本発明は、ガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、家庭におけるガスの用途毎の需要量の把握に用いて好適な技術に関する。また、本発明は、居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、住居や住戸内に人が存在しているか存在していないかの推定に用いて好適な技術に関する。
以下の説明において、単位であることを明確にするために[ ]を用いる場合がある。
家庭における最適なエネルギーの使い方の探索や熱源機器の選択などを行うためには、電気やガスといったエネルギーの種類毎に用途毎の最終需要を把握することが必要である。しかしながら、ガスについては、配管切断を伴う流量計の設置は需要家の負担が大きく手間もコストもかかるため、個別機器の実測調査はほとんど行われていない。また、ガスメータの計測値から用途別(具体的には例えば、「給湯」,「厨房(コンロ)」,及び「暖房(ガスヒータ等)」の別)の消費量に分解する良好な手法は未だ無い。
ガスの配管を切断することなくガス流量を計測する装置として、例えば、ガス配管に設けられている膜式ガスメータに装着され、当該膜式ガスメータ内部の、ガスの流動に応じて周期運動する永久磁石の移動に伴う周期的な磁気変化を磁気センサによって検出し、当該周期的な磁気変化の検出に基づいて所定のガス流量(具体的には、ガスメータの単位計量体積)に対応したパルス出力を流量カウント数として所定時間毎に出力するものがある(例えば、特許文献1,特許文献2)。
上述のようなガス流量計測装置では、家庭におけるガスの消費量が所定時間毎にカウント数として把握され、所定時間は例えば10秒などであり、1カウントに対応する実際のガス流量は例えば1.2[L]や1.0[L]などである。言い換えると、上述のようなガス流量計測装置では、所定の時間毎に、所定の流量毎に1カウントとして計数するカウント数として、ガスの消費量が出力される。
したがって、上述のようなガス流量計測装置では、具体的には例えば、所定時間が10秒であると共に1カウント当たりの実際の流量が1.2[L]である場合には、10秒間隔での、1.2L刻みのガス消費量が把握される。
また、ガス使用量を用途別に分解する従来の方法としては、例えば、世帯人数,厨房用ガス器具の所有台数,及び住居形態などのガス使用者の属性情報を用い、ガス使用者の世帯状況によってその使用量が異なる厨房用ガス使用量を求め、続いて、暖房を使用しない時期の総ガス使用量が厨房用と給湯用との和であることを利用してこの時期の給湯用ガス使用量を求め、次に、暖房を使用しない時期の給湯用ガス使用量と気温との相関関係を利用して暖房を使用する時期の給湯用ガス使用量を求め、さらに、総ガス使用量から厨房用及び給湯用ガス使用量を減算して暖房用ガス使用量を求めるものがある(特許文献3)。
また、電気に関しては、電気の使用(即ち、電力需要)から生活状態を推定することによって独居高齢者や家族を見守るサービスの実現が検討されたり、住居内の例えば空調等の機器の制御が自動で行われるシステムについて運用効率を改善して節電に繋げるために居住者が在宅であるか不在であるかの判定が行われたりしている例がある。具体的には例えばドアの開閉,人感センサ,或いはCO2センサなどを利用するものがあり、また、住宅内への機器の設置が必要とされない非侵入型モニタリングの手法の一つとして電力需要データを用いるものが開発されている(非特許文献1)。
このような非侵入型モニタリングに関連しては、我が国において、スマートメータと呼ばれる、通信機能を備えて電力の利用状況(即ち、電力需要)をリアルタイムに確認することができる次世代電力計の低圧部門(具体的には、一般家庭)への設置が進められている(非特許文献2)。
特開2004−125634号公報
特開2014−006058号公報
特開2000−221064号公報
T.A.Nguyen and M.Aiello「Energy intelligent buildings based on user activity:A survey」,Energy and Buildings,Vol.56,pp.244−257,2013年
経済産業省スマートメータ制度検討会「スマートメータの導入促進に伴う課題と対応について」,[online],[平成28年4月14日アクセス],インターネット<URL:http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004668/pdf/015_03_00.pdf>
特許文献1や特許文献2のガス流量計測装置によって得られる計測データは、所定の時間毎に出力される、所定の流量毎に1カウントとして計数する流量カウント数である。しかしながら、例えばガスファンヒータやガスコンロのガス消費量は1.2[L/10秒]に比べて通常は小さいため、10秒間隔で出力される、実際の流量1.2[L]を1カウントとして計数する流量カウント数としての計測ではカウント値の変化は散発的(言い換えると、間欠的)になる。したがって、ガスファンヒータやガスコンロの各器具単体でのガス消費量に対応する計測値としての流量カウント数は、これら器具がたとえ継続的に使用されていても0若しくは1の出力となる。このため、時刻毎のガスの配管における実際のガス流量を適切に把握することは困難であり、延いては時刻毎の実際のガス流速を適切に把握することが困難であるという問題がある。
また、特許文献3のガス使用量の用途別分解方法では世帯人数,厨房用ガス器具の所有台数,及び住居形態などのガス使用者の属性情報が必要とされるところ、このような属性情報の入手は困難であり、仮に可能であったとしても多大な手間がかかってしまう。このため、汎用性が高いとは言い難い。加えて、特許文献3のガス使用量の用途別分解方法では気温の情報が更に必要とされるところ、対象世帯が所在する地域毎の、用途分解を行う期間の日毎の気温データの収集は多大な手間がかかるためにこの点においても汎用性が高いとは言い難く、さらに、気温データの地域区分の細かさによっては対象世帯の所在地における実際の気温との乖離が大きくなってしまうことも考えられるために良好な精度が常に確保されるとは言えず信頼性が高いとは言い難い。
そこで、本発明は、関連する情報やデータが必要とされることなく、対象住宅や対象住戸のガス総消費量の計測データであって値の変化の生起について所定の間隔で間欠的に把握され且つ値の変化について所定の量を単位として離散的に把握された計測データ群に基づいて家庭におけるガス消費量を用途別に良好な精度で分解することができるガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムを提供することを目的とする。
また、次世代電力計として設置が進められているスマートメータで自動検針された電力需要値を電力会社(具体的には、送配電部門)へと送るルートは「Aルート」と呼ばれる。このAルートから得られる電力需要データ(「Aルート計測値」と呼ぶ)は、30分間隔で出力され、且つ、100 Wh 刻み(言い換えると、100 Wh 単位)の数値である。したがって、Aルート計測値では、30分間における実際の電力需要として100 Wh に満たない電力需要は、当該時刻(30分時間帯)の計測値としては切り捨てられ(言い換えると、計上されず)、次の時刻(30分時間帯)の計測値に繰り越される。
実際の電力需要に対応して出力されるAルート計測値は、具体的には例えば以下の表1のようになる。なお、表1における「実際の電力需要」は、電力需要の瞬時値が仮に計測されているとした場合の仮想の値であり、30分間積分値である。
表1に示す例から、30分間の電力需要が100 Wh に満たない時刻区分(30分時間帯)では実際には電力需要が有るにも拘わらず、Aルート計測値では電力需要が無いことになったり、或いは、連続する時刻区分(具体的には、11:00と11:30)において実際の電力需要としての差違は小さい(具体的には、約16 Wh)にも拘わらず、Aルート計測値では100 Wh もの差違になったりすることが確認される。
このため、Aルート計測値をそのまま利用して居住者が在宅であるか不在であるかを判定した場合には、適切な判定が行われない虞があり、高い精度で判定を行うことは困難である。特に、30分間における実際の電力需要が100 Wh に満たない時間帯においては、Aルート計測値としては0 Wh と100 Wh とが交互に出力される状態になり、実際の電力需要に比してその差違が相対的に大きな割合となって誤判定が多くなる。この点に関連しては、省エネルギー機器への切り替えなどにより、エアコンや電子レンジなどの電力消費量が比較的大きい機器を利用しない時間帯における電力需要は減少する傾向にあり、前記誤判定は益々多くなると考えられる。
そこで、本発明は、追加的な特別の機器の設置及び関連する情報やデータが必要とされることなく、例えばスマートメータのAルート計測値のような、対象住宅や対象住戸の電力需要量の計測データであって値の変化の生起について所定の間隔で間欠的に把握され且つ値の変化の態様について所定の量を単位として離散的に把握された計測データ群に基づいて住居や住戸内に人が存在しているか存在していないかを良好な精度で推定することができる居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムを提供することを目的とする。
また、短い時間や特定の時刻毎に各々独立して(言い換えると、或る短い時間や特定の時刻のみを取り出して当該の或る短い時間や特定の時刻よりも前の状況を合わせて考慮すること無く)在宅不在を判定すると、居住者が在宅していても、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況に対し、不在であると誤った判断をしてしまうことがあるという問題がある。
そこで、本発明は、短時間のみの状況に影響されること無く住居や住戸内に人が存在しているか存在していないかを推定することができる不在期間の確定方法を提供することを目的とする。
本発明の説明ではガス消費量を用途別に分解する際の単位となる家庭(世帯)の住宅や住戸へ差し向けられるガス配管のことを「主幹」と呼ぶと共に当該主幹を流れるガスの流量を「主幹のガス流量」又は「ガス総消費量」と呼び、本発明は当該ガス総消費量を用途別に分解するものとする。なお、住宅内や住戸内において、主幹から枝分かれした屋内配管が給湯用,厨房用,及び暖房用の各ガス器具へと接続される。
そして、本発明のガス消費量の用途分解方法は、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータが連続動作区間のデータとして抽出され、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と前記所定の流量とを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に前記所定の流量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線が推定され、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速が算定された上で、連続動作区間のデータが冬季であるか否か判断される処理と、ガスの流速が所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間が特定される処理と、連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速の最小値が暖房ベース流速として設定される処理と、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速との大きさが比較される処理と、給湯最小流速とガスの流速との大きさが比較される処理と、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速との大きさが比較される処理とが実行されることにより、ガス総消費量の用途が給湯分,暖房分,及び厨房分に分類されるようにしている。
また、本発明のガス消費量の用途分解装置は、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータを連続動作区間のデータとして抽出する手段と、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と前記所定の流量とを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に前記所定の流量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速を算定する手段と、連続動作区間のデータが冬季であるか否かを判断し、ガスの流速が所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間を特定すると共に連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速の最小値を暖房ベース流速として設定し、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速との大きさを比較し、給湯最小流速とガスの流速との大きさを比較し、さらに、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速との大きさを比較することにより、ガス総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類する手段とを有するようにしている。
また、本発明のガス消費量の用途分解プログラムは、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータを連続動作区間のデータとして抽出する処理と、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と前記所定の流量とを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に前記所定の流量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速を算定する処理と、連続動作区間のデータが冬季であるか否かを判断し、ガスの流速が所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間を特定すると共に連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速の最小値を暖房ベース流速として設定し、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速との大きさを比較し、給湯最小流速とガスの流速との大きさを比較し、さらに、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速との大きさを比較することにより、ガス総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらのガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによると、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の流量刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測時刻毎のガスの流速が算定される。
これらのガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによると、さらに、算定されたガスの流速に基づいてガスの総消費量の用途が給湯分,暖房分,及び厨房分に分類される。
また、本発明のガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムは、ガスの流速が算定された後に、連続動作区間のデータが冬季であるか否か判断される処理がまず行われ、暖房連続動作区間が特定される処理が次に行われ、暖房ベース流速が設定される処理が続いて行われるようにしても良い。この場合には、暖房用ガス器具の使用の有無が最初に判断されると共に暖房用ガス器具が使用されている場合にはガス総消費量から暖房分のガス消費量がまず切り分けられ、その後に給湯分と厨房分とのガス消費量の分類が行われる。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定方法は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータが分析対象区間のデータとして抽出され、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に前記所定の電力量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線が推定され、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度が算定され、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度が用いられて前記所定の期間における電力需要速度の統計量が特徴量として算出され、少なくとも前記特徴量が用いられて居住者の在宅不在が判定されるようにしている。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定装置は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に前記所定の電力量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度を算定する手段と、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度を用いて前記所定の期間における電力需要速度の統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも前記特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する手段とを有するようにしている。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定プログラムは、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に前記所定の電力量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度を算定する処理と、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度を用いて前記所定の期間における電力需要速度の統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも前記特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらの居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによると、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の電力量刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測時刻毎の電力需要速度が算定される。
これらの居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによると、さらに、算定された電力需要速度に基づいて住居や住戸に人が存在しているか存在していないかが推定される。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムは、電力需要量の計測データがスマートメータのAルートから出力されるデータであるようにしても良い。この場合には、スマートメータのAルート計測値が、電力需要量の計測データとして用いられる。
また、本発明の不在期間の確定方法は、電力需要量の計測データに基づいて時刻間毎の電力需要速度が算定され、判定対象時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度が用いられて前記所定の期間における電力需要速度の統計量が特徴量として算出され、少なくとも前記特徴量が用いられて判定対象時刻別の居住者の在宅不在が判定され、所定の時間長さを有して時間軸方向に移動する判定期間に対応する判定対象時刻別の判定結果が全て不在であるときに当該判定期間中は不在であると判定され、不在と判定された一つの判定期間の始まりの時刻を不在開始時刻とすると共に終わりの時刻を不在終了時刻として特定する、または、連続して不在と判定された複数の判定期間のうちの最初の判定期間の始まりの時刻を不在開始時刻とすると共に最後の判定期間の終わりの時刻を不在終了時刻として特定するようにしている。
したがって、この不在期間の確定方法によると、判定対象時刻毎に各々独立して(即ち、当該の判定対象時刻よりも前の時刻における状況を合わせて考慮すること無く)在宅不在を判定する場合のような、居住者が在宅しているにもかかわらず、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況での(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい状況での)不在であるとの誤った判断をしてしまうことが防止される。
本発明のガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによれば、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎のガスの流速を算定することができるので、ガスの総消費量の実態の再現性の向上を図ることが可能になる。
本発明のガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現されたガスの流速に基づいてガスの総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類することができるので、ガスの総消費量の用途分解の良好な精度を確保してガス消費量の用途分解技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
また、本発明のガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムは、連続動作区間のデータが冬季であるか否かがまず判断されてから暖房連続動作区間が特定された後に暖房ベース流速が設定されようにした場合には、暖房用ガス器具が使用されている場合にガス総消費量から暖房分のガス消費量がまず切り分けられてから給湯分と厨房分とのガス消費量の分類が行われるので、暖房分のガス消費量の分類を適確に行うことが可能になり、延いては、残りの給湯分と厨房分とのガス消費量の分類も適確に行うことが可能になる。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎の電力需要速度を算定することができるので、電力需要の実態の再現性の向上を図ることが可能になる。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現された電力需要速度に基づいて住居や住戸に人が存在しているか存在していないかを推定することができるので、居住者の在宅不在の判定の良好な精度を確保して居住者の在宅不在の判定技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
また、本発明の不在期間の確定方法によれば、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況での(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい状況での)不在であるとの誤った判断をしてしまうことを防止することができ、不在期間の確定手法としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
本発明のガス消費量の用途分解方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。
実施形態のガス消費量の用途分解方法をガス消費量の用途分解プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現されるガス消費量の用途分解装置の機能ブロック図である。
実施形態の連続データの作成方法を説明する図であり、計測データとしての流量カウント数に基づいて流速を推定する方法を説明する図である。
ガス消費量の用途分解において用いられるアルゴリズムの一例を説明する用途決定チャートである。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法の実施形態の一例を示すフローチャート(S1乃至S3)である。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法の実施形態の一例を示すフローチャート(S4乃至S11)である。
実施形態の居住者の在宅不在の判定方法を居住者の在宅不在の判定プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現される居住者の在宅不在の判定装置の機能ブロック図である。
実施形態の連続データの作成方法を説明する図であり、計測データとしての電力需要量に基づいて電力需要速度を推定する方法を説明する図である。
真の累積需要曲線としての最短折れ線を推定する方法を説明する図である。
