JP2011166079A - 熱電変換素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PN接合体の高集積化が可能で、塵埃の発生を抑制しつつ熱電変換素子を効率よく製造する。
【解決手段】本発明の熱電変換素子の製造方法は、基板10上に第1の下部電極11と第2の下部電極11とを形成する下部電極形成工程と、基板10上に、第1の下部電極11を露出させる第1の開口部18と、第2の下部電極11を露出させる第2の開口部19とを有する隔壁12を形成する隔壁形成工程と、第1の開口部18の内側にP型の熱電材料を含む第1の液状材料Q1を塗布し固化してP型の熱電材料層を形成し、第2の開口部19の内側にN型の熱電材料を含む第2の液状材料Q2を塗布し固化してN型の熱電材料層を形成する熱電材料層形成工程と、隔壁12の上に、P型の熱電材料層と前記N型の熱電材料層とを電気的に接続する上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有する。
【選択図】図2
【解決手段】本発明の熱電変換素子の製造方法は、基板10上に第1の下部電極11と第2の下部電極11とを形成する下部電極形成工程と、基板10上に、第1の下部電極11を露出させる第1の開口部18と、第2の下部電極11を露出させる第2の開口部19とを有する隔壁12を形成する隔壁形成工程と、第1の開口部18の内側にP型の熱電材料を含む第1の液状材料Q1を塗布し固化してP型の熱電材料層を形成し、第2の開口部19の内側にN型の熱電材料を含む第2の液状材料Q2を塗布し固化してN型の熱電材料層を形成する熱電材料層形成工程と、隔壁12の上に、P型の熱電材料層と前記N型の熱電材料層とを電気的に接続する上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、熱電変換素子の製造方法に関する。
従来から、ペルチェ効果あるいはゼーベック効果を利用した熱電変換素子が知られている。ペルチェ効果を利用した熱電変換素子は、電気的に熱エネルギーを移動させる加熱装置や冷却装置等に適用されている。ゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、温度差により発電する発電装置等に適用されている。
熱電変換素子は、基板上に、P型の熱電材料体とN型の熱電材料体とが交互に二次元的に配列された構造になっている。P型、N型の熱電材料体は、電気的に直列接続されている。このような熱電変換素子は、例えば電極配線が形成された基板上に、治具等を用いてP型、N型の熱電材料体を集積して配列することにより製造される。この方法では、P型、N型の熱電材料体を配列するときの位置精度を高めることが難しいので、PN接合体を高集積化することが難しい。
PN接合体を高集積化することが可能な技術として、特許文献1に開示されている技術が挙げられる。特許文献1では、電極配線が形成されたアルミナ基板に、複数のバンプが形成されたP型またはN型の熱電材料ウエハーを接合する。次いで、アルミナ基板に接合された熱電材料ウエハーのバンプの間を切断して削除することにより、バンプが形成されている部分の熱電材料ウエハーをP型またはN型の熱電材料体に加工する。次いで、P型の熱電材料体が形成された基板を、N型の熱電材料体が形成された基板と貼り合せることにより、熱電変換素子が得られる。
特許文献1の技術にあっては、次に説明するような課題がある。
一般にP型またはN型の熱電材料ウエハーは、P型の熱電材料の粉体をプレスおよび焼成することにより得られる。このような熱電材料ウエハーを切断して部分的に削除すると多量の塵埃が発生してしまい、熱電変換素子自体や熱電変換素子に併設されるデバイス等に塵埃が異物として混入するおそれがある。また、P型、N型の熱電材料体を交互に配列するためには、熱電材料ウエハーの少なくとも半分を削除する必要があり、加工に手間を要して生産性が低下するおそれや、材料のムダに起因して製造コストが高くなるおそれがある。また、熱電材料ウエハーを切断により加工可能な寸法の下限には限界があり、PN接合体のさらなる高集積化に対応できないおそれもある。
一般にP型またはN型の熱電材料ウエハーは、P型の熱電材料の粉体をプレスおよび焼成することにより得られる。このような熱電材料ウエハーを切断して部分的に削除すると多量の塵埃が発生してしまい、熱電変換素子自体や熱電変換素子に併設されるデバイス等に塵埃が異物として混入するおそれがある。また、P型、N型の熱電材料体を交互に配列するためには、熱電材料ウエハーの少なくとも半分を削除する必要があり、加工に手間を要して生産性が低下するおそれや、材料のムダに起因して製造コストが高くなるおそれがある。また、熱電材料ウエハーを切断により加工可能な寸法の下限には限界があり、PN接合体のさらなる高集積化に対応できないおそれもある。
