JP2017124609A - 液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び液体の供給方法 - Google Patents

液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び液体の供給方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液体吐出装置の液体供給において、供給流路と回収流路との間のそれぞれ流路について設定した抵抗に変動があっても液体吐出ヘッドに対する供給流路と回収流路の間の所定の差圧を生じさせることを可能とする。【解決手段】液体吐出ヘッドを用い、液体吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに対する液体の供給流路および液体吐出ヘッドからの液体の回収流路を有したユニットであって、供給流路における液体の圧力と回収流路における液体の圧力との間に差を生じさせて液体の供給および回収を行う液体供給ユニットと、供給流路および/または回収流路に設けられた流抵抗調整部と、を具える。【選択図】図2

Description

本発明は、液体吐出装置、液体吐出ヘッド及び液体の供給方法に関し、詳しくは、液体吐出ヘッドの流路に対して供給側と回収側との間に圧力差を生じさせて液体を供給する液体供給機構に関するものである。
特許文献1には、液体吐出ヘッドの吐出口に連通しエネルギー発生素子が設けられた液体流路に、液体の流れを生成することが記載されている。これにより、吐出口近傍における、例えば粘度が増大などした液体(インク)を排出し吐出特性が低下することを防いでいる。特許文献1では、液体吐出ヘッドにおける液体の供給流路および回収流路に異なる制御圧に設定された2種類の圧力調整タンクを用い、液体供給経路における、液体吐出ヘッドの上流側と下流側それぞれの圧力を一定に制御するようにしている。これにより、供給流路と回収流路の間の所定の差圧によって、液体吐出ヘッドの流路にインクの流れを生じさせている。
特開2014−141032号公報
ところで、ライン型ヘッドなどの長尺ヘッドでは、吐出口の数が多くなるため、ヘッドに対するインク供給量が増大する。このため、記録データなどに応じた吐出デューティーの変動によって生じる、流量変動や液体吐出ヘッド内での圧損差が大きくなる。そして、その結果、吐出口近傍の負圧が大きく変動して吐出される液滴の体積が変化し、画像の濃度むらといった不具合が生じる虞がある。
これに対し、特許文献1では、2つの圧力調整タンクの作用によって、液体吐出ヘッドに対する供給流路と回収流路の間に所定の差圧を生じさせることが可能である。しかしながら、供給流路と回収流路それぞれについて設定した抵抗に誤差があったり、経時的な誤差(以下では、これらの設定値からの誤差を「公差」という)が生じたりする場合には、上記所定の差圧を生じさせることができなくなる。
本発明は、供給流路と回収流路それぞれについて設定した抵抗に変動があっても液体吐出ヘッドに対する供給流路と回収流路の間の所定の差圧を生じさせることが可能な液体吐出装置及び液体の供給方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は、少なくとも一つの記録素子基板を備えた液体吐出ヘッドを用い、該液体吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置であって、前記記録素子基板に対する液体の供給流路および前記記録素子基板からの液体の回収流路を有した手段であって、前記供給流路における液体の圧力と前記回収流路における液体の圧力との間に差を生じさせて液体の供給および回収を行う差圧発生手段と、前記供給流路および/または前記回収流路に設けられた流抵抗調整手段と、を具えたことを特徴とする。
以上の構成によれば、液体吐出装置の液体供給において、供給流路と回収流路のそれぞれについて設定した抵抗に変動があっても液体吐出ヘッドに対する供給流路と回収流路の間の所定の差圧を生じさせることが可能となる。
本発明の液体を吐出する液体吐出装置の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。 一実施形態の記録装置に適用される循環経路の第1循環形態を示す模式図である。 一実施形態の記録装置に適用される循環経路の第2循環形態を示す模式図である。 (a)〜(f)は、第1循環形態と第2循環形態とにおける、液体吐出ヘッド3へのインクの流入量の違いを説明する図である。 (a)および(b)は、一実施形態に係る液体吐出ヘッドを示す斜視図である。 液体吐出ヘッドを構成する各部品またはユニットを示した分解斜視図である。 (a)〜(f)は、第1、第2および第3の各流路部材の表面と裏面を示した図である。 図7(a)の一部を示し、第1〜第3流路部材を接合して形成される流路部材内の流路を拡大して示した透視図である。 図8のIX−IXにおける断面を示した図である。 (a)および(b)は、1つの吐出モジュールを示した斜視図および分解斜視図である。 (a)、(b)および(c)は、記録素子基板の吐出口が形成される側の面の平面図、部分拡大図、および上記面の裏側の平面図である。 図11(a)におけるXII−XII線の断面を示す斜視図である。 隣り合う2つの吐出モジュールにおける、記録素子基板の隣接部を部分的に拡大して示した平面図である。 (a)および(b)は、一実施形態の他の例に係る液体吐出ヘッドを示した斜視図である。 一実施形態の他の例に係る液体吐出ヘッドを示した斜視分解図である。 (a)〜(e)は、一実施形態の他の例に係る液体吐出ヘッドを構成する各流路部材を示した図である。 一実施形態の他の例に係る液体吐出ヘッドにおける記録素子基板と流路部材との液体の接続関係を示した透視図である。 図17のXVIII−XVIII線における断面を示した図である。 (a)および(b)は、一実施形態の他の例に係る液体吐出ヘッドにおける吐出モジュールを示した斜視図および分解図である。 (a)は、記録素子基板の吐出口が配される面、(b)は記録素子基板の裏面側に設けられているカバープレートを除去した場合の記録素子基板の面、および(c)は、吐出口が配される面の裏面を示すそれぞれ模式図である。 一実施形態に係るインクジェット記録装置の第2形態を示した図である。 (a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る、図2に示す第1循環形態に用いて好適な負圧制御ユニットの詳細な構造を示す図である。 実施形態の負圧制御ユニットにおける、弁−開口部間の流抵抗と弁開度との関係を示す図である。 (a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る、図3に示す第2循環形態に用いて好適な負圧制御ユニットの詳細な構造を示す図である。 図2示した第1循環形態において用いるのに適した負圧制御ユニットを用いた循環経路を示す模式図である。 他の形態に係る負圧制御ユニットを用いた循環経路を示す模式図である。 他の形態に係る負圧制御ユニットを用いた循環経路を示す模式図である。
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。尚、インク等の液体を吐出する本発明の液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置に適用可能である。さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷や半導体基板作製などの用途としても用いることができる。
また、以下に述べる各実施形態は、本発明の適切な具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本発明の思想に沿うものであれば、本適用例および実施形態は、本明細書の適用例、実施形態、その他の具体的方法に限定されるものではない。
(第1形態のインクジェット記録装置)
図1は、本発明の液体を吐出する液体吐出装置、特にはインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置(以下、記録装置とも称す)1000の概略構成を示した図である。記録装置1000は、記録媒体2を搬送する搬送部1と、記録媒体2の搬送方向と略直交して配置されるライン型の液体吐出ヘッド3とを備え、複数の記録媒体2を連続もしくは間欠的に搬送しながら1パスで連続記録を行うライン型記録装置である。液体吐出ヘッド3は記録媒体2の幅に対応した長さを有するページワイド型の液体吐出ヘッドである。なお、記録媒体2は、カット紙に限らず、連続したロール媒体であってもよい。液体吐出ヘッド3は循環経路内の圧力(負圧)を制御する負圧制御ユニット230と、負圧制御ユニット230と流体連通した液体供給ユニット220と、液体供給ユニット220へのインクの供給および排出口となる液体接続部111と、筺体80とを備えている。詳細は後述するが、差圧発生手段としての負圧制御ユニット230によって、液体吐出ヘッド3に設けられる供給流路と回収流路との間に圧力差を生じさせることで圧力室の液体の循環を行う。本形態の液体吐出ヘッド3は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクをそれぞれ吐出する吐出口列を備えており、それによってフルカラー記録が可能である。液体吐出ヘッド3は、図2にて後述されるように、液体を液体吐出ヘッド3へ供給する供給路である液体供給機構、メインタンクおよびバッファタンク(後述する図2参照)が流体的に接続される。そして、4色のインクそれぞれに対応して4つの負圧制御ユニット230および液体供給ユニット220が設けられる。また、液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。液体吐出ヘッド3内における液体経路および電気信号経路については後述する。
記録装置1000は、インク等の液体を後述するタンクと液体吐出ヘッド3との間で循環させる形態のインクジェット記録装置である。本実施形態のインクジェット記録装置は、循環の形態(構成)として、2つの循環形態を構成することができる。すなわち、液体吐出ヘッド3の下流側で2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)を稼動することで循環させる第1循環形態と、上流側で2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)を稼動することで循環させる第2循環形態の2形態のいずれかを採用できる。以下、この循環の第1循環形態と第2循環形態とについて説明する。
<第1循環形態の説明>
図2は、本実施形態の記録装置1000に適用される循環経路の第1循環形態を示す模式図である。液体吐出ヘッド3は、第1循環ポンプ(高圧側)1001、第1循環ポンプ(低圧側)1002およびバッファタンク(液体収容タンク)1003等に流体的に接続されている。なお、図2では、説明を簡略化するため、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクの内の1色のインクが流動する経路のみを示しているが、実際には4色分の循環経路が、液体吐出ヘッド3および記録装置本体に設けられる。
第1循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給され、その後、第2循環ポンプ1004によって液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3の液体供給ユニット220に供給される。その後、液体供給ユニット220に接続された差圧発生手段としての負圧制御ユニット230で異なる2つの負圧(高圧、低圧)に調整されたインクは、高圧側と低圧側の2つの流路に分かれて循環する。液体吐出ヘッド3内のインクは、液体吐出ヘッド3の下流にある第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド内を循環し、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から排出されてバッファタンク1003に戻る。第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002は循環流を発生させるための供給手段としては必須ではなく、圧力損失を抑制するため等の補助的なものである。
サブタンクであるバッファタンク1003は、メインタンク1006と接続され、タンク内部と外部とを連通する不図示の大気連通口を有し、インク中の気泡を外部に排出することが可能である。バッファタンク1003とメインタンク1006との間には、補充ポンプ1005が設けられている。補充ポンプ1005は、インクを吐出しての記録や吸引回復等、液体吐出ヘッド3の吐出口からインクを吐出(排出)することによって消費されたインクをメインタンク1006からバッファタンク1005へ移送する。