不在開始時刻及び不在終了時刻を特定する方法並びに不在期間を確定する方法の一例を説明する図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図4に、本発明のガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態のガス消費量の用途分解方法は、ガス配管の主幹における計測(S1)によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得(S1)されたガス総消費量の計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータが連続動作区間のデータとして抽出され(S2)、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と流量fuとを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に流量fuを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線が推定され、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速ytが算定された上で(S3)、連続動作区間のデータが冬季であるか否か判断される処理(S4−1)と、ガスの流速ytが所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間が特定される処理(S4−2)と、連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速ytの最小値が暖房ベース流速として設定される処理(S4−3)と、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速ytとの大きさが比較される処理(S4−4)と、給湯最小流速とガスの流速ytとの大きさが比較される処理(S4−5)と、連続動作区間のデータが夏季であるか否か判断される処理(S4−6)と、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速ytとの大きさが比較される処理(S4−7)とが実行されることにより、ガス総消費量の用途が給湯分,暖房分,及び厨房分に分類される(S4)ようにしている(図1参照)。
また、本実施形態では、S3の処理において、連続動作区間における計測時刻の時系列順に付与される識別子t(ただし、t=1,2,3,…,T)毎の当該計測時刻の識別子tに対応する計測時刻における流量カウント数と流量fuとを掛け合わせた値xtが算出され、計測時刻の識別子t毎の値xtが用いられて数式1乃至数式3に示す最適化問題のうちのいずれかが解かれることによって計測時刻の識別子t毎の値ytとして主幹におけるガスの流速ytが算定されるようにしている。
上記ガス消費量の用途分解方法は、ガス消費量の用途分解装置によって実施され得る。本実施形態のガス消費量の用途分解装置10は、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データの入力を受ける手段としてのデータ受部11aと、計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータを連続動作区間のデータとして抽出する手段としての分解区間抽出部11bと、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と流量fuとを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に流量fuを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速ytを算定する手段としての最短折線作成部11cと、連続動作区間のデータが冬季であるか否かを判断し、ガスの流速ytが所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間を特定すると共に連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速ytの最小値を暖房ベース流速として設定し、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速ytとの大きさを比較し、給湯最小流速とガスの流速ytとの大きさを比較し、連続動作区間のデータが夏季であるか否かを判断し、さらに、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速ytとの大きさを比較することにより、ガス総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類する手段としての用途分解部11dとを有する。
また、本実施形態では、最短折線作成部11cが、連続動作区間における計測時刻の時系列順に付与される識別子t(ただし、t=1,2,3,…,T)毎の当該計測時刻の識別子tに対応する計測時刻における流量カウント数と流量fuとを掛け合わせた値xtを算出すると共に、計測時刻の識別子t毎の値xtを用いて数式1乃至数式3に示す最適化問題のうちのいずれかを解くことによって計測時刻の識別子t毎の値ytとして主幹におけるガスの流速ytを算定するようにしている。
また、上記ガス消費量の用途分解方法及びガス消費量の用途分解装置は、ガス消費量の用途分解プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、ガス消費量の用途分解プログラムがコンピュータ上で実行されることによってガス消費量の用途分解装置が実現されると共にガス消費量の用途分解方法が実施される場合を説明する。
本実施形態のガス消費量の用途分解プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、ガス消費量の用途分解装置10でもある)の全体構成を図2に示す。このコンピュータ10(ガス消費量の用途分解装置10)は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されているガス消費量の用途分解プログラム17によってコンピュータ10全体の制御並びにガス総消費量の用途の分解に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ10(「ガス消費量の用途分解装置10」と表記する)の制御部11には、ガス消費量の用途分解プログラム17が実行されることにより、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データの入力を受ける処理を行うデータ受部11aと、計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータを連続動作区間のデータとして抽出する処理を行う分解区間抽出部11bと、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と流量fuとを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に流量fuを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速ytを算定する処理を行う最短折線作成部11cと、連続動作区間のデータが冬季であるか否かを判断し、ガスの流速ytが所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間を特定すると共に連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速ytの最小値を暖房ベース流速として設定し、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速ytとの大きさを比較し、給湯最小流速とガスの流速ytとの大きさを比較し、連続動作区間のデータが夏季であるか否かを判断し、さらに、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速ytとの大きさを比較することにより、ガス総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類する処理を行う用途分解部11dとが構成される。
また、本実施形態では、最短折線作成部11cが、連続動作区間における計測時刻の時系列順に付与される識別子t(ただし、t=1,2,3,…,T)毎の当該計測時刻の識別子tに対応する計測時刻における流量カウント数と流量fuとを掛け合わせた値xtを算出すると共に、計測時刻の識別子t毎の値xtを用いて数式1乃至数式3に示す最適化問題のうちのいずれかを解くことによって計測時刻の識別子t毎の値ytとして主幹におけるガスの流速ytを算定する処理を行うようにしている。
そして、ガス消費量の用途分解方法の実施として、まず、ガス総消費量の計測が行われて計測データの取得が行われる(S1)。
ガス総消費量の計測の仕方は、所定の流量毎に1カウントとして計数するカウント数として主幹のガス流量を計測し、所定の時間毎に例えば電気的な信号として前記カウント数を出力するものであれば、特定の方法や機器によるものに限定されるものではなく、前記のような計測を行い得る方法や機器が適宜選択される。
具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、膜式ガスメータに装着される前述のガス流量計測装置(例えば、特開2004−125634号公報,特開2014−6058号公報)が利用され得る。あるいは、一定量(例えば、ガスメータの単位計量体積)のガスがガスメータを通過するたびに動作サイクルに起因してガスメータから発生する周期的な動作音や振動を検出してその回数をカウント数として所定の時間毎に出力する機器が利用され得る。
ガス総消費量(主幹のガス流量)の計測における、上述の「所定の流量」としての、1カウント当たりの実際の流量は、例えば、主幹に設けられているガスメータの単位計量体積に従って決定される。具体的には例えば、ガスメータの単位計量体積が1[L]である場合にはガス流量の計測機器から出力される1カウント毎に1[L]のガスが実際に流動した(言い換えると、消費された)ことを意味し、或いは、ガスメータの単位計量体積が1.2[L]である場合にはガス流量の計測機器から出力される1カウント毎に1.2[L]のガスが実際に流動したことを意味する。
また、ガス総消費量の計測における、上述の「所定の時間」としての、カウント数を出力する時間間隔は、特定の時間[秒,分]に限定されるものではなく、計測に用いられる計測機器の仕様を踏まえた上で、例えばガス消費量に関して想定される変動ピッチや必要とされる推定精度などが考慮されて適当な時間に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、5〜60秒程度の範囲で適当な値に設定され得る。
本実施形態では、上述の「所定の流量」が1.2[L]であると共に上述の「所定の時間」が10秒である計測データ、すなわち、実際の流量1.2[L]を1カウントとして計数するカウント数(「流量カウント数」と呼ぶ)が10秒間隔で出力される計測データがS1の処理によって取得されるとする。
そして、計測によって取得されたガス総消費量(主幹のガス流量)の計測値(具体的には、流量カウント数)は、データ受部11aを介してガス消費量の用途分解装置10に入力される。
ガス総消費量の計測値(流量カウント数)は、ガス消費量の用途分解装置10に、記録媒体やデータサーバを介して入力されるようにしても良いし、ガス消費量の用途分解装置10と計測機器とがデータや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように電気的に接続されて入力されるようにしても良い。
記録媒体を介して計測値が入力される場合には、計測機器から出力された流量カウント数が記録媒体に記録され、当該記録媒体がガス消費量の用途分解装置10の記録媒体接続用端子(図示していない)に差し込まれることによって流量カウント数が入力されるようにしても良い。
また、データサーバを介して計測値が入力される場合には、データサーバがバス等の信号回線によってガス消費量の用途分解装置10に接続され、計測機器から出力された流量カウント数が前記データサーバにデータファイル等として格納(保存)され、当該データファイル等として保存された流量カウント数が読み込まれるようにしても良い。
また、ガス消費量の用途分解装置10と計測機器とが電気的に接続されて計測値が入力される場合には、例えば、各々に接続されて敷設されたケーブル等が用いられる有線による信号送受の仕組みを介して信号の送受信が可能であるように電気的に接続されるようにしても良いし、各々に接続された無線信号送受信機が用いられる無線による信号送受の仕組みを介して信号の送受信が可能であるように電気的に接続されるようにしても良い。そして、これら信号送受の仕組みによって流量カウント数が入力されるようにしても良い。
さらに、記録媒体やデータサーバや有線・無線による信号送受の仕組みが組み合わされて用いられて流量カウント数がガス消費量の用途分解装置10に入力されるようにしても良い。
また、ガス総消費量の各計測値(各流量カウント数)が計測機器から出力された時刻が計測機器に備えられた時計機能によって計測値と一緒に出力されて当該計測値と対応づけられて記録されたり、或いは、計測機器から出力された各計測値が記録媒体やデータサーバやガス消費量の用途分解装置10に記録されたり入力されたりした時の時刻が当該計測値と対応づけられて記録されたりする。そして、この時刻の間隔[秒,分]が上述の「所定の時間」になる。
ここでの説明においては、各計測値(各流量カウント数)と対応づけられて記録される時刻のことを「計測時刻」と呼び、流量カウント数と計測時刻との組み合わせデータのことを「計測データ」と呼ぶ。
そして、データ受部11aにより、計測データがメモリ15に記憶させられる。
なお、例えば、対象の家庭に関する(言い換えると、対象住宅や対象住戸の主幹における)、あくまで一例として挙げると24時間に亙る一年分の計測データが、ガス消費量の用途分解のひとかたまりの処理対象としてメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の分解区間抽出部11bにより、S1の処理によって計測されて取得された計測データからの、用途の分解が行われる時間帯のデータの抽出が行われる(S2)。
S2の処理は、S1の処理においてメモリ15に記憶された、ガス消費量の用途分解のひとかたまりの処理対象としての計測データの全体に亙って実行される。
本発明はガス総消費量を用途別に分解するものであるので、対象住宅・住戸においてガス器具が使用されてガスが実際に消費されている時間帯が処理対象になり、ガス器具が使用されておらずガスが消費されていない時間帯は処理対象にならない。
そこで、計測データから、何らかのガス器具が使用される(言い換えると、動作する)ことによってガス総消費量が連続して変化(具体的には、増加)している可能性がある時間帯(「連続動作区間」と呼ぶ)の計測データが切り出される。
具体的には、動作休止判定時間[秒,分]に亙って計測データの流量カウント数が0(零)である場合に、ガス器具の使用が途切れたと判定される。動作休止判定時間以上に亙って計測データの流量カウント数が0である時間帯のことを「動作休止区間」と呼ぶ。
そして、時間的に前後する二つの動作休止区間に挟まれる時間帯が連続動作区間として切り出される。したがって、連続動作区間は、計測データの流量カウント数が動作休止判定時間以上に亙って0になることなく継続的に変化している時間帯の計測データであるとも言える。
動作休止判定時間[秒,分]は、特定の値に限られるものではなく、必要とされる推定精度などが考慮されて適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、主幹におけるガスの流速が0.2[L/10秒]以下である変化は微小な流量として無視しても大きな誤差は生じない(言い換えると、必要な精度は確保される)と判断される場合に、1.2L/0.2L=6(即ち、計測時刻の間隔6個分)に基づいて、動作休止判定時間が10秒×6=60秒に設定されることが考えられる。
なお、動作休止判定時間の値[秒,分]は、ガス消費量の用途分解プログラム17内に予め規定されるようにしても良いし、S2の処理が行われる前に入力部13を介して作業者によって入力されるようにしても良い。
本実施形態では、分解区間抽出部11bにより、S1の処理においてメモリ15に記憶された計測データが時系列に従って順次読み込まれ、動作休止判定時間に基づいて動作休止区間が特定されると共に、時間的に前後する二つの動作休止区間に挟まれる時間帯が連続動作区間として抽出される。
そして、分解区間抽出部11bにより、抽出された連続動作区間毎の計測データが、以降のS3及びS4の処理対象の計測データとしてメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の最短折線作成部11cにより、S2の処理によって抽出された連続動作区間に関する計測データが用いられて累積需要曲線の作成が行われる(S3)。
S3の処理は、S2の処理において抽出された連続動作区間の各々について実行される。
S1の処理によって取得される計測データは、10秒間隔での1.2L刻みのガス総消費量である。しかしながら、何らかのガス器具が使用されているときは、ガス総消費量が常に増加するという点においてガス総消費量の変化の生起は時系列において連続であり、また、ガスが常に流動するという点においてガス総消費量の変化の態様は漸次的である。
つまり、S1の処理における計測では、実際には(値の)変化の生起が時系列において連続であると共に(値の)変化の態様が漸次的である現象が、所定の時間間隔且つ所定の値刻みという散発的(言い換えると、間欠的)且つ離散的な変化として把握されていると言える。
そして、本発明では、所定の時間間隔且つ所定の流量刻みという計測値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的である計測データがそのまま用いられるのではなく、当該散発的(間欠的)且つ離散的な計測データが、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的であるデータに変換された上で用途分解の処理に用いられる。
本発明のガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムにおいて用いられる、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ計測値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的である累積需要曲線が作成される、連続データの作成方法を、図3を用いて説明する。
なお、連続動作区間では、何らかのガス器具が使用されることによってガス総消費量が常に増加するという点においてガス総消費量の変化の生起が時系列において連続であり、また、何らかのガス器具が使用されることによってガスが常に流動するという点においてガス総消費量の変化の態様が漸次的である。
ここでの説明の例として、図3に示すような、或る連続動作区間に関する計測データ(具体的には、10秒毎に出力される流量カウント数の累積値;図中の△印)がS2の処理によって抽出されたとする。なお、1カウント当たりの実際の流量は1.2[L]である。
図3の横軸は、10秒間隔である計測時刻の各時点を、当該の連続動作区間の最初の計測時刻を1とした上で識別子としての連続番号で表したものである。すなわち、横軸における例えば「10」は、当該の連続動作区間の始まりから100秒(=10×10秒)だけ時間が経過していることを表す。
また、図3の縦軸は、当該の連続動作区間おける流量カウント数の累積値を表す。すなわち、縦軸における例えば「4」は、当該の連続動作区間の始まりから4.8[L](=4×1.2[L])だけガスが消費されていることを表す。
S1の処理によって取得される計測データは所定の時間間隔且つ所定の流量刻みという値の変化が散発的(間欠的)且つ離散的なデータであるので、すなわち、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)且つ計測値の変化の態様が離散的なデータであるので、データプロットである△印を時系列で結ぶと図3に示すように階段状になる(図3中において符号21;「下限階段直線21」と呼ぶ)。
また、計測データの流量カウント数の累積値に計測時刻毎に1を加えたデータのプロットである▽印を時系列で結んだものも、図3に示すように階段状になる(図3中において符号22;「上限階段直線22」と呼ぶ)。
そして、下限階段直線21が実際のガス総消費量に基づく真の累積値の下限(言い換えると、実際のガス総消費量が取り得る累積値の下限)であり、上限階段直線22が実際のガス総消費量に基づく真の累積値の上限(言い換えると、実際のガス総消費量が取り得る累積値の上限)である。
したがって、実際のガス総消費量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線は、下限階段直線21と上限階段直線22とに挟まれた領域(「存在可能領域」と呼ぶ)内に存在し、全体としては増加傾向を示す非減少の曲線であると考えられる。
また、家庭において一般的に使用されるガス器具の実際のガス消費の特性を本発明者が分析することにより、ガス器具によって消費されるガスの流量の大きな変化の回数は比較的少なく、ほぼ一定の流速が或る程度の時間に亙って継続する傾向があることが確認された。
このため、真の累積需要曲線としては、存在可能領域内において増加傾向を示す非減少の折れ線のうち、折れ点(言い換えると、変曲点、若しくは、流速変化点)の個数が比較的少ないものが妥当性が高いと考えられる。
そこで、実際のガス総消費量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線として、存在可能領域内に存在する、総長(即ち、当該の連続動作区間の始まりから終わりまでに亙る軌跡の長さ)が最短の折れ線(「最短折れ線」と呼ぶ)を推定する。
真の累積需要曲線としての、存在可能領域内に存在する、最短折れ線の推定手法は、特定の方法に限定されるものではなく、特定の領域内に存在して所定の始点から終点へと至る折れ線のうちの総長が最短の折れ線であり且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定し得る適当な方法が適宜選択される。
最短折れ線の推定手法として、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、当該の連続動作区間において確定済みの折れ線の最後の点を起点とした(未確定の)直線部の許容される傾きの上限値・下限値を順次更新し、全ての直線が存在可能領域を逸脱せざるを得なくなる時点で直線の傾きを決定し、その直線が存在可能領域の境界に最初に接した時点までの折れ線の確定を行い、そして、新たに確定した折れ線の最後の点を新たな起点に設定した上で上述と同様の処理を繰り返すことを基本的な考え方とする方法が用いられ得る。
この推定方法は、計測時刻t(尚、計測単位は30分であり、したがって計測時刻の間隔は30分である)における計測流量をxt[L/10秒]とすると共に推定流速をyt[L/10秒]とすると、最適化問題として数式4のように表される。
数式4においてtは連続動作区間における計測時刻の識別子であってt=1,2,3,…であり、数式4では当該の連続動作区間の範囲として計測時刻の識別子tが1からTまでの期間に亙って処理が実行される。
そして、計測時刻を1刻みの識別子とすることにより、計測の時間間隔である10秒を一単位として扱うことになり、計測時刻 t−1 から t にかけての増分は計測の時間間隔当たりの増加量であって計測時刻 t−1 から t にかけての速度[L/10秒]であり、真の累積需要曲線としては計測時刻 t−1 から t にかけての直線の傾きである。
数式4において、また、計測流量xt[L/10秒]は、計測時刻tにおける流量カウント数(言い換えると、計測時刻 t−1 から t にかけての流量カウント数の増分)と1カウント当たりの実際の流量[L]とを掛け合わせたものである。
数式4において、さらに、fuは、1カウント当たりの実際の流量[L]である(即ち、本実施形態ではfu=1.2である)。なお、fuの値[L]は、ガス消費量の用途分解プログラム17内に予め規定されるようにしても良いし、S3の処理が行われる前に入力部13を介して作業者によって入力されるようにしても良い。
制約条件の第一式は流速の非負性に対応し、第二式は実際のガス総消費量の累積値の範囲制約に対応し、さらに、第三式は当該の連続動作区間における計測値ベースのガス総消費量の総和と推定値ベースのガス総消費量の総和との一致に対応する。
上述の最適化問題を解く方法によると、最悪の場合でも、時系列長(即ち、計測時刻の個数)の2乗のオーダーで真の累積需要曲線に相当する最短折れ線が推定される。
図3に示す計測データのプロット(図中の△印)を結んだ下限階段直線21に対して数式4で表される最適化問題を適用した結果として、図3において点線で示す、実際のガス総消費量に近いと考えられる推定累積需要曲線23が得られる。
ここで、上記の最適化問題は計測時刻の識別子t=1から処理が実行されるところ、t=1の処理が実行されるためには、t=1での起点としてt=0(即ち、計測時刻の識別子t=1に対応する計測時刻の一つ前の計測時刻)からt=1にかけての折れ線の最後の点が特定される必要が、即ち、t=0からt=1にかけての直線が特定される必要がある。この直線は、具体的には、当該の連続動作区間の最初の計測時刻(即ち、計測時刻の識別子t=1)の直前の計測時刻として識別子tを0(零)とすると共に流量カウント数の累積値を0(零)とする仮想的な原点を置き、当該原点と計測時刻の識別子t=1における流量カウント数の累積値の値の点とを結ぶことによって特定される。
あるいは、ほぼ一定の流速が或る程度の時間に亙って継続する傾向があるという家庭におけるガス消費の特性に基づいて、真の累積需要曲線としては折れ点の個数が少ないものが妥当性が高いという考えのもと、当該の連続動作区間についての計測時刻の識別子t=0からt=1にかけての直線の傾きが、識別子t=1において連続する直線の傾きに一致させられるようにしても良い。
ここで、真の累積需要曲線の上述の推定方法(即ち、数式4で表される最適化問題)は、目的関数部を「距離の和」から「距離の2乗和」に変更した数式5で表される最適化問題、即ち「存在可能領域の任意の曲線のうち各計測時刻の流速(即ち、流量の累積値の計測時刻間差分)の2乗和が最小の曲線」を求める問題と等価である。
数式5のように表される最適化問題では、2乗和の最小化により、各計測時刻の流速が同じ値を持つ傾向が生じるので、折れ線が最適解になる。
真の累積需要曲線の推定方法としての数式4で表される最適化問題は、また、数式5で表される最適化問題の双対問題である数式6で表される最適化問題とも等価である。なお、数式6で表される最適化問題は、全変動正規化問題と呼ばれる凸最適化問題の一種である。なお、数式6において、x0は計測流量xt[L/10秒]の初期値(即ち、t=0のときの値)であり、図3に示す例ではx0=0である。
上述の真の累積需要曲線(即ち、最短折れ線)は、一例として以下に示すアルゴリズムが用いられることによって求められ得る。
−真の累積需要曲線の決定アルゴリズム−
《保持・更新情報》
○起点 折れ線
○上限直線 上限需要と領域境界接触点
○下限直線 下限需要と領域境界接触点
《更新内容》
(1) 時刻更新:時刻=時刻+1
(2) 下限直線<上限累積需要値
起点から下限境界接触点までの需要量=需要下限(確定)
起点=下限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(3) 上限直線>下限累積需要
起点から上限境界接触点までの需要量=需要上限(確定)
