質量%以上含むことを意味しており、その中でも80質量%以上がより好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムBが単層の場合には、密度は特に限定されず、MFRは0.1〜6.0g/10分が好ましい。上記特定の組成並びに特定のMFRを有することにより、被包装物のシュリンク包装により適しており、優れた結束力を有するとともに、簡単に引裂いて内容物を取り出すことができる。
熱可塑性樹脂フィルムBの厚みは、熱可塑性樹脂フィルムBが単層の場合には、15〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。多層の場合には、総厚みは15〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
上記形態(i)において、熱可塑性樹脂フィルムBがポリエチレン系樹脂フィルムである場合、熱可塑性樹脂フィルムBの厚みは、上記熱収縮性フィルムAの厚みの2倍以上が好ましく、2〜4倍がより好ましい。熱可塑性樹脂フィルムBがポリエチレン系樹脂フィルムである場合に熱可塑性樹脂フィルムBの厚みを上記範囲とすることにより、熱可塑性樹脂フィルムBをつまんで引っ張ることにより、熱収縮性フィルムAが引裂かれるので、より容易に開封することができる。
(熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBの製造方法)
上記熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBの製造方法としては特に限定されず、例えば、熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBをインフレーション法により製造する製造方法が挙げられる。
インフレーション法は、多層熱収縮性フィルムA及び多層熱可塑性樹脂フィルムBを製造する場合には多層インフレーション法が用いられる。当該多層インフレーション法は、一般的に、各層を構成する樹脂などの成分を押出機内で溶融混練することにより溶融状態の樹脂組成物を調製し、押出機から樹脂組成物を円形のダイスに供給し、円形のダイスから樹脂組成物を共押出しして円筒状のフィルムを製膜すると共に、当該円形のダイスの中心部から圧縮空気を供給し、製膜された円筒状のフィルムを周方向に延伸することによって製造する製造方法である。
熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBの製造方法の一例について図を用いて説明する。図7は、熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBの製造方法の一例を示す模式図であり、図8は環状ダイリップを示す模式図である。図7において、熱収縮性フィルムA12又は熱可塑性樹脂フィルムB13は、円形ダイス2の環状のダイリップから、紙面の下から上方向、すなわち、点線の矢印3の方向に向かって押出され、後工程において巻き取られる。
上記製造方法では、図8に示すように、円形ダイス2の環状のダイリップの直径(内径)をDとした場合に、図7において、ダイリップの端部21からDと同じ高さ、すなわち、ダイリップの端部21から紙面の上側にDと同じ高さでの円筒状の熱収縮性フィルムA12又は熱可塑性樹脂フィルムB13の直径、すなわちバブル径L1が2D以下であることが好ましい。上記バブル径が2D以下であると、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13が、TD方向の熱収縮性に優れる。上記バブル径は、1.8D以下がより好ましい。また、上記バブル径は、1.1D以上が好ましい。バブル径が1.1D以上であると、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13が、TD方向の熱収縮性に優れる。なお、上記「Dと同じ高さ」とは、ダイリップの端部21から、ダイリップの端部21を含む平面から法線方向にDと同じ距離離れた位置である。
上記図7及び8において、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13は、点線4の方向に1.5〜6のブロー比で延伸されることが好ましい。なお、上記ブロー比は、図7において、ダイリップの端部21における熱収縮性フィルムA12又は熱可塑性樹脂フィルムB13の円周の長さ(t1)と、図7におけるフロストラインL2よりも紙面の上側の熱収縮フィルム1の円周の長さ(t2)との比を、以下の式により算出することにより得られる比である。
(ブロー比)=(t2)/(t1)
上記ブロー比が1.5以上であると、熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBがTD方向の熱収縮性により優れる。上記ブロー比が6以下であると、延伸の安定性に優れ、フィルムの破断等の発生が抑制される。上記ブロー比は、1.5〜6.0がより好ましく、1.8〜5.5が更に好ましく、1.8〜5.0が特に好ましい。
インフレーション成形の温度は、熱収縮性フィルムA又は熱可塑性樹脂フィルムBを構成する各層に含まれるLLDPE、LDPE、HDPE、PP、環状オレフィン系重合体及びアイオノマーから選択される少なくとも1種を混合して得られる樹脂成分が示す融解ピーク温度のうち、最も高い融解ピーク温度以上の温度とすることが好ましい。好ましくは、(最も高い融解ピーク温度)+40℃〜(最も高い融解ピーク温度)+80℃である。具体的には、160〜200℃が好ましい。
