以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、図面には、図面相互の関係を明確にする等の目的で、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を付すことがある。実施形態に係る水晶発振器は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいが、以下では、便宜的にD3軸方向の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。また、便宜上、導電層の表面に(すなわち断面でない面に)ハッチングを付すことがある。
(水晶発振器の概略構成)
図1は、本発明の実施形態に係る水晶発振器1(以下、「水晶」は省略)の概略構成を示す分解斜視図である。図2は、図1のII−II線における断面図である。
発振器1は、例えば、全体として、概略、薄型の直方体状とされる電子部品であり、その寸法は適宜に設定されてよい。例えば、比較的小さいものでは、長辺又は短辺の長さは1mm以上2mm以下であり、厚さは0.5mm以上0.8mm以下である。
発振器1は、例えば、水晶振動子3(以下、「水晶」は省略)と、振動子3に実装される集積回路素子5(以下、「IC5」)と、振動子3が実装される実装枠体7とを有している。また、図2に示すように、発振器1は、IC5を振動子3に実装するためのIC用バンプ9と、振動子3を実装枠体7に実装するための振動子用バンプ11と、IC5を封止するためのアンダーフィル12とを有している。
振動子3は、交流電圧が印加されるとその内部で固有振動を生じる。IC5は、発振回路(振動子を除く)を含んで構成されており、振動子3に電圧を印加して、振動子3内の固有振動を利用して発振信号を生成する。実装枠体7は、不図示の回路基板等に接続され、振動子3のパッケージを介して、回路基板とIC5との間において電気信号を仲介する。これらの具体的な構成は、例えば、以下のとおりである。
振動子3は、例えば、水晶振動素子13(以下、「水晶」は省略)と、振動素子13を収容する素子搭載部材15と、素子搭載部材15を密閉する蓋部材17とを有している。なお、素子搭載部材15及び蓋部材17によって、振動子3のパッケージである容器体19が構成されている。
振動素子13は、例えば、水晶片21(圧電片)と、水晶片21に電圧を印加するための1対の励振電極23と、振動素子13を素子搭載部材15に実装するための1対の引出電極25とを有している。
水晶片21は、例えば、概ね長方形の板状に形成されている。水晶片21は、例えば、ATカット水晶片からなる。1対の励振電極23は、例えば、水晶片21の両主面の中央側に層状に設けられている。1対の引出電極25は、例えば、1対の励振電極23から引き出されて水晶片21の長手方向の一端側部分に設けられている。1対の励振電極23及び1対の引出電極25は、例えば、振動素子13の両主面のいずれが実装側とされてもよいように、水晶片21の長手方向に延びる不図示の中心線に関して180°回転対称の形状に形成されている。
素子搭載部材15は、例えば、絶縁性の基体27と、基体27に設けられた各種の導体(例えば金属)とを有している。各種の導体は、例えば、振動素子13を素子搭載部材15に搭載するための1対の素子搭載パッド29、振動子3を実装枠体7に実装するための複数(本実施形態では4つ)の振動子端子31、IC5を振動子3に実装するための複数(本実施形態では6つ)のIC用パッド33(図2)、及びこれらの端子及びパッドを接続する接続導体(図1及び図2では不図示)である。
基体27は、例えば、セラミックによって一体的に形成されており、その形状は、振動素子13を収容する凹部27rを有した箱状である。基体27は、例えば、平板状の基板部27aと、基板部27aに重ねられた枠部27bとを有しており、これにより、凹部27rが構成されている。
1対の素子搭載パッド29は、例えば、凹部27rの底面(第1主面27aa:基板部27aの枠部27b側の主面)に層状に設けられている。複数の振動子端子31は、例えば、基板部27aの枠部27bとは反対側の主面(第2主面27ab)の4隅に層状に設けられている。不図示の接続導体は、例えば、基板部27aの主面に形成された層状導体、及び基板部27aを貫通するビア導体によって構成されている。
振動素子13は、1対の引出電極25と1対の素子搭載パッド29とが1対の素子用バンプ35(図2)によって接合されることによって、素子搭載部材15に片持ち梁のように固定されるとともに、素子搭載部材15に電気的に接続される。なお、素子用バンプ35は、例えば、熱硬化性樹脂に導電性フィラーを混ぜた導電性接着剤からなる。
蓋部材17は、例えば、金属からなる。蓋部材17は、素子搭載部材15の枠部27bと接合され、これにより、凹部27rは密閉される。凹部27r内は、例えば、真空とされ、又は、適宜なガス(例えば窒素)が封入される。
蓋部材17及び素子搭載部材15の接合は適宜な方法によりなされてよい。例えば、枠部27bの蓋部材17側の面には、金属からなる枠状の第1接合用パターン37が形成される。一方、蓋部材17の枠部27b側の面には、金属からなる枠状の第2接合用パターン39が形成される。そして、両者がシーム溶接によって接合されることにより、蓋部材17及び素子搭載部材15は互いに接合される。
IC5は、例えば、概略薄型直方体状に形成されており、一方の主面に複数(本実施形態では6つ)のIC端子41を有している。IC端子41と、素子搭載部材15に設けられたIC用パッド33とがIC用バンプ9によって接合されることにより、IC5は、素子搭載部材15に固定されるとともに、素子搭載部材15に電気的に接続される。すなわち、IC5は、基板部27aの第2主面27abに実装される。上述のように、振動素子13は、基板部27aの第1主面27aaに実装されるから、振動素子13及びIC5は、基板部27aを介して互いに対向する(平面透視において少なくとも一部が重なる)。
IC端子41の数及び役割は、発振器1に要求される機能等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、6つのIC端子41のうち、1つは基準電位をIC5に供給するためのものであり、1つは電源電圧(基準電位とは異なる電位)をIC5に供給するためのものであり、2つはIC5から振動素子13に電圧を印加するためのものであり、1つは発振信号の周波数を調整するための制御信号をIC5に入力するためのものであり、1つは発振信号をIC5から出力するためのものである。
既に述べたように、IC5は、発振回路を含んで構成されている。発振回路は、例えば、帰還型のものである。また、IC5は、温度センサ、及び、温度センサの検出した温度に基づいて発振信号の温度変化を補償する温度補償回路を含んでいてもよい。IC5は、パッケージングされたものであってもよいし、ベアチップであってもよい。
実装枠体7は、例えば、絶縁基板43と、絶縁基板43に設けられた各種の導体(例えば金属)と、この導体の短絡を抑制するためのソルダーレジスト44とを有している。各種の導体は、例えば、振動子3を実装枠体7に実装するための複数(本実施形態では4つ)の振動子用パッド45、実装枠体7(発振器1)を不図示の回路基板に実装するための複数(本実施形態では4つ)の外部端子47、及び複数の振動子用パッド45と複数の外部端子47とを接続する接続導体48(図2)である。