2つの第1循環ポンプ1001、1002は、液体吐出ヘッド3の液体接続部111から液体を引き出してバッファタンク1003へ流す。第1循環ポンプとしては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプが好ましい。具体的にはチューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等が挙げられるが、例えば一般的な定流量弁やリリーフ弁をポンプ出口に配して一定流量を確保する形態であってもよい。液体吐出ヘッド3の駆動時には、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002を稼働することによって、それぞれ共通供給流路211、共通回収流路212内を所定流量のインクが流れる。このようにインクを流すことで、記録時の液体吐出ヘッド3の温度を最適の温度に維持している。液体吐出ヘッド3駆動時の所定流量は、液体吐出ヘッド3内の各記録素子基板10間の温度差が記録画質に影響しない程度に維持可能である流量以上に設定することが好ましい。もっとも、あまりに大きな流量に設定すると、液体吐出ユニット300内の流路の圧損の影響により、各記録素子基板10で負圧差が大きくなり画像の濃度ムラが生じてしまう。そのため、各記録素子基板10間の温度差と負圧差を考慮しながら流量を設定することが好ましい。
負圧制御ユニット230は、第2循環ポンプ1004と液体吐出ユニット300との間の経路に設けられている。この負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の差等によって循環系におけるインクの流量が変動した場合でも、負圧制御ユニット230よりも下流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力を予め設定した一定の圧力に維持するように動作する。負圧制御ユニット230を構成する、高圧側(H)と低圧側(L)の2つの圧力調整機構としては、負圧制御ユニット230よりも下流の圧力を、所望の設定圧を中心として一定の範囲以下の変動で制御できるものであれば、どのような機構を用いてもよい。一例としては所謂「減圧レギュレータ」と同様の機構を採用することができる。本実施形態における循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の上流側を加圧している。このようにすることにより、バッファタンク1003の液体吐出ヘッド3に対する水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの自由度を広げることができる。
第2循環ポンプ1004としては、液体吐出ヘッド3の駆動時に使用するインク循環流量の範囲内で、一定圧以上の揚程圧を有するものであればよく、ターボ型ポンプや容積型ポンプなどを使用できる。具体的には、ダイヤフラムポンプ等が適用可能である。また、第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対してある一定の水頭差をもって配置された水頭タンクでも適用可能である。
図2に示すように負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構H、Lを備えている。2つの負圧調整機構の内、相対的に高圧設定側(図2でHと記載)、および相対的に低圧側(図2でLと記載)は、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211、および共通回収流路212にそれぞれ接続されている。複数の記録素子基板10を支持する支持部材としての液体吐出ユニット300には、共通供給流路211、共通回収流路212、各記録素子基板と連通する個別流路215(個別供給流路213、個別回収流路214)が設けられている。共通供給流路211には圧力調整機構Hが、共通回収流路212には圧力調整機構Lが、それぞれ接続されることによって、2つの共通流路間に差圧を生じさせている。そして、個別流路215は、共通供給流路211および共通回収流路212とそれぞれ連通しているので、液体の一部が、共通供給流路211から記録素子基板10の内部流路を通過して共通回収流路212へと流れる流れ(図2の矢印)が発生する。なお、2つの負圧調整機構H、Lは、それぞれフィルタ221を介して液体接続部111からの経路と接続している。
また、共通供給流路211と負圧制御ユニット230の高圧側圧力調整機構(H)との間、および共通回収流路212と低圧側圧力調整機構(L)との間にはそれぞれ、供給側流抵抗調整機構222と回収側流抵抗調整機構223が設けられている。これらの流抵抗調整機構によって、詳細が後述されるように、共通供給流路211や共通回収流路212のインク流の抵抗(以下、流抵抗ともいう)に公差など設定値からの変化があった場合でも、その変化に対応して流抵抗調整機構を調整することによって、上記変化を補正することができる。これにより、共通供給流路と共通回収流路との間の差圧の設定値からのずれを抑制でき、例えば、吐出口に連通する流路のインク流れの流量のばらつきを低減することが可能となる。
このようにして、液体吐出ユニット300では、共通供給流路211および共通回収流路212内をそれぞれ通過するように液体を流しつつ、一部の液体が各記録素子基板10内を通過するような流れが発生する。このため、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211および共通回収流路212を流れるインクによって記録素子基板10の外部へ排出することができる。またこのような構成により、液体吐出ヘッド3による記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れを生じさせることができる。これによって、吐出口内で増粘したインクの粘度を低下させることで、インクの増粘を抑制することができる。また、増粘したインクやインク中の異物を共通回収流路212へと排出することができる。このため、本実施形態の液体吐出ヘッド3は、高速で高画質な記録が可能となる。
<第2循環形態の説明>
図3は、本実施形態の記録装置に適用される循環経路のうち、上述した第1循環形態とは異なる循環形態である第2循環形態を示す模式図である。前述の第1循環形態との主な相違点は、差圧発生手段としての負圧制御ユニット230を構成する2つの圧力調整機構が共に、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する点である。また、第1循環形態との相違点として、第2循環ポンプ1004が負圧制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用する点である。更に、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置され、負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている点も相違する点である。
第2循環形態では、図3に示されるように、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給される。その後インクは2つの流路に分けられ、液体吐出ヘッド3に設けられた負圧制御ユニット230の作用で高圧側と低圧側の2つの流路を介して循環する。高圧側と低圧側の2つの流路に分けられたインクは、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用によって、液体吐出ヘッド3の液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3に供給される。その後、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ユニット300内を循環したインクは、負圧制御ユニット230を経て、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から排出される。排出されたインクは、第2循環ポンプ1004によってバッファタンク1003に戻される。
第2循環形態の負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の変化によって生じる流量の変動があっても、負圧制御ユニット230の上流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力変動を予め設定された圧力を中心として一定範囲内に安定させる作用をする。本実施形態の循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の下流側を加圧している。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクであっても適用可能である。第2循環形態では上述した第1循環形態と同様に、負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構H、Lを備えている。2つの負圧調整機構H、Lの内、高圧設定側(図3でHと記載)、低圧設定側(図3でLと記載)はそれぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211および共通回収流路212に接続されている。2つの負圧調整機構により、共通供給流路211の圧力を共通回収流路212の圧力より相対的に高くすることで、共通供給流路211から個別流路213および各記録素子基板10の内部流路を介して共通回収流路212へと流れるインク流れを発生させている。
このような第2循環形態では、液体吐出ユニット300内には第1循環形態と同様のインク流れ状態が得られるが、第1循環形態の場合とは異なる2つの利点がある。1つ目は、第2循環形態では、負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されているので、負圧制御ユニット230から発生するゴミや異物が液体吐出ヘッド3へ流入する懸念が少ないことである。2つ目は、第2循環形態では、バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3へ供給する必要流量の最大値が、第1循環形態の場合よりも少なくて済むことである。その理由は次の通りである。
記録待機時に循環している場合の、共通供給流路211および共通回収流路212内の流量の合計を流量Aとする。流量Aの値は、例えば、記録待機中に液体吐出ヘッド3の温度調整にあたり、液体吐出ユニット300内の温度差を所望の範囲内にするために必要な最小限の流量として定義される。また、液体吐出ユニット300の総ての吐出口からインクを吐出する場合(全吐出時)の吐出流量を流量F(1吐出口当りの吐出量×単位時間当たりの吐出周波数×吐出口数)と定義する。
図4は、第1循環形態と第2循環形態とにおける、液体吐出ヘッド3へのインクの流入量の違いを説明する図である。図4(a)は、第1循環形態における待機時を示しており、図4(b)は、第1循環形態における全吐出時を示している。図4(c)から図4(f)は、第2循環流路の場合の流量を示しており、図4(c)、(d)が流量F<流量Aの場合で、図4(e)、(f)が流量F>流量Aの場合であり、それぞれ、待機時と全吐出時の流量を示している。
定量的な送液能力を有する第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている第1循環形態の場合(図4(a)、(b))、第1循環ポンプ1001及び第1循環ポンプ1002の合計設定流量は流量Aとなる(図4(a))。この流量Aによって、待機時の液体吐出ユニット300内の温度管理が可能となる。そして、液体吐出ヘッド3で全吐出が行われる場合には、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の合計設定流量は流量Aのままである。このとき、液体吐出ヘッド3で吐出によって生じる負圧が作用して、液体吐出ヘッド3へ供給される最大流量は、合計設定流量の流量Aに全吐出による消費分(流量F)が加算される。よって、液体吐出ヘッド3への供給量の最大値は、流量Fが流量Aに加算されるため流量A+流量Fとなる(図4(b))。
一方で、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態の場合(図4(c)〜(f))は、記録待機時に必要な液体吐出ヘッド3への供給量は、第1循環形態と同様に流量Aである。従って、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態では、流量Fよりも流量Aが多い場合(図4(c)、(d))には、全吐出時でも液体吐出ヘッド3への供給量は流量Aで十分である。その際、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、流量A−流量Fとなる(図4(d))。しかし、流量Aよりも流量Fが多い場合(図4(e)、(f))には、全吐出時には液体吐出ヘッド3への供給流量を流量Aとすると流量が足りなくなってしまう。そのため、流量Aよりも流量Fが多い場合には、液体吐出ヘッド3への供給量を流量Fとする必要がある。その際、全吐出が行われると、液体吐出ヘッド3では流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、ほとんど排出されない状態となる(図4(f))。なお、流量Aよりも流量Fが多い場合で、吐出は行うが全吐出ではない場合には、流量Fから吐出で消費された分が引かれた量が液体吐出ヘッド3から排出される。
