JP2017117789A - 二次電池負極用バインダー組成物、二次電池負極及び二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、合金系活物質は一般に黒鉛系活物質に比べて体積膨張がより大きく、例えば、合金系活物質として公知のケイ素(Si)活物質は、充放電に伴って約400%もの体積変化を起こすことが知られている。このような体積変化の為、活物質がより電極から剥がれ易くなるので、黒鉛系活物質で使用されていた従来のポリビニルアルコール系樹脂含有エマルジョンを含むバインダーでは安定した高充電容量を得ることが困難であり、また充放電のサイクル特性も必ずしも満足できるものではなかった。
本バインダー組成物は、ポリビニルアルコール系樹脂と重合体粒子とを含有するエマルジョンを含む樹脂組成物であるが、このポリビニルアルコール系樹脂の成分と重合体粒子の成分の比率を特定の範囲内で任意に制御することによって、皮膜の弾性率や柔軟性、さらには金属密着性などを制御することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の成分を多くすることで高弾性皮膜に設計したり、一方で重合体粒子の成分を多くすることで柔軟性の高い皮膜を設計したりすることも可能である。また、この重合体粒子のガラス転移温度を特定の範囲に調整することによって、皮膜の弾性率や柔軟性、さらには金属密着性などを制御することができる。
しかしながら一方で、合金系活物質は黒鉛系活物質と比べて充放電に伴う体積変化が大き過ぎる為、柔軟なバインダーでは電極の構造変化に完全には追随することが難しい。
そこで活物質が体積変化した場合に、そもそも電極構造を大きく変動させない程度の高い弾性率を担保しつつ、電極の変動に伴うバインダーの割れや活物質の脱落を抑制できるような柔軟性を併せ持った、合金系活物質を使用する際に好適な組成の樹脂設計を行うことで、本発明の完成に至った。
以上の技術思想により、従来の一般的なバインダー設計思想とは異なり、合金系活物質を負極に用いる際には、意外にも、ポリビニルアルコール系樹脂の比率の高い方がより安定的に高い充放電容量を示し、且つ充放電のサイクル特性に優れる電池が得られるようになることがわかった。
しかしながら、ポリビニルアルコール系樹脂の比率を高くすることによってバインダー皮膜の柔軟性が低下して脆性破壊しやすくなり、電池を作製する段階や充放電に伴う体積変化によって負極活物質層の脱落が発生して電池容量が低下してしまう。
そこで重合体粒子のガラス転移温度を特定の範囲に調整することによってバインダーの皮膜強度が高くなり、負極活物質層が負極の体積変化に対して更に追随できるようになる為、結果として更に安定的に高い充放電容量を示し、且つ充放電のサイクル特性に更に優れる電池が得られるようになることがわかった。
本発明において固形分とは、対象物を105℃、3時間の乾燥減量法に供することにより得られるものを意味する。
本発明の二次電池負極用バインダー組成物は、リチウムと合金を形成し得る元素を活物質として含有する二次電池負極を作製するためのバインダー組成物であって、エチレン性不飽和単量体に由来する重合体粒子がポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に分散されたエマルジョンを含むバインダー組成物である。
重合体粒子における重合体は、エチレン性不飽和単量体の重合体である。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、下記の(a)〜(m)等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル。
(b)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(c)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(d)エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体。
(e)メチロール基含有エチレン性不飽和単量体。
(f)アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体。
(g)シアノ基含有エチレン性不飽和単量体。
(h)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体。
(i)アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体。
(j)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(k)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(l)芳香族エチレン性不飽和単量体。
(m)脂肪酸エステル系不飽和単量体。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の脂肪族(メタ)アクリレートや、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜10の脂肪族(メタ)アクリレートである。
これらラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体(h)は、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記脂肪酸エステル系不飽和単量体(m)としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