絶縁基板43は、例えば、ガラスエポキシ材よりなる。絶縁基板43(実装枠体7)には、当該絶縁基板43を上面から下面へ貫通するIC用開口43hが形成されている。絶縁基板43の外縁及びIC用開口43hの平面形状は適宜に設定されてよい。例えば、これらの平面形状は概略矩形である。平面視において、絶縁基板43の外縁がなす領域は、例えば、振動子3よりも広く、振動子3は絶縁基板43の外縁がなす領域に収まっている。ただし、絶縁基板43の外縁は、平面視において振動子3の外縁と概ね一致していてもよい。
複数の振動子用パッド45は、例えば、絶縁基板43の上面の4隅側に層状に設けられており、IC用開口43hを囲んでいる。別の観点では、複数の振動子用パッド45は、絶縁基板43の内縁と外縁との間に位置している。振動子用パッド45の外縁は、例えば、絶縁基板43の内縁及び外縁から離れている。振動子用パッド45の外縁の形状は、適宜に設定されてよく、例えば、矩形(図示の例)又は円形である。また、当該形状は、IC用開口43hの縁部に概ね沿って延びる外縁(切り欠き)を有する形状であってもよい。
複数の外部端子47は、例えば、絶縁基板43の下面の4隅に層状に設けられており、IC用開口43hを囲んでいる。別の観点では、複数の外部端子47は、絶縁基板43の内縁と外縁との間に位置している。複数の外部端子47の外縁は、例えば、絶縁基板43の内縁及び/又は外縁に一致する部分を有していてもよいし、一致する部分を有していなくてもよい。なお、外部端子47の面積を確保する観点からは、外部端子47は、絶縁基板43の内縁から外縁まで広がっていることが好ましい。外部端子47の外縁の形状は、適宜に設定されてよく、例えば、矩形(図示の例)若しくは円形である。また、当該形状は、IC用開口43hの縁部に概ね沿って延びる外縁(切り欠き)を有する形状であってもよい。
接続導体48は、例えば、振動子用パッド45の直下かつ外部端子47の直上において絶縁基板43を上面から下面へ貫通する孔部に充填された貫通導体によって構成されている。なお、接続導体48の、振動子用パッド45及び外部端子47に対する平面視における位置は適宜に設定されてよいが、例えば、振動子用パッド45及び外部端子47の概ね中央に位置している。接続導体48は、孔部に充填された貫通導体に代えて、孔部の内周面に形成された導体層、又はIC用開口43hの内周面に形成された導電層によって構成されてもよい。
ソルダーレジスト44は、一般には、顔料等を含んだ熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)からなる。ただし、本願においては、ソルダーレジストの用語は、広く絶縁性樹脂からなる皮膜を指すものとし、例えば、顔料を含んでいなくてもよいものとする。
ソルダーレジスト44は、例えば、複数の振動子用パッド45を露出させつつ、絶縁基板43の上面を覆っている。具体的には、例えば、ソルダーレジスト44は、振動子用パッド45をその全周に亘って途切れなく囲んでいる。すなわち、ソルダーレジスト44は、振動子用パッド45を露出させるパッド用開口44aを有している。なお、パッド用開口44aは、一部に途切れがあってもよい。また、ソルダーレジスト44は、例えば、振動子用パッド45に重なっておらず、さらには、振動子用パッド45の全周に亘って振動子用パッド45の外縁から離れている。ただし、ソルダーレジスト44は、振動子用パッド45の外周部を覆っていてもよい。
ソルダーレジスト44の厚みは、振動子用パッド45の厚みよりも厚くされている。例えば、ソルダーレジスト44の厚みは、振動子用パッド45の厚みの2倍以上10倍以下である。又は、振動子用パッド45の厚さが10μm以上40μm以下であるのに対して、ソルダーレジスト44の厚さは、これよりも5μm以上厚く、15μm以上100μm以下である。
図示の例では、絶縁基板43の下面及び側面、並びにIC用開口43hの内周面にはソルダーレジストは設けられていない。ただし、これらの面にもソルダーレジストが設けられてもよい。IC用開口43hの実質的な容積を大きくする観点からは、図示の例のように、IC用開口43hの内周面には、ソルダーレジストが設けられないことが好ましい。
振動子3は、複数の振動子端子31と振動子用パッド45とが振動子用バンプ11によって接合されることにより、実装枠体7に対して固定されるとともに、電気的に接続される(すなわち、実装される。)。振動子用パッド45は、IC用開口43hを囲むように配置されているから、振動子3は、IC用開口43hを上面側から覆うように実装枠体7に実装されることになる。なお、平面視において、振動子3の面積は、例えば、IC用開口43hの面積よりも大きく、IC用開口43hはその全体が振動子3に覆われる。
また、振動子3に実装されたIC5は、少なくとも一部がIC用開口43hに収容される。なお、図2では、IC5の天面(D3軸方向負側の面)は、絶縁基板43の下面よりも内部側(D3軸方向正側)に位置しているが、当該天面は、絶縁基板43の下面と概略面一とされてもよい。
IC用バンプ9及び振動子用バンプ11は、例えば、半田によって構成されている。半田は、鉛(Pb)を含むものであってもよいし、鉛フリー半田であってもよい。鉛フリー半田は、例えば、Pbの含有率(質量含有率)が0.1%以下である。鉛を含む半田は、例えば、鉛及び錫(Sn)を主成分とした合金である。鉛フリー半田は、例えば、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Cu系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn−Al系である。各主成分の含有率は適宜に設定されてよい。IC用バンプ9の材料と振動子用バンプ11の材料とは互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
IC用バンプ9において、IC用パッド33及びIC端子41に対する接着面積は適宜に設定されてよいが、例えば、IC用バンプ9は、IC用パッド33及びIC端子41の互いに対向する面の概ね全体に密着している。振動子3の基体27とIC5の本体との間には、IC用パッド33、IC用バンプ9及びIC端子41の厚みによって隙間が構成されている。
振動子用バンプ11において、振動子用パッド45及び振動子端子31に対する接着面積は適宜に設定されてよいが、例えば、振動子用バンプ11は、振動子用パッド45及び振動子端子31の互いに対向する面に概ね全体に密着している。振動子3の基体27と実装枠体7の絶縁基板43との間には、振動子端子31、振動子用バンプ11及び振動子用パッド45の厚みによって隙間が構成されている。
本実施形態では、上述のように、ソルダーレジスト44が振動子用パッド45よりも厚いことから、振動子用バンプ11は、ソルダーレジスト44のパッド用開口44a内に位置している。ただし、振動子用バンプ11の上面は、例えば、ソルダーレジスト44の上面と同等以上の高さにあり、振動子端子31に密着している。