起点=上限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(4) 下限直線<領域下限
下限需要,下限境界設定更新
上限直線>領域上限
上限需要,上限境界設定更新
(5) 計測時刻の識別子t=Tになるまで(1)へ戻る
本実施形態では、最短折線作成部11cにより、S2の処理においてメモリ15に記憶された連続動作区間に関する計測データ(即ち、流量カウント数と計測時刻との組み合わせデータ)が読み込まれる。
そして、メモリ15から読み込まれた流量カウント数は1カウント当たりの実際の流量である1.2[L]と掛け合わされて実際のガスの流量[L]に変換されると共に計測時刻は当該の連続動作区間における計測時刻の識別子として時系列順に1,2,3,…という連続番号に変換される。
続いて、最短折線作成部11cにより、上記変換された計測データが用いられて数式4乃至数式6に表される最適化問題のうちのいずれかが解かれて、計測時刻の識別子t毎のガスの推定流速yt[L/10秒]が算定される。
そして、最短折線作成部11cにより、S2の処理において抽出された連続動作区間毎に、算定されたガスの推定流速yt[L/10秒]の値が計測時刻の識別子tの値と対応づけられて(言い換えると、計測時刻の識別子tの値とガスの推定流速ytの値との組み合わせデータとして)メモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の用途分解部11dにより、S3の処理によって算定された計測時刻別のガスの流速が用いられてガス総消費量の用途毎のガス使用量への分解が行われる(S4)。
S4の処理は、S2の処理において抽出されてS3の処理において計測時刻別のガスの流速が算定された連続動作区間の各々について実行される。
具体的には、用途分解部11dにより、S3の処理においてメモリ15に記憶された連続動作区間に関する計測時刻の識別子tの値(t=1,2,…,T)とガスの推定流速ytの値との組み合わせデータが読み込まれる。
続いて、本実施形態では、図4に示すアルゴリズムに従ってガス総消費量が用途毎のガス使用量に分解される。
具体的には、まず、当該の連続動作区間が冬季におけるものであるか否かが判断される(S4−1)。
冬季であるか否かの判断の仕方は、特定の判断基準に限定されるものではなく、冬季とその他の季節とにおける例えば暖房器具の使用有無や給湯器具の温度設定などの差異が顕れる(若しくは、顕れると考えられる)時期などが考慮された上で適当な方法に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、10月から翌年4月までの期間に取得された計測データから抽出された連続動作区間のデータは冬季であると判断する方法が採用され得る。
そして、当該の連続動作区間が冬季におけるものである場合には(S4−1:Yes)S4−2の処理に進む。
そして、推定流速ytが暖房基準流速の最小値Vhs-min以上であると共に暖房基準流速の最大値Vhs-max以下であり、且つ、前記条件を満たす流速の継続時間(「所定流速継続時間」と呼ぶ)が暖房運転判断時間Th以上であるか否かが判断される(S4−2)。
S4−2の判断処理は、流速は必ずしも大きくはないもののそのような流速の継続時間が長い場合には少なくとも暖房用ガス器具が使用されていると考え、暖房用ガス器具が連続して動作している時間帯(「暖房連続動作区間」と呼ぶ)を特定するための処理である。
暖房基準流速の最小値Vhs-min及び最大値Vhs-max[L/10秒]は、暖房用ガス器具が使用されているときのガス消費量として想定される範囲の最小値及び最大値に基づいて設定され、特定の値に限定されるものではなく、例えば、対象住宅・住戸に設置されている(若しくは、設置されていると想定される一般的な)暖房用ガス器具の仕様などが考慮されたり、或いは、実測データが収集されている場合には当該実測データが考慮されたりして適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、最小値Vhs-minが0.01〜0.2[L/10秒]程度の範囲で適当な値に、最大値Vhs-maxが0.5〜1.5[L/10秒]程度の範囲で適当な値に、それぞれ設定され得る。
また、暖房運転判断時間Th[秒,分]は、特定の値に限定されるものではなく、例えば暖房器具を使用する場合の最低継続時間として想定される時間などが考慮されて適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、5〜15分程度の範囲で適当な値に設定され得る。
S4−2の処理は、当該の連続動作区間の全体に亙って実行される。そして、S4−2の処理の結果として、各連続動作区間について、暖房連続動作区間が一つも特定されないか、または、暖房連続動作区間が一つ以上特定される。
そして、Vhs-min≦yt≦Vhs-max であると共に所定流速継続時間がTh[分]以上である場合には(S4−2:Yes)S4−3の処理に進む。言い換えると、S4−2の処理において暖房連続動作区間が一つ以上特定された場合にS4−3の処理に進む。
そして、暖房ベース流速Vhbが設定される(S4−3)。
暖房ベース流速Vhb[L/10秒]は、当該の連続動作区間において特定された全ての暖房連続動作区間の中での、推定流速yt[L/10秒]の最小値に設定される。
したがって、暖房ベース流速Vhbは、或る一つの連続動作区間に対して共通に用いられる値として設定され、異なる連続動作区間では値が異なることがあり得る。
次に、推定流速ytが暖房ベース流速Vhbと給湯最小流速Vwとの和以上であるか否かが判断される(S4−4)。
S4−4の処理は、S4−2の処理において特定された暖房連続動作区間それぞれの各計測時刻tについて実行される。
S4−4の判断処理は、当該の連続動作区間において暖房連続動作区間であると特定された時間帯の各計測時刻tについて、即ち暖房用ガス器具が使用されている状態での、給湯用ガス器具の使用の有無を判断するための処理である。
給湯最小流速Vw[L/10秒]は、給湯用ガス器具が使用されているときのガス消費量として想定される範囲の最小値に基づいて設定され、特定の値に限定されるものではなく、例えば、対象住宅・住戸に設置されている(若しくは、設置されていると想定される一般的な)給湯用ガス器具の仕様などが考慮されたり、或いは、実測データが収集されている場合には当該実測データが考慮されたりして適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.5〜1.5[L/10秒]程度の範囲で適当な値に設定され得る。
そして、当該の連続動作区間における暖房連続動作区間内の計測時刻t毎に、yt≧Vhb+Vwである場合には(S4−4:Yes)推定流速ytから暖房ベース流速Vhbを引いたものが給湯分のガス使用量に分類されると共に暖房ベース流速Vhbが暖房分のガス使用量に分類され、yt≧Vhb+Vwでない場合には(S4−4:No)推定流速ytが暖房分のガス使用量に分類される。
一方、S4−1の処理において、当該の連続動作区間が冬季におけるものでない場合には(S4−1:No)S4−5の処理に進む。そして、計測時刻tのそれぞれについてS4−5乃至S4−7の処理が実行される。
また、S4−2の処理において、Vhs-min≦yt≦Vhs-max でない場合、若しくは、所定流速継続時間がTh[分]以上でない場合にも(S4−2:No)S4−5の処理に進む。言い換えると、暖房連続動作区間ではない計測時刻tのそれぞれについてS4−5乃至S4−7の処理が実行される。
まず、推定流速ytが給湯最小流速Vw以上であるか否かが判断される(S4−5)。
S4−5の判断処理は、給湯用ガス器具の使用の有無を判断するための処理である。
そして、yt≧Vwである場合には(S4−5:Yes)推定流速ytが給湯分のガス使用量に分類される。
一方、yt≧Vwでない場合には(S4−5:No)S4−6の処理に進み、当該の連続動作区間が夏季におけるものであるか否かが判断される。
夏季であるか否かの判断(S4−6)の仕方は、特定の判断基準に限定されるものではなく、夏季とその他の季節とにおける例えば暖房器具の使用有無や給湯器具の温度設定などの差異が顕れる(若しくは、顕れると考えられる)時期などが考慮された上で適当な方法に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、11月から翌年3月までの期間に取得された計測データから抽出された連続動作区間のデータは夏季であると判断する方法が採用され得る。
なお、冬季や夏季であるか否かを期間によって判断するようにした場合に、冬季と夏季として指定される期間は、切れ目無く連続しているようにしても良いし、冬季にも夏季にも指定(分類)されない期間があっても良く、また、冬季として指定される期間と夏季として指定される期間とで一部が重複しているようにしても良い。
そして、当該の連続動作区間が夏季におけるものである場合には(S4−6:Yes)推定流速ytが厨房分のガス使用量に分類される。
一方、当該の連続動作区間が夏季におけるものでない場合には(S4−6:No)S4−7の処理に進み、推定流速ytが厨房最小流速Vkよりも大きいか否かが判断される。
S4−7の判断処理は、厨房用ガス器具の使用の有無を判断するための処理である。
厨房最小流速Vk[L/10秒]は、厨房用ガス器具が使用されているときのガス消費量として想定される範囲の最小値に基づいて設定され、特定の値に限定されるものではなく、例えば、対象住宅・住戸に設置されている(若しくは、設置されていると想定される一般的な)厨房用ガス器具の仕様などが考慮されたり、或いは、実測データが収集されている場合には当該実測データが考慮されたりして適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.2〜1.0[L/10秒]程度の範囲で適当な値に設定され得る。
ここで、本実施形態のS4−7の処理では、厨房用ガス器具のみが使用されている状態と暖房用ガス器具が保温のために間欠的に動作している状態とが区別されるようにしている。
そこで、厨房最小流速Vkの値は、暖房用ガス器具が保温のために間欠的に動作しているときのガス消費量として想定される範囲の最大値(「間欠暖房最大流速」と呼ぶ)が合わせて考慮されたり当該間欠暖房最大流速に基づいて設定されたりするようにしても良い。
そして、推定流速ytが厨房最小流速Vkよりも大きい場合には(S4−7:Yes)推定流速ytが厨房分のガス使用量に分類される。
一方、推定流速ytが厨房最小流速Vkよりも大きくない場合には(S4−7:No)推定流速ytが暖房分のガス使用量に分類される。
そして、用途分解部11dにより、ガス器具毎のガス使用量の例えば30分間や1時間など時間,日,週間,月,季節,及び/又は年などの単位での積算値[L]が算出され、データファイル等に記録されて記憶部12などに格納(保存)されたり表示部14に表示されたりする。
なお、S4の処理において用いられる各閾値などの種々の値は、ガス消費量の用途分解プログラム17内に予め規定されるようにしても良いし、S4の処理が行われる前に入力部13を介して作業者によって入力されるようにしても良い。
そして、制御部11は、S1の処理においてメモリ15に記憶された、ガス消費量の用途分解のひとかたまりの処理対象としての計測データに関する処理を終了する(END)。
以上のように構成されたガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによれば、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu[L]毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の流量fu刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎のガスの流速ytを算定することができるので、ガスの総消費量の実態の再現性の向上を図ることが可能になる。
以上のように構成されたガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現されたガスの流速ytに基づいてガスの総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類することができるので、ガスの総消費量の用途分解の良好な精度を確保してガス消費量の用途分解技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態ではS4の処理においてガス総消費量が用途毎のガス使用量に分解される際に図4に示すアルゴリズムが用いられるようにしているが、用途分解に用いられるアルゴリズムは図4に示すものに限られるものではない。具体的には、本発明におけるガス総消費量の用途分解の要点は、
1)当該の連続動作区間が冬季であるか否かが判断される処理(上述の実施形態ではS4−1の処理が該当する)
2)主幹におけるガスの流速(yt)が所定の範囲である状態が所定の時間(Th)以上継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間が特定される処理(上述の実施形態ではS4−2の処理が該当する)
3)当該の連続動作区間において特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速(yt)の最小値が暖房ベース流速(Vhb)として設定される処理(上述の実施形態ではS4−3の処理が該当する)
4)暖房ベース流速(Vhb)と給湯最小流速(Vw)との和が考慮される処理(上述の実施形態ではS4−4の処理が該当する)
5)給湯最小流速(Vw)が考慮される処理(上述の実施形態ではS4−5の処理が該当する)、並びに、厨房最小流速(Vk)と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方が考慮される処理(上述の実施形態ではS4−7の処理が該当する)
が含まれることである。
そして、上記1乃至4の処理が実行される順序は図4に示すものに限られるものではない。
また、上記1乃至4として挙げた要点の列挙からも分かるように、当該の連続動作区間が夏季であるか否かが判断される処理(上述の実施形態ではS4−6の処理が該当する)は本発明において必須の処理ではない。例えば、上述の実施形態のようにS4−1の処理において当該の連続動作区間が冬季であるか否かを期間によって判断するようにした場合の冬季として指定される期間を調整することにより、当該の連続動作区間が夏季であるか否かが判断される処理は含まれないようにしても良い。
また、各処理において用いられる各閾値も、特定の値に限定されるものではなく、適宜設定され得る。
次に、図5乃至図10に、本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムの実施形態の一例を示す。
ここで、本発明における在宅不在の判定とは、住居や住戸内に居住者が存在している状態(即ち、在宅である)と存在していない状態(即ち、不在である)とのどちらであるかを推定することである。
本発明における居住者の在宅不在の判定でも、図3に示される連続データの作成方法の考え方が利用される。そして、所定の時間間隔且つ所定の計量単位で出力される計測値から実際の電力需要量が推定され、当該推定された電力需要量が用いられて居住者の在宅不在の判定が行われる。
具体的には、本実施形態の居住者の在宅不在の判定方法は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量lを計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得(S1)された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータが分析対象区間のデータとして抽出され、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に所定の電力量lを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線が推定され(S2)、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度xtが算定され(S2)、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度xtが用いられて前記所定の期間における電力需要速度xtの統計量が特徴量として算出され、少なくとも前記特徴量が用いられて居住者の在宅不在が判定される(S3)ようにしている(図5参照)。
また、本実施形態の居住者の在宅不在の判定装置は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量lを計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データの入力を受ける手段としてのデータ受部31aと、計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に所定の電力量lを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度を算定する手段としての最短折線作成部31bと、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度を用いて前記所定の期間における電力需要速度の統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも前記特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する手段としての時刻別判定部31cとを有する。
上記居住者の在宅不在の判定方法及び居住者の在宅不在の判定装置は、居住者の在宅不在の判定プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、居住者の在宅不在の判定プログラムがコンピュータ上で実行されることによって居住者の在宅不在の判定方法が実施されると共に居住者の在宅不在の判定装置が実現される場合を説明する。
本実施形態の居住者の在宅不在の判定プログラム37を実行するためのコンピュータ30(本実施形態では、居住者の在宅不在の判定装置30でもある)の全体構成を図7に示す。
このコンピュータ30(居住者の在宅不在の判定装置30)は制御部31,記憶部32,入力部33,表示部34,及びメモリ35を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部31は、記憶部32に記憶されている居住者の在宅不在の判定プログラム37に従ってコンピュータ30全体の制御並びに居住者の在宅不在の判定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部32は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部33は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部31に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部33として有するようにしても良い。
表示部34は、制御部31の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ35は、制御部31が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ30(以下、「居住者の在宅不在の判定装置30」と表記する)の制御部31には、居住者の在宅不在の判定プログラム37が実行されることにより、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量lを計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データの入力を受ける処理を行うデータ受部31aと、計測データから所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、さらに、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に所定の電力量lを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度xtを算定する処理を行う最短折線作成部31bと、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度xtを用いて所定の期間における電力需要速度xtの統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する処理を行う時刻別判定部31cとが構成される。
ここで、以下に説明する処理を行う際に用いられる変数についての計算機における処理として、最初に、不在開始時刻,不在終了時刻,及び不在区間指標を表す変数は全て初期化され、具体的には、不在開始時刻及び不在終了時刻を表す変数には例えば時刻としてはあり得ない数値が与えられたり、不在区間指標を表す変数には例えば0(ゼロ)が与えられたりする。
そして、居住者の在宅不在の判定方法の実施として、まず、電力需要量の計測が行われて計測データの取得が行われる(S1)。
電力需要量の計測の仕方は、在宅不在の判定の対象である住宅や住戸における電力需要量を計測して所定の計量単位(言い換えると、所定の計量の刻み)で所定の時間毎に例えば電気的な信号として前記所定の計量単位での需要量を出力するものであれば、特定の方法や機器によるものに限定されるものではなく、前記のような計測を行い得る方法や機器が適宜選択される。
具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、電力需要量の計測の仕方(具体的には、計測機器)としてスマートメータ(例えば、上述の非特許文献2)が利用され得る。
電力需要量の計測における上述の「所定の計量単位」としての、1単位として扱われる(言い換えると、1単位として計量される)実際の電力量は、特定の値[Wh]に限定されるものではなく、例えば計測に用いられる計測機器の仕様などが踏まえられた上で適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、スマートメータのAルート計測値では、1単位として扱われる実際の電力量は100 Wh である。
また、電力需要量の計測における上述の「所定の時間」としての、計測値を出力する時間間隔は、特定の時間[分]に限定されるものではなく、例えば計測に用いられる計測機器の仕様などが踏まえられた上で適当な時間に適宜設定される。具体的には例えば、スマートメータのAルート計測値では、計測値が出力される時間間隔は30分である。
本実施形態では、電力需要量の計測においてスマートメータが利用され、上述の「所定の計量単位」が100 Wh であると共に上述の「所定の時間」が30分である計測データ、すなわち、実際の電力量100 Wh を1単位として計量する電力需要の値(「需要単位計量値」と呼ぶ)が30分間隔で出力される計測データが、S1の処理によって取得されるとする。
そして、計測によって取得された電力需要量の計測値(具体的には、需要単位計量値)は、制御部31のデータ受部31aを介して居住者の在宅不在の判定装置30へと入力される。
電力需要量の計測値(需要単位計量値)は、居住者の在宅不在の判定装置30に、各種記録媒体やデータサーバを介して入力されるようにしても良く、或いは、例えばスマートメータのように計測機器が備えている通信機能または計測機器に付加された通信機能や通信機序によって入力されるようにしても良い。
記録媒体を介して計測値が入力される場合には、例えば、計測機器から出力された需要単位計量値が記録媒体に記録され、当該記録媒体が居住者の在宅不在の判定装置30の記録媒体接続用端子(図示していない)に差し込まれることによって需要単位計量値が入力されるようにすることが考えられる。
また、データサーバを介して計測値が入力される場合には、例えば、データサーバがバス等の信号回線によって居住者の在宅不在の判定装置30に接続され、計測機器から出力された需要単位計量値が前記データサーバにデータファイル等として格納(保存)され、当該データファイル等として保存された需要単位計量値が読み込まれるようにすることが考えられる。
また、例えばスマートメータのように計測機器が備えている通信機能または計測機器に付加された通信機能や通信機序によって計測値が入力される場合には、需要単位計量値がリアルタイムで(即ち、即時的に)居住者の在宅不在の判定装置30に入力されることも可能であり、したがってほぼリアルタイムでの(即ち、即時的な)居住者の在宅不在の判定の処理も可能である。
なお、記録媒体,データサーバ,及び通信機能や通信機序が組み合わされて用いられて需要単位計量値が居住者の在宅不在の判定装置30に入力されるようにしても良い。
また、電力需要量の各計測値(各需要単位計量値)が計測機器から出力された時刻が計測機器に備えられた時計機能によって計測値と一緒に出力されて当該計測値と対応づけられて記録されたり、或いは、計測機器から出力された各計測値が記録媒体,データサーバ,或いは居住者の在宅不在の判定装置30に記録されたり入力されたりした時の時刻が当該計測値と対応づけられて記録されたりする。なお、この時刻の間隔[分]が上述の「所定の時間」になる。
ここでの説明においては、各計測値(各需要単位計量値)と対応づけられて記録される時刻のことを「計測時刻」と呼び、また、需要単位計量値と計測時刻との組み合わせデータのことを「計測データ」と呼ぶ。
そして、データ受部31aにより、計測データがメモリ35に記憶させられる。
次に、制御部31の最短折線作成部31bにより、S1の処理によって計測されて取得された計測データが用いられて累積需要曲線の作成が行われる(S2)。
S2の処理は、分析対象区間について実行される。分析対象区間は、少なくとも、対象住宅や対象住戸についての居住者の在宅不在の判定が行われる時刻(「判定対象時刻」と呼ぶ)を含む期間として設定される。
分析対象区間は、特定の時間長さ[時間]に限定されるものではなく、例えば検知の主要な対象として想定される不在期間について想定される時間が考慮されるなどして適当な時間長さに適宜設定される。分析対象区間は、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、6〜36時間程度の範囲で適当な時間長さに設定され得る。また、分析対象区間は、例えばリアルタイムでの(即ち、即時的な)居住者の在宅不在の判定が行われる場合などには、判定対象時刻の進行に伴って当該の判定対象時刻を基準とするなどして適時・適宜に更新されて(言い換えると、設定し直されて)時間軸方向に移動させられるようにしても良い。
