JP2017095594A - 樹脂ワニス及び絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、絶縁層の誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制することができる樹脂ワニス及び絶縁電線を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物としては、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物としては、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂ワニス及び絶縁電線に関する。
モータ等のコイルに用いられる絶縁電線において、線状の導体を被覆する絶縁層には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度等が求められている。絶縁層を形成する樹脂としてはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等がある。
また適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁層表面で部分放電(コロナ放電)が発生しやすくなる。コロナ放電が発生すると、局部的な温度上昇やオゾン等の発生が引き起こされやすくなり、その結果、絶縁電線の絶縁層が劣化することで早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなる。高電圧で使用される絶縁電線には上記の理由によりコロナ放電開始電圧の向上が求められており、そのためには絶縁層の誘電率を低くすることが有効であることが知られている。
ポリイミドは絶縁電線の絶縁層として使用されている樹脂の中では特に耐熱性に優れている。また誘電率が低く機械特性にも優れるため、高電圧で使用される絶縁電線の絶縁層として用いられている。例えば特開2010−67408号公報には、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)等の芳香族エーテル構造を有する酸二無水物と、芳香族エーテル構造を有するジアミン及びフルオレン構造を有するジアミンとを反応させて得られたポリイミドが低誘電性であり、コロナ放電の発生を抑制できると記載されている。
上記のようにポリイミドは耐熱性、機械特性、電気特性等に優れる材料であるが、部分放電による絶縁破壊を抑制するためにさらなる低誘電率化が要求されている。また、ポリイミドは耐加工性が悪いという問題がある。絶縁電線をコイルとして使用する際には、コイルの占積率を上げるために絶縁電線を大きく変形させる加工を行う。例えば絶縁電線を捲線してコイルを形成した後にコイルをスロット中に挿入したり、あらかじめ変形させた絶縁電線同士を溶接してコイルを形成したりする。その際、絶縁層の耐加工性が悪いと、加工時に絶縁層が損傷を受けやすく、絶縁層の割れや剥がれが発生して電気特性が不良となるおそれがある。
ポリイミドの耐加工性が悪い原因の一つとして、絶縁層となるポリイミド皮膜の耐溶剤性が高いことが挙げられる。ポリイミド皮膜は、ポリイミド前駆体を溶剤に溶解させた樹脂ワニスを導体上に塗布し、加熱することによって得られる。この加熱工程においてポリイミド前駆体であるポリアミック酸がイミド化してポリイミドとなる。一度の塗布工程及び加熱工程では数μm程度の薄い皮膜しか形成できないため、通常、塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返して所定の厚みのポリイミド皮膜を形成する。そのため2回目以降の工程では前回の工程で形成されたポリイミド層の上に樹脂ワニスを塗布することとなる。この時、樹脂ワニスに含まれる溶剤が下層(前回の工程で形成されたポリイミド層)を若干溶解する場合は層間のなじみが良くなり層間の密着力が得られる。しかし、加熱によりイミド化したポリイミドは、ポリアミドイミド等の他の樹脂と比べると耐溶剤性が高すぎるため樹脂ワニスを塗布した際に下層がほとんど溶解しない。従って層間の密着力(接着力)が低下し、皮膜に大きな変形を施すような加工を行うと層間の剥離に起因して皮膜が破壊される。
積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高めるためにポリイミドのイミド基濃度を低くして溶剤への溶解性を高めることも考えられるが、その場合、ポリイミドの分子間力の低下に起因して、例えば絶縁層の加工後に使用するワニス類等の薬液がポリイミド層内に浸透し、ポリイミド層内で微細な亀裂(クレージング)が発生するおそれがある。
また、絶縁電線が適用される製品によっては、厳しい湿熱環境下で使用される場合があり、ポリイミドが水分により劣化し、クレージングが発生するおそれがある。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、絶縁層の誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制することができる樹脂ワニス及び絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。
本発明の樹脂ワニス及び絶縁電線によれば、絶縁層の誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制できる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。
本発明の一態様に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。
