JP2017122992A - 透明導電性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、ブロッキングを抑制しつつ、結晶化速度の短縮を図ることができる透明導電性フィルムを提供すること。【解決手段】透明導電性フィルム1は、透明基材2と、第1ハードコート層3Aと、第1非晶質透明導電層5Aとを順に備える透明導電性フィルム1であって、第1ハードコート層3Aは、樹脂および粒子7を含有し、透明導電性フィルム1の上面は、第1平坦部10Aと、第1平坦部10Aから上側に突出する第1凸部11Aとを有し、第1凸部11Aの高さが、0.15μm以上0.55μm以下であり、第1凸部11Aの幅が、1.0μm以上5.0μm以下であり、第1凸部11Aの個数が、300個/mm2以上1000個/mm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電性フィルム、詳しくは、タッチパネル用フィルムなどに用いられる透明導電性フィルムに関する。
従来から、画像表示装置は、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などからなる透明配線層が形成されたタッチパネル用フィルムを備えることが知られている。タッチパネル用フィルムは、一般的に、ITO層などを透明基材に積層した透明導電性フィルムにおいて、ITO層を配線パターンにパターニングすることにより製造される。
このような透明導電性フィルムでは、ロールトゥロールで長尺なフィルムとしてロールに巻き取りながら製造される。このため、巻き取られたロール状フィルムにおいて、透明導電性フィルムの一方面が、その透明導電性フィルムの他方面と圧着する不具合(ブロッキング)が生じる。
そこで、特許文献1には、基材と、基材の一方面に順次形成された第1ハードコート層、第1透明導体層および第1金属層とを有し、第1ハードコート層はバインダー樹脂と複数の粒子を含有し、粒子の直径は、バインダー樹脂の平坦な領域の厚さより大きく、第1金属層は、その表面に複数の凸部を有する透明導電性フィルムが提案されている。特許文献1の透明導電性フィルムは、ブロッキングの発生を抑制している。
特開2013−107349号公報
ところで、ITOなどからなる透明導電層は、一般的にスパッタリングなどにより非晶質のITO層を形成し、その後、表面抵抗値を低減させるために、加熱などにより結晶化(転化)させる。
しかしながら、特許文献1の透明導電性フィルムでは、表面に凹凸形状を有しているため、すなわち、ITO層が凹凸形状を有しているため、結晶化する時間が増加してしまい、生産性が低下する不具合が生じる。特に、この結晶化時間の増加は、酸化スズの含有割合が高いITOを採用する場合に生じ易い。
本発明の目的は、ブロッキングを抑制しつつ、結晶化速度の短縮を図ることができる透明導電性フィルムを提供することにある。
本発明は、
[1]透明基材と、ハードコート層と、非晶質透明導電層とを順に備える透明導電性フィルムであって、前記ハードコート層は、樹脂および粒子を含有し、前記透明導電性フィルムの一方面は、平坦部と、前記平坦部から厚み方向一方側に突出する凸部とを有し、前記凸部の高さが、0.15μm以上0.55μm以下であり、前記凸部の幅が、1.0μm以上5.0μm以下であり、前記凸部の個数が、300個/mm以上1000個/mm以下である、透明導電性フィルム、
[2]前記ハードコート層と前記非晶質透明導電層との間に配置される光学調整層をさらに備える、[1]に記載の透明導電性フィルム、
[3]前記非晶質透明導電層が、酸化スズの含有割合が6.5質量%以上であるインジウムスズ複合酸化物からなる、[1]または[2]に記載の透明導電性フィルム。
[4]前記透明基材の算術平均粗さが、2.0nm以下である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム、
[5]前記非晶質透明導電層を結晶化してなる結晶質透明導電層を備える、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム
である。
本発明の透明導電性フィルムは、ブロッキングを抑制することができる。また、結晶化速度が短縮されているため、生産性に優れる。
図1は、本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の側断面図を示す。 図2は、図1の透明導電性フィルムの非晶質透明導電層を結晶化した場合の側断面図を示す。 図3は、図1の一部拡大図を示す。 図4は、本発明の透明導電性フィルムの他の実施形態の側断面図(平坦部の幅が狭い実施形態)を示す。 図5は、本発明の透明導電性フィルムの他の実施形態(透明基材の上面にのみ透明導電層を備える実施形態)の側断面図を示す。
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。図2〜図5についても、図1に準拠する。
1.透明導電性フィルム
透明導電性フィルム1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有し、厚み方向と直交する所定方向(面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。透明導電性フィルム1は、例えば、画像表示装置に備えられるタッチパネル用基材などの一部品であり、つまり、画像表示装置ではない。すなわち、透明導電性フィルム1は、画像表示装置などを作製するための部品であり、LCDモジュールなどの画像表示素子を含まず、後述する透明基材2とハードコート層3と光学調整層4と非晶質透明導電層5とからなり、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
具体的には、図1に示すように、透明導電性フィルム1は、透明基材2と、その両面に、ハードコート層3と、光学調整層4と、非晶質透明導電層5とを順に備える。より具体的には、透明導電性フィルム1は、透明基材2と、透明基材2の上面(一方面)に配置される第1ハードコート層3Aと、第1ハードコート層3Aの上面に配置される第1光学調整層4Aと、第1光学調整層4Aの上面に配置される第1非晶質透明導電層5Aと、透明基材2の下面(他方面)に配置される第2ハードコート層3Bと、第2ハードコート層3Bの下面に配置される第2光学調整層4Bと、第2光学調整層4Bの下面に配置される第2非晶質透明導電層5Bとを備える。すなわち、透明導電性フィルム1は、下から順に、第2非晶質透明導電層5B、第2光学調整層4B、第2ハードコート層3B、透明基材2、第1ハードコート層3A、第1光学調整層4Aおよび第1非晶質透明導電層5Aを備える。
