JP2017132892A - 樹脂ワニス及び絶縁電線 - Google Patents

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吉田 健吾
Kengo Yoshida
健吾 吉田
齋藤 秀明
Hideaki Saito
秀明 齋藤
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【課題】本発明は、積層された複数の絶縁層間の密着力を向上させることができる樹脂ワニス及び絶縁電線を提供することを課題とする。【解決手段】本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホンを副成分樹脂とする樹脂ワニスである。当該樹脂ワニスは、有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン又はこれらの組み合わせを含むとよい。本発明の一態様に係る絶縁電線は、導体、この導体の外周側に積層される第1絶縁層、及びこの第1絶縁層の外周面に積層される第2絶縁層を有し、上記第1絶縁層が、ポリイミドを主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホンを副成分樹脂とする。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂ワニス及び絶縁電線に関する。
モータ等のコイルに用いられる絶縁電線において、導体を被覆する絶縁層には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度等が求められている。絶縁層を形成する樹脂としてはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等がある。
また適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁層表面で部分放電(コロナ放電)が発生しやすくなる。コロナ放電が発生すると、局部的な温度上昇やオゾン等の発生が引き起こされやすくなり、その結果、絶縁電線の絶縁層が劣化することで早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなる。高電圧で使用される絶縁電線には上記の理由によりコロナ放電開始電圧の向上が求められており、そのためには絶縁層の誘電率を低くすることが有効であることが知られている。
ポリイミドは絶縁電線の絶縁層として使用されている樹脂の中では特に耐熱性に優れている。また誘電率が低く機械特性にも優れるため、高電圧で使用される絶縁電線の絶縁層として用いられている。例えば特開2010−67408号公報には、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)等の芳香族エーテル構造を有する酸二無水物と、芳香族エーテル構造を有するジアミン及びフルオレン構造を有するジアミンとを反応させて得られたポリイミドが低誘電性であり、コロナ放電の発生を抑制できると記載されている。
特開2010−67408号公報
上記のようにポリイミドは耐熱性、機械特性、電気特性等に優れる材料であるが、耐加工性、特に耐摩耗性が悪いという問題がある。絶縁電線をコイルとして使用する際には、コイルの占積率を上げるために絶縁電線を大きく変形させる加工を行う。例えば絶縁電線を捲線してコイルを形成した後にコイルをスロット中に挿入したり、あらかじめ変形させた絶縁電線同士を溶接してコイルを形成したりする。その際、絶縁層の耐摩耗性が悪いと、加工時に絶縁層が損傷を受けやすく、絶縁層の割れやピンホールが発生して電気特性が不良となるおそれがある。
ポリイミドの耐加工性が悪い原因の一つとして、絶縁層となるポリイミド皮膜の耐溶剤性が高いことが挙げられる。ポリイミド皮膜は、ポリイミド前駆体を溶剤に溶解させた樹脂ワニスを導体上に塗布し、加熱することによって得られる。この加熱工程においてポリイミド前駆体であるポリアミック酸がイミド化してポリイミドとなる。一度の塗布工程及び加熱工程では数μm程度の薄い皮膜しか形成できないため、通常、塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返して所定の厚み(数10μm程度)のポリイミド皮膜を形成する。そのため2回目以降の工程では前回の工程で形成されたポリイミド層の上に樹脂ワニスを塗布することとなる。この時、樹脂ワニスに含まれる溶剤が下層(前回の工程で形成されたポリイミド層)を若干溶解する場合は層間のなじみが良くなり層間の密着力が得られる。しかし、加熱によりイミド化したポリイミドは、ポリアミドイミド等の他の樹脂と比べると耐溶剤性が高すぎるため樹脂ワニスを塗布した際に下層がほとんど溶解しない。従って層間の密着力(接着力)が低下し、皮膜に大きな変形を施すような加工を行うと層間の剥離に起因して皮膜が破壊される。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、積層された複数の絶縁層間の密着力を向上させることができる樹脂ワニス及び絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホンを副成分樹脂とする樹脂ワニスである。