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、PN接合体を高集積化することが可能であるとともに、塵埃の発生を抑制しつつ熱電変換素子を効率よく製造することが可能な熱電変換素子の製造方法を提供することを提供することを目的の1つとする。
本発明では、上記の目的を達成するために以下の手段を採用している。
本発明の熱電変換素子の製造方法は、基板上に第1の下部電極と第2の下部電極とを形成する下部電極形成工程と、前記基板上に、前記第1の下部電極を露出させる第1の開口部と、前記第2の下部電極を露出させる第2の開口部とを有する隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記第1の開口部の内側にP型の熱電材料を含む第1の液状材料を塗布し固化してP型の熱電材料層を形成し、前記第2の開口部の内側にN型の熱電材料を含む第2の液状材料を塗布し固化してN型の熱電材料層を形成する熱電材料層形成工程と、前記隔壁の上に、前記P型の熱電材料層と前記N型の熱電材料層とを電気的に接続する上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有することを特徴とする。
このようにすれば、P型の熱電材料層とN型の熱電材料層とが電気的に接続されたPN接合体が形成され、PN接合体を備える熱電変換素子が得られる。第1の液状材料を固化してP型の熱電材料層を形成し、第2の液状材料を固化してN型の熱電材料層を形成するので、塵埃の発生を抑制しつつPN接合体を形成することができる。
第1の開口部の内側に第1の液状材料を塗布し、第2の開口部の内側に第2の液状材料を塗布するので、所望のパターンで配置されたP型の熱電材料層およびN型の熱電材料層を形成することができる。したがって、P型の熱電材料層およびN型の熱電材料層を形成する上で、切削やエッチングによるパターニングを減らすことができ、PN接合体を効率よく形成することができる。
第1の液状材料および第2の液状材料を塗布するので、P型の熱電材料層やN型の熱電材料層の形成材料のムダを減らすことができ、低コストでPN接合体を形成することができる。切削により予め形成されたN型、P型の熱電材料チップを配列してPN接合体を形成する方法と比較して、微細な加工が可能になるので、PN接合体を高集積化することが可能になる。
隔壁の上にP型の熱電材料層とN型の熱電材料層とを電気的に接続する上部電極を形成するので、隔壁を下地として上部電極を形成することができ、PN接合体の間を高信頼性で効率よく接続することが可能になる。
以上のように、本発明によれば、PN接合体を高集積化することが可能になるとともに、塵埃の発生を抑制しつつ熱電変換素子を効率よく製造すること可能になる。
本発明に係る熱電変換素子は、代表的な態様として以下のような態様をとりえる。
前記隔壁形成工程では、多孔質の前記隔壁を形成してもよい。
このようにすれば、空隙を有する多孔質の隔壁を形成するので、隔壁の熱伝導率を空隙の分だけ下げることができる。したがって、熱電変換素子を伝わる熱量のうちでP型の熱電材料層およびN型の熱電材料層を伝わる熱量の比率を増すことができ、高性能な熱電変換素子を製造することが可能になる。
前記隔壁形成工程では、中空粒子を含んだ前記隔壁を形成してもよい。
このようにすれば、中空粒子を含んだ隔壁を形成するので、隔壁の熱伝導率を中空粒子による空隙の分だけ下げることができる。したがって、熱電変換素子を伝わる熱量のうちでP型の熱電材料層およびN型の熱電材料層を伝わる熱量の比率を増すことができ、高性能な熱電変換素子を製造することが可能になる。
このようにすれば、中空粒子を含んだ隔壁を形成するので、隔壁の熱伝導率を中空粒子による空隙の分だけ下げることができる。したがって、熱電変換素子を伝わる熱量のうちでP型の熱電材料層およびN型の熱電材料層を伝わる熱量の比率を増すことができ、高性能な熱電変換素子を製造することが可能になる。
前記熱電材料層形成工程では、前記第1の液状材料と前記第2の液状材料の一方の液状材料を塗布して固化した後に、他方の液状材料を塗布し固化してもよい。