前記その他のモノマーの仕込み量は、目的とする重合体粒子の構成に対応し、重合体粒子に対して、通常、0〜95重量%、好ましくは0〜80重量%、特に好ましくは0〜70重量%である。
なお、重合体粒子のガラス転移温度は、重合体粒子を構成するエチレン性不飽和単量体の選択やその重合比の調整等の公知の方法によりコントロールすることができる。
2種以上の単量体を用いた場合に得られる共重合体のTg(℃)は、例えば以下に記載の熱示差分析法によって求めることができる。なお本発明における共重合体のTg(℃)は、変調モードで測定した2ndサイクル目のリバーシブルヒートフローの値を採用する。
分析装置:ティー・エイ・インスツルメント社製「DSC Q2000」
測定範囲
1st: −30〜215℃
2nd: −30〜230℃
昇温速度:5℃/分
降温速度:10℃/分
変調周期:60秒毎
温度振幅:+/−0.80℃
前記重合体粒子が分散するPVA系樹脂水溶液におけるPVA系樹脂は、公知一般の水溶性のPVA系樹脂である。
かかるPVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化することにより得られる。
前記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートを用いることができる。
通常、無水アルコール系溶媒下、アルカリ触媒を用いたエステル交換反応が反応速度の点や脂肪酸塩等の不純物を低減できるなどの点で好適に用いられる。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のビニル基とエポキシ基を有するモノマー;トリアリルオキシエチレン、ジアリルマレアート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート等のアリル基を2個以上有するモノマー;酢酸アリル、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル等のアリルエステル系モノマー;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルクロトナート等のアセトアセトキシアルキルクロトナート;2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル部分がC1〜C10アルキル基であり、好ましくはC1〜C6アルキル基);(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレンスルホン酸等のオレフィン系モノマー;ブタジエン−1,3、2−メチルブタジエン、1,3又は2,3−ジメチルブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3等のジエン系モノマー;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物などの誘導体;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパンなどのヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類、その塩又はモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩などの化合物、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニルアルキルジアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられる。ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートの具体的な例としては、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
なかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CH2OCH2−が好ましい。
上記方法のうち、共重合反応性及び工業的な取扱いにおいて優れるという点で(i)の方法が好ましく、特にR1〜R6が水素、Xが単結合、R7、R8がR9−CO−であり、R9がアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、その中でも特にR9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましく用いられる。
なお、PVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、ケン化度100モル%のPVA系樹脂の1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2−ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、およびメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出することができる。
かかる有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の低級アルコール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。
本発明におけるエチレン性不飽和単量体に由来する重合体粒子が上記PVA系樹脂水溶液中に分散しているエマルジョンは、上記重合体粒子を上記PVA系樹脂水溶液に分散させることで得られる。