このように、第2循環形態の場合、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の設定流量の合計値、即ち必要供給流量の最大値は、流量Aまたは流量Fの大きい方の値となる。このため、同一構成の液体吐出ユニット300を使用する限り、第2循環形態における必要供給量の最大値(流量Aまたは流量F)は、第1循環形態における必要供給流量の最大値(流量A+流量F)よりも小さくなる。
そのため第2循環形態の場合、適用可能な循環ポンプの自由度が高まり、例えば構成の簡便な低コストの循環ポンプを使用したり、本体側経路に設置される冷却器(不図示)の負荷を低減したりすることができ、記録装置のコストを低減できるという利点がある。この利点は、流量Aまたは流量Fの値が比較的大きくなるラインヘッドであるほど大きくなり、ラインヘッドの中でも長手方向の長さが長いラインヘッドほど有益である。
しかしながら一方で、第1循環形態の方が、第2循環形態に対して有利になる点もある。すなわち第2循環形態では、記録待機時に液体吐出ユニット300内を流れる流量が最大であるため、単位面積当たりの吐出量が少ない画像(以下、低Duty画像ともいう)であるほど、各吐出口に高い負圧が印加された状態となる。このため、流路幅が狭く高い負圧である場合、ムラの見えやすい低Duty画像で吐出口に高い負圧が印加されるため、インクの主滴に伴って吐出される所謂サテライト滴が多く発生して記録品位が低下する虞がある。一方、第1循環形態の場合、高い負圧が吐出口に印加されるのは単位面積当たりの吐出量が多い画像(以下、高Duty画像ともいう)形成時であるため、仮にサテライト滴が発生しても視認されにくく、画像への影響は小さいという利点がある。これら2つの循環形態の選択は、液体吐出ヘッドおよび記録装置本体の仕様(吐出流量F、最小循環流量A、およびヘッド内流路抵抗)に照らして好ましい選択を採ることができる。
図3に示すように、第2循環形態においても、第1循環形態(図2)と同様、共通供給流路211と負圧制御ユニット230の高圧側圧力調整機構(H)との間、および共通回収流路212と低圧側圧力調整機構(L)との間にはそれぞれ、供給側流抵抗調整機構222と回収側流抵抗調整機構223が設けられている。これら流抵抗調整機構によって、第1循環形態にて上述したのと同様に、共通供給流路と共通回収流路との間の差圧の設定値とのずれを抑制することができる。
<液体吐出ヘッド構成の説明>
第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド3の構成について説明する。図5(a)および(b)は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド3を示した斜視図である。液体吐出ヘッド3は、1つの記録素子基板10でシアンC/マゼンタM/イエローY/ブラックKの4色のインクを吐出可能な記録素子基板10を直線上に15個配列(インラインに配置)されるライン型の液体吐出ヘッドである。図5(a)に示すように、液体吐出ヘッド3は、各記録素子基板10と、フレキシブル配線基板40および電気配線基板90を介して電気的に接続された信号入力端子91と電力供給端子92を備える。信号入力端子91および電力供給端子92は、記録装置1000の制御部と電気的に接続され、それぞれ吐出駆動信号および吐出に必要な電力を記録素子基板10に供給する。電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号出力端子91および電力供給端子92の数を記録素子基板10の数に比べて少なくすることができる。これにより、記録装置1000に対して液体吐出ヘッド3を組み付けるとき、または液体吐出ヘッドの交換時に取り外しが必要な電気接続部数が少なくて済む。図5(b)に示すように、液体吐出ヘッド3の両端部に設けられた液体接続部111は、図2および図3にて上述した、記録装置1000の液体供給系と接続される。これによりシアンC/マゼンタM/イエローY/ブラックK4色のインクが記録装置1000の供給系から液体吐出ヘッド3に供給され、また液体吐出ヘッド3内を通ったインクが記録装置1000の供給系へ回収されるようになっている。このように各色のインクは、記録装置1000の経路と液体吐出ヘッド3の経路を介して循環可能である。
図6は、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットを示した分解斜視図である。液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220および電気配線基板90が筺体80に取り付けられている。液体供給ユニット220には液体接続部111(図3参照)が設けられるとともに、液体供給ユニット220の内部には、供給されるインク中の異物を取り除くため、液体接続部111の各開口と連通する各色別のフィルタ221(図2、図3参照)が設けられている。2つの液体供給ユニット220は、それぞれに2色分ずつのフィルタ221が設けられている。フィルタ221を通過した液体は、それぞれの色に対応して液体供給ユニット220上に配置された負圧制御ユニット230へ供給される。負圧制御ユニット230は、各色別の圧力調整弁からなるユニットであり、それぞれの内部に設けられる弁やバネ部材などの働きで液体の流量の変動に伴って生じる記録装置1000の供給系内(液体吐出ヘッド3の上流側の供給系)の圧損変化を大幅に減衰させる。これによって負圧制御ユニット230は、圧力制御ユニットよりも下流側(液体吐出ユニット300側)の負圧変化をある一定範囲内で安定化させることが可能である。各色の負圧制御ユニット230内には、図2で記述したように各色2つの圧力調整弁が内蔵されている。2つの圧力調整弁は、それぞれ異なる制御圧力に設定され、高圧側が液体吐出ユニット300内の共通供給流路211(図2参照)、低圧側が共通回収流路212(図2参照)と液体供給ユニット220を介して連通している。
筐体80は、液体吐出ユニット支持部81および電気配線基板支持部82とから構成され、液体吐出ユニット300および電気配線基板90を支持するとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を確保している。電気配線基板支持部82は、電気配線基板90を支持するためのものであり、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めによって固定されている。液体吐出ユニット支持部81は、液体吐出ユニット300の反りや変形を矯正して、複数の記録素子基板10の相対位置精度を確保する役割を有し、それにより記録物におけるスジやムラを抑制する。そのため液体吐出ユニット支持部81は、十分な剛性を有することが好ましく、材質としてはSUSやアルミなどの金属材料、もしくはアルミナなどのセラミックが好適である。液体吐出ユニット支持部81には、ジョイントゴム100が挿入される開口83、84が設けられている。液体供給ユニット220から供給される液体は、ジョイントゴムを介して液体吐出ユニット300を構成する第3流路部材70へと導かれる。
液体吐出ユニット300は、複数の吐出モジュール200、流路部材210からなり、液体吐出ユニット300の記録媒体側の面にはカバー部材130が取り付けられる。ここで、カバー部材130は、図6に示したように長尺の開口131が設けられた額縁状の表面を持つ部材であり、開口131からは吐出モジュール200に含まれる記録素子基板10および封止材部110(後述する図10参照)が露出している。開口131の周囲の枠部は、記録待機時に液体吐出ヘッド3をキャップするキャップ部材の当接面としての機能を有する。このため、開口131の周囲に沿って接着剤、封止材、充填材等を塗布し、液体吐出ユニット300の吐出口面上の凹凸や隙間を埋めることで、キャップ時に閉空間が形成されるようにすることが好ましい。
次に、液体吐出ユニット300に含まれる流路部材210の構成について説明する。図6に示したように流路部材210は、第1流路部材50、第2流路部材60および第3流路部材70を積層したものであり、液体供給ユニット220から供給された液体を各吐出モジュール200へと分配する。また、流路部材210は、吐出モジュール200から環流する液体を液体供給ユニット220へと戻すための流路部材である。流路部材210は、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めで固定されており、それにより流路部材210の反りや変形が抑制されている。
図7(a)〜(f)は、第1〜第3流路部材の各流路部材の表面と裏面を示した図である。図7(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される側の面を示し、図7(f)は、第3流路部材70の、液体吐出ユニット支持部81と当接する側の面を示す。また、第1流路部材50と第2流路部材60とは、夫々の流路部材の当接面を示す図7(b)と図7(c)が対向するように接合し、第2流路部材と第3流路部材とは、夫々の流路部材の当接面を示す図7(d)と図7(e)が対向するように接合する。第2流路部材60と第3流路部材70を接合することで、各流路部材に形成される共通流路溝62と71とから、流路部材の長手方向に延在する8本の共通流路(211a、211b、211c、211d、212a、212b、212c、212d)が形成される。これにより色毎に共通供給流路211と共通回収流路212のセットが流路部材210内に形成される。共通供給流路211から液体吐出ヘッド3にインクが供給されて、液体吐出ヘッド3に供給されたインクは共通回収流路212によって回収される。第3流路部材70の連通口72(図7(f)参照)は、ジョイントゴム100の各穴と連通しており、液体供給ユニット220(図6参照)と流体的に流通している。第2流路部材60の共通流路溝62の底面には、連通口61(共通供給流路211と連通する連通口61−1、共通回収流路212と連通する連通口61−2)が複数形成されており、第1流路部材50の個別流路溝52の一端部と連通している。第1流路部材50の個別流路溝52の他端部には連通口51が形成されており、連通口51を介して複数の吐出モジュール200と流体的に連通している。この個別流路溝52により流路部材の中央側へ流路を集約することが可能となる。
第1〜第3流路部材は、液体に対して耐腐食性を有するとともに、線膨張率の低い材質からなることが好ましい。材質としては例えば、アルミナや、LCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニルサルファイド)やPSF(ポリサルフォン)を母材としてシリカ微粒子やファイバーなどの無機フィラーを添加した複合材料(樹脂材料)を好適に用いることができる。流路部材210の形成方法としては、3つの流路部材を積層させて互いに接着してもよいし、材質として樹脂複合樹脂材料を選択した場合には、溶着による接合方法を用いてもよい。
図8は、図7(a)のα部を示しており、第1〜第3流路部材を接合して形成される流路部材210内の流路を第1の流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される面側から一部を拡大して示した透視図である。共通供給流路211と共通回収流路212とは、両端部の流路からそれぞれ交互に共通供給流路211と共通回収流路212とが配置されている。ここで、流路部材210内の各流路の接続関係について説明する。
流路部材210には、色毎に液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる共通供給流路211(211a、211b、211c、211d)および共通回収流路212(212a、212b、212c、212d)が設けられている。各色の共通供給流路211には、個別流路溝52によって形成される複数の個別供給流路(213a、213b、213c、213d)が連通口61を介して接続されている。また、各色の共通回収流路212には、個別流路溝52によって形成される複数の個別回収流路(214a、214b、214c、214d)が連通口61を介して接続されている。このような流路構成により各共通供給流路211から個別供給流路213を介して、流路部材の中央部に位置する記録素子基板10にインクを集約することができる。また、記録素子基板10から個別回収流路214を介して、各共通回収流路212にインクを回収することができる。
