JP2017135337A - 熱電変換素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱電変換素子の柔軟性を高めつつ耐久性の低下を抑制する。【解決手段】熱電変換素子は、第1の面と第2の面と空孔部とを有する多孔質基材と、空孔部の一部に充填された熱電材料を含む熱電材料部と、第1の面上に設けられた第1の配線と、第2の面上に設けられた第2の配線と、を具備する。第1の配線および第2の配線の少なくとも一つの配線の一部は、多孔質基材に接するように空孔部の他の一部に充填され、且つ前記空孔部の他の一部において熱電材料に接合されている。【選択図】図1
Description
実施形態の発明は、熱電変換素子に関する。
近年、地球環境問題に対する意識の高揚に伴い、フロンレス冷却機器の一つであり且つペルチェ効果を利用する熱電冷却素子に対する関心が高まっている。また、二酸化炭素の排出量を削減するために、未利用廃熱エネルギーを使用する発電システムに用いられ且つゼーベック効果を利用する熱電発電素子に対する関心が高まっている。上記熱電発電素子は、宇宙用電源等の特殊用途に限定されず、例えば体温で作動する腕時計やウェアラブルデバイス等にも適用され始めている。
熱電変換モジュールに設けられる熱電変換素子は、例えば合金バルク材等を用いて形成される。合金バルク材を用いた熱電変換素子は、例えば高い熱電変換効率と高い耐久性とを有する。
上記熱電変換モジュールに用いられる熱電材料の種類は、例えば使用する温度域に応じて選択されることが好ましい。室温以下の低温域で好適な熱電材料としては、例えば高効率であるBi−Te系の単結晶または多結晶体の熱電材料が挙げられる。n型のBi−Te系熱電材料およびp型のBi−Te系熱電材料の両方を用いて熱電変換素子を作製する場合、例えばSbを含むn型のBi−Te系熱電材料とSeを含むp型のBi−Te系熱電材料が一般的に用いられる。室温を超える高温域で好適な熱電材料としては、例えば高効率であるPb−Te系熱電材料が挙げられる。
上記熱電変換モジュールは、例えば未利用廃熱を活用した熱電発電等に用いられる。未利用廃熱の温度分布において、約7割の未利用廃熱の温度が200℃以下である。よって、200℃以下の未利用廃熱を熱電発電に活用することが求められている。
200℃以下の未利用廃熱は、例えば焼却炉の冷却排水や蒸気、ガスタービン発電機において熱回収される温水として排出される。上記温水は温水パイプ等を介して排出される。上記冷却排水の熱源を利用するためには、熱電発電モジュールが温水パイプに貼り付けられるフレキシブルな形態であることが好ましい。
しかしながら、合金バルク材では、成形プロセス上の制約が存在するため、フレキシブルな熱電変換素子の作製は困難である。よって、温水パイプのような曲面熱源の場合、それらへ密着させて貼り付けることができず、効率的に熱を伝達することが困難である。
本発明で解決しようとするべき課題は、熱電変換素子の柔軟性を高めつつ耐久性の低下を抑制することである。
実施形態の熱電変換素子は、第1の面と、第2の面と、第1の面から第2の面まで連通する空孔部と、を有する多孔質基材と、空孔部の一部に充填された熱電材料を含む熱電材料部と、第1の面上に設けられ、熱電材料部に電気的に接続された第1の配線と、第2の面上に設けられ、熱電材料部に電気的に接続された第2の配線と、を具備する。第1の配線および第2の配線の少なくとも一つの配線の一部は、多孔質基材に接するように空孔部の他の一部に充填され、且つ前記空孔部の他の一部において熱電材料に接合されている。配線の一部と熱電材料との接合部の厚さは、1μm以上である。
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
実施形態の熱電変換素子の構造例について図1を参照して説明する。図1は、熱電変換素子を具備する熱電変換モジュールの構造例を示す断面模式図である。
図1に示す熱電変換モジュールは、多孔質基材1と、熱電材料部2と、樹脂材料部3と、配線層4と、配線層5と、熱伝導シート6と、を具備する。
多孔質基材1は、面10aと、面10aと反対側の面10bと、面10aから面10bまで連通する空孔部11と、を有する。空孔部11は、空孔部11aと、空孔部11bと、空孔部11aと空孔部11bとの間に設けられた空孔部11cと、を有する複数の領域に分けられる。