上記課題を解決するためになされた本発明の別の態様に係る絶縁電線は、導体、この導体の外周側に積層される第1絶縁層、及びこの第1絶縁層の外周面に積層される第2絶縁層を有し、上記第1絶縁層が、ポリイミドを主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホンを副成分樹脂とする絶縁電線である。
本発明の樹脂ワニスによれば、積層された複数の絶縁層間の密着力を向上させることができる。また、本発明の絶縁電線によれば、積層された複数の絶縁層間の密着力が高いため、耐加工性を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の模式的断面図である。 図1の絶縁電線の絶縁層の一部を拡大した断面写真である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホン(以下、「PES」ともいう)を副成分樹脂とする樹脂ワニスである。
上記「主成分樹脂」とは、樹脂ワニス中の全樹脂成分のうち最も含有量の多い樹脂成分であり、例えば全樹脂成分中の含有量が50質量%以上の樹脂成分を指す。また、上記「副成分樹脂」とは、樹脂ワニス中の主成分樹脂以外の樹脂成分のうち最も含有量の多い樹脂成分であり、例えば主成分樹脂以外の樹脂成分中の含有量が50質量%以上の樹脂成分を指す。後述する絶縁層中の主成分樹脂及び副成分樹脂についても同様である。なお、本明細書において、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
当該樹脂ワニスは、上記構成を有することにより積層された複数の絶縁層間の密着力を向上させることができる。当該樹脂ワニスが上記構成を有することにより上記効果を奏する理由は定かではないが、以下のように推察される。即ち、ポリイミド前駆体とPESとを併用することにより、当該樹脂ワニスにより形成された絶縁層上にさらに絶縁層を積層させる際に、PESが層間接着剤として機能することで絶縁層間の密着力を向上させることができると考えられる。具体的には、例えば当該樹脂ワニスにより形成された絶縁層上にさらに他の絶縁層を積層させる際に、当該樹脂ワニスにより形成された絶縁層に含まれるPESが他の絶縁層を形成する樹脂ワニスに含まれる有機溶剤によって若干溶解されることで、当該樹脂ワニスにより形成された絶縁層及び他の絶縁層の層間密着力が向上すると考えられる。
上記PESの上記ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド(以下、「PI」ともいう)に対する質量比(PES/PI)としては、10/90以上30/70以下が好ましい。PESのPIに対する質量比を10/90以上とすることより、絶縁層間の密着力をより向上させることができる。また、PESのPIに対する質量比を30/70以下とすることより、絶縁層の耐熱性の低下を抑制できる。
当該樹脂ワニスは、有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン又はこれらの組み合わせを含むとよい。当該樹脂ワニスが上記有機溶剤を含むことによって、例えば当該樹脂ワニスを用いて塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返して、PI及びPESを含む絶縁層の積層体を形成する場合、2回目以降の塗布工程において樹脂ワニス中の有機溶剤が前回の工程で形成された絶縁層中のPESを適度に溶解するため、絶縁層間の密着力をより向上させることができる。また、上記有機溶剤を含むことによって、ポリイミド前駆体の有機溶剤への溶解性を高めることができるので、当該樹脂ワニスの濃度が高められ、絶縁層を容易に形成することができる。
本発明の他の一態様に係る絶縁電線は、導体、この導体の外周側に積層される第1絶縁層、及びこの第1絶縁層の外周面に積層される第2絶縁層を有し、上記第1絶縁層が、PIを主成分樹脂とし、PESを副成分樹脂とする絶縁電線である。
当該絶縁電線は、上記構成を有しているため上記本発明の一態様に係る樹脂ワニスと同様の理由により、第1絶縁層と第2絶縁層との層間密着力を向上させることができる。よって、当該絶縁電線によれば耐加工性を向上させることができる。
上記PESの上記PIに対する質量比(PES/PI)としては、10/90以上30/70以下が好ましい。PESのPIに対する質量比を10/90以上とすることより、絶縁層間の密着力をより向上させることができる。また、PESのPIに対する質量比を30/70以下とすることより、絶縁層の耐熱性の低下を抑制できる。
上記第1絶縁層が海島構造を有し、上記海島構造の海相の主成分が上記PIであり、上記海島構造の島相の主成分が上記PESであるとよい。この構成によれば、耐熱性の比較的低いPESを主成分とする島相が耐熱性の比較的高いPIを主成分とする海相で囲まれるため、絶縁層の耐熱性の低下を抑制できる。
上記島相の少なくとも1つが、上記第1絶縁層及び第2絶縁層の界面に直交する方向の径が上記第1絶縁層の平均厚みの80%以上であることが好ましい。この構成によれば、第1絶縁層及び第2絶縁層の界面とPESとの接触面積が大きくなるため、層間密着力をより向上させることができる。なお、上記「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値をいう。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