図9は、図8のIX−IXにおける断面を示した図である。それぞれの個別回収流路(214a、214c)は連通口51を介して、吐出モジュール200と連通している。図9では個別回収流路(214a、214c)のみ図示しているが、別の断面においては図8に示すように個別供給流路213と吐出モジュール200とが連通している。各吐出モジュール200に含まれる支持部材30および記録素子基板10には、第1流路部材50からのインクを記録素子基板10に設けられる記録素子15に供給するための流路が形成されている。更に、支持部材30および記録素子基板10には、記録素子15に供給した液体の1部または全部を第1流路部材50に回収(環流)するための流路が形成されている。
ここで、各色の共通供給流路211は、対応する色の負圧制御ユニット230(高圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されており、また共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されている。この負圧制御ユニット230により、共通供給流路211と共通回収流路212間に差圧(圧力差)を生じさせている。このため、図8および図9に示したように、各流路を接続した本実施形態の液体吐出ヘッド内では、インク色ごとに共通供給流路211〜個別供給流路213a〜記録素子基板10〜個別回収流路213b〜共通回収流路212へと順に流れるインク流れが発生する。
<吐出モジュールの説明>
図10(a)は、1つの吐出モジュール200を示した斜視図であり、図10(b)は、その分解図である。吐出モジュール200の製造方法としては、まず記録素子基板10およびフレキシブル配線基板40を、予め液体連通口31が設けられた支持部材30上に接着する。その後、記録素子基板10上の端子16と、フレキシブル配線基板40上の端子41とをワイヤーボンディングによって電気接続し、その後にワイヤーボンディング部(電気接続部)を封止材110で覆って封止する。フレキシブル配線基板40の記録素子基板10と反対側の端子42は、電気配線基板90の接続端子93(図6参照)と電気接続される。支持部材30は、記録素子基板10を支持する支持体であるとともに、記録素子基板10と流路部材210とを流体的に連通させる流路部材であるため、平面度が高く、また十分に高い信頼性をもって記録素子基板と接合できるものが好ましい。材質としては例えばアルミナや樹脂材料が好ましい。
<記録素子基板の構造の説明>
図11(a)は記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図を示し、図11(b)は、図11(a)のAで示した部分の拡大図を示し、図11(c)は、図11(a)の裏面の平面図を示す。ここで、本実施形態における記録素子基板10の構成について説明する。図11(a)に示すように、記録素子基板10の吐出口形成部材12に、各インク色に対応する4列の吐出口列が形成されている。なお、以後、複数の吐出口13が配列される吐出口列が延びる方向を「吐出口列方向」と呼称する。図11(b)に示すように、各吐出口13に対応した位置には液体を熱エネルギーを発生し、それを利用して発泡させるための発熱素子である記録素子15が配置されている。隔壁22により、記録素子15を内部に備える圧力室23が区画されている。記録素子15は、記録素子基板10に設けられる電気配線(不図示)によって、端子16と電気的に接続されている。そして、記録素子15は、記録装置1000の制御回路から、電気配線基板90(図6参照)およびフレキシブル配線基板40(図10参照)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱して液体を沸騰させる。この沸騰による発泡の力で液体を吐出口13から吐出する。図11(b)に示すように、各吐出口列に沿って、一方の側には液体供給路18が、他方の側には液体回収路19が延在している。液体供給路18および液体回収路19は記録素子基板10に設けられた吐出口列方向に伸びた流路であり、それぞれ供給口17a、回収口17bを介して吐出口13と連通している。
図11(c)に示すように、記録素子基板10の、吐出口13が形成される面の裏面にはシート状のカバープレート20が積層されており、カバープレート20には、後述する液体供給路18および液体回収路19に連通する開口21が複数設けられている。本実施形態においては、液体供給路18の1本に対して3個、液体回収路19の1本に対して2個の開口21がカバープレート20に設けられている。図11(b)に示すようにカバープレート20の夫々の開口21は、図7(a)に示した複数の連通口51と連通している。カバープレート20は、液体に対して十分な耐食性を有している物が好ましく、また、混色防止の観点から、開口21の開口形状および開口位置には高い精度が求められる。このためカバープレート20の材質として、感光性樹脂材料やシリコン板を用い、フォトリソプロセスによって開口21を設けることが好ましい。このようにカバープレート20は、開口21により流路のピッチを変換するものであり、圧力損失を考慮すると厚みは薄いことが望ましく、フィルム状の部材で構成されることが望ましい。
図12は、図11(a)におけるXII−XIIにおける記録素子基板10およびカバープレート20の断面を示す斜視図である。ここで、記録素子基板10内での液体の流れについて説明する。カバープレート20は、記録素子基板10の基板11に形成される液体供給路18および液体回収路19の壁の一部を形成する蓋としての機能を有する。記録素子基板10は、Siにより形成される基板11と感光性の樹脂により形成される吐出口形成部材12とが積層されており、基板11の裏面にはカバープレート20が接合されている。基板11の一方の面側には、記録素子15が形成されており(図11参照)、その裏面側には、吐出口列に沿って延在する液体供給路18および液体回収路19を構成する溝が形成されている。基板11とカバープレート20とによって形成される液体供給路18および液体回収路19は、それぞれ流路部材210内の共通供給流路211と共通回収流路212と接続されており、液体供給路18と液体回収路19との間には差圧が生じている。吐出口13から液体を吐出して記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口では、この差圧によって基板11内に設けられた液体供給路18内の液体が、供給口17a、圧力室23、回収口17bを経由して液体回収路19へ流れる(図12の矢印C)。この流れによって、吐出動作をしていない吐出口13および圧力室23において、吐出口13からの蒸発によって生じる増粘インク、泡および異物などを液体回収路19へ回収することができる。また、吐出口13や圧力室23のインクが増粘したり色材の濃度が増したりすることを抑制することができる。液体回収路19へ回収された液体は、カバープレート20の開口21および支持部材30の液体連通口31(図10b参照)を通じて、流路部材210内の連通口51、個別回収流路214、共通回収流路212の順に回収されて、記録装置1000の供給流路へと回収される。つまり、記録装置本体から液体吐出ヘッド3へ供給される液体は、下記の順に流動し、供給および回収される。
液体は、まず液体供給ユニット220の液体接続部111から液体吐出ヘッド3の内部に流入する。そして液体は、ジョイントゴム100、第3流路部材に設けられた連通口72および共通流路溝71、第2流路部材に設けられた共通流路溝62および連通口61、第1流路部材に設けられた個別流路溝52および連通口51の順に供給される。その後、支持部材30に設けられた液体連通口31、カバープレート20に設けられた開口21、基板11に設けられた液体供給路18および供給口17aを順に介して圧力室23に供給される。圧力室23に供給された液体のうち、吐出口13から吐出されなかった液体は、基板11に設けられた回収口17bおよび液体回収路19、カバープレート20に設けられた開口21、支持部材30に設けられた液体連通口31を順に流れる。その後液体は、第1流路部材に設けられた連通口51および個別流路溝52、第2流路部材に設けられた連通口61および共通流路溝62、第3流路部材70に設けられた共通流路溝71および連通口72、ジョイントゴム100を順に流れる。そして液体は、液体供給ユニット220に設けられた液体接続部111から液体吐出ヘッド3の外部へ流動する。
図2に示した第1循環形態においては、液体接続部111から流入した液体は、負圧制御ユニット230を経由した後にジョイントゴム100に供給される。また、図3に示した第2循環形態においては、圧力室23から回収された液体は、ジョイントゴム100を通過した後、負圧制御ユニット230を介して液体接続部111から液体吐出ヘッドの外部へ流動する。また、液体吐出ユニット300の共通供給流路211の一端から流入した総ての液体が、個別供給流路213aを経由して圧力室23に供給されるわけではない。つまり、共通供給流路211の一端から流入した液体で、個別供給流路213aに流入することなく、共通供給流路211の他端から液体供給ユニット220に流動する液体もある。このように、記録素子基板10を経由することなく流動する経路を備えることで、本実施形態のような微細で流抵抗の比較的大きい流路を備える記録素子基板10を用いる場合であっても、液体の循環流の逆流を抑制することができる。このように、本実施形態の液体吐出ヘッド3では、圧力室23や吐出口近傍部の液体の増粘等を抑制することができるので、吐出のヨレや不吐出を抑制することができ、結果として高画質な記録を行うことができる。
<記録素子基板間の位置関係の説明>
図13は、隣り合う2つの吐出モジュール200における、記録素子基板の隣接部を部分的に拡大して示した平面図である。本実施形態では、略平行四辺形の記録素子基板を用いている。各記録素子基板10における吐出口13が配列される各吐出口列(14a〜14d)は、記録媒体の搬送方向に対し一定角度傾くように配置されている。そして、記録素子基板10同士の隣接部における吐出口列は、少なくとも1つの吐出口が記録媒体の搬送方向にオーバーラップするようになっている。図13では、線D上の2つの吐出口が互いにオーバーラップする関係にある。このような配置によって、仮に記録素子基板10の位置が所定位置から多少ずれた場合でも、オーバーラップする吐出口の駆動制御によって、記録画像の黒スジや白抜けを目立たなくすることができる。複数の記録素子基板10を、いわゆる千鳥配置ではなく、直線上(インライン)に配置した場合も、図13のような構成により液体吐出ヘッド10の記録媒体の搬送方向の長さの増大を抑えつつ記録素子基板10同士のつなぎ部における黒スジや白抜け対策を行うことができる。なお、本実施形態では、記録素子基板の主平面は平行四辺形であるが、これに限るものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。
(第2形態のインクジェット記録装置)
次に、上述した第1形態のインクジェット記録装置とは異なる、第2形態のインクジェット記録装置2000および液体吐出ヘッド2003の構成を説明する。なお以降の説明においては、主として、第1形態の記録装置と異なる部分のみを説明し、第1形態の装置と同様の部分については説明を省略する。
<インクジェット記録装置の説明>
図21は、第2形態のインクジェット記録装置2000を示した図である。本実施形態の記録装置2000は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの各インクごとに対応した単色用の液体吐出ヘッド2003を4つ並列配置させることで記録媒体へフルカラー記録を行う点が第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態において1色あたりに使用できる吐出口列数が1列だったのに対し、本実施形態においては、1色あたりに使用できる吐出口列数は20列となっている。このため、記録データを複数の吐出口列に適宜振り分けて記録を行うことで、非常に高速な記録が可能となる。更に、不吐出になる吐出口があったとしても、その吐出口に対して記録媒体の搬送方向に対応する位置にある、他列の吐出口から補間的に吐出を行うことで信頼性が向上し、商業記録などに好適である。第1の実施形態と同様に、各液体吐出ヘッド2003に対して、記録装置2000の供給系、バッファタンク1003(図2、図3参照)およびメインタンク1006(図2、図3参照)が流体的に接続されている。また、それぞれの液体吐出ヘッド2003には、液体吐出ヘッド2003へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続されている。
<循環経路の説明>
第1の実施形態と同様に、記録装置2000および液体吐出ヘッド2003間の液体循環経路としては、第1の実施形態同様、図2または図3に示した第1および第2循環形態を用いることができる。
<液体吐出ヘッド構造の説明>