特にかかるエマルジョンは、エチレン性不飽和単量体を分散質とし、公知の分散剤を用い、上記溶媒を分散媒として乳化重合する場合、上記重合体粒子が分散媒中に分散性良く分散したエマルジョンとして効率よく得られる。
この場合、負極におけるバインダーの連続層の強度の観点から、海島構造を形成する場合はドメインサイズを小さく(通常ドメイン径1.5μm以下)制御することが好ましい。かかる観点から、第1のPVA系樹脂と第2のPVA系樹脂のケン化度差は、通常0〜15モル%、好ましくは0〜10モル%である。
なお、本発明のPVA樹脂の重量とは、第1のPVA系樹脂と第2のPVA系樹脂との合計重量を指す。
前記乳化重合を実施する方法としては、例えば、i)水、分散剤及び重合触媒の存在下に、分散質たるエチレン性不飽和単量体を一度に又は連続的に配合して、加熱、撹拌することにより乳化重合する方法;ii)エチレン性不飽和単量体を分散媒に混合分散させた分散液を調製し、この調製した分散液を、水、分散剤及び重合触媒が配合された系内に、一度に又は連続的に配合して、加熱、撹拌して、乳化重合する方法などが挙げられる。このように予め調製した分散液を用いる方法は特にプレエマルジョン法と称される。かかる方法は、重合対象のモノマー組成がたとえ複雑であっても、生産性を維持して乳化重合を行なうことが可能であるので好ましい。
その他には、重合装置の混合攪拌翼の大きさや攪拌速度、攪拌時間を制御する方法などを採用することができる。さらには、モノマーを多孔質の膜中に通すことで粒子径を制御する膜乳化法や、攪拌方法に超音波を用いる超音波乳化法などを採用することもできる。
PVA系樹脂の配合量が少なすぎると、エチレン性不飽和単量体の乳化状態が不安定となって、重合反応性が低下したり、重合により得られるエマルジョン中での粒子の乳化状態安定性が低下する傾向にある。一方、PVA系樹脂の含有量が多すぎると、反応液の粘度が増大しすぎて均一分散性が低下し、重合率を高められなかったり、得られるエマルジョンの粘度が高くなりすぎて、製造上の歩留まりが低下する傾向にある。
なお、重合開始剤の配合方法としては、特に制限はなく、初期に一括して反応液中に配合してもよいし、重合の経過に伴って連続的に添加してもよい。
分散媒、分散剤を含有する反応容器に、重合しようとするモノマーの一部を仕込み、1段目の乳化重合を行う。1段目に投入するモノマーの量は、特に限定しないが、重合に使用するモノマーの通常1〜50重量%程度であり、好ましくは5〜30重量%である。1段目の乳化重合工程の条件は、用いるモノマーの種類、組成、重合開始剤の使用量等により適宜決定すればよい。
乳化重合反応の温度は、通常30〜90℃であり、特に40〜80℃が好ましく、重合時間は1〜4時間とすることが好ましい。1段目の乳化重合工程においては、重合転化率が30%以上であることが好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
2段目の乳化重合は、1段目の重合が終了した反応容器に、残りのモノマーを投入することにより行う。投入は、滴下しながら行うことが好ましい。また、2段目の重合に際して、重合触媒を投入してもよい。2段目の乳化重合は、重合温度が40〜80℃、重合時間が1〜6時間の条件で行う。
また、滴下するモノマー組成比を連続的に変えながら滴下するパワーフィード重合法を用いることも可能である。また、モノマーを分散剤たるPVA系樹脂の存在下で予め混合分散させた分散液を滴下しながら重合してもよい。
必要に応じて、かかる工程の後に通常1〜6時間の追い込み重合をおこなうことも可能である。かかる重合中に重合触媒を投入してもよい。
更に、フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤等も併用され得る。
本発明における重合体粒子の平均粒子径は、50nm以上600nm以下である。好ましくは200〜500nmである。なお、前記粒子の平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定器により、超音波照射処理の1分後に、測定時間3分間、積算回数5にて測定された体積分布の平均粒子径を採用する。
本発明の二次電池負極用バインダー組成物は上記エマルジョンを含む。
上記したように、本発明の負極用バインダー組成物においては、バインダー組成物に含まれる上記エマルジョン中の分散剤としてのPVA系樹脂とは別に、PVA系樹脂が配合されることが好ましい。側鎖に一級水酸基を有する構造単位、特に側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂は低結晶性であることから、別途、エマルジョンのPVA系樹脂水溶液に、側鎖に一級水酸基を有する構造単位、特に側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂が含まれることで、電極用バインダー組成物である水ペーストの粘度安定性を付与することが可能であり、作業効率を向上させることができる。
本発明のバインダー組成物には、通常、塗膜に用いられる塗料や成型用樹脂に用いられる配合剤等を配合することができる。例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤{ホウ酸、メチロール化メラミン、炭酸ジルコニウム、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)等}、皮張り防止剤、分散剤(上述の分散剤を除く。)、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。それぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。なお、バインダー組成物がこれらの配合剤を含有する場合、含有する配合剤の有機分は、バインダー組成物の固形分に含まれる。
