以下、実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1では、その紙面に垂直な方向にX軸を、図1の紙面において鉛直方向にY軸を、図1の紙面において水平方向にZ軸をそれぞれ設定している。感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)は、XZ平面に平行に設定されている。第1実施形態にかかる露光装置は、可変パターン形成用の空間光変調器(spatial light modulator:SLM)を使用するマスクレス方式の露光装置である。
図1を参照すると、第1実施形態の露光装置には、光源部LSから露光光(照明光)が供給される。光源部LSとして、例えば米国特許第5,838,709B1号明細書、米国特許第6,590,698B1号明細書、米国特許第6,901,090B1号明細書、米国特許第6,947,123B1号明細書、米国特許第7,098,992B2号明細書、米国特許第7,397,598B2号明細書、米国特許第7,136,402B1号明細書、米国特許公開第2006/050748A1号公報および米国特許公開第2009/185583A1号公報等に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザなどの固体レーザ光源、ファイバーアンプなどを有する光増幅部、及び波長変換部などを含み、波長193nmのパルス光を出力する高調波発生装置を用いてもよい。
光源部LSから供給された高コヒーレンスのパルス光は、遅延光学系1、ビーム送光部2および光路折曲げミラーMR1を経て、回折光学素子3に入射する。ここで、高コヒーレンス光とは、エキシマレーザ光源が供給するレーザ光の横モード数よりも少ない横モード数の光とすることができる。
遅延光学系1は、図2に示すように、光の入射側に設けられたハーフミラー11aを備えている。光源部LSから供給された1つのパルス光L1は、ハーフミラー11aにより、透過光L11と反射光L12とに分割される。ハーフミラー11aを透過した光L11は、直進して別のハーフミラー11bに入射する。
ハーフミラー11aで反射された光L12は、一対のミラー12a,12bが配置された光路、すなわち光L11の光路よりも長い遅延光路を経て、ハーフミラー11bに入射する。光L11は、ハーフミラー11bにより、透過光L111と反射光L112とに分割される。ハーフミラー11bを透過した光L111は、直進して偏光ビームスプリッタ13に入射する。ハーフミラー11bで反射された光L112は、一対のミラー12c,12dおよび半波長板14が配置された光路、すなわち光L111の光路よりも長い遅延光路を経て、偏光ビームスプリッタ13に入射する。
一方、ハーフミラー11aで反射されてミラー12a,12bを含む遅延光路を経た光L12は、ハーフミラー11bにより、透過光L122と反射光L121とに分割される。ハーフミラー11bを透過した光L122は、光L112と同じ遅延光路を経て、偏光ビームスプリッタ13に入射する。ハーフミラー11bで反射された光L121は、光L111と同じ直進光路を経て、偏光ビームスプリッタ13に入射する。光源部LSから供給されたパルス光L1は、偏光ビームスプリッタ13の偏光分離面13aに対してp偏光に設定されている。
したがって、半波長板14を経ることなく偏光ビームスプリッタ13に入射したp偏光の光L111およびL121は、偏光ビームスプリッタ13を透過し、互いにほぼ同じ光路に沿って、遅延光学系1から射出される。半波長板14を経て偏光ビームスプリッタ13に入射したs偏光の光L112およびL122は、偏光ビームスプリッタ13で反射され、光L111およびL121とほぼ同じ光路に沿って、遅延光学系1から射出される。
ここで、一対のハーフミラー11a,11bを透過した光L111は、最も短い光路を経て遅延光学系1から射出される。ハーフミラー11aを透過し且つハーフミラー11bで反射された光L112は、二番目に短い光路を経て射出される。一対のハーフミラー11a,11bで反射された光L121は、三番目に短い光路を経て射出される。ハーフミラー11aで反射され且つハーフミラー11bを透過した光L122は、最も長い光路を経て射出される。
こうして、遅延光学系1は、光源部LSから供給された1つのパルス光L1から、時間的に多重化された4つのパルス光L111,L112,L121,L122を生成する動作を繰り返す生成部を構成している。なお、図2では、入射した1つのパルス光から時間的に多重化された4つのパルス光を生成する構成を例示したが、分割部材としてのハーフミラーと、一対のミラー(必要に応じて、一対のリレーレンズも含む)を有する遅延光路との組を付設することにより、時間的に多重化された所望数のパルス光を生成することができる。
以下、説明の理解を容易にするために、光源部LSと遅延光学系1との協働作用により、互いに同じ光強度を有する多数のパルス光が、一定の時間間隔にしたがって射出されるものとする。換言すれば、光源部LSおよび遅延光学系1は、光源部LSがパルス光を出力する周期よりも短い周期にしたがって、光源部LSが出力するパルス光の強度よりも小さい強度のパルス光を供給する光源部を構成している。
ビーム送光部2は、光源部LSおよび遅延光学系1を経て入射した光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ回折光学素子3へ導くとともに、回折光学素子3に入射する光の位置変動および角度変動をアクティブに補正する。ビーム送光部2は、空間光変調器としての回折光学素子3に入射する光束の断面形状を所定の断面形状にすることで、回折光学素子3上で光が射出される領域を所定の形状にする。ビーム送光部2の詳細については、米国特許公開第2012/0028197号公報などを参照することができる。空間光変調器としての回折光学素子3上で光が射出される領域を所定の形状にするために、所定の形状の開口部を有する絞りを用いても良い。回折光学素子3は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。すなわち、回折光学素子3は、入射光を空間的に変調して射出する空間光変調器である。
具体的に、円形照明用(輪帯照明用、複数極照明用など)の回折光学素子は、例えば矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に円形状(輪帯状、複数極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。一例として、回折光学素子3は、円形照明用の回折光学素子であり、輪帯照明用の回折光学素子、複数極照明用の回折光学素子などと交換可能に設置されている。