このようにすれば、一方の液状材料を固化した後に、他方の液状材料を塗布し固化するので、第1の液状材料と第2の液状材料とが混じり合うことが回避され、高品質な熱電変換素子を製造することができる。
前記熱電材料層形成工程では、前記複数の第1の開口部の内側に前記第1の液状材料を塗布する処理と、前記複数の第2の開口部の内側に前記第2の液状材料を塗布する処理とを並行して行った後に、塗布された前記第1の液状材料および前記第2の液状材料を固化してもよい。
このようにすれば、第1、第2の液状材料を塗布する処理を並行して行った後に、第1、第2の液状材料を固化するので、P型、N型の熱電材料層を効率よく形成することができ、熱電変換素子を効率よく製造することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。説明に用いる図面において、特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造の寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせている場合がある。また、実施形態において同様の構成要素については、同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する場合がある。なお、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。
本発明に係る熱電変換素子の製造方法の第1、第2実施形態の説明に先立ち、まず本発明により得られる熱電変換素子の構成例について説明する。
図1(a)は、熱電変換素子の構成例を示す平面配置図、図1(b)は図1(a)のA−A’線矢視断面図である。
図1(a)、図1(b)に示す熱電変換素子1は、基板10、下部電極11、隔壁12、P型の熱電材料層13、N型の熱電材料層14、上部電極15、引出電極16、および封止基板17を備えている。
図1(a)、図1(b)に示す熱電変換素子1は、基板10、下部電極11、隔壁12、P型の熱電材料層13、N型の熱電材料層14、上部電極15、引出電極16、および封止基板17を備えている。
基板10の上に、複数の島状の下部電極11が設けられている。隔壁12は、基板10と複数の下部電極11の上に設けられている。隔壁12は、第1の開口部18および第2の開口部19を有している。第1の開口部18および第2の開口部19は、下部電極11に通じている。ここでは、第1の開口部18および第2の開口部19を含んだ複数の開口部が二次元的に配列されている。開口部の2つの配列方向の各々に、第1の開口部18と第2の開口部19とが交互に略等ピッチで並んでいる。
P型の熱電材料層13は、第1の開口部18の内側に設けられており、下部電極11と電気的に接続されている。N型の熱電材料層14は、第1の開口部19の内側に設けられており、下部電極11と電気的に接続されている。下部電極11は、互いに隣り合って配置されている一対のP型の熱電材料層13とN型の熱電材料層14とに、電気的に接続されている。
上部電極15は、隔壁12の上と、P型の熱電材料層13の上と、N型の熱電材料層14の上とにわたって連続的に設けられている。P型の熱電材料層13およびN型の熱電材料層14は、上部電極15を介して電気的に直列接続されている。封止基板17は、隔壁12および上部電極15を覆うように設けられている。
図1(b)に示すように、P型の熱電材料層13とN型の熱電材料層14とが、下部電極11または上部電極15を介して電気的に直列接続されて、PN接合体2を構成している。1つのP型の熱電材料層13に着目すると、P型の熱電材料層13は、下部電極11を介してN型の熱電材料層14と接続されており、このN型の熱電材料層14とは別のN型の熱電材料層14と上部電極15を介して電気的に接続されている。すなわち、熱電変換素子1は、複数のPN接合体2が電気的に直列接続された構造になっている。直列接続の両端に配置された2つのPN接合体2には、下部電極11の代わりに引出電極16が電気的に接続されている。
熱電変換素子1をペルチェ素子として機能させる場合には、一対の引出電極16の間に電圧を印加する。すると、基板10と封止基板17の一方側から他方側に向かって、P型の熱電材料層13の内部のキャリアおよびN型の熱電材料層14の内部のキャリアが移動することにより、一方側が他方側よりも相対的に高温になる。
熱電変換素子1をゼーベック素子として機能させる場合には、基板10と封止基板17の一方側を他方側よりも高温にする。すると、P型の熱電材料層13の内部のキャリアおよびN型の熱電材料層14の内部のキャリアが、一方側から他方側に移動することにより、一対の引出電極16の間に起電力が生じる。
