JP2017133541A - 連接棒およびこれを備えたクロスヘッド型エンジン - Google Patents

連接棒およびこれを備えたクロスヘッド型エンジン Download PDF

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英朗 西田
拓造 鴫原
Takuzo Shigihara
拓造 鴫原
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Abstract

【課題】軸受メタルが過度に厚くなることを防止しながら、連接棒の端部の軸受面に形成されている給油通路や給油溝等の凹部による軸受メタルの圧力変形を抑制する。
【解決手段】連接棒18は、その端部8Aの軸受面8aに形成された凹部15,16と、軸受面8aに装着される半割り円筒状の軸受メタル11Aとを備え、凹部15,16の開口幅寸法をdとし、軸受メタル11Aの厚さ寸法をHとした場合に、H>d・αとなるようにHを設定し、係数αの範囲は、次のいずれかとした。
(a)凹部が穴と溝であり、開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.6。
(b)凹部が穴と溝であり、開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α=0.8。
(c)凹部が穴のみであり、開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.5。
(d)凹部が穴のみであり、開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α>0.6。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に船舶の主機として搭載されるクロスヘッド型エンジンに用いられる連接棒およびこれを備えたクロスヘッド型エンジンに関するものである。
図6は、船舶用のクロスヘッド型エンジンの縦断面図である。また、図7は図6のVII−VII線に沿う断面図であり、図8は図7のVIII−VIII矢視による平面図、図9は図7のIX−IX線に沿う縦断面図である。
このクロスヘッド型エンジンEGは、上下方向に延びるシリンダライナ1にピストン2が摺動自在に挿入され、シリンダライナ1の軸心延長線上にクランク軸3が軸支され、シリンダライナ1とクランク軸3との間に設けられた一対の摺動板4の間にクロスヘッド5が上下摺動自在に設けられている。
ピストン2から下方に延びるピストンロッド6の先端に設けられた横軸状のクロスヘッドジャーナル7がクロスヘッド5に連結されている。また、連接棒8の小端部8Aがクロスヘッドジャーナル7に回動自在に枢着され、連接棒8の大端部8Bがクランク軸3に偏心して設けられたクランクピン9に回動自在に軸支されている。このため、ピストン2が燃料の燃焼に伴う爆発圧力Pによって押し下げられると、クロスヘッド5も押し下げられ、連接棒8が回動してクランク軸3を回転させ、この回転がクロスヘッド型エンジンEGの出力となる。
連接棒8の小端部8Aと大端部8Bには、それぞれキャップ81,82が装着され、クロスヘッドジャーナル7とクランクピン9とがクランプ状に保持されるようになっている。また、小端部8A(81)の軸受面8aと大端部8B(82)の軸受面8bには、それぞれホワイトメタル等の軸受材料で形成された半割り円筒状の軸受メタル11,12が装着されている。
図7〜図9、および特許文献1等に示されるように、連接棒8には、その内部長手方向に沿って延びるように、小端部8A(軸受面8a)と、図6に示す大端部8B(軸受面8b)との間を連通させる給油通路15が形成されており、この給油通路15は、小端部8Aの軸受面8aと大端部8Bの軸受面8bとに穴状に開口している(特許文献1の図5等も参照)。また、軸受面8aには、周方向に沿って延びる複数の給油溝16が形成されている。
クロスヘッド型エンジンEGの作動時には、図示しない潤滑油ポンプからクロスヘッド5に供給される潤滑油が、クロスヘッドジャーナル7と軸受メタル11との間を潤滑した後、給油溝16と給油通路15とを経て軸受メタル12とクランクピン9との間を潤滑するようになっている。
図9、および特許文献1の図1、図10等に示されるように、小端部8Aの軸受面8aにおける給油通路15の開口部の内径dは、軸受メタル11の厚さ寸法Hよりも大きい場合がある。従来では、このような給油通路15や給油溝16等の、軸受面8aに形成される凹部の開口幅寸法dと、軸受メタル11の厚さ寸法Hとの関係は特に考慮されていなかった。
特表2007−532845号公報
しかしながら、上記のように、給油通路15や給油溝16等の凹部の開口幅寸法dが、軸受メタル11の厚さTよりも大きいと、クロスヘッドジャーナル7から加えられる爆発圧力P(図6参照)が軸受メタル11に作用した時に、ホワイトメタル等の比較的軟質な軸受材料により形成されている軸受メタル11が、給油通路15(あるいは給油溝16)の凹部に入り込むように圧力変形を起こす。このため、図7中に線Dで示すように、軸受メタル11の摺動面11aにおける最大油膜圧力の分布状態が、給油通路15の付近において急激に低下し、給油通路15の周囲において高さEで示すように急激に立ち上がるものとなる。