図14(a)および(b)は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2003を示した斜視図である。液体吐出ヘッド2003は、液体吐出ヘッド2003の長手方向に直線上に配列される16個の記録素子基板2010を備え、1色のインクを吐出するライン型記録ヘッドである。液体吐出ヘッド2003は、第1形態と同様、液体接続部111、信号入力端子91および電力供給端子92を備える。しかし、本形態の液体吐出ヘッド2003は、第1形態のヘッドに比べて吐出口列が多いため、液体吐出ヘッド2003の両側に信号出力端子91および電力供給端子92が配置されている。これにより、記録素子基板2010に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減することができる。
図15は、液体吐出ヘッド2003を示した斜視分解図であり、液体吐出ヘッド2003を構成する各部品またはユニットがその機能毎に分割して示している。各ユニットおよび部材の役割や液体吐出ヘッド内の液体流通の順は、基本的に第1の実施形態と同様であるが、液体吐出ヘッドの剛性を担保する機能が異なる。第1の実施形態では主として液体吐出ユニット支持部81によって液体吐出ヘッド剛性を担保していたが、第2の実施形態の液体吐出ヘッド2003では、液体吐出ユニット2300に含まれる第2流路部材2060によって液体吐出ヘッドの剛性を担保している。本実施形態における液体吐出ユニット支持部81は、第2流路部材2060の両端部に接続されており、この液体吐出ユニット2300は記録装置2000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド2003の位置決めを行う。負圧制御ユニット2230を備える液体供給ユニット2220と、電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に結合される。2つの液体供給ユニット2220内にはそれぞれフィルタ(不図示)が内蔵されている。
2つの負圧制御ユニット2230は、それぞれ異なる、相対的に高低の負圧で圧力を制御するように設定されている。また、この図14のように、液体吐出ヘッド2003の両端部にそれぞれ、高圧側と低圧側の負圧制御ユニット2230を設置した場合、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延在する共通供給流路と共通回収流路における液体の流れが互いに対向する。このような構成では、共通供給流路と共通回収流路の間で熱交換が促進されて、2つの共通流路内における温度差が低減される。これによって、共通流路に沿って複数設けられる各記録素子基板2010における温度差が少なくなり、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点がある。
次に、液体吐出ユニット2300の流路部材2210の詳細について説明する。図15に示すように、流路部材2210は、第1流路部材2050と第2流路部材2060とを積層したものであり、液体供給ユニット2220から供給された液体を各吐出モジュール2200へと分配する。また流路部材2210は、吐出モジュール2200から環流する液体を液体供給ユニット2220へと戻すための流路部材として機能する。流路部材2210の第2流路部材2060は、内部に共通供給流路および共通回収流路が形成された流路部材であるとともに、液体吐出ヘッド2003の剛性を主に担うという機能を有する。このため、第2流路部材2060の材質としては、液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましい。具体的にはSUSやTi、アルミナなど用いることができる。
図16(a)は、第1流路部材2050の、吐出モジュール2200がマウントされる面を示した図であり、図16(b)は、その裏面を示しており、第2流路部材2060と当接される面を示した図である。第1形態とは異なり、本形態における第1流路部材2050は、各吐出モジュール2200毎に対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採ることで、複数のモジュールを配列させて、液体吐出ヘッド2003の長さに対応することができるので、例えばB2サイズおよびそれ以上の長さに対応した比較的ロングスケールの液体吐出ヘッドに特に好適に適用することができる。図16(a)に示すように、第1流路部材2050の連通口51は、吐出モジュール2200と流体的に連通し、図16(b)に示すように、第1流路部材2050の個別連通口53は、第2流路部材2060の連通口61と流体的に連通する。図16(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材2050と当接される面を示し、図16(d)は、第2流路部材60の厚み方向中央部の断面を示し、図16(e)は、第2流路部材2060の、液体供給ユニット2220と当接する面を示す図である。第2流路部材2060の流路や連通口の機能は、第1形態の1色分と同様である。第2流路部材2060の共通流路溝71は、その一方が後述する図17に示す共通供給流路2211であり、他方が共通回収流路2212であり、夫々、液体吐出ヘッド2003の長手方向に沿って設けられており、その一端側から他端側に液体が供給される。本形態は、第1形態と異なり、共通供給流路2211と共通回収流路2212の液体の流れは互いに反対方向となっている。
図17は、記録素子基板2010と流路部材2210との液体の接続関係を示した透視図である。流路部材2210内には、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延びる一組の共通供給流路2211および共通回収流路2212が設けられている。第2流路部材2060の連通口61は、各々の第1流路部材50の個別連通口53と位置を合わせて接続されており、第2流路部材2060の連通口72から共通供給流路2211を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給経路が形成されている。同様に、第2流路部材2060の連通口72から共通回収流路2212を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給経路も形成されている。
図18は、図17のXVIII−XVIII線における断面を示した図である。共通供給流路2211は、連通口61、個別連通口53、連通口51を介して、吐出モジュール2200へ接続されている。図18では不図示であるが、別の断面においては、共通回収流路2212が同様の経路で吐出モジュール2200へ接続されていることは、図17を参照すれば明らかである。第1の実施形態と同様に、各吐出モジュール2200および記録素子基板2010には、各吐出口に連通する流路が形成されており、供給した液体の一部または全部が、吐出動作を休止している吐出口を通過して、環流できるようになっている。また、第1形態と同様に、共通供給流路2211は、負圧制御ユニット2230(高圧側)と、共通回収流路2212は負圧制御ユニット2230(低圧側)と、それぞれ液体供給ユニット2220を介して接続されている。従って、その差圧によって、共通供給流路2211から記録素子基板2010の吐出口を通過して共通回収流路2212へと流れる流れが発生する。
<吐出モジュールの説明>
図19(a)は、1つの吐出モジュール2200を示した斜視図であり、図19(b)は、その分解図である。第1形態との差異は、記録素子基板2010の複数の吐出口列方向に沿った両辺部(記録素子基板2010の各長辺部)に複数の端子16がそれぞれ配置されている点である。これに伴い記録素子基板2010と電気接続されるフレキシブル配線基板40も、1つの記録素子基板2010に対して2枚配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる吐出口列数が20列あり、第1の実施形態の8列よりも大幅に増加しているためであり、端子16から記録素子までの最大距離を短くして記録素子基板2010内の配線部で生じる電圧低下や信号遅れを低減するためである。また支持部材2030の液体連通口31は、記録素子基板2010に設けられ全吐出口列を跨るように開口している。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
<記録素子基板の構造の説明>
図20(a)は、記録素子基板2010の吐出口13が配される面の模式図であり、図20(c)は、図20(a)の面の裏面を示す模式図である。図20(b)は図20(c)において、記録素子基板2010の裏面側に設けられているカバープレート2020を除去した場合の記録素子基板2010の面を示す模式図である。図20(b)に示すように、記録素子基板2010の裏面には吐出口列方向に沿って、液体供給路18と液体回収路19とが交互に設けられている。吐出口列数は、第1の実施形態よりも大幅に増加しているものの、第1の実施形態との本質的な差異は、前述のように端子16が記録素子基板の吐出口列方向に沿った両辺部に配置されていることである。各吐出口列毎に一組の液体供給路18と液体回収路19が設けられていること、カバープレート2020に、支持部材2030の液体連通口31と連通する開口21が設けられていることなど、基本的な構成は第1の実施形態と同様である。
なお、上記実施形態の記載は本発明の範囲を限定するものではない。1例として、本実施形態では発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式について説明したが、ピエゾ方式およびその他の各種液体吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。
本実施形態は、インク等の液体をタンクと液体吐出ヘッドとの間で循環させる形態のインクジェット記録装置(記録装置)について説明したが、その他の形態であってもよい。その他の形態としては、例えばインクを循環せずに、液体吐出ヘッド上流側と下流側に2つのタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへインクを流すことで、圧力室内のインクを流動させる形態であってもよい。
また、本実施形態は、記録媒体の幅に対応した長さを有する、所謂ライン型ヘッドを用いる例を説明したが、記録媒体に対してスキャンを行いながら記録を行う、所謂シリアル型の液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。シリアル型の液体吐出ヘッドとしては、例えばブラックインクを吐出する記録素子基板およびカラーインクを吐出する記録素子基板を各1つずつ搭載する構成が挙げられるが、これに限るのもではない。つまり、複数個の記録素子基板を吐出口列方向に吐出口がオーバーラップするよう配置した、記録媒体の幅よりも短い短尺の液体吐出ヘッドを作成し、それを記録媒体に対してスキャンさせる形態であってもよい。
次に、以上説明した第1および第2形態の液体吐出ヘッドにおける、負圧制御ユニットおよび流抵抗調整機構の構成に係る本発明の実施形態について以下に説明する。
<減圧型負圧制御ユニット>
図22(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る、図2にて上述した第1循環形態に用いて好適な負圧制御ユニット230の詳細な構造を示す図である。この負圧制御ユニット230は、一般に「減圧レギュレータ」と呼ばれるものと同様であり、本明細書では、減圧型負圧制御ユニットともいう。図22(a)は、負圧制御ユニットの外観を示し、図22(b)および(c)は、それぞれ図22(a)におけるXXIIb−XXIIb、XXIIc−XXIIc線の断面を示している。
本実施形態では、負圧制御ユニット230は、高圧側(H)と低圧側(L)に設定された一対の負圧制御機構が一体になって構成されている。この場合、図22(c)に示すように、2つの負圧制御機構が互いに嵌合い関係になるように配置され、これにより、負圧制御ユニット230の小型化を図ることができる。高圧側と低圧側に設定された2つの負圧制御機構は、互いに、付勢部材231の付勢力または受圧板の寸法が異なるだけで、基本構造および動作原理は同様である。このため、以降は図22(b)を参照して、高圧側(H)の負圧調整機構のみについて説明する。
液体の流れを説明する。外部から負圧制御ユニット230の流入口230A(図22(a))に入った液体は、第一圧力室235内に入り、弁237と開口部238との間のギャップを通って第二圧力室236内へ流入する。その後、第二圧力室236内の液体は、流出口230B(図22(a))から液体吐出ユニット300(図2参照)へと供給される。
図22(b)に示すように、負圧制御ユニット230内には、受圧板232、第一圧力室235、受圧板と可撓性フィルム233でシールされた第二圧力室236、が設けられている。また、第一圧力室235と第二圧力室とを連通させる連通部としての開口部238が設けられている。第一圧力室内には、シャフト234によって受圧板232と機械的に連結された弁237が設けられている。シャフト234、弁237および受圧板232は、ヘッド駆動時には一体となって動くよう構成されている。また、受圧板232は、付勢部材(バネ)231によって、弁237が閉じる向きに付勢されている。本明細書では、受圧部とは、受圧板232と可撓性フィルム233を合わせた部分を指す。