<樹脂ワニス>
まず、本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態について説明する。本実施形態に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、PESを副成分樹脂とする樹脂ワニスである。本実施形態に係る樹脂ワニスは、上記構成を有することにより積層された複数の絶縁層間の密着力を向上させることができる。以下、本実施形態の樹脂ワニスに配合される成分について説明する。
(芳香族テトラカルボン酸二無水物)
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物のうち、PMDAは剛直な構造を有するため、イミド化後のPIの耐熱性を向上できる点で好ましい。
なお、本実施形態に係る樹脂ワニスには、上記効果を損ねない限り、ポリイミド前駆体を形成する成分として1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が配合されてもよい。
(芳香族ジアミン)
芳香族ジアミンとしては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’−ジアミノジフェニルスルフィド、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。これらの芳香族ジアミンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの芳香族ジアミンのうち、ODA、BAPP及びこれらの組み合わせが好ましい。中でも、上記芳香族ジアミンとしてODAを配合すると、PIの靱性を向上させることができる点で特に好ましい。また、上記芳香族ジアミンとして分子鎖が比較的長いBAPPを配合すると、加工時等の応力を受けた際の絶縁層の損傷を抑制できる点で特に好ましい。
なお、本実施形態に係る樹脂ワニスには、上記効果を損ねない限り、ポリイミド前駆体を形成する成分としてヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが配合されてもよい。
(ポリイミド前駆体)
ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、上述した芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合重合によって得られる。この縮合重合反応は従来のポリイミド前駆体の合成と同様の条件にて行うことができる。例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶剤中で混合し、この混合液を加熱することにより芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが縮合重合してポリイミド前駆体を含む溶液が得られる。
縮合重合させる際の反応条件は使用するモノマー等により適宜設定すればよく、例えば反応温度を10℃以上80℃以下とし、反応時間を0.5時間以上24時間以下とすればよい。
縮合重合させる際、芳香族テトラカルボン酸二無水物の合計量(当量)と芳香族ジアミンの合計量(当量)とを約1:1とすることが好ましい。これにより、縮合重合反応を良好に進行させることができる。
有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。
有機溶剤の量は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族ジアミンを均一に分散させることができる量であれば特に制限されないが、例えばこれらのモノマー成分の合計量100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下の範囲となるように使用すればよい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量の下限としては、10,000が好ましく、30,000がより好ましい。また、上記重量平均分子量の上限としては、100,000が好ましく、80,000がより好ましい。上記重量平均分子量が上記下限未満であると、イミド化後のPIの機械強度が不十分になるおそれがある。一方、上記重量平均分子量が上記上限を超えると、樹脂ワニスの塗布性が低下するおそれがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を使用し、展開溶媒としてNMPを用い、単分散ポリスチレンを標準として測定した値である。
(ポリエーテルスルホン)
ポリエーテルスルホン(PES)は、構成分子中にスルホニル基を有する熱可塑性ポリマーであり、例えばジハロゲノジフェニルスルホンとジヒドロキシジフェニルスルホンとを縮合重合させることにより得られる。PESは、耐熱性が高く、ポリイミド前駆体と適度に相溶するため、絶縁電線の絶縁層用の樹脂ワニスに配合する樹脂として適している。
PESのPIに対する質量比の下限としては、10/90が好ましく、12/88がより好ましく、15/85がさらに好ましい。また、上記質量比の上限としては、30/70が好ましく、28/72がより好ましく、25/75がさらに好ましい。上記質量比を上記下限以上とすることにより、絶縁層間の密着力をより向上させることができる上、樹脂ワニスの製造コストを低減できる。一方、上記質量比を上記上限以下とすることにより、絶縁層の耐熱性の低下を抑制できる。