回折光学素子3を経た光は、リレー光学系4により集光された後に、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)5に入射する。リレー光学系4は、その前側焦点位置が回折光学素子3の近傍に位置し、且つその後側焦点位置がマイクロフライアイレンズ5の入射側の面に位置している。すなわち、リレー光学系4は、回折光学素子3とマイクロフライアイレンズ5の入射側の面とを光学的にフーリエ変換の関係に位置決めしている。
円形照明用の回折光学素子3を経た光は、図3に示すように、照明光学系の光軸AXを中心とした円形状の光強度分布(照野)を、マイクロフライアイレンズ5の入射側の面に形成する。回折光学素子3とリレー光学系4との間には、入射した光を所望方向に所望距離だけ平行移動させて射出するシフト部6が設けられている。シフト部6の具体的な構成および作用については後述する。
マイクロフライアイレンズは、二次元的に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズが互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズレット(レンズ要素)が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
具体的に、マイクロフライアイレンズ5は、図3に示すように、矩形状の断面を有する多数のレンズレット(波面分割要素)5aを並列的に配置することにより、さらに詳細には縦横に且つ稠密に配列することにより構成されている。ただし、図1および図3では、図示および説明の簡単のために、実際よりもはるかに少ないレンズレット5aによりマイクロフライアイレンズ5を構成した例を示している。マイクロフライアイレンズ5として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号明細書に開示されている。
マイクロフライアイレンズ5に入射した光束は多数のレンズレット5aにより二次元的に分割され、光が入射したレンズレット5aの射出面の近傍にはそれぞれ1つのスポット光(小光源)が形成される。すなわち、マイクロフライアイレンズ5の後側焦点面(レンズレット5aの入射側の屈折面と射出側の屈折面との合成光学系の後側焦点位置)またはその近傍の照明瞳には、入射側の面に形成された光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(多数の小光源からなる実質的な面光源:瞳強度分布)が形成される。
マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光は、コンデンサー光学系7を介して、マスクブラインド8を照明する。コンデンサー光学系7は、その前側焦点位置がマイクロフライアイレンズ5の後側焦点面に位置し、且つその後側焦点位置がマスクブラインド8の面に位置している。すなわち、コンデンサー光学系7は、マイクロフライアイレンズ5の後側焦点面とマスクブラインド8の面とを光学的にフーリエ変換の関係に位置決めしている。その結果、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に形成された多数の小光源からの光は、コンデンサー光学系7を介して、マスクブラインド8を重畳的に照明する。
照明視野絞りとしてのマスクブラインド8の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、光路折曲げミラーMR2、結像光学系9、および光路折曲げミラーMR3を介して、可変パターン形成用の空間光変調器10の複数のミラー要素の配列面(ミラー配列面)を重畳的に照明する。すなわち、結像光学系9は、マスクブラインド8の矩形状の開口部の像を、空間光変調器10のミラー配列面に形成することになる。こうして、照明光学系(1〜9)は、光源部LSから供給されるパルス光により、空間光変調器10のミラー配列面(被照射面)上に矩形状の照明領域を形成する。
空間光変調器10は、図4に示すように、照明光学系(1〜9)の被照射面(投影光学系PLの物体面)に沿って二次元的に配列された複数のミラー要素10aと、複数のミラー要素10aを保持する基盤10bと、基盤10bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素10aの姿勢(位置、傾きなど)を個別に制御駆動する駆動部10cとを備えている。空間光変調器10では、制御系CRからの指令に基づいて作動する駆動部10cの作用により、複数のミラー要素10aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素10aがそれぞれ所定の向き(または位置)に設定される。
空間光変調器10は、図5に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素10aを備え、入射したパルス光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、図4および図5では空間光変調器10が4×4=16個のミラー要素10aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素10aを備えている。
一例によれば、空間光変調器10は、図5に示すように、平面状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素10aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素10aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御系CRからの制御信号に基づいて作動する駆動部10cの作用により独立に制御される。各ミラー要素10aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向(X方向,Z方向)を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的(または離散的)に回転することができる。すなわち、各ミラー要素10aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