なお、振動子用バンプ11は、絶縁基板43のうちの振動子用パッド45とパッド用開口44aの内周面との間から露出している領域に密着していてもよいし(図示の例)、密着していなくてもよい。また、振動子用バンプ11は、パッド用開口44aの内周面に密着していてもよいし、さらにはパッド用開口44a内に充填されていてもよいし(図示の例)、密着していなくてもよい。また、振動子用バンプ11は、パッド用開口44aからソルダーレジスト44の上面に溢れて、基板部27aとソルダーレジスト44との間に挟まれた部分を有していてもよい。
アンダーフィル12は、例えば、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)からなる。アンダーフィル12は、樹脂よりも熱膨張係数が低いフィラー(例えばSiO2からなる)を含んでいてもよい。
アンダーフィル12は、振動子3とIC5との間に介在してこれらに密着している。なお、アンダーフィル12は、振動子3とIC5との間に空間を生じることなく充填されていることが好ましい。なお、アンダーフィル12は、IC5の側面を適宜な高さまで覆うように設けられてもよいし、IC5を側面だけでなく天面も覆うように設けられてもよい。
また、アンダーフィル12は、IC5の周囲に広がった部分がIC用開口43hの内周面に到達しており、さらには、振動子3と実装枠体7との間に介在してこれらに密着している。アンダーフィル12は、例えば、IC用開口43hの全周に亘って振動子3と実装枠体7とに密着している。従って、IC用開口43hは、振動子3と実装枠体7との隙間を介しては外部へ通じていない。アンダーフィル12は、振動子3の外縁まで到達していなくてもよいし、振動子3の外縁まで到達していてもよいし(図示の例)、さらには、実装枠体7の外縁まで到達していてもよい。なお、アンダーフィル12によって振動子3と実装枠体7との接合を補強する観点からは、アンダーフィル12は、振動子3の外縁まで、振動子3及び実装枠体7に密着していることが好ましい。
素子搭載部材15(容器体19)においては、例えば、後述する接続導体によって、6つのIC用パッド33のうちの2つと、1対の素子搭載パッド29とが接続されている。これにより、IC用パッド33に実装されたIC5と、素子搭載パッド29に実装された振動素子13とが電気的に接続されている。ひいては、IC5により振動素子13に電圧を印加して発振信号を生成することが可能となっている。
また、素子搭載部材15(容器体19)においては、例えば、後述する接続導体によって、6つのIC用パッド33のうち残りの4つと、4つの振動子端子31とが接続されている。これにより、IC用パッド33に実装されたIC5と、振動子端子31が接合された振動子用パッド45を有する実装枠体7とが電気的に接続されている。ひいては、振動子用パッド45と接続されている4つの外部端子47に対する電気信号の入出力によって、IC5に対して電気信号を入出力することが可能となっている。
以上の説明から理解されるように、振動子3の容器体19、及び容器体19が実装される実装枠体7によって、振動素子13及びIC5をパッケージングするパッケージ49が構成されている。パッケージ49は、上面に振動素子13を収容する凹部27rを有し、下面にIC5を有する凹部(IC用開口43h)を有しており、全体として、いわゆるH型パッケージのような構成となっている。別の観点では、パッケージ49は、基板部27aの表裏に振動素子13及びIC5が実装される構成である。
図3(a)及び図3(b)は、上記のような素子搭載部材15における接続の一例を説明するための図であり、図3(a)は、基板部27aの上面図(第1主面27aaの平面図)であり、図3(b)は、基板部27aの底面図(第2主面27abの平面図)である。
1対の素子搭載パッド29は、例えば、第1主面27aaの一の短辺側に当該短辺に沿って配列されている。振動子端子31は、既述のように、第2主面27abの4隅に位置している。複数のIC用パッド33は、例えば、第2主面27abにおいて、複数の振動子端子31に囲まれた領域内に2列で配列されている。これらの端子又はパッドの平面形状及び面積は適宜に設定されてよい。図示の例では、いずれの平面形状も概ね矩形である。
図3(a)に示すように、1対の素子搭載パッド29からは1対の第1接続パターン51が延び、1対の第1ビア導体53に接続されている。図3(b)に示すように、1対の第1ビア導体53は、基板部27aを厚み方向に貫通しており、1対の第2接続パターン55に接続されている。1対の第2接続パターン55は、2つのIC用パッド33に接続されている。また、図3(b)に示すように、残りの4つのIC用パッド33は、4つの第3接続パターン57を介して4つの振動子端子31に接続されている。
第1接続パターン51、第2接続パターン55及び第3接続パターン57は、層状に形成されている。第1接続パターン51は、一部が枠部21bと重なっていてもよい。1対の第2接続パターン55の中途が幅広に形成されているのは、発振器1の製造過程において、振動素子13の特性を検査する検査装置のプローブを当接させるためである。第2ビア導体59は、基準電位が付与される振動子端子31と導体からなる蓋部材17とを接続するためのものであり、枠部21bをも厚み方向に貫通している。
1対の素子搭載パッド29及び第1接続パターン51は、例えば、互いに同一の材料からなり、また、互いに同一の厚さを有している。ただし、両者は、互いに異なる材料から構成されてもよいし、共通の金属層を有しつつ素子搭載パッド29のみが接合に適した他の金属層を上面に有してもよいし、厚みが互いに異なっていてもよい。
IC用パッド33、第2接続パターン55、第3接続パターン57及び振動子端子31は、例えば、互いに同一の材料からなり、また、互いに同一の厚さを有している。ただし、これらは、互いに異なる材料から構成されてもよいし、共通の金属層を有しつつ振動子端子31及び/又はIC用パッド33のみが接合に適した他の金属層を上面に有してもよいし、厚みが互いに異なっていてもよい。
第2接続パターン55及び第3接続パターン57は、絶縁層(ソルダーレジスト)によって覆われていてもよいし(ただし、検査装置のプローブを当接させる部分を除く)、覆われていなくてもよい。
(IC用バンプ及びその周辺部分)
図4(a)は図2の領域VIaを拡大して示す断面図である。
IC5は、素子本体61と、素子本体61の上面に位置している端子用電極63と、端子用電極63を露出させつつ素子本体61の上面を覆う絶縁層65と、端子用電極63の上面に重なっているUBM層67と、UBM層67の上に重なっている付加層69とを有している。端子用電極63、UBM層67及び付加層69は、IC端子41を構成している。
本実施形態は、付加層69が設けられていることを特徴の一つとしている。なお、IC5の構成は、付加層69を除いては、公知の構成と同様とされて構わない。付加層69及びその周辺の構造は、具体的には、以下のとおりである。
IC5は、既に述べたように、ベアチップであってもよいし、パッケージングされたものであってもよい。また、素子本体61は、IC5のうち、端子用電極63、絶縁層65、UBM層67及び付加層69を除く全体からなる。従って、素子本体61の具体的な構成、並びに端子用電極63及び絶縁層65の位置付けは、IC5の構成によって適宜なものとされてよい。
例えば、IC5が多層配線型でないベアチップの場合、素子本体61は、ドーピング等がなされたシリコン基板であり、端子用電極63は、シリコン基板上に形成された電極であり、絶縁層65は、シリコン基板の表面及びシリコン基板上の不図示の電極等を覆うパッシベーション膜である。