上記配合剤の配合量は、バインダー組成物における上記エマルジョンの固形分100重量部に対して通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
本発明の二次電池負極は、本発明の二次電池負極用バインダー組成物、負極用の合金系活物質を少なくとも含有する。本発明の二次電池負極は、通常、バインダー組成物及び合金系活物質を混合して、二次電池負極用スラリーを調製し、このスラリーを集電体上に塗布、乾燥することによって製造することができる。
本発明の二次電池負極は、様々な二次電池に適用することができ、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、ナトリウム電池、空気アルミニウム電池等に適用することができる。以下では、特にリチウムイオン二次電池を例示して説明する。
スラリー中の活物質の含有量は、10〜95重量%、好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは35〜65重量%である。
PVA系樹脂以外の水溶性高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド糖のアクリルアミド類;酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和酸との共重合体;スチレンと上記不飽和酸との共重合体;ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体;及び前記不飽和酸と各共重合体の塩類又はエステル類、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガム等の天然多糖類が挙げられ、好ましくはセルロース誘導体類である。
本発明の二次電池の例として、本発明の二次電池負極用バインダー組成物を用いて作製された負極を有するリチウムイオン二次電池について説明する。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液、セパレータを少なくとも有する。
正極活物質としては、例えば、オリビン型リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、三元系ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物等を用いることができる。
下記実施例及び比較例において製造したPVA系樹脂は、以下の方法にて分析した。
残存酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析した。
JIS K 6726に準じて測定した。
BRUKER社製のAVANCEIIIHD 400を用いて、1H−NMR(400MHz、プロトンNMR、溶媒:重水溶液、温度:50℃)にて測定し、得られたNMRチャートに基づき、積分値より算出した。
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水1016.0部、分散剤として上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(ケン化度:99.1モル%、粘度平均重合度:1200、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6モル%)256.0部、酢酸ナトリウム0.42部を流し込み、95℃で撹拌しながら2時間溶解させた後、フラスコ内の温度を75℃に冷却した。
この温浴中に、1段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)とメチルメタクリレート(MMA)との混合モノマー(混合重量比:BA/MMA=71/29)を20.0部、重合開始剤として亜硫酸水素ナトリウム水溶液(5%)4.00部及び過硫酸アンモニウム水溶液(1%)13.20部を加えて、1段目の乳化重合を開始した。反応温度を75℃〜80℃に保持しながら、1時間重合を行った。
次に、2段目の乳化重合を行なった。1段階目の乳化重合を行った反応系の温度を75℃〜80℃の範囲に保ちながら、2段目の乳化重合用モノマーとして、先ほどと同じ組成の混合モノマー180.0部を3時間半かけて滴下した。かかる滴下中に、過硫酸アンモニウム水溶液(1%)26.39部を14分割して15分毎に配合した。その後、温度を75℃に保ちながら、90分間重合を続けた。この間、過硫酸アンモニウム水溶液(1%)4.4部を2分割して45分毎に配合した。
2段目の乳化重合の後、反応温度を50℃まで低下させて、1時間追い込み重合を行った。かかる追い込み重合中はt−ブチルヒドロパーオキシ水溶液(10%)2.0部及びL−アスコルビン酸水溶液(10%)2.4部をそれぞれ2分割して30分毎に配合した。その後、室温まで冷却して、上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂水溶液中にブチルアクリレート(BA)及びメチルメタクリレート(MMA)の混合組成の重合体粒子が分散するエマルジョンを得た。かかるエマルジョンにおける固形分は29.9%で、PVA系樹脂と重合体粒子の重量比は56/44であった。
乳化重合用のモノマーとして、ブチルアクリレート(BA)とスチレン(St)との混合モノマー(混合重量比:BA/St=45/55)を用いた以外は、重合例1と同様の方法でベースエマルジョンを得た。