図5には外形が正方形状のミラー要素10aを示しているが、ミラー要素10aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素10aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素10aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
第1実施形態では、可変パターン形成用の空間光変調器(パターン形成部)10として、二次元的に配列されて平面状の反射面を有する複数のミラー要素の向きを連続的または離散的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いることができる。この場合、複数のミラー要素は、少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能な平面状の反射面をそれぞれ有する。このようなチルトミラー型の空間光変調器として、たとえば米国特許第6,522,454号明細書および第7,405,862号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。
また、可変パターン形成用の空間光変調器10として、たとえば二次元的に配列されて平面状の反射面を有する複数のミラー要素の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。この場合、複数のミラー要素は、空間光変調器に入射する光の進行方向における位置を変更するように移動する平面状の反射面をそれぞれ有する。このようなピストン型の空間光変調器として、例えば米国特許第5,312,513号および第7,206,117号明細書並びに米国特許公開第2013/0278912号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。
また、可変パターン形成用の空間光変調器10として、二次元的に配列されて段差状の反射面を有する複数のミラー要素の向きを連続的または離散的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いることもできる。この場合、複数のミラー要素は、少なくとも1つの軸廻りに傾斜可能であり且つ段差状の反射面をそれぞれ有する。このような位相段差チルトミラー型の空間光変調器として、たとえば米国特許第7,110,159号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。また、可変パターン形成用の空間光変調器として、二次元的に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を備えた透過型の空間光変調器を用いることもできる。
空間光変調器10では、制御系CRからの制御信号(複数のミラー要素10aの駆動データ)にしたがって、複数のミラー要素10aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素10aがそれぞれ所定の向き(または位置)に設定される。投影光学系PLは、照明光学系(1〜9)により照明された空間光変調器10からの反射光により、フォトレジストが塗布されたウェハ(感光性基板)Wの単位露光領域に、複数のミラー要素10aが形成したミラーパターン(複数のミラー要素10aの傾きパターン、凹凸パターンなど)に対応した所定のパターン像を投影する。
ウェハWは、ウェハステージWS上においてXZ平面とほぼ平行に保持されている。ウェハステージWSには、X方向、Y方向、Z方向、X軸廻りの回転方向、Y軸廻りの回転方向およびZ軸廻りの回転方向に、ウェハステージWS(ひいてはウェハW)を移動させる機構が組み込まれている。ステップ・アンド・リピート方式では、ウェハW上に縦横に設定された複数の単位露光領域のうちの1つの単位露光領域に、空間光変調器8のミラーパターンに対応した所定のパターン、例えばデバイスパターンを一括的に露光する。その後、制御系CRが、ウェハステージWSをXZ平面に沿ってステップ移動させることにより、ウェハWの別の単位露光領域を投影光学系PLに対して位置決めする。こうして、空間光変調器10のミラーパターンに対応したデバイスパターンをウェハWの単位露光領域に一括露光する動作を繰り返す。
ステップ・アンド・スキャン方式では、制御系CRは、投影光学系PLの投影倍率に応じて、空間光変調器10のミラーパターンおよびウェハステージWSを例えばZ方向に移動させつつ、空間光変調器10のミラーパターンに対応したデバイスパターンをウェハWの1つの単位露光領域に走査露光する。その後、制御系CRは、ウェハステージWSをXZ平面に沿ってステップ移動させることにより、ウェハWの別の単位露光領域を投影光学系PLに対して位置決めする。こうして、空間光変調器10のミラーパターンに対応したデバイスパターンをウェハWの単位露光領域に走査露光する動作を繰り返す。
第1実施形態の露光装置は、シフト部6および空間光変調器10を制御し且つ露光装置の動作を統括的に制御する制御系CRを備えている。第1実施形態では、マイクロフライアイレンズ5により形成される二次光源を光源として、照明光学系(1〜9)の被照射面に配置される空間光変調器10のミラー配列面(ひいてはウェハWの露光面)をケーラー照明する。マイクロフライアイレンズ5による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ5の入射側の面に形成される大局的な光強度分布と、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に形成される二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。
第1実施形態の露光装置では、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器10が可変的に形成するミラーパターンに対応するデバイスパターンを、投影光学系PLを介して、ウェハWに一括露光または走査露光(スキャン露光)する。二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素(光学要素)を有する空間光変調器が可変的に形成するミラーパターンに対応するデバイスパターンを、投影光学系を介して基板に露光するマスクレス方式の露光装置の詳細については、米国特許第8,792,081B2号明細書などを参照することができる。