多孔質基材1内の空孔部11の割合を示す空孔率は、20%以上95%以下、さらには45%以上90%以下であることが好ましい。空孔率が低すぎる場合、熱電材料が充分に充填されない、または熱電変換素子の性能を高めることができないおそれがある。空孔率が高すぎる場合、多孔質基材1の強度が低下し、寸法安定性も低下するおそれがある。
熱電材料部2は、空孔部11aの一部に充填されたp型熱電材料を含むp型熱電材料部2pと、空孔部11bの一部に充填されたn型熱電材料を含むn型熱電材料部2nと、を含む複数の熱電材料部を有する。複数の熱電材料部は、p型熱電材料部2pおよびn型熱電材料部2nが交互に配置されるように設けられている。
樹脂材料部3は、空孔部11の残部の一部、すなわち空孔部11cの少なくとも一部に充填された樹脂材料を含む。樹脂材料は、絶縁性を有する。樹脂材料は、p型熱電材料およびn型熱電材料に接していてもよい。樹脂材料は、断熱材としての機能を有していてもよい。
配線41は、複数の配線41を有する。配線41は、面10a上に設けられ、p型熱電材料部2pに電気的に接続されている。
配線層5は、複数の配線51を有する。配線51は、空孔部11a上および空孔部11b上を含む面10b上に設けられ、n型熱電材料部2nに電気的に接続されている。このとき、n型熱電材料部2nは、配線41または配線51を介してp型熱電材料部2pに直列接続で電気的に接続されている。
実施形態の熱電変換モジュールでは、p型熱電材料部2p、n型熱電材料部2n、配線41、および配線51がπ字状に接続されている。上記π字状の構造をπ構造ともいう。図1に示す熱電変換モジュールは、π構造を備える複数の熱電変換素子を具備する。複数の熱電変換素子は、直列接続で電気的に接続されている。
図1において配線51は、熱伝導シート6に覆われている。配管等に熱電変換モジュールを接着する場合、熱伝導シート6を介して配線と熱電変換モジュールとを接着する。必ずしも熱伝導シート6が設けられなくてもよい。
配線51の一部は、多孔質基材1に接するように空孔部11aの一部および空孔部11bの一部に充填されており、且つ空孔部11aの一部および空孔部11bの一部においてp型熱電材料部2pのp型熱電材料およびn型熱電材料部2nのn型熱電材料に接合されている。
図2は、実施形態の熱電変換モジュールの他の構造例を示す断面模式図である。図2に示すように、実施形態の熱電変換モジュールでは、配線41の一部が多孔質基材1に接するように空孔部11の一部に充填され、且つ空孔部11の一部において熱電材料に接合されていてもよい。
図2において、配線41の一部は、多孔質基材1に接するように空孔部11aの一部および空孔部11bの一部に充填されており、且つ空孔部11aの一部および空孔部11bの一部においてp型熱電材料部2pのp型熱電材料およびn型熱電材料部2nのn型熱電材料に接合されている。このとき、図2に示すように、配線41の一部は、多孔質基材1に接するように空孔部11cの一部に充填されていてもよい。また、図2に示す配線41と同様に配線51の一部が多孔質基材1に接するように空孔部11cの一部に充填されていてもよい。
図3は、配線41の一部または配線51の一部と、熱電材料と、の接合部7の構造例を示す断面模式図である。接合部7は、三次元状に設けられており、多孔質基材1の厚さ方向に所定の厚さを有する。接合部7では、熱電材料部2の熱電材料20が空孔部11の一部に充填され、多孔質基材1の多孔質材料10に接するように配線41の一部の配線材料40または配線51の一部の配線材料50が空孔部11の一部に充填されている。よって、接合部7は、多孔質材料10と、熱電材料20と、配線材料40または配線材料50と、の混合部とみなしてもよい。
接合部7の厚さは、例えば1μm以上であることが好ましい。1μm未満であると多孔質基材1に対する配線41または配線51の密着性が低くなりやすく、高抵抗になりやすい。
実施形態の熱電変換素子は、第1の配線と第2の配線との間に多孔質基材を具備する。上記多孔質基材は、高い可撓性を有する。よって、フレキシブル熱電変換素子を作製することができる。従って、例えば曲面熱源に対する熱電変換モジュールの密着性を高めることができる。
実施形態の熱電変換素子は、高い熱電変換効率を有する。熱電変換素子の変換効率は、例えば下記式(1)により表される。
式(1)において、THは高温側の配線の温度を表し、TLは低温側の配線の温度を表し、ZTは熱電性能指数を表す。例えば図1に示すπ構造の熱電変換素子では、配線41が低温側の配線であり、配線51が高温側の配線である。さらに、式(1)におけるZTは、例えば下記式(2)により表される。