PESの重量平均分子量の下限としては、10,000が好ましく、30,000がより好ましい。また、上記重量平均分子量の上限としては、100,000が好ましく、80,000がより好ましい。上記重量平均分子量を上記下限以上とすることにより、絶縁層の靱性の低下を抑制できる。一方、上記重量平均分子量が上記上限を超えると、樹脂ワニスの塗布性が低下するおそれがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を使用し、展開溶媒としてNMPを用い、単分散ポリスチレンを標準として測定した値である。
ポリイミド前駆体とPESとを混合する方法は特に限定されず、例えば上述した方法でポリイミド前駆体を含む溶液を得た後、この溶液にPESを添加する方法や、ポリイミド前駆体を形成するモノマーとPESとを有機溶剤中で混合し、この混合液を加熱することにより上記モノマーを縮合重合させつつPESと混合する方法等が挙げられる。この中では、ポリイミド前駆体の縮合重合反応を安定して行う観点から、ポリイミド前駆体を含む溶液を得た後、この溶液にPESを添加する方法が好ましい。
(有機溶剤)
本実施形態の樹脂ワニスは、有機溶剤をさらに含むことが好ましい。この場合、例えば樹脂ワニスを用いて塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返して、PI及びPESを含む絶縁層の積層体を形成する際、2回目以降の塗布工程においてワニス中の有機溶剤が前回の工程で形成された絶縁層中のPESを若干溶解するため、絶縁層間の密着力をより向上させることができる。
上記有機溶剤としては非プロトン性極性有機溶剤が好ましい。ポリイミド前駆体は非プロトン性極性有機溶剤に対する溶解性が高いため、上記有機溶剤として非プロトン性極性有機溶剤を用いることにより、有機溶剤に対するポリイミド前駆体の含有割合を高めることができる。そのため、当該樹脂ワニスの濃度を高めることができ、当該樹脂ワニスを用いて絶縁層を容易に形成することができる。また、非プロトン性極性有機溶剤を用いることにより、上記2回目以降の塗布工程において絶縁層中のPESが適度に非プロトン性極性有機溶剤に溶解するため、絶縁層間の密着力をさらに向上させることができる。なお、「非プロトン性極性有機溶剤」とは、プロトンを放出する基を持たない極性有機溶剤をいう。
上記非プロトン性極性有機溶剤としては、ポリイミド前駆体の溶解性向上及び絶縁層間の密着力向上の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン及びこれらの組み合わせが好ましく、NMPがより好ましい。
有機溶剤は、上述したポリイミド前駆体の縮合重合反応に使用した有機溶剤をそのまま使用してもよく、ポリイミド前駆体を得た後、別途添加してもよいが、作業性の観点から、ポリイミド前駆体の縮合重合反応に使用した有機溶剤をそのまま使用することが好ましい。有機溶剤の含有量は、例えばポリイミド前駆体100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下の範囲とすればよい。
本実施形態の樹脂ワニスは、上述した成分以外に顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤、密着向上剤等の各種添加剤や反応性低分子、相溶化剤などを添加しても良い。中でも、密着向上剤としてメラミンを添加すると、導体との密着力を向上できる。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。これらの他の成分を配合する場合、樹脂ワニス中の他の成分の配合量はポリイミド前駆体100質量部に対して例えば0.5質量部以上30質量部以下である。
<絶縁電線の製造方法>
次に、本発明の絶縁電線の製造方法の好適な実施態様について説明する。本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、線状の導体、この導体の外周側に積層される第1絶縁層、及びこの第1絶縁層の外周面に積層される第2絶縁層を有する絶縁電線の製造方法である。また、本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、上記導体の外周側に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、PESを副成分樹脂とする樹脂ワニスを塗布する第1塗布工程と、上記塗布された樹脂ワニスを加熱する第1加熱工程と、上記加熱により得られた第1絶縁層の外周面に第2絶縁層を積層する積層工程とを備える。本実施態様の絶縁電線の製造方法によれば、後述する実施形態の絶縁電線を容易かつ確実に製造できる。
また、本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、上記第2絶縁層の積層工程が、上記第1絶縁層の外周面に有機溶剤を含む樹脂組成物を塗布する第2塗布工程と、上記塗布された樹脂組成物を加熱する第2加熱工程とを備える。これにより、第1絶縁層の外周面に上記樹脂組成物を塗布した際、樹脂組成物中の有機溶剤が第1絶縁層中のPESを若干溶解するため、第1絶縁層と第2絶縁層との層間密着力をより向上させることができる。