インフレーション成形の温度が上記融点+40℃以上であることにより、これらの樹脂が充分な溶融状態となり、インフレーション成形による溶融製膜が容易となる。一方、インフレーション成形の温度が上記融点+80℃以下であることにより、バブルが安定して層厚みを均一とすることができ、樹脂劣化等によるフィッシュアイ、異物等の発生を抑制することができる。なお、本明細書中、融点は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定により測定される値である。
以上説明した工程Iにより、上記被包装物を上記熱収縮フィルムにより被覆して熱収縮フィルム被覆体を形成することができる。
<工程II>
工程IIは、上記熱収縮フィルム被覆体を加熱して上記熱収縮フィルムを熱収縮させて包装体を得る工程である。
熱収縮フィルム被覆体を加熱する方法としては特に限定されず、従来公知の方法により加熱することができる。例えば、上記工程Iにより形成された図4及び図6に示す熱収縮フィルム被覆体を、シュリンクトンネルに投入し、シュリンクトンネル内の温度を熱収縮フィルムの収縮温度以上に昇温させて加熱し、冷却することにより収縮包装させればよい。
加熱温度はシュリンクトンネルの長さ、ライン速度により適宜最適温度を設定することができるが、130〜240℃が一般的である。かかる温度範囲に設定することにより、十分な収縮が得られるとともに、高温過ぎることに基づく穴あき等を防止できる。
以上説明した工程IIにより、上記熱収縮フィルム被覆体を加熱して上記熱収縮フィルムを熱収縮させて包装体を得ることができる。
2.熱収縮フィルム
本発明は、また、熱収縮性フィルムAと熱可塑性樹脂フィルムBとが接合している熱収縮フィルムであって、
(1)上記熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な端部に、上記熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部が接合しており、
(2)上記熱収縮性フィルムAのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度と、上記熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向のエルメンドルフ引き裂き強度とが異なっており、
(3)上記熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さは、上記熱収縮性フィルムAのMD方向の長さよりも短い、
ことを特徴とする熱収縮フィルムでもある。
上記熱収縮フィルムは、上記シュリンク包装方法において説明した熱収縮フィルムを用いることができる。
上記熱収縮フィルムは、熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な端部に、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部が接合されていれば、図4及び図6に示すように筒状になっている場合に限定されず、例えば、熱収縮性フィルムAのTD方向と平行な一方の端部に、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な一方の端部が接合されており、平面状となっていてもよい。上記説明したシュリンク包装方法において図3のように、熱収縮性フィルムA12及び熱可塑性樹脂フィルムB13が、クロスシール機15により挟まれて加熱されて接合される(クロスシール)と同時に切断されることにより、容易に製造することができる点で、筒状であることが好ましい。
3.包装体
本発明は、また、熱収縮フィルムを被包装物の表面に配置してなる包装体でもある。熱収縮フィルムを被包装物の表面に配置する方法としては、上記説明したシュリンク包装方法における工程Iで形成した熱収縮フィルム被覆体を、工程IIにより加熱して熱収縮させることにより被包装物に密着させて、被包装物の表面に配置する方法が挙げられる。
被包装物としては特に限定されず、例えば、通信販売等で注文があった商品や、工場で製造された商品が挙げられ、また、缶飲料、ペットボトル飲料、紙パック飲料等の複数本の束等が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し本発明は実施例の範囲に限定されない。
以下の原料を用い、以下の方法により表1に記載のフィルムを調製した。
(原料)
・LDPE(旭化成製、サンテックLD M2204、MFR(190℃)=0.4g/10分、密度0.922g/cm3)
・LLDPE(日本ポリエチレン製、UF420、MFR(190℃)=0.9g/10分、密度0.924g/cm3)
・HDPE(京葉ポリエチレン製、E3100、MFR(190℃)=1.0g/10分、密度0.951g/cm3)
・PP(日本ポリプロピレン製、WFW5T、MFR(230℃)=3.5g/10分、密度0.9g/cm3)
・COC(ポリプラスチックス製、TOPAS9506F、MFR(190℃)=1.0g/10分、密度1.02g/cm3)
・アイオノマー(三井デュポン製、ハイミラン1601、MFR(190℃)=1.3g/10分、密度0.940g/cm3)
(熱収縮フィルムの調製)
3台(内層、中間層及び外層の各層を形成するためのもの)の押出機が接続具を介してリップギャップ1.0mmの円形多層ダイスに接続されてなる多層インフレーション製膜装置を用意した。