第1実施形態では、光源部LSから高コヒーレンスのパルス光が供給されるため、マイクロフライアイレンズ5のレンズレット5a間の干渉などに起因して、空間光変調器10のミラー配列面(照明光学系(1〜9)の被照射面)には、図6の左側の図に示すように、1つのパルス光によりランダムに不均一な照度分布が形成される傾向がある。この場合、ランダムに不均一な照度分布をランダムに重ね合わせる従来の手法では、図6の右側の図に示すように、積算照度分布を平均化するのに多数のパルス光を用いる必要がある。
具体的に、従来の手法では、照度分布のコントラスト(スペックルコントラスト)Cと、パルス光の積算数Nとの間に、次の式(1)に示すような関係がある。ちなみに、コントラストCは、照度分布における光強度の平均値をAとするとき、照度分布における強度平均値Aからの光強度の分散σ2の平方根、すなわち標準偏差σを用いて、次の式(2)に示すように定義される。
式(1)を参照すると、照度分布のコントラストCはパルス光の積算数Nの平方根の逆数に比例するため、コントラストCを低減して積算照度分布を平均化するのに多数のパルス光を用いる必要があることが容易に理解される。
第1実施形態では、照明光学系(1〜9)の被照射面上で、すなわち空間光変調器10のミラー配列面上でX方向およびZ方向に周期を持つ照度分布を形成するために、空間光変調器としての回折光学素子3から光が射出される領域のX方向に沿った長さS1およびY方向(空間光変調器10のミラー配列面上でのZ方向に対応)に沿った長さS2を設定している。回折光学素子3からの光の射出領域は、一例として、所望の大きさおよび形状の断面を有する光束を回折光学素子3へ導くビーム送光部2の作用により制限される。すなわち、ビーム送光部2は、回折光学素子3の光源側に配置され、回折光学素子3上で光源LSからの光が照射される領域を設定する照射領域設定部を構成している。
具体的に、X方向に沿った長さS1およびY方向に沿った長さS2は、次の式(3)および(4)で示す条件を満足するように設定されている。式(3)および(4)において、fはリレー光学系(厳密には回折光学素子3とマイクロフライアイレンズ5との間に配置される光学系)4の焦点距離であり、λはパルス光の中心波長であり、P1はマイクロフライアイレンズ5のレンズレット(波面分割要素)5aのX方向に沿ったピッチであり、P2はレンズレット5aのY方向に沿ったピッチである。
S1≦2×(f×λ)/P1 (3)
S2≦2×(f×λ)/P2 (4)
式(3)および(4)を満足するように回折光学素子3からの光の射出領域を制限することにより、図7の左側の図に示すように、1つのパルス光により光強度がほぼ周期的に変化する照度分布を得ることができる。そして、このほぼ周期的な照度分布を周期に応じた移動幅にしたがって位置ずれさせながら重ね合わせることにより、図7の右側の図に示すように、従来手法よりも少ないパルス光(少ない積算数)により被照射面上の積算照度分布を均一化することができる。なお、X方向に沿った長さS1およびY方向に沿った長さS2をX方向に沿った寸法S1およびY方向に沿った寸法S2と称することもできる。
以下、図8〜図10を参照して、周期的な照度分布を周期に応じた移動幅にしたがって位置ずれさせながら重ね合わせる実施形態の手法について説明する。ただし、以下の説明では、実施形態の手法の作用効果の理解を容易にするために、1つのパルス光により光強度が周期的に変化する照度分布が得られるものとする。図8は、回折光学素子3とマスクブラインド8の面8aとの間の光路を光軸AXに沿って直線状に展開した図である。図8の局所座標系におけるx座標、y座標およびz座標は、図1の全体座標系におけるX座標、Y座標およびZ座標と対応している。
第1実施形態では、光源部LSから供給された高コヒーレンスのパルス光が、図8に示すように、回折光学素子3、シフト部6およびリレー光学系4を介して、マイクロフライアイレンズ5の複数のレンズレット5aに入射する。マイクロフライアイレンズ5の複数のレンズレット5aにより分割された光は、光が入射した複数のレンズレット5aの射出面の近傍にそれぞれ1つのスポット光からなる小光源を形成する。
複数の小光源からの光は、コンデンサー光学系7を介して、マスクブラインド8の面8aで重畳される。マスクブラインド面8aは照明光学系(1〜9)の被照射面(固定的に設置された空間光変調器10のミラー配列面)と光学的に共役であり、マスクブラインド8の面8aに形成される照度分布は、被照射面に形成される照度分布と一致していても良い。
第1実施形態では、式(4)により回折光学素子3からの光の射出領域のY方向の長さS2を制限しているので、図9に示すように、1つのパルス光によりy方向に光強度が周期的に変化する第1照度分布41aが、被照射面と光学的に共役なマスクブラインド面8aに形成される。第1照度分布41aのy方向ピッチ(周期)Pyは、レンズレット5aのy方向サイズをSyとし、光の中心波長をλとし、コンデンサー光学系7の焦点距離をf2とすると、次の式(5)で表される。
Py=(λ×f2)/Sy (5)
以下の説明では、理解を容易にするために、x方向に並んだ列が3列でy方向に並んだ列が3列の合計9個のレンズレット5aに光が入射するものとする。この場合、第1照度分布41aと、第1照度分布41aを+y方向にPy/3だけ移動させた第2照度分布41bと、第2照度分布41bを+y方向にPy/3だけ移動させた第3照度分布41cとを重ね合わせると、光強度がy方向に沿ってほぼ一様な分布、すなわちy方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布41dが得られる。
換言すれば、y方向に沿って互いにPy/3だけ位置ずれした3つの照度分布41aと41bと41cとを重ね合わせることにより、すなわちy方向に関して位相の異なる3つの照度分布41aと41bと41cとを重ね合わせることにより、y方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布41dが得られる。一般には、光が入射するレンズレット5aのy方向の個数がNyであるとき、y方向に沿って互いにΔr=Py/Nyだけ位置ずれしたNy個の照度分布を重ね合わせることにより、マスクブラインド面8a、ひいては照明光学系(1〜9)の被照射面(空間光変調器10のミラー配列面)において、y方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布が得られる。