なお、判定対象時刻は、全ての計測時刻の各々が順次に判定対象時刻とされるようにしても良く、或いは、各計測時刻のうちから所定の間隔で選択された計測時刻が順次に判定対象時刻とされるようにしても良い。
S1の処理によって取得される計測データは、30分間隔での100 Wh 単位(言い換えると、100 Wh 刻み)の電力需要量である。しかしながら、何らかの電気機器が使用されているときは、さらに、一般の住居では冷蔵庫など常時稼働且つ所定の間隔(或いは、所定のトリガー)で電力需要が変動する電気機器が通常は使用されていることを考慮すれば、電力(待機電力等を含む)の需要が常に継続しているという点において電力需要量の変化の生起は時系列において連続であり、また、電力が常に消費されているという点において電力需要量の変化の態様は漸次的である。
つまり、S1の処理における計測では、実際には(値の)変化の生起が時系列において連続であると共に(値の)変化の態様が漸次的である現象が、所定の時間間隔且つ所定の値単位(言い換えると、所定の値刻み,所定の計測単位,或いは所定の計量単位)という散発的(言い換えると、間欠的)且つ離散的な変化として把握されていると言える。
そして、本発明では、所定の時間間隔且つ所定の値単位(言い換えると、所定の値刻み,所定の計測単位,或いは所定の計量単位)という計測値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的である計測データがそのまま用いられるのではなく、当該散発的(間欠的)且つ離散的な計測データが、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的であるデータに変換された上で在宅不在の判定の処理に用いられる。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムにおいて用いられる、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ計測値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的である累積需要曲線が作成される、連続データの作成方法を、図8を用いて説明する。そして、この作成方法の考え方(言い換えると、要点)は、図3を用いて説明した作成方法の考え方(要点)と同様である。
ここでの説明の例として、図8に示すような、或る時間帯の計測データが、具体的には例えばスマートメータのAルート計測値のように30分毎に出力される需要単位計量値の累積値であって100 Wh 単位の電力需要量の累積値(図中の●印)がS1の処理によって取得されて分析対象区間分の計測データとして抽出されたとする。
図8の横軸は、30分間隔である計測時刻の各時点を、当該の分析対象区間の最初の計測時刻を1とした上で識別子としての連続番号で表したものである。すなわち、横軸における例えば「3」は、当該の分析対象区間の始まりから1.5時間(=90分=30分×3)だけ時間が経過していることを表す。
また、図3の縦軸は、当該の分析対象区間における需要単位計量値の累積値を表す。すなわち、縦軸における例えば「400」は、当該の分析対象区間の始まりから400[Wh]だけ電力が消費されていることを表す。
S1の処理によって取得される計測データは所定の時間間隔且つ所定の値単位(値刻み,計測単位,計量単位)という値の変化が散発的(間欠的)且つ離散的なデータであるので、すなわち、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)且つ計測値の変化の態様が離散的なデータであるので、計測データの需要単位計測値の累積値のデータプロットである●印を時系列で結ぶと図8に示すように不規則な昇り階段状になる(図8中において符号41;「下限階段直線41」と呼ぶ)。
また、計測データの需要単位計量値の累積値に計測時刻毎に100 Wh(即ち、需要単位計量値における計量単位であり値刻みの大きさである)を加えたデータのプロットである▲印を時系列で結んだものも、図8に示すように不規則な昇り階段状になる(図8中において符号42;「上限階段直線42」と呼ぶ)。
そして、下限階段直線41が実際の電力需要量に基づく真の累積値の下限(言い換えると、実際の電力需要量が取り得る累積値の下限)であり、上限階段直線42が実際の電力需要量に基づく真の累積値の上限(言い換えると、実際の電力需要量が取り得る累積値の上限)である。
したがって、実際の電力需要量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線は、下限階段直線41と上限階段直線42とに挟まれた領域(「存在可能領域」と呼ぶ)内に存在し、全体としては増加傾向を示す非減少の曲線であると考えられる。
そして、真の累積需要曲線としては、存在可能領域内において増加傾向を示す非減少の折れ線のうち、折れ点(言い換えると、変曲点、若しくは、電力需要速度変化点)の個数が比較的少ないものを想定する。
そこで、実際の電力需要量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線として、存在可能領域内に存在する、総長(即ち、当該の分析対象区間の始まりから終わりまでに亙る軌跡の長さ)が最短の折れ線(「最短折れ線」と呼ぶ)を推定する。
真の累積需要曲線としての、存在可能領域内に存在する、最短折れ線の推定手法は、特定の方法に限定されるものではなく、特定の領域内に存在して所定の始点から終点へと至る折れ線のうちの総長が最短の折れ線であり且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定し得る適当な方法が適宜選択される。
最短折れ線の推定手法として、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、当該の分析対象区間において確定済みの折れ線の最後の点を起点とした(未確定の)直線部の許容される傾きの上限値・下限値を順次更新し、全ての直線が存在可能領域を逸脱せざるを得なくなる時点で直線の傾きを決定し、その直線が存在可能領域の境界に最初に接した時点までの折れ線の確定を行い、そして、新たに確定した折れ線の最後の点を新たな起点に設定した上で上述と同様の処理を繰り返すことを基本的な考え方とする方法が用いられ得る。
この推定方法は、計測時刻t(尚、計測単位は30分であり、したがって計測時刻の間隔は30分である)における計側電力量をxt[Wh/30分]とすると共に、推定電力需要速度をyt[Wh/30分]とすると(図9参照)、最適化問題として数式7のように表される。
数式7においてtは分析対象区間における計測時刻の識別子であってt=1,2,3,…であり、数式7では当該の分析対象区間の範囲として計測時刻の識別子tが1からTまでの期間に亙って処理が実行される。
そして、計測時刻を1刻みの識別子とすることにより、計測の時間間隔である30分を一単位として扱うことになり、計測時刻 t−1 から t にかけての増分は計測の時間間隔当たりの増加量であって計測時刻 t−1 から t にかけての速度[Wh/30分]であり、真の累積需要曲線としては計測時刻 t−1 から t にかけての直線の傾きである。
数式7において、また、計測電力量xt[Wh/30分]は、計測時刻tにおける需要単位計量値(言い換えると、計測時刻 t−1 から t にかけての需要単位計量値の増分)である。
数式7において、さらに、l(エル)は、電力需要[Wh]の最小単位(即ち、計測単位,計量単位)であり、本実施形態ではl=100である。
そして、数式7における最小化の対象は、経過時間(即ち、各々1)と各経過時間に関する推定需要(即ち、推定電力需要速度yt)とからなる折れ線の距離である。折れ線の距離は、図9に示す例のように、経過時間(即ち、各々1)と当該経過時間に関する推定電力需要速度ytとに対する斜辺の長さの総和として求められ、本発明ではこの斜辺の長さの総和が最も小さくなる曲線が推定累積需要曲線とされる。
制約条件の第一式は電力需要速度の非負性に対応し、また、第二式は実際の電力需要量の累積値の範囲制約に対応し、さらに、第三式は当該の分析対象区間における計測値ベースの電力需要量の総和と推定値ベースの電力需要量の総和との一致に対応する。
上述の最適化問題を解く方法によると、最悪の場合でも、時系列長(即ち、計測時刻の個数)の二乗のオーダーで真の累積需要曲線に相当する最短折れ線が推定される。
図8に示す計測データのプロット(図中の●印)を結んだ下限階段直線41に対して数式7で表される最適化問題を適用した結果として(言い換えると、数式7に示す三つの制約条件を満たす累積需要曲線の全体が)、図8において破線で示す、存在可能領域内の単調増加曲線として、実際の電力需要量に近いと考えられる推定累積需要曲線43が得られる。
ここで、上記の最適化問題は計測時刻の識別子t=1から処理が実行されるところ、t=1の処理が実行されるためには、t=1での起点としてt=0(即ち、計測時刻の識別子t=1に対応する計測時刻の一つ前の計測時刻)からt=1にかけての折れ線の最後の点が特定される必要が、すなわち、t=0からt=1にかけての直線が特定される必要がある。この直線は、具体的には、当該の分析対象区間の最初の計測時刻(即ち、計測時刻の識別子t=1)の直前の計測時刻として識別子tを0(ゼロ)とすると共に需要単位計量値の累積値を0(ゼロ)とする仮想の原点を置き、当該原点と計測時刻の識別子t=1における需要単位計量値の累積値の値の点とを結ぶことによって特定される。
あるいは、当該の分析対象区間についての計測時刻の識別子t=0からt=1にかけての直線の傾きが、識別子t=1において連続する直線の傾きに一致させられるようにしても良い。
ここで、真の累積需要曲線の上述の推定方法(即ち、数式7で表される最適化問題)は、目的関数部を「距離の和」から「距離の2乗和」に変更した数式8で表される最適化問題、すなわち、「存在可能領域の任意の曲線のうち各計測時刻の電力需要速度(即ち、電力需要量の累積値の計測時刻間差分)の2乗和が最小の曲線」を求める問題と等価である。
数式8で表される最適化問題では、2乗和の最小化により、各計測時刻の電力需要速度(電力需要量)が同じ値を持つ傾向が生じるので、折れ線が最適解になる。
真の累積需要曲線の推定方法としての数式7で表される最適化問題は、また、数式8で表される最適化問題の双対問題である数式9で表される最適化問題とも等価である。なお、数式9で表される最適化問題は、全変動正規化問題と呼ばれる凸最適化問題の一種である。なお、数式9において、x0は計測電力量xt[Wh/30分]の初期値(即ち、t=0のときの値)であり、図8,図9に示す例ではx0=0である。
上述の真の累積需要曲線(即ち、最短折れ線)は、一例として以下に示すアルゴリズムが用いられることによって求められ得る。
−真の累積需要曲線の決定アルゴリズム−
《保持・更新情報》
○起点 折れ線
○上限直線 上限需要と領域境界接触点
○下限直線 下限需要と領域境界接触点
《更新内容》
(1) 時刻更新:時刻=時刻+1
(2) 下限直線<上限累積需要値
起点から下限境界接触点までの需要量=需要下限(確定)
起点=下限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(3) 上限直線>下限累積需要
起点から上限境界接触点までの需要量=需要上限(確定)
起点=上限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(4) 下限直線<領域下限
下限需要,下限境界設定更新
上限直線>領域上限
上限需要,上限境界設定更新
(5) 計測時刻の識別子t=Tになるまで(1)へ戻る
本実施形態では、最短折線作成部31bにより、S1の処理においてメモリ35に記憶された計測データ(即ち、需要単位計量値と計測時刻との組み合わせデータ)のうち、分析対象区間に該当する期間の計測データが時系列に従って順次読み込まれる。
そして、メモリ35から読み込まれた計測時刻は、当該の分析対象区間における計測時刻の識別子として時系列順に1,2,3…という連続番号に変換される。
続いて、最短折線作成部31bにより、上記の変換が施された計測データが用いられて数式7乃至数式9に表される最適化問題のうちのいずれかが解かれて、計測時刻の識別子t毎の推定電力需要速度yt[Wh/30分]が算定される。
そして、最短折線作成部31bにより、当該の分析対象区間について、算定された推定電力需要速度yt[Wh/30分]の値が計測時刻の識別子tの値と対応づけられて(言い換えると、計測時刻の識別子tの値と推定電力需要速度ytの値との組み合わせデータとして)メモリ35に記憶させられる。
次に、制御部31の時刻別判定部31cにより、S2の処理によって算定された計測時刻別の推定電力需要速度が用いられて居住者の在宅不在の時刻別判定指標の決定が行われる(S3)。
S3の処理は、S2の処理が実行された分析対象区間に含まれる判定対象時刻の各々について実行される。なお、判定対象時刻に該当する計測時刻の識別子をteと表記する。
本発明では、判定対象時刻における在宅不在の判定を行う際に、当該の判定対象時刻以前の一定期間内の推定電力需要速度のデータが用いられて平均値や最大値などの統計量が特徴量として算出され、当該特徴量が用いられて在宅か不在かの判定が行われる。特徴量の算出対象期間であって、当該の判定対象時刻以前の一定期間のことを「特徴量期間」と呼ぶ。
特徴量期間は、特定の時間長さ[分,時間]に限定されるものではなく、例えば事前の分析結果が考慮されるなどして適当な時間長さに適宜設定される。特徴量期間は、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、1〜3時間程度の範囲で適当な時間長さに設定され得る。
具体的には例えば、或る判定対象時刻(計測時刻の識別子t=te)における判定を行う場合に、特徴量期間が1時間であるときは、当該の判定対象時刻(計測時刻の識別子t=te)における推定電力需要速度yte[Wh/30分](尚、当該の判定対象時刻以前30分間の状態が反映されている)と当該の判定対象時刻の一つ前の計測時刻(計測時刻の識別子t=te−1)における推定電力需要速度yte-1[Wh/30](尚、当該の判定対象時刻の60分前から30分前までの状態が反映されている)とが用いられてこれら二つの値についての統計量が特徴量として算出される。
特徴量としての統計量は、特定の種類に限定されるものではなく、例えば事前の分析結果が考慮されるなどして適当な種類が取り上げられて適宜設定される。特徴量としては、具体的には例えば、平均値(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度の平均の値),最大値(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度のうちの最も大きな値),最小値(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度のうちの最も小さな値),範囲(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度のうちの最も大きな値と最も小さな値との差の値),標準偏差(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度の標準偏差の値)などが挙げられる。
なお、S3の処理において用いられる特徴量の個数は、特定の数に限定されるものではなく、一個でも良く、或いは、複数個でも良い。
また、特徴量として、電力需要量(具体的には、推定電力需要速度)に関する各種統計量に加え、種々の情報が追加的に用いられるようにしても良い。この場合の情報の種類としては、例えば、世帯の識別子,判定対象時刻(実際の時刻),気温,季節などが挙げられる。
そして、上記のようにして算出されたり設定されたりした特徴量(言い換えると、説明変数)が用いられて、在宅と不在との2クラス分類が行われることによって在宅不在の判定が行われる。
2クラス分類を行う手法としては、例えばランダムフォレストやサポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine の略)などの機械学習手法が用いられ得る。
なお、機械学習手法が用いられる際には、時刻別の電力需要量の実測データと当該時刻における実際の在宅不在に関する状態データとの組み合わせデータが正解データ(「教師データ」や「訓練データ」とも呼ばれる)が必要とされる。この正解データは、例えば、実態調査,モニタ調査,アンケート調査などが行われて収集されたり、既存の観測データが利用されて準備されたりする。そして、正解データが機械学習手法における学習に用いられて2クラス分類の判定基準が作成される。なお、2クラス分類に用いられる機械学習手法の手順や判定基準の内容などは、例えば、居住者の在宅不在の判定プログラム37内に予め規定される。
本実施形態では、時刻別判定部31cにより、S2の処理においてメモリ35に記憶された分析対象区間についての計測時刻の識別子tの値と推定電力需要速度ytの値との組み合わせデータのうち、当該の判定対象時刻についての特徴量期間に該当する(言い換えると、特徴量期間に含まれる)計測時刻の識別子と対応づけられている全ての推定電力需要速度の値が読み込まれる。
そして、時刻別判定部31cにより、読み込まれた推定電力需要速度の値が用いられて、2クラス分類に用いられる特徴量が算出される。
時刻別判定部31cにより、さらに、機械学習手法が用いられて2クラス分類が行われ、当該の判定対象時刻について対象住宅や対象住戸に人が存在しているか存在していないかが決定される。
そして、時刻別判定部31cにより、2クラス分類の結果(即ち、「在宅」と「不在」とのうちのどちらであるかの決定結果)が、在宅不在の時刻別判定指標として判定対象時刻(計測時刻の識別子t=te)と対応づけられて(言い換えると、計測時刻の識別子の値と在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値との組み合わせデータとして)メモリ35に記憶させられる。
なお、計算機における処理としては、2クラス分類の結果が、「在宅」である場合には時刻別判定指標を表す変数に「在宅」に対応する数値として適宜選択された適当な数値(具体的には例えば、1)が与えられ、「不在」である場合には時刻別判定指標を表す変数に「不在」に対応する数値として適宜選択された適当な数値(具体的には例えば、0(ゼロ))が与えられる。
本実施形態では、引き続いて、上述までの処理によって決定された在宅不在の時刻別判定指標が用いられて不在開始時刻及び不在終了時刻が特定されて不在期間が確定されるようにしている(S4乃至S11;図6,図10)。
具体的にはまず、制御部31の不在区間判断部31dにより、S3の処理によって決定された当該の判定対象時刻における在宅不在の時刻別判定指標が用いられて、当該時刻別判定指標が「不在」であるか否かの判断が行われる(S4)。
本実施形態では、不在区間判断部31dにより、S3の処理においてメモリ35に記憶された当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子teと対応づけられている在宅不在の時刻別判定指標が読み込まれる。
そして、読み込まれた時刻別判定指標が「不在」である場合には(S4:Yes)、処理ステップがS5の処理へと進められる。
そして、S5の処理として、不在区間判断部31dにより、後述するS8の処理において設定・操作される不在区間指標が「不在」であるか否かの判断が行われる。
そして、不在区間指標が「不在」でない場合には(S5:No)、不在開始時刻がS1の処理の前の初期化された状態のままであるときは、当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)の一つ前の計測時刻の識別子t(=te−1)に対応する実際の時刻が不在開始時刻としてメモリ35に記憶させられる(S6)。なお、不在開始時刻がS1の処理の前の初期化された状態のままでないときは、不在開始時刻に対しては何らの操作もしない。
次に、制御部31の在宅不在判定部31eにより、S3の処理によって決定された在宅不在の時刻別判定指標が用いられて、居住者の在宅不在の判定が行われる(S7)。
S3の処理によって決定される在宅不在の時刻別判定指標は、判定対象時刻毎に各々独立して判定された結果であり、居住者が在宅しているものの、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする場合に(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい場合に)、不在であるとの判断結果になる虞がある。
このため、本実施形態では、居住者の在宅不在の最終的な判定は、在宅不在の時刻別判定指標が当該の判定対象時刻以前の所定の時間に亙って連続して「不在」であるか否か(言い換えると、S3の処理における「不在」の決定が所定の時間に亙って継続しているか否か)が判断されることによって行われる。ここで、在宅不在の判定を行うための前記所定の時間のことを「判定期間」と呼ぶ。
判定期間は、特定の時間長さ[時間](言い換えると、判定対象時刻の個数)に限定されるものではなく、例えば事前の分析結果が考慮されるなどして適当な時間長さに適宜設定される。判定期間は、具体的には例えば、1〜12時間程度の範囲で適当な時間長さに設定されることが考えられ、4〜8時間程度のうちのいずれかの時間長さに設定されることが好ましく、6時間程度に設定されることが更に好ましい。
本実施形態では、在宅不在判定部31eにより、S3の処理においてメモリ35に記憶された計測時刻の識別子tの値と在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値との組み合わせデータのうち、当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)と対応づけられている在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値が読み込まれると共に、当該の判定対象時刻についての判定期間に該当する(言い換えると、判定期間に含まれる)計測時刻の識別子t(=te−1,te−2 等)と対応づけられている全ての在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値が読み込まれる。
そして、在宅不在判定部31eにより、当該の判定対象時刻についての判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標が全て「不在」であるか否かが判断される。
そして、判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標の中に一つでも「在宅」が有る場合には(S7:No)、処理ステップがS1の処理へと戻される。
他方、判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標が全て「不在」である場合には(S7:Yes)、当該の判定期間の間は居住者は不在であると判定されるということになり、在宅不在判定部31eにより、不在区間指標が「不在」にされた上でメモリ35に記憶させられると共に当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)に対応する実際の時刻が不在終了時刻としてメモリ35に記憶させられ(S8)、その上で処理ステップがS1の処理へと戻される。なお、不在区間指標が「不在」にされるとは、計算機における処理としては、不在区間指標を表す変数に「不在」に対応する数値として適宜選択された適当な数値、具体的には例えば1が与えられたりすることである。
また、S5の処理において、不在区間判断部31dにより、不在区間指標が「不在」であるか否かの判断が行われて当該不在区間指標が「不在」である場合には(S5:Yes)、当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)に対応する実際の時刻が不在終了時刻としてメモリ35に記憶させられ(S9)、その上で処理ステップがS1の処理へと戻される。なお、S9の処理では、S8の処理若しくは前回のS9の処理において設定された不在終了時刻が更新されることになる。
また、S4の処理において、不在区間判断部31dにより、当該の判定対象時刻における在宅不在の時刻別判定指標が「不在」であるか否かの判断が行われて当該時刻別判定指標が「不在」でない場合には(S4:No)、処理ステップがS10の処理へと進められる。
そして、S10の処理として、制御部31の不在期間確定部31fにより、不在区間指標が「不在」であるか否かの判断が行われ、不在区間指標が「不在」である場合には(S10:Yes)、上述のS6の処理において特定された不在開始時刻から、上述のS8の処理若しくはS9の処理において特定された不在終了時刻までが、不在期間であると確定される(S11)。
そして、対象住宅や対象住戸についての在宅不在の判定の結果として、必要に応じて個々の不在期間を区別するための識別子と対応づけられて、不在開始時刻と不在終了時刻との組み合わせデータが、データファイル等に記録されて記憶部32などに格納(保存)されたり、表示部34に表示されたりする。その上で、処理ステップがS1の処理へと戻される。この際、不在開始時刻,不在終了時刻,及び不在区間指標は全てリセットされ、計算機における処理としては、S1の処理の前の初期化された状態に戻される。
他方、不在区間指標が「不在」でない場合には(S10:No)、処理ステップがS1の処理へと戻される。この際、不在開始時刻がS1の処理の前の初期化された状態のままでないときは、不在開始時刻はリセットされ、計算機における処理としては、S1の処理の前の初期化された状態に戻される。
以上のように構成された居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量l[Wh]を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の電力量l刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎の電力需要速度ytを算定することができるので、電力需要の実態の再現性の向上を図ることが可能なる。
以上のように構成された居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現された電力需要速度に基づいて住居や住戸に人が存在しているか存在していないかを推定することができるので、居住者の在宅不在の判定の良好な精度を確保して居住者の在宅不在の判定技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