以下、本実施形態の各工程について説明する。なお、上記樹脂ワニスとしては上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様のものが使用できるため、樹脂ワニスに関する説明は省略する。
(第1塗布工程)
本工程では、線状の導体の外周側に樹脂ワニスを塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば樹脂ワニスを貯留した樹脂ワニス槽と塗布ダイスとを備える塗布装置を用いた方法等が挙げられる。この塗布装置によれば、導体が樹脂ワニス槽内を挿通することで樹脂ワニスが導体外周面に付着し、その後塗布ダイスを通過することで樹脂ワニスが導体外周面に均一な厚みで塗布される。なお、本工程では、導体の外周面に直接樹脂ワニスを塗布してもよく、導体の外周面に予め密着改良層等の中間層を設けておき、その中間層の外周側に樹脂ワニスを塗布してもよい。
導体の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミニウム線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体の平均断面積の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。一方、導体の平均断面積の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。導体の平均断面積が上記下限に満たないと、導体に対する絶縁層の体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、導体の平均断面積が上記上限を超えると、誘電率を十分に低下させるために絶縁層を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
(第1加熱工程)
本工程では、塗布された樹脂ワニスを加熱する。この第1加熱工程によって、導体の外周側に焼付層が積層され、この焼付層が第1絶縁層として構成される。加熱方法は特に限定されないが、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる。加熱温度としては、通常350℃以上500℃以下である。加熱時間としては、通常5秒以上100秒以下である。
(第2塗布工程)
本工程では、第1加熱工程で得られた第1絶縁層の外周面に有機溶剤を含む樹脂組成物を塗布する。上記有機溶剤としては、例えば上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様のものが使用できる。上記樹脂組成物に含まれる樹脂としては、絶縁電線の絶縁層として使用可能な樹脂であれば特に限定されないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂が好ましい。上記樹脂組成物がポリイミド前駆体を含む場合、第2絶縁層の耐熱性を向上させることができる。特に、上記樹脂組成物がポリイミド前駆体を主成分樹脂とする場合、耐熱性をより向上させることができる。上記樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、例えば上記樹脂組成物に含まれる樹脂100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下の範囲とすればよい。
また、上記樹脂組成物が上記ポリイミド前駆体を含む場合、上記樹脂組成物がPESをさらに含むことが好ましい。これにより、第2絶縁層の耐熱性を向上させつつ、第1絶縁層と第2絶縁層との層間密着力をより向上させることができる。特に、上記樹脂組成物がポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、PESを副成分樹脂とする場合、第2絶縁層の耐熱性をより向上させつつ、第1絶縁層と第2絶縁層との層間密着力をさらに向上させることができる。この場合の上記樹脂組成物中のPESの含有量は、上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様である。即ち、上記樹脂組成物がポリイミド前駆体及びPESを含む場合、上記樹脂組成物としては上記本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様の樹脂ワニスが使用できる。
塗布方法は特に限定されないが、例えば上記第1塗布工程と同様の方法により行うことができる。
(第2加熱工程)
本工程では、塗布された樹脂組成物を加熱する。この第2加熱工程によって、第1絶縁層の外周面に焼付層が積層され、この焼付層が第2絶縁層として構成される。つまり、この第2加熱工程によって、第1絶縁層の外周面に直接積層される第2絶縁層が得られる。加熱方法は特に限定されないが、例えば上記第1加熱工程と同様の方法により行うことができる。加熱条件としては、樹脂組成物に含まれる樹脂により適宜設定すればよいが、例えばポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を用いる場合は、上記第1加熱工程と同様の加熱条件を採用できる。