したがって、最大油膜圧力が急激に高さEまで立ち上がる位置(給油通路15の開口部周囲付近)では、軸受メタル11の摺動面11aとクロスヘッドジャーナル7との間に供給される潤滑油の油膜が薄くなってしまい、軸受メタル11の摺動面11aに偏摩耗等の損傷が発生してクロスヘッド型エンジンEGの耐久性や信頼性が損なわれる虞があった。
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、軸受メタルが過度に厚くなることを防止しながら、連接棒の端部の軸受面に形成されている給油通路や給油溝等の凹部による軸受メタルの圧力変形を抑制し、軸受メタルの摺動面における最大油膜圧力が急激に高くなる場所を無くして軸受メタルの損傷を防止し、エンジン耐久性を高めることができる連接棒およびこれを備えたクロスヘッド型エンジンを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る連接棒は、クロスヘッド型エンジンのピストンロッド先端に設けられたクロスヘッドジャーナルと、クランク軸に設けられたクランクピンとの間を連結する連接棒であって、その端部の軸受面に形成された凹部と、前記軸受面に装着される半割り円筒状の軸受メタルと、を備え、前記凹部の開口幅寸法をdとし、前記軸受メタルの厚さ寸法をHとした場合に、H>d・αの関係を満たし、前記係数αの範囲は、次のいずれかであることを特徴とする。
(a)前記凹部が、穴と、この穴に繋がる溝であり、前記開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.6である。
(b)前記凹部が、穴と、この穴に繋がる溝であり、前記開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α=0.8である。
(c)前記凹部が、穴のみであり、前記開口幅寸法dが10ミリ未満場合は、α>0.5である。
(d)前記凹部が、穴のみであり、前記開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α>0.6である。
上記構成の連接棒によれば、ホワイトメタル等の比較的軟質な軸受材料により形成されている軸受メタルの厚さ寸法が、必要最小限の範囲で最適化されるため、重量増やコストアップ等を招くことなく、軸受メタルの強度を高めることができる。
これにより、クロスヘッドジャーナルの荷重(爆発圧力)が軸受メタルに作用した時に、軸受メタルが軸受面に形成されている給油通路や給油溝等の凹部に入り込むように圧力変形を起こすことを抑制することができる。
このため、従来のように軸受メタルの摺動面における最大油膜圧力の分布状態に急激な立ち上がり部が発生して潤滑油の油膜が薄くなる部分が発生することがなくなり、軸受メタルの摺動面に偏摩耗等の損傷が発生することを防止することができる。
このように、軸受メタルが過度に厚くなることを防止しながら、連接棒の端部の軸受面に形成されている給油通路や給油溝等の凹部による軸受メタルの圧力変形を抑制し、軸受メタルの摺動面における最大油膜圧力が急激に高くなる場所を無くして軸受メタルの損傷を防止し、クロスヘッド型エンジンの耐久性を高めることができる。
上記の連接棒において、前記軸受メタルの前記厚さ寸法HがH>d・αである角度範囲は、前記クロスヘッドジャーナルから加えられる爆発圧力の最高圧力作用点から、前記軸受メタルの周方向で該軸受メタルの変形に影響の無い範囲の手前までであり、それ以外の範囲では前記軸受メタルの厚さ寸法が前記Hよりも小さくてもよい。
上記構成によれば、軸受メタルが変形を起こしやすい最高圧力作用点付近の範囲においてのみ軸受メタルの厚さ寸法Hが厚くされ、その他の部分では厚みが増大されないため、軸受メタルが過度に厚くなることを防止しながら、軸受メタルの圧力変形を抑制し、クロスヘッド型エンジンの耐久性を高めることができる。
上記の連接棒において、前記軸受メタルの前記厚さ寸法は、その最大部から最小部まで段差無く緩やかに変化するようにしてもよい。これにより、軸受メタルに断面形状が急激に変化する部分がなくなり、応力集中や金属疲労の集中を回避して軸受メタルの寿命を延ばし、クロスヘッド型エンジンの耐久性を高めることができる。
本発明に係るクロスヘッド型エンジンは、上記のいずれかの連接棒を備えたことを特徴とするため、軸受メタルの圧力変形を防止してエンジン耐久性を高めることができる。
以上のように、本発明に係る連接棒およびこれを備えたクロスヘッド型エンジンによれば、軸受メタルが過度に厚くなることを防止しながら、連接棒の端部の軸受面に形成されている給油通路や給油溝等の凹部による軸受メタルの圧力変形を抑制し、軸受メタルの摺動面における最大油膜圧力が急激に高くなる場所を無くして軸受メタルの損傷を防止し、エンジン耐久性を高めることができる。