透明導電性フィルム1は、好ましくは、透明基材2と、ハードコート層3(第1ハードコート層3Aおよび第2ハードコート層3B)と、光学調整層4(第1光学調整層4Aおよび第2光学調整層4B)と、非晶質透明導電層5(第1非晶質透明導電層5Aおよび第2非晶質透明導電層5B)とからなる。
透明導電性フィルム1は、後述する平坦部10および凸部11を有する。以下、各層について詳述する。
2.透明基材
透明基材2は、透明導電性フィルム1の機械強度を確保する基材である。透明基材2は、非晶質透明導電層5を、ハードコート層3および光学調整層4とともに、支持している。
透明基材2は、例えば、透明性を有する高分子フィルムである。高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)などのオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂などが挙げられる。高分子フィルムは、単独使用または2種以上併用することができる。
透明性、耐熱性、機械的強度などの観点から、好ましくは、オレフィン樹脂が挙げられ、より好ましくは、COPが挙げられる。
透明基材2の算術平均粗さRaは、例えば、2.0nm以下、好ましくは、1.5nm以下であり、また、例えば、0.1nm以上、好ましくは、0.2nm以上である。透明基材2の算術平均粗さを上記範囲とすることにより、平坦部10(後述)をより確実に形成することができ、耐ブロッキング性をより一層向上させることができる。
算術平均粗さRaは、例えば、微細形状測定器(「SUREFCORDER ET 4000A」、小坂研究所社製)により測定することができる。
透明基材2の厚みは、機械的強度、耐擦傷性、透明導電性フィルム1をタッチパネル用フィルムとした際の打点特性などの観点から、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、150μm以下である。
透明基材2の厚みは、例えば、マイクロゲージ式厚み計を用いて測定することができる。
なお、透明基材2の上面および/または下面には、必要に応じて、易接着層、接着剤層、セパレータなどが設けられていてもよい。
3.第1ハードコート層
第1ハードコート層3Aは、複数の透明導電性フィルム1を積層した場合などに、透明導電性フィルム1の表面(すなわち、第1非晶質透明導電層5Aの上面、および、第2非晶質透明導電層5Bの下面)、または、結晶化後の透明導電性フィルム1Aの表面(すなわち、第1結晶質透明導電層6Aの上面、および、第2結晶質透明導電層6Bの下面)に耐ブロッキング性を付与するためのアンチブロッキング層である。また、透明導電性フィルム1の擦り傷を生じにくくするための擦傷保護層でもある。
第1ハードコート層3Aは、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、例えば、透明基材2の上面全面に、透明基材2の上面に接触するように、配置されている。より具体的には、第1ハードコート層3Aは、透明基材2と光学調整層4との間に、透明基材2の上面および光学調整層4の下面に接触するように、配置されている。
第1ハードコート層3Aは、例えば、ハードコート組成物から形成される層である。
ハードコート組成物は、樹脂および粒子7を含有し、好ましくは、樹脂および粒子7からなる。
樹脂としては、例えば、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂)などが挙げられ、好ましくは、硬化性樹脂が挙げられる。
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(具体的には、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性炭素−炭素二重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。そのような官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基(メタクリロイル基および/またはアクリロイル基)などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどの(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂以外の硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。
樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
粒子7としては、無機粒子、有機粒子などが挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどからなる金属酸化物粒子、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩粒子などが挙げられる。有機粒子としては、例えば、架橋アクリル樹脂粒子などが挙げられる。粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
粒子7としては、ヘイズ低減の観点から、好ましくは、有機粒子、より好ましくは、架橋アクリル樹脂粒子が挙げられる。
粒子7の形状としては、例えば、球状、板状、針状、破砕状などが挙げられるが、好ましくは、球状が挙げられる。これにより、凸部11の幅を容易に好適な範囲に設定することができる。
粒子7の最頻粒子径は、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1.0μm以上であり、また、例えば、2.5μm以下、好ましくは、1.8μm以下、より好ましくは、1.5μm以下である。
本明細書において、最頻粒子径とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、例えば、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA−3000S」)を用いて、所定条件(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)にて、測定することによって求められる。測定試料としては、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させたものを用いる。