上記第2加熱工程後、さらに同様の手順で塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返してもよい。これにより、絶縁層の合計厚みをより厚くすることができる。積層された複数の絶縁層からなる多層絶縁層の平均厚みは、例えば10μm以上150μm以下程度である。この場合、多層絶縁層を構成する各絶縁層の平均厚みは、例えば1μm以上5μm以下程度である。
上記多層絶縁層を設けた後、さらに他の絶縁層や表面潤滑層を設けても良い。他の絶縁層を構成する樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド等が使用できる。
<絶縁電線>
次に、本発明の絶縁電線の好適な実施態様について説明する。本実施態様の絶縁電線は、線状の導体、この導体の外周側に積層される第1絶縁層、及びこの第1絶縁層の外周面に積層される第2絶縁層を有し、上記第1絶縁層が、PIを主成分樹脂とし、PESを副成分樹脂とする絶縁電線である。本実施態様の絶縁電線は、上記構成を有することにより第1絶縁層と第2絶縁層との層間密着力を向上させることができる。よって、当該絶縁電線によれば耐加工性を向上させることができる。
本実施態様の絶縁電線は、上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様の樹脂ワニスを使用し、上述した本発明の絶縁電線の製造方法の好適な実施態様と同様の方法で製造できる。つまり、本実施形態における第1絶縁層及び第2絶縁層は、いずれも焼付層である。なお、以下において、上述した樹脂ワニス及び絶縁電線の製造方法と重複する説明は省略する。
PESのPIに対する質量比の下限としては、10/90が好ましく、12/88がより好ましく、15/85がさらに好ましい。また、上記質量比の上限としては、30/70が好ましく、28/72がより好ましく、25/75がさらに好ましい。上記質量比を上記下限以上とすることにより、絶縁層間の密着力をより向上させることができる。一方、上記質量比を上記上限以下とすることにより、絶縁層の耐熱性の低下を抑制できる。
上記第1絶縁層は、PI及びPES以外に顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤、密着向上剤等の各種添加剤などを含んでも良い。中でも密着向上剤としてメラミンを含む場合、導体との密着力を向上できる。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。これらの他の成分を添加する場合、第1絶縁層中の他の成分の含有量はPI及びPESの合計100質量部に対して例えば0.5質量部以上30質量部以下である。
図1は、本発明の絶縁電線の一例を示す模式的断面図である。図1の絶縁電線10は、線状の導体1と、導体1の外周側に断面視で同心円状に順次積層される複数の絶縁層2(絶縁層2a〜2g)とを有する。各絶縁層2は、いずれも上述した本発明の好適な実施形態に係る樹脂ワニスにより形成されたものである。よって、絶縁電線10によれば、複数の絶縁層2の層間密着力を向上させることができる。なお、図1において、絶縁層2aは上述した第1絶縁層に相当する。絶縁層2bは、絶縁層2cに対しては第1絶縁層に相当し、絶縁層2aに対しては第2絶縁層に相当する。つまり、絶縁層2bは、第1絶縁層であり、かつ第2絶縁層である。絶縁層2c〜2fについても、絶縁層2bと同様に第1絶縁層であり、かつ第2絶縁層である。絶縁層2gは上述した第2絶縁層に相当する。
図2は、上述した図1の絶縁電線10の絶縁層の一部を拡大した断面写真である。図2に示すように、各絶縁層2は、いずれもPIを主成分とする海相と、PESを主成分とする島相とからなる海島構造を有している。これにより、耐熱性の比較的低いPESを主成分とする島相が耐熱性の比較的高いPIを主成分とする海相で囲まれるため、各絶縁層2の耐熱性の低下を抑制できる。
また、絶縁層2dに含まれる島相50は、絶縁層2d及び絶縁層2eの界面に直交する方向の径Dが絶縁層2dの平均厚みの80%以上である。これにより、絶縁層2d及び絶縁層2eの界面とPESとの接触面積が大きくなるため、層間密着力をより向上させることができる。層間密着力向上の観点から、上記島相50の径Dの下限としては、絶縁層2dの平均厚みの90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。一方、島相を均一に分散させる観点から、上記島相50の径Dの上限としては、絶縁層2dの平均厚みの150%以下が好ましく、120%以下がより好ましい。なお、径Dは、例えばPESの重量平均分子量、塗布工程前の樹脂ワニスの攪拌速度や攪拌時間等を調整することにより制御できる。
[その他の実施形態]
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば絶縁電線の一例として示した図1では、各絶縁層がPI及びPESを含む層(以下、「PI−PES層」ともいう)からなる例を示したが、当該絶縁電線はPI−PES層以外の絶縁層を有してもよい。PI−PES層以外の絶縁層は、導体とPI−PES層との間に設けても、PI−PES層の外周側に設けてもよい。導体とPI−PES層との間、及びPI−PES層の外周側の双方にPI−PES層以外の絶縁層を設けてもよい。