また、不在開始時刻から不在終了時刻までの期間は、つまりは対象住宅や対象住戸において人の活動に伴う電気の使用が為されていない期間であるので、対象住宅や対象住戸には人が存在していないと理解したり、或いは、対象住宅や対象住戸に人が存在しているものの例えば病気や怪我などのために動けなくなっているような異常事態が発生している可能性があると理解したりすることができる。したがって、不在開始時刻から不在終了時刻までの時間長さが所定の閾値を超える場合を要安否確認事象として検知し、対象住宅や対象住戸に関して長期不在の有無を確認したり異常事態の発生の有無を確認したりするようにすることも考えられる。すなわち、本発明の居住者の在宅不在の判定手法は、例えば、高齢者等の見守りシステムとしても利用されることが可能である。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態ではS3の処理において居住者の在宅不在に関する時刻別判定指標が決定された上で更にS4乃至S11の処理が実行されて不在開始時刻と不在終了時刻とが特定されるようにしているが、前記S4乃至S11の処理は本発明において必須の構成ではない。すなわち、本発明の要点の一つは前記時刻別判定指標が決定されることであり、前記S4乃至S11の処理は前記時刻別判定指標の利用の仕方の一つであるものの、前記時刻別判定指標の利用の仕方はこれに限定されるものではない。
上記のことも踏まえると、本発明の実施の形態としては、時刻別判定指標が決定されるまで(即ち、上述の実施形態におけるS3の処理まで)という態様や、上述の実施形態におけるS3の処理に続いて判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標が全て「不在」であるか否かが判断される(即ち、上述の実施形態におけるS7の処理に相当する処理が実行される。この場合、判定対象時刻以前の判定期間中の在宅不在が判定され、これら処理が判定対象時刻の進行に伴って判定対象時刻毎に繰り返されることによって判定対象時刻以前の判定期間中の在宅不在の情報が更新される)という態様などが挙げられる。
また、上述の実施形態におけるS4乃至S11の処理の要点は、S3の処理によって決定された在宅不在の時刻別判定指標を用いて不在期間を確定し得るように、在宅不在の判定を行うための所定の時間としての判定期間が判定対象時刻の進行に伴って時間軸方向に移動させられながら判定期間毎に在宅不在が判定され、不在と判定された一つの判定期間の始まりを不在開始時刻とすると共に終わりを不在終了時刻として特定する、または、連続して不在と判定された複数の判定期間のうちの最初の判定期間の始まりを不在開始時刻とすると共に最後の判定期間の終わりを不在終了時刻として特定することである。したがって、時間軸方向に移動する判定期間毎に在宅不在を判定しながら不在開始時刻と不在終了時刻とを特定し得るものであれば、上述の実施形態におけるS4乃至S11の処理に対応する具体的な方法・手順は上述の実施形態として説明したもの(図10を含む)に限定されるものではない。
なお更に付け加えると、所定の時間長さを有すると共に時間軸方向に移動する判定期間を用いることによって不在開始時刻と不在終了時刻とを特定することの利点は、判定対象時刻毎に各々独立して(即ち、当該の判定対象時刻よりも前の時刻における状況を合わせて考慮すること無く)在宅不在を判定する場合のような、居住者が在宅しているにもかかわらず、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況での(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい状況での)不在であるとの誤った判断を避けることである。この考え方は、上述の実施形態のように値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて作成される連続データが用いられる場合のみに適用され得るものではなく、種々の特性のデータが用いられる場合に適用され得るものであり、さらに言えば、判定対象時刻別の在宅不在の判定の仕方は上述の実施形態における方法に限定されるものではない。
例えば、もとより連続であるデータ、言い換えると、値の変化の生起が時系列において連続であり且つ値の変化の態様が漸次的であるデータ、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、1分毎に出力される1 Wh 単位のデータが用いられる場合にも適用され得る。この場合には、上述の実施形態のように最適化問題を解くこと無く、あくまで一例として挙げると30分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/30分]や1分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/分]、或いは一般化するとn分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/n分]が得られる。そして、上述の実施形態におけるS3以降の処理が同様に行われ得る。
あるいは、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が漸次的であるデータ、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、30分毎に出力される1 Wh 単位のデータが用いられる場合にも適用され得る。この場合には、上述の実施形態のように最適化問題を解くこと無く、あくまで一例として挙げると、30分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/30分]が得られる。そして、上述の実施形態におけるS3以降の処理が同様に行われ得る。
10 ガス消費量の用途分解装置
17 ガス消費量の用途分解プログラム
30 居住者の在宅不在の判定装置
37 居住者の在宅不在の判定プログラム
本発明は、居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラム、並びに、不在期間の確定方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、住居や住戸内に人が存在しているか存在していないかの推定に用いて好適な技術に関する。
以下の説明において、単位であることを明確にするために[ ]を用いる場合がある。
家庭における最適なエネルギーの使い方の探索や熱源機器の選択などを行うためには、電気やガスといったエネルギーの種類毎に用途毎の最終需要を把握することが必要である。しかしながら、ガスについては、配管切断を伴う流量計の設置は需要家の負担が大きく手間もコストもかかるため、個別機器の実測調査はほとんど行われていない。また、ガスメータの計測値から用途別(具体的には例えば、「給湯」,「厨房(コンロ)」,及び「暖房(ガスヒータ等)」の別)の消費量に分解する良好な手法は未だ無い。
ガスの配管を切断することなくガス流量を計測する装置として、例えば、ガス配管に設けられている膜式ガスメータに装着され、当該膜式ガスメータ内部の、ガスの流動に応じて周期運動する永久磁石の移動に伴う周期的な磁気変化を磁気センサによって検出し、当該周期的な磁気変化の検出に基づいて所定のガス流量(具体的には、ガスメータの単位計量体積)に対応したパルス出力を流量カウント数として所定時間毎に出力するものがある(例えば、特許文献1,特許文献2)。
上述のようなガス流量計測装置では、家庭におけるガスの消費量が所定時間毎にカウント数として把握され、所定時間は例えば10秒などであり、1カウントに対応する実際のガス流量は例えば1.2[L]や1.0[L]などである。言い換えると、上述のようなガス流量計測装置では、所定の時間毎に、所定の流量毎に1カウントとして計数するカウント数として、ガスの消費量が出力される。
したがって、上述のようなガス流量計測装置では、具体的には例えば、所定時間が10秒であると共に1カウント当たりの実際の流量が1.2[L]である場合には、10秒間隔での、1.2L刻みのガス消費量が把握される。
また、ガス使用量を用途別に分解する従来の方法としては、例えば、世帯人数,厨房用ガス器具の所有台数,及び住居形態などのガス使用者の属性情報を用い、ガス使用者の世帯状況によってその使用量が異なる厨房用ガス使用量を求め、続いて、暖房を使用しない時期の総ガス使用量が厨房用と給湯用との和であることを利用してこの時期の給湯用ガス使用量を求め、次に、暖房を使用しない時期の給湯用ガス使用量と気温との相関関係を利用して暖房を使用する時期の給湯用ガス使用量を求め、さらに、総ガス使用量から厨房用及び給湯用ガス使用量を減算して暖房用ガス使用量を求めるものがある(特許文献3)。
また、電気に関しては、電気の使用(即ち、電力需要)から生活状態を推定することによって独居高齢者や家族を見守るサービスの実現が検討されたり、住居内の例えば空調等の機器の制御が自動で行われるシステムについて運用効率を改善して節電に繋げるために居住者が在宅であるか不在であるかの判定が行われたりしている例がある。具体的には例えばドアの開閉,人感センサ,或いはCO2センサなどを利用するものがあり、また、住宅内への機器の設置が必要とされない非侵入型モニタリングの手法の一つとして電力需要データを用いるものが開発されている(非特許文献1)。
このような非侵入型モニタリングに関連しては、我が国において、スマートメータと呼ばれる、通信機能を備えて電力の利用状況(即ち、電力需要)をリアルタイムに確認することができる次世代電力計の低圧部門(具体的には、一般家庭)への設置が進められている(非特許文献2)。
特開2004−125634号公報
特開2014−006058号公報
特開2000−221064号公報
T.A.Nguyen and M.Aiello「Energy intelligent buildings based on user activity:A survey」,Energy and Buildings,Vol.56,pp.244−257,2013年
経済産業省スマートメータ制度検討会「スマートメータの導入促進に伴う課題と対応について」,[online],[平成28年4月14日アクセス],インターネット<URL:http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004668/pdf/015_03_00.pdf>
特許文献1や特許文献2のガス流量計測装置によって得られる計測データは、所定の時間毎に出力される、所定の流量毎に1カウントとして計数する流量カウント数である。しかしながら、例えばガスファンヒータやガスコンロのガス消費量は1.2[L/10秒]に比べて通常は小さいため、10秒間隔で出力される、実際の流量1.2[L]を1カウントとして計数する流量カウント数としての計測ではカウント値の変化は散発的(言い換えると、間欠的)になる。したがって、ガスファンヒータやガスコンロの各器具単体でのガス消費量に対応する計測値としての流量カウント数は、これら器具がたとえ継続的に使用されていても0若しくは1の出力となる。このため、時刻毎のガスの配管における実際のガス流量を適切に把握することは困難であり、延いては時刻毎の実際のガス流速を適切に把握することが困難であるという問題がある。
また、特許文献3のガス使用量の用途別分解方法では世帯人数,厨房用ガス器具の所有台数,及び住居形態などのガス使用者の属性情報が必要とされるところ、このような属性情報の入手は困難であり、仮に可能であったとしても多大な手間がかかってしまう。このため、汎用性が高いとは言い難い。加えて、特許文献3のガス使用量の用途別分解方法では気温の情報が更に必要とされるところ、対象世帯が所在する地域毎の、用途分解を行う期間の日毎の気温データの収集は多大な手間がかかるためにこの点においても汎用性が高いとは言い難く、さらに、気温データの地域区分の細かさによっては対象世帯の所在地における実際の気温との乖離が大きくなってしまうことも考えられるために良好な精度が常に確保されるとは言えず信頼性が高いとは言い難い。
また、次世代電力計として設置が進められているスマートメータで自動検針された電力需要値を電力会社(具体的には、送配電部門)へと送るルートは「Aルート」と呼ばれる。このAルートから得られる電力需要データ(「Aルート計測値」と呼ぶ)は、30分間隔で出力され、且つ、100 Wh 刻み(言い換えると、100 Wh 単位)の数値である。したがって、Aルート計測値では、30分間における実際の電力需要として100 Wh に満たない電力需要は、当該時刻(30分時間帯)の計測値としては切り捨てられ(言い換えると、計上されず)、次の時刻(30分時間帯)の計測値に繰り越される。
実際の電力需要に対応して出力されるAルート計測値は、具体的には例えば以下の表1のようになる。なお、表1における「実際の電力需要」は、電力需要の瞬時値が仮に計測されているとした場合の仮想の値であり、30分間積分値である。
表1に示す例から、30分間の電力需要が100 Wh に満たない時刻区分(30分時間帯)では実際には電力需要が有るにも拘わらず、Aルート計測値では電力需要が無いことになったり、或いは、連続する時刻区分(具体的には、11:00と11:30)において実際の電力需要としての差違は小さい(具体的には、約16 Wh)にも拘わらず、Aルート計測値では100 Wh もの差違になったりすることが確認される。
このため、Aルート計測値をそのまま利用して居住者が在宅であるか不在であるかを判定した場合には、適切な判定が行われない虞があり、高い精度で判定を行うことは困難である。特に、30分間における実際の電力需要が100 Wh に満たない時間帯においては、Aルート計測値としては0 Wh と100 Wh とが交互に出力される状態になり、実際の電力需要に比してその差違が相対的に大きな割合となって誤判定が多くなる。この点に関連しては、省エネルギー機器への切り替えなどにより、エアコンや電子レンジなどの電力消費量が比較的大きい機器を利用しない時間帯における電力需要は減少する傾向にあり、前記誤判定は益々多くなると考えられる。
そこで、本発明は、追加的な特別の機器の設置及び関連する情報やデータが必要とされることなく、例えばスマートメータのAルート計測値のような、対象住宅や対象住戸の電力需要量の計測データであって値の変化の生起について所定の間隔で間欠的に把握され且つ値の変化の態様について所定の量を単位として離散的に把握された計測データ群に基づいて住居や住戸内に人が存在しているか存在していないかを良好な精度で推定することができる居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムを提供することを目的とする。
また、短い時間や特定の時刻毎に各々独立して(言い換えると、或る短い時間や特定の時刻のみを取り出して当該の或る短い時間や特定の時刻よりも前の状況を合わせて考慮すること無く)在宅不在を判定すると、居住者が在宅していても、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況に対し、不在であると誤った判断をしてしまうことがあるという問題がある。
そこで、本発明は、短時間のみの状況に影響されること無く住居や住戸内に人が存在しているか存在していないかを推定することができる不在期間の確定方法を提供することを目的とする。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータが分析対象区間のデータとして抽出され、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に前記所定の電力量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線が推定され、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度が算定され、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度が用いられて前記所定の期間における電力需要速度の統計量が特徴量として算出され、少なくとも前記特徴量が用いられて居住者の在宅不在が判定されるようにしている。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定装置は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に前記所定の電力量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度を算定する手段と、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度を用いて前記所定の期間における電力需要速度の統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも前記特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する手段とを有するようにしている。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定プログラムは、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に前記所定の電力量を加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度を算定する処理と、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度を用いて前記所定の期間における電力需要速度の統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも前記特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらの居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによると、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の電力量刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測時刻毎の電力需要速度が算定される。
これらの居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによると、さらに、算定された電力需要速度に基づいて住居や住戸に人が存在しているか存在していないかが推定される。
また、本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムは、電力需要量の計測データがスマートメータのAルートから出力されるデータであるようにしても良い。この場合には、スマートメータのAルート計測値が、電力需要量の計測データとして用いられる。
また、本発明の不在期間の確定方法は、電力需要量の計測データに基づいて時刻間毎の電力需要速度が算定され、判定対象時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度が用いられて前記所定の期間における電力需要速度の統計量が特徴量として算出され、少なくとも前記特徴量が用いられて判定対象時刻別の居住者の在宅不在が判定され、所定の時間長さを有して時間軸方向に移動する判定期間に対応する判定対象時刻別の判定結果が全て不在であるときに当該判定期間中は不在であると判定され、不在と判定された一つの判定期間の始まりの時刻を不在開始時刻とすると共に終わりの時刻を不在終了時刻として特定する、または、連続して不在と判定された複数の判定期間のうちの最初の判定期間の始まりの時刻を不在開始時刻とすると共に最後の判定期間の終わりの時刻を不在終了時刻として特定するようにしている。
したがって、この不在期間の確定方法によると、判定対象時刻毎に各々独立して(即ち、当該の判定対象時刻よりも前の時刻における状況を合わせて考慮すること無く)在宅不在を判定する場合のような、居住者が在宅しているにもかかわらず、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況での(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい状況での)不在であるとの誤った判断をしてしまうことが防止される。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎の電力需要速度を算定することができるので、電力需要の実態の再現性の向上を図ることが可能になる。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現された電力需要速度に基づいて住居や住戸に人が存在しているか存在していないかを推定することができるので、居住者の在宅不在の判定の良好な精度を確保して居住者の在宅不在の判定技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
また、本発明の不在期間の確定方法によれば、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況での(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい状況での)不在であるとの誤った判断をしてしまうことを防止することができ、不在期間の確定手法としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
ガス消費量の用途分解方法の実施形態の一例を示すフローチャートである。
実施形態のガス消費量の用途分解方法をガス消費量の用途分解プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現されるガス消費量の用途分解装置の機能ブロック図である。
実施形態の連続データの作成方法を説明する図であり、計測データとしての流量カウント数に基づいて流速を推定する方法を説明する図である。
ガス消費量の用途分解において用いられるアルゴリズムの一例を説明する用途決定チャートである。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法の実施形態の一例を示すフローチャート(S1乃至S3)である。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法の実施形態の一例を示すフローチャート(S4乃至S11)である。
実施形態の居住者の在宅不在の判定方法を居住者の在宅不在の判定プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現される居住者の在宅不在の判定装置の機能ブロック図である。
実施形態の連続データの作成方法を説明する図であり、計測データとしての電力需要量に基づいて電力需要速度を推定する方法を説明する図である。
真の累積需要曲線としての最短折れ線を推定する方法を説明する図である。
不在開始時刻及び不在終了時刻を特定する方法並びに不在期間を確定する方法の一例を説明する図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1から図4に、ガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態のガス消費量の用途分解方法は、ガス配管の主幹における計測(S1)によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得(S1)されたガス総消費量の計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータが連続動作区間のデータとして抽出され(S2)、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と流量fuとを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に流量fuを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線が推定され、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速ytが算定された上で(S3)、連続動作区間のデータが冬季であるか否か判断される処理(S4−1)と、ガスの流速ytが所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間が特定される処理(S4−2)と、連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速ytの最小値が暖房ベース流速として設定される処理(S4−3)と、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速ytとの大きさが比較される処理(S4−4)と、給湯最小流速とガスの流速ytとの大きさが比較される処理(S4−5)と、連続動作区間のデータが夏季であるか否か判断される処理(S4−6)と、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速ytとの大きさが比較される処理(S4−7)とが実行されることにより、ガス総消費量の用途が給湯分,暖房分,及び厨房分に分類される(S4)ようにしている(図1参照)。
また、本実施形態では、S3の処理において、連続動作区間における計測時刻の時系列順に付与される識別子t(ただし、t=1,2,3,…,T)毎の当該計測時刻の識別子tに対応する計測時刻における流量カウント数と流量fuとを掛け合わせた値xtが算出され、計測時刻の識別子t毎の値xtが用いられて数式1乃至数式3に示す最適化問題のうちのいずれかが解かれることによって計測時刻の識別子t毎の値ytとして主幹におけるガスの流速ytが算定されるようにしている。
上記ガス消費量の用途分解方法は、ガス消費量の用途分解装置によって実施され得る。本実施形態のガス消費量の用途分解装置10は、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データの入力を受ける手段としてのデータ受部11aと、計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータを連続動作区間のデータとして抽出する手段としての分解区間抽出部11bと、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と流量fuとを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に流量fuを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速ytを算定する手段としての最短折線作成部11cと、連続動作区間のデータが冬季であるか否かを判断し、ガスの流速ytが所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間を特定すると共に連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速ytの最小値を暖房ベース流速として設定し、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速ytとの大きさを比較し、給湯最小流速とガスの流速ytとの大きさを比較し、連続動作区間のデータが夏季であるか否かを判断し、さらに、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速ytとの大きさを比較することにより、ガス総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類する手段としての用途分解部11dとを有する。