粒子7の含有割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
第1ハードコート層3Aは、ハードコート平坦部8とハードコート凸部9とを有している。
ハードコート平坦部8は、第1ハードコート層3Aの上面における平坦な部分であり、ハードコート平坦部8における第1ハードコート層3Aは、相対的に樹脂が占める。
第1ハードコート層3Aのハードコート平坦部8における厚みは、例えば、0.3μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、2.0μm以下、好ましくは、1.0μm以下、より好ましくは、0.8μm以下である。
ハードコート凸部9は、第1ハードコート層3Aの上面において、ハードコート平坦部8に対して上側に凸となるように突出する部分であり、ハードコート凸部9における第1ハードコート層3Aは、相対的に粒子7が占める。
ハードコート凸部9の幅(裾野径)は、例えば、1.0μm以上、好ましくは、2.0μm以上であり、また、例えば、5.0μm以下、好ましくは、4.0μm以下である。
ハードコート凸部9の高さ、すなわち、ハードコート平坦部8からハードコート凸部9の上端(頂点)までの上下方向距離は、例えば、0.15μm以上、好ましくは、0.40μm以上であり、また、例えば、0.55μm以下である。
ハードコート凸部9の個数は、例えば、300個/mm以上、好ましくは、400個/mm以上であり、また、例えば、1000個/mm以下、好ましくは、850個/mm以下、より好ましくは、600個/mm以下である。
ハードコート平坦部8の厚み、ハードコート凸部9の幅および高さは、後述する透明導電性フィルム1の表面の平坦部10の厚みおよび凸部11の幅および高さと同様の測定方法によって測定することができる。
4.第1光学調整層
第1光学調整層4Aは、第1ハードコート層3Aとともに、第1非晶質透明導電層5A(または第1結晶質透明導電層6A)における配線パターンの視認を抑制しつつ、透明導電性フィルム1に優れた透明性を確保するために、透明導電性フィルム1の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。
第1光学調整層4Aは、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、例えば、第1ハードコート層3Aの上面全面に、第1ハードコート層3Aの上面に接触するように、配置されている。より具体的には、第1光学調整層4Aは、第1ハードコート層3Aと第1非晶質透明導電層5Aとの間に、第1ハードコート層3Aの上面および第1非晶質透明導電層5Aの下面に接触するように、配置されている。
第1光学調整層4Aは、第1ハードコート層3Aに対応する凸部および平坦部を有する。
第1光学調整層4Aは、光学調整組成物から形成される層である。
光学調整組成物は、例えば、樹脂を含有する。光学調整組成物は、好ましくは、樹脂と粒子とを含有し、より好ましくは、樹脂と粒子とからなる。
樹脂としては特に限定されないが、ハードコート組成物で用いる樹脂と同一のものが挙げられる。樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、硬化性樹脂、より好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
樹脂の含有割合は、光学調整組成物に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
粒子としては、第1光学調整層4Aの求める屈折率に応じて好適な材料を選択することができ、無機粒子、有機粒子などが挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化などからなる金属酸化物粒子、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩粒子などが挙げられる。有機粒子としては、例えば、架橋アクリル樹脂粒子などが挙げられる。粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
粒子としては、好ましくは、無機粒子、より好ましくは、金属酸化物粒子、さらに好ましくは、酸化ジルコニウム粒子(ZnO)が挙げられる。
粒子の平均粒子径(メジアン径)は、例えば、第1光学調整層4Aの厚みよりも小さく、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。
粒子の含有割合は、光学調整組成物に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、75質量%以下である。
第1光学調整層4Aの屈折率は、例えば、1.50以上、好ましくは、1.60以上であり、また、例えば、1.80以下、好ましくは、1.75以下である。
屈折率は、例えば、アッベ屈折率計により測定することができる。
第1光学調整層4Aの厚みは、例えば、50nm以上、好ましくは、80nm以上であり、また、例えば、300nm以下、好ましくは、200nm以下である。第1光学調整層4Aの厚みを上記範囲とすることにより、ハードコート平坦部8およびハードコート凸部9の形状に沿うように、均一な厚みで、第1光学調整層4Aを形成することができる。
第1光学調整層4Aの厚みは、例えば、分光エリプソメーターにより測定することができる。
5.第1非晶質透明導電層
第1非晶質透明導電層5Aは、必要に応じて結晶化された後に、後工程で配線パターンに形成して、パターン部を形成するための導電層である。
第1非晶質透明導電層5Aは、透明導電性フィルム1の最上層であって、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、第1光学調整層4Aの上面全面に、第1光学調整層4Aの上面に接触するように、配置されている。
第1非晶質透明導電層5Aは、第1ハードコート層3Aに対応する凸部および平坦部を有する。
第1非晶質透明導電層5Aは、非晶質(アモルファス)の透明導電層から形成されている。
第1非晶質透明導電層5Aの材料としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子をドープしていてもよい。
第1非晶質透明導電層5Aの材料は、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられ、好ましくは、インジウム含有酸化物、より好ましくは、ITOが挙げられる。