本発明の第1実施形態を示す図であり、(a)は連接棒の軸受面の平面図、(b)は(a)のIb−Ib線に沿う縦断面図、(c)は(b)のIc−Ic線に沿う縦断面図である。 軸受メタルの厚さと、軸受面における凹部の開口幅寸法との関係による軸受メタルの変形量を示すグラフである。 本発明の第2実施形態を示すとともに、軸受メタルの厚さ寸法を大きくする角度範囲を示す連接棒の側面図である。 軸受メタルの摺動面に作用する面圧と作用角度との関係を示すグラフである。 本発明の第3実施形態を示す連接棒の縦断面図である。 舶用のクロスヘッド型エンジンの縦断面図である。 従来の技術を示す、図6のVII−VII線に沿うピストンロッドと連接棒の縦断面図である。 従来の技術を示す、図7のVIII−VIII矢視による連接棒の軸受面の平面図である。 従来の技術を示す、図7のIX−IX線に沿う連接棒の縦断面図である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る連接棒について、図1(a),(b)を参照しながら説明する。ここに示す連接棒18は、図8、図9に示す従来の連接棒8と同じく小端部8Aを備えており、この小端部8Aにキャップ81が装着され、ピストン側に設けられたクロスヘッドジャーナル(図6の符号7参照)が回動自在に保持される。軸受面8aには半割り円筒状の軸受メタル11A,11Bが装着されている。小端部8A側に軸受メタル11Aが装着され、キャップ81側に軸受メタル11Bが装着されている。
連接棒18の内部には長手方向(連接棒18の軸方向)に沿って延びる給油通路15(凹部)が形成されている。また、軸受面8aには、例えば3本の給油溝16(凹部)が周方向に沿って形成されている。給油通路15は、例えば中央の給油溝16に繋がっている。給油溝16の内径(開口径)は、給油溝16の幅よりも大きいが、この大小関係は逆、あるいは同等であることも考えられる。
ここで、給油通路15および給油溝16等のような、軸受面8aに形成された凹部の開口幅寸法をdとし、軸受メタル11Aの厚さ寸法をHとした場合、H>d・αとなるようにHを設定する。αは係数である。
そして、係数αの範囲は、次の(a)〜(d)いずれかの条件に基づいて設定する。
(a)凹部が、穴(給油通路15)と、この穴に繋がる溝(給油溝16)であり、開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.6とする。
(b)凹部が、穴(給油通路15)と、この穴に繋がる溝(給油溝16)であり、前記開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α>0.8とする。
(c)前記凹部が、穴(給油通路15)のみであり、前記開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.5とする。
(d)前記凹部が、穴(給油通路15)のみであり、前記開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α>0.6とする。
例えば、本実施形態において、給油通路15または給油溝16のうちの大きい方の開口幅寸法dが20ミリである場合には、上記(b)の条件に相当するため、係数αは0.8よりも大とされる。このため、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hは、H>20×0.8=16ミリ以上となる。
ところで、舶用ディーゼルエンジンでは、通常、運転中におけるクロスヘッドジャーナル7と軸受メタル11A,11Bとの間の油膜圧力が60MPa以下となるように設計されている。油膜の厚さは概ね5μm以下と微小である。このため、爆発圧力Pによる軸受メタル11Aの変形によって図7に示されるように最大油膜圧力の分布状態が急激に立ち上がるE点が発生して油膜が薄くなることによる潤滑不良が発生しないように、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hと、軸受面8aに形成される凹部(給油通路15や給油溝16)の開口幅寸法dとの関係を考慮する必要がある。
図2は、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hと、軸受面8aにおける凹部の開口幅寸法dとの関係による軸受メタル11Aの変形量を示すグラフである。縦軸は軸受メタル11Aの厚さ寸法Hと開口幅寸法dとの比H/d、即ち軸受メタル11Aの厚さ係数αであり、横軸は開口幅寸法dである。ここにおいて、最大油膜圧力は通常値の60MPaを想定している。
軸受メタル11Aの変形量を、クロスヘッドジャーナル7と軸受メタル11A,11Bとの間の油膜厚さよりも小さくすることで、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを必要最小限としながら油膜圧力の低下を抑えることができる。このため、軸受メタル11Aの変形量が、油膜の厚さである5μmよりも小さくなるように、好ましくは1μm以下になるように、H/dの値、即ち係数αを設定する。つまり、開口幅寸法dに応じて、図2中に示す変形量1μmとなる境界線に近似するように係数αを設定し、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを決定する。なお、図2に示す線図(変形量)は、FEM解析や梁モデルの理論計算により算出することができる。