また、例えば、IC5が多層配線型のベアチップである場合、素子本体61は、シリコン基板と、シリコン基板上に交互に積層された導体層及び層間絶縁層とを有しており、素子本体61の上面は最も上層の層間絶縁層によって構成されている。端子用電極63は、UBM層67及び付加層69を除いては、配線層の最上層に形成された導体層であり、絶縁層65は、パッシベーション膜である。
また、例えば、IC5が多層でない再配線層を有するウェハレベルパッケージ型のものである場合、素子本体61は、ベアチップ(端子用電極63を除く)からなり、素子本体61の上面はパッシベーション膜によって構成されている。端子用電極63は、ベアチップの端子であり、絶縁層65は、再配線層の絶縁層である。
また、例えば、IC5が多層の再配線層を有するウェハレベルパッケージ型のものである場合、素子本体61は、ベアチップと、ベアチップ上に交互に積層された導体層及び層間絶縁層とを有しており、素子本体61の上面は、最も上層の層間絶縁層(絶縁層65は除く)によって構成されている。端子用電極63は、UBM層67及び付加層69を除いては、再配線層の最上層の導体層であり、絶縁層65は、再配線層の最も上層の絶縁層である。
また、例えば、IC5がベアチップとベアチップが実装される回路基板とを有してパッケージングされたものである場合、素子本体61は、ベアチップと、回路基板のうちIC端子41及び絶縁層65を除く部分とを有している。素子本体61の上面は、回路基板の絶縁基板の上面によって構成されている。端子用電極63は、その絶縁基板の上面に形成された導体層によって構成され、絶縁層65は、ソルダーレジストなどの回路基板の最上層の絶縁層によって構成されている。
上記の他、IC5は、当該IC5の基板部27aに対向する面にて端子用電極63の上面が露出しており、IC用バンプ9によって表面実装を行うことができるものである限り、種々の構成とされてよい。図示の例では、端子用電極63は、素子本体61の上面に位置する導体層であるが、端子用電極63は、素子本体61の上面側部分を貫通して素子本体61の上面にて露出するビア導体であってもよい。
端子用電極63の材料は、例えば、比較的導電性のよい材料であり、Al、Cuまたはこれらを主成分として含む合金である。合金は、例えば、Al−Cu系、Al−Si系又はAl−Si−Cu系である。端子用電極63は、複数の導体層から構成されていてもよい。例えば、Al等からなる主たる導体層と素子本体61との間に、これらの接合性を向上させるための導体層を有していたり、Al等からなる主たる導体層の表面を覆う酸化防止用の導体層を有していたりしてもよい。端子用電極63の厚みは適宜に設定されてよい。
絶縁層65の材料は、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよいし、両者を組み合わせたものであってもよい。無機材料としては、例えば、SiO2、SiON又はSiNxが挙げられる。有機材料としては、例えば、熱硬化性樹脂等の樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、フェノール系又はポリイミド系が挙げられる。無機材料及び有機材料を組み合わせたものとしては、例えば、樹脂に無機材料からなるフィラーを混ぜたものが挙げられる。絶縁層65の厚みは適宜に設定されてよく、端子用電極63の厚みに対して、薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。
絶縁層65は、端子用電極63を露出させるための電極用開口65aを有している。その形状及び面積は適宜に設定されてよい。なお、図示の例では、電極用開口65aは、平面視において端子用電極63よりも小さく、端子用電極63の外周部を覆っている。ただし、素子本体61の構成等にもよるが、絶縁層65は、端子用電極63の外周部を覆っていなくてもよい。また、図示の例では、絶縁層65が端子用電極63よりも厚く、かつ絶縁層65の上面が平坦になっているが、絶縁層65の上面には、端子用電極63の上面と素子本体61の上面との段差に起因する段差があってもよい。
UBM層67は、一般に、アンダーバンプメタル層又はアンダーバリアメタル層と言われる層であり、端子用電極63とIC用バンプ9との接合を好適なものとするためのものである。UBM層67は、後述するように、1層の導体層から構成されてもよいし、多層の導体層から構成されてもよいが、図4(a)では、図示の都合上、1種類のハッチングが付されている。UBM層67の厚みは、適宜に設定されてよく、端子用電極63及び/又は絶縁層65の厚みに対して、薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。また、図示の例では、UBM層67の上面には、絶縁層65の電極用開口65aに起因して段差が形成されているが、UBM層67の上面は平坦とされていてもよい。
(付加層)
付加層69は、主として、IC端子41を厚くするためのものである。すなわち、UBM層67に加えて付加層69が設けられることによって、IC端子41が嵩上げされる。その結果、例えば、振動素子13とIC5との距離を確保しやすくなる。
付加層69の厚みは、UBM層67の厚みに対して、薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。ただし、付加層69がUBM層67よりも厚ければ、IC端子41が厚くなる効果が高くなり、好ましい。例えば、付加層69の厚みは、UBM層67の厚みの1.1倍以上10倍以下であることが好ましく、より好ましくは、2倍以上5倍以下である。
付加層69の厚さの絶対値は、IC5の構成(ベアチップか否か)及びサイズ等によって異なる。IC5の構成がベアチップ又はウェハレベルパッケージであり、そのサイズが比較的小さい場合を例に取ると、例えば、UBM層67の厚さは、0.5μm以上10μm以下であり、一方、付加層69の厚さは、UBM層67の厚さよりもUBM層67の厚さ以上で厚く、1μm以上100μm以下である。
なお、付加層69は、IC用バンプ9との接合の際に、上面側の一部がIC用バンプ9に拡散し、及び/又は、金属間化合物(IMC。例えばNi−Sn)を形成する。その結果、付加層69の厚さは、接合の前後で変化する。また、その変化量は、接合時の条件(例えばリフローの温度及び時間)によって変動する。従って、本実施形態で例示した付加層69の厚みが実際の製品に適用されているか否かの判定結果は、接合前の厚み及び接合後の厚みのいずれを基準とするかで異なる。また、接合後を基準とする場合においては、判定結果は、金属間化合物を付加層69の一部として捉えるか否かで異なる。
本実施形態の説明においては、説明を簡単にする便宜上、基本的に、拡散及び金属間化合物の生成が厚みに及ぼす影響を無視して説明を進める。また、本実施形態に係る製品が実施されているか否かについては、例えば、接合後における金属間化合物を除いた付加層69の厚さが基準とされてよい。なお、この接合後における金属間化合物を除いた付加層69の厚みがUBM層67の厚みよりも厚ければ、接合前においても前者は後者よりも厚い。また、本実施形態に係る製造方法が実施されているか否かについては、例えば、接合前における付加層69の厚さが基準とされてよい。