第1非晶質透明導電層5Aの材料としてITOを用いる場合、酸化スズ(SnO)含有割合は、酸化スズおよび酸化インジウム(In)の合計量に対して、例えば、5.0質量%以上、好ましくは、6.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。ITO中における酸化スズの含有割合を上記下限以上とすることにより、ITO層の耐久性をより一層良好にすることができる。酸化スズの含有量を上記上限以下とすることにより、ITO層の結晶化を容易にし、透明性や比抵抗の安定性を向上させることができる。
酸化スズの含有割合は、例えば、蛍光X線分析装置を用いて、Si原子およびIn原子のピーク強度を測定することにより算出することができる。
本明細書中における「ITO」とは、少なくともインジウム(In)とスズ(Sn)とを含む複合酸化物であればよく、これら以外の追加成分を含んでもよい。追加成分としては、例えば、In、Sn以外の金属元素が挙げられ、具体的には、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、W、Fe、Pb、Ni、Nb、Cr、Gaなどが挙げられる。
第1非晶質透明導電層5Aの厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下である。第1非晶質透明導電層5Aの厚みを上記範囲とすることにより、ハードコート平坦部8およびハードコート凸部9の形状に沿うように、均一な厚みで、第1非晶質透明導電層5Aを形成することができる。また、第1非晶質透明導電層5Aの結晶化速度を短縮することができる。
第1非晶質透明導電層5Aの厚みは、例えば、分光エリプソメーターにより測定することができる。
第1非晶質透明導電層5Aが非晶質であることは、例えば、第1非晶質透明導電層5AがITO層である場合は、20℃の塩酸(濃度5質量%)に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm程度の間の端子間抵抗を測定することで判断できる。本明細書においては、透明導電性フィルム1を塩酸(20℃、濃度:5質量%)に浸漬・水洗・乾燥した後に、15mm間の端子間抵抗が10kΩを超過する場合、ITO層が非晶質であるものとする。
6.第2ハードコート層
第2ハードコート層3Bは、透明基材2の下面全面に、透明基材2の下面に接触するように、配置されている。より具体的には、第2ハードコート層3Bは、透明基材2と第2光学調整層4Bとの間に、透明基材2の下面および第2光学調整層4Bの上面に接触するように、配置されている。
第2ハードコート層3Bは、第1ハードコート層3Aと同様の層であり、例えば、第1ハードコート層3Aで上述したものと同一のものが挙げられる。そのため、第2ハードコート層3Bも、ハードコート平坦部8とハードコート凸部9とを有している。
7.第2光学調整層
第2光学調整層4Bは、第2ハードコート層3Bの下面全面に、第2ハードコート層3Bの下面に接触するように、配置されている。より具体的には、第2光学調整層4Bは、第2ハードコート層3Bと第2非晶質透明導電層5Bとの間に、第2ハードコート層3Bの下面および第2非晶質透明導電層5Bの上面に接触するように、配置されている。
第2光学調整層4Bは、第1光学調整層4Aと同様の層であり、例えば、第1光学調整層4Aで上述したものと同一のものが挙げられる。そのため、第2光学調整層4Bも、第2ハードコート層3Bに対応する凸部および平坦部を有する。
8.第2非晶質透明導電層
第2非晶質透明導電層5Bは、透明導電性フィルム1の最下層であって、第2光学調整層4Bの下面全面に、第2光学調整層4Bの下面に接触するように、配置されている。
第2非晶質透明導電層5Bは、非晶質(アモルファス)の透明導電層であって、第1非晶質透明導電層5Aと同様の層であり、例えば、第1非晶質透明導電層5Aで上述したものと同一のものが挙げられる。そのため、第2非晶質透明導電層5Bも、第2ハードコート層3Bに対応する凸部および平坦部を有する。
9.透明導電性フィルムの製造方法
透明導電性フィルム1を製造するには、例えば、透明基材2の両面に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質透明導電層5を順に設ける。すなわち、透明基材2の上面に第1ハードコート層3A、その下面に第2ハードコート層3Bを設け、次いで、第1ハードコート層3Aの上面に第1光学調整層4A、第2ハードコート層3Bの下面に第2光学調整層4Bを設け、次いで、第1光学調整層4Aの上面に第1非晶質透明導電層5A、第2光学調整層4Bの下面に第2非晶質透明導電層5Bを設ける。以下、詳述する。
まず、公知または市販の透明基材2を用意する。
その後、必要に応じて、透明基材2とハードコート層3との密着性の観点から、透明基材2の表面に、例えば、スパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を実施することができる。また、溶剤洗浄、超音波洗浄などにより透明基材2を除塵、清浄化することができる。
次いで、透明基材2の両面に、ハードコート層3を設ける。例えば、透明基材2の両面にハードコート組成物を湿式塗工することにより、透明基材2の上面に第1ハードコート層3A、透明基材2の下面に第2ハードコート層3Bを形成する。
具体的には、例えば、ハードコート組成物を溶媒で希釈した希釈液を調製し、続いて、希釈液を透明基材2の両面に塗布して、希釈液を乾燥する。
溶媒としては、例えば、有機溶媒、水系溶媒(具体的には、水)などが挙げられ、好ましくは、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール化合物、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン化合物、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル化合物、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物などが挙げられる。これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、エステル化合物、エーテル化合物が挙げられる。
希釈液における固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