上記「イミド基濃度」とは、ポリイミド前駆体をイミド化した後のポリイミドにおいて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位と芳香族ジアミンに由来する構造単位とからなる繰り返しユニット中のイミド基の含有割合(質量基準)を指し、以下の式で算出される値である。
イミド基濃度(%)=(繰り返しユニット中のイミド基を構成する原子の合計原子量)/(繰り返しユニットを構成する原子の合計原子量)×100
イミド基濃度(%)=(繰り返しユニット中のイミド基を構成する原子の合計原子量)/(繰り返しユニットを構成する原子の合計原子量)×100
当該樹脂ワニスは、上記構成を有することにより誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制することができる。当該樹脂ワニスが上記構成を有することにより上記効果を奏する理由は定かではないが、以下のように推察される。即ち、イミド化後のイミド基濃度を20%以上35%以下とすることにより、ポリイミドの分子間力を低下させずに誘電率を低減でき、かつポリイミド層の溶剤への溶解性が高まり、その結果、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高めることができると考えられる。また、芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対してビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量を30モル%以上とすることにより、ポリイミドの分子間力が高まり、その結果、ポリイミド分子間への溶剤の浸透、及びポリイミド分子間の局所的な滑りが抑制され、クレージングの発生を抑制できると考えられる。
上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物としては、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、「BPDA」ともいう)が好ましい。上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物としてBPDAを含むことにより、層間密着力をより高め、クレージングの発生をより抑制できる。
上記芳香族ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、「ODA」ともいう)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」ともいう)及びこれらの組み合わせが好ましい。上記芳香族ジアミンとして上記特定のジアミンを含むことにより、層間密着力をより高め、クレージングの発生をより抑制できる。
上記芳香族ジアミンがODA及びBAPPであり、ODAのBAPPに対する含有量比(ODA/BAPP)としては、モル比で10/90以上が好ましい。上記芳香族ジアミンとして上記特定のジアミンを上記特定比率で含むことにより、層間密着力をさらに高め、クレージングの発生をさらに抑制できる。
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(以下、「PMDA」ともいう)をさらに含むことが好ましい。上記芳香族テトラカルボン酸二無水物として剛直な構造を有するPMDAをさらに含むことにより、イミド化後のポリイミドの耐熱性を向上できる。
本発明の他の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体及びこの導体の外周側に積層される絶縁層を有する絶縁電線であって、上記絶縁層が、請求項1に記載の樹脂ワニスの硬化物である。
当該絶縁電線は、上記本発明の一態様に係る樹脂ワニスを用いて絶縁層を形成するため、部分放電による絶縁破壊を抑制できる。また、当該絶縁電線は、上記本発明の一態様に係る樹脂ワニスと同様の理由により例えば積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高めることができるため、耐加工性を向上させることができる。また、当該絶縁電線は、上記本発明の一態様に係る樹脂ワニスと同様の理由によりクレージングの発生を抑制することができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
<樹脂ワニス>
まず、本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態について説明する。本実施形態に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスである。また、本実施形態に係る樹脂ワニスは、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。本実施形態に係る樹脂ワニスは、上記構成を有することにより誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制できる絶縁層を形成できる。以下、本実施形態の樹脂ワニスに含まれる成分について説明する。
まず、本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態について説明する。本実施形態に係る樹脂ワニスは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスである。また、本実施形態に係る樹脂ワニスは、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の樹脂ワニスである。本実施形態に係る樹脂ワニスは、上記構成を有することにより誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制できる絶縁層を形成できる。以下、本実施形態の樹脂ワニスに含まれる成分について説明する。