付加層69は、1層の導体層から構成されてもよいし、多層の導体層から構成されてもよい。製造工程の簡素化の観点からは、1層の導体層から構成されることが好ましい。以下では、主として、付加層69が1層の導体層からなる場合を例にとって説明する。
付加層69は、UBM層67に代わってIC用バンプ9と接合されるものであるから、付加層69の材料は、一般にUBM層67に求められている機能の少なくとも一つを有していることが好ましい。例えば、付加層69の材料は、IC用バンプ9の材料(半田)との濡れ性が高い、及び/又はIC用バンプ9との相互拡散が適度なものであることが好ましい。
具体的には、付加層69の材料は、例えば、一般的なUBM層に利用されている材料とされてよい。そのような材料としては、例えば、Ni、Cu、Au、Pt若しくはPd又はこれらを主成分とする合金を挙げることができる。合金は、例えば、Ni−V系又はCr−Cu系である。特に、濡れ性及び拡散性を考慮すると、付加層69の材料は、Ni、Pt若しくはPd又はこれらを主成分とする合金が好ましく、さらに経済性も考慮すると、付加層69の材料は、Niが好ましい。
付加層69は、既に述べたように、2層以上の導体層から構成されてよい。この場合、付加層69は、一部の層のみが一般的なUBM層に利用されている材料とされてもよいし、2層以上の導体層の組み合わせ全体が2層以上の導体層からなる一般的なUBM層と同様の構成とされてもよい。後者の例としては、Ni/Au(先に記載した材料(Ni)が下。以下同様。)の2層又はNi/Pd/Auの3層を挙げることができる。
なお、例えば、付加層69がNi/Auの2層である場合、AuはIC用バンプ9に拡散し、NiはIC用バンプ9との界面に金属間化合物を生成する。このような場合において、製品については、金属間化合物を除いて付加層69の厚みを判断してよいことは既に述べたとおりである。すなわち、接合前において、付加層69をNi/Auから構成しても、製品においては、付加層69は実質的にNiからなる。
上記では、付加層69の材料について、一般的なUBM層の材料との対比で述べたが、付加層69の材料は、当該付加層69が現に重なっているUBM層67に含まれている導体層の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、同一である。例えば、UBM層67がNi層を含む場合(Ni層のみからなる場合を含む)において、付加層69はNi層を含む(Ni層のみからなる場合を含む)。
付加層69が、当該付加層69が現に重なっているUBM層67、又は一般的なUBM層に含まれる導体層の材料と同一の材料からなる導体層を含む場合において、当該同一の材料からなる導体層は、UBM層67よりも厚いことが好ましい。例えば、UBM層67及び付加層69のそれぞれがNi層を含む場合(Ni層のみからなる場合を含む)において、付加層69のNi層は、UBM層67よりも厚いことが好ましい。
上記の場合における、付加層69における、UBM層に含まれる導体層の材料と同一の材料からなる導体層の好ましい厚さは、例えば、UBM層67の厚みの1.1倍以上10倍以下、又は2倍以上5倍以下である。又は、前記の好ましい厚さは、UBM層の厚さが0.5μm以上10μm以下である場合において、UBM層の厚さよりもUBM層の厚さ以上で厚く、1μm以上100μm以下である。
付加層69の断面形状は適宜に設定されてよい。例えば、付加層69は、厚さが最大径(例えば平面形状が円形の場合は直径)よりも小さくてもよいし、厚さが最大径よりも大きくてもよい(柱状であってもよい。)。また、付加層69は、側面がIC用パッド33とIC端子41との対向方向(D3軸方向)に平行な形状であってもよいし、側面がD3軸方向に傾斜するテーパ状又は逆テーパ状であってもよい。
また、例えば、付加層69の上面は、全体に亘って平面状であってもよいし、外周部が面取りされた形状であってもよいし、全体に亘って曲面状であってもよい。好ましくは、図示の例のように、付加層69の上面は、少なくとも外周部に、外周縁に近づくほど下方に位置する傾斜面を有している。傾斜面は、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。
上記のように付加層69の上面が外周側ほど下方となる傾斜面を有する場合において、その面積及び傾斜角は適宜に設定されてよい。例えば、傾斜面は、D1D2平面(例えばUBM層67の上面を基準としてよい)に対する傾斜角が30°以上の環状領域を含み、当該環状領域の幅(内縁と外縁との距離)は、付加層69の上面の最大径の10%以上である。
図4(b)は、図1の領域IVbを拡大して示す平面図である。
付加層69の平面形状も適宜に設定されてよい。ただし、図示の例のように、付加層69の平面形状(上下面で形状が異なる場合は例えば上面の形状)は、円形であることが好ましい。なお、当該円形は、真円に近いことが好ましい。例えば、付加層69の平面視における外縁を内側及び外側から2つの同心円(真円)で挟んだときの両者の間隔は、小さい方の円の10%以下であることが好ましい。また、付加層69の平面形状は、UBM層67の平面形状と互いに概ね相似であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、図示の例では、UBM層67の平面形状が矩形であるのに対して、付加層69の平面形状は円形であり、両者は異なっている。
また、付加層69の平面視における大きさも適宜に設定されてよい。例えば、平面視において、付加層69は、UBM層67よりも面積が小さい。別の観点では、平面視において、付加層69は、UBM層67に収まっている。なお、付加層69及び/又はUBM層67において上下面で面積が異なっている場合は、例えば、上面を基準として上記のような関係となっているか否か判断してよい。上記のような場合において、平面視において、付加層69の外縁の一部は、UBM層67の外縁に重なっていてもよいし(図示の例)、重なっていなくてもよい(付加層69の外縁の全体がUBM層67の外縁の内側に位置していてもよい)。なお、平面視において、付加層69は、UBM層67と同等以上の広さを有していてもよい。
(IC用バンプの形状)
IC用バンプ9は、例えば、IC端子41のうち、付加層69の上面及び付加層69の側面(その全部又は上面側の一部)に接合されている。IC端子41が比較的厚くされていることから、IC端子41の側面はD3軸方向に比較的広い。IC用バンプ9は、このIC端子41の側面に対して比較的広い面積に亘って濡れ広がることにより、IC端子41側において裾野を広くでき、ひいては、IC端子41側において体積を確保することができる。図4では、そのような場合のIC用バンプ9の形状を例示している。
なお、図示の例とは異なり、IC用バンプ9は、付加層69の上面のみに接合されていてもよいし、付加層69だけでなく、UBM層67の側面にも接合されていてもよいし、さらに絶縁層65の上面に密着していてもよい。また、図示の例では、IC用バンプ9は、IC用パッド33の下面(D3軸方向負側の面)のみに接合されているが、IC用パッド33の側面にも接合されていてもよいし、さらに基板部27aに密着していてもよい。
(UBM層の例)
図5(a)〜図5(c)は、それぞれ、UBM層67の例を示す、図4(a)の領域Vaの拡大断面図である。