塗布方法としては希釈液および透明基材2に応じて適宜選択することができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
乾燥温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、100℃以下である。
乾燥時間は、例えば、0.5分以上、好ましくは、1分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、20分以下である。
この際、乾燥後の塗布膜の厚みが、含有されている粒子の直径よりも薄くなるようにハードコート組成物を塗布する。これにより、ハードコート層3にハードコート平坦部8およびハードコート凸部9を形成することができる。ひいては、その後の光学調整層4および非晶質透明導電層5の形成によって、透明導電性フィルム1の表面(上面または下面)に所望の平坦部10および凸部11を形成することができる。
上記した塗布および乾燥により、透明基材2の上面に、ハードコート組成物をフィルム形状に形成する。
その後、ハードコート組成物の樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合は、希釈液の乾燥後に、活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。
なお、ハードコート組成物の樹脂として、熱硬化性樹脂を含有する場合は、この乾燥工程により、溶媒の乾燥とともに、熱硬化性樹脂を熱硬化することができる。
これにより、透明基材2の上面に、ハードコート平坦部8およびハードコート凸部9を有する第1ハードコート層3Aが形成され、透明基材2の下面に、ハードコート平坦部8およびハードコート凸部9を有する第2ハードコート層3Bが形成される。
次いで、ハードコート層3が両面に形成された透明基材2の両面に光学調整層4を設ける。例えば、ハードコート層3(第1ハードコート層3A、第2ハードコート層3B)の表面に光学調整組成物を湿式塗工することにより、第1ハードコート層3Aの上面に第1光学調整層4A、第2ハードコート層3Bの下面に第2光学調整層4Bを形成する。
具体的には、例えば、必要に応じて光学調整組成物を溶媒で希釈した希釈液を調製し、続いて、希釈液を第1ハードコート層3Aの上面および第2ハードコート層3Bの下面に塗布して、希釈液を乾燥する。
光学調整組成物の調製、塗布、乾燥などの条件は、ハードコート組成物で例示した調製、塗布、乾燥などの条件と同一のものが挙げられる。
また、光学調整組成物の樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合は、希釈液の乾燥後に、活性エネルギー線を照射することにより、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。
これにより、第1ハードコート層3Aの上面に、ハードコート平坦部8およびハードコート凸部9の形状に沿うように、均一な厚みで第1光学調整層4Aが形成され、第2ハードコート層3Bの下面に、ハードコート平坦部8およびハードコート凸部9の形状に沿うように、均一な厚みで第2光学調整層4Bが形成される。
次いで、光学調整層4が両面に形成された透明基材2の両面に非晶質透明導電層5を設ける。例えば、乾式方法により、第1光学調整層4Aの上面に第1非晶質透明導電層5A、第2光学調整層4Bの下面に第2非晶質透明導電層5Bを形成する。
乾式方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。この方法によって薄膜の非晶質透明導電層5を形成することができる。
スパッタリング法を採用する場合、ターゲット材としては、非晶質透明導電層5を構成する上述の無機物が挙げられ、好ましくは、ITOが挙げられる。ITOの酸化スズ濃度は、ITO層の耐久性、結晶化などの観点から、例えば、5.0質量%以上、好ましくは、6.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。
スパッタリングガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガスが挙げられる。また、必要に応じて、酸素ガスなどの反応性ガスを併用することができる。反応性ガスを併用する場合において、反応性ガスの流量(sccm)比は特に限定しないが、スパッタリングガスおよび反応性ガスの合計流量比に対して、例えば、0.1流量%以上5流量%以下である。
スパッタリング時の気圧は、スパッタリングレートの低下抑制、放電安定性などの観点から、例えば、1Pa以下であり、好ましくは、0.1Pa以上0.7Pa以下である。
スパッタリング法に用いる電源は、例えば、DC電源、AC電源、MF電源およびRF電源のいずれであってもよく、また、これらの組み合わせであってもよい。
なお、上記製造方法では、透明基材2の両面に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質透明導電層5をそれぞれ同時に形成しているが、例えば、透明基材2の上面に第1ハードコート層3A、第1光学調整層4Aおよび第1非晶質透明導電層5Aを順に設けた後に、続いて、透明基材2の下面に第2ハードコート層3B,第2光学調整層4Bおよび第2非晶質透明導電層5Bを順に形成してもよい。
また、所望厚みの非晶質透明導電層5を形成するために、ターゲット材やスパッタリングの条件などを適宜設定して複数回スパッタリングを実施してもよい。
また、上記製造方法では、ロールトゥロール方式にて、透明基材2を搬送させながら、その透明基材2の上面に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質透明導電層5を順に形成してもよく、また、これらの層の一部または全部をバッチ方式(枚葉方式)にて形成してもよい。
また、必要に応じて、後述する結晶化処理の前または後に、公知のエッチング手法によって非晶質透明導電層5をストライプ状などの配線パターンに形成してもよい。
これにより、第1光学調整層4Aの上面に、第1光学調整層4Aが被覆されたハードコート平坦部8およびハードコート凸部9の形状に沿うように、均一な厚みで第1非晶質透明導電層5Aが形成される。また、第2光学調整層4Bの下面に、第2光学調整層4Bが被覆されたハードコート平坦部8およびハードコート凸部9の形状に沿うように、均一な厚みで第2非晶質透明導電層5Bが形成される。
その結果、透明導電性フィルム1が得られる。
このようにして得られる透明導電性フィルム1は、その上面に、第1平坦部10Aと、第1凸部11Aとを有し、また、その下面に、第2平坦部10Bと、第2凸部11Bとを有している。