次に、上記の熱電変換素子1の構成に基づいて、本発明に係る熱電変換素子の製造方法について説明する。
[第1実施形態]
図2(a)〜図2(c)、図3(a)、図3(b)は、第1実施形態の熱電変換素子の製造方法を概略して示す工程図である。これら工程図の各図には、平面図と側断面図とを対応させて図示している。
図2(a)〜図2(c)、図3(a)、図3(b)は、第1実施形態の熱電変換素子の製造方法を概略して示す工程図である。これら工程図の各図には、平面図と側断面図とを対応させて図示している。
熱電変換素子1を製造するには、まず、図2(a)に示すように基板10の上に下部電極11を形成する(下部電極形成工程)。基板10は、熱電変換素子1の製造過程における各プロセスでの耐熱性や各種形成材料等に対する耐薬品性、熱電変換素子1の使用条件に応じて、その材質が適宜選択される。
本実施形態では、下部電極11および引出電極16の形成予定領域に対応する部分に開口部を有する金属マスクを基板10に対して位置合わせした状態で、基板10に銅をスパッタ法で成膜し、複数の島状の下部電極11および引出電極16を一括して形成する。
下部電極11の形成方法は、上記の方法に限定されず、下部電極11の形成材料となる導電材料の種類に応じて適宜選択可能である。例えば、上記のスパッタ法に代えて蒸着法を用いてもよい。導電材料を成膜した後に、この膜をフォトリソグラフィー法およびエッチング法を用いてパターニングする方法を用いてもよい。液滴吐出法やスクリーン印刷法により、基板の上にパターニングされた導電膜を直接的に形成する方法を用いてもよい。
下部電極11や引出電極16の形成材料となる導電材料としては、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Co、Al、Ti、W、Ta、Cr、Mn、Fe、Zn、Mo、Ir等の金属材料、ITOやIZO等の透明導電材料、上記の金属材料や透明導電材料から選択される2以上からなる合金や複合材料、ポリアセチレン、ポリアニリン、PEDOT等の導電性樹脂材料、これら材料から選択される2以上の材料の混合物等が挙げられる。下部電極11および引出電極16を構成する導電膜は、単層膜、積層膜のいずれであってもよい。
次いで、図2(b)に示すように、基板10の上に第1の開口部18および第2の開口部19を有する隔壁12を形成する(隔壁形成工程)。本実施形態では、下部電極11、引出電極16の一部、および基板10を覆うように、感光性を有する樹脂材料を塗布法により成膜する。そして、この樹脂膜に対して、フォトマスクを用いた露光処理、および現像処理を施して、第1の開口部18および第2の開口部19を一括して形成する。第1の開口部18の内側および第2の開口部19の内側に下部電極11の一部が露出するように、フォトマスクの開口部パターンを設定しておく。
隔壁12の形成材料となる樹脂材料としては、例えばアクリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等が挙げられ、ここではポリイミドを用いる。ポリイミドを用いると、ガラス転位温度が400℃以上かつ熱分解温度が500℃以上のものを選択可能であり、熱電変換素子の製造時や使用時での耐熱性を確保する上で有利である。
なお、感光性を有していない樹脂材料をスクリーン印刷法などにより成膜して、パターニングされた樹脂膜を直接的に形成し、この樹脂膜を隔壁としてもよい。
なお、感光性を有していない樹脂材料をスクリーン印刷法などにより成膜して、パターニングされた樹脂膜を直接的に形成し、この樹脂膜を隔壁としてもよい。
また、中空粒子および樹脂材料の混合物や、発泡性の樹脂材料、中空粒子および発泡性の樹脂材料の混合物等を隔壁12の形成材料に用いることもできる。中空粒子としては、樹脂材料の溶媒に不溶なもの、例えば中空シリカ粒子が挙げられる。中空シリカ粒子の具体例として、日鉄鉱業株式会社製のシリナックス(登録商標)が挙げられる。発泡性の樹脂材料は、空隙を有する状態で固化して多孔質になるものである。発泡性の樹脂材料の具体例としては、宇部興産株式会社製のユーピレックス(登録商標) フォームが挙げられる。中空粒子および樹脂材料の混合物や、発泡性の樹脂材料を用いると、空隙を有する隔壁12を形成することができ、空隙の分だけ隔壁12の熱伝導率を減らすことができる。
次いで、図2(c)に示すように、複数の第1の開口部18の内側に第1の液状材料Q1を塗布する処理と、複数の第2の開口部19の内側に第2の液状材料Q2を塗布する処理とを並行して行う。