例えば、連接棒18の軸受面8aに給油通路15(凹部)と給油溝16(凹部)の両方が形成されていて、給油通路15と給油溝16の開口幅寸法dが10ミリ未満の場合、軸受メタル11Aの変形量を1μm以下に抑えるためには、図2のグラフに示されるように、厚さ係数αを0.8として、H>d・αの関係から軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを設定すればよい。この時、厚さ寸法Hが薄くなり過ぎないように厚さ係数αの下限値を0.6以上とするのが好ましい。
また、給油通路15および給油溝16の開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合、軸受メタル11Aの変形量を1μm以下に抑えるためには、図2のグラフに示されるように、開口幅寸法dから厚さ係数αを0.8〜1.2の範囲で選択し、H>d・αの関係から軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを設定すればよい。
さらに、凹部が給油通路15の穴のみであり、凹部の開口幅寸法dが10ミリ未満の場合、軸受メタル11Aの厚さ係数αは、0.5〜0.6の範囲で決定し、上述の式から軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを設定すればよい。これは、凹部が給油通路15の穴のみしか形成されていない、即ち給油溝16が形成されていない場合は、両方とも形成されている場合に比べて軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを薄く設定することができるためである。つまり、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hが現実的に薄くなり過ぎないことも考慮した範囲である。
また、給油通路15の穴の開口幅寸法dが10ミリ以上40未満の場合においては、厚さ係数αを0.6〜0.8の範囲で決定し、上述の式から軸受メタル11Aの厚さ寸法を設定すればよい。上述と同様に、給油通路15および給油溝16の両方が形成されている場合に比べて軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを薄く設定することができる。
このように構成された連接棒18によれば、ホワイトメタル等の比較的軟質な軸受材料により形成されている軸受メタル11Aの厚さ寸法Hが、必要最小限の範囲で最適化されるため、重量増やコストアップ等を招くことなく、軸受メタル11Aの強度を高めることができる。
これにより、クロスヘッドジャーナル7からの荷重(図6に示す爆発圧力P)が軸受メタル11Aに作用した時に、軸受メタル11Aが軸受面8aに形成されている給油通路15や給油溝16等の凹部に入り込むように圧力変形を起こすことを抑制することができる。
このため、従来のように軸受メタル11Aの摺動面11aにおける最大油膜圧力の分布状態に急激な立ち上がり部が発生して潤滑油の油膜が薄くなる部分が発生することがなくなり、軸受メタル11Aの摺動面11aに偏摩耗等の損傷が発生することを防止することができる。
このように、軸受メタル11Aが過度に厚くなることを防止しながら、連接棒18の端部8Aの軸受面8aに形成されている給油通路15や給油溝16等の凹部による軸受メタル11Aの圧力変形を抑制し、軸受メタル11Aの摺動面11aにおける最大油膜圧力が急激に高くなる場所を無くして軸受メタル11Aの損傷を防止し、クロスヘッド型エンジンEGの耐久性を高めることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る連接棒について、図3および図4を参照しながら説明する。この連接棒28においても、その小端部8Aの軸受面8aに給油通路15が連通しており、この軸受面8aには半割り円筒状の軸受メタル11Aが装着されている。この軸受メタル11Aには、図6に示すクロスヘッドジャーナル7からの荷重(爆発圧力P)が加わるが、最も高い圧力が作用するのは、爆発圧力Pのベクトル方向に合致する最高圧力作用点Pmaxの位置である。図3では、この最高圧力作用点Pmaxの位置が連接棒28の図示しない中心線に一致する点となっているが、必ずしもこの位置とは限らず、軸受面8aの周方向に沿って20〜30度程度ずれることがある。
この第2実施形態の連接棒28においても、軸受メタル11Aの厚さ寸法Hは、前述の第1実施形態の場合と同様に、H>d・αの式から算出される。この厚さ寸法Hとされる角度範囲θは、最高圧力作用点Pmaxの位置を0度とした場合に、ここから、軸受メタル11Aの周方向で該軸受メタル11Aの変形に影響の無い範囲の手前まで、例えば±30度の範囲のみに限定されている。この角度範囲θ以外の範囲では、軸受メタル11Aの厚さ寸法はHよりも小さい。即ち、従来の連接棒における軸受メタルの厚さのままとされている。