具体的に、第1照度分布41aを+y方向にΔr=Py/Ny(図8ではNy=3)だけ移動させた第2照度分布41bを形成するには、回折光学素子3とリレー光学系4との間に設けられたシフト部6の作用により、入射した光を−y方向にΔuだけ平行移動させて射出すれば良い。シフト部6は、図10に示すように、照明光学系の光軸AXに対して斜設された一対の平行平面板6aおよび6bと、制御系CRからの指令にしたがって平行平面板6a,6bをそれぞれ回転駆動する駆動部6cとを有する。
平行平面板6aは光軸AXと平行な軸線6aa廻りに回転可能に構成され、平行平面板6bは光軸AXと平行な軸線6ba廻りに回転可能に構成されている。シフト部6は、制御系CRからの指令にしたがって駆動部6cが平行平面板6a,6bをそれぞれ回転駆動することにより、入射した光を所望方向に所望距離だけ平行移動させて射出する機能を有する。
シフト部6による所要の平行移動距離Δuは、リレー光学系4の焦点距離をfとすると、次の式(6)で表される。このとき、シフト部6の作用により、マスクブラインド面8aに入射する光はΔr=Py/Nyだけ+y方向に移動し、ひいてはマスクブラインド面8aに形成される第2照度分布41bの位置が第1照度分布41aの形成位置から+y方向にPy/Ny(図8ではNy=3)だけ移動する。
Δu=(λ×f)/(Sy×Ny) (6)
このように、1つ(または複数)のパルス光により第1照度分布41aを形成し、次の1つ(または複数)のパルス光により第1照度分布41aから+y方向にPy/Nyだけ移動した位置に第2照度分布41bを形成し、次の1つ(または複数)のパルス光により第2照度分布41bから+y方向にPy/Nyだけ移動した位置に第3照度分布41cを形成することにより、y方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布41dを得ることができる。すなわち、+y方向にPy/Nyだけ互いに位置ずれした3つの照度分布41aと41bと41cとを1つずつ(または複数ずつ)重ね合わせることにより、積算照度分布を均一化することができる。ここで、被照射面上で照度分布のy方向における形成位置を変更するとは、被照射面上でy方向に沿った照度(あるいは光強度)の変化の状態を示す関数の原点がy方向に変化していると言うことができる。
換言すると、y方向に沿ってPy/Nyだけ間隔を隔てたNy個の基準点を設定し、各照度分布のy方向に沿った中心点がNy個の基準点と一致するように、各照度分布の形成位置を変更することにより、積算照度分布を均一化することができる。このとき、各照度分布のy方向に沿った中心点が一致すべき基準点の順序は任意であり、各照度分布のy方向に沿った中心点を対応する基準点と一致させる回数も互いに同じであれば任意である。すなわち、第1照度分布41a、第2照度分布41bおよび第3照度分布41cを形成する順序は任意であり、各照度分布を形成する回数も同数であれば任意である。
同様に、図示を省略するが、回折光学素子3からの光の射出領域のX方向の長さS1を式(3)により制限しているので、1つのパルス光により、y方向だけでなくx方向にも光強度が周期的に変化する照度分布が形成される。照度分布のx方向ピッチ(周期)Pxは、レンズレット5aのx方向サイズをSxとすると、次の式(7)で表される。また、シフト部6による所要の平行移動距離Δu’は、次の式(8)で表される。
Px=(λ×f2)/Sx (7)
Δu’=(λ×f)/(Sx×Nx) (8)
x方向に沿って互いにPx/3だけ位置ずれした3つの照度分布を重ね合わせることにより、x方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布が得られる。一般には、光が入射するレンズレット5aのx方向の個数がNxであるとき、x方向に沿って互いにPx/Nxだけ位置ずれしたNx個の照度分布を重ね合わせることにより、マスクブラインド面8a、ひいては照明光学系(1〜9)の被照射面(空間光変調器10のミラー配列面)において、x方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布が得られる。
被照射面においてx方向およびy方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布を得るには、x方向に沿って互いにPx/Nxだけ位置ずれし且つy方向に沿って互いにPy/Nyだけ位置ずれした合計(Nx×Ny)個の照度分布を重ね合わせれば良い。換言すれば、(Nx×Ny)個(またはその整数倍)のパルス光を用いて、x方向に沿って互いにPx/Nxだけ位置ずれし且つy方向に沿って互いにPy/Nyだけ位置ずれした合計(Nx×Ny)個(またはその整数倍)の照度分布を形成することにより、被照射面においてx方向およびy方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布が得られる。
(Nx×Ny)個(またはその整数倍)の照度分布を形成する順序は任意に設定可能であり、1つの位置に照度分布を形成する回数は互いに同じであれば任意である。図8では、x方向に並んだ列が3列でy方向に並んだ列が3列の合計9個のレンズレット5aに光が入射するものとしているため、(Nx×Ny)は光が入射するレンズレット5aの個数Npを意味していることになる。
図11は、ランダムに不均一な照度分布をランダムに重ね合わせる従来の手法と周期的な照度分布を周期に応じた移動幅にしたがって位置ずれさせながら重ね合わせる実施形態の手法とを比較する図である。図11において、横軸は積算数Nを示し、縦軸は積算照度分布のコントラストCを対数表示している。参照符号51は従来の手法による積算数NとコントラストCとの関係を示し、参照符号52は実施形態の手法による積算数NとコントラストCとの関係を示している。
図11を参照すると、積算照度分布のコントラストCを0.1に、すなわち10%に抑えるために要する積算数Nは、実施形態の手法では20程度であるが、従来の手法では60をはるかに超える値、例えば100程度になる。別の観点によれば、1つのパルス光により形成される照度分布の積算数Nが30程度の場合、実施形態の手法では積算照度分布のコントラストCを7%程度まで低減することができるが、従来の手法では19%程度までしか低減することができない。
図12は、実施形態における回折光学素子からの光の射出領域の長さと積算数N=32のときの積算照度分布のコントラストとの関係を示す図である。図12において、横軸は回折光学素子3からの光の射出領域の長さS1,S2(単位:(f×λ)/P1,(f×λ)/P2)を示し、縦軸は積算照度分布のコントラストCを示している。参照符号53は実施形態における長さS1,S2とコントラストCとの関係を示しており、水平方向に延びる直線状の破線54は図11において積算数N=32のときに従来の手法により得られるコントラストCの値、すなわちC≒0.17に対応している。