第1の液状材料Q1は、P型の熱電材料層13の形成材料であり、P型の熱電材料を含んだ液状体である。P型の熱電材料としては、例えば、(Bi2Te3)1−x(Sb2Te3)x(ただし、x=0.7〜0.85)、Ca3Co4O9やNaCo2O4等のコバルト系酸化物、クロメル等の合金、P型不純物がドープされた液体シリコン等が挙げられる。
第2の液状材料Q2は、N型の熱電材料層14の形成材料であり、N型の熱電材料を含んだ液状体である。N型の熱電材料としては、例えば、(Bi2Te3)1−x(Sb2Te3)x(ただし、x=0〜0.15)、SrTiO3等の金属酸化物、コンスタンタン等の合金、N型不純物がドープされた液体シリコン等が挙げられる。
不純物含有の液体シリコンとしては、例えば不純物と水素化シラン化合物の混合物を紫外線照射等によりポリマー化したものを、必要に応じて溶解させた溶液を用いることができる。この溶液に、シリコンナノワイヤ等を添加することにより、熱電変換素子の特性を向上させることも可能である。
本実施形態では、P型の熱電材料の微粒子(例えばナノ粒子)を分散媒に分散させた分散液を第1の液状材料Q1とし、同様にN型の熱電材料の微粒子の分散液を第2の液状材料Q2とする。ここでは、第1の液状材料Q1の液滴を第1の液滴吐出ヘッドH1から吐出させて、第1の液状材料Q1を第1の開口部18の内側に塗布する。また、液状体の貯留部が第1の液滴吐出ヘッドH1と独立した第2の液滴吐出ヘッドH2から、第2の液状材料Q2を第2の開口部19の内側に塗布する。
第1、第2の液滴吐出ヘッドH1、H2は、吐出タイミングが互いに独立して制御されており、互いの相対位置が固定された状態で、液状体を吐出しつつ基板10の上を走査するようになっている。これにより、第1の液状材料Q1を塗布する処理と、第2の液状材料Q2を塗布する処理とを並行して行うことができる。
なお、隔壁12が多孔質である場合には、塗布した第1、第2の液状材料Q1、Q2を固化させるまでの間に、第1、第2の液状材料Q1、Q2が隔壁に通り混じり合うことがない程度に、予め第1、第2の液状材料Q1、Q2の浸透性を調整しておく。第1、第2の液状材料Q1、Q2の液物性値を調整することや、第1、第2の液状材料Q1、Q2に対する隔壁12の撥液性を調整することにより、第1、第2の液状材料Q1、Q2の浸透性を調整可能である。
多孔質の隔壁に対する浸透性に影響を及ぼす液物性としては、表面張力や粘性が挙げられる。第1、第2の液状材料Q1、Q2の表面張力や粘性が高く設定するほど、多孔質に浸透しにくくなり、孔径が大きい多孔質を適用可能になる。例えば、第1、第2の液状材料Q1、Q2が多孔質の空隙に入り込まない程度の表面張力や粘性になるように、多孔質の孔径に応じて分散媒の種類等を選択して、第1、第2の液状材料Q1、Q2を調製しておくとよい。
また、第1、第2の液状材料Q1、Q2に対する隔壁12の開口部(第1、第2の開口部18、19)の内壁の撥液性を高くすることによっても、第1、第2の液状材料Q1、Q2を多孔質に浸透しにくくすることができる。開口部の側壁の撥液性を高めるには、第1、第2の液状材料Q1、Q2を塗布する前に開口部の側壁に撥液処理を施しておくことや、隔壁の形成材料に撥液性を高める添加剤を添加しておくことが有効である。例えば、第1、第2の液状材料Q1、Q2の分散媒として無極性分散媒を用いる場合には、フッ素等の極性物質を含んだ隔壁12を形成するとよい。
次いで、図3(a)に示すように、塗布された第1の液状材料Q1を固化することによりP型の熱電材料層13を形成し、また塗布された第2の液状材料Q2を固化することによりN型の熱電材料層14を形成する。ここでは、塗布された第1、第2の液状材料Q1、Q2を一括して焼成することにより、第1、第2の液状材料Q1、Q2に含まれる分散媒を除去して、第1、第2の液状材料Q1、Q2を一括して固化する。
次いで、図3(b)に示すように、隔壁12の上と、P型の熱電材料層13の上と、N型の熱電材料層14の上とにわたって上部電極15を形成する(上部電極形成工程)。上部電極15は、下部電極形成工程と同様の形成材料および形成方法を用いて、形成可能である。下部電極11を介して直列接続されているP型の熱電材料層13およびN型の熱電材料層14を1つのPN接合体としたときに、複数のPN接合体が直列接続されるようにパターニングされた上部電極15を形成する。
また、隔壁12と上部電極15とを覆ってPN接合体を封止するように、封止基板17を設けること等により、図1(a)、図1(b)に示した熱電変換素子1が得られる。