もっとも、可撓性フィルム233の総てが第二圧力室内の圧力に基づいて変位する訳ではなく、受圧板232近傍のフィルム部分が主体的に受圧部として機能し、圧力変化に基づいて変化しない可撓性フィルム233の部分も有する。フィルムの実効的な受圧範囲は各部寸法や圧力自体によって変動する。
弁237は、開口部238との間のギャップを可変にして、これにより、流抵抗を可変とさせることができる。また、弁237は、第一循環ポンプ停止時には開口部238と接触して閉塞し流体的にシールすることができる。弁237と開口部238が流体的にシールされることにより、循環ポンプ停止時(すなわち記録装置停止時)において、吐出口に負圧を作用させ続けることが可能であり、吐出口からのインク漏れを防ぐことができる。弁237の材質としては、液体に対し十分な耐食性を有する、ゴムやエラストマーなどの弾性材料が好ましく用いられる。
なお、本実施形態では、受圧部は受圧板232と可撓性フィルム233から成っているが、その他の構成でも第二圧力室内の圧力に従って弁237の位置を可変できる機構であれば用いることができる。例えば、受圧板232が無く、可撓性フィルム233をシャフト234に接合した構成や、弾性のある膜状部材(ダイヤフラム)を受圧板及びフィルムの代わりに用いて受圧部としてもよい。この場合、ダイヤフラムは受圧部としての機能だけでなく、弁を付勢する付勢手段としての機能も有する。
また、図22(b)では、付勢部材であるバネは2つの連成バネとしているが、合成バネ力が所望の負圧値を満足すれば圧力調整機能に支障は無い。このため、1つのバネを用いたりあるいは3つ以上のバネを使用する構成も用いたりすることができる。さらに、本実施形態では、弁237へ付勢力を作用する機構として、コイルバネを用いているが、他の機構、例えば、板バネであってもよい。また、上述したように受圧板及び可撓性フィルムの代わりに膜状弾性体であるダイヤフラムを用いて弁237に付勢力を与える構成であってもよい。
図22(b)に示すように、2つの連成バネのうち、第二圧力室236内に1つの付勢部材を分割して設けており、受圧板232とシャフト234は分離できるように構成されている。そして、受圧板232とシャフト234が分離した状態でも受圧板232には第二圧力室内の付勢部材による付勢力が作用するようになっている。このため、弁237が閉塞した状態でも、第二圧力室236内の付勢部材の作用によって、受圧板232は、シャフト234から分離して、第二圧力室内の容積を更に増やす方向に変位可能である。これにより、液体吐出ヘッドが長期間駆動されず、液体吐出ヘッド内に気泡が取り込まれた状態となっても第二圧力室236がバッファとして機能し、気泡の容積増分を吸収してヘッド内が正圧化することを抑制できる。
また、図22(b)において、弁237は開口部238よりも上流側に設けられており、受圧板が、図22(b)における上方へ変位すると、この変位は弁に伝達されて開口部238と弁237との間のギャップが縮小する。第一圧力室235の流入口230A(図22(a))から入った液体は、弁237と開口部238との間のギャップを通って第二圧力室236内へ流入し、その圧力を受圧板232へと伝える。その後、液体は第二圧力室236の流出口230B(図22(a))から液体吐出ユニット300(図2参照)へと供給される。
第二圧力室236内の圧力P2は、各部に加わる力の釣り合いを示す下記の関係式から決定される。
P2=P0−(P1Sv+k1x)/Sd 式(1)
ここで、Sd:受圧板の受圧面積、Sv:弁部の受圧面積、P0:大気圧、P1:第一圧力室235内の圧力、P2:第二圧力室236内の圧力、k1:付勢部材231のバネ定数、x:バネ変位
付勢部材231の力を変更することにより、P2を所望の制御圧力に設定することができる。付勢部材の力を変更するには、バネ定数klを変更するか、動作時のバネ長さを変更する。
また、弁−開口部間のギャップ部分の流抵抗をR、負圧制御ユニット230内を通過する液体の流量をQとすると、次式が成立つ。
P2=P1−QR 式(2)
ここで、流抵抗Rと弁−開口部間ギャップ(以降、「弁開度」と称ぶ)が、例えば、図23に示す関係になるように設計する。図23は、本実施形態に係る負圧制御ユニットにおける、弁−開口部間の流抵抗と弁開度との関係を示す図である。図23に示すように、弁開度の増大とともに流抵抗Rは低下する。上述した式(1)と式(2)を同時に満たすように、弁開度を定めることにより、P2が決定される。
すなわち、負圧制御ユニット230に流入する流量Qが増加した場合、負圧制御ユニットの上流に接続される第二循環ポンプ(送液ポンプ)1004(図2参照)の圧力は一定であるので、流量が増大したことによる第二循環ポンプ〜負圧制御ユニット220間の流抵抗増加分だけ、P1は減少する。このため、弁を閉塞する力P1Svが減少し、式(1)よりP2が瞬時的に増加する。
また、式(2)から、R=(P1−P2)/Qが導出される。ここで、Q、P2は増加、P1は低下するので、Rは低下することになる。Rが低下すると、図23に示す関係から、弁開度が増大する。図22(b)から分るように、弁開度が増大すると付勢部材(バネ)231の長さは小さくなるため、自由長からの変位であるxは増加する。このため、バネの作用力k1xは大きくなる。その結果、式(1)からP2は瞬時的に減少する。逆に、流量Qが減少してP2が瞬時的に増加すると、上述とは逆の作用により、P2が瞬時的に減少する。これが瞬時的に繰り返されることで、流量Qに応じて弁開度が変化しつつ式(1)、式(2)を両立する結果、P2が一定に制御される。その結果、負圧制御ユニット230下流(すなわち、液体吐出ユニット入口)の圧力が自律的に一定に制御される。
また、式(1)から分るように、P2の変動幅=P1の変動幅x(Sv/Sd)であるので、Sv/Sd比を十分小さく取って設計することによって、第二循環ポンプ1004(図2)の脈動などによってP1が多少変化しても、P2の変動幅を十分小さくすることができる。このため、圧力センサや負圧調整用の動力などが不要となり、液体吐出装置本体を簡素化できる。
<背圧型負圧制御ユニット>
図24(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る、図3にて上述した第2循環形態に用いて好適な負圧制御ユニット230の詳細な構造を示す図である。この負圧制御ユニット230は、一般に「背圧レギュレータ」と呼ばれるものと同様であり、本明細書では、背圧型負圧制御ユニットともいう。図24(a)および(b)は、本形態の負圧制御ユニットの高圧側(H)と低圧側(L)それぞれの外観を示し、図24(c)は、図24(a)におけるC−C‘線の断面を示している。
本形態では、図22(a)〜(c)に示した減圧型圧力調整機構とは異なり、高圧側(H)と低圧側(L)の2つの負圧制御ユニットは別体で構成され、図14に示したように、液体吐出ユニット300の両端に1つずつ負圧制御ユニット2230が配置される。なお、この別体となる形態は一例であり、図22(a)〜(c)に示した減圧型負圧制御ユニットのように、高圧側と低圧側を一体で形成してもよいことはもちろんである。本形態に係る図3は、この一体とした負圧制御ユニットを示している。高圧側と低圧側に設定された2つの負圧制御機構は、弁に作用する付勢力または受圧板の受圧面積が異なるだけで、基本構造及び動作原理は同様である。
受圧部や、以下に説明する以外の受圧部および付勢機構については、図22(a)〜(c)で上述した減圧型負圧制御ユニットと同様である。
図24(c)に示すように、減圧弁方式の負圧制御ユニットとの相違点は、弁237が、第一圧力室235内に配置されている点、受圧板232が、図24(c)において下方へ移動すると開口部238−弁237間のギャップが拡大するようになっている点、および負圧制御ユニット230内の液体流れが逆になっており、受圧板が配置される側が上流の第一圧力室である点である。液体の流れを説明する。液体吐出ユニット300から負圧制御ユニット230の流入口230Aに入った液体は、第一圧力室235内に入り、弁237と開口部238との間のギャップを通って第二圧力室236内へ流入する。その後、第二圧力室236内の液体は、流出口230Bから液体吐出ユニット300の外部へと供給される。
圧力調整のメカニズムは、上述した減圧型圧力調整機構の場合とほぼ同様のものとして説明することができる。すなわち、第一圧力室235内の圧力P1は、各部に作用する力の釣り合いを示す下記の式(3)から決定される。減圧型負圧制御ユニットと異なり、本形態の背圧型負圧制御ユニットは、受圧板232に関して第一圧力室235とは反対側に、第二付勢部材239が配置される。このため、付勢部材231および第二付勢部材239のバネ定数をそれぞれk1,k2、弁開度ゼロにおける変位をそれぞれx0、y0とするとき、開度aが増大すると第一付勢部材の自由長からの変位はaだけ減少し、第二付勢部材の変位はaだけ増大する。これにより、各部に作用する力の釣り合い関係から次式が導かれる。
P1Sd+k1(x0−a)+P2Sv=P0Sd+k2(y0+a)
上式を変形して、下式が得られる。
P1=P0−(P2Sv/Sd)+(k1+k2)a/Sd−PL 式(3)
ここで、Sd:受圧板の受圧面積、Sv:弁部の受圧面積、P0:大気圧、P1:第一圧力室内の圧力、P2:第二圧力室内の圧力、k1:付勢部材231のバネ定数、k2:第二付勢部材239のバネ定数、a:弁開度、x0:バルブ開度ゼロにおける第一付勢部材の自由長からの変位、y0:バルブ開度ゼロにおける第二付勢部材の自由長からの変位、PL(Preload)=(k1x0−k2y0)/Sd、である。
また、減圧型負圧制御ユニットについて上述した式(2)は、本形態の背圧型負圧制御ユニットでも同様に成立する。ここで、弁開度と弁−開口部間のギャップ部流抵抗Rとの関係は、図23に示したように関係に設計される。すなわち、弁開度の増大とともに流抵抗Rは低下する。本形態では、式(3)と式(2)が同時に成立するように弁開度を定めることにより、P1を決定する。
負圧制御ユニット230から流出する流量Qが増加した場合、負圧制御ユニットの下流に接続される第二循環ポンプ1004(図3参照)の圧力は一定であるので、流量が増大したことによる負圧制御ユニット220〜第二循環ポンプ間の流抵抗増加分だけ、P2は上昇する。このため、弁を開放する力P2Svが増大し、式(3)より、P1が瞬時的に減少する。また、式(2)より、R=(P1−P2)/Qが導出される。
ここで、Q、P2は増加し、P1は低下しているので、Rは低下することになる。そして、Rが低下すると、図23に示した関係から、弁開度が増加する。図24(c)に示すように、弁237の開度が増加すると付勢部材231および第二付勢部材239の長さは、それぞれ増大、減少するため、自由長からの変位は減少、増加となる。この結果、第一付勢部材の弁作用力と第二付勢部材の弁作用力はそれぞれ減少、増加する。このことから、弁を開放する方向の作用力は、バルブ開度の増加とともに減少することとなる。このため、式(3)から、P1は瞬時的に増加する。逆に、流量Qが減少してP1が瞬時的に増加すると、上述とは逆の作用により、P1が瞬時的に減少する。
これらが瞬時的に繰り返されることによって、流量Qに応じて弁開度が変化しつつ式(3)、式(2)を両立する結果、P1が一定に制御されるので、負圧制御ユニット230上流(即ち液体吐出ユニット出口部)の圧力が自律的一定に制御される。また、式(3)から容易に分かるように、P1の変動幅=P2の変動幅x(Sv/Sd)であるので、Sv/Sd比を十分小さく取って設計することによって、第二循環ポンプの脈動などによってP2が多少変化しても、P1の変動幅を十分小さくすることが可能である。このため圧力センサや負圧調整用の動力などが不要であり、記録装置本体を簡素化できる。
<他の形態の負圧制御ユニット>
図25は、図2示した第1循環形態において用いるのに適した負圧制御ユニットの他の形態を示す図である。図25に示すように、負圧制御ユニット230内には、可撓性フィルム233によって内部が液体室234と空気室235とに仕切られた負圧制御機構が2つ内蔵されている。それぞれの空気室235には圧力センサSおよびエアーポンプPH,PLが接続されている。図25では不図示であるが、それぞれの圧力センサSおよびエアーポンプPH、PLは、装置本体の制御部と電気的に接続されている。制御部は圧力センサSからの圧力値と、予め制御部に記憶されている圧力設定値に基づいて、エアーポンプPHおよびPLをそれぞれ高圧側、低圧側として駆動制御する。この制御によって、各液体室234の圧力を所望の圧力に維持することができ、共通供給流路211および共通回収流路212との間に所望の差圧を生成することができる。
また、図2に示す負圧制御ユニットの場合と同様、図25に示す負圧制御ユニットにおいても、供給側流抵抗調整機構222および回収側流抵抗調整機構223の操作によって、流抵抗のずれを補正することができる。すなわち、共通供給流路211や共通回収流路212の流抵抗に設定値とのずれがあった場合でも、負圧制御ユニット〜共通流路間の流抵抗のずれを補正して、共通流路の入口部において所望の流量で所望の圧力を作用させることができる。この結果、共通供給流路と共通回収流路間の差圧の設計値との公差を低減でき、各液体吐出ヘッドに流れる循環流の流量のバラつきを低減することが可能となる。