図12を参照すると、例えば積算数N=32の場合、式(3)および(4)を満足すれば、実施形態の手法によるコントラストCの低減効果が従来の手法よりも大きくなることがわかる。また、実施形態の手法によるコントラストCの低減効果をさらに高めるには、空間光変調器としての回折光学素子3からの光の射出領域のX方向に沿った長さS1およびY方向に沿った長さS2を、次の式(9)および(10)で示す条件を満足するように制限しても良いことがわかる。
S1≦1.5×(f×λ)/P1 (9)
S2≦1.5×(f×λ)/P2 (10)
以上のように、第1実施形態では、ビーム送光部2の作用により、回折光学素子3からの光の射出領域のX方向に沿った長さS1およびY方向に沿った長さS2を制限している。その結果、1つのパルス光により、光強度がx方向およびy方向に沿ってほぼ周期的に変化する照度分布をマスクブラインド8の面8a上に形成し、ひいては光強度がX方向およびZ方向に沿ってほぼ周期的に変化する照度分布を照明光学系(1〜9)の被照射面(固定的に設置された空間光変調器10のミラー配列面)に形成することができる。
この場合、照度分布のx方向周期Pxおよびy方向周期Pyに応じた移動幅にしたがって、シフト部6が照度分布の形成位置を変更することにより、照明光学系(1〜9)の被照射面(空間光変調器10のミラー配列面)においてX方向およびZ方向に沿ってほぼ均一な積算照度分布を得ることができる。換言すれば、Np個(またはその整数倍)のパルス光を用いて、互いに異なるNp個の位置に照度分布を形成して重ね合わせることにより、被照射面においてほぼ均一な積算照度分布を得ることができる。
こうして、第1実施形態にかかる照明光学系(1〜9)では、比較的少ないパルス光により、空間光変調器10のミラー配列面(被照射面)上の積算照度分布を均一化することができる。また、第1実施形態にかかる露光装置では、空間光変調器10のミラー配列面上の積算照度分布を均一化する照明光学系(1〜9)を用いて、ウェハ(基板)Wに露光されるパターン線幅の均一性を良好にすることができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
図13は、第2実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。第2実施形態は第1実施形態と類似の構成を有するが、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に瞳強度分布を固定的に形成する回折光学素子3に代えて、瞳強度分布を可変的に形成する空間光変調器23が配置されていることが、第1実施形態と相違している。図13では、図1の第1実施形態における構成要素と同様の機能を果たす要素に図1と同じ参照符号を付している。以下、第1実施形態との相違点に着目して、第2実施形態の構成および作用を説明する。
第2実施形態では、光源部LSから供給された高コヒーレンスのパルス光が、遅延光学系1およびビーム送光部2を経て、空間光変調器23に入射する。空間光変調器23は、可変パターン形成用の空間光変調器10と同様の構成を有する。すなわち、空間光変調器23は、図14に示すように、所定面内に配列された複数のミラー要素23aと、複数のミラー要素23aを保持する基盤23bと、基盤23bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素23aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部23cとを備えている。
ビーム送光部2は、光源部LSおよび遅延光学系1を経て入射した光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ空間光変調器23へ導くとともに、空間光変調器23の複数のミラー要素23aの配列面(ミラー配列面)に入射する光の位置変動および角度変動をアクティブに補正する。空間光変調器23では、制御系CRからの指令に基づいて作動する駆動部23cの作用により、複数のミラー要素23aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素23aがそれぞれ所定の向きに設定される。
空間光変調器23は、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素23aを備え、入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、図14および図5では空間光変調器23が4×4=16個のミラー要素23aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数、典型的には4000個〜100,000個程度のミラー要素23aを備えている。
空間光変調器23では、すべてのミラー要素23aの反射面が1つの平面に沿って設定された基準状態において、ビーム送光部2と空間光変調器23との間の光路の光軸AXと平行な方向に沿って入射した光線が、空間光変調器23で反射された後に、空間光変調器23とリレー光学系4との間の光路の光軸AXと平行な方向に進むように構成されている。また、上述したように、空間光変調器23のミラー配列面とマイクロフライアイレンズ5の入射側の面5bとは、リレー光学系4を介して光学的にフーリエ変換の関係に位置決めされている。
したがって、空間光変調器23の複数のミラー要素23aによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、マイクロフライアイレンズ5の入射側の面5bに所定の光強度分布を形成する。すなわち、リレー光学系4は、空間光変調器23の複数のミラー要素23aが射出光に与える角度を、空間光変調器23のファーフィールド(フラウンホーファー回折領域)であるマイクロフライアイレンズ5の入射側の面5b上での位置に変換する。こうして、マイクロフライアイレンズ5が形成する二次光源の光強度分布(瞳強度分布)は、空間光変調器23およびリレー光学系4がマイクロフライアイレンズ5の入射側の面5bに形成する光強度分布に対応した分布となる。