第1実施形態の熱電変換素子の製造方法にあっては、第1、第2の液状材料Q1、Q2を固化してP型、N型の熱電材料層13、14を形成するので、切削等の加工に起因する塵埃の発生が回避される。ここで、熱電変換素子1と、例えば半導体チップ等の他のデバイスとが混載された電子機器を製造する場合について考える。塵埃が他のデバイスに及ぼす悪影響を減らすことができるので、熱電変換素子1の製造と他のデバイスの製造とで製造ラインの一部または全部を共通化することができ、高性能な電子機器を効率よく製造することが可能になる。
第1、第2の開口部18、19の内側に第1、第2の液状材料Q1、Q2を塗布するので、所望のパターンで配置されたP型の熱電材料層13およびN型の熱電材料層14を形成することができる。したがって、切削やエッチングによるパターニングを減らすことができ、熱電変換素子1を効率よく製造することができる。
また、第1、第2の液状材料Q1、Q2を塗布するので、P型の熱電材料層13やN型の熱電材料層14の形成材料のムダを減らすことができ、低コストで熱電変換素子1を形成することができる。
ところで、製造される熱電変換素子1におけるPN接合体2の間隔は、隔壁12に開口部を形成するときの位置精度や、第1、第2の液状材料Q1、Q2を塗布するときの位置精度により定まる。上記の位置精度は、切削により予め形成された熱電材料チップを機械的に配列するときの位置精度と比較して、格段に高精度にすることが可能である。したがって、PN接合体2を狭ピッチで集積することが可能になり、高性能な熱電変換素子1にすることが可能になる。
隔壁12を下地として上部電極15を形成することができるので、ワイヤーボンディングなどによる接続を用いる必要性が低くなり、PN接合体2の間の電気的な接続部(上部電極15)を効率よく形成することができる。また、上部電極15の形成不良を回避することができ、PN接合体2の間の断線の発生を抑制することができるので、高信頼性の熱電変換素子1を良好な歩留りで製造することが可能になる。
また、多孔質の隔壁や中空粒子を含んだ隔壁を形成することにより、隔壁の熱伝導率を空隙の分だけ下げることができる。したがって、熱電変換素子1を伝わる熱量のうちでP型、N型の熱電材料層13、14を伝わる熱量の比率を増すことができ、高性能な熱電変換素子1を製造することが可能になる。
第1、第2の液状材料Q1、Q2を塗布する処理を並行して行った後に、塗布された第1、第2の液状材料Q1、Q2を一括して固化しているので、P型、N型の熱電材料層13、14を効率よく形成することができ、熱電変換素子1を効率よく製造することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の熱電変換素子の製造方法について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1、第2の液状材料Q1、Q2の一方の液状材料を塗布して固化した後に、他方の液状材料を塗布し固化する点である。以下の説明では、一方の液状材料が第1の液状材料Q1である場合について説明するが、一方の液状材料が第2の液状材料Q2である場合についても同様の効果が得られる。
次に、第2実施形態の熱電変換素子の製造方法について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1、第2の液状材料Q1、Q2の一方の液状材料を塗布して固化した後に、他方の液状材料を塗布し固化する点である。以下の説明では、一方の液状材料が第1の液状材料Q1である場合について説明するが、一方の液状材料が第2の液状材料Q2である場合についても同様の効果が得られる。
図4(a)〜(c)は、第2実施形態の熱電変換素子の製造方法を概略して示す工程図である。これら工程図の各図には、平面図と側断面図とを対応させて図示している。
第2実施形態では、まず、第1実施形態と同様にして基板10の上に下部電極11と隔壁12を形成する(図2(a)、(b)参照)。
第2実施形態では、まず、第1実施形態と同様にして基板10の上に下部電極11と隔壁12を形成する(図2(a)、(b)参照)。
次いで、図4(a)に示すように、第1の液滴吐出ヘッドH1から第1の液状材料Q1の液滴を吐出させ、第1の開口部18の内側に第1の液状材料Q1を塗布する。
次いで、図4(b)に示すように、第1の開口部18の内側の第1の液状材料Q1を焼成等により固化してP型の熱電材料層13を形成する。