式(2)において、Sはゼーベック係数を表し、σは熱電変換素子の導電率を表し、κは熱電変換素子の熱伝導度を表す。式(1)および式(2)からわかるとおり、変換率ηを高めるためにはTH−TL、すなわち高温側の配線と低温側の配線との温度差を大きくしてZTを大きくすることが好ましい。さらに、ZTを大きくするためには導電率σを高め、熱伝導度を小さくすることが好ましい。
実施形態の熱電変換素子では、多孔質基材が熱電材料部の骨組として機能することにより熱電材料部を厚くすることができるため温度差が生じやすい。よって、熱電変換効率を高めることができる。また、熱電材料部の間に充填された樹脂材料が低温側と高温側との間で熱移動を妨げる断熱材としても機能し、熱電材料部から放射される熱を遮断することができる。よって、低温側と高温側との温度差が生じやすく、熱電変換性能が増大する。
配線と熱電材料との間の熱膨張率の差が大きい場合、配線と熱電材料との接合部が亀裂または剥離等により破壊する場合がある。このため、熱電変換素子では、振動や熱サイクル等に対して高い耐久性を有することが求められている。
実施形態の熱電変換素子では、配線の一部が多孔質基材に接するように空孔部の一部に充填され、且つ空孔部の一部において熱電材料に接合されている。上記配線はアンカー効果によって多孔質基材に強固に密着している。このため熱電材料と配線との接合部において両者の熱膨張差を緩和する効果を有し、熱サイクルなどの衝撃に対しての耐久性が増大する。すなわち、熱電材料に接合されるように配線層の一部を多孔質基材の空孔部の一部に充填することにより、熱電材料と配線との密着性を高めることができる。よって、例えば振動や熱サイクルに対する耐久性を高めることができる。
高温側は低温側よりも熱サイクルに対する高い耐久性が求められる。よって、特に高温側に設けられた配線の一部が多孔質基材に接するように空孔部の一部に充填され、且つ空孔部の一部において熱電材料に接合されていることが好ましい。
次に、実施形態の熱電変換素子の製造方法例を説明するために、図1に示す熱電変換モジュールの製造方法例について図4ないし図7を参照して説明する。図4ないし図7は、熱電変換素子の製造方法例を説明するための断面模式図である。
熱電変換素子の製造方法例は、多孔質基材1を準備する準備工程と、配線41を形成する第1の配線形成工程と、多孔質基材1に樹脂材料を充填するパターン形成工程と、熱電材料部2を形成する熱電材料部形成工程と、配線51を形成する第2の配線形成工程と、を具備する。
準備工程では、空孔部11aないし空孔部11cを有する多孔質基材1を準備する。多孔質基材1の多孔質材料10は、例えばポリマー材料等の有機材料やセラミック材料を含む多孔質体であることが好ましい。例えば、ポリマー材料等の有機材料の多孔体は、高い可撓性を有するため多孔質基材1に好適である。
多孔質基材1としては、例えばアルミナの陽極酸化膜や、三次元連続空孔を有するポリマー材料などの多孔質シートや、三次元網目状に積層されたポリマー材料やセラミック材料の繊維を有するクロスや不織布などが挙げられる。多孔質シートは、高い寸法安定性を有するため多孔質基材1に好適である。
多孔質シートは、例えばポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの結晶性ポリマーのシートを延伸して形成されてもよい。多孔質シートは、例えばポリマーのスピノーダル分解やミクロ相分離などの相分離現象を利用して形成されてもよい。多孔質シートは、界面活性剤を用いたエマルジョンテンプレーティング法により形成されてもよい。多孔質シートは、シリカやポリマーのビーズの集積体の空隙部にポリマーやセラミックを充填して硬化させた後にビーズを除去することにより形成されてもよい。
クロスや不織布に用いられるセラミック材料としては、例えばシリカガラス、アルミナ、シリコンカーバイド、およびチタン酸カリウム等が挙げられる。
ポリマー材料の繊維としては、例えば芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維などの液晶性ポリマー、高いTg(ガラス転移温度)を有する高Tgポリマーの繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維などのフッ素系ポリマー繊維、ポリパラフェニレンスルフィド繊維、芳香族ポリイミド繊維、およびポリベンゾオキサゾール誘導体繊維などが用いられる。セラミック繊維とポリマー繊維を混合して用いることもでき、セラミックとポリマーの複合繊維としてもよい。