空間光変調器23は、図5に示すように、平面状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素23aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素23aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御系CRからの制御信号に基づいて作動する駆動部23cの作用により独立に制御される。各ミラー要素23aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的(または離散的)に回転することができる。すなわち、各ミラー要素23aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
図5には外形が正方形状のミラー要素23aを示しているが、ミラー要素23aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素23aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素23aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
空間光変調器23では、制御系CRからの制御信号に応じて作動する駆動部23cの作用により、複数のミラー要素23aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素23aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器23の複数のミラー要素23aによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に、所望の瞳強度分布を形成する。このように、空間光変調器23は、入射光を空間的に変調して射出する空間光変調器であって、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に瞳強度分布を可変的に形成する。
第2実施形態では、一例として、チルトミラー型の空間光変調器23を用いて、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に瞳強度分布を可変的に形成している。しかしながら、これに限定されることなく、ピストン型の空間光変調器、位相段差チルトミラー型の空間光変調器、または透過型の空間光変調器を用いて、瞳強度分布を可変的に形成しても良い。
第2実施形態では、空間光変調器23を用いて、図3に示すように、光軸AXを中心とした円形状の光強度分布(照野)をマイクロフライアイレンズ5の入射側の面に形成し、ひいてはマイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に円形状の瞳強度分布を形成することができる。また、図示を省略するが、空間光変調器23を用いて、マイクロフライアイレンズ5の直後の照明瞳に輪帯状の瞳強度分布を形成したり、複数極状などの所望形状の瞳強度分布を形成したりすることができる。
なお、第1実施形態では、ビーム送光部2の作用により、空間光変調器としての回折光学素子3からの光の射出領域を制限している。しかしながら、第2実施形態では、空間光変調器23上の所定領域内のミラー要素23aから射出される光がリレー光学系4に入射し、且つ所定領域外のミラー要素23aから射出される光がリレー光学系4に入射しないように制御系CRが駆動部23cを制御することにより、空間光変調器23からの光の射出領域を制限することもできる。
こうして、第2実施形態の照明光学系(1〜9)においても、第1実施形態の場合と同様に、比較的少ないパルス光により、空間光変調器10のミラー配列面(被照射面)上の積算照度分布を均一化することができる。また、空間光変調器10のミラー配列面上の積算照度分布を均一化する照明光学系(1〜9)を用いて、ウェハ(基板)Wに露光されるパターン線幅の均一性を良好にすることができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
上述の実施形態では、回折光学素子3または空間光変調器23とリレー光学系4との間の光路中に配置されたシフト部6が、照度分布の周期に応じた移動幅にしたがって照度分布の形成位置を移動させる相対位置変更部を構成している。別の表現をすれば、相対位置変更部としてのシフト部6は、1つまたは複数のパルス光の照射ごとに、固定的に設置されたパターン形成部としての空間光変調器10と照度分布との相対位置を変更する。
上述の実施形態では、回折光学素子3または空間光変調器23とリレー光学系4との間の光路中に、シフト部6を配置している。しかしながら、これに限定されることなく、例えばコンデンサー光学系7とマスクブラインド8(または空間光変調器10)との間の光路中に、相対位置変更部としてのシフト部を配置することもできる。
また、相対位置変更部として、図15に示すように、マイクロフライアイレンズ5とコンデンサー光学系7との間の光路中に配置されたチルト部15を用いることも可能である。チルト部15は、X方向に延びる軸線15aa廻りに回転するポリゴンミラー15aと、制御系CRからの指令にしたがってポリゴンミラー15aを回転駆動する駆動部15bとを有する。チルト部15は、例えば光軸AXに沿って入射した光を可変角度だけ偏向して射出する機能を有する。
なお、相対位置変更部としてのチルト部15を、例えばリレー光学系4とマイクロフライアイレンズ5との間の光路中に配置することもできる。また、入射した光を可変角度だけ偏向して射出するチルト部として、ガルバノミラー、振動ミラーなどを用いることもできる。
図16は、変形例にかかるシフト部の内部構成を概略的に示す図である。図16を参照すると、変形例にかかるシフト部6Aは、回折光学素子3(または空間光変調器23)とリレー光学系4との間の光路中において光軸AXに沿って間隔を隔てて斜設された一対のミラー61a,61bと、fθレンズ62と、X方向に延びる軸線63a廻りに回転するポリゴンミラー63と、制御系CRからの指令にしたがってポリゴンミラー63を回転駆動する駆動部63bと、モーター64とを有する。
fθレンズ62とポリゴンミラー63とは、Y方向に延びる光軸AX1に沿って配置され、例えば図示を省略したベース板上に1つのユニットとして一体に保持されている。モーター64は、制御系CRからの指令にしたがって、一体に保持されたfθレンズ62とポリゴンミラー63とからなるユニットを光軸AX1廻りに回転させる。シフト部6Aでは、回折光学素子3(または空間光変調器23)からの光が、ミラー61aで反射され、fθレンズ62を介してポリゴンミラー63に入射する。