また、当該絶縁電線は、第1絶縁層の外周面に加熱溶融された熱可塑性樹脂の塗布により第2絶縁層を形成してもよい。この構成によっても、第1絶縁層中のPESが層間接着剤として機能すること等により絶縁層間の密着力を向上させることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例]
[No.1]
銅を主成分とし、平均厚み1.5mm、平均幅3mmの平角導体を得た。次に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応して得られるポリイミド前駆体、PES及び有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを含む絶縁層形成用樹脂ワニスを作成した。この絶縁層形成用樹脂ワニスを上記導体の外周面に塗布し、線速4.0m/min、加熱炉入口温度250℃、加熱炉出口温度350℃の条件で加熱する工程を繰り返し行うことで導体の外周面に平均厚み35μmの絶縁層(絶縁層用樹脂ワニスを用いて形成される複数の絶縁層の積層体)を形成し、No.1の絶縁電線を得た。なお、この絶縁電線におけるPESのPIに対する質量比は10/90であった。
[No.2〜No.4]
絶縁電線におけるPESのPIに対する質量比を表1のとおりとした以外はNo.1と同様にしてNo.2〜No.4の絶縁電線を得た。
[比較例]
[No.5]
絶縁層形成用樹脂ワニスにPESを含有させなかった以外はNo.1と同様にしてNo.5の絶縁電線を得た。
<層間密着力>
No.1〜No.5の絶縁電線にカッターで長さ2cm程度の切込みを2本、0.5mm間隔で入れた。この2本の切込みによって区画される帯状の部分の短辺側の一端からオートグラフ(株式会社東洋精機製作所製の「STROGRAPH−M2」)を用いて180°方向にピール試験を実施し、出力された値を短辺の長さで除することによって絶縁層の層間密着力[N/mm]を測定した。この測定結果を表1に示す。なお、表1における「>0.5」とは、0.5N/mmの力によっては絶縁層を剥離できなかったことを示す。
<耐久性>
No.1〜No.5の絶縁電線を用いてコイルを形成し、240℃の環境下で500時間保持した後の絶縁層の割れの有無を目視にて測定した。この測定結果を表1に示す。
Figure 2017132892
<評価結果>
表1に記載しているように、No1〜No.4の絶縁電線は、ポリイミド前駆体及びPESを含む絶縁層用樹脂ワニスを用いて絶縁層が形成されているので、複数の絶縁層の層間密着力が高くなっていることが分かる。特に、No.2〜No.4の絶縁電線は、PESのPIに対する質量比(PES/PI)が20/80以上であるため、No.1の絶縁電線に対しても層間密着力が極めて高くなっていることが分かる。さらに、No.1〜No.3の絶縁電線は、PESのPIに対する質量比(PES/PI)が40/60未満とされることによって、層間密着力が高いことに加え、高温下における優れた耐久性を有していることが分かる。
本発明の樹脂ワニスによれば、積層された複数の絶縁層間の密着力を向上させることができる。また、本発明の絶縁電線によれば、複数の絶縁層間の密着力が高いため、耐加工性を向上させることができる。
1 導体
2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g 絶縁層
10 絶縁電線
50 島相

Claims (7)

  1. 芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホンを副成分樹脂とする樹脂ワニス。
  2. 上記ポリエーテルスルホンの上記ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドに対する質量比が10/90以上30/70以下である請求項1に記載の樹脂ワニス。
  3. 有機溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン又はこれらの組み合わせを含む請求項1又は請求項2に記載の樹脂ワニス。
  4. 導体、
    この導体の外周側に積層される第1絶縁層、及び
    この第1絶縁層の外周面に積層される第2絶縁層
    を有し、
    上記第1絶縁層が、ポリイミドを主成分樹脂とし、ポリエーテルスルホンを副成分樹脂とする絶縁電線。
  5. 上記ポリエーテルスルホンの上記ポリイミドに対する質量比が10/90以上30/70以下である請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 上記第1絶縁層が海島構造を有し、
    上記海島構造の海相の主成分が上記ポリイミドであり、
    上記海島構造の島相の主成分が上記ポリエーテルスルホンである請求項4又は請求項5に記載の絶縁電線。
  7. 上記島相の少なくとも1つが、上記第1絶縁層及び第2絶縁層の界面に直交する方向の径が上記第1絶縁層の平均厚みの80%以上である請求項6に記載の絶縁電線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023058334A1 (ja) * 2021-10-05 2023-04-13 三菱瓦斯化学株式会社 ポリイミド樹脂組成物及び成形体

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