第1平坦部10Aは、透明導電性フィルム1の上面(すなわち、第1非晶質透明導電層5Aの上面)における平坦な部分であり、第1ハードコート層3Aのハードコート平坦部8に起因している。
第1凸部11Aは、透明導電性フィルム1の上面において、第1平坦部10Aに対して上側に凸となるように突出する部分であり、第1ハードコート層3Aのハードコート凸部9に起因している。
第2平坦部10Bは、透明導電性フィルム1の下面(すなわち、第2非晶質透明導電層5Aの下面)における平坦な部分であり、第2ハードコート層3Bのハードコート平坦部8に起因している。
第2凸部11Bは、透明導電性フィルム1の下面において、第2平坦部10Bに対して下側に凸となるように突出する部分であり、第2ハードコート層3Bのハードコート凸部9に起因している。
第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの幅W(裾野径)は、それぞれ、1.0μm以上、好ましくは、2.0μm以上であり、また、5.0μm以下、好ましくは、4.0μm以下である。幅Wが上記範囲外であると、非晶質透明導電層の結晶化が低下し、また、ブロッキングが生じやすくなる。
第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの高さH、すなわち、第1平坦部10A(または第2平坦部10B)から第1凸部11Aの上端(または第2凸部11Bの下端)までの上下方向距離は、それぞれ、0.15μm以上、好ましくは、0.40μm以上であり、また、0.55μm以下である。高さHが上記範囲を上回ると、非晶質透明導電層の結晶化が低下する。一方、高さHが上記下限を下回ると、透明導電性フィルム1のブロッキングが生じやすくなる。
これら凸部11の幅Wおよび高さHは、例えば、ナノスケールハイブリット顕微鏡)を用いて、5倍の倍率にて、透明導電性フィルムの上面の表面形状を観察することにより測定することができる。具体的には、図3に参照されるように、第1平坦部10Aの位置から第1凸部11Aの頂点までの高さを、第1凸部の高さHとして測定する。また、第1平坦部11Aの位置から高さ10nmに位置する第1凸部の裾部分における2つの地点(Wa、Wb)を特定し、続いて、これらの2地点(Wa、Wb)の面方向長さWを、凸部の幅として測定する。なお、高さHおよび幅Wの値は、任意に20個の凸部を抽出し、これらの20個の凸部の平均値を採用する。
第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの個数は、それぞれ、300個/mm以上、好ましくは、400個/mm以上であり、また、1000個/mm以下、好ましくは、850個/mm以下、より好ましくは、600個/mm以下である。個数が上記範囲を上回ると、非晶質透明導電層の結晶化が低下し、また、ヘイズが増大する。一方、個数が上記下限を下回ると、透明導電性フィルム1のブロッキングが生じやすくなる。
凸部11の個数は、例えば、光学顕微鏡にて、10倍の倍率で視野が1.45mmになるように、透明導電性フィルム1の表面を撮影し、撮影した画像中の凸部11の個数を数えることにより測定することができる。
そして、透明導電性フィルム1は、透明基材2と、その上面に第1ハードコート層3Aと、第1光学調整層4Aと、第1非晶質透明導電層5Aとを順に備え、その下面に第2ハードコート層3Bと、第2光学調整層4Bと、第2非晶質透明導電層5Bとを順に備えている。また、透明導電性フィルム1の上面は、第1平坦部10Aと第1凸部11Aとを有し、透明導電性フィルム1の下面は、第2平坦部10Bと第2凸部11Bとを有している。また、第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの高さが、0.15μm以上0.55μm以下であり、第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの幅が、1.0μm以上5.0μm以下であり、第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの個数が、300個/mm以上1000個/mm以下である。
このため、複数の透明導電性フィルム1を積層した際に、これらの表面同士の密着を抑制できるため、ブロッキングを抑制することができる。また、第1非晶質透明導電層5Aの結晶化速度を短縮できるため、第1結晶質透明導電層6Aに短時間に結晶化することができ、生産性に優れる。特に、第1非晶質透明導電層5Aが高Sn比率のITOである場合に、結晶化速度を有効に向上させることができる。
この透明導電性フィルム1は、例えば、画像表示装置に備えられるタッチパネル用基材に用いられる。タッチパネルの形式としては、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種方式が挙げられ、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
10.透明導電性フィルムの結晶化
非晶質透明導電層5(第1非晶質透明導電層5Aおよび第2非晶質透明導電層5B)を結晶化する方法を説明する。
具体的には、透明導電性フィルム1に大気下で加熱処理を実施する。
加熱処理は、例えば、赤外線ヒーター、オーブンなどを用いて実施することができる。
加熱温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、160℃以下である。加熱温度を上記範囲内とすることにより、透明基材2の熱損傷および透明基材2から発生する不純物を抑制しつつ、結晶化を確実にすることができる。
加熱時間は、加熱温度に応じて適宜決定されるが、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上であり、また、例えば、5時間以下、好ましくは、3時間以下である。
これにより、図2に示すように、結晶化された結晶質透明導電層6を備える透明導電性フィルム1Aが得られる。すなわち、結晶質透明導電層6(第1結晶質透明導電層6Aおよび第2結晶質透明導電層6B)を備える透明導電性フィルム1A(結晶質透明導電フィルム)が得られる。