不織布としては、例えばメルトブロー法によって作製されたポリマーの不織布が好ましい。上記不織布は、繊維径が微細であるため好適である。
ポリマーやセラミックなどの繊維を、紙のように漉いて多孔質基材1に用いてもよい。このとき、繊維径を小さくすることにより、露光光線が散乱しにくく、微細な導電パターンを形成することができる。平均繊維径は、例えば20μm以下、さらには10μm以下であることが好ましい。
フレキシブル熱電変換素子を備える熱電変換モジュールに用いられるシート状の多孔質体の具体例としては、厚さが10μm以上400μm以下であり、空孔率が60%以上85%以下である多孔質シートであって、スピノーダル分解やミクロ相分離で作製されたポリイミド多孔質シートや延伸法で作製されたポリテトラフルオロエチレンの多孔質シート、またはメルトブロー法により作製されたシート状のポリパラフェニレンスルフィド繊維を有する不織布シートなどが挙げられる。
第1の配線形成工程では、図4に示すように、面10a上に所望のピッチおよび幅を有する導電性ペースト等の配線材料40の層を形成して配線41を形成する。
導電性ペーストには、金属ペーストインクが好適に用いられる。例えば、Cu、Au、Ag、Ni、Mn、Pd、Pt、Sn、Co、Ti、In、またはCrから選ばれた1以上の金属、および2以上の金属の合金からなる金属粒子と、バインダと、を含むインクが用いられる。金属粒子の形状は、球状、破砕状、ロット状、鱗片状等であってもよく、これらが混在していてもよい。
金属ペーストインクを使用する場合、配線41は、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷等を用いて形成されてもよい。配線41は、例えばスパッタリングまたは蒸着等を用いて形成されてもよい。
多孔質基材1が耐酸/アルカリ性を有する素材の場合、配線41は、光誘起選択めっきにより形成されてもよい。この場合、まず光照射によりイオン交換性基を生成する化合物を含有する感光性組成物層を面10a上に形成する。次に、感光性組成物層をパターン露光し、露光部にイオン交換性基を生成する。次に、パターン露光により形成されたイオン交換性基のパターンに金属イオンを吸着させ、還元処理を施してめっきの核を形成する。次に、めっき液に浸漬して所望の配線41を面10a上に形成することができる。
このとき、配線材料の一部を面10aよりも1μm以上、例えば1μm以上3μm以下程度含浸させてもよい。これにより、図2に示すように、配線41の一部が多孔質基材1に接するように空孔部11aおよび空孔部11bだけでなく、空孔部11cの一部にも充填される。
上記めっきで形成された配線層4は、めっき層を有する。めっきで形成された配線層4は金属ペーストで形成した電極よりも導電性が良い。よって、出力が安定する。
パターン形成工程では、図5に示すように、多孔質基材1に感光性樹脂を充填し、感光性樹脂の一部を露光し、空孔部11aおよび空孔部11bに充填された感光性樹脂を除去する。樹脂材料部3は、多孔質基材1に充填された感光性樹脂の少なくとも一部を含む。
感光性樹脂としては、ポジ型の感光性樹脂またはネガ型の感光性樹脂を用いることができる。ポジ型の感光性樹脂を使用する場合、空孔部11a、11bを露光するように開口したマスクを配線未形成部に配置して露光する。ネガ型を使用する場合、ポジ型と逆のマスクを用いて露光して現像することで、空孔部11a、11bのみ多孔質状態を維持する。感光性樹脂としては、例えばソルダーレジスト等が挙げられる。
熱電材料部形成工程では、図6に示すように、多孔質基材1に接するように空孔部11aの一部にp型熱電材料を充填してp型熱電材料部2pを形成し、多孔質基材1に接するように空孔部11bの一部にn型熱電材料を充填してn型熱電材料部2nを形成する。このとき、空孔部11aの他の一部および空孔部11bの他の一部に面10bから1μm以上の深さを有する未充填部を設けるように熱電材料を充填する。なお、図2に示す配線41と同様に配線51の一部を多孔質基材1に接するように空孔部11cの一部に充填する場合、空孔部11cの他の一部にも上記未充填部が設けられていればよい。
熱電材料20であるn型熱電材料およびp型熱電材料としては、例えば有機半導体、カーボンナノチューブ、またはBe−Te系の合金材料等が用いられる。Be−Te系の合金材料は、高いゼーベック係数を有するため熱電材料として好適である。上記合金材料は、粒子状であることが好ましい。熱電材料は、例えば導電性ポリマーやバインダなどと混合してペーストを形成して用いられる。熱電材料は、合金材料の代わりにカーボンナノチューブを混合してインクを形成して用いられてもよい。バインダとしては、例えばエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、熱電材料と配線との接合強度を高めることができるため好ましい。