次いで、表1に示す配合で内外層及び中間層を形成する各組成を混合し、上記各押出機に供給し、190℃にて溶融混練した後、溶融状態の樹脂を上記円形ダイスよりダイ温度190℃の条件で吐出(共押出)し、横方向のブロー比を表1のように調整して、フィルムA〜Fを溶融製膜した。円形ダイスの環状ダイリップの直径(内径)Dは150mmであった。
実施例及び比較例
熱収縮性フィルムA及び熱可塑性樹脂フィルムBとして、表2に記載のフィルムを用いて熱収縮フィルムを形成し、スリーブ包装及び四方シール包装により被包装物をシュリンク包装した。具体的には、以下の通りである。
(スリーブ包装)
表2に記載のフィルムを用い、幅(TD方向長さ)50cmの熱収縮性フィルムAと、幅(TD方向長さ)50cmの熱可塑性樹脂フィルムBとをTD方向と平行な端部(長手方向(MD方向)の端部)同士が接合するように前方クロスシールを行った。
次いで、幅35cm、高さ15cm、奥行き15cmの箱状の被包装物を図4の(a)及び(b)のようにフィルムのTD方向と被包装物の幅方向が一致するように包み、熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さが5cmになるように後方クロスシールした。これにより、被包装物が筒状の熱収縮フィルムに被覆され、当該熱収縮フィルムが、フィルムロールから引き出されている熱収縮性フィルムA、及びフィルムロールから引き出されている熱可塑性樹脂フィルムBから切断された。筒状の熱収縮フィルムにおいて、熱収縮性フィルムAのクロスシール間の長さ(熱収縮性フィルムAのMD方向の長さ)は60cmであり、熱可塑性樹脂フィルムBのクロスシール間の長さ(熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さ)は5cmであった。
また、上記後方クロスシールにより、フィルムロールから引き出されている熱収縮性フィルムA、及びフィルムロールから引き出されている熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部同士が接合され、次の被包装物を被覆するために、前方クロスシールがされた状態となっていた。
最後に、140℃に昇温した収縮トンネルを通過させて熱収縮フィルムを熱収縮させ、被包装物がシュリンク包装された包装体を得た。
(四方シール包装)
表2に記載のフィルムを用い、幅(TD方向長さ)50cmの熱収縮性フィルムAと、幅(TD方向長さ)30cmの熱可塑性樹脂フィルムBとをTD方向と平行な端部(長手方向(MD方向)の端部)同士が接合するように前方クロスシールを行った。前方クロスシールは、熱収縮性フィルムAのTD方向長さの中央と、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向長さの中央とが一致するように行った。
次いで、幅35cm、長さ29cm、高さ1cmの板状の被包装物を図6のようにフィルムのTD方向と被包装物の幅方向が一致するように包み、熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さが5cmになるように後方クロスシールした。これにより、被包装物が筒状の熱収縮フィルムに被覆され、当該熱収縮フィルムが、フィルムロールから引き出されている熱収縮性フィルムA、及びフィルムロールから引き出されている熱可塑性樹脂フィルムBから切断された。筒状の熱収縮フィルムにおいて、熱収縮性フィルムAのクロスシール間の長さ(熱収縮性フィルムAのMD方向の長さ)は60cmであり、熱可塑性樹脂フィルムBのクロスシール間の長さ(熱可塑性樹脂フィルムBのMD方向の長さ)は5cmであった。
また、上記後方クロスシールにより、フィルムロールから引き出されている熱収縮性フィルムA、及びフィルムロールから引き出されている熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向と平行な端部同士が接合され、次の被包装物を被覆するために、前方クロスシールがされた状態となっていた。熱可塑性樹脂フィルムBは、幅(TD方向長さ)が30cmであるので、幅(TD方向長さ)50cmの熱収縮性フィルムAのTD方向の両端部からそれぞれ10cmは、熱可塑性樹脂フィルムBが接合されていない状態であった。
次いで、熱収縮性フィルムAのTD方向の両端部から1cm内側に、熱収縮性フィルムAのMD方向に沿ってサイドシールを施した。熱収縮性フィルムAのTD方向の両端部からそれぞれ10cmは熱可塑性樹脂フィルムBが接合されていないので、熱可塑性樹脂フィルムBにはサイドシールが施されず、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向の両端部は熱収縮フィルムAと一体化されなかった。
最後に、140℃に昇温した収縮トンネルを通過させて熱収縮フィルムを熱収縮させ、被包装物がシュリンク包装された包装体を得た。
各実施例及び比較例の包装体について、以下の評価を行った。
<開封性>
上記実施例及び比較例で得られた包装体を用いて、熱可塑性樹脂フィルムBのTD方向の端部を手でつまんで、TD方向に沿って引張り開封し、以下の評価基準に従って評価した。
○:包装体の幅(TD方向)全体に亘って熱収縮性フィルムA、又は熱可塑性樹脂フィルムBのうち、引裂き強度が低い方を引裂くことができ、容易に被包装物を取り出すことができた。
×:熱収縮性フィルムA、又は熱可塑性樹脂フィルムBのいずれかが途中で切れ、包装体の幅(TD方向)全体に亘って引き裂くことができず、容易に被包装物を取り出すことができなかった。
結果を表2に示す。