UBM層67は、既に述べたように、1層の導体層から構成されてもよいし、2層以上の導体層から構成されてもよい。図5(a)は、UBM層67が1層の導体層から構成されている場合を例示している。図5(b)は、UBM層67が2層の導体層71及び73から構成されている場合を例示している。図5(c)は、UBM層67が3層の導体層75、77及び79から構成されている場合を例示している。
図5(a)に示すような1層の導体層からなるUBM層67の材料としては、例えば、Ni、Cu若しくはPt又はこれらを主成分とする合金が挙げられる。合金は、例えば、Ni−V系又はCr−Cu系である。これらの材料は、例えば、IC用バンプ9(半田)との濡れ性及び/又は適度な拡散性の観点で有利である。特に、1層からなるUBM層67の材料は、Niであることが好ましい。
図5(b)に示すような2層の導体層71及び73からなるUBM層67の材料としては、例えば、Ni/Auを挙げることができる。Auは、例えば、付加層69の形成前におけるNiの酸化防止に寄与する。なお、一般的なUBM層においては、最上層のAuは、接合の際に半田に拡散するが、本実施形態においては、UBM層67の上面はIC用バンプ9と接合されないことから、拡散せずに残る。また、上記の他、2層の導体層71及び73の材料としては、例えば、Ti/Niを挙げることができる。Tiは、例えば、端子用電極63、素子本体61及び/又は絶縁層65に対する接合性を向上させることに寄与する。
Niに代えて、上記の1層の導体層からなるUBM層67の材料として挙げた材料(Cu,Pt等)を用いてもよい。Auに代えて、他の貴金属(例えばAg)を用いてもよい。Tiに代えて、Cr又はTiWを用いてもよい。上記とは別の思想に基づいて2層の導体層71及び73の材料が選択されてもよい。
図5(c)に示すような3層の導体層75、77及び79からなるUBM層67の材料としては、例えば、Ni/Pd/Auを挙げることができる。Pdは、例えば、NiのIC用バンプ9に対する拡散を抑制することに寄与する。また、上記の他、3層の導体層75、77及び79の材料としては、例えば、Ti/Ni/Auを挙げることができる。これらの材料の効果の例は既に述べたとおりである。
UBM層67が2層からなる場合と同様に、Ni、Au又はTiに代えて、適宜な金属を用いてよい。また、Pdに代えて他の拡散防止に寄与する材料を用いてもよい。上記とは別の思想に基づいて3層の導体層75、77及び79の材料が選択されてもよい。
既に述べたように、付加層69の材料乃至は積層構造は、UBM層67の材料乃至は積層構造と同様とされてよいから、上記の1層、2層及び3層の材料の例示は、そのまま付加層69の材料の例示として捉えられてよい。
上記では、3層まで説明したが、UBM層67及び付加層69それぞれは、4層以上の導体層で構成されていてもよい。
(パッド及び端子等の厚さの相対関係)
図5(d)は、パッド及び端子等の厚さの相対関係を説明するための断面図である。
IC端子41のうち絶縁層65上の厚みt4(UBM層67及び付加層69の合計の厚み)は、IC用パッド33の厚みt0よりも薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。なお、ここでいうIC用パッド33の厚みt0(及び後述する厚みt1)は、基板部27aの第2主面27abからの厚みであり、第2主面27abにおけるソルダーレジストの有無に影響されない。
厚みt4が厚みt0よりも厚い場合、厚みt4は適宜に設定されてよい。例えば、厚みt4は、厚みt0の1.1倍以上10倍以下であり、好ましくは、2倍以上5倍以下である。また、例えば、厚みt0が10μm以上40μm以下であるのに対して、厚みt4は、これによりも5μm以上厚く、15μm以上100μm以下である。
振動子端子31の厚みt1は、例えば、IC用パッド33の厚みt0と同等であり、上記の説明において、厚みt0の語は、厚みt1の語に置き換えられてよい。
また、厚みt4は、振動子用パッド45の厚みt3に対して、薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。なお、振動子用パッド45の厚みt3は、実装枠体7の絶縁基板43の主面からの厚みであり、ソルダーレジスト44の厚みに影響されない。厚みt4が厚みt3よりも厚い場合における具体例については、上記の厚みt4が厚みt0よりも厚い場合と同様でよく、厚みt4が厚みt0よりも厚い場合の説明において、厚みt0の語は、厚みt3の語に置き換えられてよい。
第2主面27abからIC5の天面(D3軸負側の面)までの厚みt11は、例えば、IC5の天面が実装枠体7の下面から突出しないように、第2主面27abから実装枠体7の下面までの厚み(符号省略)よりも小さい。さらに、厚みt11は、ソルダーレジスト44の上面から実装枠体7の下面までの厚みt12よりも小さいことが好ましい。なお、ここでいう実装枠体7の下面は、外部端子47を除いた、絶縁性の下面であり、例えば、絶縁基板43の下面である。絶縁基板43の下面がソルダーレジストによって覆われている場合においては、当該ソルダーレジストの外表面であってもよい。
(発振器の製造方法)
図6は、水晶発振器1の製造方法の手順を示すフローチャートである。
ステップST1では、振動子3が作製される。この作製方法は、公知の方法と同様とされてよい。例えば、水晶ウェハに対してエッチング及び導電材料の成膜等を行って振動素子13を作製する。セラミックグリーンシートに対して打ち抜き加工及び導電ペーストの塗布等を行ってこれを同時焼成し、素子搭載部材15を作製する。そして、ディスペンサによって素子用バンプ35を配置した素子搭載部材15に振動素子13を実装して、蓋部材17を素子搭載部材15に接合する。
ステップST2では、ステップST1と並行して、ICが作製される。ただし、ここでいうICは、IC5から付加層69を除いた構成である。この構成は、既に述べたように、公知のICの構成と同様でよく、ひいては、ステップST2の作製方法は、公知の方法と同様とされてよい。例えば、IC5がベアチップの場合、まず、シリコンウェハに対してドーピング及び薄膜形成等を行い、ウェハ状態のICを形成する。その後、そのウェハをダイシングして個片化する。薄膜形成においては、例えば、端子用電極63、絶縁層65及びUBM層67が形成される。
ステップST3では、引き続きステップST1と並行して、IC(付加層9を除く)が、当該ICを作製した製造者から、最終的に発振器1を作製する製造者へ流通される。流通における搬送手段は問わない。また、ステップST3は、流通に限らず、同一会社において、一の工場(建物)から他の工場(建物)へICを搬送するものであってもよい。
ステップST4では、引き続きステップST1と並行して、ICのUBM層67上に付加層69を形成してIC5を完成させる。付加層69の形成は、適宜な方法によりなされてよい。例えば、付加層69は、ディスペンサ又はボンダによって付加層69となる金属がUBM層67上に供給されることによって形成されてよい。この場合、付加層69の径及び厚さは、例えば、金属の供給量及び温度(粘度)等の条件を適宜に調整することによって調整される。また、供給された金属の上面は、固化する前の表面張力によって外縁側ほど下方に位置するような形状となる。