充填方法としては、例えばスクリーン印刷法やディスペンス印刷法、インクジェット印刷法などを適宜用いることができる。カーボンナノチューブを用いた材料は、熱電材料ペーストを低粘度インク化しやすく、多孔質領域内に熱電材料を充填しやすいため好適である。
第2の配線形成工程では、図7に示すように、配線41の形成に適用可能な材料および方法を用いて配線材料50の層を形成して配線51を形成する。このとき、多孔質基材1に接するように空孔部11aおよび空孔部11bの未充填部に配線51の一部が充填される。さらに、空孔部11aおよび空孔部11bの未充填部において配線51の一部がp型熱電材料およびn型熱電材料に接合され、図3に示す接合部7が形成される。例えば、印刷後の乾燥工程により熱電材料部のバインダの結着が進行するため、熱電材料20と配線材料40との接合強度および熱電材料20と配線材料50との接合強度が向上する。
配線51を形成した後、面10b上に熱伝導シート6を積層する。熱伝導シート6としては、公知の窒化ケイ素などのセラミックフィラーや金属フィラーを配合したシリコーン、アクリル、ポリオフィレンなどの樹脂シートが挙げられる。熱電材料部2以外に充填されたソルダーレジストを一旦除去し、所望の熱伝導率や機械的強度を得るために、ソルダーレジストとは別の材料が充填されてもよい。
以上のように、熱電変換素子の製造方法では、多孔質基材の空孔部の一部に熱電材料を充填し、その後多孔質基材に接するように空孔部の他の一部に配線の一部を充填して配線の一部と熱電材料とを接合することができる。
なお、実施形態の熱電変換素子の製造方法は、上記方法に限定されず、配線材料部を形成することが可能な他の方法を用いても良い。
(実施例1)
図1に示す構造の熱電変換モジュールを作製した。多孔質基材1として厚さ50μm、空孔径1μmのアルミナ陽極酸化膜を使用した。配線41および配線51の配線材料としてAgペーストを使用した。配線41および配線51のそれぞれは、20μm×40μmの配線面積を有し、アルミナ陽極酸化膜上にアレイ状に敷き詰められている。感光性樹脂として露光によりカルボキシル基が生成し現像により溶解するポジ型の樹脂を用いた。配線41を形成した後、熱電材料として、n型、p型に各々調整したカーボンナノチューブとエポキシバインダからなるインクをスクリーン印刷により空孔部11aおよび11bの一部に充填し、その後Agペーストにより空孔部11aの他の一部および空孔部11bの他の一部に充填されるように配線51を形成した。熱電材料部以外の空孔部に充填された樹脂材料を現像により除去し、アルミナ陽極酸化膜の両面にシリコーン製のソフト熱伝導シートを貼り付けた。
図1に示す構造の熱電変換モジュールを作製した。多孔質基材1として厚さ50μm、空孔径1μmのアルミナ陽極酸化膜を使用した。配線41および配線51の配線材料としてAgペーストを使用した。配線41および配線51のそれぞれは、20μm×40μmの配線面積を有し、アルミナ陽極酸化膜上にアレイ状に敷き詰められている。感光性樹脂として露光によりカルボキシル基が生成し現像により溶解するポジ型の樹脂を用いた。配線41を形成した後、熱電材料として、n型、p型に各々調整したカーボンナノチューブとエポキシバインダからなるインクをスクリーン印刷により空孔部11aおよび11bの一部に充填し、その後Agペーストにより空孔部11aの他の一部および空孔部11bの他の一部に充填されるように配線51を形成した。熱電材料部以外の空孔部に充填された樹脂材料を現像により除去し、アルミナ陽極酸化膜の両面にシリコーン製のソフト熱伝導シートを貼り付けた。
信頼性試験として実施例1の熱電変換モジュールを100℃の平板熱源に設置して3分保持し、高温側配線と低温側配線との間の抵抗値を計測した。その後、上記熱電変換モジュールを20℃の平板熱源に設置して1分保持した。上記動作を20回繰り返して上記抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
実施例1の熱電変換モジュールでは、配線41および配線51がアンカー効果によって多孔質基材1が強固に密着していた。すなわち、熱電材料20と配線材料40または配線材料50との接合部においてピラー状に配置されたアルミナ材が両者の熱膨張差を緩和する効果を有し、熱サイクルなどの衝撃に対しての耐久性が増大した。