分散剤として用いるPVA系樹脂を変更(ケン化度:99.1モル%、粘度平均重合度:600、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:8モル%)して、さらに乳化重合用のモノマーとして、ブチルアクリレート(BA)とスチレン(St)との混合モノマー(混合重量比:BA/St=27.5/72.5)を用いた以外は、重合例1と同様の方法でベースエマルジョンを得た。
還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗、温度計を備え付けたセパラブルフラスコに、分散媒としての水1188.0部、分散剤として上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(ケン化度:99.1モル%、粘度平均重合度:1200、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6モル%)240.0部、酢酸ナトリウム0.13部を流し込み、95℃で撹拌しながら2時間溶解させた後、フラスコ内の温度を75℃に冷却した。
この温浴中に、1段目の乳化重合用モノマーとして、ブチルアクリレート(BA)とメチルメタクリレート(MMA)との混合モノマー(混合重量比:BA/MMA=5/95)を6.0部、重合開始剤として亜硫酸水素ナトリウム水溶液(5%)1.20部及び過硫酸アンモニウム水溶液(1%)3.96部を加えて、1段目の乳化重合を開始した。反応温度を75℃〜80℃に保持しながら、1時間重合を行った。
次に、2段目の乳化重合を行なった。1段階目の乳化重合を行った反応系の温度を75℃〜80℃の範囲に保ちながら、2段目の乳化重合用モノマーとして、先ほどと同じ組成の混合モノマー54.0部を3時間半かけて滴下した。かかる滴下中に、過硫酸アンモニウム水溶液(1%)7.98部を14分割して15分毎に配合した。その後、温度を75℃に保ちながら、90分間重合を続けた。この間、過硫酸アンモニウム水溶液(1%)1.32部を2分割して45分毎に配合した。
2段目の乳化重合の後、反応温度を50℃まで低下させて、1時間追い込み重合を行った。かかる追い込み重合中はt−ブチルヒドロパーオキシ水溶液(10%)0.60部及びL−アスコルビン酸水溶液(10%)0.72部をそれぞれ2分割して30分毎に配合した。その後、室温まで冷却して、上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂水溶液中にブチルアクリレート(BA)及びメチルメタクリレート(MMA)の混合組成の重合体粒子が分散するエマルジョンを得た。かかるエマルジョンにおける固形分は20.49%で、PVA系樹脂と重合体粒子の重量比は80/20であった。
前記重合例1で調製したベースエマルジョンを分取し、希釈用の精製水と、さらに上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(ケン化度:99.1モル%、粘度平均重合度:1200、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6モル%)の10%水溶液を添加することで、10%のバインダー溶液を調製した。この時、バインダーの固形分中の(1)PVA系樹脂と(2)重合体粒子の重量比が、(1)/(2)=80/20になるように調製した。
前記重合例2で調製したベースエマルジョンを分取し、希釈用の精製水と、さらに上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(ケン化度:99.1モル%、粘度平均重合度:1200、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6モル%)の10%水溶液を添加することで、10%のバインダー溶液を調製した。この時、バインダーの固形分中の(1)PVA系樹脂と(2)重合体粒子の重量比が、(1)/(2)=80/20になるように調製した。
前記重合例3で調製したベースエマルジョンを分取し、希釈用の精製水と、さらに上記構造式(1a)に示す構造の側鎖1,2−ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(ケン化度:99.1モル%、粘度平均重合度:1200、上記構造式(1a)に示す1,2−ジオール構造単位含有率:6モル%)の10%水溶液を添加することで、10%のバインダー溶液を調製した。この時、バインダーの固形分中の(1)PVA系樹脂と(2)重合体粒子の重量比が、(1)/(2)=80/20になるように調製した。
(皮膜物性の評価)
<バインダー皮膜の作製>
上記方法で得られたバインダー溶液を、設計値100μmの膜厚になるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上にキャストした。その後23℃×50%RHの環境で48時間静置した後、80℃の送風乾燥機で1時間乾燥を行った。更に80℃の真空乾燥機にて、五酸化リンを共存させて48時間真空乾燥を行った。
得られた皮膜を熱重量分析装置(TGA)で揮発分測定を行ったところ、50〜200℃の範囲で重量減少率が0.5%以下であることを確認した。測定条件を以下に示す。
測定範囲:50〜300℃
測定モード:50℃で10分間静置した後、10℃/分で300℃まで定速昇温
揮発分(%)=(200℃でのサンプル重量)/(50℃でのサンプル重量)×100
上記方法で得られたバインダー皮膜について、下記の方法にて示差熱量分析を行った。なお重合体粒子のガラス転移温度は、変調モードで測定した2ndサイクル目のリバーシブルヒートフローの値を採用した。
分析装置:ティー・エイ・インスツルメント社製「DSC Q2000」