(芳香族テトラカルボン酸二無水物)
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、クレージングの発生を抑制する観点からビフェニル骨格を有する酸二無水物を含む。ビフェニル骨格を有する酸二無水物としては、BPDA、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’’,4’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのビフェニル骨格を有する酸二無水物は2種以上を併用しても良い。中でもビフェニル骨格を有する酸二無水物としてBPDAを含むことにより、層間密着力をより高め、クレージングの発生をより抑制できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、クレージングの発生を抑制する観点からビフェニル骨格を有する酸二無水物を含む。ビフェニル骨格を有する酸二無水物としては、BPDA、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’’,4’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのビフェニル骨格を有する酸二無水物は2種以上を併用しても良い。中でもビフェニル骨格を有する酸二無水物としてBPDAを含むことにより、層間密着力をより高め、クレージングの発生をより抑制できる。
また、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ビフェニル骨格を有する酸二無水物以外の酸二無水物を含んでもよい。このような酸二無水物としては、PMDA、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボンキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。これらの酸二無水物は2種以上を併用しても良い。この中でもPMDAは剛直な構造を有するため、イミド化後のポリイミドの耐熱性を向上できる点で好ましい。
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量の下限としては30モル%であり、45モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、55モル%がさらに好ましく、60モル%が特に好ましい。上記含有量を上記好ましい下限以上とすることにより、クレージングの発生をより抑制できる。なお、上記含有量の上限は特になく、100モル%であってもよい。
なお、本実施形態に係る樹脂ワニスには、上記効果を損ねない限り、ポリイミド前駆体を形成する成分として1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
(芳香族ジアミン)
芳香族ジアミンとしては、ODA、BAPP、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン(4−APBZ)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3−APB)、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン(1,5−BAPN)等が挙げられる。これらの芳香族ジアミンは2種以上を併用しても良い。
芳香族ジアミンとしては、ODA、BAPP、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン(4−APBZ)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3−APB)、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ナフタレン(1,5−BAPN)等が挙げられる。これらの芳香族ジアミンは2種以上を併用しても良い。
これらの芳香族ジアミンのうち、ODA、BAPP及びこれらの組み合わせが好ましい。上記芳香族ジアミンとして上記特定のジアミンを含むことにより、層間密着力をより高め、クレージングの発生をより抑制できる。中でも、上記芳香族ジアミンとしてODAを含むと、ポリイミドの靱性を向上させることができる点で特に好ましい。また、上記芳香族ジアミンとして分子量が高いBAPPを含むと、イミド基濃度を小さくできる点で特に好ましい。
上記芳香族ジアミンがODA及びBAPPの組み合わせである場合、ODAのBAPPに対する含有量比(モル比)の下限としては、10/90が好ましく、20/80がより好ましく、30/70がさらに好ましい。上記芳香族ジアミンとして上記特定のジアミンを上記特定比率で含むことにより、層間密着力をさらに高め、クレージングの発生をさらに抑制できる。
なお、本実施形態に係る樹脂ワニスは、上記効果を損ねない限り、ポリイミド前駆体を形成する成分としてヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンを含んでもよい。
(ポリイミド前駆体)
ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、上述した芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合重合によって得られる。この縮合重合反応は従来のポリイミド前駆体の合成と同様の条件にて行うことができる。例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶剤中で混合し、この混合液を加熱することにより芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが縮合重合してポリイミド前駆体を含む溶液が得られる。
ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、上述した芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合重合によって得られる。この縮合重合反応は従来のポリイミド前駆体の合成と同様の条件にて行うことができる。例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶剤中で混合し、この混合液を加熱することにより芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが縮合重合してポリイミド前駆体を含む溶液が得られる。
縮合重合させる際の反応条件は使用するモノマー等により適宜設定すればよく、例えば反応温度を40℃以上100℃以下とし、反応時間を3時間以上48時間以下とすればよい。
縮合重合させる際、芳香族テトラカルボン酸二無水物の合計量(当量)と芳香族ジアミンの合計量(当量)とを約1:1とすることが好ましい。これにより、縮合重合反応を良好に進行させることができる。
本実施形態に係る樹脂ワニスは有機溶剤をさらに含んでもよい。この有機溶剤としては、上述したポリイミド前駆体の縮合重合反応に使用した有機溶剤をそのまま使用してもよく、ポリイミド前駆体を得た後、別途添加してもよいが、作業性の観点から、ポリイミド前駆体の縮合重合反応に使用した有機溶剤をそのまま使用することが好ましい。
有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。なお、上記「非プロトン性極性有機溶剤」とは、プロトンを放出する基を持たない極性有機溶剤をいう。
有機溶剤の量は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族ジアミンを均一に分散させることができる量であれば特に制限されないが、例えばこれらのモノマー成分の合計量100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下の範囲となるように使用すればよい。有機溶剤の量を少なくすると樹脂ワニスの固形分量が多くなるため、絶縁電線の製造コスト低減に有効である。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量の下限としては、10,000が好ましく、30,000がより好ましい。また、上記重量平均分子量の上限としては、100,000が好ましく、80,000がより好ましい。上記重量平均分子量が上記下限未満であると、イミド化後のポリイミドの機械強度が不十分になるおそれがある。一方、上記重量平均分子量が上記上限を超えると、樹脂ワニスの塗布性が低下するおそれがある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を使用し、展開溶媒としてNMPを用い、単分散ポリスチレンを標準として測定した値である。
ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度の下限としては、20%であり、21%が好ましく、22%がより好ましく、23%がさらに好ましい。また、上記イミド基濃度の上限としては、35%であり、34%が好ましく、33%がより好ましく、32%がさらに好ましい。上記イミド基濃度を上記好ましい下限以上とすることにより、ポリイミドの耐熱性及び導体との密着力を保持したままクレージングの発生をより抑制できる。また、上記イミド基濃度が上記好ましい下限未満の場合、耐熱性及び導体との密着力が低下するおそれがある。一方、上記イミド基濃度を上記好ましい上限以下とすることにより、積層された複数のポリイミド層の層間密着力をより高めることができると共に、ポリイミドの誘電率をより低減できる。
上記イミド基濃度は、上述したように以下の式で算出される値である。
イミド基濃度(%)=(繰り返しユニット中のイミド基を構成する原子の合計原子量)/(繰り返しユニットを構成する原子の合計原子量)×100
イミド基濃度(%)=(繰り返しユニット中のイミド基を構成する原子の合計原子量)/(繰り返しユニットを構成する原子の合計原子量)×100
例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物としてBPDAを使用し、芳香族ジアミンとしてODAを使用した場合、BPDAに由来する第1構造単位aとODAに由来する第2構造単位bとからなる下記式(1)で示される繰り返しユニット(1)を有するポリイミドが得られる。この場合、繰り返しユニット(1)中のイミド基を構成する原子の合計原子量=70.03×2=140.06であり、繰り返しユニット(1)を構成する原子の合計原子量=458.44であるため、イミド基濃度(%)=140.06/458.44×100=30.6%となる。
なお、2つ以上の繰り返しユニットを有するポリイミドが得られる場合は、各々の繰り返しユニット中のイミド基濃度に繰り返しユニットの質量含有割合を乗じた値を算出し、それらの総和をイミド化後のイミド基濃度とする。例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物としてBPDAを使用し、芳香族ジアミンとしてODA及びBAPPをODA/BAPP=2/1のモル比で使用した場合、上記繰り返しユニット(1)と、下記式(2)で示される繰り返しユニット(2)とを有するポリイミドが得られる。この場合、繰り返しユニット(1)中のイミド基濃度は上述したように30.6%であり、上述と同様に求めた繰り返しユニット(2)中のイミド基濃度は20.9%である。また、繰り返しユニット(1)の質量含有割合=(458.44×2)/(458.44×2+668.71)=0.58である。また、繰り返しユニット(2)の質量含有割合=668.71/(458.44×2+668.71)=0.42である。よって、イミド化後のイミド基濃度(%)=30.6×0.58+20.9×0.42=26.5%となる。
ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度は、使用するモノマーの分子量が大きくなる程、相対的にイミド基の含有割合が小さくなるため低い値となる。よって、イミド基濃度は、モノマーの分子量、含有量比等を調整することにより制御できる。
本実施形態の樹脂ワニスは、上述したポリイミド前駆体以外に顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤、密着向上剤等の各種添加剤や反応性低分子、相溶化剤などを添加しても良い。中でも、密着向上剤としてメラミン化合物を添加すると、導体との密着力を向上できる。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。これらの他の成分を含む場合、樹脂ワニス中の他の成分の含有量はポリイミド前駆体100質量部に対して例えば5質量部以上30質量部以下である。
<絶縁電線の製造方法>
次に、本発明の絶縁電線の製造方法の好適な実施態様について説明する。本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、線状の導体及びこの導体の外周側に積層される絶縁層を有する絶縁電線の製造方法である。また、本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、上記導体の外周側に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスを塗布する塗布工程と、塗布された上記樹脂ワニスを加熱する加熱工程とを備え、上記樹脂ワニスが上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の絶縁電線の製造方法である。本実施態様の絶縁電線の製造方法によれば、後述する実施形態の絶縁電線を容易かつ確実に製造できる。以下、本実施形態の各工程について説明する。なお、上記樹脂ワニスとしては上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様のものが使用できるため、樹脂ワニスに関する説明は省略する。
次に、本発明の絶縁電線の製造方法の好適な実施態様について説明する。本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、線状の導体及びこの導体の外周側に積層される絶縁層を有する絶縁電線の製造方法である。また、本実施態様に係る絶縁電線の製造方法は、上記導体の外周側に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスを塗布する塗布工程と、塗布された上記樹脂ワニスを加熱する加熱工程とを備え、上記樹脂ワニスが上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下の絶縁電線の製造方法である。本実施態様の絶縁電線の製造方法によれば、後述する実施形態の絶縁電線を容易かつ確実に製造できる。以下、本実施形態の各工程について説明する。なお、上記樹脂ワニスとしては上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様のものが使用できるため、樹脂ワニスに関する説明は省略する。
(塗布工程)
本工程では、線状の導体の外周側に樹脂ワニスを塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば樹脂ワニスを貯留した樹脂ワニス槽と塗布ダイスとを備える塗布装置を用いた方法等が挙げられる。この塗布装置によれば、導体が樹脂ワニス槽内を挿通することで樹脂ワニスが導体外周面に付着し、その後塗布ダイスを通過することで樹脂ワニスが導体外周面に均一な厚みで塗布される。なお、本工程では、導体の外周面に直接樹脂ワニスを塗布してもよく、導体の外周面に予め密着改良層等の中間層を設けておき、その中間層の外周側に樹脂ワニスを塗布してもよい。
本工程では、線状の導体の外周側に樹脂ワニスを塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば樹脂ワニスを貯留した樹脂ワニス槽と塗布ダイスとを備える塗布装置を用いた方法等が挙げられる。この塗布装置によれば、導体が樹脂ワニス槽内を挿通することで樹脂ワニスが導体外周面に付着し、その後塗布ダイスを通過することで樹脂ワニスが導体外周面に均一な厚みで塗布される。なお、本工程では、導体の外周面に直接樹脂ワニスを塗布してもよく、導体の外周面に予め密着改良層等の中間層を設けておき、その中間層の外周側に樹脂ワニスを塗布してもよい。
導体の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミニウム線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体の平均断面積の下限としては、0.01mm2が好ましく、0.1mm2がより好ましい。一方、導体の平均断面積の上限としては、10mm2が好ましく、5mm2がより好ましい。導体の平均断面積が上記下限に満たないと、導体に対する絶縁層の体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、導体の平均断面積が上記上限を超えると、誘電率を十分に低下させるために絶縁層を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。なお、導体の断面形状は、特に限定されず、円形、矩形等の種々の形状を採用することができる。