また、本実施形態では、最短折線作成部11cが、連続動作区間における計測時刻の時系列順に付与される識別子t(ただし、t=1,2,3,…,T)毎の当該計測時刻の識別子tに対応する計測時刻における流量カウント数と流量fuとを掛け合わせた値xtを算出すると共に、計測時刻の識別子t毎の値xtを用いて数式1乃至数式3に示す最適化問題のうちのいずれかを解くことによって計測時刻の識別子t毎の値ytとして主幹におけるガスの流速ytを算定するようにしている。
また、上記ガス消費量の用途分解方法及びガス消費量の用途分解装置は、ガス消費量の用途分解プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、ガス消費量の用途分解プログラムがコンピュータ上で実行されることによってガス消費量の用途分解装置が実現されると共にガス消費量の用途分解方法が実施される場合を説明する。
本実施形態のガス消費量の用途分解プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、ガス消費量の用途分解装置10でもある)の全体構成を図2に示す。このコンピュータ10(ガス消費量の用途分解装置10)は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されているガス消費量の用途分解プログラム17によってコンピュータ10全体の制御並びにガス総消費量の用途の分解に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ10(「ガス消費量の用途分解装置10」と表記する)の制御部11には、ガス消費量の用途分解プログラム17が実行されることにより、ガス配管の主幹における計測によって所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータとして取得されたガス総消費量の計測データの入力を受ける処理を行うデータ受部11aと、計測データから、主幹から枝分かれした屋内配管に接続されているガス器具が使用されている時間帯の組み合わせデータを連続動作区間のデータとして抽出する処理を行う分解区間抽出部11bと、連続動作区間における計測時刻毎の流量カウント数の累積値と流量fuとを掛け合わせた値を下限とすると共に前記掛け合わせた値に流量fuを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ連続動作区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして主幹におけるガスの流速ytを算定する処理を行う最短折線作成部11cと、連続動作区間のデータが冬季であるか否かを判断し、ガスの流速ytが所定の範囲である状態が所定の時間に亙って継続しているか否かに基づいて暖房連続動作区間を特定すると共に連続動作区間のデータにおいて特定された全ての暖房連続動作区間の中でのガスの流速ytの最小値を暖房ベース流速として設定し、暖房ベース流速と給湯最小流速との和とガスの流速ytとの大きさを比較し、給湯最小流速とガスの流速ytとの大きさを比較し、連続動作区間のデータが夏季であるか否かを判断し、さらに、厨房最小流速と間欠暖房最大流速とのうちの少なくとも一方とガスの流速ytとの大きさを比較することにより、ガス総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類する処理を行う用途分解部11dとが構成される。
また、本実施形態では、最短折線作成部11cが、連続動作区間における計測時刻の時系列順に付与される識別子t(ただし、t=1,2,3,…,T)毎の当該計測時刻の識別子tに対応する計測時刻における流量カウント数と流量fuとを掛け合わせた値xtを算出すると共に、計測時刻の識別子t毎の値xtを用いて数式1乃至数式3に示す最適化問題のうちのいずれかを解くことによって計測時刻の識別子t毎の値ytとして主幹におけるガスの流速ytを算定する処理を行うようにしている。
そして、ガス消費量の用途分解方法の実施として、まず、ガス総消費量の計測が行われて計測データの取得が行われる(S1)。
ガス総消費量の計測の仕方は、所定の流量毎に1カウントとして計数するカウント数として主幹のガス流量を計測し、所定の時間毎に例えば電気的な信号として前記カウント数を出力するものであれば、特定の方法や機器によるものに限定されるものではなく、前記のような計測を行い得る方法や機器が適宜選択される。
具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、膜式ガスメータに装着される前述のガス流量計測装置(例えば、特開2004−125634号公報,特開2014−6058号公報)が利用され得る。あるいは、一定量(例えば、ガスメータの単位計量体積)のガスがガスメータを通過するたびに動作サイクルに起因してガスメータから発生する周期的な動作音や振動を検出してその回数をカウント数として所定の時間毎に出力する機器が利用され得る。
ガス総消費量(主幹のガス流量)の計測における、上述の「所定の流量」としての、1カウント当たりの実際の流量は、例えば、主幹に設けられているガスメータの単位計量体積に従って決定される。具体的には例えば、ガスメータの単位計量体積が1[L]である場合にはガス流量の計測機器から出力される1カウント毎に1[L]のガスが実際に流動した(言い換えると、消費された)ことを意味し、或いは、ガスメータの単位計量体積が1.2[L]である場合にはガス流量の計測機器から出力される1カウント毎に1.2[L]のガスが実際に流動したことを意味する。
また、ガス総消費量の計測における、上述の「所定の時間」としての、カウント数を出力する時間間隔は、特定の時間[秒,分]に限定されるものではなく、計測に用いられる計測機器の仕様を踏まえた上で、例えばガス消費量に関して想定される変動ピッチや必要とされる推定精度などが考慮されて適当な時間に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、5〜60秒程度の範囲で適当な値に設定され得る。
本実施形態では、上述の「所定の流量」が1.2[L]であると共に上述の「所定の時間」が10秒である計測データ、すなわち、実際の流量1.2[L]を1カウントとして計数するカウント数(「流量カウント数」と呼ぶ)が10秒間隔で出力される計測データがS1の処理によって取得されるとする。
そして、計測によって取得されたガス総消費量(主幹のガス流量)の計測値(具体的には、流量カウント数)は、データ受部11aを介してガス消費量の用途分解装置10に入力される。
ガス総消費量の計測値(流量カウント数)は、ガス消費量の用途分解装置10に、記録媒体やデータサーバを介して入力されるようにしても良いし、ガス消費量の用途分解装置10と計測機器とがデータや制御指令等の信号の送受信(即ち、出入力)が可能であるように電気的に接続されて入力されるようにしても良い。
記録媒体を介して計測値が入力される場合には、計測機器から出力された流量カウント数が記録媒体に記録され、当該記録媒体がガス消費量の用途分解装置10の記録媒体接続用端子(図示していない)に差し込まれることによって流量カウント数が入力されるようにしても良い。
また、データサーバを介して計測値が入力される場合には、データサーバがバス等の信号回線によってガス消費量の用途分解装置10に接続され、計測機器から出力された流量カウント数が前記データサーバにデータファイル等として格納(保存)され、当該データファイル等として保存された流量カウント数が読み込まれるようにしても良い。
また、ガス消費量の用途分解装置10と計測機器とが電気的に接続されて計測値が入力される場合には、例えば、各々に接続されて敷設されたケーブル等が用いられる有線による信号送受の仕組みを介して信号の送受信が可能であるように電気的に接続されるようにしても良いし、各々に接続された無線信号送受信機が用いられる無線による信号送受の仕組みを介して信号の送受信が可能であるように電気的に接続されるようにしても良い。そして、これら信号送受の仕組みによって流量カウント数が入力されるようにしても良い。
さらに、記録媒体やデータサーバや有線・無線による信号送受の仕組みが組み合わされて用いられて流量カウント数がガス消費量の用途分解装置10に入力されるようにしても良い。
また、ガス総消費量の各計測値(各流量カウント数)が計測機器から出力された時刻が計測機器に備えられた時計機能によって計測値と一緒に出力されて当該計測値と対応づけられて記録されたり、或いは、計測機器から出力された各計測値が記録媒体やデータサーバやガス消費量の用途分解装置10に記録されたり入力されたりした時の時刻が当該計測値と対応づけられて記録されたりする。そして、この時刻の間隔[秒,分]が上述の「所定の時間」になる。
ここでの説明においては、各計測値(各流量カウント数)と対応づけられて記録される時刻のことを「計測時刻」と呼び、流量カウント数と計測時刻との組み合わせデータのことを「計測データ」と呼ぶ。
そして、データ受部11aにより、計測データがメモリ15に記憶させられる。
なお、例えば、対象の家庭に関する(言い換えると、対象住宅や対象住戸の主幹における)、あくまで一例として挙げると24時間に亙る一年分の計測データが、ガス消費量の用途分解のひとかたまりの処理対象としてメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の分解区間抽出部11bにより、S1の処理によって計測されて取得された計測データからの、用途の分解が行われる時間帯のデータの抽出が行われる(S2)。
S2の処理は、S1の処理においてメモリ15に記憶された、ガス消費量の用途分解のひとかたまりの処理対象としての計測データの全体に亙って実行される。
ここで説明する手法はガス総消費量を用途別に分解するものであるので、対象住宅・住戸においてガス器具が使用されてガスが実際に消費されている時間帯が処理対象になり、ガス器具が使用されておらずガスが消費されていない時間帯は処理対象にならない。
そこで、計測データから、何らかのガス器具が使用される(言い換えると、動作する)ことによってガス総消費量が連続して変化(具体的には、増加)している可能性がある時間帯(「連続動作区間」と呼ぶ)の計測データが切り出される。
具体的には、動作休止判定時間[秒,分]に亙って計測データの流量カウント数が0(零)である場合に、ガス器具の使用が途切れたと判定される。動作休止判定時間以上に亙って計測データの流量カウント数が0である時間帯のことを「動作休止区間」と呼ぶ。
そして、時間的に前後する二つの動作休止区間に挟まれる時間帯が連続動作区間として切り出される。したがって、連続動作区間は、計測データの流量カウント数が動作休止判定時間以上に亙って0になることなく継続的に変化している時間帯の計測データであるとも言える。
動作休止判定時間[秒,分]は、特定の値に限られるものではなく、必要とされる推定精度などが考慮されて適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、主幹におけるガスの流速が0.2[L/10秒]以下である変化は微小な流量として無視しても大きな誤差は生じない(言い換えると、必要な精度は確保される)と判断される場合に、1.2L/0.2L=6(即ち、計測時刻の間隔6個分)に基づいて、動作休止判定時間が10秒×6=60秒に設定されることが考えられる。
なお、動作休止判定時間の値[秒,分]は、ガス消費量の用途分解プログラム17内に予め規定されるようにしても良いし、S2の処理が行われる前に入力部13を介して作業者によって入力されるようにしても良い。
本実施形態では、分解区間抽出部11bにより、S1の処理においてメモリ15に記憶された計測データが時系列に従って順次読み込まれ、動作休止判定時間に基づいて動作休止区間が特定されると共に、時間的に前後する二つの動作休止区間に挟まれる時間帯が連続動作区間として抽出される。
そして、分解区間抽出部11bにより、抽出された連続動作区間毎の計測データが、以降のS3及びS4の処理対象の計測データとしてメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の最短折線作成部11cにより、S2の処理によって抽出された連続動作区間に関する計測データが用いられて累積需要曲線の作成が行われる(S3)。
S3の処理は、S2の処理において抽出された連続動作区間の各々について実行される。
S1の処理によって取得される計測データは、10秒間隔での1.2L刻みのガス総消費量である。しかしながら、何らかのガス器具が使用されているときは、ガス総消費量が常に増加するという点においてガス総消費量の変化の生起は時系列において連続であり、また、ガスが常に流動するという点においてガス総消費量の変化の態様は漸次的である。
つまり、S1の処理における計測では、実際には(値の)変化の生起が時系列において連続であると共に(値の)変化の態様が漸次的である現象が、所定の時間間隔且つ所定の値刻みという散発的(言い換えると、間欠的)且つ離散的な変化として把握されていると言える。
そして、ここで説明する手法では、所定の時間間隔且つ所定の流量刻みという計測値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的である計測データがそのまま用いられるのではなく、当該散発的(間欠的)且つ離散的な計測データが、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的であるデータに変換された上で用途分解の処理に用いられる。
本発明において用いられる、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ計測値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的である累積需要曲線が作成される、連続データの作成方法を、図3を用いて説明する。
なお、連続動作区間では、何らかのガス器具が使用されることによってガス総消費量が常に増加するという点においてガス総消費量の変化の生起が時系列において連続であり、また、何らかのガス器具が使用されることによってガスが常に流動するという点においてガス総消費量の変化の態様が漸次的である。
ここでの説明の例として、図3に示すような、或る連続動作区間に関する計測データ(具体的には、10秒毎に出力される流量カウント数の累積値;図中の△印)がS2の処理によって抽出されたとする。なお、1カウント当たりの実際の流量は1.2[L]である。
図3の横軸は、10秒間隔である計測時刻の各時点を、当該の連続動作区間の最初の計測時刻を1とした上で識別子としての連続番号で表したものである。すなわち、横軸における例えば「10」は、当該の連続動作区間の始まりから100秒(=10×10秒)だけ時間が経過していることを表す。
また、図3の縦軸は、当該の連続動作区間おける流量カウント数の累積値を表す。すなわち、縦軸における例えば「4」は、当該の連続動作区間の始まりから4.8[L](=4×1.2[L])だけガスが消費されていることを表す。
S1の処理によって取得される計測データは所定の時間間隔且つ所定の流量刻みという値の変化が散発的(間欠的)且つ離散的なデータであるので、すなわち、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)且つ計測値の変化の態様が離散的なデータであるので、データプロットである△印を時系列で結ぶと図3に示すように階段状になる(図3中において符号21;「下限階段直線21」と呼ぶ)。
また、計測データの流量カウント数の累積値に計測時刻毎に1を加えたデータのプロットである▽印を時系列で結んだものも、図3に示すように階段状になる(図3中において符号22;「上限階段直線22」と呼ぶ)。
そして、下限階段直線21が実際のガス総消費量に基づく真の累積値の下限(言い換えると、実際のガス総消費量が取り得る累積値の下限)であり、上限階段直線22が実際のガス総消費量に基づく真の累積値の上限(言い換えると、実際のガス総消費量が取り得る累積値の上限)である。
したがって、実際のガス総消費量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線は、下限階段直線21と上限階段直線22とに挟まれた領域(「存在可能領域」と呼ぶ)内に存在し、全体としては増加傾向を示す非減少の曲線であると考えられる。
また、家庭において一般的に使用されるガス器具の実際のガス消費の特性を本発明者が分析することにより、ガス器具によって消費されるガスの流量の大きな変化の回数は比較的少なく、ほぼ一定の流速が或る程度の時間に亙って継続する傾向があることが確認された。
このため、真の累積需要曲線としては、存在可能領域内において増加傾向を示す非減少の折れ線のうち、折れ点(言い換えると、変曲点、若しくは、流速変化点)の個数が比較的少ないものが妥当性が高いと考えられる。
そこで、実際のガス総消費量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線として、存在可能領域内に存在する、総長(即ち、当該の連続動作区間の始まりから終わりまでに亙る軌跡の長さ)が最短の折れ線(「最短折れ線」と呼ぶ)を推定する。
真の累積需要曲線としての、存在可能領域内に存在する、最短折れ線の推定手法は、特定の方法に限定されるものではなく、特定の領域内に存在して所定の始点から終点へと至る折れ線のうちの総長が最短の折れ線であり且つ各計測時刻において計測されたガス総消費量の総和と推定される各計測時刻のガス総消費量の総和とが一致する折れ線を推定し得る適当な方法が適宜選択される。
最短折れ線の推定手法として、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、当該の連続動作区間において確定済みの折れ線の最後の点を起点とした(未確定の)直線部の許容される傾きの上限値・下限値を順次更新し、全ての直線が存在可能領域を逸脱せざるを得なくなる時点で直線の傾きを決定し、その直線が存在可能領域の境界に最初に接した時点までの折れ線の確定を行い、そして、新たに確定した折れ線の最後の点を新たな起点に設定した上で上述と同様の処理を繰り返すことを基本的な考え方とする方法が用いられ得る。
この推定方法は、計測時刻t(尚、計測間隔は10秒であり、したがって計測時刻の間隔は10秒である)における計測流量をxt[L/10秒]とすると共に推定流速をyt[L/10秒]とすると、最適化問題として数式4のように表される。
数式4においてtは連続動作区間における計測時刻の識別子であってt=1,2,3,…であり、数式4では当該の連続動作区間の範囲として計測時刻の識別子tが1からTまでの期間に亙って処理が実行される。
そして、計測時刻を1刻みの識別子とすることにより、計測の時間間隔である10秒を一単位として扱うことになり、計測時刻 t−1 から t にかけての増分は計測の時間間隔当たりの増加量であって計測時刻 t−1 から t にかけての速度[L/10秒]であり、真の累積需要曲線としては計測時刻 t−1 から t にかけての直線の傾きである。
数式4において、また、計測流量xt[L/10秒]は、計測時刻tにおける流量カウント数(言い換えると、計測時刻 t−1 から t にかけての流量カウント数の増分)と1カウント当たりの実際の流量[L]とを掛け合わせたものである。
数式4において、さらに、fuは、1カウント当たりの実際の流量[L]である(即ち、本実施形態ではfu=1.2である)。なお、fuの値[L]は、ガス消費量の用途分解プログラム17内に予め規定されるようにしても良いし、S3の処理が行われる前に入力部13を介して作業者によって入力されるようにしても良い。
制約条件の第一式は流速の非負性に対応し、第二式は実際のガス総消費量の累積値の範囲制約に対応し、さらに、第三式は当該の連続動作区間における計測値ベースのガス総消費量の総和と推定値ベースのガス総消費量の総和との一致に対応する。
上述の最適化問題を解く方法によると、最悪の場合でも、時系列長(即ち、計測時刻の個数)の2乗のオーダーで真の累積需要曲線に相当する最短折れ線が推定される。
図3に示す計測データのプロット(図中の△印)を結んだ下限階段直線21に対して数式4で表される最適化問題を適用した結果として、図3において点線で示す、実際のガス総消費量に近いと考えられる推定累積需要曲線23が得られる。
ここで、上記の最適化問題は計測時刻の識別子t=1から処理が実行されるところ、t=1の処理が実行されるためには、t=1での起点としてt=0(即ち、計測時刻の識別子t=1に対応する計測時刻の一つ前の計測時刻)からt=1にかけての折れ線の最後の点が特定される必要が、即ち、t=0からt=1にかけての直線が特定される必要がある。この直線は、具体的には、当該の連続動作区間の最初の計測時刻(即ち、計測時刻の識別子t=1)の直前の計測時刻として識別子tを0(零)とすると共に流量カウント数の累積値を0(零)とする仮想的な原点を置き、当該原点と計測時刻の識別子t=1における流量カウント数の累積値の値の点とを結ぶことによって特定される。
あるいは、ほぼ一定の流速が或る程度の時間に亙って継続する傾向があるという家庭におけるガス消費の特性に基づいて、真の累積需要曲線としては折れ点の個数が少ないものが妥当性が高いという考えのもと、当該の連続動作区間についての計測時刻の識別子t=0からt=1にかけての直線の傾きが、識別子t=1において連続する直線の傾きに一致させられるようにしても良い。
ここで、真の累積需要曲線の上述の推定方法(即ち、数式4で表される最適化問題)は、目的関数部を「距離の和」から「距離の2乗和」に変更した数式5で表される最適化問題、即ち「存在可能領域の任意の曲線のうち各計測時刻の流速(即ち、流量の累積値の計測時刻間差分)の2乗和が最小の曲線」を求める問題と等価である。
数式5のように表される最適化問題では、2乗和の最小化により、各計測時刻の流速が同じ値を持つ傾向が生じるので、折れ線が最適解になる。
真の累積需要曲線の推定方法としての数式4で表される最適化問題は、また、数式5で表される最適化問題の双対問題である数式6で表される最適化問題とも等価である。なお、数式6で表される最適化問題は、全変動正規化問題と呼ばれる凸最適化問題の一種である。なお、数式6において、x0は計測流量xt[L/10秒]の初期値(即ち、t=0のときの値)であり、図3に示す例ではx0=0である。
上述の真の累積需要曲線(即ち、最短折れ線)は、一例として以下に示すアルゴリズムが用いられることによって求められ得る。
−真の累積需要曲線の決定アルゴリズム−
《保持・更新情報》
○起点 折れ線
○上限直線 上限需要と領域境界接触点
○下限直線 下限需要と領域境界接触点
《更新内容》
(1) 時刻更新:時刻=時刻+1
(2) 下限直線<上限累積需要値
起点から下限境界接触点までの需要量=需要下限(確定)
起点=下限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(3) 上限直線>下限累積需要
起点から上限境界接触点までの需要量=需要上限(確定)
起点=上限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(4) 下限直線<領域下限
下限需要,下限境界設定更新
上限直線>領域上限
上限需要,上限境界設定更新
(5) 計測時刻の識別子t=Tになるまで(1)へ戻る
本実施形態では、最短折線作成部11cにより、S2の処理においてメモリ15に記憶された連続動作区間に関する計測データ(即ち、流量カウント数と計測時刻との組み合わせデータ)が読み込まれる。
そして、メモリ15から読み込まれた流量カウント数は1カウント当たりの実際の流量である1.2[L]と掛け合わされて実際のガスの流量[L]に変換されると共に計測時刻は当該の連続動作区間における計測時刻の識別子として時系列順に1,2,3,…という連続番号に変換される。
続いて、最短折線作成部11cにより、上記変換された計測データが用いられて数式4乃至数式6に表される最適化問題のうちのいずれかが解かれて、計測時刻の識別子t毎のガスの推定流速yt[L/10秒]が算定される。
そして、最短折線作成部11cにより、S2の処理において抽出された連続動作区間毎に、算定されたガスの推定流速yt[L/10秒]の値が計測時刻の識別子tの値と対応づけられて(言い換えると、計測時刻の識別子tの値とガスの推定流速ytの値との組み合わせデータとして)メモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の用途分解部11dにより、S3の処理によって算定された計測時刻別のガスの流速が用いられてガス総消費量の用途毎のガス使用量への分解が行われる(S4)。
S4の処理は、S2の処理において抽出されてS3の処理において計測時刻別のガスの流速が算定された連続動作区間の各々について実行される。
具体的には、用途分解部11dにより、S3の処理においてメモリ15に記憶された連続動作区間に関する計測時刻の識別子tの値(t=1,2,…,T)とガスの推定流速ytの値との組み合わせデータが読み込まれる。
続いて、本実施形態では、図4に示すアルゴリズムに従ってガス総消費量が用途毎のガス使用量に分解される。
具体的には、まず、当該の連続動作区間が冬季におけるものであるか否かが判断される(S4−1)。
冬季であるか否かの判断の仕方は、特定の判断基準に限定されるものではなく、冬季とその他の季節とにおける例えば暖房器具の使用有無や給湯器具の温度設定などの差異が顕れる(若しくは、顕れると考えられる)時期などが考慮された上で適当な方法に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、10月から翌年4月までの期間に取得された計測データから抽出された連続動作区間のデータは冬季であると判断する方法が採用され得る。
そして、当該の連続動作区間が冬季におけるものである場合には(S4−1:Yes)S4−2の処理に進む。
そして、推定流速ytが暖房基準流速の最小値Vhs-min以上であると共に暖房基準流速の最大値Vhs-max以下であり、且つ、前記条件を満たす流速の継続時間(「所定流速継続時間」と呼ぶ)が暖房運転判断時間Th以上であるか否かが判断される(S4−2)。
S4−2の判断処理は、流速は必ずしも大きくはないもののそのような流速の継続時間が長い場合には少なくとも暖房用ガス器具が使用されていると考え、暖房用ガス器具が連続して動作している時間帯(「暖房連続動作区間」と呼ぶ)を特定するための処理である。