この透明導電性フィルム1Aは、図2に示すように、例えば、透明基材2と、ハードコート層3と、光学調整層4と、結晶質透明導電層6とを厚み方向に順に備える。つまり、透明導電性フィルム1Aは、透明基材2と、透明基材2の上面に配置される第1ハードコート層3Aと、第1ハードコート層3Aの上面に配置される第1光学調整層4Aと、第1光学調整層4Aの上面に配置される第1結晶質透明導電層6Aと、透明基材2の下面に配置される第2ハードコート層3Bと、第2ハードコート層3Bの下面に配置される第2光学調整層4Bと、第2光学調整層4Bの下面に配置される第2結晶質透明導電層6Bとを備える。透明導電性フィルム1Aは、好ましくは、透明基材2と、ハードコート層3(第1ハードコート層3Aおよび第2ハードコート層3B)と、光学調整層4(第2光学調整層4Aおよび第2光学調整層4B)と、結晶質透明導電層6(第1結晶質透明導電層7Aおよび第2結晶質透明導電層6B)とからなる。
透明基材2、ハードコート層3および光学調整層4は、上記したものと同一のものである。
第1結晶質透明導電層6Aは、透明導電性フィルム1Aの最上層であって、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、第1光学調整層4Aの上面全面に、第1光学調整層4Aの上面に接触するように、配置されている。
第1結晶質透明導電層6Aは、結晶質の透明導電層である。
第1結晶質透明導電層6Aの材料および形状は、第1非晶質透明導電層5Aと同一であり、第1平坦部10Aおよび第1凸部11Aを有する。
第2結晶質透明導電層6B、透明導電性フィルム1Aの最下層であって、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、第2光学調整層4Bの下面全面に、第2光学調整層4Bの下面に接触するように、配置されている。
第2結晶質透明導電層6Bは、結晶質の透明導電層である。
第2結晶質透明導電層6Bの材料および形状は、第2非晶質透明導電層5Bと同一であり、第2平坦部10Bおよび第2凸部11Bを有する。
結晶質透明導電層6が結晶質であることは、例えば、結晶質透明導電層6がITO層である場合は、0℃の塩酸(濃度5質量%)に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm程度の間の端子間抵抗を測定することで判断できる。本明細書においては、透明導電性フィルム1を塩酸(20℃、濃度:5質量%)に浸漬・水洗・乾燥した後に、15mm間の端子間抵抗が10MΩ以下である場合、ITO層が結晶質であるものとする。
この透明導電性フィルム1Aは、透明基材2と、その上面に、第1ハードコート層3Aと、第1光学調整層4Aと、第1非晶質透明導電層5Aを結晶化してなる第1結晶質透明導電層6Aとを順に備え、その下面に、第2ハードコート層3Bと、第2光学調整層4Bと、第2非晶質透明導電層5Bを結晶化してなる第2結晶質透明導電層6Bとを順に備えている。ている。また、透明導電性フィルム1Aの上面は、第1平坦部10Aと第1凸部11Aとを有し、透明導電性フィルム1Aの下面は、第2平坦部10Bと第2凸部11Bとを有している。また、第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの高さが、0.15μm以上0.55μm以下であり、第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの幅が、1.0μm以上5.0μm以下であり、第1凸部11Aおよび第2凸部11Bの個数が、300個/mm以上1000個/mm以下である。
このため、複数の透明導電性フィルム1Aを積層した際に、これらの表面同士の密着を抑制できるため、ブロッキングを抑制することができる。
(変形例)
図1の実施形態では、透明導電性フィルム1は、第1平坦部10Aの幅は、第1凸部11Aの幅よりも広いが、例えば、図4に示すように、第1平坦部10Aの幅は、第1凸部11Aの幅よりも狭くてもよい。
また、図1の実施形態では、透明導電性フィルム1は、透明基材2の両面に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質透明導電層5をこの順に備えるが、例えば、透明基材2の上面または下面にのみに、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質透明導電層5を備えていてもよい。
具体的には、例えば、図5に示すように、透明導電性フィルム1は、透明基材2の上面に、第1ハードコート層3A(ハードコート層)、第1光学調整層4A(光学調整層)および第1非晶質透明導電層5A(非晶質透明導電層)を備える一方、透明基材2の下面には、第2ハードコート層3B、第2光学調整層4Bおよび第2非晶質透明導電層5Bを備えなくてもよい。
また、図1の実施形態では、透明導電性フィルム1は、透明基材2の両面に、ハードコート層3、光学調整層4および非晶質透明導電層5をこの順に備えるが、例えば、図示しないが、光学調整層4を備えなくてもよい。すなわち、透明導電性フィルム1は、透明基材2の両面に、ハードコート層3および非晶質透明導電層5のみを備えていてもよい。
これらの変形例は、結晶化した透明導電性フィルム1Aについても同様である。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
実施例1
透明基材として、厚み100μmからなる長尺なシクロオレフィンポリマーフィルム(COPフィルム、日本ゼオン社製、「ゼオノア」)を用いた。透明基材の表面の算術平均粗さRaは、0.2nmであった。
直径(最頻粒子径)1.45μmの粒子(積水化成品工業社製、商品名「テクポリマーSSX−101」、架橋アクリル樹脂、単分散粒子、球状)、バインダー樹脂(DIC社製、商品名「ユニディックELS−888」)および溶媒(酢酸ブチル)を含有するハードコート組成物の希釈液をグラビアコーターを用いて、ハードコート平坦部の乾燥厚み0.85μm、単位面積あたりの粒子数830個/mになるように塗布および乾燥した。これにより、ハードコート層(第1ハードコート層および第2ハードコート層)を形成した。
次いで、ハードコート層の両面(第1ハードコート層の上面および第2ハードコート層の下面)に、屈折率調整剤(JSR社製、商品名「オプスターZ7412」)をグラビアコーターを用いて塗布および乾燥した。これにより、厚み85nmで屈折率1.62の光学調整層(第1光学調整層および第2光学調整層)を形成した。
次いで、ハードコート層および光学調整層を有する透明基材を、巻き取り式スパッタ装置に投入し、光学調整層の両面(第1光学調整層の上面および第2光学調整層の下面)に、透明導電層(第1透明導電層および第2透明導電層)として厚み23nmのインジウム・スズ複合酸化物層を形成した。なお、得られた透明導電層は非晶質であり、Sn比率が6.5wt%であった。