(実施例2)
実施例1において用いた感光性樹脂を、露光によりアクリレート化合物が光硬化するネガ型の樹脂に変えて熱電変換モジュールを作製した。実施例2の熱電変換モジュールに対して実施例1と同じ信頼性試験を行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
実施例1において用いた感光性樹脂を、露光によりアクリレート化合物が光硬化するネガ型の樹脂に変えて熱電変換モジュールを作製した。実施例2の熱電変換モジュールに対して実施例1と同じ信頼性試験を行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
多孔質基材1の空孔部11の少なくとも一部に柔軟性のある樹脂を充填することにより熱電変換モジュールの曲げに対する信頼性を向上させることができた。また、p型熱電材料部2pとn型熱電材料部2nとの間に充填された樹脂が低温側と高温側との間で熱移動を妨げる断熱材としても機能し、p型熱電材料部2pやn型熱電材料部2nから放射される熱を遮断することができた。よって、高温側と低温側との温度差が生じやすく、熱電変換性能が増大した。
(実施例3)
多孔質基材1に厚み60μm、空孔相当径0.5μmの三次元連続空孔を含む空孔部を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを使用し、それ以外は実施例2と同様の材料で熱電変換モジュールを作製した。上記熱電変換モジュールに対して実施例1に記載の信頼性試験を、平板熱源を100mm径のパイプに変えて行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
多孔質基材1に厚み60μm、空孔相当径0.5μmの三次元連続空孔を含む空孔部を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを使用し、それ以外は実施例2と同様の材料で熱電変換モジュールを作製した。上記熱電変換モジュールに対して実施例1に記載の信頼性試験を、平板熱源を100mm径のパイプに変えて行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
多孔質基材1にアルミナ素材よりもさらに可撓性を有するPTFEシートを用いることで曲げに対する信頼性が向上した。また、断熱性がさらに向上することから、高温側と低温側との温度差が生じやすく、熱電変換モジュールの熱電変換効率が高めることができることがわかる。
(実施例4)
多孔質基材1に厚み200μmのポリパラフェニレンスルフィド不織布シートを使用し、それ以外は実施例2と同様の材料で熱電変換モジュールを作製した。上記熱電変換モジュールに対して実施例3と同じ信頼性試験を行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。多孔質基材1の厚みを厚くすることによって、高温側と低温側との温度差が生じやすく、さらに熱電変換性能が増大した。
多孔質基材1に厚み200μmのポリパラフェニレンスルフィド不織布シートを使用し、それ以外は実施例2と同様の材料で熱電変換モジュールを作製した。上記熱電変換モジュールに対して実施例3と同じ信頼性試験を行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。多孔質基材1の厚みを厚くすることによって、高温側と低温側との温度差が生じやすく、さらに熱電変換性能が増大した。
(実施例5)
多孔質基材1に厚み60μm、空孔相当径0.5μmの三次元連続空孔を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを使用し、配線41を光誘起選択めっき法で形成した。多孔質基材1に対して、光誘起選択めっきに対応した感光材を塗布し、金属配線パターンを描いたマスクを介して露光した。このとき、多孔質基材1の表面から1〜3μmの深さを有する領域が感光するように調整した。露光部に生成したカルボキシル基に対してCuイオンをイオン交換により吸着させて、それを核に無電解Cuめっきにより配線41を形成した。それ以外は実施例3と同様の部材を用いて熱電変換モジュールを作製した。上記熱電変換モジュールに対して実施例3と同じ信頼性試験を行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