(加熱工程)
本工程では、塗布された樹脂ワニスを加熱する。加熱方法は特に限定されないが、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる。加熱温度としては、通常350℃以上500℃以下である。加熱時間としては、通常5秒以上100秒以下である。
本工程では、塗布された樹脂ワニスを加熱する。加熱方法は特に限定されないが、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等、従来公知の方法により行うことができる。加熱温度としては、通常350℃以上500℃以下である。加熱時間としては、通常5秒以上100秒以下である。
上記塗布工程及び加熱工程は、複数回繰り返してもよい。これにより、絶縁層の厚膜化が容易となる。また、塗布工程で使用するポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下であるため、絶縁層である積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高めることができる。上記塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返すことにより、積層された複数のポリイミド層からなる絶縁層の平均厚みを例えば10μm以上200μm以下とすることができる。この場合、絶縁層を構成する各ポリイミド層の平均厚みは、例えば1μm以上5μm以下程度である。
上記絶縁層を設けた後、さらに他の絶縁層や表面潤滑層を設けても良い。他の絶縁層を構成する樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド等が使用できる。
<絶縁電線>
次に、本発明の絶縁電線の好適な実施態様について説明する。本実施態様の絶縁電線は、線状の導体及びこの導体の外周側に積層される絶縁層を有する絶縁電線である。また、本実施態様の絶縁電線は、上記絶縁層が、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する第1構造単位と、芳香族ジアミンに由来する第2構造単位とを有するポリイミドを主成分とし、上記ポリイミドが、上記第1構造単位としてビフェニル骨格を有する酸二無水物に由来する構造単位を有し、上記第1構造単位中の上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物に由来する構造単位の含有割合が30モル%以上であり、上記ポリイミドのイミド基濃度が20%以上35%以下の絶縁電線である。つまり、当該絶縁電線は、上記絶縁層が上述した本発明の樹脂ワニスの硬化物である。本実施態様の絶縁電線は、上記構成を有することにより部分放電による絶縁破壊を抑制しつつ耐加工性を向上させることができると共に、クレージングの発生を抑制することができる。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
次に、本発明の絶縁電線の好適な実施態様について説明する。本実施態様の絶縁電線は、線状の導体及びこの導体の外周側に積層される絶縁層を有する絶縁電線である。また、本実施態様の絶縁電線は、上記絶縁層が、芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する第1構造単位と、芳香族ジアミンに由来する第2構造単位とを有するポリイミドを主成分とし、上記ポリイミドが、上記第1構造単位としてビフェニル骨格を有する酸二無水物に由来する構造単位を有し、上記第1構造単位中の上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物に由来する構造単位の含有割合が30モル%以上であり、上記ポリイミドのイミド基濃度が20%以上35%以下の絶縁電線である。つまり、当該絶縁電線は、上記絶縁層が上述した本発明の樹脂ワニスの硬化物である。本実施態様の絶縁電線は、上記構成を有することにより部分放電による絶縁破壊を抑制しつつ耐加工性を向上させることができると共に、クレージングの発生を抑制することができる。なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
本実施態様の絶縁電線は、上述した本発明の樹脂ワニスの好適な実施形態と同様の樹脂ワニスを使用し、上述した本発明の絶縁電線の製造方法の好適な実施態様と同様の方法で製造できる。従って、上述した樹脂ワニス及び絶縁電線の製造方法と重複する説明は省略する。
上記ポリイミドを主成分とする絶縁層は、ポリイミド以外に顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤、密着向上剤等の各種添加剤などを含んでも良い。中でも、密着向上剤としてメラミン化合物を含む場合、導体との密着力を向上できる。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。これらの他の成分を添加する場合、絶縁層中の他の成分の含有量はポリイミド100質量部に対して例えば5質量部以上30質量部以下である。
上記第1構造単位中の上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物に由来する構造単位の含有割合は、通常、上述した樹脂ワニスにおける芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量と同じ値となる。
本実施態様の絶縁電線によれば、ビフェニル骨格を有する酸二無水物に由来する構造単位の含有割合を30モル%以上とすることにより、ポリイミドの分子間力が高まり、その結果、ポリイミド分子間への溶剤の浸透及びポリイミド分子間の局所的な滑りが抑制され、クレージングの発生を抑制できると考えられる。