図4に示すように、クロスヘッドジャーナル7から加わる面圧は、最高圧力作用点Pmaxが加わる点、即ち0度で最高になるが、ここから±30度を過ぎると、軸受メタル11Aの変形に影響の無いレベルに低下する。このように、軸受メタル11Aが変形を起こしやすい最高圧力作用点Pmaxから±30度までの範囲においてのみ軸受メタル11Aの厚さ寸法Hを厚くし、それ以外の部分では厚みを増大させないため、軸受メタル11Aが過度に厚くなることを防止しながら、軸受メタル11Aの圧力変形を抑制し、クロスヘッド型エンジンEGの耐久性を高めることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る連接棒について、図5を参照しながら説明する。この連接棒38は、その軸受メタル11Aの形状以外は、図1(c)に示す連接棒18や、図3に示す連接棒28と同様の構成を備えている。
この連接棒38では、軸受面8aに開口する給油通路15の開口幅寸法dに対して、軸受メタル11Aの中央部付近の最大厚さ寸法Hが、第1実施形態で説明したH>d・αの式から算出されており、この中央部付近から両端に行くにしたがって、厚さHが小さくなっている。
この軸受メタル11Aの厚さ寸法Hは、その最大部から最大小まで段差無く緩やかに変化している。これにより、軸受メタル11Aに断面形状が急激に変化する部分がなくなり、応力集中や金属疲労の集中を回避して軸受メタル11Aの寿命を延ばし、クロスヘッド型エンジンEGの耐久性を高めることができる。
なお、軸受面8aの曲率は、図9に示す従来のものと同様となり、軸受面8aの深さを、軸受メタル11Aの最大厚さ寸法Hから最小厚さ寸法を差し引いた分だけ掘り下げるだけでよいため、従来の製造工程を大きく変化させることなく製造することができる。
以上説明したように、上記各実施形態に係る連接棒18,28,38、およびこれを備えたクロスヘッド型エンジンEGによれば、軸受メタル11Aが過度に厚くなることを防止しながら、連接棒18,28,38の端部8Aの軸受面8aに形成されている給油通路15や給油溝16等の凹部による軸受メタル11Aの圧力変形を抑制し、軸受メタル11Aの摺動面11aにおける最大油膜圧力が急激に高くなる場所を無くして軸受メタル11Aの損傷を防止し、エンジンの耐久性を高めることができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。
例えば、上記各実施形態では、連接棒18,28,38の小端部8A側に本発明を適用した例について説明したが、大端部8B側に本発明を適用してもよい。また、各実施形態を組み合わせたり、別な構成を付加したりしてもよい。
1 シリンダライナ
2 ピストン
3 クランク軸
6 ピストンロッド
7 クロスヘッドジャーナル
8A 小端部(端部)
8a 軸受面
9 クランクピン
11A 軸受メタル
15 給油通路(凹部)
16 給油溝(凹部)
18,28,38 連接棒
EG クロスヘッド型エンジン
d 凹部の開口幅寸法
H 軸受メタルの厚さ寸法
P 爆発圧力
Pmax 最高圧力作用点
α 係数

Claims (4)

  1. クロスヘッド型エンジンのピストンロッド先端に設けられたクロスヘッドジャーナルと、クランク軸に設けられたクランクピンとの間を連結する連接棒であって、
    その端部の軸受面に形成された凹部と、
    前記軸受面に装着される半割り円筒状の軸受メタルと、
    を備え、
    前記凹部の開口幅寸法をdとし、前記軸受メタルの厚さ寸法をHとした場合に、H>d・αの関係を満たし、
    前記係数αの範囲は、次のいずれかであることを特徴とする連接棒。
    (a)前記凹部が、穴と、この穴に繋がる溝であり、前記開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.6である。
    (b)前記凹部が、穴と、この穴に繋がる溝であり、前記開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α>0.8である。
    (c)前記凹部が、穴のみであり、前記開口幅寸法dが10ミリ未満の場合は、α>0.5である。
    (d)前記凹部が、穴のみであり、前記開口幅寸法dが10ミリ以上40ミリ以下の場合は、α>0.6である。
  2. 前記軸受メタルの前記厚さ寸法HがH>d・αである角度範囲は、前記クロスヘッドジャーナルから加えられる爆発圧力の最高圧力作用点から、前記軸受メタルの周方向で該軸受メタルの変形に影響の無い範囲の手前までであり、それ以外の範囲では前記軸受メタルの厚さ寸法が前記Hよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の連接棒。
  3. 前記軸受メタルの前記厚さ寸法は、その最大部から最小部まで段差無く緩やかに変化することを特徴とする請求項1または2に記載の連接棒。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の連接棒を備えたことを特徴とするクロスヘッド型エンジン。
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