多孔質基材1に厚み60μm、空孔相当径0.5μmの三次元連続空孔を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを使用し、配線41を光誘起選択めっき法で形成した。多孔質基材1に対して、光誘起選択めっきに対応した感光材を塗布し、金属配線パターンを描いたマスクを介して露光した。このとき、多孔質基材1の表面から1〜3μmの深さを有する領域が感光するように調整した。露光部に生成したカルボキシル基に対してCuイオンをイオン交換により吸着させて、それを核に無電解Cuめっきにより配線41を形成した。それ以外は実施例3と同様の部材を用いて熱電変換モジュールを作製した。上記熱電変換モジュールに対して実施例3と同じ信頼性試験を行い、抵抗値の変化率を求めたところ初期値の1%以内であった。
配線の構成をペーストから作製した場合より低抵抗なめっき層を有する構成にすることで、より安定な出力が得ることができた。また、めっき層を有する配線層を低温側に配置することにより、低温側からの放熱性、外部からの冷却性を高めることができる。よって、低温側と高温側との温度差が生じやすく、熱電変換モジュールの熱電変換効率を高めることができることがわかる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
Claims (8)
- 第1の面と、第2の面と、前記第1の面から前記第2の面まで連通する空孔部と、を有する多孔質基材と、
前記空孔部の一部に充填された熱電材料を含む熱電材料部と、
前記第1の面上に設けられ、前記熱電材料部に電気的に接続された第1の配線と、
前記第2の面上に設けられ、前記熱電材料部に電気的に接続された第2の配線と、
を具備し、
前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一つの配線の一部は、前記多孔質基材に接するように前記空孔部の他の一部に充填され、且つ前記空孔部の他の一部において前記熱電材料に接合されており、
前記配線の一部と前記熱電材料との接合部の厚さは、1μm以上である、熱電変換素子。 - 前記空孔部の残部の少なくとも一部に充填された樹脂材料を含む樹脂材料部をさらに具備する、請求項1に記載の熱電変換素子。
- 前記多孔質基材は、有機材料の多孔質体である、請求項1または請求項2に記載の熱電変換素子。
- 前記多孔質基材は、セラミック材料を含む多孔質体である、請求項1または請求項2に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電材料は、有機半導体またはカーボンナノチューブを含む、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電材料は、Be−Te系合金材料を含む、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
- 前記第1の配線および前記第2の配線の少なくとも一つは、めっき層を有する、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
- 前記熱電変換素子は、フレキシブル熱電変換素子である、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
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JP2020035818A (ja) * | 2018-08-28 | 2020-03-05 | リンテック株式会社 | 熱電変換素子及びその製造方法 |
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WO2024075821A1 (ja) * | 2022-10-07 | 2024-04-11 | 株式会社東海理化電機製作所 | 熱電変換素子用組成物、熱電変換モジュール、熱電変換素子用組成物の製造方法、熱電変換モジュールの製造方法 |
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2016
- 2016-01-29 JP JP2016016105A patent/JP2017135337A/ja active Pending
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