図1は本発明の絶縁電線の一例を示す模式的断面図である。図1の絶縁電線10は、線状の導体3と、導体3の外周側に積層される絶縁層4とを有する。絶縁層4は、導体3の外周側に積層される第1ポリイミド層1と、第1ポリイミド層1の外周面に直接積層される第2ポリイミド層2とを有する。第1ポリイミド層1及び第2ポリイミド層2は、いずれも上述した本発明の好適な実施形態に係る樹脂ワニスにより形成されたものである。よって、絶縁電線10によれば、第1ポリイミド層1及び第2ポリイミド層2の層間密着力を高めることができる。また、絶縁層4の絶縁破壊を抑制しつつ耐加工性を向上させることができると共に、絶縁層4のクレージングの発生を抑制することができる。
[その他の実施形態]
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば絶縁電線の一例として示した図1では、絶縁層として二層構造のポリイミド積層体を設けた例を示したが、当該絶縁電線は、絶縁層として単層のポリイミド層を設けたものであってもよく、絶縁層として三層以上のポリイミド積層体を設けたものであってもよい。
また、図1では絶縁層がポリイミド層である例を示したが、当該絶縁電線は、ポリイミド層以外の絶縁層を設けてもよい。ポリイミド層以外の絶縁層は、導体とポリイミド層との間に設けても、ポリイミド層の外周側に設けてもよい。導体とポリイミド層との間、及びポリイミド層の外周側の双方にポリイミド層以外の絶縁層を設けてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<試験例1〜10の絶縁電線の作製>
(樹脂ワニスの調製)
表1に示す種類と量のジアミンをNMPに溶解させた後、表1に示す種類と量の酸二無水物を加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却して樹脂ワニスを得た。なお、表1において「−」は、該当する成分を用いていないことを意味する。
(樹脂ワニスの調製)
表1に示す種類と量のジアミンをNMPに溶解させた後、表1に示す種類と量の酸二無水物を加えて窒素雰囲気下室温で1時間撹拌した。その後60℃で20時間撹拌し反応を終え、室温まで冷却して樹脂ワニスを得た。なお、表1において「−」は、該当する成分を用いていないことを意味する。
(絶縁層の形成)
導体径(直径)1mmの導線の表面に常法によって樹脂ワニスを塗布及び加熱(焼付け)し、これを複数回繰り返して平均厚み40μmの絶縁層を形成し、試験例1〜10の絶縁電線を得た。
導体径(直径)1mmの導線の表面に常法によって樹脂ワニスを塗布及び加熱(焼付け)し、これを複数回繰り返して平均厚み40μmの絶縁層を形成し、試験例1〜10の絶縁電線を得た。
<試験例1〜10の評価>
得られた絶縁電線について以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
得られた絶縁電線について以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
(誘電率)
得られた各絶縁電線を温度100℃の恒温槽に入れ、1時間乾燥させた後、絶縁層表面の任意の3カ所に銀ペーストを塗布して測定用のサンプルを作製した。次いで、導線と銀ペーストとの間の静電容量をLCRメータ(エヌエフ回路設計ブロック社の「インピーダンスアナライザーZA5405」)で測定し、測定した静電容量の平均値及び絶縁層の平均厚みから誘電率を算出した。なお、測定は、温度30℃、相対湿度50%の条件で行った。
得られた各絶縁電線を温度100℃の恒温槽に入れ、1時間乾燥させた後、絶縁層表面の任意の3カ所に銀ペーストを塗布して測定用のサンプルを作製した。次いで、導線と銀ペーストとの間の静電容量をLCRメータ(エヌエフ回路設計ブロック社の「インピーダンスアナライザーZA5405」)で測定し、測定した静電容量の平均値及び絶縁層の平均厚みから誘電率を算出した。なお、測定は、温度30℃、相対湿度50%の条件で行った。
(層間密着力)
得られた各絶縁電線の長手方向に、長さ2cmかつ導線に到達しない深さの切れ込みを0.5mm間隔(周方向)で2本入れた。この2本の切れ込みによって区切られる帯状の部分の一端をピンセットを用いて剥離し、引張試験機(島津製作所社の「AG−IS」)を用いて絶縁層を形成するポリイミド層間の180°剥離試験を行い、ポリイミド層間の密着力を測定した。層間密着力が0.5N/mmを超える場合、すなわち、ポリイミド層間を剥離することができず、測定不可能である場合をA、層間密着力が0.5N/mm以下の場合をBとした。
得られた各絶縁電線の長手方向に、長さ2cmかつ導線に到達しない深さの切れ込みを0.5mm間隔(周方向)で2本入れた。この2本の切れ込みによって区切られる帯状の部分の一端をピンセットを用いて剥離し、引張試験機(島津製作所社の「AG−IS」)を用いて絶縁層を形成するポリイミド層間の180°剥離試験を行い、ポリイミド層間の密着力を測定した。層間密着力が0.5N/mmを超える場合、すなわち、ポリイミド層間を剥離することができず、測定不可能である場合をA、層間密着力が0.5N/mm以下の場合をBとした。
(クレージングの有無)
得られた各絶縁電線を長手方向に10%伸張させた後、絶縁層表面にエポキシ樹脂を塗布し、135℃で1時間加熱させた後、絶縁層を目視で観察し、エポキシ樹脂塗布後のクレージングの有無を確認した。また、別途、得られた各絶縁電線を温度95℃、相対湿度95%の高温高湿下で1500時間放置した後、絶縁層を目視で観察し、高温高湿下におけるクレージングの有無を確認した。
得られた各絶縁電線を長手方向に10%伸張させた後、絶縁層表面にエポキシ樹脂を塗布し、135℃で1時間加熱させた後、絶縁層を目視で観察し、エポキシ樹脂塗布後のクレージングの有無を確認した。また、別途、得られた各絶縁電線を温度95℃、相対湿度95%の高温高湿下で1500時間放置した後、絶縁層を目視で観察し、高温高湿下におけるクレージングの有無を確認した。