ポリゴンミラー63で反射された光は、fθレンズ62およびミラー61bを介して、リレー光学系4へ入射する。シフト部6Aは、制御系CRからの指令にしたがって駆動部63bがポリゴンミラー63を軸線63a廻りに回転駆動し且つモーター64がfθレンズ62とポリゴンミラー63とからなるユニットを光軸AX1廻りに回転駆動することにより、入射した光を所望方向に所望距離だけ平行移動させて射出する機能を有する。
換言すれば、fθレンズ62とポリゴンミラー63とからなるユニットの光軸AX1廻りの回転角度位置に依存して、空間光変調器10のミラー配列面(被照射面;XZ平面)上での照度分布の移動方向が変化し、ポリゴンミラー63の軸線63a廻りの回転角度位置に依存して、被照射面上での照度分布の移動距離が変化する。このとき、fθレンズ62に入射する光の発散角または収斂角は、fθレンズ62から射出される光の発散角または収斂角と等しくなる。すなわち、fθレンズ62とポリゴンミラー63とからなるユニットから射出される光の発散状態または収斂状態は、当該ユニットに入射する光の発散状態または収斂状態が維持されたものとなる。なお、空間光変調器10のミラー配列面(被照射面;XZ平面)上での照度分布の移動方向を変化させるために、イメージローテータ(たとえば像回転プリズム)を用いてもよい。なお、上述の実施形態および変形例では、回折光学素子3(または空間光変調器23)とリレー光学系4との間の光路中に、シフト部6,6Aを配置している。しかしながら、これに限定されることなく、例えばコンデンサー光学系7とマスクブラインド8(または空間光変調器10)との間の光路中に、相対位置変更部としてのシフト部を配置することもできる。
上述の実施形態では、固定的に設置された空間光変調器10のミラー配列面において照度分布の形成位置を変更することにより積算照度分布の均一化を図っている。しかしながら、これに限定されることなく、照度分布の形成位置を固定的に設定し、照度分布の周期に応じた移動幅にしたがって、パターン形成部としての空間光変調器10を移動させても良い。
上述の実施形態では、パターン形成部として、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素(光学要素)10aを有する空間光変調器10を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、転写すべきパターンが形成されたマスク(レチクル)を、パターン形成部として投影光学系の物体面に設置しても良い。
上述の実施形態では、マイクロフライアイレンズ5のレンズレット5a間の干渉の影響に着目しているが、1つのレンズレット5aの内部での干渉に起因してレンズレット5aの直後に形成されるスポット光の径が大きなってしまう場合がある。この場合、遅延光学系1から射出されるパルス光の向きをパルス毎に適宜変化させることにより、レンズレット5aの内部でのコヒーレンスを低下させても良い。
上述の実施形態では、所定方向に沿って光強度が周期的に変化する照度分布の形成位置と物体上の被照射面とを、その周期に応じた移動幅にしたがって所定方向において相対移動させることにより、積算照度分布の均一化を図っている。しかしながら、光強度が周期的な変化する照度分布に限定されることなく、所定方向に沿って光強度がある性状にしたがって変化する照度分布の形成位置と物体上の被照射面とを、その分布性状に応じた移動幅にしたがって所定方向において相対移動させることにより、積算照度分布の均一化を図ることもできる。
別の表現をすれば、光源から供給される1つまたは複数のパルス光の照射ごとに、所定方向に沿って光強度が変化する照度分布と物体上の被照射面との相対位置を所定方向において変更することにより、積算照度分布の均一化を図ることができる。また、別の表現をすれば、第1パルス光により物体上の被照射面において所定方向に沿って光強度が変化する第1照度分布を形成し、第2パルス光により第1照度分布を被照射面に対して所定方向に相対移動させた分布である第2照度分布を形成することにより、積算照度分布の均一化を図ることができる。
この場合、第1照度分布を形成し、相対移動を行った後に、第2照度分布を形成する。第1照度分布の少なくとも一部と、第2照度分布の少なくとも一部とは、同じ分布性状を有する。そして、第1照度分布の少なくとも一部と、第2照度分布の少なくとも一部との所定方向における相対位置を変更することにより、積算照度分布の均一化を図ることができる。
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図17は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図17に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、可変パターン形成用の空間光変調器のミラーパターン(あるいはマスクに形成されたパターン)に応じた所定のパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを感光性基板としてパターンの転写を行う。
図18は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図18に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
また、本実施形態は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートやシート状の可撓体に形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本実施形態は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書に開示されているように、投影光学系PLの先端の光学部材とウェハWとの間に照明光ILを透過する液体(例えば純水)を供給して回収する局所液浸装置が設けられる。液浸型の場合には解像度をさらに高めることができる。
上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。また、上述の実施形態において、光源部LSとして、波長193nmのパルス光を供給するArFエキシマレーザ光源や、波長248nmのパルス光を供給するKrFエキシマレーザ光源を用いることもできる。また、上述の実施形態において、光源部LSとして、パルス光を供給するものに限定されず、例えば連続光を供給する光源、たとえばCW(Continuous Wave)レーザ光源を用いても良い。
なお、上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとり得る。