暖房基準流速の最小値Vhs-min及び最大値Vhs-max[L/10秒]は、暖房用ガス器具が使用されているときのガス消費量として想定される範囲の最小値及び最大値に基づいて設定され、特定の値に限定されるものではなく、例えば、対象住宅・住戸に設置されている(若しくは、設置されていると想定される一般的な)暖房用ガス器具の仕様などが考慮されたり、或いは、実測データが収集されている場合には当該実測データが考慮されたりして適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、最小値Vhs-minが0.01〜0.2[L/10秒]程度の範囲で適当な値に、最大値Vhs-maxが0.5〜1.5[L/10秒]程度の範囲で適当な値に、それぞれ設定され得る。
また、暖房運転判断時間Th[秒,分]は、特定の値に限定されるものではなく、例えば暖房器具を使用する場合の最低継続時間として想定される時間などが考慮されて適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、5〜15分程度の範囲で適当な値に設定され得る。
S4−2の処理は、当該の連続動作区間の全体に亙って実行される。そして、S4−2の処理の結果として、各連続動作区間について、暖房連続動作区間が一つも特定されないか、または、暖房連続動作区間が一つ以上特定される。
そして、Vhs-min≦yt≦Vhs-max であると共に所定流速継続時間がTh[分]以上である場合には(S4−2:Yes)S4−3の処理に進む。言い換えると、S4−2の処理において暖房連続動作区間が一つ以上特定された場合にS4−3の処理に進む。
そして、暖房ベース流速Vhbが設定される(S4−3)。
暖房ベース流速Vhb[L/10秒]は、当該の連続動作区間において特定された全ての暖房連続動作区間の中での、推定流速yt[L/10秒]の最小値に設定される。
したがって、暖房ベース流速Vhbは、或る一つの連続動作区間に対して共通に用いられる値として設定され、異なる連続動作区間では値が異なることがあり得る。
次に、推定流速ytが暖房ベース流速Vhbと給湯最小流速Vwとの和以上であるか否かが判断される(S4−4)。
S4−4の処理は、S4−2の処理において特定された暖房連続動作区間それぞれの各計測時刻tについて実行される。
S4−4の判断処理は、当該の連続動作区間において暖房連続動作区間であると特定された時間帯の各計測時刻tについて、即ち暖房用ガス器具が使用されている状態での、給湯用ガス器具の使用の有無を判断するための処理である。
給湯最小流速Vw[L/10秒]は、給湯用ガス器具が使用されているときのガス消費量として想定される範囲の最小値に基づいて設定され、特定の値に限定されるものではなく、例えば、対象住宅・住戸に設置されている(若しくは、設置されていると想定される一般的な)給湯用ガス器具の仕様などが考慮されたり、或いは、実測データが収集されている場合には当該実測データが考慮されたりして適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.5〜1.5[L/10秒]程度の範囲で適当な値に設定され得る。
そして、当該の連続動作区間における暖房連続動作区間内の計測時刻t毎に、yt≧Vhb+Vwである場合には(S4−4:Yes)推定流速ytから暖房ベース流速Vhbを引いたものが給湯分のガス使用量に分類されると共に暖房ベース流速Vhbが暖房分のガス使用量に分類され、yt≧Vhb+Vwでない場合には(S4−4:No)推定流速ytが暖房分のガス使用量に分類される。
一方、S4−1の処理において、当該の連続動作区間が冬季におけるものでない場合には(S4−1:No)S4−5の処理に進む。そして、計測時刻tのそれぞれについてS4−5乃至S4−7の処理が実行される。
また、S4−2の処理において、Vhs-min≦yt≦Vhs-max でない場合、若しくは、所定流速継続時間がTh[分]以上でない場合にも(S4−2:No)S4−5の処理に進む。言い換えると、暖房連続動作区間ではない計測時刻tのそれぞれについてS4−5乃至S4−7の処理が実行される。
まず、推定流速ytが給湯最小流速Vw以上であるか否かが判断される(S4−5)。
S4−5の判断処理は、給湯用ガス器具の使用の有無を判断するための処理である。
そして、yt≧Vwである場合には(S4−5:Yes)推定流速ytが給湯分のガス使用量に分類される。
一方、yt≧Vwでない場合には(S4−5:No)S4−6の処理に進み、当該の連続動作区間が夏季におけるものであるか否かが判断される。
夏季であるか否かの判断(S4−6)の仕方は、特定の判断基準に限定されるものではなく、夏季とその他の季節とにおける例えば暖房器具の使用有無や給湯器具の温度設定などの差異が顕れる(若しくは、顕れると考えられる)時期などが考慮された上で適当な方法に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、11月から翌年3月までの期間に取得された計測データから抽出された連続動作区間のデータは夏季であると判断する方法が採用され得る。
なお、冬季や夏季であるか否かを期間によって判断するようにした場合に、冬季と夏季として指定される期間は、切れ目無く連続しているようにしても良いし、冬季にも夏季にも指定(分類)されない期間があっても良く、また、冬季として指定される期間と夏季として指定される期間とで一部が重複しているようにしても良い。
そして、当該の連続動作区間が夏季におけるものである場合には(S4−6:Yes)推定流速ytが厨房分のガス使用量に分類される。
一方、当該の連続動作区間が夏季におけるものでない場合には(S4−6:No)S4−7の処理に進み、推定流速ytが厨房最小流速Vkよりも大きいか否かが判断される。
S4−7の判断処理は、厨房用ガス器具の使用の有無を判断するための処理である。
厨房最小流速Vk[L/10秒]は、厨房用ガス器具が使用されているときのガス消費量として想定される範囲の最小値に基づいて設定され、特定の値に限定されるものではなく、例えば、対象住宅・住戸に設置されている(若しくは、設置されていると想定される一般的な)厨房用ガス器具の仕様などが考慮されたり、或いは、実測データが収集されている場合には当該実測データが考慮されたりして適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.2〜1.0[L/10秒]程度の範囲で適当な値に設定され得る。
ここで、本実施形態のS4−7の処理では、厨房用ガス器具のみが使用されている状態と暖房用ガス器具が保温のために間欠的に動作している状態とが区別されるようにしている。
そこで、厨房最小流速Vkの値は、暖房用ガス器具が保温のために間欠的に動作しているときのガス消費量として想定される範囲の最大値(「間欠暖房最大流速」と呼ぶ)が合わせて考慮されたり当該間欠暖房最大流速に基づいて設定されたりするようにしても良い。
そして、推定流速ytが厨房最小流速Vkよりも大きい場合には(S4−7:Yes)推定流速ytが厨房分のガス使用量に分類される。
一方、推定流速ytが厨房最小流速Vkよりも大きくない場合には(S4−7:No)推定流速ytが暖房分のガス使用量に分類される。
そして、用途分解部11dにより、ガス器具毎のガス使用量の例えば30分間や1時間など時間,日,週間,月,季節,及び/又は年などの単位での積算値[L]が算出され、データファイル等に記録されて記憶部12などに格納(保存)されたり表示部14に表示されたりする。
なお、S4の処理において用いられる各閾値などの種々の値は、ガス消費量の用途分解プログラム17内に予め規定されるようにしても良いし、S4の処理が行われる前に入力部13を介して作業者によって入力されるようにしても良い。
そして、制御部11は、S1の処理においてメモリ15に記憶された、ガス消費量の用途分解のひとかたまりの処理対象としての計測データに関する処理を終了する(END)。
以上のように構成されたガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによれば、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の流量fu[L]毎に1カウントとして計数する流量カウント数との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の流量fu刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎のガスの流速ytを算定することができるので、ガスの総消費量の実態の再現性の向上を図ることが可能になる。
以上のように構成されたガス消費量の用途分解方法、用途分解装置、及び用途分解プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現されたガスの流速ytに基づいてガスの総消費量の用途を給湯分,暖房分,及び厨房分に分類することができるので、ガスの総消費量の用途分解の良好な精度を確保してガス消費量の用途分解技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
なお、各処理において用いられる各閾値は、特定の値に限定されるものではなく、適宜設定され得る。
次に、図5乃至図10に、本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムの実施形態の一例を示す。
ここで、本発明における在宅不在の判定とは、住居や住戸内に居住者が存在している状態(即ち、在宅である)と存在していない状態(即ち、不在である)とのどちらであるかを推定することである。
本発明における居住者の在宅不在の判定では、図3に示される連続データの作成方法の考え方が利用される。そして、所定の時間間隔且つ所定の計量単位で出力される計測値から実際の電力需要量が推定され、当該推定された電力需要量が用いられて居住者の在宅不在の判定が行われる。
具体的には、本実施形態の居住者の在宅不在の判定方法は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量lを計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得(S1)された電力需要量の計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータが分析対象区間のデータとして抽出され、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に所定の電力量lを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線が推定され(S2)、当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度xtが算定され(S2)、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度xtが用いられて前記所定の期間における電力需要速度xtの統計量が特徴量として算出され、少なくとも前記特徴量が用いられて居住者の在宅不在が判定される(S3)ようにしている(図5参照)。
また、本実施形態の居住者の在宅不在の判定装置は、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量lを計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データの入力を受ける手段としてのデータ受部31aと、計測データから、所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に所定の電力量lを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度を算定する手段としての最短折線作成部31bと、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度を用いて前記所定の期間における電力需要速度の統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも前記特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する手段としての時刻別判定部31cとを有する。
上記居住者の在宅不在の判定方法及び居住者の在宅不在の判定装置は、居住者の在宅不在の判定プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、居住者の在宅不在の判定プログラムがコンピュータ上で実行されることによって居住者の在宅不在の判定方法が実施されると共に居住者の在宅不在の判定装置が実現される場合を説明する。
本実施形態の居住者の在宅不在の判定プログラム37を実行するためのコンピュータ30(本実施形態では、居住者の在宅不在の判定装置30でもある)の全体構成を図7に示す。
このコンピュータ30(居住者の在宅不在の判定装置30)は制御部31,記憶部32,入力部33,表示部34,及びメモリ35を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部31は、記憶部32に記憶されている居住者の在宅不在の判定プログラム37に従ってコンピュータ30全体の制御並びに居住者の在宅不在の判定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部32は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部33は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部31に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部33として有するようにしても良い。
表示部34は、制御部31の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ35は、制御部31が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ30(以下、「居住者の在宅不在の判定装置30」と表記する)の制御部31には、居住者の在宅不在の判定プログラム37が実行されることにより、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量lを計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータとして取得された電力需要量の計測データの入力を受ける処理を行うデータ受部31aと、計測データから所定の時間帯の組み合わせデータを分析対象区間のデータとして抽出し、さらに、分析対象区間における計測時刻毎の電力需要量の累積値を下限とすると共に計測時刻毎の電力需要量の累積値に所定の電力量lを加えた値を上限とする領域内に存在し且つ分析対象区間の始点から終点へと至る総長が最短であり尚且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定して当該折れ線における各計測時刻間の直線の傾きとして電力需要速度xtを算定する処理を行う最短折線作成部31bと、在宅不在の判定の対象である計測時刻以前の所定の期間に含まれる電力需要速度xtを用いて所定の期間における電力需要速度xtの統計量を特徴量として算出すると共に少なくとも特徴量を用いて居住者の在宅不在を判定する処理を行う時刻別判定部31cとが構成される。
ここで、以下に説明する処理を行う際に用いられる変数についての計算機における処理として、最初に、不在開始時刻,不在終了時刻,及び不在区間指標を表す変数は全て初期化され、具体的には、不在開始時刻及び不在終了時刻を表す変数には例えば時刻としてはあり得ない数値が与えられたり、不在区間指標を表す変数には例えば0(ゼロ)が与えられたりする。
そして、居住者の在宅不在の判定方法の実施として、まず、電力需要量の計測が行われて計測データの取得が行われる(S1)。
電力需要量の計測の仕方は、在宅不在の判定の対象である住宅や住戸における電力需要量を計測して所定の計量単位(言い換えると、所定の計量の刻み)で所定の時間毎に例えば電気的な信号として前記所定の計量単位での需要量を出力するものであれば、特定の方法や機器によるものに限定されるものではなく、前記のような計測を行い得る方法や機器が適宜選択される。
具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、電力需要量の計測の仕方(具体的には、計測機器)としてスマートメータ(例えば、上述の非特許文献2)が利用され得る。
電力需要量の計測における上述の「所定の計量単位」としての、1単位として扱われる(言い換えると、1単位として計量される)実際の電力量は、特定の値[Wh]に限定されるものではなく、例えば計測に用いられる計測機器の仕様などが踏まえられた上で適当な値に適宜設定される。具体的には例えば、スマートメータのAルート計測値では、1単位として扱われる実際の電力量は100 Wh である。
また、電力需要量の計測における上述の「所定の時間」としての、計測値を出力する時間間隔は、特定の時間[分]に限定されるものではなく、例えば計測に用いられる計測機器の仕様などが踏まえられた上で適当な時間に適宜設定される。具体的には例えば、スマートメータのAルート計測値では、計測値が出力される時間間隔は30分である。
本実施形態では、電力需要量の計測においてスマートメータが利用され、上述の「所定の計量単位」が100 Wh であると共に上述の「所定の時間」が30分である計測データ、すなわち、実際の電力量100 Wh を1単位として計量する電力需要の値(「需要単位計量値」と呼ぶ)が30分間隔で出力される計測データが、S1の処理によって取得されるとする。
そして、計測によって取得された電力需要量の計測値(具体的には、需要単位計量値)は、制御部31のデータ受部31aを介して居住者の在宅不在の判定装置30へと入力される。
電力需要量の計測値(需要単位計量値)は、居住者の在宅不在の判定装置30に、各種記録媒体やデータサーバを介して入力されるようにしても良く、或いは、例えばスマートメータのように計測機器が備えている通信機能または計測機器に付加された通信機能や通信機序によって入力されるようにしても良い。
記録媒体を介して計測値が入力される場合には、例えば、計測機器から出力された需要単位計量値が記録媒体に記録され、当該記録媒体が居住者の在宅不在の判定装置30の記録媒体接続用端子(図示していない)に差し込まれることによって需要単位計量値が入力されるようにすることが考えられる。
また、データサーバを介して計測値が入力される場合には、例えば、データサーバがバス等の信号回線によって居住者の在宅不在の判定装置30に接続され、計測機器から出力された需要単位計量値が前記データサーバにデータファイル等として格納(保存)され、当該データファイル等として保存された需要単位計量値が読み込まれるようにすることが考えられる。
また、例えばスマートメータのように計測機器が備えている通信機能または計測機器に付加された通信機能や通信機序によって計測値が入力される場合には、需要単位計量値がリアルタイムで(即ち、即時的に)居住者の在宅不在の判定装置30に入力されることも可能であり、したがってほぼリアルタイムでの(即ち、即時的な)居住者の在宅不在の判定の処理も可能である。
なお、記録媒体,データサーバ,及び通信機能や通信機序が組み合わされて用いられて需要単位計量値が居住者の在宅不在の判定装置30に入力されるようにしても良い。
また、電力需要量の各計測値(各需要単位計量値)が計測機器から出力された時刻が計測機器に備えられた時計機能によって計測値と一緒に出力されて当該計測値と対応づけられて記録されたり、或いは、計測機器から出力された各計測値が記録媒体,データサーバ,或いは居住者の在宅不在の判定装置30に記録されたり入力されたりした時の時刻が当該計測値と対応づけられて記録されたりする。なお、この時刻の間隔[分]が上述の「所定の時間」になる。
ここでの説明においては、各計測値(各需要単位計量値)と対応づけられて記録される時刻のことを「計測時刻」と呼び、また、需要単位計量値と計測時刻との組み合わせデータのことを「計測データ」と呼ぶ。
そして、データ受部31aにより、計測データがメモリ35に記憶させられる。
次に、制御部31の最短折線作成部31bにより、S1の処理によって計測されて取得された計測データが用いられて累積需要曲線の作成が行われる(S2)。
S2の処理は、分析対象区間について実行される。分析対象区間は、少なくとも、対象住宅や対象住戸についての居住者の在宅不在の判定が行われる時刻(「判定対象時刻」と呼ぶ)を含む期間として設定される。
分析対象区間は、特定の時間長さ[時間]に限定されるものではなく、例えば検知の主要な対象として想定される不在期間について想定される時間が考慮されるなどして適当な時間長さに適宜設定される。分析対象区間は、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、6〜36時間程度の範囲で適当な時間長さに設定され得る。また、分析対象区間は、例えばリアルタイムでの(即ち、即時的な)居住者の在宅不在の判定が行われる場合などには、判定対象時刻の進行に伴って当該の判定対象時刻を基準とするなどして適時・適宜に更新されて(言い換えると、設定し直されて)時間軸方向に移動させられるようにしても良い。
なお、判定対象時刻は、全ての計測時刻の各々が順次に判定対象時刻とされるようにしても良く、或いは、各計測時刻のうちから所定の間隔で選択された計測時刻が順次に判定対象時刻とされるようにしても良い。
S1の処理によって取得される計測データは、30分間隔での100 Wh 単位(言い換えると、100 Wh 刻み)の電力需要量である。しかしながら、何らかの電気機器が使用されているときは、さらに、一般の住居では冷蔵庫など常時稼働且つ所定の間隔(或いは、所定のトリガー)で電力需要が変動する電気機器が通常は使用されていることを考慮すれば、電力(待機電力等を含む)の需要が常に継続しているという点において電力需要量の変化の生起は時系列において連続であり、また、電力が常に消費されているという点において電力需要量の変化の態様は漸次的である。
つまり、S1の処理における計測では、実際には(値の)変化の生起が時系列において連続であると共に(値の)変化の態様が漸次的である現象が、所定の時間間隔且つ所定の値単位(言い換えると、所定の値刻み,所定の計測単位,或いは所定の計量単位)という散発的(言い換えると、間欠的)且つ離散的な変化として把握されていると言える。
そして、本発明では、所定の時間間隔且つ所定の値単位(言い換えると、所定の値刻み,所定の計測単位,或いは所定の計量単位)という計測値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的である計測データがそのまま用いられるのではなく、当該散発的(間欠的)且つ離散的な計測データが、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的であるデータに変換された上で在宅不在の判定の処理に用いられる。
本発明の居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムにおいて用いられる、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ計測値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて、計測値の変化の生起が時系列において連続であり且つ計測値の変化の態様が漸次的である累積需要曲線が作成される、連続データの作成方法を、図8を用いて説明する。そして、この作成方法の考え方(言い換えると、要点)は、図3を用いて説明した作成方法の考え方(要点)と同様である。
ここでの説明の例として、図8に示すような、或る時間帯の計測データが、具体的には例えばスマートメータのAルート計測値のように30分毎に出力される需要単位計量値の累積値であって100 Wh 単位の電力需要量の累積値(図中の●印)がS1の処理によって取得されて分析対象区間分の計測データとして抽出されたとする。
図8の横軸は、30分間隔である計測時刻の各時点を、当該の分析対象区間の最初の計測時刻を1とした上で識別子としての連続番号で表したものである。すなわち、横軸における例えば「3」は、当該の分析対象区間の始まりから1.5時間(=90分=30分×3)だけ時間が経過していることを表す。
また、図8の縦軸は、当該の分析対象区間における需要単位計量値の累積値を表す。すなわち、縦軸における例えば「400」は、当該の分析対象区間の始まりから400[Wh]だけ電力が消費されていることを表す。
S1の処理によって取得される計測データは所定の時間間隔且つ所定の値単位(値刻み,計測単位,計量単位)という値の変化が散発的(間欠的)且つ離散的なデータであるので、すなわち、計測値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)且つ計測値の変化の態様が離散的なデータであるので、計測データの需要単位計測値の累積値のデータプロットである●印を時系列で結ぶと図8に示すように不規則な昇り階段状になる(図8中において符号41;「下限階段直線41」と呼ぶ)。
また、計測データの需要単位計量値の累積値に計測時刻毎に100 Wh(即ち、需要単位計量値における計量単位であり値刻みの大きさである)を加えたデータのプロットである▲印を時系列で結んだものも、図8に示すように不規則な昇り階段状になる(図8中において符号42;「上限階段直線42」と呼ぶ)。
そして、下限階段直線41が実際の電力需要量に基づく真の累積値の下限(言い換えると、実際の電力需要量が取り得る累積値の下限)であり、上限階段直線42が実際の電力需要量に基づく真の累積値の上限(言い換えると、実際の電力需要量が取り得る累積値の上限)である。
したがって、実際の電力需要量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線は、下限階段直線41と上限階段直線42とに挟まれた領域(「存在可能領域」と呼ぶ)内に存在し、全体としては増加傾向を示す非減少の曲線であると考えられる。
そして、真の累積需要曲線としては、存在可能領域内において増加傾向を示す非減少の折れ線のうち、折れ点(言い換えると、変曲点、若しくは、電力需要速度変化点)の個数が比較的少ないものを想定する。
そこで、実際の電力需要量の時系列における累積を表す真の累積需要曲線として、存在可能領域内に存在する、総長(即ち、当該の分析対象区間の始まりから終わりまでに亙る軌跡の長さ)が最短の折れ線(「最短折れ線」と呼ぶ)を推定する。