(可変圧型(減圧型)負圧制御ユニットの圧力公差調整)
本発明の一実施形態は、図22にて上述した減圧型負圧制御ユニットによる制御圧力の公差を補正するものである。上述したように、負圧制御ユニットは力平衡型の減圧型圧力調整弁と同様の機構であるので、一般的に制御圧力/流量に負の勾配(所謂ドルーブ、流量が増すほど制御圧力が低下する)が存在し、その勾配に対して公差が生じ得る。本実施形態は、この制御圧力/流量の勾配を正にするとともに、流抵抗調整機構における流抵抗調整によって、上記勾配を調整し、共通流路の入口部における流量変動に伴う圧力変化を抑制する。
また、一般的な減圧型圧力調整弁では、受圧板面積やバネ力の公差が原因で、ある流量における制御圧力値自体にも公差が生じる。本実施形態は、制御圧公差と制御圧/流量勾配公差を同時に補正する。
なお、以下の説明は、図22(b)に示す高圧側の負圧調整機構について説明するが、低圧側負圧調整機構も同様であるのでその説明を省略する。図22(b)において、負圧調整部材240は、外気連通口を有しており、また負圧制御ユニットの本体に固定されている。固定方法は機械的な方法でも接着剤による方法でも好ましく用いることができる。
ここで、付勢部材231のバネ定数をk1、弁開度ゼロにおける変位をそれぞれx0、y0とする。開度aが増大すると付勢部材231の自由長からの変位はaだけ増すので、各部にかかる力の釣り合い関係から次式が導かれる。
P2Sd+k1(x0+a)+P1Sv=P0Sd
上式を変形して、下式が得られる。
P2=P0−(P1Sv/Sd)−k1a/Sd−PL 式(4)
ここで、a:弁開度、x0:開度ゼロにおける付勢部材231の自由長からの変位、PL(Preload)=(k1x0)/Sd、である。
<P2公差の調整>
図22(c)に示すように、負圧調整部材240は、第一圧力室側の付勢部材と可撓性フィルム233を介して接している。ここで、負圧調整部材の厚みや高さなどの形状を変えることにより、付勢部材の変位を変更することができ、制御圧P2を調整することができる。具体的には、負圧調整部材240の形状を変更して、第一圧力室側の付勢部材の長さを縮めるようにすると、上式におけるx0が大きくなるので、式(4)のPLが減少し、P2が上昇する。一方、第一圧力室側の付勢部材の長さが大きくなるようにするとx0が小さくなるので、式(4)のPLが増大し、P2が低下する。このようにして、制御圧力P2の公差を補正して、所望の流量で所望の制御圧力P2が得られるように調整することができる。
式(4)の両辺を流量Qで微分すると下式が得られる。
dP2/dQ=−(Sv/Sd)dP1/dQ−(k1+k2)/Sdda/dQ 式(5)
ここで、流量Qが増大すると、図2における第二循環ポンプ〜負圧制御ユニット間の圧損も増大するので、P1は減少する。このため、dP1/dQは負である。一方、流量Qの増大とともに開度aは増大するから、da/dQは正である。ここで、下記の式(6)を満たすように設計すると、式(5)から分かるように、負圧制御ユニットの制御圧力P2/流量Qの勾配は正となる。すなわち、流量Qが増大するほど、制御圧P2が上昇する。このとき、弁作用圧P1の流量変化率R2は、以下の式を満たす。
R2>(k1+k2)/Sv・(da/dQ) (R2:−dP1/dQ) 式(6)
<P2/Q勾配の調整>
以上の補正が可能な、図22に示す負圧制御機構は、図2に示す負圧制御ユニット230に用いられている。この場合、負圧制御ユニット230の下流の供給側流抵抗調整機構222および回収側流抵抗調整機構223の調整によって流抵抗を上げることにより、上記P2/Qの正の勾配の変化を相殺することができる。これにより、P2/Q勾配に公差が生じた場合でも、供給側流抵抗調整機構222または回収側流抵抗調整機構223における調整によって、この公差を補正することが可能となる。
具体的な調整方法としては、例えば、以下のように行うことができる。
1)液体吐出装置の仕様上想定される、負圧制御ユニットを通過する最小流量において、共通供給流路および/または共通回収流路の入口の圧力を測定する。
2)同じく上記仕様上想定される、負圧制御ユニットを通過する最大流において、共通供給流路および/または共通回収流路の入口の圧力を測定する。
3)上記2)の工程の流量を維持したままで、負圧制御ユニット230下流の供給側流抵抗調整機構222および回収側流抵抗調整機構223において、上記1)の工程測定した圧力に近づくよう、負圧調整部材240によって調整する。
負圧調整部材240の調整によって制御圧P2の絶対値を調整する工程と、上記工程1)〜3)のP2/Q勾配を調整する工程の順序はどちらが先であってもよい。もっとも、調整時に使用する圧力センサの分解能は一般的に、測定レンジフルスケールが小さいほど高く、スケールが大きいほど低い。この点を考慮すると、先に、大気圧近傍において、測定圧力レンジは小さいが高精度な圧力センサを用いて上記工程1)〜3)の調整工程を実施して高分解能にP2/Q勾配の公差を補正する。そして、その後に測定圧力レンジは大きいが低分解能な圧力センサを用いて、負圧調整部材240で所望の圧力値近傍に制御圧P2を調整し、同時にP2の公差を調整する方が、精度の高い調整が可能となる。
なお、式(6)から容易に分かるように、R2を調整することによっても、P2/Q勾配を調整することができる。具体的には、図26に示すように、流抵抗調整機構222、223を負圧制御ユニット〜第二循環ポンプ1004間に配置することにより、R2を調整することができる。なお、図26に示す例では、液体吐出ヘッドを構成する液体供給ユニット220内に流抵抗調整機構を内蔵しているが、液体吐出ヘッドの外に配置しても同じ効果を得ることができることはもちろんである。また、第二循環ポンプの代わりに、圧力を制御可能な圧力源(例えば水頭タンクや、可撓壁とエアーポンプを備えた袋など)を用いることもできる。
(可変圧型(背圧型)負圧制御ユニットの圧力公差調整)
本発明の一実施形態は、図24にて上述した背圧型負圧制御ユニットによる制御圧力の公差を補正するものである。上述したように、負圧制御ユニットは力平衡型の背圧型圧力調整弁と同様の機構であるので、一般的に制御圧力/流量に正の勾配(所謂ドルーブ、流量が増すほど制御圧力が上昇する)が存在し、その勾配に対して公差が生じ得る。本実施形態は、この制御圧力/流量の勾配を負にするとともに、流抵抗調整機構における流抵抗調整によって、上記勾配を調整し、共通流路の入口部における流量変動に伴う圧力変化を抑制する。
また、一般的な背圧型圧力調整弁では、受圧板面積やバネ力の公差が原因で、ある流量における制御圧力値自体にも公差が生じる。本実施形態は、制御圧公差と制御圧/流量勾配公差を同時に補正する。
本形態の圧力公差の調整について、図24(c)を参照して説明する。この形態の負圧調整機構は、基本的には図22(a)〜(c)に示したものと同様であるが、図24(c)に示すように、受圧板232の、第一圧力室235と反対側の面に、負圧調整部材240によって一端を固定支持された第二付勢部材が当接している点が異なる。負圧調整部材240は、外気連通口を有しており、また、負圧制御ユニットの可動機構241内を移動できるよう構成されている。本実施形態では、負圧調整部材240の側面に雄ネジ、可動機構241に雌ネジが形成され、互いに係合することによって、負圧調整部材240の位置を変えることができる。
<P1公差の調整>
図24(c)において、負圧調整部材240を上下方向に移動させて、第二付勢部材239のy0を変更する。これにより、制御圧P1を調整することができる。負圧調整部材240を弁237に近づけるように動かすとy0が大きくなるので、式(3)のPLが減少し、P1が増加する。逆に、負圧調整部材240を弁237から遠ざかるように動かすとy0が小さくなるので、PLが増大し、P1が低下する。このようにして、制御圧力P1の公差を補正して、所望の流量で所望の制御圧力P1を得ることが可能となる。
本形態の負圧調整部材240は、ネジ状部材によってその位置を調整するものであるので、P1公差調整後に長期に渡って記録装置を使用すると、振動などの影響により、負圧調整部材240とバルブ237との相対位置が変化してしまう虞がある。そのため、調整後に負圧調整部材240を負圧制御ユニットに固定する機構があることがさらに好ましい。具体的には、負圧調整部材240の回転を防ぐカシメ構造や、あるいは接着剤などで固定する方法が好ましく用いられる。
本形態についても、上述した式(5)と同様の、流量Qで微分した下式が得られる。 dP1/dQ=−(Sv/Sd)dP2/dQ+(k1+k2)/Sdda/dQ (7)
流量Qが増大すると、図3からも分かるように、負圧調整機構〜第二循環ポンプ間の圧損が増大するので、P2は上昇する。このためdP2/dQは正である。一方、流量Qの増大とともに開度aは増大するから、da/dQは正である。ここで下記の式(8)を満たすように設計すると、式(7)から分かるように、負圧調整機構の制御圧力P2/流量Qの勾配は負となる。すなわち、流量Qが増大するほど、制御圧P1が減少する。このとき、弁作用圧P2の流量変化率R3は、以下の式を満たす。
R3>(k1+k2)/Sv・(da/dQ) (R3:dP2/dQ) 式(8)
<P1/Q勾配の調整>
このような特性を有する負圧調整機構を、図3の背圧型負圧制御ユニットに適用した場合、負圧制御ユニット230下流の供給側流抵抗調整機構222および回収側流抵抗調整機構223によって流抵抗を調整することができ、それによって上記P1/Qの負の勾配分を変えることができる。これにより、P1/Q勾配に公差が生じた場合でも、供給側流抵抗調整機構222や回収側流抵抗調整機構223における調整によって、この公差を補正することが可能となる。
具体的な調整方法としては、例えば以下のように行うことができる。
1)液体吐出装置の仕様上想定される、負圧制御ユニットを通過する最小流量において、共通供給流路および/または共通回収流路の入口の圧力を測定する。
2)同じく上記装置の仕様上想定される、負圧制御ユニットを通過する最大流において、共通供給流路および/または共通回収流路の入口の圧力を測定する。
3)上記工程2)の流量を保持したままで、供給側流抵抗調整機構222および回収側流抵抗調整機構223における調整によって、工程1)で求めた圧力に近づくように調整する。
負圧調整部材240による制御圧P1の絶対値を調整する工程と、上記1)〜3)のP1/Q勾配を調整する工程の順序については、減圧型負圧制御ユニットの実施形態と同様である。
なお、式(8)から容易に分かるように、R3を調整することによっても、P1/Q勾配を調整することが可能である。具体的には、図27に示すように、流抵抗調整機構を負圧制御ユニットと第二循環ポンプ1004との間に配置する。これにより、R3を調整することが可能である。なお、図27に示す構成では、液体吐出ヘッドを構成する液体供給ユニット220内に流抵抗調整機構を内蔵しているが、液体吐出ヘッド外に配置しても同じ効果を得ることができる。また、第二循環ポンプの代わりに、圧力を制御可能な圧力源(例えば水頭タンクや、可撓壁とエアーポンプを備えた袋など)を用いることもできる。
(流抵抗調整機構)
以上の各形態において説明した流抵抗調整機構は、流路の断面積または流路の長さを変更可能な可動部を有するものである。このような機構のうち、特に、流路断面積を可変する機構、例えばニードル弁や、流路の一部に可撓膜を有し流路断面積を可変できる機構などを好ましく用いることができる。
具体的には、図24(c)に示すように、流抵抗調整機構222は、シール材226が摺動可能なように取り付けられた調整ボルト224を、予め雌ネジ部225が切られた流路に挿入する形態のものである。この構成において、ボルト先端が流路内に挿入される量を大きくすることで、流路断面積の小さい箇所(高流抵抗部)を作ることができる。逆に、ボルト挿入量を小さくすれば低流抵抗となる。図24(c)に示す構成では、ネジ形状を図示したが、摺動可能なOリングなどでも使用できる。また、図24(c)では不図示であるが、流抵抗の調整量の変化を防ぐために、調整後に調整ボルト224を固定する機構があることが好ましい。具体的には、調整ボルト224の回転を防ぐカシメ構造や、あるいは接着剤などで固定する方法が好ましく用いられる。
なお、図24(c)では、流抵抗調整機構が負圧制御ユニット内に配置された形態であるが、図2、図3、図26、図27に示したように、液体供給ユニットの流路内、あるいは液体吐出ヘッド外の記録装置本体側の流路内に配置されていても本発明の効果を得ることが可能である。
211 共通供給流路
212 共通回収流路
220 液体供給ユニット
222 供給側流抵抗調整機構
223 回収側流抵抗調整機構
224 調整ボルト
225 雌ネジ部
226 シール部材
230 負圧制御ユニット
231 付勢部材
232 受圧板
233 可撓性フィルム
234 シャフト
235 第一圧力室
236 第二圧力室