次いで、図4(b)に示すように、第1の開口部18の内側の第1の液状材料Q1を焼成等により固化してP型の熱電材料層13を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、第2の液滴吐出ヘッドH2から第2の液状材料Q2の液滴を吐出させ、第2の開口部19の内側に第2の液状材料Q2を塗布する。そして、第2の開口部19の内側の第2の液状材料Q2を焼成等により固化してN型の熱電材料層14を形成する。
以上のようにして、図3(a)に示したのと同様に、所望のパターンで配置されたP型、N型の熱電材料層13、14を形成することができる。また、第1実施形態と同様に後の工程を行うことにより、図1(a)、(b)に示した熱電変換素子1が得られる。
第2実施形態の熱電変換素子の製造方法にあっては、第1の液状材料Q1を固化した後に、他方の液状材料を塗布するので、第1の液状材料と第2の液状材料とが混じり合うことが回避される。したがって、P型、N型の熱電材料層13、14を所望の特性にすることができ、高性能な熱電変換素子1を製造することができる。
また、第1の液状材料Q1を固化するときの処理条件、例えば焼成時の加熱温度や加熱時間が、第2の液状材料Q2を固化するときの処理条件に対して、ほとんど影響を及ぼさなくなる。これにより、例えば第1の液状材料Q1の材料選択の自由度が高くなり、また、熱電変換素子1の製造プロセスの選択自由度や、熱電変換素子1の設計自由度が高くなる。
1・・・熱電変換素子、2・・・PN接合体、10・・・基板、11・・・下部電極、
12・・・隔壁、13・・・P型の熱電材料層、14・・・N型の熱電材料層、
15・・・上部電極、16・・・引出電極、17・・・封止基板、
18・・・第1の開口部、19・・・第2の開口部、H1・・・第1の液滴吐出ヘッド、
H2・・・第2の液滴吐出ヘッド、Q1・・・第1の液状材料、
Q2・・・第2の液状材料
12・・・隔壁、13・・・P型の熱電材料層、14・・・N型の熱電材料層、
15・・・上部電極、16・・・引出電極、17・・・封止基板、
18・・・第1の開口部、19・・・第2の開口部、H1・・・第1の液滴吐出ヘッド、
H2・・・第2の液滴吐出ヘッド、Q1・・・第1の液状材料、
Q2・・・第2の液状材料
Claims (5)
- 基板上に第1の下部電極と第2の下部電極とを形成する下部電極形成工程と、
前記基板上に、前記第1の下部電極を露出させる第1の開口部と、前記第2の下部電極を露出させる第2の開口部とを有する隔壁を形成する隔壁形成工程と、
前記第1の開口部の内側にP型の熱電材料を含む第1の液状材料を塗布し固化してP型の熱電材料層を形成し、前記第2の開口部の内側にN型の熱電材料を含む第2の液状材料を塗布し固化してN型の熱電材料層を形成する熱電材料層形成工程と、
前記隔壁の上に、前記P型の熱電材料層と前記N型の熱電材料層とを電気的に接続する上部電極を形成する上部電極形成工程と、
を有することを特徴とする熱電変換素子の製造方法。 - 前記隔壁形成工程では、多孔質の前記隔壁を形成することを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記隔壁形成工程では、中空粒子を含んだ前記隔壁を形成することを特徴とする請求項1に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記熱電材料層形成工程では、前記第1の液状材料と前記第2の液状材料の一方の液状材料を塗布し固化した後に、他方の液状材料を塗布し固化することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱電変換素子の製造方法。
- 前記熱電材料層形成工程では、前記複数の第1の開口部の内側に前記第1の液状材料を塗布する処理と、前記複数の第2の開口部の内側に前記第2の液状材料を塗布する処理とを並行して行った後に、塗布された前記第1の液状材料および前記第2の液状材料を固化することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に熱電変換素子の製造方法。
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2010
- 2010-02-15 JP JP2010030430A patent/JP2011166079A/ja active Pending
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