真の累積需要曲線としての、存在可能領域内に存在する、最短折れ線の推定手法は、特定の方法に限定されるものではなく、特定の領域内に存在して所定の始点から終点へと至る折れ線のうちの総長が最短の折れ線であり且つ各計測時刻において計測された電力需要量の総和と推定される各計測時刻の電力需要量の総和とが一致する折れ線を推定し得る適当な方法が適宜選択される。
最短折れ線の推定手法として、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、当該の分析対象区間において確定済みの折れ線の最後の点を起点とした(未確定の)直線部の許容される傾きの上限値・下限値を順次更新し、全ての直線が存在可能領域を逸脱せざるを得なくなる時点で直線の傾きを決定し、その直線が存在可能領域の境界に最初に接した時点までの折れ線の確定を行い、そして、新たに確定した折れ線の最後の点を新たな起点に設定した上で上述と同様の処理を繰り返すことを基本的な考え方とする方法が用いられ得る。
この推定方法は、計測時刻t(尚、計測間隔は30分であり、したがって計測時刻の間隔は30分である)における計側電力量をxt[Wh/30分]とすると共に、推定電力需要速度をyt[Wh/30分]とすると(図9参照)、最適化問題として数式7のように表される。
数式7においてtは分析対象区間における計測時刻の識別子であってt=1,2,3,…であり、数式7では当該の分析対象区間の範囲として計測時刻の識別子tが1からTまでの期間に亙って処理が実行される。
そして、計測時刻を1刻みの識別子とすることにより、計測の時間間隔である30分を一単位として扱うことになり、計測時刻 t−1 から t にかけての増分は計測の時間間隔当たりの増加量であって計測時刻 t−1 から t にかけての速度[Wh/30分]であり、真の累積需要曲線としては計測時刻 t−1 から t にかけての直線の傾きである。
数式7において、また、計測電力量xt[Wh/30分]は、計測時刻tにおける需要単位計量値(言い換えると、計測時刻 t−1 から t にかけての需要単位計量値の増分)である。
数式7において、さらに、l(エル)は、電力需要[Wh]の最小単位(即ち、計測単位,計量単位)であり、本実施形態ではl=100である。
そして、数式7における最小化の対象は、経過時間(即ち、各々1)と各経過時間に関する推定需要(即ち、推定電力需要速度yt)とからなる折れ線の距離である。折れ線の距離は、図9に示す例のように、経過時間(即ち、各々1)と当該経過時間に関する推定電力需要速度ytとに対する斜辺の長さの総和として求められ、本発明ではこの斜辺の長さの総和が最も小さくなる曲線が推定累積需要曲線とされる。
制約条件の第一式は電力需要速度の非負性に対応し、また、第二式は実際の電力需要量の累積値の範囲制約に対応し、さらに、第三式は当該の分析対象区間における計測値ベースの電力需要量の総和と推定値ベースの電力需要量の総和との一致に対応する。
上述の最適化問題を解く方法によると、最悪の場合でも、時系列長(即ち、計測時刻の個数)の二乗のオーダーで真の累積需要曲線に相当する最短折れ線が推定される。
図8に示す計測データのプロット(図中の●印)を結んだ下限階段直線41に対して数式7で表される最適化問題を適用した結果として(言い換えると、数式7に示す三つの制約条件を満たす累積需要曲線の全体が)、図8において破線で示す、存在可能領域内の単調増加曲線として、実際の電力需要量に近いと考えられる推定累積需要曲線43が得られる。
ここで、上記の最適化問題は計測時刻の識別子t=1から処理が実行されるところ、t=1の処理が実行されるためには、t=1での起点としてt=0(即ち、計測時刻の識別子t=1に対応する計測時刻の一つ前の計測時刻)からt=1にかけての折れ線の最後の点が特定される必要が、すなわち、t=0からt=1にかけての直線が特定される必要がある。この直線は、具体的には、当該の分析対象区間の最初の計測時刻(即ち、計測時刻の識別子t=1)の直前の計測時刻として識別子tを0(ゼロ)とすると共に需要単位計量値の累積値を0(ゼロ)とする仮想の原点を置き、当該原点と計測時刻の識別子t=1における需要単位計量値の累積値の値の点とを結ぶことによって特定される。
あるいは、当該の分析対象区間についての計測時刻の識別子t=0からt=1にかけての直線の傾きが、識別子t=1において連続する直線の傾きに一致させられるようにしても良い。
ここで、真の累積需要曲線の上述の推定方法(即ち、数式7で表される最適化問題)は、目的関数部を「距離の和」から「距離の2乗和」に変更した数式8で表される最適化問題、すなわち、「存在可能領域の任意の曲線のうち各計測時刻の電力需要速度(即ち、電力需要量の累積値の計測時刻間差分)の2乗和が最小の曲線」を求める問題と等価である。
数式8で表される最適化問題では、2乗和の最小化により、各計測時刻の電力需要速度(電力需要量)が同じ値を持つ傾向が生じるので、折れ線が最適解になる。
真の累積需要曲線の推定方法としての数式7で表される最適化問題は、また、数式8で表される最適化問題の双対問題である数式9で表される最適化問題とも等価である。なお、数式9で表される最適化問題は、全変動正規化問題と呼ばれる凸最適化問題の一種である。なお、数式9において、x0は計測電力量xt[Wh/30分]の初期値(即ち、t=0のときの値)であり、図8,図9に示す例ではx0=0である。
上述の真の累積需要曲線(即ち、最短折れ線)は、一例として以下に示すアルゴリズムが用いられることによって求められ得る。
−真の累積需要曲線の決定アルゴリズム−
《保持・更新情報》
○起点 折れ線
○上限直線 上限需要と領域境界接触点
○下限直線 下限需要と領域境界接触点
《更新内容》
(1) 時刻更新:時刻=時刻+1
(2) 下限直線<上限累積需要値
起点から下限境界接触点までの需要量=需要下限(確定)
起点=下限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(3) 上限直線>下限累積需要
起点から上限境界接触点までの需要量=需要上限(確定)
起点=上限直線の境界接触点
時刻=起点,上限/下限直線の再設定
(1)へ
(4) 下限直線<領域下限
下限需要,下限境界設定更新
上限直線>領域上限
上限需要,上限境界設定更新
(5) 計測時刻の識別子t=Tになるまで(1)へ戻る
本実施形態では、最短折線作成部31bにより、S1の処理においてメモリ35に記憶された計測データ(即ち、需要単位計量値と計測時刻との組み合わせデータ)のうち、分析対象区間に該当する期間の計測データが時系列に従って順次読み込まれる。
そして、メモリ35から読み込まれた計測時刻は、当該の分析対象区間における計測時刻の識別子として時系列順に1,2,3…という連続番号に変換される。
続いて、最短折線作成部31bにより、上記の変換が施された計測データが用いられて数式7乃至数式9に表される最適化問題のうちのいずれかが解かれて、計測時刻の識別子t毎の推定電力需要速度yt[Wh/30分]が算定される。
そして、最短折線作成部31bにより、当該の分析対象区間について、算定された推定電力需要速度yt[Wh/30分]の値が計測時刻の識別子tの値と対応づけられて(言い換えると、計測時刻の識別子tの値と推定電力需要速度ytの値との組み合わせデータとして)メモリ35に記憶させられる。
次に、制御部31の時刻別判定部31cにより、S2の処理によって算定された計測時刻別の推定電力需要速度が用いられて居住者の在宅不在の時刻別判定指標の決定が行われる(S3)。
S3の処理は、S2の処理が実行された分析対象区間に含まれる判定対象時刻の各々について実行される。なお、判定対象時刻に該当する計測時刻の識別子をteと表記する。
本発明では、判定対象時刻における在宅不在の判定を行う際に、当該の判定対象時刻以前の一定期間内の推定電力需要速度のデータが用いられて平均値や最大値などの統計量が特徴量として算出され、当該特徴量が用いられて在宅か不在かの判定が行われる。特徴量の算出対象期間であって、当該の判定対象時刻以前の一定期間のことを「特徴量期間」と呼ぶ。
特徴量期間は、特定の時間長さ[分,時間]に限定されるものではなく、例えば事前の分析結果が考慮されるなどして適当な時間長さに適宜設定される。特徴量期間は、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、1〜3時間程度の範囲で適当な時間長さに設定され得る。
具体的には例えば、或る判定対象時刻(計測時刻の識別子t=te)における判定を行う場合に、特徴量期間が1時間であるときは、当該の判定対象時刻(計測時刻の識別子t=te)における推定電力需要速度yte[Wh/30分](尚、当該の判定対象時刻以前30分間の状態が反映されている)と当該の判定対象時刻の一つ前の計測時刻(計測時刻の識別子t=te−1)における推定電力需要速度yte-1[Wh/30](尚、当該の判定対象時刻の60分前から30分前までの状態が反映されている)とが用いられてこれら二つの値についての統計量が特徴量として算出される。
特徴量としての統計量は、特定の種類に限定されるものではなく、例えば事前の分析結果が考慮されるなどして適当な種類が取り上げられて適宜設定される。特徴量としては、具体的には例えば、平均値(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度の平均の値),最大値(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度のうちの最も大きな値),最小値(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度のうちの最も小さな値),範囲(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度のうちの最も大きな値と最も小さな値との差の値),標準偏差(即ち、特徴量期間に含まれる計測時刻別の推定電力需要速度の標準偏差の値)などが挙げられる。
なお、S3の処理において用いられる特徴量の個数は、特定の数に限定されるものではなく、一個でも良く、或いは、複数個でも良い。
また、特徴量として、電力需要量(具体的には、推定電力需要速度)に関する各種統計量に加え、種々の情報が追加的に用いられるようにしても良い。この場合の情報の種類としては、例えば、世帯の識別子,判定対象時刻(実際の時刻),気温,季節などが挙げられる。
そして、上記のようにして算出されたり設定されたりした特徴量(言い換えると、説明変数)が用いられて、在宅と不在との2クラス分類が行われることによって在宅不在の判定が行われる。
2クラス分類を行う手法としては、例えばランダムフォレストやサポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine の略)などの機械学習手法が用いられ得る。
なお、機械学習手法が用いられる際には、時刻別の電力需要量の実測データと当該時刻における実際の在宅不在に関する状態データとの組み合わせデータが正解データ(「教師データ」や「訓練データ」とも呼ばれる)が必要とされる。この正解データは、例えば、実態調査,モニタ調査,アンケート調査などが行われて収集されたり、既存の観測データが利用されて準備されたりする。そして、正解データが機械学習手法における学習に用いられて2クラス分類の判定基準が作成される。なお、2クラス分類に用いられる機械学習手法の手順や判定基準の内容などは、例えば、居住者の在宅不在の判定プログラム37内に予め規定される。
本実施形態では、時刻別判定部31cにより、S2の処理においてメモリ35に記憶された分析対象区間についての計測時刻の識別子tの値と推定電力需要速度ytの値との組み合わせデータのうち、当該の判定対象時刻についての特徴量期間に該当する(言い換えると、特徴量期間に含まれる)計測時刻の識別子と対応づけられている全ての推定電力需要速度の値が読み込まれる。
そして、時刻別判定部31cにより、読み込まれた推定電力需要速度の値が用いられて、2クラス分類に用いられる特徴量が算出される。
時刻別判定部31cにより、さらに、機械学習手法が用いられて2クラス分類が行われ、当該の判定対象時刻について対象住宅や対象住戸に人が存在しているか存在していないかが決定される。
そして、時刻別判定部31cにより、2クラス分類の結果(即ち、「在宅」と「不在」とのうちのどちらであるかの決定結果)が、在宅不在の時刻別判定指標として判定対象時刻(計測時刻の識別子t=te)と対応づけられて(言い換えると、計測時刻の識別子の値と在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値との組み合わせデータとして)メモリ35に記憶させられる。
なお、計算機における処理としては、2クラス分類の結果が、「在宅」である場合には時刻別判定指標を表す変数に「在宅」に対応する数値として適宜選択された適当な数値(具体的には例えば、1)が与えられ、「不在」である場合には時刻別判定指標を表す変数に「不在」に対応する数値として適宜選択された適当な数値(具体的には例えば、0(ゼロ))が与えられる。
本実施形態では、引き続いて、上述までの処理によって決定された在宅不在の時刻別判定指標が用いられて不在開始時刻及び不在終了時刻が特定されて不在期間が確定されるようにしている(S4乃至S11;図6,図10)。
具体的にはまず、制御部31の不在区間判断部31dにより、S3の処理によって決定された当該の判定対象時刻における在宅不在の時刻別判定指標が用いられて、当該時刻別判定指標が「不在」であるか否かの判断が行われる(S4)。
本実施形態では、不在区間判断部31dにより、S3の処理においてメモリ35に記憶された当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子teと対応づけられている在宅不在の時刻別判定指標が読み込まれる。
そして、読み込まれた時刻別判定指標が「不在」である場合には(S4:Yes)、処理ステップがS5の処理へと進められる。
そして、S5の処理として、不在区間判断部31dにより、後述するS8の処理において設定・操作される不在区間指標が「不在」であるか否かの判断が行われる。
そして、不在区間指標が「不在」でない場合には(S5:No)、不在開始時刻がS1の処理の前の初期化された状態のままであるときは、当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)の一つ前の計測時刻の識別子t(=te−1)に対応する実際の時刻が不在開始時刻としてメモリ35に記憶させられる(S6)。なお、不在開始時刻がS1の処理の前の初期化された状態のままでないときは、不在開始時刻に対しては何らの操作もしない。
次に、制御部31の在宅不在判定部31eにより、S3の処理によって決定された在宅不在の時刻別判定指標が用いられて、居住者の在宅不在の判定が行われる(S7)。
S3の処理によって決定される在宅不在の時刻別判定指標は、判定対象時刻毎に各々独立して判定された結果であり、居住者が在宅しているものの、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする場合に(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい場合に)、不在であるとの判断結果になる虞がある。
このため、本実施形態では、居住者の在宅不在の最終的な判定は、在宅不在の時刻別判定指標が当該の判定対象時刻以前の所定の時間に亙って連続して「不在」であるか否か(言い換えると、S3の処理における「不在」の決定が所定の時間に亙って継続しているか否か)が判断されることによって行われる。ここで、在宅不在の判定を行うための前記所定の時間のことを「判定期間」と呼ぶ。
判定期間は、特定の時間長さ[時間](言い換えると、判定対象時刻の個数)に限定されるものではなく、例えば事前の分析結果が考慮されるなどして適当な時間長さに適宜設定される。判定期間は、具体的には例えば、1〜12時間程度の範囲で適当な時間長さに設定されることが考えられ、4〜8時間程度のうちのいずれかの時間長さに設定されることが好ましく、6時間程度に設定されることが更に好ましい。
本実施形態では、在宅不在判定部31eにより、S3の処理においてメモリ35に記憶された計測時刻の識別子tの値と在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値との組み合わせデータのうち、当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)と対応づけられている在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値が読み込まれると共に、当該の判定対象時刻についての判定期間に該当する(言い換えると、判定期間に含まれる)計測時刻の識別子t(=te−1,te−2 等)と対応づけられている全ての在宅不在の時刻別判定指標を表す変数の値が読み込まれる。
そして、在宅不在判定部31eにより、当該の判定対象時刻についての判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標が全て「不在」であるか否かが判断される。
そして、判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標の中に一つでも「在宅」が有る場合には(S7:No)、処理ステップがS1の処理へと戻される。
他方、判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標が全て「不在」である場合には(S7:Yes)、当該の判定期間の間は居住者は不在であると判定されるということになり、在宅不在判定部31eにより、不在区間指標が「不在」にされた上でメモリ35に記憶させられると共に当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)に対応する実際の時刻が不在終了時刻としてメモリ35に記憶させられ(S8)、その上で処理ステップがS1の処理へと戻される。なお、不在区間指標が「不在」にされるとは、計算機における処理としては、不在区間指標を表す変数に「不在」に対応する数値として適宜選択された適当な数値、具体的には例えば1が与えられたりすることである。
また、S5の処理において、不在区間判断部31dにより、不在区間指標が「不在」であるか否かの判断が行われて当該不在区間指標が「不在」である場合には(S5:Yes)、当該の判定対象時刻の計測時刻の識別子t(=te)に対応する実際の時刻が不在終了時刻としてメモリ35に記憶させられ(S9)、その上で処理ステップがS1の処理へと戻される。なお、S9の処理では、S8の処理若しくは前回のS9の処理において設定された不在終了時刻が更新されることになる。
また、S4の処理において、不在区間判断部31dにより、当該の判定対象時刻における在宅不在の時刻別判定指標が「不在」であるか否かの判断が行われて当該時刻別判定指標が「不在」でない場合には(S4:No)、処理ステップがS10の処理へと進められる。
そして、S10の処理として、制御部31の不在期間確定部31fにより、不在区間指標が「不在」であるか否かの判断が行われ、不在区間指標が「不在」である場合には(S10:Yes)、上述のS6の処理において特定された不在開始時刻から、上述のS8の処理若しくはS9の処理において特定された不在終了時刻までが、不在期間であると確定される(S11)。
そして、対象住宅や対象住戸についての在宅不在の判定の結果として、必要に応じて個々の不在期間を区別するための識別子と対応づけられて、不在開始時刻と不在終了時刻との組み合わせデータが、データファイル等に記録されて記憶部32などに格納(保存)されたり、表示部34に表示されたりする。その上で、処理ステップがS1の処理へと戻される。この際、不在開始時刻,不在終了時刻,及び不在区間指標は全てリセットされ、計算機における処理としては、S1の処理の前の初期化された状態に戻される。
他方、不在区間指標が「不在」でない場合には(S10:No)、処理ステップがS1の処理へと戻される。この際、不在開始時刻がS1の処理の前の初期化された状態のままでないときは、不在開始時刻はリセットされ、計算機における処理としては、S1の処理の前の初期化された状態に戻される。
以上のように構成された居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、所定の時間間隔の計測時刻と当該計測時刻毎に出力される値であって所定の電力量l[Wh]を計測単位として計量する電力需要量との組み合わせデータ、すなわち、所定の時間間隔且つ所定の電力量l刻みという値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて計測時刻毎の電力需要速度ytを算定することができるので、電力需要の実態の再現性の向上を図ることが可能なる。
以上のように構成された居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラムによれば、さらに、実態が良好に再現された電力需要速度に基づいて住居や住戸に人が存在しているか存在していないかを推定することができるので、居住者の在宅不在の判定の良好な精度を確保して居住者の在宅不在の判定技術としての信頼性の向上を図ることが可能になる。
また、不在開始時刻から不在終了時刻までの期間は、つまりは対象住宅や対象住戸において人の活動に伴う電気の使用が為されていない期間であるので、対象住宅や対象住戸には人が存在していないと理解したり、或いは、対象住宅や対象住戸に人が存在しているものの例えば病気や怪我などのために動けなくなっているような異常事態が発生している可能性があると理解したりすることができる。したがって、不在開始時刻から不在終了時刻までの時間長さが所定の閾値を超える場合を要安否確認事象として検知し、対象住宅や対象住戸に関して長期不在の有無を確認したり異常事態の発生の有無を確認したりするようにすることも考えられる。すなわち、本発明の居住者の在宅不在の判定手法は、例えば、高齢者等の見守りシステムとしても利用されることが可能である。
なお、上述の形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態ではS3の処理において居住者の在宅不在に関する時刻別判定指標が決定された上で更にS4乃至S11の処理が実行されて不在開始時刻と不在終了時刻とが特定されるようにしているが、前記S4乃至S11の処理は本発明において必須の構成ではない。すなわち、本発明の要点の一つは前記時刻別判定指標が決定されることであり、前記S4乃至S11の処理は前記時刻別判定指標の利用の仕方の一つであるものの、前記時刻別判定指標の利用の仕方はこれに限定されるものではない。
上記のことも踏まえると、本発明の実施の形態としては、時刻別判定指標が決定されるまで(即ち、上述の実施形態におけるS3の処理まで)という態様や、上述の実施形態におけるS3の処理に続いて判定期間中の在宅不在の時刻別判定指標が全て「不在」であるか否かが判断される(即ち、上述の実施形態におけるS7の処理に相当する処理が実行される。この場合、判定対象時刻以前の判定期間中の在宅不在が判定され、これら処理が判定対象時刻の進行に伴って判定対象時刻毎に繰り返されることによって判定対象時刻以前の判定期間中の在宅不在の情報が更新される)という態様などが挙げられる。
また、上述の実施形態におけるS4乃至S11の処理の要点は、S3の処理によって決定された在宅不在の時刻別判定指標を用いて不在期間を確定し得るように、在宅不在の判定を行うための所定の時間としての判定期間が判定対象時刻の進行に伴って時間軸方向に移動させられながら判定期間毎に在宅不在が判定され、不在と判定された一つの判定期間の始まりを不在開始時刻とすると共に終わりを不在終了時刻として特定する、または、連続して不在と判定された複数の判定期間のうちの最初の判定期間の始まりを不在開始時刻とすると共に最後の判定期間の終わりを不在終了時刻として特定することである。したがって、時間軸方向に移動する判定期間毎に在宅不在を判定しながら不在開始時刻と不在終了時刻とを特定し得るものであれば、上述の実施形態におけるS4乃至S11の処理に対応する具体的な方法・手順は上述の実施形態として説明したもの(図10を含む)に限定されるものではない。
なお更に付け加えると、所定の時間長さを有すると共に時間軸方向に移動する判定期間を用いることによって不在開始時刻と不在終了時刻とを特定することの利点は、判定対象時刻毎に各々独立して(即ち、当該の判定対象時刻よりも前の時刻における状況を合わせて考慮すること無く)在宅不在を判定する場合のような、居住者が在宅しているにもかかわらず、短時間、使用する電気機器が少なかったり電気機器の使用態様に変化が無かったりする状況での(言い換えると、電力需要速度の変化が小さい状況での)不在であるとの誤った判断を避けることである。この考え方は、上述の実施形態のように値の変化が散発的(言い換えると、間欠的)であり且つ離散的であるデータ、或いは言い換えると、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が離散的であるデータに基づいて作成される連続データが用いられる場合のみに適用され得るものではなく、種々の特性のデータが用いられる場合に適用され得るものであり、さらに言えば、判定対象時刻別の在宅不在の判定の仕方は上述の実施形態における方法に限定されるものではない。
例えば、もとより連続であるデータ、言い換えると、値の変化の生起が時系列において連続であり且つ値の変化の態様が漸次的であるデータ、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、1分毎に出力される1 Wh 単位のデータが用いられる場合にも適用され得る。この場合には、上述の実施形態のように最適化問題を解くこと無く、あくまで一例として挙げると30分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/30分]や1分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/分]、或いは一般化するとn分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/n分]が得られる。そして、上述の実施形態におけるS3以降の処理が同様に行われ得る。
あるいは、値の変化の生起が時系列において散発的(間欠的)であり且つ値の変化の態様が漸次的であるデータ、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、30分毎に出力される1 Wh 単位のデータが用いられる場合にも適用され得る。この場合には、上述の実施形態のように最適化問題を解くこと無く、あくまで一例として挙げると、30分間隔の時刻の識別子t毎の電力需要速度yt[Wh/30分]が得られる。そして、上述の実施形態におけるS3以降の処理が同様に行われ得る。
30 居住者の在宅不在の判定装置
37 居住者の在宅不在の判定プログラム