237 弁
238 開口部
239 第二付勢部材
240 負圧調整部材
241 可動機構
3 液体吐出ヘッド

Claims (25)

  1. 少なくとも一つの記録素子基板を備えた液体吐出ヘッドを用い、該液体吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置であって、
    前記記録素子基板に対する液体の供給流路および前記記録素子基板からの液体の回収流路を有した手段であって、前記供給流路における液体の圧力と前記回収流路における液体の圧力との間に差を生じさせて液体の供給および回収を行う差圧発生手段と、
    前記供給流路および/または前記回収流路に設けられた流抵抗調整手段と、
    を具えたことを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記差圧発生手段は、前記供給流路および前記回収流路を介して、前記液体吐出ヘッドに対して液体の循環を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 前記差圧発生手段は、互いに異なる設定圧を有する一対の負圧制御ユニットを有し、高圧側が前記供給流路に、低圧側が前記回収流路に、それぞれ接続され、前記供給流路および前記回収流路との下流側には、前記供給流路および前記回収流路から液体収容タンクへと液体を送液する送液ポンプが接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記液体吐出ヘッドは複数の吐出口を備え、前記供給流路は前記複数の吐出口に対して共通の共通供給流路を含み、前記回収流路は前記複数の吐出口に対して共通の共通回収流路を含むことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
  5. 前記一対の負圧制御ユニットの少なくとも一つは、当該負圧制御ユニットの上流側から、当該負圧制御ユニットの設定圧よりも高い圧力を印加されており、
    液体収容タンクと連通する第一圧力室と、
    容積が可変で、前記共通供給流路または前記共通回収流路に接続された第二圧力室と、前記第一圧力室と第二圧力室とを連通する開口部と、
    前記第一圧力室内に設けられ、前記第一圧力室と前記第二圧力室との間の流抵抗を可変とし、前記開口部との間のギャップを閉塞する方向へ付勢された弁と、
    前記第二圧力室の圧力変動に基づいて変位可能であって、当該変位を前記弁に伝達することによって、前記弁に作用する付勢力と合わせて、前記弁の位置を可変とさせる受圧部と、
    を含むことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
  6. 前記一対の負圧制御ユニットの少なくとも一つは、前記受圧部を付勢するバネを備え、
    前記バネのバネ定数をk1とし、前記弁の上流から弁に作用する圧力の流量変化率をR2とするとき、下記式
    R2>(k1+k2)/Sv・da/dQ
    ここで、aは弁開度、Qは流量、Svは前記弁に作用する圧力の受圧面積である、
    を満たすことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
  7. 前記液体収容タンクと前記一対の負圧制御ユニットそれぞれとの間の流路の少なくとも一方に、第2の流抵抗調整手段をさらに具えたことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
  8. 前記差圧発生手段は、互いに異なる設定圧を有する一対の負圧制御ユニットを有し、高圧側が前記供給流路に、低圧側が前記回収流路に、それぞれ接続され、前記供給流路および前記回収流路との上流側には、液体収容タンクから前記供給流路および前記回収流路へと液体を送液する送液ポンプが接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
  9. 前記液体吐出ヘッドは複数の吐出口を備え、前記供給流路は前記複数の吐出口に対して共通の共通供給流路を含み、前記回収流路は前記複数の吐出口に対して共通の共通回収流路を含むことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
  10. 前記一対の負圧制御ユニットの少なくとも一つは、当該負圧制御ユニットの下流側から、当該負圧制御ユニットの設定圧よりも低い圧力を印加されており、
    容積が可変で、前記共通供給流路または前記共通回収流路に接続された第一圧力室と、液体収容タンクと連通する第二圧力室と、
    前記第一圧力室と第二圧力室とを連通する開口部と、
    前記第一圧力室内に設けられ、前記第一圧力室と前記第二圧力室との間の流抵抗を可変とし、前記開口部との間のギャップを開放する方向へ付勢された弁と、
    前記第一圧力室の圧力変動に基づいて変位可能であって、当該変位を前記弁に伝達することによって、前記弁に作用する付勢力と合わせて、前記弁の位置を可変とさせる受圧部と、
    を含むことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
  11. 前記一対の負圧制御ユニットの少なくとも一つは、前記受圧部を付勢するバネを備え、
    前記バネのバネ定数をk2とし、前記弁の下流から弁に作用する圧力の流量変化率をR3とするとき、下記式
    R3>(k1+k2)/Sv・da/dQ
    ここで、aは弁開度、Qは流量、Svは前記弁に作用する圧力の受圧面積である、
    を満たすことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
  12. 前記液体収容タンクと前記一対の負圧制御ユニットそれぞれとの間の流路の少なくとも一方に、第2の流抵抗調整手段をさらに具えたことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
  13. 前記流抵抗調整手段は、流路の断面積または流路の長さを変更可能な可動部を含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の液体吐出装置。
  14. 前記一対の負圧制御ユニットの少なくとも一つにおいて、前記弁に作用する付勢力を変更する負圧調整部材をさらに具えたことを特徴とする請求項5または10に記載の液体吐出装置。
  15. 液体吐出ヘッドを用い、該液体吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置であって、前記液体吐出ヘッドに対する液体の供給流路および前記液体吐出ヘッドからの液体の回収流路を有した手段であって、前記供給流路における液体の圧力と前記回収流路における液体の圧力との間に差を生じさせて液体の供給および回収を行う差圧発生手段と、前記供給流路および/または前記回収流路に設けられた流抵抗調整手段と、を備えた液体吐出装置における液体供給方法であって、
    第1の流量における前記供給流路および/または前記回収流路の入口部の圧力を測定する第1工程と、
    前記第1の流量よりも多い第2の流量における前記供給流路および/または前記回収流路の入口部の圧力を測定する第2工程と、
    前記流抵抗調整手段によって、前記差圧発生手段の負圧制御ユニットから前記供給流路の入口部および/または前記回収流路の入口部までの流路までの流抵抗を調整して、前記第2の流量における前記供給流路および/または前記回収流路の入口部の圧力を、前記第1の流量における圧力に近づける第3工程と、
    を有し、前記第3工程で調整された圧力で、前記差圧発生手段によって液体を供給することを特徴とする液体供給方法。
  16. 液体吐出ヘッドを用い、該液体吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置であって、前記液体吐出ヘッドに対する液体の供給流路および前記液体吐出ヘッドからの液体の回収流路を有した手段であって、前記供給流路における液体の圧力と前記回収流路における液体の圧力との間に差を生じさせて液体の供給および回収を行う差圧発生手段と、前記供給流路および/または前記回収流路に設けられた流抵抗調整手段と、を備えた液体吐出装置における液体供給方法であって、
    第1の流量における前記供給流路および/または前記回収流路の出口部の圧力を測定する第1工程と、
    前記第1の流量よりも多い第2の流量における前記供給流路および/または前記回収流路の出口部の圧力を測定する第2工程と、
    前記流抵抗調整手段によって、前記差圧発生手段の負圧制御ユニットから前記供給流路の出口部および/または前記回収流路の出口部までの流路までの流抵抗を調整して、前記第2の流量における前記供給流路および/または前記回収流路の出口部の圧力が、前記第1の流量における圧力に近づける第3工程と、
    を有し、前記第3工程で調整された圧力で、前記差圧発生手段によって液体を供給することを特徴とする液体供給方法。
  17. 液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生する記録素子を備える記録素子基板と、
    前記記録素子基板に対する液体の供給流路および前記記録素子基板からの液体の回収流路を有した手段であって、前記供給流路における液体の圧力と前記回収流路における液体の圧力との間に差を生じさせて液体の供給および回収を行う差圧発生手段と、
    前記供給流路および/または前記回収流路に設けられた流抵抗調整手段と、
    を具えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  18. 前記流抵抗調整手段は、流路の断面積または流路の長さを変更可能な可動部を含むことを特徴とする請求項17に記載の液体吐出ヘッド。
  19. ページワイド型である前記液体吐出ヘッドは、複数の前記記録素子基板が配列される支持部材を備えることを特徴とする請求項17に記載の液体吐出ヘッド。
  20. 前記支持部材は前記供給流路と前記回収流路とを備え、
    前記供給流路は、前記複数の記録素子基板に対して液体を供給する共通供給流路を含み、前記回収流路は、前記複数の記録素子基板から液体を回収する共通回収流路を含む、ことを特徴とする請求項19に記載の液体吐出ヘッド。
  21. 前記差圧発生手段は前記共通供給流路および前記共通回収流路より上流側に設けられ、
    当該差圧発生手段は、
    第一圧力室と、
    前記第一圧力室より下流側に設けられ、容積が可変である第二圧力室と、
    前記第一圧力室と第二圧力室とを連通する開口部と、
    前記第一圧力室と前記第二圧力室との間の連通部の流抵抗を可変とし、前記開口部との間のギャップを閉塞する方向へ付勢された弁と、
    前記第二圧力室の圧力変動に基づいて変位可能であって、当該変位を前記弁に伝達することによって、前記弁に作用する付勢力と合わせて、前記弁の位置を可変とさせる受圧部と、
    を含むことを特徴とする請求項20に記載の液体吐出ヘッド。
  22. 前記差圧発生手段は、前記弁を付勢するバネを備え、
    前記バネのバネ定数をk1とし、前記弁の上流側から弁に作用する圧力の流量変化率をR2とするとき、下記式
    R2>(k1+k2)/Sv・da/dQ
    ここで、aは弁開度、Qは流量、Svは前記弁に作用する圧力の受圧面積である、
    を満たすことを特徴とする請求項21に記載の液体吐出ヘッド。
  23. 前記差圧発生手段は前記共通供給流路および前記共通回収流路より下流側に設けられ、
    当該差圧発生手段は、
    容積が可変である第一圧力室と、
    前記第一圧力室より下流側に設けられる第二圧力室と、
    前記第一圧力室と第二圧力室とを連通する開口部と、
    前記第一圧力室内に設けられ、前記第一圧力室と前記第二圧力室との間の流抵抗を可変とし、前記開口部との間のギャップを開放する方向へ付勢された弁と、
    前記第一圧力室の圧力変動に基づいて変位可能であって、当該変位を前記弁に伝達することによって、前記弁に作用する付勢力と合わせて、前記弁の位置を可変とさせる受圧部と、
    を含むことを特徴とする請求項20に記載の液体吐出ヘッド。
  24. 前記差圧発生手段は、前記弁を付勢するバネを備え、
    前記バネのバネ定数をk2とし、前記弁の下流側から弁に作用する圧力の流量変化率をR3とするとき、下記式
    R3>(k1+k2)/Sv・da/dQ
    ここで、aは弁開度、Qは流量、Svは前記弁に作用する圧力の受圧面積である、
    を満たすことを特徴とする請求項23に記載の液体吐出ヘッド。
  25. 前記記録素子を内部に備える圧力室を備え、当該圧力室内の液体は前記供給流路と前記回収流路を介して外部との間で循環されることを特徴とする請求項17ないし24のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
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