また、例えば、付加層69は、電解めっきによって形成されてもよい。具体的には、例えば、UBM層67及び絶縁層65を覆う下地層を形成し、その上に、UBM層67に重なる開口を有するレジスト層を形成し、電解めっきによってレジスト層の開口内に金属を析出させる。その後、レジスト層及び下地層(析出金属下の領域を除く)を除去する。これにより、下地層及び析出金属からなる付加層9が形成される。下地層及びレジスト層の形成順(積層順)は、逆も可能である。
ステップST5では、IC5を振動子3に実装する。すなわち、IC用バンプ9によってIC5のIC端子41と振動子3のIC用パッド33とを接合する。この実装方法は公知の方法と同様とされてよい。例えば、ディスペンサによって半田バンプをIC用パッド33に供給し、その上にIC5を配置して、IC5及び振動子3をリフロー炉に通す。なお、IC用バンプ9は、IC端子41の側面に接合可能であるから、この側面に接合される半田量を考慮して、従来よりも多くの半田が供給されてもよい。
ステップST6では、ステップST1〜ST5と並行して、実装枠体7が多数個取りされる母基板が作製される。この作製方法は、公知の方法と同様とされてよい。例えば、絶縁基板43が多数個取りされる母基板に対して、打ち抜き加工、刃具による切削、又はマスクを介したエッチングによって、IC用開口43h及び接続導体48用の孔部を形成する。また、例えば、電解めっきによって接続導体48を形成する。また、例えば、マスクを介した導電層の蒸着、又は全面に形成した導体層のマスクを介したエッチングによって、振動子用パッド45及び外部端子47を形成する。
ソルダーレジスト44は、例えば、振動子用パッド45の形成後、ソルダーレジスト44となる感光性樹脂を母基板に全面塗布し、その感光性樹脂を露光及び現像によってパターニングすることによって形成される。また、このようなフォトリソグラフィーに代えて、例えば、ソルダーレジスト44となる熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂をスクリーン印刷によってパターン印刷することによってソルダーレジスト44が形成されてもよい。
ステップST7では、引き続きステップST1〜ST5と並行して、振動子用バンプ11が振動子用パッド45上に配置される。配置方法は公知の方法と同様とされてよい。例えば、スクリーン印刷によって半田ペーストを振動子用パッド45上に配置する。その後、一旦、半田ペーストを加熱して溶融させ、冷却して固化させることにより、振動子用バンプ11の形状を整えてもよい。また、ディスペンサ等によって溶融した半田が振動子用バンプ11に供給されてもよい。
ステップST8では、IC5が実装された振動子3を、振動子用バンプ11が配置された母基板(実装枠体7)に実装する。実装方法は公知の方法と同様でよい。例えば、まず、IC5がIC用開口43hに収容されるように、複数の振動子3を母基板中の複数の実装枠体7上に配置する。その後、複数の振動子3が配置された母基板(実装枠体7)をリフロー炉に通して、振動子用バンプ11を溶融した後に固化させる。
ステップST9では、IC用開口43hを介して未硬化状態のアンダーフィル12をIC5と振動子3との間等に充填する。充填方法は公知の方法と同様でよい。例えば、ディスペンサによって未硬化状態のアンダーフィル12をIC用開口43hへ供給する。このとき、十分な量のアンダーフィル12を供給することによって、アンダーフィル12は振動子3と母基板(実装枠体7)との間にも充填される。
ステップST10では、複数の振動子3(及びIC5)が実装された母基板(複数の実装枠体7)を切断して個片化する。これにより、複数の発振器1が作製される。切断方法としては、レーザーを用いるもの、又はダイシングブレードを用いるものなど、適宜な方法が採用されてよい。
以上のとおり、本実施形態に係る発振器1は、基板部27aを有しているパッケージ49と、基板部27aの上面(第1主面27aa)に実装されている振動素子13と、基板部27aの下面(第2主面27ab)に実装されているIC5と、を有している。IC5は、基板部27aの下面に設けられているIC用パッド33に半田からなるIC用バンプ9を介して接合されているIC端子41を有している。IC端子41は、UBM層67と、UBM層67上に重なっており、上面がIC用バンプ9と接合されている付加層69と、を有している。付加層69はUBM層67よりも厚い。
従って、比較的厚い付加層69によってIC端子41を嵩上げすることができる。その結果、例えば、振動素子13とIC5との距離を確保しやすくなり、例えば、振動素子13とIC5とで生じる浮遊容量を抑えることができ、周波数特性の低下又はばらつきが低減される。また、IC端子41が厚くなると、例えば、IC用バンプ9とIC端子41(付加層9)の側面との接合面積を広くでき、ひいては、接続強度を向上させることができる。また、例えば、第2接続パターン55及び/又は第3接続パターン57がソルダーレジストで覆われていないような場合においては、IC用バンプ9がIC用パッド33からこれらのパターンへ濡れ広がってしまい、IC端子41上に半田量を確保できなくなるおそれがある。しかし、IC用バンプ9がIC端子41の側面に濡れ広がることによってIC用バンプ9の裾野が広くなり、ひいては、IC端子41上に半田量を確保しやすくなる。この点でも接合性を向上させることができる。
付加層69は、Ni層を含んでよく、付加層69のNi層がUBM層67よりも厚くてもよい。
この場合、半田に対する濡れ性がよく、半田に対する拡散性が適度であり、かつ半田と金属間化合物を形成する材料が厚くされる。その結果、接合が好適になされる。また、Niは、Pd及びPt等に比較して安価であり、発振器1のコスト増大が抑制される。
また、付加層69だけでなく、UBM層67もNi層を含んでいてよい。別の観点では、付加層69は、UBM層67に含まれる導体層の材料と同一の材料からなる導体層を含んでよく、この同一の材料からなる導体層がUBM層67よりも厚くてよい。
この場合、例えば、UBM層67と付加層69とで同一材料を含むから、両者の間の応力を緩和でき、ひいては、IC端子41における歪、剥離又はクラックを抑制できる。特に両者のNi層同士が直接に重なっている場合においては、両者間の剥離抑制が期待される。
また、付加層69の厚さは、UBM層67の厚さの2倍以上5倍以下とされてよい。
この場合、付加層69の厚さがUBM層67の厚さの2倍以上であることから、例えば、IC用バンプ9が付加層69の側面に接合され、UBM層67の側面には接合されていない状態においても、付加層69が設けられずにIC用バンプ9がUBM層67の側面全体に接合されている状態よりも、IC端子41の側面における接合面積を大きくできる。その結果、例えば、上述した接合性の向上の効果がより確実に奏される。また、例えば、IC用バンプ9との接合に関してUBM層67の材料の影響が小さく、又は無くなることから、付加層69の材料によって接合性を決定することも可能となる。また、例えば、付加層69の厚さがUBM層67の厚さの5倍以下であることから、振動素子13とIC5との距離を好適に確保しつつも、過剰にIC端子41が厚くされて発振器1が大型化するおそれが低減される。例えば、半田バンプの高さの誤差は数μm程度に制御可能であり、また、UBM層67の厚さは比較的薄いもので1μm弱であるから、付加層69の厚さがUBM層67の厚さの5倍程度であれば、IC用バンプ9の高さのばらつきによる、振動素子13とIC5との距離の縮小を概ね吸収できる。