これにより透明導電性フィルムを製造した(図1参照)。
実施例2
ハードコート平坦部の乾燥厚みを0.75μmとし、単位面積あたりの粒子個数を450個/mmに調整した以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
実施例3
直径1.6μmの粒子(綜研化学社製、商品名「MX−150」、架橋アクリル樹脂粒子、単分散粒子、球状)を使用し、ハードコート平坦部の乾燥厚みを1.3μmとし、単位面積あたりの粒子個数を810個/mmに調整した以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
比較例1
ハードコート平坦部の乾燥厚みを0.6μmとし、単位面積あたりの粒子個数を830個/mmに調整した以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
比較例2
直径1.9μmの粒子(綜研化学社製 商品名「MX−180TA」、架橋アクリル樹脂粒子、球状)を使用し、ハードコート平坦部の乾燥厚みを1.3μmとし、単位面積あたりの粒子数を530個/mmに調整した以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
比較例3
ハードコート平坦部の乾燥厚みを1.3μmとし、単位面積あたりの粒子数を810個/mmに調整した以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
比較例4
単位面積あたりの粒子個数を200個/mmに調整した以外は実施例3と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
比較例5
単位面積あたりの粒子個数を1250個/mmに調整した以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを製造した。
(評価)
各実施例および各比較例で得られた透明導電性フィルムについて下記の測定を実施した。結果を表1に示す。
(凸部の高さおよび幅)
ナノスケールハイブリット顕微鏡(キーエンス社製)を用いて、5倍の倍率にて、透明導電性フィルムの上面の表面形状を測定して、粒子に起因する凸部の高さおよび幅を求めた。
具体的には、透明導電性フィルム上面の平坦部の位置から凸部の頂点までの高さを、凸部の高さHとして測定した(図3参照)。また、平坦部の位置から高さ10nmに位置する凸部裾の2つの地点を特定し、これらの2地点の面方向長さWを、凸部の幅として測定した(図3参照)。なお、これらの高さHおよび幅Wの値は、任意に20個の凸部を抽出し、これらの20個の凸部の平均値を採用した。
(単位面積あたりの粒子個数)
光学顕微鏡(キーエンス製)を用いて、10倍の倍率で視野が1.45mmになるように、各透明導電性フィルムの上面を撮影した。撮影した画像中の凸部の個数を数え、1.00mmあたりの個数として算出した。
(Sn比率(酸化スズの含有割合))
各透明導電性フィルムの第1透明導電層の表面を、蛍光X線分析装置(リガク社製 「ZSX100e」)を用いて、Sn原子およびIn原子のピーク強度を測定することにより、ITO中におけるSn比率(酸化スズの含有割合)を算出した。
(アンチブロッキング性)
各透明導電性フィルムの第1透明導電層の表面に、COPフィルム(ゼオノア)を配置して、指圧にて荷重を印加して、フィルムの貼り付き具合を評価した。
COPフィルムが透明導電性フィルムに全く貼りつかなかった場合を○と評価し、COPフィルムが少し貼りつくが、すぐに離れた場合を△と評価し、COPフィルムが貼りついて離れなかった場合を×と評価した。
(結晶化の測定)
(1)各透明導電性フィルムの第1透明導電層の表面抵抗値(初期抵抗値)を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、「Loresta−GP MCP−T610」)を用いて、四端子法により測定した。
(2)次いで、各透明導電性フィルムを120℃20分間の条件で加熱した後、この加熱後の透明導電性フィルムの第1透明導電層の表面抵抗値(第1加熱後抵抗値)を、上記と同様に四端子法により測定した。
(3)次いで、各透明導電性フィルムをさらに145℃60分間の条件で加熱した後、この再加熱後の透明導電性フィルムの第1透明導電層の表面抵抗値(第2加熱後抵抗値)を、上記と同様に四端子法により測定した。
(4)下記式にて、結晶化割合を算出した。
結晶化割合(%)={(初期抵抗値−第1加熱後抵抗値)/(初期抵抗値−第2加熱後抵抗値)}×100
(5)結晶化速度の評価について、結晶化割合が70%以上であった場合を○と評価し、結晶化速度が、70%未満であった場合を×と評価した。
Figure 2017122992
1 透明導電性フィルム
2 透明基材
3A 第1ハードコート層
4A 第1光学調整層
5A 第1非晶質透明導電層
6A 第1結晶質透明導電層
7 粒子
10A 第1平坦部
11A 第1凸部

Claims (5)

  1. 透明基材と、ハードコート層と、非晶質透明導電層とを順に備える透明導電性フィルムであって、
    前記ハードコート層は、樹脂および粒子を含有し、
    前記透明導電性フィルムの一方面は、平坦部と、前記平坦部から厚み方向一方側に突出する凸部とを有し、
    前記凸部の高さが、0.15μm以上0.55μm以下であり、
    前記凸部の幅が、1.0μm以上5.0μm以下であり、
    前記凸部の個数が、300個/mm以上1000個/mm以下であることを特徴とする、透明導電性フィルム。
  2. 前記ハードコート層と前記非晶質透明導電層との間に配置される光学調整層をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
  3. 前記非晶質透明導電層が、酸化スズの含有割合が6.5質量%以上であるインジウムスズ複合酸化物からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
  4. 前記透明基材の算術平均粗さが、2.0nm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
  5. 前記非晶質透明導電層を結晶化してなる結晶質透明導電層を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電性フィルム。
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