表1に示すように、酸二無水物の全量に対するBPDAの含有量が30モル%以上、かつイミド基濃度が20%以上35%以下の試験例1〜7は、いずれの評価項目についても良好であった。一方、BPDAを含まず、イミド基濃度が35%を超える試験例8は、試験例1〜7に比べ誘電率が高く、層間密着力が低い上、高温高湿下においてクレージングが発生した。また、イミド基濃度については20%以上35%以下であるが、BPDAを含まない試験例9は、エポキシ樹脂塗布後及び高温高湿下のいずれについてもクレージングが発生した。また、イミド基濃度については20%以上35%以下であるが、酸二無水物の全量に対するBPDAの含有量が30モル%未満の試験例10は、エポキシ樹脂塗布後及び高温高湿下のいずれについてもクレージングが発生した。これらの結果から、本発明によれば、誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制できることが分かる。
本発明の樹脂ワニス及び絶縁電線によれば、絶縁層の誘電率を低減でき、積層された複数のポリイミド層の層間密着力を高め、かつクレージングの発生を抑制できる。
1 第1ポリイミド層
2 第2ポリイミド層
3 導体
4 絶縁層
10 絶縁電線
2 第2ポリイミド層
3 導体
4 絶縁層
10 絶縁電線
Claims (6)
- 芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を含む樹脂ワニスであって、
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてビフェニル骨格を有する酸二無水物を含み、
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物の全量に対する上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物の含有量が30モル%以上であり、
上記ポリイミド前駆体のイミド化後のイミド基濃度が20%以上35%以下である樹脂ワニス。 - 上記ビフェニル骨格を有する酸二無水物が3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である請求項1に記載の樹脂ワニス。
- 上記芳香族ジアミンとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン又はこれらの組み合わせを含む請求項1又は請求項2に記載の樹脂ワニス。
- 上記芳香族ジアミンが4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンであり、
上記4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの上記2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンに対する含有量比が、モル比で10/90以上である請求項3に記載の樹脂ワニス。 - 上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物をさらに含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂ワニス。
- 線状の導体及びこの導体の外周側に積層される絶縁層を有する絶縁電線であって、
上記絶縁層が、請求項1に記載の樹脂ワニスの硬化物である絶縁電線。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015229159A JP2017095594A (ja) | 2015-11-24 | 2015-11-24 | 樹脂ワニス及び絶縁電線 |
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ID=58817768
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JP (1) | JP2017095594A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020016954A1 (ja) * | 2018-07-18 | 2020-01-23 | 住友電気工業株式会社 | 樹脂ワニス、絶縁電線及び絶縁電線の製造方法 |
WO2020203193A1 (ja) | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 古河電気工業株式会社 | 絶縁電線、コイル、及び電気・電子機器 |
JP2021111448A (ja) * | 2020-01-06 | 2021-08-02 | 日立金属株式会社 | エナメル線及び塗料 |
-
2015
- 2015-11-24 JP JP2015229159A patent/JP2017095594A/ja active Pending
Cited By (5)
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JPWO2020203193A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | ||
US11437163B2 (en) | 2019-03-29 | 2022-09-06 | Essex Furukawa Magnet Wire Japan Co., Ltd. | Insulated wire, coil, and electrical or electronic equipment |
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