測定範囲
1st: −30〜215℃
2nd: −30〜230℃
昇温速度:5℃/分
降温速度:10℃/分
変調周期:60秒毎
温度振幅:+/−0.80℃
上記方法で得られたバインダー皮膜について、JIS K56005−1(塗膜の機械的性質 第一節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法))に準じて耐屈曲性試験を行った。試験サンプルは3点用意し、いずれかが破断した際のマンドレル試験棒の値を採用した。最小の試験棒は2mmφ(直径)であり、3点とも破断しなかった場合「2mmφでも破断しない」と評価した。
<ケイ素活物質を用いた電池用負極の作製>
活物質としてケイ素粉末(販売元:AlfaAesar、平均粒子径:50nm)を65部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製「デンカブラック」)を15部、さらに分散剤として1.72%水溶液に調製したカルボキシメチルセルロース#2260(ダイセルファインケム株式会社製)を固形分換算で3部、また適時に精製水を加えた後、遊星式混練機(株式会社シンキー製「泡取り錬太郎」)を用いて混合して固形分濃度28.0%のペーストを得た(2000rpmで4.5分間混合した後、更に2200rpmで0.5分間脱泡した。)。
得られたペースト中に、負極用バインダーとして製造例1で作製したバインダー溶液(10%)を固形分換算で17部、また適時に精製水を加水した後、さらに遊星式混練機を用いて同様の条件で混合することで、固形分濃度が19.8%の活物質ペーストを得た。
次に、集電体として圧延銅箔(株式会社UACJ製箔、厚さ18μm)の表面に、25μmのアプリケータと塗工機(株式会社井元製作所製「コントロールコーター(塗工機)」)を用いて、塗工速度10mm/秒で上記活物質ペーストを塗工した。これを80℃で2時間乾燥させたのち、続いて120℃で4時間真空乾燥を行うことで、電池用電極を得た。
評価用の電池の外層としては、2032型のコイン型セルを使用した。得られた電池用電極を直径14mmの大きさに打ち抜き、更に80℃で12時間真空乾燥を行った後にグローブボックスへと仕込んだ。上記にて作製した電池用負極を作用極とし、金属リチウム(直径13mm)を対極として、厚さ16μmのポリプロピレン多孔膜から成るセパレータ(直径18mm)を介在させて、互いに電極が対向するように配置させた。電解液として、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとを体積比で3:7に混合した溶媒に、電解質としてLiPF6を1mol/リットルの濃度に溶解したものを使用した。ポリプロピレン製パッキングを介して外層容器にステンレス鋼のキャップを被せて固定し、電池缶を封止することでハーフセルを作製し、評価用の電池とした。
作製した評価用の電池を50℃の環境下で24時間静置した。その後50℃を保ったまま、作用極に対して0.1C(1C=4200mA/g)の速度にて定電流条件で充放電を繰り返し行った。この時、電池性能の評価項目として、初回の放電容量とクーロン効率を採用した。
得られた電池性能の評価結果について、表1に記載した。
負極用バインダーとして製造例2で調製したバインダー溶液を使用する以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製して電池性能を評価した。
負極用バインダーとして製造例3で調製したバインダー溶液を使用する以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製して電池性能を評価した。
電極用バインダーとして重合例4で調製したベースエマルジョンをバインダー溶液として使用する以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製して電池性能を評価した。その際に、ベースエマルジョンは予め10%に希釈したものをバインダー溶液として使用した。
これに対して、比較例1では、PVA系樹脂と重合体粒子の重量比が本発明の規定範囲内であっても、重合体粒子のガラス転移温度が60℃よりも高いため、耐屈曲性、初回の放電容量及び初回のクーロン効率が全て不良であった。
よって、合金系活物質を用いた負極を作製する際には、PVA系樹脂と重合体粒子の重量比を好ましい範囲に設計し、重合体粒子のガラス転移温度を好ましい範囲に設計することで、体積変化に追随できる安定な負極活物質層が得られ、高い充放電特性を発揮できることがわかる。
Claims (5)
- リチウムと合金を形成し得る元素を活物質として含有する二次電池負極を作製するためのバインダー組成物であって、
エチレン性不飽和単量体に由来する重合体粒子がポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に分散されたエマルジョンを含み、前記ポリビニルアルコール系樹脂/重合体粒子の比率が、樹脂固形分の重量比にて、60/40〜99/1であり、重合体粒子のガラス転移温度が−40〜60℃であること特徴とする二次電池負極用バインダー組成物。 - 前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の二次電池負極用バインダー組成物。
- 請求項1又は2に記載の二次電池負極用バインダー組成物を含有してなる二次電池負極。
- 増粘剤としてセルロース誘導体類を含有する請求項3に記載の二次電池負極。
- 請求項3又は4に記載の二次電池負極を有する二次電池。
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