また、付加層69の上面は、外周側ほど低くなる傾斜面を外周部に有していてよい。
この場合、溶融したIC用バンプ9が付加層69の上面から付加層69の側面に濡れ広がりやすくなる。その結果、接合面積の拡大及び/又はIC端子41上における半田量の確保の効果が奏され易くなる。すなわち、接合性向上の効果が奏され易くなる。
また、付加層69は、平面視においてUBM層67よりも面積が小さい。
この場合、例えば、付加層9が設けられない場合に比較して、IC端子41の先端が細くなることになるから、IC用バンプ9がIC端子41(付加層9)の上面から側面へ到達しやすくなる。その結果、例えば、上述した、IC用バンプ9が側面に濡れ広がることによる効果が奏され易くなる。
また、付加層69は、平面視において円形とされてよい。
この場合、例えば、付加層9においては、上面中央から側面への距離が均等になるから、IC用バンプ9が満遍なく付加層9の側面を濡らしやすい。その結果、例えば、上述した、IC用バンプ9が側面に濡れ広がることによる効果が好適に奏される。
また、本実施形態では、パッケージ49は、容器体19及び実装枠体7を有している。容器体19は、基板部27a、基板部27aの上面(第1主面27aa)に重なっており、振動素子13を囲む枠部27b、枠部27bの開口を塞ぐ蓋部材17、及び基板部27aの下面(第2主面27ab)に位置している振動子端子31を有している。実装枠体7は、基板部27aの下面に対向しており、IC5を囲む枠状の絶縁基板43、絶縁基板43に設けられて振動子端子31と対向している振動子用パッド45、及び振動子用パッド45を露出させつつ絶縁基板43の容器体19側を覆うソルダーレジスト44を有している。また、パッケージ49は、振動子端子31と振動子用パッド45とを接合している振動子用バンプ11を有している。ここで、ソルダーレジスト44は、振動子用パッド45よりも厚くされてよく、また、ソルダーレジスト44の上面から実装枠体7の下面までの厚みt12は、基板部27aの下面からIC5の天面(容器体19とは反対側の面)までの厚みt11よりも厚い。
この場合、例えば、振動子3を実装枠体7に実装するときに、振動子3及びIC5の荷重によって振動子用バンプ11が潰れると、ソルダーレジスト44の上面が第2主面27abに当接する。従って、例えば、振動子用バンプ11が潰れたとしても、ソルダーレジスト44と振動子用パッド45との厚みの差で、振動子用パッド45と振動子端子31との間に半田が確保される。また、例えば、厚みt12が厚みt11よりも大きいことから、付加層69によって厚みt11が厚くされ、かつ振動子用バンプ11が潰れても、IC5が実装枠体7の下面から突出してしまうおそれが低減される。別の観点では、IC5が実装枠体7の下面から突出することを防止するための、振動子用バンプ11の潰れを考慮した絶縁基板43の厚みの余裕量を小さくすることができるから、厚みt11が厚くされても、発振器1が大型化されることを抑制できる。
また、本実施形態に係る発振器1の製造方法は、個片化されているIC5のUBM層67上に、UBM層67よりも厚い導電性の付加層69を形成する工程(ステップST4)と、パッケージ49が有している基板部27aの上面(第1主面27aa)に振動素子13を実装する工程(ステップST1)と、基板部27aの下面(第2主面27ab)のIC用パッド33と付加層69とを半田からなるIC用バンプ9を介して接合することによって、IC5を基板部27aの下面に実装する工程(ステップST5)と、を有している。
従って、上述した種々の効果を奏する本実施形態に係る発振器1を作製できる。また、例えば、ウェハ状態で付加層69を形成するのではなく、個片化された状態で付加層69を形成することから、発振器1を最終的に作製する製造者においては、ICの製造者に対して付加層9を有するIC5を特注するのではなく、汎用のICを用いて付加層9を有するIC5を自ら実現することができる。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
圧電発振器は、水晶を用いるものに限定されず、例えば、セラミックを用いるものであってもよい。圧電発振器の用途乃至は機能は適宜に設定されてよい。例えば、圧電発振器は、クロック用発振器であってもよいし、電圧制御型発振器(例えばVCXO)であってもよいし、温度補償型発振器(例えばTCXO)であってもよいし、恒温槽付発振器(例えばOCXO)の恒温槽内の発振器であってもよい。外部端子、振動子用パッド、振動子端子、IC用パッド及びIC端子の数及びその配置は、圧電発振器に要求される機能に応じて適宜に設定されてよい。
圧電発振器のパッケージは、基板部の表裏に圧電振動素子及び集積回路素子が実装されるものであればよい。例えば、背景技術の欄で述べたような、断面H型に一体形成されたパッケージが用いられてもよい。また、圧電発振器に含まれる圧電振動子の具体的構成は、適宜に変更されてよい。例えば、圧電振動素子は、2本の振動腕を有する音叉型のものであってもよいし、矩形の圧電片の対角線上に1対の引出電極が形成されるものであってもよい。基板部と圧電振動素子を囲む枠部とは別個の材料から構成されていてもよい。
圧電発振器のパッケージが、実施形態に例示したように、実装枠体と、振動子用バンプによって実装枠体に実装された振動子の容器体とを含むものである場合において、実装枠体は、振動子(容器体)に比較して十分に広くされ、その上面に振動子と並んで他の電子素子(例えばサーミスタ)が実装されてもよい。また、実装枠体を覆うソルダーレジストは、設けられなくてもよいし、パッドの厚さ以下の厚さであってもよい。
アンダーフィルは設けられなくてもよい。また、アンダーフィルが設けられる場合において、アンダーフィルは、IC用開口(43h)から、振動子と実装枠体との間にまで広がっていなくてもよい。換言すれば、IC用開口と実装枠体の側面外部とは、振動子と実装枠体との隙間を介して連通されていてもよい。この場合、例えば、IC用開口から外部へ熱を逃がしやすい。
製造方法は適宜に変形されてよい。例えば、実施形態では、個片化されたICに対して付加層を形成する場合を例示したが、ウェハ状態のICに対して付加層を形成してもよい。ただし、ウェハ状態でIC端子を厚くするのであれば、付加層を設けるのではなく、UBM層を厚くすることによってIC端子を厚くすることができるから、UBM層の上に更にUBM層と同様の材料からなる付加層を形成する意義は低くなる。
また、例えば、ICは、振動子が実装枠体の母基板に実装された後に振動子に実装されてもよく、また、この場合、ICは、母基板の切断の前及び後のいずれにおいて振動子に実装されてもよい。また、例えば、振動子を母基板(実装枠体が多数個取りされる母基板とは別の母基板)から切り出して個片化する態様においては、その母基板に含まれる状態の振動子にICが実装されてもよい。また、振動子を母基板から切り出す場合においては、振動子の母基板と、実装枠体の母基板とをバンプによって貼り合わせて、その後に切断を行ってもよい。
本願発明は、圧電振動素子とICとの距離が圧電発振器の特性に影響を及ぼすことに着目してなされている。ただし、その着目の結果得られた本願発明は、付加層の形成が圧電発振器の特性に影響を及ぼすような態様のものに限定されない。別の観点からの種々の効果(例えば接合性の向上)が奏されるからである。